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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089735
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】逆浸透膜装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/12 20060101AFI20230621BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20230621BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B01D61/12
B01D61/08
F04B49/06 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204427
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 善弘
(72)【発明者】
【氏名】織田 亨
(72)【発明者】
【氏名】中島 叡▲祥▼
【テーマコード(参考)】
3H145
4D006
【Fターム(参考)】
3H145AA03
3H145AA12
3H145AA22
3H145AA42
3H145BA03
3H145BA07
3H145BA38
3H145DA01
3H145DA46
3H145EA04
3H145EA34
3H145EA42
4D006GA03
4D006HA01
4D006HA41
4D006JA53A
4D006JA63A
4D006JA67Z
4D006JA68A
4D006JA71
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006KE28Q
4D006KE30Q
4D006MA01
4D006MA03
4D006MC09
4D006MC18
4D006MC54
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB05
4D006PB08
4D006PB20
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】騒音を抑制することができる逆浸透膜装置を提供する。
【解決手段】逆浸透膜装置1は、逆浸透膜槽2、往復動式ポンプ3及び駆動機構5を備え、往復動式ポンプ3は、逆浸透膜槽2の被処理液導入口23及び濃縮液導出口24と接続される第一ポンプ室33及び第二ポンプ室34と往復移動が可能なピストン31とを備え、駆動機構5は、モータ52の回転駆動力によりロッド51が往復移動しかつロッド51が往復動式ポンプ3のピストン31に往復移動を伝達するように連結されている電動シリンダ50と、モータ52の回転速度を制御する制御手段53とを備え、制御手段53は、ピストン31の往方向の移動及び復方向の移動の切換え時にピストン31が減速及び加速の少なくとも一方を行いながらそれまでと逆方向への移動を行うように、モータ52の回転速度を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を逆浸透膜により透過液と濃縮液とに分離する逆浸透膜槽と、
被処理液を昇圧して前記逆浸透膜槽に供給する往復動式ポンプと、
前記往復動式ポンプを駆動する駆動機構と、
を備えた逆浸透膜装置であって、
前記往復動式ポンプは、
前記逆浸透膜槽の被処理液導入口と接続される第一ポンプ室と、
前記逆浸透膜槽の濃縮液導出口と接続される第二ポンプ室と、
往復移動が可能な少なくとも一つのピストンであって、往方向への移動により第一ポンプ室の体積を減少させかつ第二ポンプ室の体積を増加させ、復方向への移動により第一ポンプ室の体積を増加させかつ第二ポンプ室の体積を減少させるピストンと、
を備え、
前記駆動機構は、
モータの回転駆動力によりロッドが往復移動する電動シリンダであって、前記ロッドが前記往復動式ポンプの前記ピストンに往復移動を伝達するように連結されている電動シリンダと、
前記モータの回転速度を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ピストンの往方向の移動及び復方向の移動の切換え時に前記ピストンが減速及び加速の少なくとも一方を行いながらそれまでとは逆方向への移動を行うように、前記モータの回転速度を制御する、逆浸透膜装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ピストンが往方向の移動及び復方向の移動のそれぞれの終了位置でそれまでとは逆方向に移動を開始するときに、前記ピストンが次第に加速して移動速度が所定時間をかけて最高速度まで上がるように、前記モータの回転速度を制御する、請求項1に記載の逆浸透膜装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ピストンが往方向の移動及び復方向の移動のそれぞれの終了位置で移動を停止するときに、前記終了位置の手前から前記ピストンが次第に減速して移動速度が前記終了位置まで所定時間をかけてゼロに下がるように、前記モータの回転速度を制御する、請求項1又は2に記載の逆浸透膜装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記モータの回転速度を変化させるインバータと、前記モータの回転速度を制御するための制御信号を前記インバータに出力するコントローラと、を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の逆浸透膜装置。
【請求項5】
前記モータは、前記電動シリンダの上方に配置されており、前記モータの出力軸に駆動プーリが固定されており、
前記電動シリンダは、入力軸が突き出ており、前記入力軸に従動プーリが固定されており、
前記駆動プーリ及び前記従動プーリにはエンドレスベルトが巻き付けられており、前記モータの回転駆動力は前記駆動プーリ、前記エンドレスベルト及び前記従動プーリを介して前記電動シリンダに伝達される、請求項1から4のいずれか一項に記載の逆浸透膜装置。
【請求項6】
前記往復動式ポンプの前記第一ポンプ室と前記第二ポンプ室とが前記電動シリンダの両端に設けられており、前記第一ポンプ室及び前記第二ポンプ室のそれぞれが往復移動が可能な前記ピストンを備えており、
一対の前記ピストンは前記電動シリンダの前記ロッドの両端に固定されており、一対の前記ピストンは同じ方向に往復移動する、請求項1から5のいずれか一項に記載の逆浸透膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被処理液を逆浸透膜に高圧で供給して、逆浸透膜を通過する透過液と逆浸透膜を通過しない濃縮液とに分離する処理を行う逆浸透膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を使用して海水から淡水を得ることが従来から行われている。図5に示す従来の逆浸透膜装置100は、逆浸透膜111を内部に備える逆浸透膜槽110、往復動式ポンプ120、往復動式ポンプ120を駆動する駆動機構130、及び切換弁機構150を備えている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
往復動式ポンプ120は、シリンダ121、及びシリンダ121内を往復移動するピストン122を備える。シリンダ121内はピストン122を間に挟んで二つのポンプ室123,124に分けられており、第一ポンプ室123が逆浸透膜槽110の液供給口112に被処理液導入流路によって接続され、第二ポンプ室124が逆浸透膜槽110の液排出口113に濃縮液導出流路によって切換弁機構150を介した状態で接続されている。駆動機構130は、油圧シリンダからなる。
【0004】
従来の逆浸透膜装置100は、駆動機構130によりピストン122がシリンダ121内を一方向(図5では左方向)に移動すると、第一ポンプ室123内の被処理液が逆浸透膜槽110に高圧で供給されるとともに、逆浸透膜槽110から排出された濃縮液が切換弁機構150を介して第二ポンプ室124内に導入され、ピストン122がシリンダ121内を逆方向(図5では右方向)に移動すると、第二ポンプ室124内の濃縮液が切換弁機構150を通って排出されるとともに、新たな被処理液が第一ポンプ室123内に供給されるように、構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7-49096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
駆動機構130を構成する油圧シリンダは、作動油を貯留する作動油タンク131、作動油タンク131内の作動油を圧送する油圧ポンプ132、作動油切換弁133、シリンダ134及びピストン135を備える。油圧シリンダのピストン135は、そのロッド136が往復動式ポンプ120のピストン122のロッド125に継手137を介して連結されている。油圧シリンダのシリンダ134内はピストン135を間に挟んで二つのシリンダ室138,139に分けられており、二つのシリンダ室138,139には作動油タンク131との間で作動油の供給・排出を行う作動油流路が作動油切換弁133を介して接続されている。
【0007】
作動油切換弁133の駆動により、油圧シリンダの第一シリンダ室138と作動油タンク131が作動油供給流路で接続され、油圧シリンダの第二シリンダ室139と作動油タンク131が作動油排出流路で接続されると、第一シリンダ室138内に作動油タンク131から高圧で作動油が供給されて、ピストン135がシリンダ134内を一方向(図5では左方向)に移動し、これに連動して、往復動式ポンプ120のピストン122がシリンダ121内を一方向(図5では左方向)に移動する。このとき、油圧シリンダの第二シリンダ室139内の作動油は作動油タンク131に排出される。
【0008】
油圧シリンダのピストン135の往復移動は、リミットスイッチ140,141で監視されており、ピストン135の上述した一方向(図5では左方向)の移動がリミットスイッチ140で検知されると、作動油切換弁133が駆動し、油圧シリンダの第一シリンダ室138が作動油タンク131と作動油排出流路で接続され、油圧シリンダの第二シリンダ室139が作動油タンク131と作動油供給流路で接続される。これにより、油圧シリンダの第二シリンダ室139内に作動油タンク131から高圧で作動油が供給されて、ピストン135がシリンダ134内を逆方向(図5では右方向)に移動し、これに連動して、往復動式ポンプ120のピストン122がシリンダ121内を逆方向(図5では右方向)に移動する。このとき、油圧シリンダの第一シリンダ室138内の作動油は作動油タンク131に排出される。そして、ピストン135の上述した逆方向(図5では右方向)の移動がリミットスイッチ141で検知されると、作動油切換弁133が駆動し、再び油圧シリンダの第一シリンダ室138と作動油タンク131が作動油供給流路で接続され、油圧シリンダの第二シリンダ室139と作動油タンク131が作動油排出流路で接続されて、再びピストン135がシリンダ134内を一方向(図5では左方向)に移動し、これに連動して、ピストン122がシリンダ121内を一方向(図5では左方向)に移動する。
【0009】
従来の逆浸透膜装置は、駆動機構130に油圧シリンダが用いられており、油圧シリンダの第一シリンダ室138及び第二シリンダ室139への作動油の供給を切り換える作動油切換弁133が切換え動作のたびに振動して音を発する。また、往復動式ポンプ120や油圧シリンダにおいてもそれぞれのピストン122,135が作動油切換弁133の切換え時に移動方向が瞬間的に逆方向になることで振動が生じ、騒音が発生する。さらに、往復動式ポンプ120のロッド125と駆動機構130の油圧シリンダのロッド136との連結部においては、作動油切換弁133の切換え時に瞬間的に高圧負荷がかかるため、継手137や各ロッド125,136が損傷する可能性がある。
【0010】
本開示は、上記課題を解決することができる逆浸透膜装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、被処理液を逆浸透膜により透過液と濃縮液とに分離する逆浸透膜槽と、被処理液を昇圧して前記逆浸透膜槽に供給する往復動式ポンプと、前記往復動式ポンプを駆動する駆動機構と、を備えた逆浸透膜装置に関する。本開示の逆浸透膜装置は、前記往復動式ポンプは、前記逆浸透膜槽の被処理液導入口と接続される第一ポンプ室と、前記逆浸透膜槽の濃縮液導出口と接続される第二ポンプ室と、往復移動が可能な少なくとも一つのピストンであって、往方向への移動により第一ポンプ室の体積を減少させかつ第二ポンプ室の体積を増加させ、復方向への移動により第一ポンプ室の体積を増加させかつ第二ポンプ室の体積を減少させるピストンと、を備え、前記駆動機構は、モータの回転駆動力によりロッドが往復移動する電動シリンダであって、前記ロッドが前記往復動式ポンプの前記ピストンに往復移動を伝達するように連結されている電動シリンダと、前記モータの回転速度を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ピストンの往方向の移動及び復方向の移動の切換え時に前記ピストンが減速及び加速の少なくとも一方を行いながらそれまでとは逆方向への移動を行うように、前記モータの回転速度を制御する、ことを特徴とする。
【0012】
本開示の逆浸透膜装置において好ましくは、前記制御手段は、前記ピストンが往方向の移動及び復方向の移動のそれぞれの終了位置でそれまでとは逆方向に移動を開始するときに、前記ピストンが次第に加速して移動速度が所定時間をかけて最高速度まで上がるように、前記モータの回転速度を制御する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本開示の逆浸透膜装置において好ましくは、前記制御手段は、前記ピストンが往方向の移動及び復方向の移動のそれぞれの終了位置に到達して往方向の移動及び復方向の移動を停止するときに、前記終了位置の手前から前記ピストンが次第に減速して移動速度が前記終了位置まで所定時間をかけてゼロに下がるように、前記モータの回転速度を制御する、ことを特徴とするように構成することができる。
【0014】
また、本開示の逆浸透膜装置において好ましくは、前記制御手段は、前記ピストンが往方向の移動及び復方向の移動のそれぞれの終了位置に到達して往方向の移動及び復方向の移動を停止した後、所定時間をあけてそれまでとは逆方向への移動を開始するように、前記モータの回転速度を制御する、ことを特徴とするように構成することができる。
【0015】
また、本開示の逆浸透膜装置において好ましくは、前記制御手段は、前記モータの回転速度を変化させるインバータと、前記モータの回転速度を制御するための制御信号を前記インバータに出力するコントローラと、を備える、ことを特徴とするように構成することができる。
【0016】
また、本開示の逆浸透膜装置において好ましくは、前記モータは、前記電動シリンダの上方に配置されており、前記モータの出力軸に駆動プーリが固定されており、前記電動シリンダは、入力軸が突き出ており、前記入力軸に従動プーリが固定されており、前記駆動プーリ及び前記従動プーリにはエンドレスベルトが巻き付けられており、前記モータの回転駆動力は前記駆動プーリ、前記エンドレスベルト及び前記従動プーリを介して前記電動シリンダに伝達される、ことを特徴とするように構成することができる。
【0017】
また、本開示の逆浸透膜装置において好ましくは、前記往復動式ポンプの前記第一ポンプ室と前記第二ポンプ室とが前記電動シリンダの両端に設けられており、前記第一ポンプ室及び前記第二ポンプ室のそれぞれが往復移動が可能な前記ピストンを備えており、一対の前記ピストンは前記電動シリンダの前記ロッドの両端に固定されており、一対の前記ピストンは同じ方向に往復移動する、ことを特徴とするように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の逆浸透膜装置によれば、騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の実施形態の逆浸透膜装置の概略構成図である。
図2】本開示の変形例の逆浸透膜装置の概略構成図である。
図3】本開示の変形例の逆浸透膜装置の概略構成図である。
図4】本開示の変形例の逆浸透膜装置の概略構成図である。
図5】従来例の逆浸透膜装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の逆浸透膜装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本開示の一実施形態の逆浸透膜装置1の概略構成を示す。逆浸透膜装置1は、例えば海水を濃縮して淡水と濃縮海水を生成する用途で用いることができる。なお、逆浸透膜装置1の用途は海水の淡水化に限られるものではなく、例えば地下水又は埋立地浸出水などの不純物を含む廃水から清水を得たり、高度に精製された純水を製造したり、濃縮した経口液体(飲料、液状の食べ物、液状の健康補助食品、経口医薬品など)や外用液体(液状化粧料、液状医薬品など)を得たりするなどの用途に用いることもできる。
【0021】
逆浸透膜装置1は、逆浸透膜槽2、往復動式ポンプ3、切換弁機構4及び駆動機構5を備えている。以下、逆浸透膜装置1の各構成手段について説明する。
【0022】
逆浸透膜槽
逆浸透膜槽2は、内部に逆浸透膜20を備えており、被処理液を逆浸透膜20により透過液と濃縮液とに分離する。逆浸透膜槽2内は、逆浸透膜20によって第一室21及び第二室22に仕切られている。逆浸透膜20は、例えば酢酸セルロース、ポリアミド、ポリスルホン、アクアポリン(蛋白質)などの従来から公知の素材のものを用いることができる。また逆浸透膜20は、例えば平膜、中空糸膜などの従来から公知の構造のものを用いることができる。
【0023】
逆浸透膜槽2は、第一室21の一方側の端部(図1では左側の端部)に被処理液導入口23が設けられている。被処理液導入口23には被処理液導入流路L1が接続されている。被処理液導入流路L1は、往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33に接続されている。往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33から圧送された被処理液は被処理液導入流路L1を通って逆浸透膜槽2の第一室21に導入される。被処理液導入流路L1には、往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33から逆浸透膜槽2の第一室21への方向にのみ開くようにした逆止弁11が設けられている。第一室21内では、被処理液に圧力が作用することで被処理液中の水分の一部が第一室21から逆浸透膜2を透過して第二室22に移動する。その結果、被処理液は水分の分離により濃縮されて濃縮液となる。
【0024】
逆浸透膜槽2の第一室21の前記一方側と反対側の他方側の端部(図1では右側の端部)には濃縮液導出口24が設けられている。濃縮液導出口24には濃縮液導出流路L2が接続されている。濃縮液導出流路L2は、往復動式ポンプ3の第二ポンプ室34に切換弁機構4を介して接続されており、逆浸透膜槽2の第一室21において生成した濃縮液は濃縮液導出流路L2を通り切換弁機構4を介して往復動式ポンプ3に導出される。切換弁機構4の説明については後述する。
【0025】
逆浸透膜槽2の第二室22には透過液導出口25が設けられている。透過液導出口25には透過液導出流路L3が接続されている。逆浸透膜槽2において逆浸透膜20を透過した透過液は透過液導出流路L3を通って回収され、例えば淡水として利用される。
【0026】
往復動式ポンプ
往復動式ポンプ3は、被処理液を昇圧して逆浸透膜槽2に供給する。往復動式ポンプ3は、シリンダ30、シリンダ30内を往復移動するピストン31、及び、ピストン31に接続されているロッド32を備えている。
【0027】
シリンダ30は、両端が閉じられた筒状を呈している。シリンダ30の内部空間は、ピストン31により第一ポンプ室33及び第二ポンプ室34に仕切られている。一方側(図1では左側)の第一ポンプ室33は逆浸透膜槽2の被処理液導入口23と接続され、前記一方側と反対側の他方側(図1では右側)の第二ポンプ室34は逆浸透膜槽2の濃縮液導出口24と接続される。また第一ポンプ室33には被処理液供給流路L4が接続されており、系外から被処理液が被処理液導入流路L4を通って供給される。被処理液供給流路L4には往復動式ポンプ3のピストン31がシリンダ30内を第一ポンプ室33の方向(図1では左方向であり、本開示では「往方向」という。)に移動するときにおいて閉じるようにした逆止弁形式の供給弁10が設けられている。
【0028】
ピストン31は、円板状を呈している。ピストン31は、シリンダ30内をシリンダ30の内壁と密接するように往復移動する。ピストン31は、シリンダ30内を往方向へ移動することにより第一ポンプ室33の体積を減少させかつ第二ポンプ室34の体積を増加させる。一方で、ピストン31は、シリンダ30内を第二ポンプ室34の方向(図1では右方向であり、本開示では「復方向」といい、「復方向」は「往方向」と逆方向である。)の移動により第一ポンプ室33の体積を増加させかつ第二ポンプ室34の体積を減少させる。
【0029】
ピストン31がシリンダ30内を往方向へ移動することにより、第一ポンプ室33から被処理液を圧送して逆浸透膜槽2の第一室21に被処理液が高圧で供給されるとともに、濃縮液導出口24から排出された濃縮液が切換弁機構4を介して第二ポンプ室34内に導入される。一方、ピストン31がシリンダ30内を復方向へ移動することにより、第二ポンプ室34内の濃縮液が切換弁機構4を介して排出されるとともに、新たな被処理液が第一ポンプ室33内に供給される。
【0030】
ロッド32は、まっすぐに延びる棒状を呈している。ロッド32は、ピストン31の板面の中央部から水平に延びてシリンダ30を貫通し、シリンダ30の他方側の端(図1では右側の端)から突き出ている。これにより、シリンダ30内の第二ポンプ室34の内容積がロッド32の体積分だけ第一ポンプ室33の内容積よりも小さくなっている。ロッド32は、継手などの公知の連結手段6を介して駆動機構5のロッド51に連結されている。
【0031】
切換弁機構
切換弁機構4は、弁箱40、スプール41、ピストン43、及び連結棒46を備えている。連結棒46は、まっすぐに延びる棒状を呈しており、スプール41及びピストン43を連結している。切換弁機構4は、往復動式ポンプ3のピストン31の往復移動の切換えによりスプール41、ピストン43及び連結棒46が往復移動(図1で左側及び右側に移動)することにより、流路の切換えを行う。
【0032】
弁箱40は、両端が閉じられた筒状を呈している。弁箱40の内部空間は、隔壁42によりパイロット室44,45及びスプール室47に仕切られており、一方側(図1では左側)のパイロット室44,45にピストン43が摺動可能に収容されており、他方側(図1では右側)のスプール室47にスプール41が摺動可能に収容されている。隔壁42には連結棒46を挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0033】
弁箱40のスプール室47には、隔壁42側の端部に濃縮液導出流路L2が接続されている。つまり、濃縮液導出流路L2の途中に弁箱40のスプール室47が介在している。また弁箱40のスプール室47には、隔壁42側と反対側の端部に濃縮液排出流路L5が接続されている。
【0034】
スプール41は、円板状を呈している。スプール41は、スプール室47内を弁箱40の内壁と密接するように往復移動する。スプール41は、スプール室47内を隔壁42の方向へ移動することにより濃縮液導出流路L2を遮断するとともに濃縮液排出流路L5を開通する。一方で、スプール41は、スプール室47内を隔壁42と反対の方向へ移動することにより濃縮液排出流路L5を遮断するとともに濃縮液導出流路L2を開通し、逆浸透膜槽2の第一室21を往復移動式ポンプ3の第二ポンプ室34と連通する。
【0035】
弁箱40のパイロット室44,45の内部空間は、ピストン43により第一パイロット室44及び第二パイロット室45に仕切られている。一方側(図1では左側)の第一パイロット室44には、第一パイロット通路L6が接続されており、第一パイロット通路L6を介して往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33の圧力が第一パイロット室44に導入される。他方側(図1では右側)の第二パイロット室45には、第二パイロット通路L7が接続されており、第二パイロット通路L7を介して往復動式ポンプ3の第二ポンプ室34の圧力が第二パイロット室45に導入される。
【0036】
ピストン43を間に挟んだ第一パイロット室44及び第二パイロット室45において、第一パイロット室44に作用する圧力の方が高いと、ピストン43は隔壁42の方向の第一切換位置(図1の二点鎖線で示す位置)へ移動する。これにより、濃縮液導出流路L2及びスプール室47を介して逆浸透膜槽2の第一室21と往復移動式ポンプ3の第二ポンプ室34とが連通する。一方で、第二パイロット室45に作用する圧力の方が高いと、ピストン43が隔壁42と反対の方向の第二切換位置(図1の実線で示す位置)へ移動する。これにより、スプール室47を介して濃縮液排出流路L5と往復移動式ポンプ3の第二ポンプ室34とが連通する。
【0037】
往復動式ポンプ3のピストン31が復方向の移動の終了位置(図1の実線で示す位置、以下、「復方向終了位置」という。)にあるとき、切換弁機構4のピストン43は第二切換位置(図1の実線で示す位置)にあり、ピストン41が濃縮液導出流路L2を遮断している。そのため、逆浸透膜槽2の第一室21から往復移動式ポンプ3の第二ポンプ室34へ向かう液の流れが阻止された状態にあるから、往復動式ポンプ3のピストン31は往方向の移動を開始しない。往復動式ポンプ3のピストン31に駆動機構5から往方向の移動を促す力が作用すると、往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33の圧力が上昇し、この圧力上昇が第一パイロット通路L6を介して第一パイロット室44に伝達されて切換弁機構4のピストン43が第一切換位置(図1の二点鎖線で示す位置)へ移動する。これにより、逆浸透膜槽2の第一室21から往復移動式ポンプ3の第二ポンプ室34への濃縮液の流動が可能となる。
【0038】
一方、往復動式ポンプ3のピストン31が往方向の移動の終了位置(図1の二点鎖線で示す位置、以下、「往方向終了位置」という。)にあるとき、切換弁機構4のピストン43は第一切換位置(図1の二点鎖線で示す位置)にあり、濃縮液導出流路L2は開通しているが、逆止弁11により逆浸透膜槽2の第一室21から往復移動式ポンプ3の第一ポンプ室33へ向かう液の流れが阻止された状態にあるから、往復動式ポンプ3のピストン31は復方向の移動を開始しない。往復動式ポンプ3のピストン31に駆動機構5から復方向の移動を促す力が作用すると、往復動式ポンプ3の第二ポンプ室34の圧力が上昇し、この圧力上昇が第二パイロット通路L7を介して第二パイロット室45に伝達されて切換弁機構4のピストン43が第二切換位置(図1の実線で示す位置)へ移動する。これにより、往復移動式ポンプ3の第二ポンプ室34から切換弁機構4のスプール室47を経て濃縮液排出流路L5への濃縮液の流動が可能となる。
【0039】
駆動機構
駆動機構5は、往復動式ポンプ3を駆動する、具体的には、往復動式ポンプ3のピストン31のシリンダ30内における往復移動を駆動する。駆動機構5は、電動シリンダ50、及び、電動シリンダ50の駆動源であるモータ52の回転速度を制御する制御手段53を備える。
【0040】
電動シリンダ50は、モータ52の駆動によりロッド51が往復移動するものであり、図示しないボールネジ及びボールネジナットがモータ52の回転駆動力を直線的な運動に変換する。本実施形態の電動シリンダ50は、従来から公知の構造のものを用いることができる。電動シリンダ50のロッド51は、往復動式ポンプ3のピストン31にその往復移動を伝達するように連結されており、本実施形態では、電動シリンダ50のロッド51と往復動式ポンプ3のロッド32が直線的に連なるように連結されている。
【0041】
電動シリンダ50は、本実施形態では、電動シリンダ50の入力軸が電動シリンダ50から突き出ており、入力軸に従動プーリ56が固定されている。モータ52は電動シリンダ50の上方に配置されており、モータ52の出力軸に駆動プーリ57が固定されている。駆動プーリ57及び従動プーリ56にはエンドレスベルト58が巻き付けられている。モータ52の回転駆動力は、駆動プーリ57、エンドレスベルト58及び従動プーリ56を介して電動シリンダ50の入力軸に伝達される。
【0042】
モータ52は、正逆各方向へ回転可能であり、特に限定されるものではないが、本実施形態では三相モータである。
【0043】
制御手段53は、電動シリンダ50の駆動源であるモータ52の回転速度(回転数)を制御する。制御手段53は、本実施形態では、モータ52に接続されるインバータ54、及び、インバータ54に接続されるコントローラ55を備える。
【0044】
インバータ54は、コンバータ回路、コンデンサー及びインバータ回路を備えており、商用電源の周波数及び電圧を自在に変化させてモータ52に出力することにより、モータ52の回転速度を変化させる。モータ52の回転速度をインバータ54によって変化させることにより、電動シリンダ5のロッド51の往復移動の速度を変化させることができ、往復動式ポンプ3のピストン31の往復移動の速度を変化させることができる。なお、本実施形態のインバータ54は、特別なものではなく、商用電源から任意の周波数及び電圧の交流電流を作り出すことができるものであればよい。
【0045】
コントローラ55は、モータ52の回転速度(回転数)を制御するための制御信号をインバータ54に出力する。コントローラ55は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラ又はマイクロコンピュータを主構成とする。すなわち、メモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することにより、コントローラ55はモータ52の回転速度(回転数)を制御する機能が実現される。
【0046】
コントローラ55は、往復動式ポンプ3のピストン31が復方向終了位置(図1の実線で示す位置)と往方向終了位置(図1の二点鎖線で示す位置)との間を往復移動するように、インバータ54を介してモータ52の回転速度(回転数)を制御する。
【0047】
またコントローラ55は、往復動式ポンプ3のピストン31の往方向の移動及び復方向の移動の切換え時に、ピストン31が減速及び加速の少なくとも一方を行いながらそれまでと逆方向への移動を行うように、つまりは、切換え時に瞬間的に移動方向が逆方向とならないように、インバータ54を介してモータ52の回転速度(回転数)を制御する。
【0048】
具体的は、往復動式ポンプ3のピストン31が往方向終了位置(図1の二点鎖線で示す位置)に到達して復方向の移動を開始するとき、及び、ピストン31が復方向終了位置(図1の実線で示す位置)に到達して往方向の移動を開始するときに、つまりは、ピストン31が往復移動を切換えてこれまでとは逆方向に移動を開始するときに、移動速度が瞬間的に最高速度に上がる(初速が最高速度となる)のではなく、ピストン31が次第に加速して移動速度が所定時間(本開示では「立上り時間」という。)をかけてゼロから最高速度まで徐々に上がるように、コントローラ55はモータ52の回転速度(回転数)を制御する。なお、ピストン31の移動速度が最高速度まで上がると、移動速度が最高速度に維持されるように、コントローラ55はモータ52の回転速度(回転数)を制御する。
【0049】
上述した立上り時間を設定することにより、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に移動方向が瞬間的に逆方向になることがない。そのため、本実施形態の逆浸透膜装置1は、従来技術の逆浸透膜装置とは異なり、往復移動式ポンプ3において生じる振動が抑制されるので、騒音を抑制することができる。
【0050】
あるいは、往復動式ポンプ3のピストン31が往方向終了位置(図1の二点鎖線で示す位置)に近づいて往方向の移動を終了するとき、及び、ピストン31が復方向終了位置(図1の実線で示す位置)に近づいて復方向の移動を終了するときに、つまりは、ピストン31が往復移動を切換える際に往復移動を停止するときに、移動速度がそれぞれの終了位置において瞬間的に最高速度からゼロに下がるのではなく、それぞれの終了位置の手前からピストン31が次第に減速して移動速度がそれぞれの終了位置まで所定時間(本開示では「立下り時間」という。)をかけて最高速度からゼロに徐々に下がるように、コントローラ55はモータ52の回転速度(回転数)を制御することが好ましい。
【0051】
上述した立下り時間を設定することにより、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に移動方向が瞬間的に逆方向になることがない。そのため、本実施形態の逆浸透膜装置1は、従来技術の逆浸透膜装置とは異なり、往復移動式ポンプ3において生じる振動が抑制されるので、騒音を抑制することができる。
【0052】
なお、上述した立上り時間及び立下り時間の両方を設定することにより、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に、より緩やかに移動方向を逆方向にすることができる。そのため、往復移動式ポンプ3において生じる振動をより効果的に抑制することができるので、騒音をより効果的に抑制することができる。
【0053】
上述した立上り時間及び立下り時間は特に限定されるものではなく、ゼロより大きければよいが、上述した往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に生じる振動を良好に抑制して騒音を良好に抑えつつ、逆浸透膜に圧送する被処理液量を確保するためには、0.5S以上1.5S以下程度であることが好ましい。
【0054】
さらにコントローラ55は、インバータ54を介してモータ52の回転速度(回転数)を以下のように制御することもできる。具体的に、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に、つまりは、ピストン31が往復移動のそれぞれの終了位置に到達して往復移動を停止したときに、所定時間(本開示では「インターバル時間」という。)をあけてそれまでとは逆方向への移動を開始するように、コントローラ55はモータ52の回転速度(回転数)を制御することもできる。
【0055】
上述したインターバル時間は特に限定されるものではなく、ゼロより大きければよいが、上述した往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に生じる振動を抑制して騒音を良好に抑えつつ、逆浸透膜に圧送する被処理液量を確保するためには、0.5S以上1.5S以下程度であることが好ましい。
【0056】
逆浸透膜装置の動作
次に、本実施形態の逆浸透膜装置1の動作について説明する。駆動機構5のコントローラ55がモータ52の回転速度(回転数)を制御することにより、往復動式ポンプ3のピストン31が復方向終了位置(図1の実線で示す位置)から往方向に移動すると、往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33から被処理液が圧送される。これにより、被処理液が被処理液導入流路L1を通って逆浸透膜槽2の第一室21に供給される。被処理液は第一ポンプ室33及び第二ポンプ室34の内容積の差により高い圧力に加圧されているため、逆浸透膜槽2では、被処理液が逆浸透膜20を通過する透過液と逆浸透膜20を通過しない濃縮液とに分離される。透過液は第二室22から透過液導出流路L3を介して透過液として回収される。濃縮液は、切換弁機構4のピストン43が第二切換位置(図1の実線で示す位置)から第一切換位置(図1の二点鎖線で示す位置)に移動することにより濃縮液導出流路L2が開通しているため、第一室21から濃縮液導出流路L2及び切換弁機構4のスプール室47を通って往復動式ポンプ3の第二ポンプ室34に導入される。
【0057】
往復動式ポンプ3のピストン31が往方向終了位置(図1の二点鎖線で示す位置)に近づくと、駆動機構5のコントローラ55がモータ52の回転速度(回転数)を制御し、ピストン31の移動速度を徐々に下げて往方向終了位置まで所定時間をかけてピストン31の移動速度を最高速度からゼロに下げる。これにより、ピストン31が次第に減速しながら往方向終了位置で停止する。
【0058】
ピストン31が往方向終了位置に到達すると、駆動機構5のコントローラ55がモータ52の回転速度(回転数)を制御することにより、往復動式ポンプ3のピストン31が往方向終了位置から復方向に移動する。このとき、駆動機構5のコントローラ55が、ピストン31の移動速度を徐々に加速させ、往方向終了位置から所定時間をかけてピストン31の移動速度をゼロから最高速度まで上げる。これにより、ピストン31が次第に加速しながら往方向終了位置から移動する。ピストン31の復方向の移動により、往復動式ポンプ3の第二ポンプ室34から濃縮液が圧送される。このとき、切換弁機構4のピストン43は第一切換位置(図1の二点鎖線で示す位置)から第二切換位置(図1の実線で示す位置)に移動し、濃縮液排出流路L5が開通しているため、濃縮液が切換弁機構4及び濃縮液排出流路L5を通って系外に排出される。
【0059】
往復動式ポンプ3のピストン31が復方向終了位置(図1で実線で示す位置)に近づくと、駆動機構5のコントローラ55がモータ52の回転速度(回転数)を制御し、ピストン31の移動速度を徐々に下げて復方向終了位置まで所定時間をかけてピストン31の移動速度を最高速度からゼロに下げる。これにより、ピストン31が次第に減速しながら復方向終了位置で停止する。
【0060】
ピストン31が復方向終了位置に到達すると、駆動機構5のコントローラ55がモータ52の回転速度(回転数)を制御することにより、往復動式ポンプ3のピストン31が再び復方向終了位置から往方向に移動する。このとき、駆動機構5のコントローラ55が、ピストン31の移動速度を徐々に加速させ、復方向終了位置から所定時間をかけてピストン31の移動速度をゼロから最高速度まで上げる。これにより、ピストン31が次第に加速しながら復方向終了位置から移動する。ピストン31の往方向の移動により、再び往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33から被処理液が圧送される。以後、上述した往復動式ポンプ3のピストン31の往復移動が繰り返し行われる。
【0061】
逆浸透膜装置による作用・効果
本実施形態の逆浸透膜装置1は、制御手段53は、往復動式ポンプ3のピストン31が往方向の移動及び復方向の移動のそれぞれの終了位置でそれまでとは逆方向に移動を開始するときに、ピストン31が次第に加速して移動速度が所定時間をかけて最高速度まで上がるように、モータ52の回転速度を制御することを特徴とする。そのため、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に移動方向が瞬間的に逆方向になることがない。よって、本実施形態の逆浸透膜装置1によれば、従来技術の逆浸透膜装置とは異なり、往復移動式ポンプ3において生じる振動が抑制されるので、騒音を抑制することができる。
【0062】
また、制御手段53は、往復動式ポンプ3のピストン31が往方向の移動及び復方向の移動のそれぞれの終了位置に到達して往方向の移動及び復方向の移動を停止するときに、それぞれの終了位置の手前からピストン31が次第に減速して移動速度がそれぞれの終了位置まで所定時間をかけてゼロに下がるように、モータ52の回転速度を制御することを特徴とする。そのため、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に移動方向が瞬間的に逆方向になることがない。よって、本実施形態の逆浸透膜装置1によれば、従来技術の逆浸透膜装置とは異なり、往復移動式ポンプ3において生じる振動が抑制されるので、騒音を抑制することができる。
【0063】
このように、本実施形態の逆浸透膜装置1によれば、往復動式ポンプ3のピストン31の往方向の移動及び復方向の移動の切換え時にピストン31が減速及び加速の少なくとも一方を行いながらそれまでとは逆方向への移動を行うことで、騒音を抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態の逆浸透膜装置1は、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換えの前後でピストン31の移動速度の調整(減速及び加速)を行っている。そのため、往復動式ポンプ3のピストン31の移動方向の切換え時に、より緩やかに移動方向を逆方向にすることができる。よって、本実施形態の逆浸透膜装置1によれば、往復移動式ポンプ3において生じる振動をより効果的に抑制することができるので、騒音をより効果的に抑制することができる。
【0065】
また本実施形態の逆浸透膜装置1は、往復動式ポンプ3のピストン31の往復移動の切換え時に移動方向が瞬間的に逆方向になることがないから、往復動式ポンプ3のロッド32と駆動機構5の電動シリンダ50のロッド51との連結部において前記切換え時に瞬間的に高圧負荷がかからない。よって、本実施形態の逆浸透膜装置1によれば、継手などの連結手段6や各ロッド32,51が損傷するのを抑制することができる。
【0066】
また本実施形態の逆浸透膜装置1は、往復動式ポンプ3を駆動する駆動機構5に電動シリンダ50が用いられている。そのため、本実施形態の逆浸透膜装置1によれば、従来技術の駆動機構5に油圧シリンダが用いられている逆浸透膜装置のように、油圧シリンダの作動油切換弁が切換え動作のたびに振動が生じて騒音が発生したり、油圧シリンダのピストンの移動方向の切換え時に振動が生じて騒音が発生したりすることがなく、静音化が可能である。
【0067】
また本実施形態の逆浸透膜装置1は、往復動式ポンプ3のピストン31の往復移動時の移動量や移動速度の調整も容易である。さらに、リミットスイッチや作動油切換弁、作動油タンクなどの機器が不要であり、作動油の管理、補充も不要であるうえ、これらの機器の動作不良により往復動式ポンプ3の動作不良が発生することがない。
【0068】
逆浸透膜装置の変形例
以上、本開示の逆浸透膜装置の一実施形態について説明したが、本開示の逆浸透膜装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0069】
上記実施形態の逆浸透膜装置1は、モータ52の回転駆動力が駆動プーリ57、エンドレスベルト58及び従動プーリ56を介して電動シリンダ50に伝達されている。一変形例として、図2に示す逆浸透膜装置1のように、モータ52の回転駆動力を駆動プーリ57、エンドレスベルト58及び従動プーリ56を介さずに電動シリンダ50に伝達するように構成してもよい。図2に示す逆浸透膜装置1においても、上記実施形態の逆浸透膜装置1と同様に、本開示の上述した課題を解決することができる。また、図2に示す逆浸透膜装置1の上述した構成以外の構成は、図1に示す逆浸透膜装置1と同じであり、ここでは詳細な説明は省略しているが、図1に示す逆浸透膜装置1と同じ構成となる部分は、同様の作用・効果を奏する。
【0070】
また上記実施形態の逆浸透膜装置1は、往復動式ポンプ3のピストン31は、シリンダ30から突き出るロッド32が、電動シリンダ50のロッド51と連結されることによってシリンダ30内を往復移動する。一変形例として、図3に示す逆浸透膜装置1のように、往復動式ポンプ3のピストン31が電動シリンダ50のロッド51と連結されることによって、ピストン31がシリンダ30内を往復移動するように構成してもよい。以下に当該変形例を具体的に説明する。
【0071】
図3に示す逆浸透膜装置1では、往復動式ポンプ3は、一対のシリンダ30と、それぞれのシリンダ30内を往復移動する一対のピストン31とを備えている。一対のシリンダ30は、一端が閉じられた筒状を呈しており、電動シリンダ50の両端に連結されている。一対のシリンダ30と電動シリンダ50との間はそれぞれ連結板59により密閉されている。一対のシリンダ30の一方側(図3では左側)の内部空間が第一ポンプ室33であり、一対のシリンダ30の他方側(図3では右側)の内部空間が第二ポンプ室34である。第一ポンプ室33は逆浸透膜槽2の被処理液導入口23と接続され、第二ポンプ室34は逆浸透膜槽2の濃縮液導出口24と接続される。また第一ポンプ室33には被処理液供給流路L4が接続されている。また第二ポンプ室34には濃縮液排出流路L5が接続されている。濃縮液排出流路L5には、濃縮液排出弁12が設けられている。また第二ポンプ室34には後述する電動シリンダ50のロッド51が存在しており、ロッド51は一方(図3では右側)のピストン31を貫通して第二ポンプ室34を有するシリンダ30の端から突き出ている。これにより、第二ポンプ室34の内容積はロッド51の体積分だけ第一ポンプ室33の内容積よりも小さくなっている。
【0072】
濃縮液排出弁12は、往復動式ポンプ3の一対のピストン31がそれぞれのシリンダ30内を往方向(図3では左側)に移動するときにおいて閉じ、復方向(図3では右側)に移動するときにおいて開くように構成されている。濃縮液排出弁12は、例えばコントローラ55に接続し、ピストン31の往復移動に関連させてコントローラ55が濃縮液排出弁12の開閉を制御するように構成することができるが、濃縮液排出弁12の上記開閉動作はコントローラ55による電気制御に限定されない。
【0073】
一対のピストン31は、それぞれのシリンダ30内をシリンダ30の内壁と密接するように往復移動する。一対のピストン31は同じ方向に移動し、それぞれのシリンダ30内を往方向へ移動することにより第一ポンプ室33の体積を減少させかつ第二ポンプ室34の体積を増加させる。一方で、一対のピストン31は、それぞれのシリンダ30内を復方向へ移動することにより第一ポンプ室33の体積を増加させかつ第二ポンプ室34の体積を減少させる。
【0074】
一対のピストン31がそれぞれのシリンダ30内を往方向へ移動することにより、第一ポンプ室33から被処理液導入流路L1に被処理液を圧送して逆浸透膜槽2の第一室21に被処理液が供給される。被処理液は第一ポンプ室33及び第二ポンプ室34の内容積の差により高い圧力に加圧されているため、逆浸透膜槽2では、被処理液が逆浸透膜20を通過する透過液と逆浸透膜20を通過しない濃縮液とに分離される。透過液は、第二室22から透過液導出流路L3を介して透過液として回収される。濃縮液は、第一室21から濃縮液導出流路L2を通って第二ポンプ室34内に導入される。一方、一対のピストン31がそれぞれのシリンダ30内を復方向へ移動することにより、第二ポンプ室34内の濃縮液が濃縮液排出流路L5を通って系外に排出されるとともに、新たな被処理液が被処理液供給流路L4を通って第一ポンプ室33内に供給される。
【0075】
電動シリンダ50のロッド51は、電動シリンダ50の両端から突き出ており、ロッド51の両端に一対のピストン31が固定されている。ロッド51が往復移動することにより、その往復移動は一対のピストン31に伝達されて、一対のピストン31も往復移動する。ロッド51には、少なくとも電動シリンダ50内の一部分にねじ軸60が形成されている。モータ52は電動シリンダ50内に固定されている。電動シリンダ50は、第一歯車61及び第二歯車62を備えており、第一歯車61はねじ軸60に噛合っており、第二歯車62は、モータ52の出力軸に固定された状態で第一歯車61と噛合っている。モータ52の回転駆動力は、第一歯車61及び第二歯車62を介して電動シリンダ50のロッド51に伝達され、このときに回転運動が直線的な運動に変換されることで、ロッド51が往復移動する。なお、モータ52の回転駆動力を電動シリンダ50のロッド51に伝達して直線的な運動に変換する構成は、上述した構成に限定されず、種々の公知の構成を用いることができる。
【0076】
図3に示す変形例においても、上記実施形態の逆浸透膜装置1と同様に、本開示の上述した課題を解決することができる。また、図3に示す逆浸透膜装置1において、図1に示す逆浸透膜装置1の構成部材と同様の構成部材については同じ符号を用いており、ここでは各構成部材の上記実施形態と相違する内容について説明したが、図1に示す逆浸透膜装置1と同じ構成となる部分は、同様の作用・効果を奏する。その他、図3に示す逆浸透膜装置1によれば、電動シリンダ50の両端に往復動式ポンプ3の第一ポンプ室33及び第二ポンプ室34が設けられているため、装置を小型化することができるうえ、ロッド32や継手などの連結手段6などの交換部品が不要となるとともに、切換弁機構4も不要となるため、コストを低減することもできる。
【0077】
図3に示す変形例では、第二ポンプ室34の内容積はロッド51の体積分だけ第一ポンプ室33の内容積よりも小さくなっているが、図4に示す変形例のように、第二ポンプ室34を含むシリンダ30の大きさを第一ポンプ室33を含むシリンダ30の大きさよりも小さくしてもよい。
【0078】
図3及び図4に示す変形例では、被処理液は第一ポンプ室33及び第二ポンプ室34の内容積の差により高い圧力に加圧されているが、例えば濃縮液排出流路L5に圧力調整弁を設けることで、被処理液の圧力調整を行うようにしてもよい。
【0079】
また上記実施形態及び変形例の逆浸透膜装置1は、制御手段53がインバータ54を備えており、インバータ制御によりモータ52の回転速度を変化させている。一変形例として、図示は省略するが、モータ52にサーボモータを用い、サーボモータに位置検出器としてのロータリエンコーダを接続し、コントローラ55が、ロータリエンコーダの検出によりモータ52の回転位置を把握しつつ、モータ52の回転速度を指令された回転速度に追従させる制御を行うように構成してもよい。この変形例の逆浸透膜装置1においても、上記実施形態の逆浸透膜装置1と同様に、本開示の上述した課題を解決することができるうえ、上記実施形態や変形例の逆浸透膜装置1と同様の作用効果を奏する。
【実施例0080】
以下、実施例により本開示の逆浸透膜装置の騒音低減の効果について説明する。ただし、本開示の逆浸透膜装置は、以下の実施例に限定されない。
【0081】
実施例として、図1に示す逆浸透膜装置と同じ構成の逆浸透膜装置を用いて、往復動式ポンプのピストンの往復移動の切換え時にピストンの移動速度を調整した際に生じる音レベルを測定し、比較例として、図5に示す逆浸透膜装置と同じ構成の逆浸透膜装置を用いて油圧シリンダにより往復動式ポンプのピストンを往復移動させた際に生じる音レベルを測定した。また、参考例として、図1に示す逆浸透膜装置と同じ構成の逆浸透膜装置を用いて、往復動式ポンプのピストンの往復移動の切換え時にピストンの移動速度を調整しなかった際に生じる音レベルを測定した。いずれの例も同じ施設内で、かつ、装置より同じ距離だけ離れた位置で、かつ、同じ測定機器を用いて音レベルを測定した。その結果を表1に示す。表1の立上り時間、立下り時間、インターバル時間の単位は秒である。表1の速度はピストンの移動速度の最大速度であり、単位はmm/秒である。表1の処理量は逆浸透膜装置への被処理水の供給量であり、比較例の値を基準にしたパーセンテージで示されている。表1の音レベルは測定された最大の音レベルであり、比較例の値を基準にしたパーセンテージで示されている。表1の減少率は比較例の音レベルからの減少量で示されている。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例2,3と比較例及び参考例とを比較すると、往復動式ポンプのピストンの移動方向の切換えの前又は後でピストンの移動速度の調整を行うことで、ピストンの移動方向の切換え時にピストンが減速及び加速のいずれも行うことなく瞬間的に移動方向が逆方向となる場合と比べて、発生する音レベルを低減できており、騒音を抑制できることが分かる。なお、実施例2,3は比較例及び参考例よりもピストンの往復移動時の最高速度が高いにもかかわらず、発生する音レベルを低減できており、最高速度が同じであれば表1の減少率以上の騒音抑制の効果を見込める。
【0084】
また、実施例1によると、往復動式ポンプのピストンの移動方向の切換えの前後の両方でピストンの移動速度の調整を行うことで、ピストンの往復移動時の最高速度が最も高いにもかかわらず、発生する音レベルをかなり低減できており、効果的に騒音を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0085】
1 逆浸透膜装置
2 逆浸透膜槽
3 往復動式ポンプ
5 駆動機構
20 逆浸透膜
23 被処理液導入口
24 濃縮液導出口
31 ピストン
33 第一ポンプ室
34 第二ポンプ室
50 電動シリンダ
51 電動シリンダのロッド
52 モータ
53 制御手段
54 インバータ
55 コントローラ
56 従動プーリ
57 駆動プーリ
58 エンドレスベルト
図1
図2
図3
図4
図5