(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089734
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】気泡コンクリート用起泡剤および気泡コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/16 20060101AFI20230621BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20230621BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20230621BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230621BHJP
C04B 38/10 20060101ALI20230621BHJP
C04B 103/42 20060101ALN20230621BHJP
C04B 103/48 20060101ALN20230621BHJP
【FI】
C04B24/16
C04B24/12 A
C04B24/02
C04B28/02
C04B38/10 B
C04B103:42
C04B103:48
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204426
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594126735
【氏名又は名称】麻生フオームクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】篠原 明
(72)【発明者】
【氏名】大川 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐治 和彦
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB15
4G112PB20
4G112PB22
(57)【要約】
【課題】低温時の流動性に優れた気泡コンクリートスラリーを調製できる、気泡コンクリート用起泡剤の提供。
【解決手段】R1O(AO)mSO3
-M+[R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基、AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基、mはAOの平均繰り返し数を表し0~10の数、M+は対カチオンを表しアルカリ金属イオン、アンモニウム、プロトン化したアミン、又はプロトン化したアルカノールアミン]で表される化合物(A)と、両性界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上(B)と、炭素数8~20の脂肪族炭化水素基を有するアルコール(C)と、R2O(CH2CH2O)pH[R2は炭素数1~8の炭化水素基、pはオキシエチレン基の繰り返し数であり1~3の整数]で表される化合物(D)を含有し、A/Bの質量比が1~6である、気泡コンクリート用起泡剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:下記一般式(I)で表される化合物と、
(B)成分:両性界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上と、
(C)成分:炭素数8~20の脂肪族炭化水素基を有するアルコールと、
(D)成分:下記一般式(II)で表される化合物と、を含有し、
前記(B)成分の含有量に対する、前記(A)成分の含有量の質量比を表すA/Bが1~6である、気泡コンクリート用起泡剤。
R1O(AO)mSO3
-M+ ・・・(I)
[式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、mはAOの平均繰り返し数を表し0~10の数であり、M+は対カチオンを表しアルカリ金属イオン、アンモニウム、プロトン化したアミン、又はプロトン化したアルカノールアミンである。]
R2O(CH2CH2O)pH ・・・(II)
[式中、R2は炭素数1~8の炭化水素基であり、pはオキシエチレン基の繰り返し数であり1~3の整数を表す。]
【請求項2】
請求項1に記載の気泡コンクリート用起泡剤を含む発泡液を泡立てて気泡群を得て、前記気泡群と水硬性スラリーとを混合して気泡コンクリートスラリーを得て、前記気泡コンクリートスラリーを硬化して気泡コンクリートを得る、気泡コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡コンクリート用起泡剤、及び気泡コンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気泡コンクリートは、セメントミルク、モルタル等の水硬性スラリーに、気泡を混合した気泡コンクリートスラリーを硬化して得られる軽量な土木建築材料であり、盛土や裏込め材などに広く使用されている。
気泡コンクリートスラリーに要求される特性の一つに高流動性があり、起泡剤の組成の工夫によって流動性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭58-11382号公報
【特許文献2】特開2018-177618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気泡コンクリートスラリーは、スラリー調製時に使用する水の温度が低い場合など、低温時に流動性が低下しやすく、その結果、取り扱い性が悪くなり作業性が低下する場合がある。従来の起泡剤では低温時の流動性低下を十分に抑制できず、改善が求められる。
本発明は、低温時の流動性に優れた気泡コンクリートスラリーを調製できる、気泡コンクリート用起泡剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1](A)成分:下記一般式(I)で表される化合物と、
(B)成分:両性界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上と、
(C)成分:炭素数8~20の脂肪族炭化水素基を有するアルコールと、
(D)成分:下記一般式(II)で表される化合物と、を含有し、
前記(B)成分の含有量に対する、前記(A)成分の含有量の質量比を表すA/Bが1~6である、気泡コンクリート用起泡剤。
R1O(AO)mSO3
-M+ ・・・(I)
[式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、mはAOの平均繰り返し数を表し0~10の数であり、M+は対カチオンを表しアルカリ金属イオン、アンモニウム、プロトン化したアミン、又はプロトン化したアルカノールアミンである。]
R2O(CH2CH2O)pH ・・・(II)
[式中、R2は炭素数1~8の炭化水素基であり、pはオキシエチレン基の繰り返し数であり1~3の整数を表す。]
【0006】
[2]前記[1]の気泡コンクリート用起泡剤を含む発泡液を泡立てて気泡群を得て、前記気泡群と水硬性スラリーとを混合して気泡コンクリートスラリーを得て、前記気泡コンクリートスラリーを硬化して気泡コンクリートを得る、気泡コンクリートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の気泡コンクリート用起泡剤によれば、低温時の流動性に優れる気泡コンクリートスラリーを調製できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪気泡コンクリート用起泡剤≫
本実施形態の気泡コンクリート用起泡剤(以下、単に起泡剤ということがある)は、(A)~(D)成分を含有する液体の組成物である。
本明細書において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は、下記一般式(I)で表される化合物であり、アニオン界面活性剤である。(A)成分は気泡の生成に寄与する。(A)成分と(B)成分との相互作用によって、起泡性及び気泡のきめ細かさが向上し、低温時における気泡コンクリートスラリーの流動性が向上する。
R1O(AO)mSO3
-M+ ・・・(I)
式(I)において、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基(芳香族性を有さない炭化水素基)であり、AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、mはAOの平均繰り返し数を表した0~10の数であり、M+は対カチオンを表しアルカリ金属イオン、アンモニウム、プロトン化したアミン、又はプロトン化したアルカノールアミンである。
(A)成分は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
R1としての脂肪族炭化水素基は、鎖式炭化水素基でもよく、環式炭化水素基でもよい。鎖式炭化水素基が好ましい。
R1としての脂肪族炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。飽和炭化水素基が好ましい。
形成する気泡の強度に優れる点で、R1は直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
R1の炭素数は8~20であり、9~16が好ましく、10~14がより好ましい。
【0011】
AOは、オキシエチレン基(以下「EO」とも記す。)でもよく、オキシプロピレン基(以下「PO」とも記す。)でもよく、(AO)mがEOとPOの両方を有してもよい。両方を有する場合、(AO)mを構成するEOとPOの結合鎖は、ブロック状でもよくランダム状でもよい。
1種類の(A)成分を使用する場合、mの値は0~10であり、0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
2種以上の(A)成分を併用する場合、(A)成分の全体におけるmの平均値は0~10であり、0~8が好ましく、0.2~4がより好ましい。
【0012】
M+は、R1O(AO)mSO3
-と塩を形成する対カチオンである。
対カチオンとなるアルカリ金属としては、ナトリウムが好ましい。
対カチオンとなるアミンとしては、第1級~第3級アミンが挙げられる。
対カチオンとなるアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
起泡剤の低温安定性に優れる点で、M+は、アルカリ金属イオン、又はプロトン化したアルカノールアミンが好ましい。
【0013】
(A)成分として、mがゼロである(A1)成分の1種以上と、mが1以上である(A2)成分の1種以上とを併用してもよい。
(A1)成分はアルキル硫酸エステル塩であり、例えばラウリル硫酸塩、テトラデシル硫酸塩が好ましい。(A1)成分の塩としてはナトリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が好ましい。
(A2)成分はアルキルエーテル硫酸エステル塩であり、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンテトラデシル硫酸塩が好ましい。(A2)成分におけるEOの平均繰り返し数は1~8が好ましく、2~4がより好ましい。(A2)成分の塩としてはナトリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が好ましい。
(A1)成分と(A2)成分を併用する場合、(A1)成分と(A2)成分の合計に対して、(A1)成分の割合が50~80質量%であることが好ましく、70~77質量%であることがより好ましい。(A1)成分と(A2)成分とのバランスが上記の範囲内であるときめ細かい気泡を得ることができる。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分は、両性界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上である。(B)成分は(A)成分との相互作用によって、起泡性及び気泡のきめ細かさの向上に寄与し、低温時における気泡コンクリートスラリーの流動性の向上に寄与する。
【0015】
両性界面活性剤は、分子中の親水基にアニオン基とカチオン基の両方を持つ界面活性剤である。
両性界面活性剤としては、ベタイン型、イミダゾリン型、アルキルアミノスルホン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルアミドカルボン酸型、アミドアミノ酸型、リン酸型等が挙げられる。
気泡のきめ細かさの点でベタイン型が好ましく、カルボン酸塩型のアニオン部分を有するカルボキシベタイン型両性界面活性剤がより好ましい。
【0016】
カルボキシベタイン型両性界面活性剤は、アルキルアミドベタイン型、アルキルベタイン型、イミダゾリン型等が挙げられる。
アルキルアミドベタイン型は、脂肪酸とジアミン化合物とを反応させて得られる脂肪酸アミドアミンに由来するアミド基を有する。脂肪酸の炭素数は10~18が好ましく、12~16がより好ましい。具体例としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)等が挙げられる。
アルキルベタイン型は、カチオン性部位として第4級アンモニウム構造、アニオン性部位としてカルボン酸構造等を有する。脂肪酸の炭素数は10~18が好ましく、12~16がより好ましい。具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
イミダゾリン型は、イミダゾリン環が開裂した2級アミド型化合物、及び3級アミド型化合物を含む。具体例としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
これらのうちアルキルアミドベタイン型のカルボキシベタイン型両性活性剤がより好ましい。
【0017】
アミンオキシド型界面活性剤としては、ドデシルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0018】
(B)成分として、両性界面活性剤のみを1種以上用いてもよいし、アミンオキシド型界面活性剤のみを1種以上用いてもよいし、両方を併用してもよい。
(B)成分が、少なくとも、ベタイン型両性界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0019】
<(C)成分>
(C)成分は、炭素数8~20の脂肪族炭化水素基(芳香族性を有さない炭化水素基)を有するアルコール(脂肪族アルコール)である。
(C)成分は、(A)成分及び(B)成分との相互作用により気泡界面における(A)成分及び(B)成分の分子の配列を密にし、気泡粘度を向上させることで消泡しにくい強固な気泡の形成に寄与する。
(C)成分は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(C)成分の脂肪族炭化水素基は、鎖式炭化水素基でもよく、環式炭化水素基でもよい。鎖式炭化水素は直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。形成する気泡の強度に優れる点で直鎖状が好ましい。
(C)成分の脂肪族炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。
(C)成分は1価アルコールが好ましい。
(C)成分は第一級アルコール又は第二級アルコールが好ましい。第一級アルコールがより好ましい。
(C)成分の脂肪族炭化水素基の炭素数は8~16が好ましく、10~14がより好ましい。
【0021】
(C)成分として、例えば、炭素数8~20の鎖式飽和1価アルコール、炭素数8~20の鎖式不飽和1価アルコール、炭素数8~20の環式飽和1価アルコールが挙げられる。
第一級の鎖式飽和1価アルコールとしては、オクチルアルコール(C8H18O)、ノニルアルコール(C9H20O)、デシルアルコール(C10H22O)、ウンデシルアルコール(C11H24O)、ラウリルアルコール(C12H26O)、トリデシルアルコール(C13H28O)、ミリスチルアルコール(C14H30O)、ペンタデシルアルコール(C15H32O)、セチルアルコール(C16H34O)、ステアリルアルコール(C18H38O)、ノナデシルアルコール(C19H40O)等が挙げられる。
第一級の鎖式不飽和1価アルコールとしては、オクテニルアルコール(C8H16O)、デセニルアルコール(C10H20O)、ドデセニルアルコール(C12H24O)、トリデセニルアルコール(C13H26O)、ペンタデセニルアルコール(C15H30O)、オレイルアルコール(C18H36O)、ガドレイルアルコール(C20H40O)、リノレイルアルコール(C18H34O)等が挙げられる。
第一級の環式飽和1価アルコールとしては、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
【0022】
<(D)成分>
(D)成分は、下記一般式(II)で表される化合物である。(D)成分はグリコールエーテル系の溶剤である。(D)成分は、起泡剤自体の液安定性に寄与し、低温下においても、ゲル状の凝集、白濁、沈降等を防止する。
R2O(CH2CH2O)pH ・・・(II)
式(II)において、R2は炭素数1~8の炭化水素基であり、pはオキシエチレン基の繰り返し数であり1~3の整数を表す。
(D)成分は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
R2としての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよい。
R2としての脂肪族炭化水素基は鎖式炭化水素基でもよく、環式炭化水素基でもよい。鎖式炭化水素は直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。
R2としての脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよい。
R2としては、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はフェニル基が好ましい。
【0024】
(D)成分としては、pが1であるセロソルブ類、pが2であるカルビトール類、pが3であるトリグリコール類が挙げられる。
例えば、pが1であり、R2がアルキル基であるエチレングリコールモノアルキルエーテル、pが2であり、R2がアルキル基であるジエチレングリコールモノアルキルエーテル、pが3であり、R2がアルキル基であるトリエチレングリコールモノアルキルエーテル、pが1であり、R2がフェニル基であるエチレングリコールモノフェニルエーテル、pが2であり、R2がフェニル基であるジエチレングリコールモノフェニルエーテル、pが3であり、R2がフェニル基であるトリエチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。
起泡剤の液安定性に優れる点で、pが1、2又は3であり、R2がアルキル基である化合物がより好ましい。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。低温時の液安定性に優れる点で、n-ブチル基又はi-ブチル基が好ましい。
【0025】
<水>
起泡剤は水を含むことが好ましい。起泡剤の総質量に対する水の含有量は、多すぎるとコスト面から実用性に乏しく、少なすぎると液安定性を損なうため、これらの不都合が生じない範囲で設定することが好ましい。例えば30~70質量%程度が好ましく、40~50質量%程度がさらに好ましい。
【0026】
<他の任意成分>
起泡剤は、(A)~(D)成分及び水以外の他の任意成分を含んでもよい。
他の任意成分は起泡性を阻害せず水に溶解する成分が好ましく、例えば気泡の安定性向上を目的として添加されるポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0027】
<含有量>
起泡剤において、(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比を表すA/Bは1~6であり、2~5が好ましく、3~4がより好ましい。A/Bが上記の範囲内であると気泡の緻密性に優れ、低温時における気泡コンクリートスラリーの十分な流動性が得られやすい。
【0028】
(A)~(D)成分の合計に対して、(A)成分と(B)成分の合計の含有量は40~70質量%が好ましく、45~65質量%がより好ましく、50~60質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、低温時における気泡コンクリートスラリーの流動性の向上効果に優れる。上限値以下であると起泡剤の液安定性に優れる。
(A)~(D)成分の合計に対して、(C)成分の含有量は2~15質量%が好ましく、2~10質量%がより好ましく、4~8質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると(C)成分の添加効果が十分に得られやすい。上限値以下であると起泡剤の液安定性に優れる。
(A)~(D)成分の合計に対して、(D)成分の含有量は30~55質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると(D)成分の添加効果が十分に得られやすい。上限値以下であると気泡強度に優れる。
(A)~(D)成分の合計に対して、他の任意成分の合計の含有量は0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましい。
【0029】
本実施形態の起泡剤は、(A)~(D)成分と、水と、必要に応じた他の任意成分とを均一に混合して得られる。
本実施形態の起泡剤は、気泡コンクリートの製造に用いられる。
本実施形態の起泡剤は、適宜水で希釈して使用することが好ましい。希釈に使用する水(希釈水)の量は、例えば(A)~(D)成分の総質量に対して、1~200倍量が好ましく、50~100倍量がより好ましい。
【0030】
≪気泡コンクリートの製造方法≫
本実施形態の気泡コンクリートの製造方法は、本実施形態の起泡剤を含む発泡液を泡立てて気泡群を得て(起泡工程)、得られた気泡群と水硬性スラリーとを混合して気泡コンクリートスラリーを得て(混合工程)、得られた気泡コンクリートスラリーを硬化して気泡コンクリートを得る(硬化工程)方法である。
【0031】
[起泡工程]
まず、本実施形態の起泡剤を水(希釈水)で希釈して発泡液を調製する。
発泡液の総質量に対して(A)~(D)成分の合計の含有量は0.6~2.7質量%が好ましく、0.8~2.0質量%がより好ましく、0.9~1.5質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると気泡強度に優れ、上限値以下であると実用上のコスト性に優れる。
希釈水の温度は0~30℃が好ましい。本実施形態の起泡剤を用いることによる効果が大きい点では、0~20℃がより好ましい。
起泡剤と希釈水との混合は、例えばダイヤフラムポンプを用いて行うことができる。
【0032】
次いで、発泡液を泡立てて空気を含有させ気泡群を形成する。発泡液と空気とを二流体混合する方法で気泡群を形成する。二流体混合は、例えばコンプレッサーで生じた圧縮空気と、ダイヤフラムポンプで圧送した発泡液を、筒状製造装置内で合流させることで行うことができる。
泡立てに使用する発泡液の温度は0~30℃が好ましい。本実施形態の起泡剤を用いることによる効果が大きい点では0~20℃がより好ましい。
泡立てに使用する空気の温度は0~30℃が好ましい。本実施形態の起泡剤を用いることによる効果が大きい点では0~20℃がより好ましい。
【0033】
得られる気泡群は発泡液と空気とからなる。発泡液を泡立てる際の発泡倍率は5~50 倍が好ましく、10~30倍がより好ましい。
ここで、発泡倍率は下記の方法で得られる値である。
気泡群の体積を、その気泡群を得るために要した発泡液の体積で除した値を発泡倍率とした。例えば、泡立て前の発泡液の体積をV1、得られた気泡群(発泡液と空気)の体積をV2とするとき、発泡倍率(単位:倍)=V2/V1である。
得られる気泡群の密度は0.02~0.20g/cm3が好ましく、0.03~0.10g/cm3がより好ましい。
【0034】
[混合工程]
続いて、得られた気泡群と、予め調製した水硬性スラリーとを混錬して気泡コンクリートスラリーを得る。
水硬性スラリーの例としては、セメントと水(練混ぜ水)を混練したセメントミルク、セメントと水と骨材を混錬したモルタル等が挙げられる。
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等が挙げられる。
水硬性スラリーは、さらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等の混和材;AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等の減水剤等、公知の添加剤を含むことができる。
【0035】
水硬性スラリーと気泡群の混練は、例えばラインミキサーを用いて行うことができる。
水硬性スラリーと気泡群の混合比率は、気泡コンクリートスラリーにおける比重(空気量)が予め設定された設計値となるように、水硬性スラリーの比重及び気泡群の比重(空気量)に応じて設計できる。
気泡コンクリートスラリーの総体積に対する空気量は40~80体積%が好ましく、50~70体積%がより好ましい。
気泡コンクリートスラリーにおける比重(空気量)は、得ようとする硬化物(気泡コンクリート)の比重に応じて設定できる。
【0036】
[硬化工程]
気泡コンクリートスラリーの硬化方法は公知の方法を用いることができる。例えば、気泡コンクリートスラリーを、所定の型枠内に打設した後、又は所定の空間部に充填した後、気乾養生、湿空養生、水中養生、加熱促進養生(蒸気養生、オートクレーブ養生)等の方法で養生して、硬化することができる。
このようにして、水硬性スラリーの硬化物中に、気泡群に由来する独立孔が存在する多孔質の硬化物(気泡コンクリート)が得られる。
【実施例0037】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0038】
<使用原料>
[(A)成分]
(A1-1)ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン株式会社製品名「Texapon OC-P」、式(I)において、R1が炭素数12の直鎖状アルキル基、mがゼロ、M+がナトリウムイオンである化合物)。
(A1-2)ラウリル硫酸トリエタノールアミン(泰光油脂化学工業株式会社製品名「タイポールNLT-42」、式(I)において、R1が炭素数12の直鎖状アルキル基、mがゼロ、M+がプロトン化したトリエタノールアミンである化合物)。
(A2-1)ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(新日本理化株式会社製品名「シノリンSPE-1250」、式(I)において、R1が炭素数12の直鎖状アルキル基、AOがEO、mが2、M+がナトリウムイオンである化合物)。
(A2-2)ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(新日本理化株式会社製品名「シノリンSPE-1350」、式(I)において、R1が炭素数12の直鎖状アルキル基、AOがEO、mが3、M+がナトリウムイオンである化合物)。
【0039】
[(B)成分]
(B-1)ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製品名「エナジコールL-30B」)。
(B-2)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製品名「エナジコールC-30B」)。
(B-3)ヤシアルキルジメチルアミンオキシド(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製品名「カデナックスDMC-W」)。
【0040】
[(C)成分]
(C-1)ヤシアルコール(新日本理化株式会社製品名「コノール1275」、ラウリルアルコールとミリスチルアルコールを含む混合物)。
(C-2)ラウリルアルコール(新日本理化株式会社製品名「コノール20P」)。
(C-3)デシルアルコール(新日本理化株式会社製品名「コノール1098」)。
(C-4)オクチルアルコール(新日本理化株式会社製品名「コノール10WS」)。
【0041】
[(D)成分]
(D-1)イソブチルグリコール(日本乳化剤株式会社製、式(II)においてpが1であり、R2がi-ブチル基である化合物)。
(D-2)ブチルグリコール(日本乳化剤株式会社製、式(II)においてpが1であり、R2がn-ブチル基である化合物)。
(D-3)ブチルジグリコール(日本乳化剤株式会社製、式(II)においてpが2であり、R2がn-ブチル基である化合物)。
【0042】
<実施例1~8、比較例1~4>
表1に示す組成に従い、(A)~(D)成分及び水を混合して、気泡コンクリート用起泡剤を調製した。
なお、表中の配合量は純分換算値である。表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。
各例で得られた起泡剤を用い、下記の方法で、低温時における気泡コンクリートスラリーの流動性、及びブリーディング率を評価した。その結果を表に示す。
ブリーディングとは、コンクリートスラリーを打設した後、コンクリートスラリー内の水が滲み出してくる現象である。ブリーディングする水が少ない方が好ましい。
【0043】
表において、(A+B)/(A~D)は、(A)~(D)成分の合計に対する(A)成分と(B)成分の合計の含有量である。C/(A~D)は、(A)~(D)成分の合計に対する(C)成分の含有量である。D/(A~D)は、(A)~(D)成分の合計に対する(D)成分の含有量である。
【0044】
[低温時の流動性の評価方法]
(試料の調製)
10℃に温度調整した水道水(希釈水)を用いて、起泡剤を60倍に希釈し発泡液を得た。得られた発泡液(10℃)と空気(20℃)の二流体混合により発泡液を泡立て、発泡倍率20倍の気泡群を得た。
これとは別に、10℃に温度調整した水道水(練混ぜ水)1150gと、セメント(高炉セメントB種)1350gとを混錬し、セメントミルク(10℃)を調製した。
得られたセメントミルク2500gに、上記で得た気泡群175gを加え、1分間混練して気泡コンクリートスラリーを得た。
【0045】
(流動性試験)
上記で得た気泡コンクリートスラリーを容積500mLのカップ(開口部の内径80mm)に充填し、直ちに(1秒以内)カップの開口部が下向きとなるように180°回転させた。カップ内の気泡コンクリートスラリーが下方に落ちる様子を目視で観察し、下記の基準で流動性を評価した。
(評価基準)
○(流動性が良好):気泡コンクリートスラリーが連続して流れ落ちた。
×(流動性が不良):気泡コンクリートスラリーが断続的に落ちた。
【0046】
[低温時のブリーディング率の評価方法]
(試料の調整)
上記[低温時の流動性の評価方法]の(試料の調製)と同様にして気泡コンクリートスラリーを得た。
【0047】
(ブリーディング率測定)
上記で得た気泡コンクリートスラリーを長さ550mm、内径50mm、厚さ0.05mmのポリエチレン袋へ、高さ200mmになるまで充填した。その後、袋を密封して吊るし、室温下で静置した。24時間後、袋の底部に溜まった排水量(24時間後排水体積)を測定した。下記数式に示すように、24時間後排水体積を、24時間後気泡コンクリートスラリーの体積で除して、ブリーディング率(単位:体積%)を算出した。
ブリーディング率=24時間後排水体積/24時間後気泡コンクリートスラリー体積×100
(評価基準)
〇:ブリーディング率が2%未満。
△:ブリーディング率が2%以上、5%未満。
×:ブリーディング率が5%以上。
【0048】
【0049】
表1の結果に示されるように、実施例1~8の起泡剤を用いた気泡コンクリートスラリーは、低温時の流動性に優れていた。
一方、起泡剤が(B)成分を含まない比較例1、2、及びA/Bの値が本発明の範囲外である比較例3、4は、低温時の流動性が劣った。