(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089699
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
H01F37/00 J
H01F37/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204367
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 孝輔
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歩留まりが悪化することなく、生産効率が上がるリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトルは、脚部11と、ヨーク部12と有するコアと、コアに装着されるコイルと、ヨーク部12の一部を被覆するコアモールド樹脂2と、コイルと接続するバスバー5と、モールド成型することで形成されるゲート痕Gを有し、ヨーク部12の周囲のみに設けられ、バスバー5を被覆するバスバーモールド樹脂6と、を備える。コアモールド樹脂2は、金属部材を収容する収容部と、ヨーク部の周囲に設けられ、バスバーモールド樹脂6の巻軸方向の位置を規制する第1の規制部22と、脚部11の並び方向の位置を規制する第2の規制部23と、巻軸方向と直交し、かつ、脚部11の並び方向と直交する方向を規制する第3の規制部24と、を有する。バスバーモールド樹脂6は、金属部材の上面に設けられたバスバー5とともに、各規制部22、23、24を被覆している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脚部と、前記複数の脚部を繋ぐヨーク部とを有するコアと、
前記コアに装着されるコイルと、
前記コアのうち、少なくとも前記ヨーク部の一部を被覆するコアモールド樹脂と、
前記コイルと接続するバスバーと、
モールド成型することで形成されるゲート痕を有し、前記ヨーク部の周囲のみに設けられ、前記バスバーを被覆するバスバーモールド樹脂と、
を備え、
前記コアモールド樹脂は、
前記ヨーク部の上面又は前記ヨーク部の背面に設けられ、金属部材を収容する収容部と、
前記ヨーク部の周囲に設けられ、前記バスバーモールド樹脂の位置を規制する規制部と、
を有し、
前記規制部は、
巻軸方向の位置を規制する第1の規制部と、
前記複数の脚部の並び方向の位置を規制する第2の規制部と、
前記巻軸方向と直交し、かつ、前記複数の脚部の並び方向と直交する方向を規制する第3の規制部と、
を有し、
前記バスバーモールド樹脂は、前記収容部に収容された金属部材の上面に設けられた前記バスバーとともに、前記第1の規制部、前記第2の規制部及び前記第3の規制部を被覆していること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記第1の規制部、前記第2の規制部及び前記第3の規制部は、前記ヨーク部の上面又は前記ヨーク部の背面に設けられ、
前記バスバーモールド樹脂は、前記ヨーク部の上面及び前記ヨーク部の背面のみに設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記複数の脚部は、隙間を空けて脚部の延び方向が平行になるように配置され、
前記第1の規制部、前記第2の規制部及び前記第3の規制部は、前記隙間の延長領域内に収まる位置に設けられ、
前記バスバーモールド樹脂は、前記隙間の延長領域内に収まる位置に設けられていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記収容部は、
前記金属部材を載置する載置部と、
前記載置部の縁から延びる壁部と、
を有し、
前記第1の規制部、前記第2の規制部及び前記第3の規制部は、前記壁部から延設してそれぞれ設けられ、
前記バスバーモールド樹脂は、前記ヨーク部の背面のみに設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド成型によって固定されたバスバーを備えるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途で使用される。リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。リアクトルは、磁性体から成るコアと、コアに巻回されたコイルとを備える。
【0003】
リアクトルは、コイルと外部機器を電気的に接続させるため、板状の導電性部材から成るバスバーを更に備える。バスバーの一方端部は、コイルの端部と溶接等により接続している。バスバーの他方端部は外部機器の端子と接続する。バスバーの他方端部の下方にはナット等の筒状の金属部材が設けられており、この金属部材に外部機器の端子がボルト等で固定される。このように、リアクトルは、バスバーを介して電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バスバーは、モールド成型によってモールド樹脂により固定する手法が知られている。例えば、コアを樹脂でモールド成型したコアモールドを作製する。この時、コアモールドには、ナット等の金属部材を収容する収容部を設けておく。そして、この収容部に金属部材を収容し、その上にバスバーをセットして、コイルやコアモールドとともに二次モールド樹脂によってモールド成型して、コイルやコアモールドの全体を被覆するように各構成部材を一体化している。即ち、二次モールド樹脂は、リアクトルの全体を被覆するように設けられている。しかし、このようにバスバー以外にコイルやコアなど複数の構成部材を一体にモールドすると、成形不良が発生することが多くなる。成形不良が発生すると、モールド成型を行おうとしたすべての構成部材を破棄することになり、歩留まりが悪く、生産効率が悪化するという問題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、バスバーをモールド成型しても、歩留まりが悪化することなく、生産効率を上げることができるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るリアクトルは、複数の脚部と、前記複数の脚部を繋ぐヨーク部とを有するコアと、前記コアに装着されるコイルと、前記コアのうち、少なくとも前記ヨーク部の一部を被覆するコアモールド樹脂と、前記コイルと接続するバスバーと、モールド成型することで形成されるゲート痕を有し、前記ヨーク部の周囲のみに設けられ、前記バスバーを被覆するバスバーモールド樹脂と、を備え、前記コアモールド樹脂は、前記ヨーク部の上面又は前記ヨーク部の背面に設けられ、金属部材を収容する収容部と、前記ヨーク部の周囲に設けられ、前記バスバーモールド樹脂の位置を規制する規制部と、を有し、前記規制部は、巻軸方向の位置を規制する第1の規制部と、前記複数の脚部の並び方向の位置を規制する第2の規制部と、前記巻軸方向と直交し、かつ、前記複数の脚部の並び方向と直交する方向を規制する第3の規制部と、を有し、前記バスバーモールド樹脂は、前記収容部に収容された金属部材の上面に設けられた前記バスバーとともに、前記第1の規制部、前記第2の規制部及び前記第3の規制部を被覆していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歩留まりが悪化することなく、生産効率を上げることができるリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】モールドコイルを示す図であり、(a)は上面から見た斜視図、(b)は底面から見た斜視図である。
【
図5】バスバーをモールド成型したコアモールドを示す斜視図である。
【
図6】(a)は他の実施形態におけるコアモールドを示す斜視図であり、(b)はバスバーをモールド成型したコアモールドを示す平面図である。
【
図7】他の実施形態の収容部及び規制部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
実施形態に係るリアクトルについて、図面を参照しつつ説明する。
図1は、リアクトルの全体構成を示す斜視図である。
図2は、コアモールドを示す斜視図である。
図3は、収容部の周辺を示す拡大図である。
図4は、モールドコイルを示す図であり、(a)は上面から見た斜視図であり、(b)は底面から見た斜視図である。
【0011】
各図面においては、理解容易のため、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。また、コイル3の巻軸方向をX方向とも称し、コアの脚部の並び方向をY方向とも称し、このX方向及びY方向と直交する方向をZ方向とも称する。
【0012】
リアクトル10は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途で使用される。リアクトル10は、コア1をコアモールド樹脂2でモールド成型した一対のモールドコアと、コイル3をコイルモールド樹脂4でモールド成型したコイルモールドを組み立てることで成る。一方のコアモールドには、バスバー5がモールド成型によりコアモールドと一体になっている。
【0013】
コア1は、圧粉磁心、フェライト磁性体、積層鋼板、又はメタルコンポジット等を用いることができる。メタルコンポジットとは、磁性粉末と樹脂とが混練され、樹脂が硬化されて成る磁性体である。
【0014】
コア1は、
図2に示すように、一対のU字型コア部材から成る。U字型コア部材は、隙間を空けて横並びに配置された一対の脚部11と、一対の脚部11を連結するヨーク部12とを有する。コア1は、このU字型コア部材の互いの脚部11を接着剤で接合することで環状形状を形成する。コア1の脚部11にコイル3が装着される。
【0015】
なお、本実施形態では、各U字型コア部材は、互いの脚部12の間にスペーサ(不図示)を介して接合されている。スペーサは、非磁性体、セラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら2種以上の合成材又はギャップ紙を用いることができる。このように、スペーサを介してU字型コア部材を接合することで、所定幅の磁気的なギャップを与え、リアクトルのインダクタンス低下を防止する。また、スペーサを用いず、エアギャップを設けてもよいし、ギャップを設けることなく、U字型コア部材を直接接着剤で接合してもよい。
【0016】
コアモールド樹脂2は、コア1の表面の少なくとも一部を被覆する樹脂部材である。本実施形態では、コアモールド樹脂2は、ヨーク部12のみを被覆し、脚部11は被覆していない。このコアモールド樹脂2は、モールド成型によってコア1と一体になっている。樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合したものを挙げることができる。なお、樹脂に熱伝導性のフィラーを混ぜてもよい。
【0017】
コアモールド樹脂2は、ナットなどの金属部材を収容する収容部21を有する。収容部21は、コア1の背面に設けられている。コア1の背面とは、コイル3の巻軸方向と直交するヨーク部12の端面であり、脚部11と連結しているヨーク部12の端面の反対側の端面を指す。収容部21は、有底の筒形状を有する。収容部21は、金属部材を載置する載置部211と、載置部211の縁から延びる壁部212を有し、載置部211の反対側は開口している。この開口から金属部材を挿入する。
【0018】
載置部211及び壁部212によって画成されたスペースが金属部材の収容スペースとなる。この収容スペースは、金属部材の外径形状に倣った形状になっている。本実施形態では、金属部材は六角ナットなので、収容スペースも概略六角形状になっている。収容スペースは、金属部材の大きさと概略同大である。そのため、金属部材を収容部21に収容すると、収容部21の壁部212と金属部材の外面は接する。
【0019】
コアモールド樹脂2は、バスバーモールド樹脂6の位置を規制する3つの規制部を有する。具体的には、コアモールド樹脂2は、第1の規制部22、第2の規制部23、第3の規制部24を有する。第1の規制部22、第2の規制部23、第3の規制部24は、ヨーク部12の周囲に設けられている。
【0020】
第1の規制部22は、ヨーク部12の上面を被覆するコアモールド樹脂2からZ方向(上方)に向かって突出している。ヨーク部12の上面とは、リアクトル10が設置される設置面と対向するヨーク部12の端面と反対側の端面である。第1の規制部22は、幅広面221を有する。幅広面221は、コイル3の巻軸方向と直交する端面であり、巻軸方向と直交するヨーク部12の端面を被覆するコアモールド樹脂2と面一になっている。第1の規制部22の巻軸方向の厚みは、上端(第1の規制部22の突出方向先端)から下端(ヨーク部12を被覆しているコアモールド樹脂2)に向かうにつれて厚くなっている。即ち、幅広面221の反対側の端面は傾斜面222となっている。
【0021】
第1の規制部22は、2つ設けられており、隙間を介して横並びに配置されている。第1の規制部22は、バスバーモールド樹脂6の巻軸方向(X方向)の位置を規制する。
【0022】
第2の規制部23は、板状の部材である。第2の規制部23は、収容部21を形成する壁部212からZ方向に向かって突出する。第2の規制部23の巻軸方向の長さは、壁部212の延び方向と概略同一の長さである。第2の規制部23は、バスバーモールド樹脂6の脚部11の並び方向(Y方向)の位置を規制する。
【0023】
第2の規制部23は2つ設けられている。第2の規制部23a、23bは、Z方向と平行軸上において、収容部21を介して対向に配置されている。第2の規制部23aは、壁部212からヨーク部12の上面に向かって突出している。第2の規制部23aは、ヨーク部12の上面を被覆するコアモールド樹脂2の高さまで突出している。第2の規制部23bは、第2の規制部23aから180度回転した位置に設けられている。第2の規制部23bは、壁部212からヨーク部12の底面に向かって突出している。
【0024】
第3の規制部24は、板状の部材である。第3の規制部24は、収容部21を形成する壁部212からY方向に向かって突出する。第3の規制部24の巻軸方向の長さは、壁部212の延び方向と概略同一の長さである。第3の規制部24は、バスバーモールド樹脂6の巻軸方向と直交し、かつ脚部11の並び方向と直交する方向(Z方向)の位置を規制する。
【0025】
第3の規制部24は2つ設けられている。第3の規制部24a、24bは、Y方向と平行軸上において、収容部21を介して対向に配置されている。第3の規制部24aは、第2の規制部23aから右に90度回転した位置に設けられ、壁部212からY方向に突出している。第3の規制部24bは、第2の規制部23aから左に90度回転した位置(第3の規制部24aから180度回転した位置)に設けられ、壁部212からY方向に突出している。
【0026】
コイル3は、エナメルなどで絶縁被覆した1本の平角状の導電性部材31により構成される。コイル3は、巻き位置を巻軸方向にずらしながら導電性部材31を筒状に巻回して成る。本実施形態では、導電性部材31は、銅線によって構成された平角線であり、コイル3はエッジワイズコイルである。なお、コイル3の線材の種類や巻き方はこれに限らず、他の形態のものであってもよい。
【0027】
コイル3は、
図3(b)に示すように、2つ設けられており、脚部11にそれぞれ装着され、2つのコイル3は横並びに配置される。この2つのコイル3は、連結線によって連結されている。導電性部材31の端部は、バスバー5と溶接等により接合されている。
【0028】
コイルモールド樹脂4は、
図4に示すように、コイル3の内外表面の少なくとも一部を被覆する樹脂部材である。本実施形態では、コイルモールド樹脂4は、コイル3の底面以外を被覆している。このコイルモールド樹脂4は、モールド成型によってコイル3と一体になっている。樹脂の種類としては、コアモールド樹脂2と同一のものを用いることができる。
【0029】
バスバー5は、リアクトル10と外部機器との電気的な接続のための部材である。バスバー5は、例えば、銅やアルミニウムなどの板状の導電性部材である。バスバー5の一端は、コイル3を形成する導電性部材31の端部と溶接により接続される。バスバー5の他端は、外部機器との接続用の端子である。
【0030】
バスバー5の数は、これに限定されるものでないが2つ設けられている。一方のバスバー5は、コイルモールド樹脂4によってコイル3とともに一体成型され固定されている。他方のバスバー5は、収容部21に収容された金属部材の上面に載置され、バスバーモールド樹脂6によって固定されている。
【0031】
バスバーモールド樹脂6は、モールド成型によってバスバー5及び金属部材を被覆し、バスバー5及び金属部材を固定する樹脂部材である。バスバー5及び金属部材は、バスバーモールド樹脂6によって、コアモールドと一体になっている。樹脂の種類としては、コアモールド樹脂2と同一のものを用いることができる。
【0032】
バスバーモールド樹脂6は、ヨーク部12の周囲のみを被覆する。換言すれば、バスバーモールド樹脂6は、脚部11までは被覆しない。バスバーモールド樹脂6は、第1の規制部22、第2の規制部23及び第3の規制部24を被覆する範囲に拡がる。バスバーモールド樹脂6は、第1の規制部22、第2の規制部23及び第3の規制部24に引っ掛かるように覆い被さっている。ヨーク部12の上面及び背面のみという限られた範囲にのみ設けられている。バスバーモールド樹脂6は、モールド成型により形成されるゲート痕Gを有する。ケート痕Gは、第1の規制部22よりも脚部11に近い位置のヨーク部12の上面に設けられている。このゲート痕Gがモールド成型時にバスバーモールド樹脂6が注入された位置を示す。モールド成型によって形成されたバスバーモールド樹脂6は、コアモールド樹脂2と密着している。
【0033】
リアクトル10は、
図1に示すように、センサ7を備えている。センサ7は、例えば、磁気センサや温度センサなどが挙げられる。本実施形態では、センサ7は温度センサであり、リアクトル10の温度を検出する。センサ7は、コイル3間に設けられ、コイルモールド樹脂4のセンサ保持部により保持されている。
【0034】
以上のように、本実施形態のリアクトル10は、複数の脚部11と、複数の脚部11を繋ぐヨーク部12と有するコア1と、コア1に装着されるコイル3と、コア1のうち、少なくともヨーク部12の一部を被覆するコアモールド樹脂2と、コイル3と接続するバスバー5と、モールド成型することで形成されるゲート痕Gを有し、ヨーク部12の上面及び背面のみに設けられ、バスバー5を被覆するバスバーモールド樹脂6と、を備える。コアモールド樹脂2は、ヨーク部12の背面に設けられ、金属部材を収容する収容部21と、ヨーク部12の上面又は背面に設けられ、バスバーモールド樹脂6の位置を規制する規制部、即ち、バスバーモールド樹脂6の巻軸方向の位置を規制する第1の規制部22と、脚部11の並び方向の位置を規制する第2の規制部23と、巻軸方向と直交し、かつ、脚部12の並び方向と直交する方向を規制する第3の規制部24を有する。バスバーモールド樹脂6は、収容部21に収容された金属部材の上面に設けられたバスバー5とともに、第1の規制部22、第2の規制部23及び第3の規制部24を被覆している。
【0035】
このように、バスバーモールド樹脂6は、ヨーク部12の上面及び背面のみに設けられ、バスバー5及び金属部材のみを被覆し、固定する。そのため、従来のように、コイル3等の部材とともにモールド成型する場合に比べて歩留まりが良化する。つまり、仮に、バスバーモールド樹脂6によって製品不良が生じても、バスバー5や金属部材等のみを破棄すればよく、コイル3等は破棄する必要がないため、製品歩留まりが良くなる。また、狭い範囲においてバスバー5及び金属部材のみをモールド成型するので、金型も大型化・複雑化せず、コスト削減できる。
【0036】
ここで、従来のように、バスバーのみではなくコイル3等の部材も一緒にモールド成型してモールド樹脂でリアクトル全体を被覆させる場合には、各構成部材間などにアンダーカット部が多数存在する。一方、本実施形態のリアクトル10では、バスバーモールド樹脂6はヨーク部12の上面及び背面のみにしか存在していない。そこで、第1の規制部22、第2の規制部23及び第3の規制部24を設け、バスバーモールド樹脂6は、これら規制部22、23、24を被覆している。これにより、バスバーモールド樹脂6の位置は規制されるので、バスバーモールド樹脂6が収容部21の周辺のみを二次モールドであっても、コアモールド樹脂2と密着して固定される。
【0037】
また、従来においては、コアをモールド成型する際にバスバーと金属部材を一緒にモールド成型して、バスバーを固定する場合がある。この場合、バスバーの上面と金属部材の下面を金型で支える必要がある。特に、ナットの下面を支えるためには、コアなど他の構成部材を邪魔にならない箇所に設けないといけなかったためナットやバスバーの配置位置にも制限があった。
【0038】
しかし、本実施形態では、事前に金属部材を収容する収容部21を設け、金属部材の下面は収容部21で支えている。そのため、金型ではバスバー5の上面のみを押さえればよいので、収容部21を所望の位置に形成させることで、従来の場合と比べて、バスバー5の位置を自由に構成できる。また、金型で金属部材を支持する必要がないので、コアなどのリアクトル10を構成する他の部材の配置位置の自由度も高まり、リアクトル10のレイアウトの自由度も向上する。
【0039】
さらに、端子台に固定されたバスバーを別体として成形し、リアクトルに組み付けて固定する場合、金属部材やバスバーの寸法交差や組み付け時のガタツキを考慮して、端子台の固定構造にこの寸法公差やガタツキを考慮して設定する必要がある。そのため、バスバーの位置の精度が悪くなる。一方、本実施形態では、バスバー5と金属部材はバスバーモールド樹脂6によりモールド成型によって固定するので、端子台に固定されたバスバーを組み付ける場合に比べて、バスバー5の位置精度が向上する。
【0040】
また、金属部材を収容する収容部21は、ヨーク部12の背面に設けられている。これにより、ヨーク部12の上面に設けられている場合に比べて、リアクトル10を低背化させることができる。
【0041】
特に、バスバー5をヨーク部12の背面に設けたい場合、モールド成型するとき、金型の抜き方向はZ方向となるが、バスバー5や金属部材を押さえる方向はX方向となる。そのため、金属部材の下面はヨーク部12が邪魔になり押さえることが非常に難しい。しかし、本実施形態では、金属部材の下面は収容部21によって支えられるので、容易にヨーク部12の背面にバスバー5を配置することが可能となり、レイアウトの自由度が更に向上する。
【0042】
また、バスバーモールド樹脂6にはゲート痕Gが形成され、このゲート痕Gは第1の規制部23よりも脚部11に近いヨーク部12の上面に設けられている。つまり、バスバーモールド樹脂6はこのゲート痕Gの位置から注入され、ヨーク部12の背面に向かって流れていく。そのため、第1の規制部23は、バスバーモールド樹脂6の流動経路に設けられており、樹脂圧によって加圧される。
【0043】
本実施形態の第1の規制部22は傾斜面を有し、巻軸方向の厚みは下端に向かうにつれて増している。そのため、樹脂圧によって加圧されても、モールド成型時に第1の規制部22が破損したり、折れることを抑制することができる。また、第1の規制部22は傾斜面を有するので、垂直な壁の場合に比べて良好な樹脂の流動性を保つことができる。
【0044】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0045】
第1の規制部22、第2の規制部23及び第3の規制部24は、
図6(a)に示すように、一対の脚部11の間の延長領域R内に設けられていてもよい。この場合、バスバーモールド樹脂6も
図6(b)に示すように、一対の脚部11の間の延長領域R内であり、ヨーク部12の背面及び上面に設けられていてもよい。延長領域Rとは、脚部11の間を脚部11の延び方向に対して平行に延長した領域である。
【0046】
また、第1の規制部22は、ヨーク部12の上面ではなく、第2の規制部23及び第3の規制部24と同じように、ヨーク部12の背面に設けてもよい。例えば、
図7に示すように、第1の規制部22は、ヨーク部12から離れた第2の規制部23の端部から上方(Z方向)に突出させてもよい。即ち、第1の規制部22と第2の規制部23をY方向から見た時、第1規制部22が短辺、第2規制部23が長辺となるL字形状のように構成してもよい。そして、第1の規制部22、第2の規制部23及び第3の規制部24全てがヨーク部12の背面に設けられる場合、バスバーモールド樹脂6もヨーク部12の背面のみに設けてもよい。これにより、バスバーモールド樹脂6の被覆範囲を更に限定することができる。
【0047】
また、収容部21は、ヨーク部の上面に設けてもよい。この場合、第1の規制部22、第2の規制部23、第2の規制部24を収容部21の近傍に設けることが好ましい。このように構成することで、歩留まりが悪化することなく、生産効率が向上するとともに、バスバーモールド樹脂6の被覆範囲を狭くすることができるので、コストも削減される。
【符号の説明】
【0048】
10 リアクトル
1 コア
11 脚部
12 ヨーク部
2 コアモールド樹脂
21 収容部
211 載置部
212 壁部
22 第1の規制部
23 第2の規制部
24 第3の規制部
3 コイル
31 導電性部材
4 コイルモールド樹脂
5 バスバー
6 バスバーモールド樹脂
7 センサ
G ゲート痕