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特開2023-89785ボルト緩み検知装置及びボルト緩み検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089785
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ボルト緩み検知装置及びボルト緩み検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/00 20190101AFI20230621BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20230621BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G01M13/00
F16B31/02 Z
F16B7/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204510
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】大窪 一正
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】玉野 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】十川 貴行
(72)【発明者】
【氏名】デヴィン グナワン
【テーマコード(参考)】
2G024
3J039
【Fターム(参考)】
2G024AA03
2G024BA25
2G024CA13
2G024FA04
3J039AA03
3J039BB04
3J039FA04
3J039FA12
(57)【要約】
【課題】設置を容易に行うことができると共に、緩みの点検作業を省力化できるボルト緩み検知装置及びボルト緩み検知方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るボルト緩み検知装置10は、ボルト締結部1の振動を検知する振動検知センサ12と、振動検知センサ12を支持すると共にボルト締結部1に固定されるセンサ支持部材13と、振動検知センサ12に接続されると共にボルト締結部1から離れた遠隔地に設けられており、振動検知センサ12によって検知された振動を計測する計測機と、計測機の計測結果からボルト締結部1の緩みを検知する検知装置と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト及びナットを有するボルト締結部の緩みを検知するボルト緩み検知装置であって、
前記ボルト締結部の振動を検知する振動検知センサと、
前記振動検知センサを支持すると共に前記ボルト締結部に固定されるセンサ支持部材と、
前記振動検知センサに接続されると共に前記ボルト締結部から離れた遠隔地に設けられており、前記振動検知センサによって検知された振動を計測する計測機と、
前記計測機の計測結果から前記ボルト締結部の緩みを検知する検知装置と、
を備えたボルト緩み検知装置。
【請求項2】
前記計測機は、前記ボルトの緩みがない状態における前記ボルト締結部の振動特性を記憶し、
前記検知装置は、前記計測機に記憶されている前記振動特性に対し、前記振動検知センサからの振動の振動特性が変化したことを前記ボルト締結部の緩みとして検知する、
請求項1に記載のボルト緩み検知装置。
【請求項3】
前記センサ支持部材は、前記ナット、又は前記ボルトの頭部が嵌合する穴を有し、前記穴に前記ナット、又は前記ボルトの頭部が嵌合することによって前記ボルト締結部に固定される、
請求項1又は2に記載のボルト緩み検知装置。
【請求項4】
前記振動検知センサは、前記センサ支持部材に巻き付けられた光ファイバケーブルである、
請求項1~3のいずれか一項に記載のボルト緩み検知装置。
【請求項5】
前記センサ支持部材は、巻き付けられる前記光ファイバケーブルが挿入される溝を有する、
請求項4に記載のボルト緩み検知装置。
【請求項6】
複数の前記センサ支持部材を備え、
複数の前記センサ支持部材は、1本の前記振動検知センサに直列接続されており、
前記計測機は、1本の前記振動検知センサの端部に接続されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載のボルト緩み検知装置。
【請求項7】
ボルト及びナットを有するボルト締結部の緩みを検知するボルト緩み検知方法であって、
前記ボルト締結部の振動を検知する振動検知センサを支持するセンサ支持部材を前記ボルト締結部に固定する工程と、
前記振動検知センサによって検知された振動から前記ボルトの緩みがない状態における前記ボルト締結部の振動の振動特性を、前記ボルト締結部から離れた遠隔地に設けられる計測機が記憶する工程と、
前記記憶する工程において記憶されている前記振動特性に対し、前記振動検知センサからの振動の振動特性が変化したことを前記ボルト締結部の緩みとして検知する工程と、
を備える、
ボルト緩み検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボルト及びナットを有するボルト締結部の緩みを検知するボルト緩み検知装置及びボルト緩み検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-26134号公報には、構造物等のボルトに締め付けられているナットの緩みを検知するナット緩みセンサが記載されている。ナット緩みセンサは、ナットに取り付けられる磁石付きのナットキャップと、ボルトに取り付けられる2つの出力端子付きのボルトキャップとを備える。
【0003】
ナット緩みセンサは、磁石に取り付けられる左側接点用端子及び右側接点用端子と、2つの出力端子のそれぞれから延びる2本の電線とを更に備える。2本の電線のうちの一方は左側接点用端子を介して磁石に接続されており、2つの電線のうちの他方は右側接点用端子を介して磁石に接続されている。
【0004】
ナット緩みセンサでは、ボルトの使用中に継続的な振動等の影響でナットが緩み、ボルトに対するナットの反時計回りの回転変位が一定以上発生した場合、左側接点用端子につながる電線が出力端子に引っ掛かる。そして、ナットの回転変位に追随しきれず電線が磁石から離れ、2つの出力端子間に導通がない状態となる。この状態を検知することによってナットの緩みが検知される。
【0005】
特開2005-69312号公報には、ボルト緩み検知用ワッシャが記載されている。このワッシャは、長方形状を呈し、長手方向の一方側に貫通孔を有し、長手方向の他方側に圧電素子を有する。このワッシャは、ボルト及びナットの間に位置する2枚の平ワッシャに挟まれる。
【0006】
このワッシャの圧電素子には、波形発生装置によって生成された一定の周期で変化する信号電圧が入力される。これに伴い、圧電素子はワッシャの厚み方向に振動し、そのときの入力電圧が入力信号データとされる。一方、上記の振動で圧電素子に生じる電荷を電圧信号に変換して出力信号データが得られる。
【0007】
入力信号データ及び出力信号データからワッシャの固有振動数を算出する。そして、一定期間経過後、同様の方法でワッシャの固有振動数を算出し、算出した固有振動数を一定経過前の固有振動数と比較し、固有振動数の値に低下が見られた場合にボルトに緩みが生じていると判断される。
【0008】
特開2020-148504号公報には、軸力部材の緩み検知システム、及び軸力部材の緩み検知方法が記載されている。緩み検知システムは、検査対象のボルトに外力を加える打鍵装置と、当該外力によって生じたボルトの振動を音として測定する集音装置とが一体とされた打鍵音収録装置を備える。
【0009】
打鍵音収録装置は、延長ポールの先端に取り付けられ、磁石等で取付部材に固定される。打鍵装置には、モータとカムとバネが組み込まれており、ボルトの頭部の周面を一定時間間隔で動く鍵で打鍵することができる。この打鍵によって生じた音が集音装置によって集音される。そして、集音された音から検査対象のボルトの緩みの有無が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-26134号公報
【特許文献2】特開2005-69312号公報
【特許文献3】特開2020-148504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したナット緩みセンサは、2本の電線を介して互いに接続されたナットキャップ及びボルトキャップを備え、ボルトに対するナットの回転に伴う非導通状態からナットの緩みを検知する。よって、ナットに対するナットキャップの設置、及びボルトに対するボルトキャップの設置等を行わなければ取り付けられないので、設置が煩雑であるという問題が生じうる。更に、このナット緩みセンサは、実際にナットが回転して電線の非導通状態とならなければナットの緩みを検知できないので、緩みの予兆まで検知することはできない。
【0012】
前述したボルト緩み検知用ワッシャは、ボルトが通される貫通孔と、圧電素子とを備えた長方形状を呈する。このワッシャは、特殊な構造を有すると共に、2枚の平ワッシャの間に挟まなければならないので、設置が煩雑であるということが起こりうる。
【0013】
前述した緩み検知システムは、延長ポールの先端に取り付けられており打鍵装置と集音装置とが一体とされた打鍵音収録装置を備える。この緩み検知システムでは、実際にボルトがある現場まで出向き、打鍵装置でボルトの周面を打鍵して音を集音しなければボルトの緩みを検知できない。従って、わざわざ現場に行かなければ緩みの検知をできないので、緩みの点検作業に多大な労力を要するという問題がある。
【0014】
本開示は、設置を容易に行うことができると共に、緩みの点検作業を省力化できるボルト緩み検知装置及びボルト緩み検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係るボルト緩み検知装置は、ボルト及びナットを有するボルト締結部の緩みを検知するボルト緩み検知装置である。ボルト緩み検知装置は、ボルト締結部の振動を検知する振動検知センサと、振動検知センサを支持すると共にボルト締結部に固定されるセンサ支持部材と、振動検知センサに接続されると共にボルト締結部から離れた遠隔地に設けられており、振動検知センサによって検知された振動を計測する計測機と、計測機の計測結果からボルト締結部の緩みを検知する検知装置と、を備える。
【0016】
このボルト緩み検知装置は、ボルト締結部の振動を検知する振動検知センサがセンサ支持部材に支持されており、センサ支持部材はボルト締結部に固定される。よって、ボルト締結部にセンサ支持部材を固定して振動検知センサの設置を行うことができるので、ボルト締結部に対するボルト緩み検知装置の設置を容易に行うことができる。ボルト緩み検知装置は遠隔地に設けられる計測機と検知装置とを備える。検知装置は、計測機によって計測されたデータを処理するデータ処理装置である。計測機は、ボルト締結部から離れた遠隔地に設けられる。従って、ボルト締結部がある現場まで行かなくてもボルト締結部の点検を行うことができるので、緩みの点検作業を省力化することができる。
【0017】
計測機は、ボルトの緩みがない状態におけるボルト締結部の振動特性を記憶し、検知装置は、計測機に記憶されている振動特性に対し、振動検知センサからの振動の振動特性が変化したことをボルト締結部の緩みとして検知してもよい。この場合、計測機はボルトの緩みがない状態におけるボルト締結部の振動特性を記憶している。検知装置は、ボルトの緩みがない状態における振動特性に対する、振動検知センサによって検知された振動の振動特性の変化をボルト締結部の緩みとして検知する。振動特性の変化をボルト締結部の緩みとして検知することにより、ボルト締結部の緩みを高精度に検知できる。
【0018】
センサ支持部材は、ナット、又はボルトの頭部が嵌合する穴を有し、穴にナット、又はボルトの頭部が嵌合することによってボルト締結部に固定されてもよい。この場合、センサ支持部材の穴にナット、又はボルトの頭部を嵌合させてボルト締結部へのセンサ支持部材の固定を行える。従って、ボルト緩み検知装置の設置を一層容易に行うことができる。
【0019】
振動検知センサは、センサ支持部材に巻き付けられた光ファイバケーブルであってもよい。この場合、ボルト締結部における振動をより高精度に検知できる。すなわち、光ファイバケーブルでは、光ファイバケーブルが接触する箇所に沿って振動に伴うひずみの変化を連続的且つ分布的に検知可能であるため、ボルト締結部の緩みを一層高精度に検知できる。
【0020】
センサ支持部材は、巻き付けられる光ファイバケーブルが挿入される溝を有してもよい。この場合、センサ支持部材の溝に光ファイバケーブルを挿入することにより、センサ支持部材に対する光ファイバケーブルの巻き付けを容易に行うことができる。また、溝に光ファイバケーブルが挿入されることにより、光ファイバケーブルを溝の内部で保護することができる。従って、光ファイバケーブルの断線の可能性を一層低減させることができる。
【0021】
ボルト緩み検知装置は、複数のセンサ支持部材を備え、複数のセンサ支持部材は、1本の振動検知センサに直列接続されており、計測機は、1本の振動検知センサの端部に接続されていてもよい。この場合、1本の振動検知センサに複数のセンサ支持部材が直列接続されているので、互いに離れた複数のボルト締結部の振動を1本の振動検知センサで検知できる。従って、簡易な構成で複数箇所のボルト締結部の緩みの検査を行えるので、複数のボルト締結部に対する点検作業を現場に出向かずに一層容易に行うことができる。
【0022】
本開示に係るボルト緩み検知方法は、ボルト及びナットを有するボルト締結部の緩みを検知するボルト緩み検知方法である。ボルト緩み検知方法は、ボルト締結部の振動を検知する振動検知センサを支持するセンサ支持部材をボルト締結部に固定する工程と、振動検知センサによって検知された振動からボルトの緩みがない状態におけるボルト締結部の振動の振動特性を、ボルト締結部から離れた遠隔地に設けられる計測機が記憶する工程と、記憶する工程において記憶されている振動特性に対し、振動検知センサからの振動の振動特性が変化したことをボルト締結部の緩みとして検知する工程と、を備える。
【0023】
このボルト緩み検知方法では、ボルト締結部の振動を検知する振動検知センサを支持するセンサ支持部材が当該ボルト締結部に固定される。従って、センサ支持部材をボルト締結部に固定することによって振動検知センサの設置が行われるので、ボルト締結部に対するボルト緩み検知装置の設置を容易に行うことができる。また、ボルト締結部に緩みがない状態におけるボルト締結部の振動の振動特性が、ボルト締結部から離れた遠隔地に設けられる計測機によって記憶される。そして、振動検知センサからの振動の振動特性が記憶されている振動特性に対して変化したことがボルト締結部の緩みとして検知されるので、ボルト締結部の緩みを高精度に検知することができる。更に、ボルト締結部の振動を計測する計測機がボルト締結部から離れた遠隔地に設けられることにより、ボルト締結部がある現場まで行かなくてもボルト締結部の緩みの計測を行うことができる。従って、ボルト締結部の緩みの点検作業を省力化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、振動検知センサの設置を容易に行うことができると共に、緩みの点検作業を省力化できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係るボルト締結部の例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るボルト緩み検知装置の振動検知センサ及びセンサ支持部材を示す斜視図である。
図3】実施形態に係るボルト緩み検知装置の振動検知センサ及びセンサ支持部材がボルト締結部に設置された状態を示す縦断面図である。
図4】実施形態に係るボルト緩み検知装置の構成を模式的に示す図である。
図5】(a)は、ボルト締結部に緩みがない状態におけるボルト締結部の振動特性の例を示すグラフである。(b)は、ボルト締結部に緩みの予兆がある場合におけるボルト締結部の振動特性の例を示すグラフである。
図6】変形例に係るボルト緩み検知装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るボルト緩み検知装置及びボルト緩み検知方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0027】
図1は、本実施形態に係るボルト緩み検知装置が設置される例示的なボルト締結部1を示す斜視図である。一例として、ボルト締結部1は、照明灯5の下端部を固定するアンカーボルトであるボルト2と、ボルト2に締結されるナット3とを有する。照明灯5は、例えば、道路の脇に設けられる照明であり、夜間等に道路に光を照らす照明である。
【0028】
一例として、照明灯5は、鉄等の金属によって構成されている。照明灯5は、上側に照明が取り付けられており鉛直方向に沿って延在する柱部6と、柱部6の下端において柱部6から水平方向に広がるベースプレート7と、複数のリブ8とを備える。柱部6は、例えば、円柱状とされており、ベースプレート7は四角形状とされている。
【0029】
ベースプレート7は、その厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、当該貫通孔にボルト2が通されている。ベースプレート7の上面にはワッシャ4が設けられており、ボルト2は、下から当該貫通孔及びワッシャ4に通されている。平面視において、複数のボルト2が柱部6を囲む位置に配置されている。一例として、4個のボルト2が平面視において正方形状となるように配置されている。
【0030】
例えば、平面視において複数のリブ8が柱部6から放射状に延びると共にベースプレート7に固定されている。リブ8は、柱部6の側面とベースプレート7の上面とに固定されている。平面視において、リブ8は柱部6から一対のボルト2の間に延びている。一例として、4本のリブ8が柱部6の側面から突出している。
【0031】
照明灯5は、ベースプレート7がコンクリートCの上に載せられると共に、ベースプレート7の各貫通孔には下からボルト2が挿通される。ベースプレート7から上方に突出したボルト2の部分にナット3が締結されることにより、コンクリートCにベースプレート7が固定される。例えば、ボルト2には複数(一例として2つ)のナット3が締結されている。ボルト締結部1は、ボルト2及びナット3の他、ワッシャ4及びベースプレート7の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0032】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係るボルト緩み検知装置10は、ボルト締結部1の緩みを検知する。図2は、ボルト緩み検知装置10のセンサユニット11を示す斜視図である。例えば、ボルト緩み検知装置10は、ボルト2に対するナット3の緩みを検知する。ボルト緩み検知装置10は、ボルト締結部1に取り付けられるセンサユニット11を有する。
【0033】
センサユニット11は、ボルト締結部1の振動を検知する振動検知センサ12と、振動検知センサ12を支持すると共にボルト締結部1に固定されるセンサ支持部材13とを備える。センサ支持部材13は、柱状を呈する。一例として、センサ支持部材13は、長手方向Dに延在する円柱状を呈する。
【0034】
センサ支持部材13は、長手方向Dの一端に位置する天面13bと、天面13bとは反対側を向く底面13cと、天面13b及び底面13cの間に位置する側面13dとを有する。センサ支持部材13は、ボルト締結部1に嵌合する穴14を有する。例えば、穴14は底面13cから窪んでいる。
【0035】
センサ支持部材13は、穴14にナット3、又はボルトの頭部が嵌合することによってボルト締結部1に固定される。穴14は、センサ支持部材13の底面13cから長手方向Dに沿って延在している。長手方向Dに沿って見た場合における穴14の形状は、例えば、ナット3の形状と相似形状とされている。
【0036】
長手方向Dに沿って見た場合において、穴14の面積は、ナット3の面積よりもわずかに小さい。長手方向Dに沿って見た場合において、穴14の外接円の直径は、ナット3の外接円の直径よりもわずかに小さい。よって、センサ支持部材13は、ボルト締結部1に固定されるときに穴14の縁を撓ませながらナット3が嵌合するので、ボルト締結部1に容易に固く結合させることが可能である。なお、穴14に接着剤を塗布して穴14にナット3、又はボルトの頭部を嵌合してもよい。この場合、センサ支持部材13をより強固にボルト締結部1に固定することが可能となる。
【0037】
図3は、センサユニット11(センサ支持部材13)がボルト締結部1に固定された状態を示す断面図である。図2及び図3に示されるように、振動検知センサ12はセンサユニット11に巻き付けられている。例えば、振動検知センサ12は、光ファイバケーブルである。この場合、振動検知センサ12は、光ファイバ心線と、光ファイバ心線を被覆する樹脂製の被覆層とによって構成されている。
【0038】
センサ支持部材13は、巻き付けられる振動検知センサ12が挿入される溝15を有する。溝15は、センサ支持部材13の側面13dにおいて螺旋状とされている。センサ支持部材13に形成された溝15の長さは、例えば、1m以上である。この場合、センサ支持部材13に巻き付けられる振動検知センサ12の長さは1m以上となる。
【0039】
センサ支持部材13に巻き付けられる振動検知センサ12の長さが1m以上であることにより、1つのボルト締結部1に対応する振動検知センサ12の長さを十分に確保でき、ボルト締結部1の緩みが生じている箇所の特定を容易に行うことができる。なお、溝15に接着剤が塗布され、当該接着剤を介して振動検知センサ12が溝15に挿入されてもよい。この場合、センサ支持部材13に対してより強固に振動検知センサ12を固定することが可能となる。
【0040】
センサ支持部材13の直径Aは、例えば、3cm以上且つ10cm以下であり、一例として8cmである。センサ支持部材13が円柱状であって且つ直径Aが3cm以上である場合、光ファイバケーブルとしての振動検知センサ12の曲げ半径を十分に確保できるので振動検知センサ12の断線をより確実に抑制できる。また、直径Aが10cm以下である場合、センサ支持部材13の肥大化を抑制できコンパクトなセンサ支持部材13とすることができる。
【0041】
振動検知センサ12の少なくとも一部においてボルト締結部1の振動が検出される。振動検知センサ12は、一例として、分布型の光ファイバセンサである。この場合、振動検知センサ12によって振動の詳細な分布を把握できる。従って、センサユニット11による振動検出を高精度に行うことができる。
【0042】
センサ支持部材13は、例えば、耐紫外線性能を有する樹脂材料によって構成されている。この場合、耐紫外線を有するセンサ支持部材13とすることができ、センサ支持部材13の耐候性を高めることができる。一例として、センサ支持部材13は、ポリ塩化ビニルによって構成されている。
【0043】
なお、センサ支持部材13は、樹脂材料以外の材料によって構成されていてもよく、センサ支持部材13を覆う被覆部材が更に設けられてもよい。この場合、当該被覆部材が耐候性材料によって構成されていれば、センサユニット11の耐候性を高めることが可能である。
【0044】
図4は、ボルト緩み検知装置10の構成を模式的に示す図である。図3及び図4に示されるように、例えば、振動検知センサ12の一端及び他端はセンサ支持部材13から延出している。例えば、ボルト緩み検知装置10は、少なくとも1本の振動検知センサ12と、振動検知センサ12が巻き付けられた複数のセンサ支持部材13と、振動検知センサ12の一端に接続された計測機16と、検知装置17とを備える。
【0045】
複数のセンサ支持部材13は、1本の振動検知センサ12に直列接続されている。複数のセンサ支持部材13のそれぞれは、例えば、照明灯5の複数のボルト締結部1のそれぞれに取り付けられていてもよいし、照明灯5以外の構造物Xのボルト締結部1に取り付けられていてもよい。
【0046】
構造物Xのボルト締結部1は、例えば、照明灯5とは異なる種類の照明灯、門型標識等の標識柱、橋梁の支承、落橋防止装置、鉄道の電化柱、室外機等の固定用アンカー、又は、鋼材の摩擦接合等に用いられる高力ボルトであってもよい。このように、本実施形態に係る振動検知センサ12が巻き付けられた複数のセンサ支持部材13は、照明灯5を含む種々の構造物Xに取り付けることが可能であり、照明灯5を含む種々の構造物Xのボルトの緩みを高精度に検知できる。
【0047】
計測機16は、例えば、分布型音響センシング(DAS:DistributedAcoustic Sensing)によって光ファイバケーブルである振動検知センサ12を介して振動を検出してもよい。
【0048】
ところで、ボルト2の緩みがある状態におけるボルト締結部1の振動特性は、ボルト2の緩みがない状態におけるボルト締結部1の振動特性とは異なる。具体的には、例えば、ボルト2の腐食等によってボルト2の緩みが生じると、ボルト2又はナット3ががたつくこととなり、交通振動等の入力による振動特性が変化する。
【0049】
すなわち、ボルト2の緩みが生じると、ボルト2及びナット3を含むボルト締結部1の振動の周波数分布が変化する。図5(a)は、健全時(ボルト2の緩みがない状態)のボルト締結部1の振動特性を模式的に示すグラフである。図5(b)は、ボルト2の緩みがある状態のボルト締結部1の振動特性を模式的に示すグラフである。図5(a)及び図5(b)に示されるように、一例として、ボルト2の緩みが生じると、ボルト締結部1の振動の振動数が低下し、当該振動の周波数分布のピークの振動数が低下すると考えられる。
【0050】
本実施形態では、計測機16に光ファイバケーブルである振動検知センサ12が接続されており、健全時のボルト締結部1の振動特性が計測機16に記憶されている。検知装置17は、計測機16に記憶されている健全時の振動特性からの振動特性の変化の有無によって、ボルト締結部1における腐食及び緩み等の異常の予兆を検知する。検知装置17は、計測機16の計測結果からボルト締結部1の緩みを検知する。
【0051】
図4に示されるように、計測機16及び検知装置17は、例えば、ボルト締結部1を有する照明灯5又は構造物Xから離隔した遠隔地に設けられる。一例として、計測機16及び検知装置17は、複数の構造物を管理する管理事務所Yに設けられる。以上のボルト緩み検知装置10では、最初に照明灯5又は構造物Xのボルト締結部1にセンサユニット11を設置する必要があるが、センサユニット11を設置した後には管理事務所Y等に計測機16及び検知装置17を接続すれば複数のボルト締結部1の振動を一度に計測できる。従って、ボルト締結部1の点検の著しい省力化が可能となる。
【0052】
次に、本実施形態に係るボルト緩み検知方法について説明する。一例として、以下では、図1に示されるように、ボルト2及びナット3を有するボルト締結部1の緩みを検知する方法について説明する。
【0053】
まず、図2に示されるように、振動検知センサ12及びセンサ支持部材13を備えるセンサユニット11を用意する(センサユニットを用意する工程)。例えば、振動検知センサ12の途中部分をセンサ支持部材13の溝15に挿入しながら振動検知センサ12をセンサ支持部材13に巻き付けてセンサユニット11を作製する。
【0054】
次に、図3に示されるように、センサ支持部材13をボルト締結部1に固定する(センサ支持部材を固定する工程)。具体的には、センサ支持部材13の穴14にナット3を嵌合し、ナット3にセンサ支持部材13を圧入する。なお、センサ支持部材13の穴14に、ナット3とは別のボルトの頭部を嵌合し、当該ボルトの頭部にセンサ支持部材13を圧入してもよい。
【0055】
そして、図4に示されるように、1本の振動検知センサ12に複数のセンサ支持部材13を直列接続しつつ(複数のセンサ支持部材を直列接続する工程)、複数のセンサ支持部材13を複数のボルト締結部1に固定する(複数のセンサ支持部材を複数のボルト締結部に固定する工程)。
【0056】
そして、振動検知センサ12の一端に計測機16及び検知装置17を接続する(計測機を接続する工程)。このとき、計測機16及び検知装置17は、ボルト締結部1から離れた遠隔地にて接続される。また、振動検知センサ12の他端に終端処理を施す。その後、振動検知センサ12が複数のボルト締結部1のそれぞれの振動を検知する。
【0057】
例えば、計測機16から振動検知センサ12に計測光を入力すると、複数のボルト締結部1のそれぞれから後方散乱光が生じる。計測機16は、例えば、後方散乱光のスペクトルをボルト締結部1ごとに取得することによって、複数のボルト締結部1のそれぞれにおける振動を検知する。まず、計測機16は、振動検知センサ12によって検知された振動からボルト2の緩みがない状態におけるボルト締結部1の振動の振動特性を記憶する(振動特性を記憶する工程)。
【0058】
例えば、以上の工程はボルト緩み検知装置10の初期設置時に行われる。複数のボルト締結部1の緩みは、例えば、初期設置時から一定期間経過後(一例として数年後又は数ヶ月後)に計測される。このとき、振動検知センサ12の一端に計測機16及び検知装置17を接続し、検知装置17が複数のボルト締結部1に対しボルト締結部1の緩みの有無を検知する。
【0059】
検知装置17は、計測機16に記憶されているボルト2の緩みがない状態におけるボルト締結部1の振動特性と、一定期間経過後に振動検知センサ12によって検知されたボルト締結部1の振動の振動特性との比較を行う。そして、ボルト2に緩みがない状態におけるボルト締結部1の振動特性に対し、振動検知センサ12からの振動の振動特性が変化したことを検知装置17が検知したときに、検知装置17はボルト締結部1の緩みを検知する(ボルト締結部の緩みとして検知する工程)。検知装置17は、上記の検知を複数のボルト締結部1のそれぞれに対して行い、振動特性が変化したボルト締結部1を緩みが生じたボルト締結部1として特定する。以上の工程を経てボルト緩み検知方法の一連の工程が完了する。
【0060】
次に、本実施形態に係るボルト緩み検知装置10及びボルト緩み検知方法から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係るボルト緩み検知装置10及びボルト緩み検知方法では、ボルト締結部1の振動を検知する振動検知センサ12がセンサ支持部材13に支持されており、センサ支持部材13はボルト締結部1に固定される。
【0061】
よって、ボルト締結部1にセンサ支持部材13を固定して振動検知センサ12の設置を行うことができるので、ボルト締結部1に対するボルト緩み検知装置10の設置を容易に行うことができる。すなわち、既存のボルト締結部1にも簡単にボルト緩み検知装置10を取り付けることができる。
【0062】
ボルト緩み検知装置10はボルト締結部1から離れた遠隔地に設けられる計測機16と検知装置17とを備え、計測機16はボルト2の緩みがない状態におけるボルト締結部1の振動特性を記憶している。検知装置17は、ボルト2の緩みがない状態における振動特性に対する振動検知センサ12によって検知された振動の振動特性の変化をボルト締結部1の緩みとして検知する。振動特性の変化をボルト締結部1の緩みとして検知することにより、ボルト締結部1の緩みを高精度に検知できる。更に、計測機16は、ボルト締結部1から離れた遠隔地に設けられる。従って、ボルト締結部1がある現場まで行かなくてもボルト締結部1の点検を行うことができるので、緩みの点検作業を省力化することができる。
【0063】
本実施形態において、センサ支持部材13は、ナット3、又はボルトの頭部が嵌合する穴14を有し、穴14にナット3、又はボルトの頭部が嵌合することによってボルト締結部1に固定される。この場合、センサ支持部材13の穴14にナット、又はボルトの頭部を嵌合させてボルト締結部1へのセンサ支持部材13の固定を行える。従って、ボルト緩み検知装置10の設置を一層容易に行うことができる。
【0064】
本実施形態において、振動検知センサ12は、センサ支持部材13に巻き付けられた光ファイバケーブルである。よって、ボルト締結部1における振動をより高精度に検知できる。すなわち、光ファイバケーブルでは、光ファイバケーブルが接触する箇所に沿って振動を連続的且つ分布的に検知可能であるため、ボルト締結部1の緩みを一層高精度に検知できる。
【0065】
本実施形態において、センサ支持部材13は、巻き付けられる光ファイバケーブルである振動検知センサ12が挿入される溝15を有する。よって、センサ支持部材13の溝15に振動検知センサ12を挿入することにより、センサ支持部材13に対する振動検知センサ12の巻き付けを容易に行うことができる。また、溝15に振動検知センサ12が挿入されることにより、振動検知センサ12を溝15の内部で保護することができる。従って、振動検知センサ12の断線の可能性を一層低減させることができる。
【0066】
本実施形態において、ボルト緩み検知装置10は、複数のセンサ支持部材13を備え、複数のセンサ支持部材13は、1本の振動検知センサ12に直列接続されており、計測機16は、1本の振動検知センサ12の端部に接続されている。よって、1本の振動検知センサ12に複数のセンサ支持部材13が直列接続されているので、互いに離れた複数のボルト締結部1の振動を1本の振動検知センサ12で検知できる。従って、簡易な構成で複数箇所のボルト締結部1の緩みの検査を行えるので、複数のボルト締結部1に対する点検作業を現場に出向かずに一層容易に行うことができる。
【0067】
以上、本開示に係るボルト緩み検知装置及びボルト緩み検知方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態の内容に限られず、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、ボルト緩み検知装置の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様、並びに、ボルト緩み検知方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0068】
例えば、前述の実施形態では、振動検知センサ12が光ファイバケーブルであって、振動検知センサ12が挿入される溝15を備えるセンサ支持部材13について説明した。しかしながら、センサ支持部材は振動検知センサが挿入される溝を有しなくてもよい。例えば、センサ支持部材13の側面13dに振動検知センサ12が巻き付けられてもよい。例えば、センサ支持部材13は長手方向Dに沿って半割りにされた柱状(一例として円柱状)とされていてもよい。これによって、ボルト締結部1から伝達される振動によって、半割りにされた柱状のセンサ支持部材13の界面にわずかな開きが生じ、当該界面を跨ぐように巻き付けられた光ファイバケーブルに局所的なひずみが生じることで、振動検知の感度を高めることができる。
【0069】
また、振動検知センサ12に代えて、光ファイバケーブルでない振動検知センサを備えてもよい。図6に示されるように、振動検知センサ12に代えて、加速度センサ22と、加速度センサ22から延び出すケーブル23とが用いられてもよい。この場合、例えばセンサ支持部材13の溝15に代えて、加速度センサ22が配置された凹部25を備えたセンサ支持部材26を用いることが可能となる。加速度センサ22から延び出すケーブル23の端部は計測機に接続されている。この場合もセンサ支持部材26がボルト締結部1に固定されることによって、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0070】
例えば、前述の実施形態では、穴14にナット3が嵌合されることによってボルト締結部1に固定されるセンサ支持部材13について説明した。このセンサ支持部材13は、設置時から一定期間経過後に他のボルト締結部1に転用されるものであってもよい。また、前述の実施形態では、センサ支持部材13が円柱状とされている例について説明した。しかしながら、センサ支持部材は、楕円柱状又は長円柱状とされていてもよく、センサ支持部材の形状は適宜変更可能である。
【0071】
前述の実施形態では、ナット3、又はボルトの頭部に嵌合する穴14を備えたセンサ支持部材13について説明した。しかしながら、センサ支持部材13に代えて、例えば、ワッシャ4に接着等によって固定されるセンサ支持部材を備えたボルト緩み検知装置であってもよい。ワッシャ4に固定されるセンサ支持部材の場合、ワッシャ4は緩み発生時における動きしろが大きい部位であるため、緩みの検知の感度を高めることができる。また、ベースプレート7に接着等によって固定されるセンサ支持部材を備えたボルト緩み検知装置であってもよい。このように、センサ支持部材を取り付ける場所は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…ボルト締結部、2…ボルト、3…ナット、4…ワッシャ、5…照明灯、6…柱部、7…ベースプレート、8…リブ、10…ボルト緩み検知装置、11…センサユニット、12…振動検知センサ、13…センサ支持部材、13b…天面、13c…底面、13d…側面、14…穴、15…溝、16…計測機、17…検知装置、22…加速度センサ、23…ケーブル、25…凹部、26…センサ支持部材、A…直径、C…コンクリート、D…長手方向、X…構造物、Y…管理事務所。
図1
図2
図3
図4
図5
図6