IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2023-89671予測システム、予測方法及びプログラム
<>
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図1
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図2
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図3
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図4
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図5
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図6A
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図6B
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図7
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図8
  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089671
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】予測システム、予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
G05B23/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204316
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 啓
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勝▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】宮本 学
(72)【発明者】
【氏名】森田 克明
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 和基
(72)【発明者】
【氏名】今岡 裕子
(72)【発明者】
【氏名】長原 健一
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐人
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA03
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF15
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】火山灰フィルタの交換時期を使用開始前に予測する予測システムを提供する。
【解決手段】予測システムは、評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得する取得部と、前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルと、前記取得部が取得した前記評価条件と、に基づいて、前記評価対象の火山灰フィルタの交換時期を予測する予測部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得する取得部と、
前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る未使用の火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルと、前記取得部が取得した前記評価条件と、に基づいて、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する予測部と、
を備える予測システム。
【請求項2】
前記評価条件には、前記火山灰フィルタで捕捉する火山灰の粒度分布パターンと、前記火山灰フィルタのメッシュの粗さと、前記火山灰フィルタの圧力損失の閾値が含まれ、前記予測モデルは、未使用の前記火山灰フィルタの圧力損失が前記閾値に到達するまでの時間を予測する、
請求項1に記載の予測システム。
【請求項3】
前記評価条件を説明変数とし、前記評価条件に基づいて未使用の前記火山灰フィルタの前記圧力損失が前記閾値に到達するまでの時間を測定するフィルタ試験で測定された前記時間を目的変数とする学習データに基づいて、前記評価条件と前記圧力損失が前記閾値に到達するまでの時間との関係を機械学習により学習して、前記予測モデルを構築する予測モデル構築部、
をさらに備える請求項2に記載の予測システム。
【請求項4】
前記予測モデル構築部は、
前記機械学習に用いるパラメータへの設定値について、所定の探索範囲を探索して、前記予測モデルの予測誤差を最も小さくするものから順に所定個の前記設定値を特定し、
特定した前記設定値とともに当該設定値に係る前記予測誤差を表示し、
特定された前記設定値の中から選択された前記設定値を前記パラメータに設定して、前記予測モデルを構築する、
請求項3に記載の予測システム。
【請求項5】
前記火山灰フィルタの寿命を測定するフィルタ試験が実施されると、当該フィルタ試験の結果に基づいて、前記学習データが生成され、
前記学習データにおける前記評価条件に含まれる評価項目数の変更、前記学習データの増加、前記学習データに係る前記フィルタ試験を実施したプラントの増加、増加した前記学習データに係る前記フィルタ試験を実施した時期、の何れかの条件に基づいて前記予測モデルの構築を実行するか否かを判定する判定部、
をさらに備える請求項3または請求項4に記載の予測システム。
【請求項6】
前記判定部は、
前記条件につき、優先度の高い順から、最新の前記学習データ及び前記予測モデルの構築に用いられていない前記学習データのうちいずれかと、前記予測モデルの構築に用いた前記学習データとを比較し、この比較の結果に基づき前記判定を行う、
請求項5に記載の予測システム。
【請求項7】
前記予測部は、
前記評価条件を説明変数とし、前記評価条件に基づいて未使用の前記火山灰フィルタの寿命を測定するフィルタ試験で測定された前記寿命を目的変数とする学習データを機械学習するにあたり、前記機械学習のパラメータを様々に異ならせて構築された複数の前記予測モデルと前記予測モデルの予測誤差の一覧を表示し、当該一覧の中から選択された前記予測モデルを用いて、前記火山灰フィルタの寿命を予測する、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の予測システム。
【請求項8】
前記予測部は、
前記一覧を表示するにあたり、前記予測モデルの構築に用いた前記学習データについて、前記評価条件が所定の条件を満たす前記学習データを多く含ものから順に所定個を選択して前記一覧に表示する、
請求項7に記載の予測システム。
【請求項9】
予測システムが、
評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得し、
前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルに、前記取得された前記評価条件を入力することにより、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する、
予測方法。
【請求項10】
コンピュータに、
評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得し、
前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルに、前記取得された前記評価条件を入力することにより、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測システム、予測方法及びプログラムに関する。詳しくは、火山灰フィルタの寿命の予測システム、予測方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火山が噴火すると、火山灰の降灰範囲では建屋や機器類に降灰の影響が及ぶ。火山灰への対策の一つとして、原子力プラントでは、火山灰の流入経路に火山灰フィルタを設置し、機器類への火山灰の侵入を抑制している。実際に噴火が発生したときにプラントへの影響を抑制するためには、フィルタの性能が限界に達する前にフィルタの清掃や交換を実施することが望ましい。その為には、事前にフィルタの性能が限界に達するまでの時間を把握しておく必要がある。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、一般空調設備に設けられるフィルタについて、フィルタの差圧、周囲の温度、湿度、フィルタの実使用期間に基づいて、フィルタの寿命を予測し、フィルタ交換時期の通知を行う診断方法が開示されている。特許文献1の診断方法は、使用開始後のフィルタに関して差圧や周囲の温度などの情報をオンラインで収集し、これらのパラメータを用いてフィルタの使用期間を補正して、フィルタの寿命を予測するものであって、フィルタの使用開始前に事前に寿命を予測するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-217616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
火山灰フィルタの寿命を事前に予測する技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる予測システム、予測方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の予測システムは、評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得する取得部と、前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る未使用の火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルと、前記取得部が取得した前記評価条件と、に基づいて、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する予測部と、を備える。
【0008】
本開示の予測方法は、予測システムによって実行され、評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得し、前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルに、前記取得された前記評価条件を入力することにより、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに、評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得し、前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルに、前記取得された前記評価条件を入力することにより、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の予測システム、予測方法及びプログラムによれば、フィルタの使用開始前に事前に寿命を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る予測システムの一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る学習データの一例を示す図である。
図3】実施形態に係る予測システムの要部の一例を示す図である。
図4】実施形態に係るパラメータの探索結果の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る予測モデル構築ログの一例を示す図である。
図6A】実施形態に係る予測値と実測値の散布図の一例を示す第1図である。
図6B】実施形態に係る予測値と実測値の散布図の一例を示す第2図である。
図7】実施形態に係る予測誤差の推移を表すグラフの一例を示す図である。
図8】実施形態に係る予測システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る予測システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る予測システムについて、図1図9を参照して説明する。
<実施形態>
(構成)
図1は、実施形態に係る予測システムの一例を示すブロック図である。予測システム10は、火山灰フィルタの寿命を予測するシステムである。火山灰フィルタの寿命とは、フィルタの圧力損失が閾値に達したときである。以下では、火山灰フィルタの寿命をフィルタの交換時期ともいう。予測システム10は、入力受付部11と、制御部12と、記憶部13と、表示部14と、を備える。
【0013】
入力受付部11は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン等の入力装置を用いて構成される。入力受付部11は、入力装置を用いて入力された各種情報を取得し、その情報を制御部12へ出力する。例えば、入力受付部11は、火山灰の粒度分布パタ-ンや火山灰フィルタのメッシュの粗さなど、寿命予測に用いる評価条件や、過去に火山灰フィルタについて実施されたフィルタ試験の試験条件および試験結果などの情報を取得する。過去のフィルタ試験の試験条件および試験結果は予測モデルを構築するための学習データとなる。
【0014】
制御部12は、火山灰フィルタの寿命を予測する処理を制御する。制御部12は、学習フェーズでは、寿命予測に用いる予測モデルを構築し、予測フェーズでは、構築済みの予測モデルを使って火山灰フィルタの寿命予測を行う。制御部12は、予測モデル構築部121と、予測部122と、判定部123と、を備える。予測モデル構築部121は、過去のフィルタ試験の試験結果などを学習データとして、火山灰の粒度分布パタ-ン等の評価条件を入力すると火山灰フィルタの寿命を出力する予測モデルを構築する。予測部122は、ある程度蓄積された学習データなどをもとにした評価条件に関する未使用の寿命予測に用いる予測モデルと、上記火山灰の粒度分布パタ-ンや火山灰フィルタのメッシュの粗さなど、寿命予測に用いる評価条件や、過去に火山灰フィルタについて実施されたフィルタ試験の試験条件などの情報とから評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する。さらに、予測モデル構築部121によって構築された予測モデルを用いて、評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する。判定部123は、フィルタ試験が実施されることによって学習データが蓄積されると、新たに蓄積された学習データを予測モデルに反映させるために予測モデルを再構築(又は、新規に構築)するかどうかを判定する。また、制御部12は、予測部122による予測結果などを表示装置や電子ファイルへ出力する。
【0015】
記憶部13は、火山灰フィルタの寿命予測に必要な種々の情報を記憶する。例えば、記憶部13は、学習データや構築済みの予測モデルを記憶する。
表示部14は、液晶ディスプレイ等の表示装置を用いて構成される。
【0016】
図2に学習データの一例を示す。火山灰フィルタの試験では、図2に示す試験データを記録する。試験データには、試験の識別番号である「項番」と、顧客名や原子力プラントのサイト名などの「顧客情報」と、火山灰フィルタの試験を実施した「試験日」と、「試験時間」と、試験実施時の「気温」および「湿度」等の試験実施情報と、試験で使用した火山灰の粒度(粒径、粒の大きさ)を示す「粒度1」、「粒度2」、・・・、「粒度N」と、試験で使用した火山灰の単位体積当たりの重量を示す「濃度」と、試験で使用した火山灰フィルタの上流側における「上流ラビリンス」の設置の有無と、下流における「下流ラビリンス」のの設置の有無と、火山灰フィルタの「メッシュ」の粗さと、定格風量で火山灰を火山灰フィルタへ送り込んだときのフィルタ上流側の圧力からフィルタ下流側の圧力を減じた値である圧力損失に対して設定された閾値である「許容圧損」を含む試験条件と、試験条件で定められた火山灰を所定の流速で火山灰フィルタへ供給したときに、未使用の火山灰フィルタの圧力損失が「許容圧損」に至るまでの時間を示す「許容圧損到達時間」を含む。「許容圧損到達時間」は試験結果である。試験条件の「粒度1」、「粒度2」、・・・「粒度N」には、あらかじめ火山灰の粒径が対応付けられ、「粒度1」、「粒度2」、・・・「粒度N」の各項目には、その粒径の灰が火山灰中に含まれる割合が設定される(粒度分布パターン)。例えば、図2の例では、項番1の試験では、「粒度1」の粒度の灰が70%、「粒度2」の粒度の灰が20%、「粒度N」の粒度の灰が10%の割合で含まれた粒度分布パターンを有する火山灰が使用されたことを示している。図2に例示する試験データのうちの試験条件と試験結果が、予測モデルを構築する場合の学習データとして用いられ、試験条件が説明変数、試験結果が目的変数となる。なお、図2に例示する試験条件は一例である。例えば、試験条件(説明変数)には、火山灰の流速が含まれていてもよい。火山灰フィルタの寿命を予測する場合には、予測モデルに対し、試験条件の各項目の値を入力し、予測モデルが出力する許容圧損到達時間を、火山灰フィルタ寿命の予測値として得る。原子力プラントにて過去に実施したときに採取された試験データは、入力受付部11が取得し、記憶部13に保存される。試験データは、例えば、一般的な表計算ソフトウェアを利用して編集され、表計算ソフトウェアが管理するデータ形式で記憶部13に保存されてもよい。表計算ソフトウェアを利用することで、例えば、説明変数を追加する場合には、列を追加することにより、説明変数を追加することができ、学習データを追加する場合には、行方向に試験データを追加することにより、学習データを追加することができる。
【0017】
(予測モデルの構築機能)
図3は、図1の予測システムの要部の一例を示す図である。図3を参照して、予測システム10が有する予測モデルの構築機能、火山灰フィルタの寿命予測機能について説明する。予測モデル構築部121は、探索条件設定部1211と、探索部1212と、探索結果表示部1213と、構築設定部1214と、構築部1215と、構築結果表示部1216と、予測誤差確認部1217と、予測誤差表示部1218と、を備える。また、記憶部13は、図2で説明した過去の試験データ131を記憶している。
【0018】
予測モデル構築部121は、予測モデルの構築にあたり、予測モデルの構築に用いる機械学習のパラメータへの設定値をどのように設定すればよいかを探索し、その探索結果をユーザに提示する機能と、探索結果の中からユーザが選択したパラメータへの設定値の組み合わせを用いて予測モデルを構築する機能と、構築した予測モデルの予測精度(予測誤差)をユーザへ提示する機能とを有する。
【0019】
探索条件設定部1211は、パラメータの設定値の探索範囲を設定する。例えば、予測モデル構築部121は、予測モデルの構築にランダムフォレストを用い、その前処理として、例えば、SMOTE(Synthetic Minority Oversampling Technique)によるオーバーサンプリングを行う。この場合、探索条件設定部1211は、例えば、ランダムフォレストのパラメータとして決定木の数、SMOTEのパラメータとしてk最近傍データのサンプル数、サンプリングの閾値、予測結果に対するパラメータとして外れ値除去の閾値、の各パラメータについて探索範囲を設定する。ここで、決定木の数、k最近傍データのサンプル数、サンプリングの閾値は、各アルゴリズムにて必要となるパラメータである。外れ値除去の閾値とは、一旦学習データを用いて、ランダムフォレストによる回帰学習を行い、その結果、作成された学習済みモデルの予測値と学習データの実測値との差を求め、その差が“外れ値除去の閾値”以上となった場合に、その予測結果を除去する目的で使用する。例えば、ユーザは、決定木の数に20~50の範囲の値、k最近傍データのサンプル数に2~5の範囲の値、サンプリングの閾値に0~60の範囲の値、外れ値除去の閾値に0~180の範囲の値を設定する。なお、ここで挙げた予測モデルの構築に用いるパラメータは一例である。例えば、ランダムフォレストに関し、決定木の数に加え、決定木の深さや葉の数を探索するパラメータに含めてもよい。以下、決定木の数、k最近傍データのサンプル数、サンプリングの閾値、外れ値除去の閾値の各パラメータをパラメータ1~4、各パラメータについて設定された値を設定値1~4のように記載する場合がある。例えば、探索条件設定部1211は、ユーザの設定に従って、設定値1についての探索範囲として{15、25、35、45}を設定し、設定値2についての探索範囲として{2、3、4}を設定し、設定値3についての探索範囲として{なし、30、60}を設定し、設定値4についての探索範囲として{なし、120、180}を設定する。
【0020】
探索部1212は、探索条件設定部1211が設定した探索範囲に対して、適切な設定値1~4を探索する。具体的には、探索部1212は、探索条件設定部1211が設定した設定値1~4についての組み合わせを作成する。上記例の場合、4×3×3×3通りの設定値の組み合わせが作成される。探索部1212は、各組合せ別に、過去の試験データ131の試験条件と試験結果を学習データとして前処理および機械学習を行い、その設定値1~4の組み合わせで予測モデルを構築した場合の予測精度を評価する。例えば、設定値1=25、設定値2=2、設定値3=30、設定値4=120の組み合わせの場合、探索部1212は、k最近傍データのサンプル数に2、サンプリングの閾値に30を設定してSMOTEにより学習データを増加(オーバーサンプリング)させ、オーバーサンプリング後の学習データから外れ値を除去し、そのデータを用いて、決定木の数に25を設定してランダムフォレストによる回帰分析を行い、学習済みモデルの各パラメータの予測誤差を算出する。同様にして、探索部1212は、各組合せ別に各パラメータの予測誤差を算出する。
【0021】
探索結果表示部1213は、探索部1212による探索結果を表示する。例えば、探索結果表示部1213は、探索部1212による探索結果の中から予測誤差が小さい場合の設定値1~4の組み合わせを所定個だけ、予測誤差が小さい順に並べて表示する。図4に探索結果の表示例を示す。図4の例では、予測精度が良好なものから順に設定値1~4の組み合わせが表示されている。最も予測精度が高かった設定値1~4の組み合わせは、設定値1が“25”、設定値2が“2”、設定値3が“30”、設定値4が“120”で、パラメータ1~4にこれらの値を設定して学習した場合の予測誤差が“26”であったことを示している。探索結果の下限値および上限値は、探索に使用した学習データに含まれる「許容圧損到達時間」(目的変数)の下限値と上限値である。この値は、予測モデルの適用範囲を示している。例えば、下限値が30(分)、上限値500(分)の場合、この学習データを用いて予測されるフィルタ寿命の予測結果は30~500分の範囲の値となる。
【0022】
構築設定部1214は、予測モデルの構築に用いる設定値1~4の設定を受け付ける。例えば、ユーザは、探索結果表示部1213によって表示された探索結果を参照して、予測モデルの構築に用いる設定値1~4の組み合わせを決定する。例えば、ユーザは、図4に例示する探索結果のうち、最も予測誤差が小さかった探索No.1と同様の設定を行ってもよい。あるいは、ユーザは、予測誤差の値が多少大きくなっても下限値と上限値の範囲が広い(予測結果の範囲が広い)場合の設定値1~4の組み合わせ(図示せず)を採用してもよい。構築設定部1214は、ユーザの設定どおりに予測モデルの構築に用いるパラメータおよび学習データの上限値および下限値を設定する。例えば、構築設定部1214は、設定値1~4にそれぞれ、“25”、“2”、“30”、“120”を設定する。一般に学習データの数が多ければ精度の良い予測モデルを構築することができると考えられる。従って、予測範囲が狭くても予測精度の高い予測モデルを構築したいような場合には、学習データが多く得られている範囲にインプットデータを絞る調整をしてもよい。
【0023】
構築部1215は、構築設定部1214が設定した設定値1~4を用いて、過去の試験データ131を学習データとして予測モデル(制約なし)133および/または予測モデル(制約あり)134を構築する。ここで、予測モデルの(制約なし)とは、許容圧損到達時間の値を確認せず全てのデータを用いてモデルを構築する場合を示し、(制約あり)とは、値を確認してモデル構築の際にインプットするデータを絞ってモデルを構築する場合(例えば、600(分)以下)を示す。例えば、構築設定部1214が上記の設定を行った場合、構築部1215は、k最近傍データのサンプル数に2、サンプリングの閾値に30を設定してSMOTEにより学習データを増加させ、増加後のデータに対して外れ値にあたるデータを除去し、そのデータを用いて、決定木の数に25を設定してランダムフォレストの回帰分析を行い、予測モデルを作成し、予測誤差を算出する。構築部1215は、構築した予測モデル(制約なし)133を記憶部13に保存する。また、構築部1215は、予測モデル(制約なし)133の構築時のログ(予測モデル構築ログ132)を記憶部13に記録する。図5に、予測モデル構築ログ132として記録されるデータの一例を示す。図示するように、予測モデル構築ログ132には、No、モデル名、設定値1、設定値2、設定値3、設定値4、下限値、上限値、予測誤差の各項目が含まれる。Noには、構築された予測モデルの識別番号が設定される。モデル名と日付には、それぞれ、構築した予測モデルの名称と、予測モデルを構築した日付が設定される。他の項目については、図4の同名の項目と同様である。また、構築部1215は、予測モデルの構築に用いた学習データに項番(図2の試験データの項番)を、例えば、予測モデルの識別番号と対応付けて記憶部13に記録しておく。また、構築部1215は、「許容圧損到達時間」の値を確認してモデル構築の際にインプットするデータを絞り(例えば、600(分)以下)、同様のパラメータ設定で、予測モデル(制約あり)134(1回目)を構築し、構築した予測モデル(制約あり)134の予測誤差を算出する。上記設定例の場合、「許容圧損到達時間」が33~395の範囲の学習データだけを用いて、設定値1~4には同じ値を設定して、予測モデル(制約あり)134の構築を行い、予測モデル(制約あり)134についても、予測モデル構築ログ132を記録する。図5に例示するのは、予測モデル(制約あり)134の場合のログである。構築部1215は、予測モデル(制約なし)133と、予測モデル(制約あり)134の両方を構築してもよいし、何れか1つだけを構築してもよい。
【0024】
さらに、予測モデルの構築は繰り返し行うことができる。2回目以降も設定値1~4に同じ値を設定して予測モデルを構築する場合、2回目の構築では、構築部1215は、追加されたデータをインプットに、1回目と同様にオーバーサンプリング、外れ値除去、および機械学習を行って、予測モデル(制約なし)133(2回目)および予測モデル(制約あり)134(2回目)を構築し、それぞれについて予測モデル構築ログ132を記録する。以降、同様にして予測モデルを構築することができる。(学習データの範囲の制約あり/なし、学習回数の区別が必要ない場合には単に“予測モデル”と記載する。)
【0025】
構築結果表示部1216は、構築部1215が記録した予測モデル構築ログ132に基づいて、予測モデルの構築結果を表示部14に表示する。例えば、構築結果表示部1216は、1~5回目の予測モデルの構築で記録された図5に例示するログ情報を表示部14に表示する。また、構築結果表示部1216は、予測モデルによる予測値と実測値の散布図を作成し、作成した散布図を表示部14に表示する。図6Aに、予測モデル(制約なし)133(n回目)に関する散布図の一例を示し、図6Bに、予測モデル(制約あり)134(n回目)に関する散布図の一例を示す。図6A図6Bのグラフの縦軸は学習データに含まれる「許容圧損到達時間」の実測値、横軸は学習データに含まれる説明変数と予測モデルによって予測された「許容圧損到達時間」の予測値を示す。各点は、1個の学習データから得られる実測値と予測値に対応する。L1付近に存在する点が多いほど、その予測モデルの性能が高いことを示している。(L2は、予測フェーズにて構築済みの予測モデルに評価条件を入力したときに予測モデルが出力した予測値の一例を示しており、学習フェーズでは、L2は表示されない。)
【0026】
予測誤差確認部1217は、予測モデル構築ログ132に記録された予測モデルの予測誤差の履歴を読み出して取得する。例えば、予測誤差確認部1217は、予測モデル構築ログ132から1~5回目の予測誤差(58、34、38、30、28)を読み出して取得する。
【0027】
予測誤差表示部1218は、予測誤差確認部1217が取得した予測誤差の履歴情報から学習回数に応じた予測誤差の推移を表すグラフを作成し、このグラフを表示する。図7に予測誤差の推移を表すグラフの一例を示す。このように設定値1~4が同じ値であっても予測モデルの構築を繰り返すたびに学習データを増加させることによって、予測精度を向上することができる。
【0028】
(寿命予測機能)
次に火山灰フィルタの寿命予測機能について説明する。予測部122は、評価条件設定部1221と、予測モデル設定部1222と、フィルタ交換時間予測部1223と、予測誤差表示部1224と、を備える。例えば、記憶部13は、N回の構築で作成されたN個の予測モデル(制約なし)133および/またはN個の予測モデル(制約あり)134と、N回の予測モデルの構築時に記録された予測モデル構築ログ132を記憶している。
【0029】
評価条件設定部1221は、ユーザが入力した評価条件を記憶部13に記録する。これにより、記憶部13には、評価条件データ135が保存される。評価条件とは、図2に例示した説明変数である。例えば、ユーザは、火山灰フィルタの試験計画を作成するときに、実行予定の試験に係る試験条件を評価条件として入力する。あるいはフィルタ試験に限らず、原子力プラントの近くに存在する火山が噴火し、これから火山灰フィルタを設置しようとする際に、ユーザは、火山灰の粒度分布パタ-ンなどを予測して、評価条件を入力する。評価条件設定部1221は、入力された評価条件を記憶部13に保存する。
【0030】
予測モデル設定部1222は、予測モデル構築部121によって構築された予測モデルの一覧を表示部14に表示する。例えば、予測モデル設定部1222は、図5に例示するログ情報や図7に例示する予測誤差の推移を表すグラフを表示する。そして、予測モデル設定部1222は、一覧の中からユーザが選択した予測モデルの識別番号(モデルNo)をフィルタ交換時間予測部1223へ出力する。
【0031】
フィルタ交換時間予測部1223は、評価対象の火山灰フィルタのフィルタ交換時間を予測する。フィルタ交換時間予測部1223は、予測モデル設定部1222によって特定された予測モデル(一覧からユーザによって選択された予測モデル)に、評価条件設定部1221が設定した評価条件を入力し、予測モデルが出力する許容圧損到達時間を取得し、この値をフィルタ交換時間(フィルタの寿命)とする。
【0032】
予測誤差表示部1224は、フィルタ交換時間予測部1223が予測したフィルタ交換時間を表示部14に表示する。例えば、予測誤差表示部1224は、図6A図6Bに例示する予測に用いた予測モデルの実測値と予測値の散布図に、評価条件を入力して得られたフィルタ交換時間の予測値(図6AのL2、図6BのL2)を重畳して表示する。
【0033】
(動作)
次に本実施形態の予測モデルの構築処理およびフィルタ交換時期の予測処理の流れについて説明する。
図8、予測システムの動作の一例を示すフローチャートである。
前提として、火山灰フィルタの寿命予測を実施する場面であるとする。まず、制御部12が、予測モデル構築するどうかを判定する(ステップS1)。例えば、予測モデルが構築されてない場合、学習データがある程度蓄積されている場合、説明変数が増えた場合、種類の異なるプラントで実施された試験データが増えた場合などに、ユーザは予測モデルを構築すると判断し、予測モデルの構築を予測システム10に指示する。入力受付部11は、制御部12へ予測モデルの構築が指示されたことを通知する。この場合、制御部12は、予測モデルを構築すると判定する。また、予測モデルが構築済みで、予測モデルの構築後に学習データの追加や説明変数の変化が無い場合、また、種類の異なるプラントで実施された試験データの追加等もない場合、ユーザは、火山灰フィルタの寿命予測の実行を予測システム10に指示する。入力受付部11は、制御部12へ火山灰フィルタの寿命予測が指示されたことを通知する。この場合、制御部12は、予測モデルを構築しないと判定する。
【0034】
予測モデル構築すると判定した場合(ステップS1;Yes)、ユーザは、表計算ソフトウェアを利用して、過去の試験データを編集する(ステップS2)。例えば、ユーザは、説明変数に追加などがないか、学習データに追加がないか等を確認して、説明変数の追加、学習データの追加などを行う。入力受付部11は、ユーザが入力したデータを取得し、過去の試験データ131に変更や追加を行う。
【0035】
試験データ(学習データ)の編集が完了すると、次にユーザは、機械学習や前処理に用いるパラメータ設定値の探索範囲を設定する(ステップS3)。例えば、ユーザは、ランダムフォレストの決定木の数について{15、25、35、45}等を設定する。ユーザは、他のパラメータについても探索範囲の設定を行う。入力受付部11は、ユーザが設定した探索範囲を取得し、探索条件設定部1211へ出力する。探索条件設定部1211は、ユーザによって設定された設定値の探索範囲を記憶部13に記録する。
【0036】
次にユーザが、設定値の探索を予測システム10に指示する。入力受付部11は、ユーザの指示操作を受け付け、探索部1212へ設定値の探索が指示されたことを通知する。探索部1212は、設定値を探索する(ステップS4)。探索部1212は、各パラメータに対して設定された設定値の探索範囲の中から、予測誤差が良好となる設定値の組み合わせを探索する。次に探索結果表示部1213が、探索結果の一覧を表示する(ステップS5)。例えば、探索結果表示部1213は、図4に例示する探索結果を表示部14に表示する。
【0037】
次にユーザが、探索結果の一覧を参照し、各パラメータに対して設定する設定値を決定する(ステップS6)。例えば、ユーザは、パラメータ1~4について決定した設定値1~4と許容圧損到達時間の値を確認してモデル構築の際にインプットするデータを絞る設定を予測システム10へ入力する。入力受付部11は、ユーザが入力した設定値1~4などを構築設定部1214へ出力する。構築設定部1214は、パラメータ1に設定値1を設定し、パラメータ2に設定値2を設定し、パラメータ3に設定値3を設定し、パラメータ4に設定値4を設定する。
【0038】
次にユーザが、予測モデルの構築を予測システム10に指示する。入力受付部11は、ユーザの指示操作を受け付け、構築部1215へ予測モデルの構築が指示されたことを通知する。この指示に基づき、構築部1215は、予測モデルを構築する(ステップS7)。構築部1215は、設定値1~4に基づいて、前処理(オーバーサンプリング)、ランダムフォレストによる回帰分析を行って予測モデル(制約なし)133を構築する。また、構築部1215は、オーバーサンプリングと外れ値除去をしたデータを用いて、予測モデル(制約あり)134を構築する。また、構築部1215は、予測モデル(制約なし)133と予測モデル(制約あり)134の予測誤差を計算する。構築部1215は、構築した予測モデルを記憶部13に保存する。構築部1215は、予測モデル(制約なし)133と予測モデル(制約あり)134について予測モデル構築ログ132を記録する。また、構築部1215は、予測モデルの構築に用いた学習データの項番を、予測モデルの識別番号と対応付けて記憶部13に記録しておく。
【0039】
次に構築結果表示部1216が、予測値と実測値の散布図を表示する(ステップS8)。構築結果表示部1216は、図6A図6Bに例示する散布図(L2を除く)を表示する。ユーザは、予測モデル(制約なし)133、予測モデル(制約あり)134の予測誤差を確認する。予測精度が十分ではない場合、ユーザは、ステップS6以降の処理を繰り返し行うことができる。例えば、上記で説明したように、予測誤差が所定値以下になるまで5回連続して同じ設定値1~4を設定して予測モデルを構築してもよい。
【0040】
次に、予測誤差確認部1217が、予測モデル構築ログ132から予測誤差の履歴を取得する。次に予測誤差表示部1218が、予測モデル構築ログ132に基づくログ情報と予測誤差の推移を表示する(ステップS9)。例えば、予測誤差表示部1218は、図5に例示する予測モデル構築のログ情報と、図7に例示する予測誤差の推移を示すグラフを表示部14に表示する。ユーザは、予測誤差が小さくなり、予測精度が高い予測モデルが構築されている状況を確認することができる。予測モデルが構築できると、学習を完了し、火山灰フィルタの寿命予測を行うことができる。
【0041】
ステップS1にて、予測モデル構築しないと判定した場合(ステップS1;No)、予測システム10は、火山灰フィルタの寿命予測を行う。まず、ユーザは、表計算ソフトウェアを利用して、評価条件を設定する(ステップS10)。例えば、ユーザは、フィルタの性能試験の試験条件を評価条件として設定する。入力受付部11は、ユーザが入力した評価条件を取得し、評価条件データ135を記憶部13に保存する。
【0042】
次に、ユーザは、評価条件下での火山灰フィルタの寿命予測を予測システム10に指示する。入力受付部11は、ユーザの指示操作を受け付け、予測モデル設定部1222へフィルタ寿命の予測が指示されたことを通知する。すると、予測モデル設定部1222は、予測モデルの一覧を表示部14に表示する(ステップS11)。例えば、予測モデル設定部1222は、図5に例示する構築済み予測モデルの一覧(ログ情報)を表示する。
【0043】
次にユーザは、予測に使用する予測モデルを選択する(ステップS12)。入力受付部11は、ユーザが選択した予測モデルのモデルNoを予測モデル設定部1222へ出力する。予測モデル設定部1222は、ユーザによって選択された予測モデルのモデルNoをフィルタ交換時間予測部1223に出力する。次にフィルタ交換時間予測部1223が、フィルタの交換時期を予測する(ステップS13)。フィルタ交換時間予測部1223は、予測モデル設定部1222から出力されたモデルNoの予測モデルに、ステップS10にて設定された評価条件を入力して、火山灰フィルタの交換時期を予測する。次に予測誤差表示部1224が、予測結果を表示する(ステップS14)。例えば、予測誤差表示部1224は、図6A図6Bに例示した、実測値と予測値の散布図に、今回予測した「許容圧損到達時間」を重畳して表示(L2)したグラフを表示する。ユーザは、予測値とともにその予測精度を把握することができる。例えば、図6Bに例示する予測結果、つまり予測値としてP2が得られた場合、P2の付近では実測値と予測値がL1近傍に集中している為、予測精度が高いことが期待できる。
【0044】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、火山灰フィルタの使用前に寿命を予測することができる。これにより、例えば、火山灰フィルタの試験を計画する段階で事前にフィルタ交換時間を予測でき、また、事前に様々な試験条件のパターン対する試験結果を予測しておくことができるので、フィルタ試験の計画に役立てることができる。また、フィルタ試験に限らず、実際に火山が噴火した状況で、事前にフィルタの寿命を予測し、把握することができるので、適切なタイミングで火山灰フィルタの交換を行うことができ、プラントへの影響を低減することができる。また、本実施形態によれば、過去のフィルタ試験の試験データと機械学習に関するパラメータの探索範囲を設定するだけで、予測精度を良好に保つことができるパラメータの設定値を探索することができる。探索された設定値を用いて予測モデルを構築することができるので、予測精度が高い予測モデルを構築することができる。また、予測モデルの精度については、図6A図6Bに例示する散布図を参照することで確認することができる。また、学習データの範囲を上限値と下限値で限定することによって、予測範囲に応じた予測モデルを構築することができる。また、過去に作成した予測モデルの中から適切な予測モデルを選択してフィルタ寿命を予測することができ、構築した予測モデルの予測誤差の学習が進んでいるかをチェックすることができる。例えば、図7に例示する予測誤差の推移を示すグラフを参照して、予測モデルの構築を繰り返すことにより予測誤差が低下していれば、最後に構築された予測モデルを選択することができる。また、例えば、図5に例示するログ情報を参照して予測モデルを選択する場合、学習データの上下限値を参照して、上下限値の範囲の広い学習データで構築された予測モデルや、上下限値の範囲の狭い学習データで構築された予測モデルの中から複数の予測モデルを選択して、フィルタ寿命の予想を行うことで、未知の火山灰フィルタについて様々な予測結果を得ることができる。また、学習データの追加時、パラメータ1~4を調整して予測モデルの再構築が可能であるので、より予測誤差の小さいモデルを構築することができる。
【0045】
<実施例1>
上記の実施形態の説明では、構築済みの学習モデルの一覧の中から、予測に使用する予測モデルを選択し、火山灰フィルタの寿命予測を行うこととしたが(ステップS11~S13)、評価条件を設定した段階で(ステップS10)、どの予測モデルを使用すればよいかを提案するようにしてもよい。例えば、火山灰フィルタの設計方針として「流速がXX以下、メッシュはXX以上、上流下流ともラビリンスなし」とする予定があるとする。この場合、この火山灰フィルタの試験を実施する場合には、この条件を満たす学習データを多く学習した予測モデルを用いて寿命予測を行うことが好ましい。このような場合に、ユーザが各予測モデルの構築に用いられた学習データを人手で確認し、上記の条件を満たすデータを多く含む学習データを用いて構築された予測モデルを特定するのは大変である。そこで、予測モデル設定部1222は、ユーザが設定する条件に応じた予測モデルの一覧を表示する。ユーザは、各条件の優先度を設定する。例えば、優先度1として、「流速はXX以下」を設定し、優先度2として「メッシュXX以上」を設定し、優先度3として「ラビリンスなし」を設定する。すると、ステップS10にて、評価条件設定部1221は、評価条件とともに設定された優先度1~3を記憶部13に記録する。次にステップS12にて、予測モデル設定部1222は、構築済みの予測モデルの一覧を選択して表示する際に、高い優先度が設定された条件を満たす学習データを多く含む学習データ群を用いて構築された予測モデルを選択する。例えば、予測モデル設定部1222は、予測モデルの構築時に記憶部13に記録された学習データの項番に基づいて、予測モデルの構築に使用された学習データを調査して、各予測モデルの構築に用いられた学習データ群について、最も優先度が高い「流速がXX以下」の条件を満たす学習データの数や条件を満たす学習データが何割含まれているかを計算する。予測モデル設定部1222は、優先度1の条件を満たす学習データを多く含む学習データ群を用いて構築された予測モデルを抽出する。例えば、予測モデル設定部1222は、優先度1の条件を満たす学習データの数が多いものから順に所定個を選択する。あるいは、予測モデル設定部1222は、優先度1の条件を満たす学習データの割合が多いものから順に所定個を選択する。同様に予測モデル設定部1222は、2番目に高い優先度が付された「メッシュXX以上」の条件を満たす学習データを多く含む学習データ学習データ群を学習して構築された予測モデルを抽出する。3番目に高い優先度が設定された「ラビリンスなし」についても同様である。そして、予測モデル設定部1222は、抽出した優先度1を満たす学習データを多く使って構築された予測モデルを、そのデータ数および/または割合が多いものから順に所定個表示し、同様に優先度2、優先度3に関して抽出された予測モデルも所定個ずつ表示する。予測モデル設定部1222は、抽出した予測モデルとともに、その予測モデルの構築に使用した学習データに含まれる条件を満たすデータの数や割合を一覧で表示する。これにより、ユーザは、これから実施するフィルタ試験の試験条件に合致する学習データを多く用いて構築された予測モデルを活用して、評価対象の火山灰フィルタの寿命予測を行うことができる。
【0046】
<実施例2>
上記実施形態では、ステップS1にて、予測モデルを構築(再構築)するか否かをユーザが判断することとしたが、この判断を判定部123が自動で行ってもよい。ユーザは、モデル構築のトリガーとなる条件に優先度を設定する。例えば、ユーザは、優先度1として、「説明変数の数が変更された」を設定し、優先度2として「試験データが所定個以上増えた」を設定し、優先度3として「学習していない原子力プラントの種類が所定個以上増えた」を設定し、優先度4として「学習していない梅雨時期の試験データが所定個以上増えた」を設定する。すると、判定部123は、入力受付部11を通じてこれらの設定情報を取得し、記憶部13にモデル構築のトリガーとなる条件の優先度を設定する。ステップS1にて、判定部123は、モデルを構築するかどうかを判定し、その判定結果を表示部14に表示する。例えば、判定部123は、優先度に沿って、モデルの構築が必要かどうかの判定を行う。最初に優先度1について、判定部123は、記憶部13に保存された最新の試験データの試験条件、即ち説明変数と、構築済みの予測モデルの構築に使用した学習データの説明変数とを比較して、説明変数の項目が増加しているかどうかを確認する。説明変数の項目が増加している場合、判定部123は、予測モデルを構築すると判定する。説明変数の数に変更が無い場合、判定部123は、次に優先度が高い優先度2に基づいて、予測モデルの構築を行うかどうかの判定を行う。例えば、判定部123は、記憶部13に保存された最新の試験データを含む全学習データの数から、構築済みの予測モデルの構築に使用した学習データの数を減算し、その差が所定個以上であれば、予測モデルを構築すると判定する。優先度3について、判定部123は、記憶部13に保存された、予測モデルの構築に用いられていない学習データの項番に対応する試験データの試験情報の顧客情報と、予測モデルの構築に用いられた学習データの項番に対応する試験データの顧客情報とを比較し、未使用の試験データのうち、予測モデルの構築に用いられていない顧客情報(例えば、原子力プラントのサイト名)を有する試験データの数が所定数以上となると、予測モデルを構築すると判定する。これは、原子力プラントのサイト名が異なれば、近くに存在する火山が異なり、火山灰の粒度分布パターンが変化するため、性質の異なる学習データを用いて予測モデルを再構築する必要があると考えられるためである。次に判定部123は、優先度4について、記憶部13に保存された、予測モデルの構築に用いられていない学習データの項番に対応する試験データの試験情報の顧客情報と、予測モデルの構築に用いられた学習データの項番に対応する試験データの顧客情報とを比較し、未使用の試験データのうち試験日が梅雨の時期に相当するデータが所定数以上となると、予測モデルを構築すると判定する。これにより、ユーザが、試験データの内容を確認して、予測モデルの構築(再構築)を行うかどうかの判断を行う必要が無くなる。なお、判定部123は、予測モデルを構築すると判断した場合に、自動で予測モデルを構築するのではなく、例えば、優先度1に基づいて予測モデルを構築すると判定した場合であれば、「説明変数の数が変更された試験データが蓄積されています。予測モデルの構築を検討してください」といったメッセージを表示部14に表示し、予測モデルの構築をユーザに促すようにしてもよい。なお、実施例2の予測モデルを構築するかどうかの判定は、図8のフローチャートのステップS1(つまり、これから火山灰フィルタの寿命予想を行おうとするタイミング)に限らず、例えば、所定の周期(月1回など)で自動的に実行されてもよい。
【0047】
図9は、実施形態に係る予測システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の予測システム10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0048】
予測システム10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0049】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
<付記>
各実施形態に記載の予測システム、予測方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係る予測システムは、評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得する取得部(入力受付部11)と、前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る未使用の火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルと、前記取得部が取得した前記評価条件と、に基づいて、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する予測部122と、を備える。
これにより、火山灰フィルタの使用開始前にフィルタの寿命を予測することができる。
【0052】
(2)第2の態様に係る予測システムは、(1)の予測システムであって、前記評価条件には、前記火山灰フィルタで捕捉する火山灰の粒度分布パターンと、前記火山灰フィルタのメッシュの粗さと、前記火山灰フィルタの圧力損失の閾値とが含まれ、前記予測モデルは、未使用の前記火山灰フィルタの圧力損失が前記閾値に到達するまでの時間を予測する。
これにより、火山灰フィルタの使用開始前にフィルタの寿命を予測することができる。
【0053】
(3)第3の態様に係る予測システムは、(2)の予測システムであって、前記評価条件を説明変数とし、前記評価条件下で未使用の前記火山灰フィルタの前記圧力損失が前記閾値に到達するまでの時間を測定するフィルタ試験で測定された前記時間を目的変数とする学習データに基づいて、前記評価条件と前記圧力損失が前記閾値に到達するまでの時間との関係を機械学習により学習して、前記予測モデルを構築する予測モデル構築部をさらに備える。
これにより、火山灰フィルタの使用開始前にフィルタ寿命を予測する予測モデルを構築することができる。
【0054】
(4)第4の態様に係る予測システムは、(3)の予測システムであって、前記予測モデル構築部は、前記機械学習に用いるパラメータへの設定値について、所定の探索範囲を探索して、前記予測モデルの予測誤差を最も小さくするものから順に所定個の前記設定値を特定し、特定した前記設定値とともに前記設定値に係る前記予測誤差を表示し、特定された前記設定値の中から選択された前記設定値を前記パラメータに設定して、前記予測モデルを構築する。
これにより、予測精度の高いパラメータへの設定値を把握することができる。予測精度を高くできる設定値を参考にして、実際に予測モデルの構築に使用する設定値を決定するので予測精度の高い予測モデルを構築することができる。
【0055】
(5)第5の態様に係る予測システムは、(3)~(4)の予測システムであって、前記火山灰フィルタの寿命を測定するフィルタ試験が実施されると、当該フィルタ試験の結果に基づいて、前記学習データが生成され、前記学習データにおける前記評価条件に含まれる評価項目数の変更、前記学習データの増加数、前記学習データに係る前記フィルタ試験を実施したプラントが増加したこと、増加した前記学習データに係る前記試験を実施した時期、の何れかの条件に基づいて前記予測モデルの構築を実行するか否かを判定する判定部、をさらに備える。
これにより、学習データが蓄積されていった場合にどのタイミングで予測モデルを構築すればよいかを自動判定することができる。
【0056】
(6)第6の態様に係る予測システムは、(5)の予測システムであって、前記判定部は、前記条件につき、優先度の高い順から、最新の前記学習データ及び前記予測モデルの構築に用いられていない前記学習データのうちいずれかと、前記予測モデルの構築に用いた前記学習データとを比較し、この比較の結果に基づき前記判定を行う。
これにより、予測モデルの構築の要否を自動判定することができる。
【0057】
(7)第7の態様に係る予測システムは、(1)~(6)の予測システムであって、前記予測部は、前記評価条件を説明変数とし、前記評価条件下で未使用の前記火山灰フィルタの寿命を測定するフィルタ試験で測定された前記寿命を目的変数とする学習データを機械学習するにあたり、前記機械学習のパラメータを様々に異ならせて構築された複数の前記予測モデルと前記予測モデルの予測誤差の一覧を表示し、当該一覧の中から選択された前記予測モデルを用いて、前記火山灰フィルタの寿命を予測する。
これにより、予測精度を参考にして、火山灰フィルタの寿命予測に用いる予測モデルを選択することができる。
【0058】
(8)第8の態様に係る予測システムは、(7)の予測システムであって、前記予測部は、前記一覧を表示するにあたり、前記予測モデルの構築に用いた前記学習データについて、前記評価条件が所定の条件を満たす前記学習データを多く含ものから順に所定個を選択して前記一覧に表示する。
これにより、予測に係る評価条件に適した予測モデルを選択しやすくなる。
【0059】
(9)第9の態様に係る予測方法では、予測システムが、評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得し、前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルに、前記取得された前記評価条件を入力することにより、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する。
【0060】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、評価対象の火山灰フィルタに関する所定の評価条件を取得し、前記評価条件を入力すると前記評価条件に係る火山灰フィルタの寿命の予測値を出力する予測モデルに、前記取得された前記評価条件を入力することにより、前記評価対象の火山灰フィルタの寿命を予測する処理を実行させる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・予測システム
11・・・(取得部)入力受付部
12・・・制御部
121・・・予測モデル構築部
1211・・・探索条件設定部
1212・・・探索部
1213・・・探索結果表示部
1214・・・構築設定部
1215・・・構築部
1216・・・構築結果表示部
1217・・・予測誤差確認部
1218・・・予測誤差表示部
122・・・予測部
1221・・・評価条件設定部
1222・・・予測モデル設定部
1223・・・フィルタ交換時間予測部
1224・・・予測誤差表示部
123・・・判定部
13・・・記憶部
14・・・表示部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9