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特開2023-89736レーザ加工装置、レーザ加工方法、および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089736
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、レーザ加工方法、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20230621BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B23K26/36
H01L21/56 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204429
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀悦
(72)【発明者】
【氏名】竹島 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】林 渡素生
【テーマコード(参考)】
4E168
5F061
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168AD00
4E168DA06
4E168DA24
4E168DA45
4E168DA46
4E168EA15
4E168JA17
5F061AA01
5F061BA01
5F061EA14
(57)【要約】
【課題】加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けたレーザ光の照射および走査により加工対象物の一部を除去する際、加工対象物の加工面において所望の加工品質を得ることが可能なレーザ加工装置を得る。
【解決手段】加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともにレーザ光を走査方向に沿って走査することにより、加工対象物の一部を除去するレーザ加工装置であって、制御部は、加工対象物の一部を複数の加工レイヤーY1~Y3として設定し、レーザ光の走査を行う際、複数の加工レイヤーの各々の加工条件に基づいて出射部および走査部を制御し、複数の加工レイヤーの各々の加工条件が、上記領域における材質の異なる部分の位置に基づき設定される。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともに前記レーザ光を前記走査方向に沿って走査することにより、前記加工対象物の一部を除去するレーザ加工装置であって、
前記レーザ光を出射する出射部と、
前記出射部から出射された前記レーザ光を走査する走査部と、
前記出射部および前記走査部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加工対象物の前記一部を複数の加工レイヤーとして設定し、前記レーザ光の走査を行う際、複数の前記加工レイヤーの各々の加工条件に基づいて前記出射部および前記走査部を制御し、
複数の前記加工レイヤーの各々の前記加工条件は、前記領域における前記材質の異なる部分の位置に基づき設定される、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記加工対象物の前記領域においては、樹脂材および金属が前記走査方向に沿って並んで設けられており、
複数の前記加工レイヤーの各々の前記加工条件は、前記領域における前記樹脂材および前記金属の位置に基づき設定される、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記加工対象物は、溝部が形成されたリードフレームに半導体チップがボンディングされた状態で、前記リードフレームおよび前記半導体チップが前記樹脂材により封止されたものであり、
前記加工対象物の前記一部は、前記溝部を埋めるように設けられた前記樹脂材であり、
前記溝部内の前記樹脂材に前記レーザ光を照射するとともに前記レーザ光を前記走査方向に走査して前記溝部内の前記樹脂材を除去する、
請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
複数の前記加工レイヤーの各々の前記加工条件は、前記溝部の内表面の形状に応じて設定される、
請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
複数のうちの任意2つの前記加工レイヤーの前記加工条件同士を比較した場合、前記レーザ光のエネルギー、前記レーザ光のパルス周波数、前記レーザ光の走査速度、および、前記レーザ光の走査ピッチのうちの少なくとも1つの値が互いに相違している、
請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ光の照射方向および前記走査方向の双方に直交する方向における寸法を幅と定義すると、複数のうちの任意2つの前記加工レイヤーの前記加工条件同士を比較した場合、前記レーザ光が照射される範囲の幅が互いに相違している、
請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
複数のうちの任意1つの前記加工レイヤーの前記加工条件は、前記レーザ光が照射され前記走査方向に並ぶ第1範囲および第2範囲同士を比較した場合、前記レーザ光のエネルギー、前記レーザ光のパルス周波数、前記レーザ光の走査速度、および、前記レーザ光の走査ピッチのうちの少なくとも1つの値が互いに相違している、
請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
複数の前記加工レイヤーの各々の前記加工条件は、前記加工対象物のうちの前記材質の異なる部分の断面形状に応じて設定される、
請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともに前記レーザ光を前記走査方向に沿って走査することにより、前記加工対象物の一部を除去するレーザ加工方法であって、
出射部から前記レーザ光を出射する工程と、
前記出射部から出射された前記レーザ光を走査部によって走査する工程と、を備え、
前記出射部および前記走査部は、制御部によって制御され、
前記制御部は、前記加工対象物の前記一部を複数の加工レイヤーとして設定し、前記レーザ光の走査を行う際、複数の前記加工レイヤーの各々の加工条件に基づいて前記出射部および前記走査部を制御し、
複数の前記加工レイヤーの各々の前記加工条件は、前記領域における前記材質の異なる部分の位置に基づき設定される、レーザ加工方法。
【請求項10】
溝部が形成されたリードフレームに半導体チップがボンディングされた状態で、前記リードフレームおよび前記半導体チップを樹脂材により封止する樹脂封止工程と、
請求項9に記載のレーザ加工方法を用いたレーザ加工によって、前記溝部内の前記樹脂材を除去する工程と、
前記リードフレームを、前記溝部に沿って切断する工程と、を備える、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、レーザ加工装置、レーザ加工方法、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1~3に開示されているように、レーザ加工装置は様々な分野で用いられている。特許文献1(特開2019-063810号公報)においては、レーザ光を加工対象物に照射する際に、レーザ光の照射方向における加工面の高さ位置に応じてレーザ光の結像面の位置を調整している。
【0003】
特許文献2(特開2005-342749号公報)においては、導体層および絶縁層がレーザ光の照射方向に積層されることで加工対象物が構成されており、この加工対象物にレーザ加工を行なう際、レーザ光源の出力を一定に設定し、各層毎に、照射するレーザ光の周波数と照射数とを制御している。
【0004】
QFN(Quad Flat Non-leaded package)タイプといった、いわゆるノンリードタイプの半導体装置が知られている。特許文献3(特開2011-077278号公報)に開示された半導体装置においては、リードフレームのリード部において、チップ搭載面側とは反対側の部分に、凹状部が形成されている。特許文献3(段落[0063])は、凹状部にレーザ光を照射することにより、凹状部に充填された封止樹脂を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-063810号公報
【特許文献2】特開2005-342749号公報
【特許文献3】特開2011-077278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ加工の加工対象物においては、材質の異なる部分がレーザ光の「走査方向」に沿って並んで設けられている場合がある。たとえば、QFNタイプの半導体装置を製造するための製造方法においては、樹脂材と金属とがレーザ光の走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともにレーザ光を走査方向に沿って走査することにより、加工対象物の一部を除去する、というレーザ加工工程が実施される場合がある。
【0007】
材質の異なる部分がレーザ光の走査方向に沿って並んで設けられている場合は、材質の異なる部分がレーザ光の「照射方向(加工面に対して垂直な方向)」に層状に積み重なるように積層されている場合とは異なる、最適なレーザ加工条件を設定することが、加工対象物の加工面において所望の加工品質を得るためには必要になる。特許文献1~3はそのようなレーザ加工条件について特に言及していない。
【0008】
本明細書は、加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともにレーザ光を走査方向に沿って走査することにより、加工対象物の一部を除去する際に、加工対象物の加工面において所望の加工品質を得ることが可能な、レーザ加工装置およびレーザ加工方法、ならびに、そのようなレーザ加工方法を用いた半導体装置の製造方法を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に基づくレーザ加工装置は、加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともに上記レーザ光を上記走査方向に沿って走査することにより、上記加工対象物の一部を除去するレーザ加工装置であって、上記レーザ光を出射する出射部と、上記出射部から出射された上記レーザ光を走査する走査部と、上記出射部および上記走査部を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、上記加工対象物の上記一部を複数の加工レイヤーとして設定し、上記レーザ光の走査を行う際、複数の上記加工レイヤーの各々の加工条件に基づいて上記出射部および上記走査部を制御し、複数の上記加工レイヤーの各々の上記加工条件は、上記領域における上記材質の異なる部分の位置に基づき設定される。
【0010】
本開示に基づくレーザ加工方法は、加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともに上記レーザ光を上記走査方向に沿って走査することにより、上記加工対象物の一部を除去するレーザ加工方法であって、出射部から上記レーザ光を出射する工程と、上記出射部から出射された上記レーザ光を走査部によって走査する工程と、を備え、上記出射部および上記走査部は、制御部によって制御され、上記制御部は、上記加工対象物の上記一部を複数の加工レイヤーとして設定し、上記レーザ光の走査を行う際、複数の上記加工レイヤーの各々の加工条件に基づいて上記出射部および上記走査部を制御し、複数の上記加工レイヤーの各々の上記加工条件は、上記領域における上記材質の異なる部分の位置に基づき設定される。
【0011】
本開示に基づく半導体装置の製造方法は、溝部が形成されたリードフレームに半導体チップがボンディングされた状態で、上記リードフレームおよび上記半導体チップを樹脂材により封止する樹脂封止工程と、上記本開示に基づくレーザ加工方法を用いたレーザ加工によって、上記溝部内の上記樹脂材を除去する工程と、上記リードフレームを、上記溝部に沿って切断する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、加工対象物のうちの材質の異なる部分が走査方向に沿って並んで設けられた領域に向けて、レーザ光を照射するとともにレーザ光を走査方向に沿って走査することにより、加工対象物の一部を除去する際に、加工対象物の加工面において所望の加工品質を得ることが可能な、レーザ加工装置およびレーザ加工方法、ならびに、そのようなレーザ加工方法を用いた半導体装置の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】レーザ加工装置20を示す図である。
図2】リードフレーム1の裏面1b側から見た構成を示す平面図である。
図3】リードフレーム1の一部(リード部3、タイバー4および溝部5)の裏面1b側から見た構成を示す斜視図である。
図4】半導体装置の製造方法に関し、準備工程において準備されるリードフレーム1と複数の半導体チップ6とを、リードフレーム1の表面1a側から視た様子を示す平面図である。
図5図4中のV-V線に沿った矢視断面図であり、リードフレーム1のダイパッド2上に半導体チップ6がボンディングされた状態を示している。
図6】半導体装置の製造方法に関し、成形工程が行なわれた状態を示す断面図である。
図7】半導体装置の製造方法に関し、レーザ光を走査する工程を行なう前に保護フィルムが除去された状態を示す断面図である。
図8】半導体装置の製造方法に関し、レーザ加工工程を行なっている様子を示す断面図である。
図9】半導体装置の製造方法に関し、レーザ加工工程を行なっている様子を示す斜視図である。
図10】半導体装置の製造方法に関し、レーザ加工工程を行なっている様子を示す平面図である。
図11】半導体装置の製造方法に関し、レーザ加工工程の実施後の状態を示す斜視図である。
図12】半導体装置の製造方法に関し、メッキ工程が行なわれた後の様子を示す断面図である。
図13】半導体装置の製造方法に関し、切断工程を行なっている様子を示す断面図である。
図14】実施の形態の製造方法によって得られた半導体装置(半導体装置11)を示す斜視図である。
図15】実施の形態の製造方法によって得られた半導体装置が実装されている様子を示す断面図である。
図16】レーザ加工工程の第1実施形態を説明するための表である。
図17】レーザ加工工程の第2実施形態を説明するための表である。
図18】レーザ加工工程の第3実施形態を説明するための表である。
図19】レーザ加工工程の第4実施形態を説明するための表である。
図20】レーザ加工工程の第4実施形態によって得られた凹所形成部3cの状態を示す斜視図である。
図21】レーザ加工工程の第4実施形態の変形例によって得られた凹所形成部3cの状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。以下の説明において同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。以下、レーザ加工方法(または半導体装置の製造方法)で使用されるレーザ加工装置20およびリードフレーム1の構成についてまず説明し、その後、レーザ加工方法(または半導体装置の製造方法)について説明する。
【0015】
[レーザ加工装置20]
図1は、レーザ加工装置20を示す図である。レーザ加工装置20は、ステージ21上に保持された加工対象物22に対してレーザ加工処理を行なう。詳細は後述するが、加工対象物22においては、材質の異なる部分がレーザ光の走査方向に沿って並んで設けられている。換言すると、レーザ加工装置20は、材質の異なる部分がレーザ光の走査方向に沿って並んで設けられた加工対象物22に対し、レーザ加工処理を行なう。
【0016】
レーザ加工装置20は、出射部23、走査部24、および制御部25を備える。出射部23は、レーザ光を生成して出射する。出射部23から出射されたレーザ光は、レーザ光のビームパラメータを変換する光学系もしくは光ファイバ等を介して走査部24へ伝送される。走査部24は、たとえばレンズおよびスキャナミラーなどを利用してレーザ光Lを加工対象物22に向けて照射する。走査部24は、加工対象物22とレーザ光Lのビームスポットとの相対位置を変化させることにより、加工対象物22上でレーザ光Lを所定の走査方向に沿って走査する。これにより、加工対象物22の一部が除去(切削加工)される。
【0017】
制御部25は、出射部23および走査部24を制御する。制御部25は、加工対象物22の一部(すなわち、加工対象物22のうち、レーザ加工によって除去される部分)を、複数の加工レイヤーとして設定し、レーザ光の走査を行う際、複数の加工レイヤーの各々の加工条件(いわゆる加工レシピ)に基づいて出射部23および走査部24を制御する。
【0018】
加工条件には、レーザ光の出力エネルギー、レーザ光のパルス周波数、レーザ光の走査速度、レーザ光の走査ピッチ、レーザ光の加工面上におけるスポット径、レーザ光の加工面上におけるスポット形状、レーザ光の走査軌跡、レーザ光の走査回数、および、レーザ光のON/OFFのタイミング(デューティ比)などを含むことができる。
【0019】
たとえばCAD(Computer Aided Design)装置を利用し、形状データを生成する。たとえばCAM(Computer Aided Manufacturing)装置は、CAD装置から入力された形状データ、もしくは直接的に編集される形状データに基づいて、レーザ加工装置20が加工対象物22を加工するための加工データ(形状データと加工条件との組合せ)を生成し、記憶する。CAM装置はさらに、決められた順序のプログラム(例えばNCコードやシーケンス処理コード)を生成する。本開示に基づくレイヤーの加工方法の加工条件は、以上のようにして指定することができる。制御部25は、このようにして指定された、複数の加工レイヤーの各々の加工条件に基づいて、出射部23および走査部24を同期して協調しながら制御する。
【0020】
[リードフレーム1]
加工対象物22(図1)は、その構成要素として、以下に示すリードフレーム1を含むことができる。図2は、リードフレーム1の裏面1b側から見た構成を示す平面図であり、図3は、リードフレーム1の一部(リード部3、タイバー4および溝部5)の裏面1b側から見た構成を示す斜視図である。
【0021】
図2は、リードフレーム1の断面構成を表しているものではないが、図示上の便宜のため、リードフレーム1を構成している部分に、斜め方向に延びるハッチング線を付与している。ここでは2種類のハッチング線を使用しており、その違いについては後述する。図2図3には、説明上の便宜のため、長さ方向S、幅方向W、および高さ方向Hを図示しており、以下の説明では、これらの方向を適宜参照する。これらの方向は、図4以降の図面にも同様に適宜図示している。
【0022】
図2に示すように、リードフレーム1は、長さ方向Sおよび幅方向Wの双方に沿って延びる、略板状の形状を有する。リードフレーム1は、半導体チップ6(図4図5)が搭載される側に位置する表面1aと、表面1aの反対側に位置する裏面1bとを有し、銅などの金属から構成される。リードフレーム1は、複数のダイパッド2、複数のリード部3(図3)、および、複数のタイバー4(図3)を含む。
【0023】
(ダイパッド2、リード部3、タイバー4)
複数のダイパッド2は、長さ方向Sおよび幅方向Wの双方に間隔を空けて配列されている。ダイパッド2は、ダイパッド2の表面1a上に半導体チップ6が搭載される部位である(図5参照)。図2に示すように、複数のダイパッド2の各々の周囲(四方)に、複数のリード部3が矩形状に並んで配置されている。複数のリード部3の各々は、厚肉部3aと薄肉部3bとを有する(図3図4)。
【0024】
リード部3の表面のうち、厚肉部3aと薄肉部3bとの間の部分には、凹所形成部3c(図3)が形成されている。半導体装置をプリント基板上に実装する際に、プリント基板のランド13(図15)とリード部3とが、はんだ14を介して接続される。この際、凹所形成部3cの内側(凹所)に、はんだ14(図15参照)が溜まることで、はんだ14の濡れ性が向上し、より良好なはんだ接合構造を得ることが可能になる。
【0025】
図2を再び参照して、複数のダイパッド2の各々を取り囲むように、複数のタイバー4が格子状に配置されている。1つのタイバー4の両側に、複数のリード部3が設けられており、複数のリード部3は、タイバー4の延在方向に沿って間隔をあけて並んでいる。リード部3においては、厚肉部3aが薄肉部3bを介してタイバー4に連結している。高さ方向Hにおいて、ダイパッド2および厚肉部3aは、薄肉部3bよりも大きな高さ寸法(すなわち厚み)を有する。
【0026】
ダイパッド2および厚肉部3aには、図2の紙面右上側から左下側に向かって延びるハッチング線を付与している。リード部3の薄肉部3bおよびタイバー4に、図2の紙面左上側から右下側に向かって延びるハッチング線を付与している。
【0027】
(溝部5)
図3を参照して、ここで、タイバー4、リード部3の厚肉部3aおよび薄肉部3bについて、図3に示す「高さ方向Hの負側」に位置する表面に着目すると、これらの表面の高さ位置は同じである。一方で、図3に示す「高さ方向Hの正側」に位置する表面に着目すると、タイバー4の表面の高さ位置およびリード部3の薄肉部3bの表面の高さ位置よりも、リード部3の厚肉部3aの表面の高さ位置は、高い。
【0028】
つまり、タイバー4の上記正側の表面およびリード部3の薄肉部3bの上記正側の表面は、リード部3の厚肉部3aの上記正側の表面に対して凹んだ形状を呈しており、この構造により、リードフレーム1においては、タイバー4の裏面1b(図2)側に、高さ方向Hおよび幅方向Wの各々に沿って延びる格子状の溝部5が形成されている。
【0029】
溝部5は、リードフレーム1を高さ方向H方向に貫通するものではなく、例えば、リードフレーム1(厚肉部3a)の半分の溝深さを有し、リードフレーム1をエッチング(ウェットエッチング)することにより形成可能である。溝幅は例えば0.40mm~0.50mmである。溝幅及び溝深さは、後工程で変形等の不具合が生じない程度の強度を確保すること、後工程で良好な外観検査が行えること、完成品である半導体装置の良好な実装強度などを考慮して、設定すればよい。
【0030】
[半導体装置の製造方法]
図4は、半導体装置の製造方法に関し、準備工程において準備されるリードフレーム1と複数の半導体チップ6とを、リードフレーム1の表面1a側から視た様子を示す平面図である。図5は、図4中のV-V線に沿った矢視断面図であり、リードフレーム1のダイパッド2上に半導体チップ6がボンディングされた状態を示している。
【0031】
半導体装置の製造方法は、準備工程、成形工程、レーザ加工工程、メッキ工程、および切断工程を含む。詳細は後述するが、成形工程においては、リードフレーム1とリードフレーム1に搭載された複数の半導体チップ6とを、樹脂材9(図6参照)により封止することで、樹脂成形品11(図6)を形成する。レーザ加工工程では、樹脂成形品11の溝部5上で長さ方向Sに沿ってレーザ光L2(図8)を走査することにより、溝部5内の樹脂材9を除去する。
【0032】
実施の形態の半導体装置の製造方法においてはさらに、切断工程(図13参照)が実施される。切断工程では、ブレード12を用いてリードフレーム1および樹脂材9の全厚さ部分が切断される。樹脂成形品11が、溝部5に沿って切断されることにより、個片化された単位樹脂成形品(半導体装置11)が形成される。以下、各工程について詳述する。
【0033】
(準備工程)
図4図5に示すように、各半導体チップ6に設けられた複数の電極が、ボンディングワイヤ7を介してリード部3(厚肉部3a)に電気的に接続される。なお便宜上、図4にボンディングワイヤ7を図示していない。
【0034】
(成形工程)
図6は、成形工程が行なわれた状態を示す断面図である。成形工程においては、半導体チップ6がボンディングされた状態で、リードフレーム1及び半導体チップ6を樹脂材9により封止する。これにより樹脂成形品11が得られる。図5および図6に示すように、成形工程の前に、リードフレーム1の溝部5の側に、保護フィルム8(例えばポリイミド樹脂テープ)を貼り付けて、保護フィルム8を貼り付けた上で樹脂封止を行なうとよい。
【0035】
半導体装置の製造方法は、成形工程と次述するレーザ加工工程との間に、樹脂成形品11におけるリードフレーム1の溝部5とは反対側の表面9a(図6)に、レーザ光L1を照射することによるレーザマーキングを行なう工程をさらに含んでいてもよい。パルスレーザを用いて、走査光学系により走査することにより、型番やシリアルNoなどの任意の情報を印字可能である。
【0036】
図7に示すように、次述するレーザ加工工程を行なう前に保護フィルム8がリードフレーム1から剥がされる。保護フィルム8の除去により、リードフレーム1の溝部5内に形成されている樹脂材9(9b)が露出する。なお、保護フィルム8は、図6を参照しながら説明したレーザマーキングを行なう工程の前に、リードフレーム1から剥がしてもよい。
【0037】
(レーザ加工工程)
図8図10は、それぞれ、レーザ加工工程を行なっている様子を示す断面図、斜視図、および平面図である。レーザ加工工程においては、材質の異なる部分がレーザ光の走査方向に沿って並んで設けられた領域を有する樹脂成形品11(加工対象物)に対し、この領域に向かってレーザ光L2を照射しながらレーザ加工処理を行なう。
【0038】
ここでは、溝部5内の樹脂材9(9b)にレーザ光L2を照射し、レーザ光L2が走査方向ARに沿って走査される。溝部5の内側の表層部は、樹脂材から形成されている。一方で、溝部5の内側の中層部(表層部の下側)においては、材質の異なる部分、すなわち、樹脂材9と薄肉部3bとが、あるいは樹脂材9と凹所形成部3cとが、レーザ光L2の走査方向ARに沿って並んで設けられている。この領域に向けて、レーザ光L2が照射される。この領域においては、リード部3(薄肉部3bおよび凹所形成部3c)は金属である。金属および樹脂として一般的な材質が採用される場合には、樹脂材9はレーザ光で加工されやすく、リード部3はレーザ光で加工されにくい。つまり、樹脂材9とリード部3とでは、加工レートが大きく異なる(詳細は後述する)。レーザ光L2は、走査ピッチPTで幅方向にずらしながら、複数回走査される。
【0039】
レーザ加工工程では、制御部25(図1)が、樹脂成形品11(加工対象物)の一部(すなわち、溝部5内の樹脂材9(9b))を、複数の加工レイヤーとして設定し、レーザ光の走査を行う際に、複数の加工レイヤーの各々の加工条件に基づいて出射部23および走査部24を制御する。レーザ加工工程の加工条件に関するさらなる詳細については後述する。
【0040】
なお、レーザ光L2としては、パルスレーザとして、レーザ光発振装置にYAGレーザやYVO4レーザ又はこれらから発せられたレーザ光を第2高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)材料により波長変換するグリーンレーザ、もしくは、第3高調波発生(THG:Third Harmonic Generation)材料により波長変換する紫外レーザを利用可能である。パルス幅に関しては、ナノ秒やピコ秒などを発生するレーザを利用可能である。また、制御部25(図1)によって出射部23および走査部24を制御することにより、レーザ光L2による加工条件を変化させることができる。樹脂材9(9b)の材質や樹脂材9(9b)のサイズ(溝部5の溝幅等)に応じて、樹脂材9(9b)を効率よく除去できるように、レーザ光L2の波長、出力、レーザ集光径、照射時間などが最適化される。
【0041】
(メッキ工程)
図11は、レーザ加工工程の実施後の状態を示す斜視図である。図12は、メッキ工程が行なわれた後の様子を示す断面図である。図11に示すように、レーザ加工工程の実施により、溝部5内の樹脂材が除去され、タイバー4の表面、薄肉部3bの表面、および、凹所形成部3cの表面が露出する。溝部5が顕在化する。
【0042】
図12に示すように、溝部5内の樹脂材を除去した後、リードフレーム1にメッキ処理を行なう。リードフレーム1のダイパッド2の表面、リードフレーム1のタイバー4の表面4v、リード部3の薄肉部3bの表面、および凹所形成部3cに、メッキ層10が形成される。メッキ層10の材料としては、実装に用いられるはんだ材料に応じて、はんだ濡れ性が良好な材料を選定することができる。例えば、Sn(錫)系のはんだを用いる場合には、錫(Sn)、錫-銅合金(Sn-Cu)、錫-銀合金(Sn-Ag)、錫-ビスマス(Sn-Bi)などを用いることができ、リードフレーム1側の下地にNiを用いた積層体のメッキ層10とすることもできる。
【0043】
メッキ工程においては、リードフレーム1に所定の洗浄処理を行なってからメッキ処理を行なうとよい。メッキ工程の前処理のリードフレーム1の表面処理として、洗浄処理に加え、酸化膜の除去、表面活性化などのための処理を行なってもよい。溝部5内の樹脂材9はレーザ光の照射を受けて改質(例えば炭化)していることがあり、多少の樹脂材9が残存した場合であっても、改質した樹脂材9はメッキ処理を行なう前の洗浄処理等の表面処理によって溝部5内から除去できる。
【0044】
(切断工程)
図13に示すように、メッキ処理が行なわれたリードフレーム1を溝部5に沿って切断する。この切断工程では、ブレード12を用いてリードフレーム1および樹脂材9の全厚さ部分を切断する。切断工程の実施により、複数の単位樹脂成形品としての半導体装置11が得られる。図14に示すように、半導体装置11は、平面視した場合に製品の外方に向けて電気的接続用のリードが突出していないQFNタイプのノンリード型の製品である。
【0045】
図15に示すように、半導体装置11においては、各リード部3の側部(片部)に段差が形成されており、リード部3の側面3dにおいては、メッキ層10が形成されておらず元の金属が露出している。半導体装置11は例えば、樹脂材9の側を上にしてリード部3の側を下にして、プリント基板に実装される。プリント基板には、リード部3に対応する位置にランド13が形成されており、はんだ14を介してリード部3とランド13とが接続される。この際、凹所形成部3cの内側(凹所)に、はんだ14が溜まることで、はんだ14の濡れ性が向上し、より良好なはんだ接合構造を得ることが可能になる。
【0046】
[レーザ加工工程における加工条件]
以下、図16図21を参照しながら、上述の半導体装置の製造方法に適用可能なレーザ加工の加工条件について説明する。以下の内容は、半導体装置の製造方法に限られず、任意のレーザ加工方法にも適用可能である。
【0047】
上述のとおり、レーザ加工装置20(図1)によって、図8図10に示される樹脂成形品に対してレーザ加工処理が行なわれる。加工対象物は、溝部5が形成されたリードフレーム1に半導体チップ6がボンディングされた状態で、リードフレーム1および半導体チップ6が樹脂材9により封止されたものであり、加工対象物の一部とは、溝部5を埋めるように設けられた樹脂材9のことである。
【0048】
このような加工対象物(樹脂成形品)においては、材質の異なる部分がレーザ光の走査方向AR(図9)に沿って並んで設けられている。レーザ加工工程においては、材質の異なる部分がレーザ光の走査方向ARに沿って並んで設けられた領域を有する樹脂成形品(加工対象物)に対し、この領域に向かってレーザ光L2を照射しながらレーザ加工処理を行なう。溝部5内の樹脂材9にレーザ光L2を照射するとともにレーザ光L2を走査方向ARに走査して溝部5内の樹脂材9を除去する。
【0049】
加工対象物の一部(レーザ加工によって除去される部分、ここでは、溝部5の内側に存在している樹脂材9)が、複数の加工レイヤーとして予め設定されており、レーザ光の走査を行う際、制御部25は、複数の加工レイヤーの各々毎の加工条件に基づいて出射部23および走査部24を制御する。複数の加工レイヤーの各々の加工条件は、上記領域(材質の異なる部分がレーザ光の走査方向ARに沿って並んで設けられた領域)における材質の異なる部分の位置に基づき設定されている。
【0050】
たとえば、複数のうちの任意2つの加工レイヤーの加工条件同士を比較した場合、レーザ光のエネルギー、レーザ光のパルス周波数、レーザ光の走査速度、および、レーザ光の走査ピッチのうちの少なくとも1つの値が互いに相違するように(上記領域における材質の異なる部分の位置に基づき)設定される。これらに加えて、走査回数が各々のレイヤーの加工条件に設定される。複数のうちの任意2つの加工レイヤーの加工条件同士を比較した場合、走査回数も、互いに相違するように設定されてよい。なお、深さを示す高さ方向Hの加工レートが大きくなる条件とは、たとえば、エネルギーが高いこと、パルス周波数が高いこと、走査速度が遅いこと、走査ピッチが狭いことなどがあげられる。たとえば、走査速度を遅くしたとしても、レーザ光のエネルギーが小さくなっていれば、トータルで見た加工レートを小さくすることが可能であり、加工レートや加工位置精度は、これらを含む種々の加工条件を総合的に考慮して設定することが可能である。
【0051】
半導体装置の製造方法においては、加工対象物の上記領域においては、樹脂材(樹脂材9)および金属(薄肉部3bおよび凹所形成部3cの各表面)が走査方向ARに沿って並んで設けられており、複数の加工レイヤーの各々の加工条件は、この領域における樹脂材および金属の位置に基づき設定されている。複数の加工レイヤーの各々の加工条件の例として、図16図19に示す例を挙げることができる。以下に示す第1~第4実施形態は、単独でまたは組み合わせて実施することが可能である。
【0052】
(第1実施形態)
図16は、レーザ加工工程の第1実施形態を説明するための表である。第1実施形態においては、レーザ光の照射方向および走査方向の双方に直交する方向における寸法を幅と定義すると、複数のうちの任意2つの加工レイヤーの加工条件同士を比較した場合、レーザ光が照射される範囲の幅が互いに相違している。
【0053】
具体的には、加工順は、レイヤー1、レイヤー2、およびレイヤー3の順番に実施される。レイヤー1においては、表層部から深さY1までの範囲に対してレーザ加工が実施される。この際、加工範囲の幅は、たとえば、表層部から深さY1までの範囲の溝幅に対応させる。
【0054】
レイヤー2においては、深さY1から深さY2までの範囲に対してレーザ加工が実施される。この際、加工範囲の幅は、たとえば、深さY1から深さY2までの範囲の溝幅に対応させる。レイヤー2における加工範囲の幅は、レイヤー1における加工範囲の幅よりも狭い。同様に、レイヤー3においては、深さY2から深さY3までの範囲に対してレーザ加工が実施される。この際、加工範囲の幅は、たとえば、深さY2から深さY3までの範囲の溝幅に対応させる。レイヤー3における加工範囲の幅は、レイヤー2における加工範囲の幅よりも狭い。
【0055】
すなわち、複数の加工レイヤーの各々の加工条件は、少なくとも「加工範囲の幅」という加工条件について、樹脂材(樹脂材9)および金属(薄肉部3bおよび凹所形成部3cの各表面)が走査方向ARに沿って並んで設けられている領域と、そうでない領域とで相違しており、ここでは特に、加工条件が溝部5の内表面の形状に応じて設定されている。
【0056】
具体的には、レイヤー1~3の順に、加工範囲の幅が狭くなるように設定されている。ここでは、複数の加工レイヤーの各々の加工条件は、加工対象物のうちの材質の異なる部分の断面形状に応じて設定されている。この構成によれば、リード部3における薄肉部3bおよび凹所形成部3cが過剰に切削されることを抑制したり、これらの部位と長さ方向S(走査方向)において隣り合う樹脂材9の表面が過剰に切削されることを抑制したりすることが可能となる。
【0057】
レイヤー毎に細かく加工条件を調節することで、面粗さや精度を所望の状態とし、バリやチッピングの発生を抑制することも可能となり、さらには、たとえば加工レートを調節して、荒加工と微調整加工とをより短時間で実現することも可能となる。
【0058】
他にもたとえば、上記のような加工条件によって、加工対象物の加工面を所望の形状または品質に調整することができ、リード部3における薄肉部3bおよび凹所形成部3cの表面と、長さ方向S(走査方向)において隣り合う樹脂材9の表面とを面一あるいはほぼ面一に設定することも可能になる。このような作用および効果を得るための加工条件は、上記領域(材質の異なる部分がレーザ光の走査方向ARに沿って並んで設けられた領域)における品質向上を企図できるものであり、上記領域における材質の異なる部分の位置に基づき設定されているといえる。
【0059】
(第2実施形態)
図17は、レーザ加工工程の第2実施形態を説明するための表である。第2実施形態の場合、レイヤー1,2においては、加工範囲の幅は同一であるが、レーザ光のエネルギーが、レイヤー1が高く、レイヤー2が低く設定される。さらに、レイヤー3においては、加工範囲の長さ(走査方向における加工範囲の長さ)が変化する。
【0060】
すなわち、複数のうちの任意1つの加工レイヤー(ここではレイヤー3)の加工条件は、レーザ光が照射され走査方向に並ぶ第1範囲R1および第2範囲R2同士を比較した場合、レーザ光のエネルギー、レーザ光のパルス周波数、レーザ光の走査速度、および、レーザ光の走査ピッチのうちの少なくとも1つの値が互いに相違している。
【0061】
ここでは、レイヤー3の第1範囲R1においては、幅方向におけるすべての領域にレーザ光が照射される。一方で、レイヤー3の第2範囲R2においては、幅方向における中央の領域にのみレーザ光が照射される。第1範囲R1とは、たとえばリード部3が設けられている領域に対応し、薄肉部3bの表面および凹所形成部3cの表面に向けた切削加工が実施される。第2範囲R2は、たとえばリード部3が設けられていない領域に対応する。走査方向において隣り合うリード部3,3の間の樹脂材9には、切削加工を実施しないか、実施の程度を小さくする。
【0062】
樹脂材(樹脂材9)および金属(薄肉部3bおよび凹所形成部3cの各表面)が走査方向ARに沿って並んで設けられている領域と、そうでない領域とで加工条件が相違している。このような構成によっても、たとえば、リード部3における薄肉部3bおよび凹所形成部3cの表面と、長さ方向S(走査方向)において隣り合う樹脂材9の表面とを面一あるいはほぼ面一に設定することが可能になる。このような作用および効果を得るための加工条件も、上記領域(材質の異なる部分がレーザ光の走査方向ARに沿って並んで設けられた領域)における品質向上を企図できるものであり、上記領域における材質の異なる部分の位置に基づき設定されているといえる。
【0063】
(第3実施形態)
図18は、レーザ加工工程の第3実施形態を説明するための表である。上述の第1,第2実施形態においては、レイヤー1~3が、レーザ光の照射方向に積み上げられたものとして設定されている。一方で、図18に示す第3実施形態の場合、レイヤー1,2の加工範囲の高さが、略同一なものとして設定され、一方で加工範囲の幅方向における位置が、互いに相違している。
【0064】
レイヤーY1の加工条件として設定された内容で第1段階のレーザ加工が実施され、レイヤーY2の加工条件として設定された内容で第2段階のレーザ加工が実施される。第1段階では、幅方向における中央寄りの部分のみに対して樹脂材の除去が行われ、第2段階では、幅方向における両端寄りの部分のみに対して樹脂材の除去が行われる。図18に示すように、レーザ光のエネルギーは、第1段階よりも第2段階の方を低くしてもよい。
【0065】
樹脂材(樹脂材9)および金属(薄肉部3bおよび凹所形成部3cの各表面)が走査方向ARに沿って並んで設けられている領域と、そうでない領域とで加工条件が相違している。たとえば、幅方向における両端寄りの部分に供給される熱量を低減することで、半導体チップ6への熱的影響を小さくすることも可能である。
【0066】
また、このような構成によっても、たとえば、リード部3における薄肉部3bおよび凹所形成部3cの表面と、長さ方向S(走査方向)において隣り合う樹脂材9の表面とを面一あるいはほぼ面一に設定することが可能になる。このような作用および効果を得るための加工条件も、上記領域(材質の異なる部分がレーザ光の走査方向ARに沿って並んで設けられた領域)における品質向上を企図できるものであり、上記領域における材質の異なる部分の位置に基づき設定されているといえる。
【0067】
(第4実施形態)
図19は、レーザ加工工程の第4実施形態を説明するための表である。第4実施形態においても、複数のうちの任意1つの加工レイヤー(ここではレイヤー2)の加工条件が、レーザ光が照射され走査方向に並ぶ第1範囲R1および第2範囲R2同士を比較した場合、レーザ光のエネルギー、レーザ光のパルス周波数、レーザ光の走査速度、および、レーザ光の走査ピッチのうちの少なくとも1つの値が互いに相違している。樹脂材(樹脂材9)および金属(薄肉部3bおよび凹所形成部3cの各表面)が走査方向ARに沿って並んで設けられている領域と、そうでない領域とで加工条件が相違している。
【0068】
第4実施形態においては、レイヤーY2の第1範囲R1の幅方向における両端部において、幅方向にレーザ光が走査される。図20に示すように、当該構成によれば、たとえばリード部3の凹所形成部3cの表面形状を、凹凸形状CRを有するように、積極的に改変することが可能となり、たとえば、リード部3の凹所形成部3cにおけるはんだの濡れ性を所望のものに調整することが可能になる。表面形状の凹凸形状CRは、メッキ工程によりメッキ層10が形成された後であっても、面粗さを維持可能であり、はんだの流動性や付着性、つまり濡れ性を向上させて、はんだ欠陥を防ぐために適した加工条件で形成することができる。
【0069】
図21を参照して、第4実施形態(図19図20)の変形例としては、レイヤーY2の第1範囲R1の幅方向における両端部において、長さ方向にレーザ光を走査してもよい。当該構成によって、リード部3の凹所形成部3cの表面に凹凸形状を形成し、たとえば、リード部3の凹所形成部3cにおけるはんだの濡れ性を所望のものに調整することが可能になる。
【0070】
また、上記のような構成によっても、リード部3における薄肉部3bおよび凹所形成部3cの表面と、長さ方向S(走査方向)において隣り合う樹脂材9の表面とを面一あるいはほぼ面一に設定することが可能になる。このような作用および効果を得るための加工条件も、上記領域(材質の異なる部分がレーザ光の走査方向ARに沿って並んで設けられた領域)における品質向上を企図できるものであり、上記領域における材質の異なる部分の位置に基づき設定されているといえる。
【0071】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 リードフレーム、1a,4v,9a 表面、1b 裏面、2 ダイパッド、3 リード部、3a 厚肉部、3b 薄肉部、3c 凹所形成部、3d 側面、4 タイバー、5 溝部、6 半導体チップ、7 ボンディングワイヤ、8 保護フィルム、9 樹脂材、10 メッキ層、11 樹脂成形品(半導体装置)、12 ブレード、13 ランド、14 はんだ、20 レーザ加工装置、21 ステージ、22 加工対象物、23 出射部、24 走査部、25 制御部、AR 走査方向、H 高さ方向、L,L1,L2 レーザ光、R1 第1範囲、R2 第2範囲、S 長さ方向、W 幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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