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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089808
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】車両試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
G01M17/007 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204548
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】琴尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳司
(72)【発明者】
【氏名】西宮 和彦
(57)【要約】
【課題】タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両の走行試験を精度良く行うことができるシャーシダイナモメータ等の車両試験装置を得る。
【解決手段】ローラ装置2は左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを有している。左右方向移動機構4Bはローラ対20及びローラ旋回機構3を共に左右方向に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。左右方向移動機構4Tは選択的にローラ対20を左右方向に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。前後方向移動機構5Bはローラ対20及びローラ旋回機構3を共に前後方向に沿って移動させる第1の前後方向移動処理を実行する。前後方向移動機構5Tは選択的にローラ対20を前後方向に沿って移動させる第2の前後方向移動処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ装置を備えた車両試験装置であって、
前記ローラ装置は、
車両のタイヤを載置するローラと、
前記ローラを旋回させるローラ旋回動作を実行するローラ旋回機構と、
前記ローラ上に載置されるタイヤのタイヤ旋回中心に対する前記ローラ旋回機構の位置を変更する位置調整処理を実行する位置調整機構とを備える、
車両試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両試験装置であって、
前記ローラ装置は、前記車両の前方または後方の一対のタイヤを載置する装置であり、前記一対のタイヤは左タイヤ及び右タイヤを含み、
前記ローラ装置は、
前記車両の前記左タイヤに対応して設けられる左用ローラ装置と、
前記車両の前記右タイヤに対応して設けられる右用ローラ装置とを含み、
前記左用ローラ装置及び前記右用ローラ装置は同時に前記位置調整処理を実行する、
車両試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両試験装置であって、
前記左用及び右用ローラ装置それぞれの前記位置調整機構は、
前記ローラ旋回機構及び前記ローラを共に左右方向に沿って移動させる、第1の左右方向移動処理を実行する第1の左右方向移動機構を含む、
車両試験装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両試験装置であって、
前記左用及び右用ローラ装置それぞれの前記位置調整機構は、
前記ローラ旋回機構及び前記ローラのうち、前記ローラを左右方向に沿って移動させる、第2の左右方向移動処理を実行する第2の左右方向移動機構をさらに含み、
前記左用ローラ装置による前記第1及び第2の左右方向移動処理と前記右用ローラ装置の第1及び第2の左右方向移動処理とは同時に実行され、
前記左用及び右用ローラ装置それぞれの前記位置調整機構において、
前記第1の左右方向移動処理は第1の左右補正方向に向けて補正用左右方向移動量で実行され、
前記第2の左右方向移動処理は第2の左右補正方向に向けて前記補正用左右方向移動量で実行され、
前記第1の左右補正方向と前記第2の左右補正方向とは反対方向に設定される、
車両試験装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の車両試験装置であって、
前記左用及び右用ローラ装置それぞれの前記位置調整機構は、
前記ローラ旋回機構及び前記ローラを共に前後方向に沿って移動させる、第1の前後方向移動処理を実行する第1の前後方向移動機構と、
前記ローラ旋回機構及び前記ローラのうち、前記ローラを前後方向に沿って移動させる、第2の前後方向移動処理を実行する第2の前後方向移動機構とを含み、
前記左用ローラ装置による前記第1及び第2の前後方向移動処理と、前記右用ローラ装置による前記第1及び第2の前後方向移動処理とは同時に実行され、
前記左用及び右用ローラ装置それぞれの前記位置調整機構において、
前記第1の前後方向移動処理は第1の前後補正方向に向けて補正用前後方向移動量で実行され、
前記第2の前後方向移動処理は第2の前後補正方向に向けて前記補正用前後方向移動量で実行され、
前記第1の前後補正方向と前記第2の前後補正方向とは互いに反対方向に設定される、
車両試験装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両試験装置であって、
前記ローラ旋回機構は、旋回用モータによって旋回される旋回ベッドを有し、
前記第1の前後方向移動機構は、ベース台上に設けられ、第1の前後方向用モータによって第1の前後方向移動用ベッドを前後方向に移動させる前記第1の前後方向移動処理を実行し、
前記第1の左右方向移動機構は、前記第1の前後方向移動用ベッド上に設けられ、第1の左右方向用モータによって前記旋回ベッドを左右方向に移動させる前記第1の左右方向移動処理を実行し、
前記第2の前後方向移動機構は、前記ローラ旋回機構の上方に設けられ、第2の前後方向用モータによって第2の前後方向移動用ベッドを前後方向に移動させる前記第2の前後方向移動処理を実行し、
前記ローラは、前記第2の前後方向移動用ベッド上に設けられる、
車両試験装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうち、いずれか1項に記載の車両試験装置であって、
前記ローラは、
単一構成のローラである、
車両試験装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のうち、いずれか1項に記載の車両試験装置であって、
前記ローラは、
一対のローラである、
車両試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両の各種走行試験に用いられるシャーシダイナモメータ等の車両試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両試験装置の1つであるシャーシダイナモメータは、従来、車両(自動車)の走行試験を行う際に用いられており、主要構成要素としてローラ装置を含んでいる。また、シャーシダイナモメータは、走行試験を行う際に、ローラ装置上に配置した車両を固定する車両固定機構を有している。従来のシャーシダイナモメータとして、例えば、特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータがある。
【0003】
車両のステアリング操作に伴う種々の走行試験を行うには、タイヤの旋回動作に適合するようにローラを旋回させるローラ旋回動作を行う必要がある。すなわち、左右のタイヤ用のローラ装置をステアリング操作によるタイヤの切れ角度に追従させるための制御方式を実現するには、ローラ旋回動作が必要となる。上記制御方式は自動運転やADAS模擬走行試験に適用することができる。なお、「ADAS(Advanced Driver Assistance System)」は、「先進運転システム」を意味し、事故などの可能性を事前に検知し回避するシステムである。
【0004】
上述したような車両のステアリング操作に伴う種々の走行試験を行うべく、従来のシャーシダイナモメータは、ローラ旋回動作を実行するローラ旋回機構をさらに備えている。上述した特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータは、ローラ旋回機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-203869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシャーシダイナモメータを用いて行う走行試験は、ローラ装置のローラ上に車両のタイヤを載置して行う。タイヤの旋回中心は、車両のキングピン位置、キャスタ角度、キャンバ角度等の影響を受け、タイヤの接触面の中心とは異なることもあり、車種によっても異なる。
【0007】
したがって、走行試験開始時にローラの旋回中心とタイヤの旋回中心との間に位置ズレが発生する可能性が少なからずある。以下、ローラの旋回中心とタイヤの旋回中心との間の位置ズレを「旋回中心間位置ズレ」と呼ぶ場合がある。
【0008】
図20及び図21は従来のシャーシダイナモメータにおける問題点を示す説明図である。図20はローラ装置が単一構成のローラ10を有するシングルローラ構成の場合、図21はローラ装置がローラ対20を有するツインローラ構成の場合を示している。
【0009】
図20(a)及び(b)は車両の直進状態(初期状態)時のローラ10とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図であり、図20(c)及び(d)は車両のタイヤ6及びローラ10を旋回させた場合のローラ10とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図である。図20(a)~(d)それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0010】
図21(a)及び(b)は車両の直進状態(初期状態)時のローラ対20(20F,20B)とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図であり、図21(c)及び(d)は車両のタイヤ6及びローラ対20を旋回させた場合のローラ対20とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図である。図21(a)~(d)それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0011】
なお、図20(c),(d)及び図21(c),(d)で示すX軸及びY軸は、図20(a),(b)及び図21(a),(b)との比較を容易にすべく、便宜上、図20(a),(b)及び図21(a),(b)のX軸及びY軸に一致させている。実際には、ローラ旋回動作及びタイヤ旋回動作に伴いタイヤ6やローラ10(ローラ対20)とX軸及びY軸との関係は変化する。
【0012】
図20(a),(b)に示すように、タイヤ6のタイヤ旋回中心C6とローラ10のローラ旋回中心C1との間にはX方向及びY方向で旋回中心間位置ズレが発生している。左右方向となるX方向は、ローラ10にタイヤ6が載置される車両の左右方向に合致する方向となり、前後方向となるY方向は、ローラ10にタイヤ6が載置される車両の前後方向に合致する方向となる。
【0013】
図20で示すシングルローラ構成では、図示しないローラ旋回機構はローラ旋回中心C1を中心としてローラ旋回方向R1に沿ってローラ10を旋回するローラ旋回動作を実行することができる。一方、車両60はタイヤ旋回中心C6を中心としてタイヤ6を旋回するタイヤ旋回動作を実行することができる。
【0014】
なお、ベッド75はローラ10を搭載する基台であり、ローラ用軸受け76及び77はローラ10の回転駆動に必要な構成部である。また、タイヤ接地面6Gはタイヤ6の最下端部を示している。
【0015】
一方、図21で示すツインローラ構成では、図示しないローラ旋回機構はローラ旋回中心C2を中心としてローラ旋回方向R2に沿ってローラ対20を旋回するローラ旋回動作を実行することができる。一方、車両60は前述したようにタイヤ旋回動作を実行することができる。
【0016】
なお、ベッド65はローラ対20を搭載する基台であり、ローラ用軸受け66及び67はローラ対20における前方ローラ20F及び後方ローラ20Bそれぞれの回転駆動に必要な構成部である。
【0017】
まず、図20を参照して、ローラ10を有するシングルローラ構成のローラ装置2における問題点について説明する。一般にシングルローラ構成ではローラ10の径はタイヤ6と同程度以上に設定されている。
【0018】
図20(a),(b)に示すように、ローラ10上にタイヤ6を載置した初期状態でローラ旋回中心C1はタイヤ旋回中心C6に対し後方かつ右方にずれている。すなわち、ローラ旋回中心C1とタイヤ旋回中心C6とはX方向にズレ量DX1が生じ、Y方向にズレ量DY1が生じている。このように、初期状態時にズレ量DX1及びズレ量DY1による旋回中心間位置ズレ量が生じている。
【0019】
図20(a),(b)に示すように、車両60の直進状態時では上記旋回中心間位置ズレの影響を受けることはなく、ズレ量DX1及びDY1を有する初期状態から変化しない。
【0020】
しかしながら、図20(c),(d)に示すように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を実行すると、タイヤ6とローラ10それぞれの旋回角度を合わせるように動かしても、ローラ10とタイヤ6との位置関係は大きく変化する。
【0021】
図20(a),(c)間で示すタイヤ接地面6Gの比較から、X方向にズレ量ΔX11が生じていることがわかる。また、図20(c),(d)間で示すタイヤ接地面6Gの比較から、Y方向にズレ量ΔY11が生じていることがわかる。なお、図20(c)において、初期状態におけるタイヤ接地面P6Gの位置を示している。さらに、図20(b),(d)間で示すタイヤ6の最上部6Tの比較から、Z方向にズレ量ΔZ11が生じていることがわかる。
【0022】
このように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う走行試験を車両60に対して行うと、タイヤ旋回中心C6がローラ旋回中心C1に近づく方向に旋回時位置ズレ現象が発生してしまう。特に、タイヤ6の旋回角度を大きくとるため、左右のローラ装置2間の旋回時における干渉を低減する目的でローラ10の径を小さくすると、車両60が上下に移動して車両60の高さが変動し易くなる。
【0023】
次に、図21を参照して、ローラ対20を有するローラ装置2における問題点について説明する。図21に示すように、ローラ対20は前方に前方ローラ20F、後方に後方ローラ20Bを有するツインローラ構成となっている。前方ローラ20F及び後方ローラ20Bの径は、タイヤ6の径より小さくなるように設定されている。
【0024】
図21(a),(b)に示すように、ローラ対20上にタイヤ6を載置した初期状態でローラ旋回中心C2はタイヤ旋回中心C6に対し後方かつ右方にずれている。すなわち、ローラ旋回中心C2とタイヤ旋回中心C6とはX方向にズレ量DX2が生じ、Y方向にズレ量DY2が生じている。このように、初期状態時にズレ量DX2及びズレ量DY2による旋回中心間位置ズレ量が生じている。
【0025】
図21(a),(b)に示すように、車両60の直進状態時では上記旋回中心間位置ズレの影響を受けることはなく、初期状態から変化しない。
【0026】
しかしながら、図21(c),(d)に示すように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を実行すると、タイヤ6とローラ対20それぞれの旋回角度を合わせるように動かしても、ローラ対20とタイヤ6との位置関係は大きく変化する。
【0027】
図21(a),(c)間で示すタイヤ接地面6Gの比較から、X方向にズレ量ΔX12が生じていることがわかる。また、図21(c),(d)間で示すタイヤ接地面6Gの比較から、Y方向にズレ量ΔY12が生じていることがわかる。なお、図21(c)において、初期状態のタイヤ接地面P6Gの位置を示している。さらに、図21(b),(d)間で示すタイヤ6の最上部6T間の比較から、Z方向にズレ量ΔZ12が生じていることがわかる。
【0028】
このように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う走行試験を車両60に対して行うと、タイヤ旋回中心C6がローラ旋回中心C2に近づく方向にタイヤ位置ズレ現象が発生してしまう。特に、タイヤ6の旋回角度を大きくとるため、左右のローラ装置2間の旋回時における干渉やローラ対20間の干渉を低減する目的でローラ対20それぞれを小さくすると、車両60が上下に移動して車両60の高さが変動し易くなる。
【0029】
従来のシャーシダイナモメータは以上のように構成されており、ローラ装置2のローラ10(ローラ対20)上に車両60のタイヤ6を載置する際、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C1(C2)との間で旋回中心間位置ズレが発生する可能性がある。
【0030】
旋回中心間位置ズレが生じる一因として、車両60のタイヤ6の取り付け状態(トー角度、キャスタ角度、キャンバ角度、キングピンの位置等)によって、ローラ10(ローラ対20)とタイヤ6との接触位置が所望の接触位置からずれることが考えられる。
【0031】
このように旋回中心間位置ズレが発生した場合に、従来のシャーシダイナモメータによって、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を行うと、上述したタイヤ位置ズレ現象が発生してしまう。
【0032】
タイヤ位置ズレ現象の発生により、タイヤ6とローラ10(ローラ対20)との接触位置がずれてしまい、ローラ10上でタイヤ6の横滑りを起こす等、車両60がふらつく原因となる。また、ツインローラ構成の場合、図21(d)に示すように、前方ローラ20F及び後方ローラ20Bのうち、一方のローラと車両60が接触しなくなる。
【0033】
このようなタイヤ位置ズレ現象が生じる状態で、シャーシダイナモメータ1上で車両60の走行試験を行うと、タイヤ6のローラ10への接触状態が変わるため、正常な負荷をタイヤ6に与えることができないか、車両60が揺れる原因となり、車両60に搭載されたカメラの映像にも影響がでてしまう。
【0034】
このように、シャーシダイナモメータで代表される従来の車両試験装置では、旋回中心間位置ズレに伴うタイヤ位置ズレ現象の発生により、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両の走行試験を精度良く行うことができないという問題点があった。
【0035】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両の走行試験を精度良く行うことができるシャーシダイナモメータ等の車両試験装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本開示の車両試験装置は、ローラ装置を備えた車両試験装置であって、前記ローラ装置は、車両のタイヤを載置するローラと、前記ローラを旋回させるローラ旋回動作を実行するローラ旋回機構と、前記ローラ上に載置されるタイヤのタイヤ旋回中心に対する前記ローラ旋回機構の位置を変更する位置調整処理を実行する位置調整機構とを備える。
【発明の効果】
【0037】
本開示の車両試験装置は位置調整処理を実行する位置調整機構を有することにより、ローラ上にタイヤを載置した状態で、平面視してタイヤの旋回中心とローラの旋回中心とが近づくように、タイヤ旋回中心に対するローラ旋回機構の位置を変更することができる。
【0038】
このため、本開示の車両試験装置は、常にタイヤの旋回中心とローラの旋回中心とが近づいた状態で、車両に対する種々の走行試験を行うことができる。
【0039】
その結果、本開示の車両試験装置は、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両の走行試験を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施の形態1のシャーシダイナモメータに関し、車両の載置後の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】実施の形態1のシャーシダイナモメータに用いられるローラ装置の構造を示す正面図である。
図3図2のA-A断面を上方から視た上面図である。
図4図2のB-B断面を上方から視た上面図である。
図5図2のC-C断面を上方から視た上面図である。
図6図2のD-D断面を上方から視た上面図である。
図7】ローラ旋回中心の位置調整方法の一例を示すフローチャートである。
図8図7で示した位置調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
図9図8で示した左右方向調整ルーチンの実行内容を示す説明図である。
図10】左右方向調整ルーチンの実行時における実施の形態1のローラ装置の状態を示す説明図(その1)である。
図11】左右方向調整ルーチンの実行時における実施の形態1のローラ装置の状態を示す説明図(その2)である。
図12図8で示した前後方向調整ルーチンの実行内容を示す説明図である。
図13】前後方向調整ルーチンの実行時における実施の形態1のローラ装置の状態を示す説明図(その1)である。
図14】前後方向調整ルーチンの実行時における実施の形態1のローラ装置の状態を示す説明図(その2)である。
図15】実施の形態1のシャーシダイナモメータにおける効果を示す説明図(シングルローラ構成)である。
図16】実施の形態1のシャーシダイナモメータにおける効果を示す説明図(ツインローラ構成)である。
図17】実施の形態2のシャーシダイナモメータに用いられるローラ装置の構造を示す正面図である。
図18】左右方向調整ルーチンの実行時における実施の形態2のローラ装置の状態を示す説明図(その1)である。
図19】左右方向調整ルーチンの実行時における実施の形態2のローラ装置の状態を示す説明図(その2)である。
図20】従来のシャーシダイナモメータにおける問題点を示す説明図(シングルローラ構成)である。
図21】従来のシャーシダイナモメータにおける問題点を示す説明図(ツインローラ構成)である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<実施の形態1>
(全体構成)
図1は実施の形態1のシャーシダイナモメータ1に関し、車両60の載置後の構成を模式的に示す斜視図である。なお、図1にXYZ直交座標系を示している。実施の形態1では車両試験装置としてシャーシダイナモメータ1を用いている。
【0042】
図1に示すように、4つのローラ装置2のローラ対20上に車両60の4つのタイヤ6が載置される。各ローラ装置2は、車両60のタイヤ6を載置するローラ対20を有している。さらに、図示しない車両固定手段によって、車両60が4つのローラ装置2のローラ対20上に載置された状態で固定される。この際、車両60は左右のローラ装置2,2間のセンターラインCLに対し左右対称になるように載置される。
【0043】
なお、図1ではツインローラ構成のローラ対20を示したが、ローラ対20に替えてシングルローラ構成のローラ10を用いてもよい。
【0044】
床面50上において、車両60の前方(+Y方向)にX方向を長手方向、Z方向を短手方向とした矩形状の画像シミュレータ62が設けられる。シミュレーション補助部材である画像シミュレータ62は、車両60から視覚認識可能な全景色を表示する表示機能を有している。
【0045】
さらに、床面50上において、車両60の中央部前方にターゲットシミュレータ61が設けられる。ターゲットシミュレータ61は車両60に対し、画像シミュレータ62よりさらに前方(+Y方向側)に配置される。シミュレーション補助部材であるターゲットシミュレータ61は、ターゲットが移動する動作を模擬する装置である。
【0046】
また、車両60は図示しない外界センサを有しても良い。外界センサとして、コーナーセンサ等に利用されるレーダ及びライダー(LiDAR)やサイドカメラ(サイド電子ミラー)等が考えられる。
【0047】
シャーシダイナモメータ1は、必要に応じて車両60のタイヤ6の角度情報やターゲットシミュレータ61や画像シミュレータ62を用い、必要に応じて車両60の上記外界センサからの情報を受け、車両60に対する走行試験を行う。走行試験には、タイヤ6を旋回されるタイヤ旋回動作と、タイヤ旋回動作に併せてローラ対20を旋回されるローラ旋回動作とを伴う試験が含まれる。
【0048】
(ローラ装置2)
図2は実施の形態1のシャーシダイナモメータ1に用いられるローラ装置2の構造を示す正面図である。図2では後方(-Y方向)から視た正面図を示している。図2にXYZ直交座標系を記している。ステアリング操作によって車両60の前輪側の2つのタイヤ6がタイヤ旋回動作を行う場合、少なくとも前輪側の2台のローラ装置として、図2で示すローラ装置2が用いられる。
【0049】
同図に示すように、ローラ装置2はベース台25上に設けられ、前後方向移動機構5B、左右方向移動機構4B、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8を主要構成要素として含んでいる。
【0050】
以下、ローラ駆動機構8がローラ対20を搭載している場合を前提として、ローラ装置2の各構成部について説明する。ローラ駆動機構8がローラ10を搭載している場合も、ローラ駆動機構8を除く各部の構成は同じである。
【0051】
第1の前後方向移動機構である前後方向移動機構5Bはベース台25上に設けられ、駆動モータ40、レール51、ガイド55及び移動台車30を主要構成要素として含んでいる。第1の前後方向移動用ベッドである移動台車30は、レール51に沿って前後方向となるY方向に沿って移動可能である。
【0052】
図3図2のA-A断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。図3に示すように、ベース台25上に一対のレール51がY方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール51には複数のガイド55(図3では2つのガイド55を示している)が設けられる。図2に示すように、各ガイド55の上面に第1の前後方向移動用ベッドとなる移動台車30が固定される。
【0053】
図2及び図3に示すように、ベース台25上に第1の前後方向用モータである駆動モータ41が設けられる。なお、駆動モータ41は回転軸41aを回転させ、移動台車30を移動させる動力源となっている。回転軸41aは一対の支持用軸受41bによって回転可能に支持される。
【0054】
したがって、駆動モータ41によって移動台車30をY方向に移動させる第1の前後方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール51及び複数のガイド55によって移動台車30はY方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0055】
移動台車30の移動に連動して、移動台車30上に配置された、左右方向移動機構4B、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8がY方向に沿って移動する。
【0056】
したがって、シャーシダイナモメータ1の前後方向移動機構5Bは第1の前後方向移動処理を実行することにより、ローラ装置2全体をY方向に沿って移動させることができる。ここで、Y方向は、ローラ装置2に載置される車両60の前後方向に合致した方向となる。
【0057】
このように、前後方向移動機構5Bは、ローラ旋回機構3及びローラ対20(ローラ10)を共に前後方向に沿って移動させる、第1の前後方向移動処理を実行する。なお、前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理は、試験対象の車両60のホイールベースに適合させるためのホイールベース調整用移動処理を兼ねている。
【0058】
前後方向移動機構5Bの移動台車30上に左右方向移動機構4Bが設けられる。第1の左右方向移動機構である左右方向移動機構4Bは、駆動モータ41、レール52、ガイド56及び移動用ベッド31を主要構成要素として含んでいる。
【0059】
図4図2のB-B断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。図4に示すように、移動台車30上に一対のレール52がX方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール52には複数のガイド56(図4では2つのガイド56を示している)が設けられる。図2に示すように、各ガイド56の上面に第1の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド31が固定される。
【0060】
図2及び図4に示すように、移動台車30上に第1の左右方向用モータである駆動モータ41が設けられる。駆動モータ41は回転軸41aを回転させ、移動用ベッド31を移動させる動力源となっている。回転軸41aは一対の支持用軸受41bによって回転可能に支持される。
【0061】
したがって、第1の左右方向移動機構である左右方向移動機構4Bは、駆動モータ41によって移動用ベッド31をX方向に移動させる第1の左右方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール52及び複数のガイド56によって移動用ベッド31はX方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0062】
第1の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド31の移動に連動して、移動用ベッド31上に配置された、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8がX方向に沿って移動する。
【0063】
したがって、シャーシダイナモメータ1は、左右方向移動機構4Bに第1の左右方向移動処理を実行させることにより、ローラ装置2の左右方向移動機構4B上方の構成部を、X方向(左右方向)に沿って移動させることができる。
【0064】
左右方向移動機構4Bによって第1の左右方向移動処理が実行される際、前後方向移動機構5Bは左右方向に移動することはない。前後方向移動機構5Bは移動用ベッド31の移動に連動していないからである。
【0065】
このように、左右方向移動機構4Bは、第1の左右方向用モータである駆動モータ41によって第1の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド31をX方向に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。
【0066】
ここで、X方向は、ローラ装置2のローラ10上にタイヤ6が載置される車両60左右方向に合致した方向となる。したがって、左右方向移動機構4Bは、ローラ旋回機構3及びローラ対20(ローラ10)を共に左右方向に沿って移動させる、第1の左右方向移動処理を実行する。
【0067】
移動用ベッド31上にローラ旋回機構3が設けられる。ローラ旋回機構3は、旋回ベッド32、旋回用モータ42、及び旋回軸受38を主要構成要素として含んでいる。
【0068】
旋回用モータ42は速度制御が可能なギヤ付モータである。旋回用モータ42の先端にはギヤが取り付けられ、旋回ベッド32の外周に取り付けられたギヤ(図示せず)とかみ合わせている。したがって、旋回用モータ42の回転により、旋回ベッド32を旋回させることができる。
【0069】
旋回軸受38は旋回可能に旋回ベッド32を支持しており、旋回軸受38の中心を旋回中心として、旋回用モータ42の動力で旋回ベッド32を旋回させている。このように、ローラ旋回機構3は、旋回用モータ42によって旋回される旋回ベッド32を有している。
【0070】
ローラ旋回機構3における旋回ベッド32の旋回に連動して、ローラ旋回機構3より上方の左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8は旋回する。
【0071】
旋回軸受38の空洞部の中心がローラ対20(ローラ10)のローラ旋回中心C2(C1)となる。したがって、ローラ旋回機構3は、ローラ対20(ローラ10)を旋回させるローラ旋回動作を実行することができる。
【0072】
ローラ旋回機構3の旋回ベッド32上に第2の左右方向移動機構である左右方向移動機構4Tが設けられる。左右方向移動機構4Tは、駆動モータ43、レール53、ガイド57及び移動用ベッド33を主要構成要素として含んでいる。
【0073】
図5図2のC-C断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。図5に示すように、旋回ベッド32上に一対のレール53がX方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール53には複数のガイド57(図5では2つのガイド57を示している)が設けられる。図2に示すように、各ガイド57の上面に第1の移動用ベッドである移動用ベッド33が固定される。
【0074】
図2及び図5に示すように、旋回ベッド32上に第1の移動用モータである駆動モータ43が設けられる。駆動モータ43は回転軸43aを回転させ、移動用ベッド33を移動させる動力源となっている。回転軸43aは一対の支持用軸受43bによって回転可能に支持される。
【0075】
したがって、左右方向移動機構4Tは、駆動モータ43によって移動用ベッド33をX方向に移動させる第2の左右方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール53及び複数のガイド57によって移動用ベッド33はX方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0076】
移動用ベッド33の移動に連動して、移動用ベッド33上に配置された前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8がX方向に沿って移動する。
【0077】
したがって、シャーシダイナモメータ1の左右方向移動機構4Tは第2の左右方向移動処理を実行することにより、左右方向移動機構4Bより上方に存在するローラ装置2の構成部をX方向(左右方向)に沿って移動させることができる。
【0078】
左右方向移動機構4Tによって第2の左右方向移動処理が実行される際、左右方向移動機構4Tの下方に位置するローラ旋回機構3は左右方向に移動することはない。ローラ旋回機構3は移動用ベッド33の移動に連動していないからである。
【0079】
このように、左右方向移動機構4Tは、第2の左右方向用モータである駆動モータ43によって第2の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド33をX方向に沿って移動させる第2の左右方向移動処理を実行する。すなわち、左右方向移動機構4Tは、ローラ旋回機構3及びローラ対20(ローラ10)のうち、ローラ対20のみを左右方向に沿って移動させる、第2の左右方向移動処理を実行する。
【0080】
左右方向移動機構4Tの移動用ベッド33上に第2の前後方向移動機構である前後方向移動機構5Tが設けられる。前後方向移動機構5Tは、駆動モータ44、レール54、ガイド58及び移動用ベッド34を主要構成要素として含んでいる。
【0081】
図6図2のD-D断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。図6に示すように、移動用ベッド33上に一対のレール54がY方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール54には複数のガイド58(図6では2つのガイド58を示している)が設けられる。図2に示すように、各ガイド58の上面に第2の前後方向移動用ベッドとなる移動用ベッド34が固定される。
【0082】
図2及び図6に示すように、移動用ベッド33上に第2の前後方向用モータである駆動モータ44が設けられる。なお、駆動モータ44は回転軸44aを回転させ、移動用ベッド34を移動させる動力源となっている。回転軸44aは一対の支持用軸受44bによって回転可能に支持される。
【0083】
したがって、駆動モータ44によって移動用ベッド34をY方向に移動させる第2の前後方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール54及び複数のガイド58によって移動用ベッド34はY方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0084】
移動用ベッド34の移動に連動して、移動用ベッド34上に設けられるローラ駆動機構8がY方向に沿って移動する。
【0085】
したがって、シャーシダイナモメータ1の前後方向移動機構5Tは第2の前後方向移動処理を実行することにより、各ローラ装置2のローラ対20をY方向に沿って移動させることができる。
【0086】
前後方向移動機構5Tによって第2の前後方向移動処理が実行される際、前後方向移動機構5Tより下方に存在するローラ旋回機構3は前後方向に移動することはない。ローラ旋回機構3は移動用ベッド34の移動に連動していないからである。
【0087】
このように、第2の前後方向移動機構である前後方向移動機構5Tは、第2の前後方向用モータである駆動モータ44によって第2の前後方向移動用ベッドである移動用ベッド34をY方向に移動させる第2の前後方向移動処理を実行する。すなわち、前後方向移動機構5Tはローラ旋回機構3及びローラ対20(ローラ10)のうち、ローラ対20のみを前後方向に沿って移動させる第2の前後方向移動処理を実行する。
【0088】
上述した左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tの組合せが位置調整機構となる。位置調整機構によって、ローラ対20上に載置されるタイヤ6のタイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更する位置調整処理が実行される。
【0089】
左右方向移動機構4Bはローラ対20及びローラ旋回機構3を共に左右方向(X方向)に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。左右方向移動機構4Tは、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうち、ローラ対20のみを左右方向に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。
【0090】
前後方向移動機構5Bはローラ対20及びローラ旋回機構3を共に前後方向(Y方向)に沿って移動させる第1の前後方向移動処理を実行する。前後方向移動機構5Tは、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうち、ローラ対20のみを前後方向(Y方向)に沿って移動させる第2の左右方向移動処理を実行する。
【0091】
位置調整処理は、上述した第1及び第2の左右方向移動処理並びに第1及び第2の前後方向移動処理の組合せとなる。
【0092】
ローラ10またはローラ対20を有するローラ駆動機構8は、前後方向移動機構5Tの移動用ベッド34上に設けられる。
【0093】
まず、シングルローラ構成対応のローラ駆動機構8について説明する。シングルローラ構成は単一構成のローラ10をローラ装置2が有する構成である。シングルローラ構成対応のローラ駆動機構8は、ダイナモ11、カップリング12、ギヤボックス16、ローラ用軸受け17、ローラ10及び回転軸18を主要構成要素として含んでいる。
【0094】
ダイナモ11及びギヤボックス16は移動用ベッド34上に固定され、駆動源となるダイナモ11からカップリング12及びギヤボックス16を介して、回転軸18を回転駆動させている。移動用ベッド34上にダイナモ11を跨ぐようにローラ用軸受け17が固定して設けられる。回転軸18はギヤボックス16と回転軸18との間で回転可能に支持される。
【0095】
ローラ10の中心部を貫通するように回転軸18が取り付けられることにより、ローラ10は回転軸18の回転共に回転動作を実行することができる。以上がシングルローラ構成のローラ10を搭載したローラ駆動機構8の構成である。
【0096】
次に、ツインローラ構成対応のローラ駆動機構8について説明する。ツインローラ構成では、ローラ10に替えてローラ対20(前方ローラ20F及び後方ローラ20B)を有している。
【0097】
ツインローラ構成対応のローラ駆動機構8は、ダイナモ11、カップリング12、ギヤボックス26、ローラ用軸受け27、ローラ対20及び回転軸28を主要構成要素として含んでいる。ここで、回転軸28は一対の回転軸28となり、ローラ用軸受け27は一対の回転軸28に対応する一対のローラ用軸受け27となる。
【0098】
ダイナモ11及びギヤボックス26は移動用ベッド34上に固定され、駆動源となるダイナモ11からカップリング12及びギヤボックス26を介して、一対の回転軸28それぞれを回転駆動させている。具体的には、ギヤボックス26内で回転動作伝達機能を2つに分岐させて、一対の回転軸28の回転駆動を可能にしている。
【0099】
移動用ベッド34上にダイナモ11を跨ぐように一対のローラ用軸受け27が設けられる。一対の回転軸28はギヤボックス26と一対のローラ用軸受け27との間でローラ対20が回転可能に支持される。
【0100】
ローラ対20それぞれの中心部を貫通するように一対の回転軸28が取り付けられることにより、一対の回転軸28の回転共にローラ対20は回転動作を実行することができる。
【0101】
なお、移動用ベッド34上にシングルローラ構成対応のローラ駆動機構8を2つ設けることにより、ツインローラ構成にしても良い。
【0102】
(ローラ旋回中心C2(C1)の位置調整方法)
図7は実施の形態1のシャーシダイナモメータ1を用いたローラ旋回中心C2(C1)の位置調整方法の一例を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、位置調整方法の処理手順を説明する。
【0103】
以下では、ツインローラ構成のローラ対20に対するローラ旋回中心C2の位置調整方法を中心に説明する。以下では、ステアリング操作によって車両60の前輪側の一対のタイヤ6がタイヤ旋回動作を行うとの仮定の下、説明する。なお、一対のタイヤ6に対応する2つのローラ対20それぞれのローラ旋回中心C2の位置は予め認識されている。
【0104】
加えて、車両60の前輪側の一対のタイヤ6の左側をタイヤ6L、右側をタイヤ6Rとし、タイヤ6L用のローラ装置2をローラ装置2Lとし、タイヤ6R用のローラ装置2をローラ装置2Rとして説明する。ここで、ローラ装置2Lが左用ローラ装置となり、ローラ装置2Rが右用ローラ装置となる。
【0105】
さらに、タイヤ6Lの旋回中心を左タイヤ旋回中心C6Lとし、タイヤ6Rの旋回中心を右タイヤ旋回中心C6Rとし、ローラ装置2Lにおけるローラ対20の旋回中心を左ローラ旋回中心C2Lとし、ローラ装置2Rにおけるローラ対20の旋回中心を右ローラ旋回中心C2Rとする。
【0106】
図7を参照して、まず、ステップS1において、4つのローラ対20上に車両60の4つのタイヤ6を載置する。4つのローラ対20うち、少なくとも前輪用の2つのローラ対20はそれぞれ図2図6で示したローラ装置2内に設けられ、上部の一部が床面50から露出している。ステップS1の実行により、車両60は左右のローラ装置2L及び2R間のセンターラインCLに対し左右対称になるように載置される。
【0107】
以下で述べるステップS2以降の処理に関し、タイヤ6Lに対応する左用ローラ装置であるローラ装置2Lの動作と、タイヤ6Rに対応する右用ローラ装置であるローラ装置2Rの動作として説明する。
【0108】
ステップS2において、ローラ装置2L及び2Rそれぞれのローラ対20上に載置されたタイヤ6のタイヤ旋回中心C6(C6L,C6R)の位置を認識する。
【0109】
その後、ステップS3において、旋回中心間位置ズレ量を認識する。すなわち、ローラ装置2L及び2Rのローラ対20の左ローラ旋回中心C2L及びC2Rに対するタイヤ6L及び6Rのタイヤ旋回中心C6L及びC6Rそれぞれの位置ズレ量を認識する。旋回中心間位置ズレ量として、例えば、車両60の左右方向に合致するX方向のズレ量DXと、車両60の前後方向に合致するY方向のズレ量DYとの組合せが考えられる。
【0110】
以下、左ローラ旋回中心C2L,左タイヤ旋回中心C6L間の旋回中心間位置ズレを「左側旋回中心間位置ズレ」と呼び、右ローラ旋回中心C2R,右タイヤ旋回中心C6R間の旋回中心間位置ズレを「右側旋回中心間位置ズレ」と呼ぶ。
【0111】
なお、ステップS2,S3の処理は、例えば、ローラ装置2L及び2Rそれぞれのローラ旋回機構3を同時に左右に旋回させ、タイヤ6L及び6Rの動きを目視で確認しながら、予め認識されているローラ旋回中心C2からのタイヤ旋回中心C6の位置ズレ量を認識することにより行われる。また、ステップS2,S3の処理を一度にまとめて行うことも可能である。
【0112】
最後に、ステップS4において、位置調整機構による位置調整処理を実行することにより、左側及び右側旋回中心間位置ズレ量がそれぞれ“0”になるように、ローラ旋回中心C2の位置が変更される。
【0113】
前述したように、ローラ装置2L及び2Rそれぞれの位置調整機構は、左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含んでいる。そして、位置調整処理は、ローラ装置2L及び2Rそれぞれの左右方向移動機構4B及び4Tによる第1及び第2の左右方向移動処理並びに前後方向移動機構5B及び5Tによる第1及び第2の前後方向移動処理を含んでいる。
【0114】
例えば、ステップS3において、旋回中心間位置ズレそれぞれのズレ量DX及びズレ量DYが認識された場合を考える。この場合、左右方向移動機構4B及び4Tによる第1及び第2の左右方向移動処理によってズレ量DXを“0”にし、かつ、前後方向移動機構5B及び5Tによる第1及び第2の前後方向移動処理によってズレ量DYを“0”にするように、タイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回中心C2の位置を変更することができる。なお、上述したように、旋回中心間位置ズレは左側旋回中心間位置ズレ及び右側旋回中心間位置ズレを含んでいる。
【0115】
なお、ローラ10に対するローラ旋回中心C1の位置調整方法も、ローラ旋回中心C2の場合と同様に上述したステップS1~S4を実行することにより行われる。上述したステップS1~S4の処理において、「ローラ対20」が「ローラ10」に置き換わり、「ローラ旋回中心C2」が「ローラ旋回中心C1」に置き換わる。
【0116】
図8図7で示したステップS4で示す位置調整処理の処理内容を示すフローチャートである。同図に示すように、ステップS4は、左右方向調整ルーチンSLRを実行し、その後、前後方向調整ルーチンSFBを実行している。なお、前後方向調整ルーチンSFBを先に実行し、左右方向調整ルーチンSLRを後に実行するようにしても良い。
【0117】
図9図8で示した左右方向調整ルーチンSLRの実行内容を示す説明図である。図10及び図11は左右方向調整ルーチンSLRの実行時におけるローラ装置2L及び2Rの状態を示す説明図である。図10は左右方向調整ルーチンSLRの実行開始時の状態を示し、図11は左右方向調整ルーチンSLRの実行終了時の状態を示している。なお、図10及び図11それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0118】
以下、これらの図を参照して左右方向調整ルーチンSLRの処理内容を説明する。ここで、図10に示すように、タイヤ6Lに関し、左タイヤ旋回中心C6Lに対し左ローラ旋回中心C2Lが-X方向にズレ量|ΔX1|でズレており、右タイヤ旋回中心C6Rに対し右ローラ旋回中心C2Rが+X方向にズレ量|ΔX1|でズレていることが、図7で示すステップS3にて認識されたとする。
【0119】
また、図10において、ローラ装置2Lにおける初期最左端線EL0とローラ装置2Rにおける初期最右端線ER0とが示されている。
【0120】
なお、前述したように、ステップS1の実行時に、車両60はローラ装置2L及び2R間のセンターラインCLに対し左右対称になるように載置されるため、左側及び右側旋回中心間位置ズレ間で左右方向(X方向)のズレ量の絶対値は同一となり、ズレ方向が反対方向となる。
【0121】
上記の場合、左右方向調整ルーチンSLRとして、以下のステップS41~S44の処理が並行して同時に実行される。すなわち、ローラ装置2L及び2Rは位置調整処理に含まれる第1及び第2の左右方向移動処理を同時に実行している。
【0122】
ステップS41において、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Bの第1の左右方向移動処理(移動内容+ΔX1)によって、左ローラ旋回中心C2Lが左タイヤ旋回中心C6Lに一致するように、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を+X方向に向けて移動させる。ステップS41で実行されるローラ装置2Lの第1の左右方向移動処理に関し、第1の左右補正方向が+X方向となり、補正用左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0123】
ステップS42において、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Bの第1の左右方向移動処理(移動内容-ΔX1)によって、右ローラ旋回中心C2Rが右タイヤ旋回中心C6Rに一致するように、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を-X方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第1の左右方向移動処理に関し、第1の左右補正方向が-X方向となり、補正用左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0124】
ステップS43において、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Tの第2の左右方向移動処理(移動内容-ΔX1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを-X方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Lの第2の左右方向移動処理に関し、第2の左右補正方向が-X方向となり、補正用左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0125】
ステップS44において、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Tの第2の左右方向移動処理(移動内容+ΔX1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを+X方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第2の左右方向移動処理に関し、第2の左右補正方向が+X方向となり、補正用左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0126】
上述したステップS41~S44として実行される、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Tによる第2の左右方向移動処理、及び、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Tによる第2の左右方向移動処理それぞれの左右方向(X方向)に沿った左右移動速度も同一に設定される。
【0127】
ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理と、左右方向移動機構4Tによる第2の左右方向移動処理とは同一の補正用左右方向移動量(|ΔX1|)で同時に実行される。
【0128】
さらに、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、第1の左右補正方向と第2の左右補正方向とは互いに反対方向に設定されている。具体的には、ローラ装置2Lでは、第1の左右補正方向が+X方向、第2の左右補正方向は-X方向となり、ローラ装置2Rでは、第1の左右補正方向が-X方向、第2の左右補正方向は+X方向となる。
【0129】
このため、図10及び図11に示すように、ローラ装置2L及び2Rそれぞれのローラ対20の絶対位置は、ローラ装置2L及び2Rそれぞれによる第1及び第2の左右方向移動処理の実行前後において変化しない。したがって、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、X方向におけるローラ対20とタイヤ6(6L、6R)との位置関係も変化しない。
【0130】
図10及び図11に示すように、ステップS41~S44の実行後に絶対位置が移動したのは、斜線部で示す左右方向移動機構4Bの主要部、ローラ旋回機構3、及び左右方向移動機構4Tの一部となる。その結果、ステップS41~S44の実行前後において、初期最左端線EL0が処理後最左端線EL1に変化し、初期最右端線ER0が処理後最右端線ER1に変化する。
【0131】
このように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ装置2Lにおける第1及び第2の左右方向移動処理とローラ装置2Rにおける第1及び第2の左右方向移動処理とを同時に実行している。
【0132】
このため、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20とタイヤ6の位置関係を変更することなく、左右方向において、左タイヤ旋回中心C6Lと左ローラ旋回中心C2Lとを一致させ、かつ、右タイヤ旋回中心C6Rと右ローラ旋回中心C2Rとを一致させることができる。
【0133】
図12図8で示した前後方向調整ルーチンSFBの実行内容を示す説明図である。図13及び図14は前後方向調整ルーチンSFBの実行時におけるローラ装置2(2L,2R)の状態を示す説明図である。図13は前後方向調整ルーチンSFBの実行開始時の状態を示し、図14は前後方向調整ルーチンSFBの実行終了時の状態を示している。なお、図13及び図14それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0134】
以下、これら図を参照して前後方向調整ルーチンSFBの処理内容を説明する。ここで、左タイヤ旋回中心C6Lに対し左ローラ旋回中心C2LがY方向に-ΔY1ズレており、右タイヤ旋回中心C6Rに対し右ローラ旋回中心C2RがY方向に-ΔY1ズレていることが、図7で示すステップS3にて認識されたとする。
【0135】
すなわち、図13に示すように、タイヤ6(6L,6R)に関し、タイヤ旋回中心C6(C6L,C6R)に対しローラ旋回中心C2(C2L,C2R)が-Y方向にズレ量|ΔY1|でズレているとする。
【0136】
なお、図7で示すステップS1の実行時に、車両60のタイヤ6L及び6Rは前後方向に位置ズレなく、ローラ装置2L及び2Rのローラ対20上に載置されるため、左側及び右側旋回中心間位置ズレ間で前後方向(Y方向)のズレ量の絶対値は同一となり、ズレ方向も同一方向となる。
【0137】
上記の場合、図12に示すように、前後方向調整ルーチンSFBとして、以下のステップS45~S48の処理が並行して同時に実行される。
【0138】
ステップS45において、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Bの第1の前後方向移動処理(移動内容+ΔY1)によって、左ローラ旋回中心C2Lが左タイヤ旋回中心C6Lに一致するように、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を+Y方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Lの第1の前後方向移動処理に関し、第1の前後補正方向が+Y方向となり、補正用前後方向移動量が|ΔY1|となる。
【0139】
ステップS46において、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Bの第1の前後方向移動処理(移動内容+ΔY1)によって、右ローラ旋回中心C2Rが右タイヤ旋回中心C6Rに一致するように、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を+方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第1の前後方向移動処理に関し、第1の前後補正方向が+Y方向となり、補正用前後方向移動量が|ΔY1|となる。
【0140】
ステップS47において、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Tの第2の前後方向移動処理(移動内容-ΔY1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを-Y方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Lの第2の前後方向移動処理に関し、第2の前後補正方向が-Y方向となり、補正用前後方向移動量が|ΔY1|となる。
【0141】
ステップS48において、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Tの第2の前後方向移動処理(移動内容-ΔY1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを-Y方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第2の前後方向移動処理に関し、第2の前後補正方向が-Y方向となり、補正用前後方向移動量が|ΔY1|となる。
【0142】
上述したステップS45~S48として実行される、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Tによる第2の前後方向移動処理、及び、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Tによる第2の前後方向移動処理それぞれの前後方向(Y方向)に沿った前後移動速度も同一に設定される。
【0143】
ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理と、前後方向移動機構5Tによる第2の前後方向移動処理とは同一の補正用前後方向移動量(|ΔY1|)で同時に実行される。
【0144】
さらに、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、第1の前後補正方向と第2の前後補正方向とは互いに反対方向に設定されている。具体的には、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、第1の左右補正方向が+Y方向、第2の左右補正方向は-Y方向となる。
【0145】
このため、図13及び図14に示すように、ローラ装置2L及び2Rそれぞれのローラ対20の絶対位置は、ローラ装置2L及び2Rそれぞれによる第1及び第2の前後方向移動処理の実行前後において変化しない。したがって、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、Y方向におけるローラ対20とタイヤ6(6L、6R)の位置関係も変化しない。
【0146】
図13及び図14に示すように、ステップS41~S44の実行後に絶対位置が移動したのは、斜線部で示す、前後方向移動機構5Bの一部、左右方向移動機構4B、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、及び前後方向移動機構5Tの一部となる。
【0147】
上述したように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ装置2Lにおける第1及び第2の前後方向移動処理とローラ装置2Rにおける第1及び第2の前後方向移動処理とを同時に実行している。
【0148】
このため、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20とタイヤ6の位置関係を変更することなく、前後方向において、左タイヤ旋回中心C6Lと左ローラ旋回中心C2Lとを一致させ、かつ、右タイヤ旋回中心C6Rと右ローラ旋回中心C2Rとを一致させることができる。
【0149】
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含む位置調整機構を有しているため、上述した位置調整処理(図7のステップS4,図8図12参照)を実行することができる。
【0150】
このため、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20上にタイヤ6を載置した状態で、平面視してタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが近づき、望ましくは旋回中心間位置ズレ量“0”になるように、タイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更することができる。
【0151】
なお、図7で示したフローチャートは一例であり、他に様々な位置調整方法が考えられる。例えば、ステップS2,S3の処理を、車両60の正確な情報を有する3DCAD上で検証することもできる。
【0152】
さらに、上記した3DCADを利用して、載置予定の車両60のタイヤ旋回中心C6に一致するように、ローラ旋回中心C2(C1)の位置設定を車両60の載置前に予め行っても良い。
【0153】
(効果)
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は。左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含み、上述した位置調整処理を実行する位置調整機構を有している。
【0154】
ここで、ローラ装置2のローラ対20(ローラ10)上に車両60のタイヤ6を配置した初期状態時に、図20(a),(b)や図21(a),(b)に示すように、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とがずれていた場合を考える。
【0155】
すなわち、初期状態時において、図20(a),(b)や図21(a),(b)に示すように、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)との間にX方向のズレ量DX(DX1,DX2)とY方向のズレ量DY(DY1,DY2)とが存在している場合を想定する。
【0156】
上述したように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1におけるローラ装置2(2L,2R)は、図2図6で示した左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含む位置調整機構を有している。この位置調整機構は、ローラ対20上に載置されるタイヤ6のタイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更する位置調整処理を実行することができる。
【0157】
このため、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20(ローラ10)上にタイヤ6を載置した状態で、平面視してタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とが近づくように、ローラ対20上に載置されるタイヤ6のタイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更することができる。
【0158】
具体的には、左右方向移動機構4B及び4Tと前後方向移動機構5B及び5Tとのうち、少なくとも一つの方向に関する位置調整機構を有することにより、ズレ量DX及びズレ量DYのうち少なくとも一方が“0”になるように、ローラ旋回中心C1をタイヤ旋回中心C6に近づけることができる。
【0159】
したがって、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、常にタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とが初期状態より近づいた状態で、車両60に対する種々の走行試験を行うことができる。
【0160】
その結果、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0161】
一般に、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)との車両60の左右方向(X方向)に沿った第1の位置ズレ量となるズレ量DXは、車両60の前後方向(Y方向)に沿った第2の位置ズレ量となるズレ量DYと比較して大きくなる傾向がある。例えば、ズレ量DXは50mm程度の変位量で生じる可能性があり、ズレ量DYは10mm程度の変位量で生じる可能性がある。したがって、ズレ量DXの補正は、ズレ量DYの補正と比較して重要な補正となる。
【0162】
シャーシダイナモメータ1のローラ装置2Lとローラ装置2Rとは同時に位置調整処理を実行することにより、タイヤ6L及び6R間で車両60を動かすことなくバランス良く位置調整処理を実行することができる。位置調整処理には第1及び第2の左右方向移動処理(ステップS41~S44)並びに第1及び第2の前後方向移動処理(ステップS45~S48)のうち、少なくとも一方向の移動処理が含まれる。
【0163】
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、左右方向移動機構4B及び4Tに加え、前後方向移動機構5B及び5T5を有している。前後方向移動機構5B及び5Tによる第1及び第2の前後方向移動処理によって、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)との前後方向におけるズレ量DYを調整することができる。
【0164】
すなわち、シャーシダイナモメータ1は、上述した第1及び第2の前後方向移動処理によって、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とのY方向におけるズレ量DYが極力“0”になるように調整することができる。
【0165】
したがって、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1におけるローラ装置2(2L,2R)は、左右方向移動機構4B及び4Tに加え、前後方向移動機構5B及び5T5を有することにより、ズレ量DXが極力“0”となり、かつ、ズレ量DYが極力“0”となるように、ローラ旋回中心C2(C1)を補正することができる。
【0166】
このように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20(ローラ10)上に車両60のタイヤ6を載置した際に旋回中心間位置ズレが発生しても、平面視してタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とを合致させることができる。
【0167】
したがって、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とが合致した状態で、車両60に対する種々の走行試験を行うができるため、ローラ旋回動作及びタイヤ旋回動作を伴う車両60の走行試験の精度を大幅に高めることができる。
【0168】
以下、この点を詳述する。図15及び図16は実施の形態1のシャーシダイナモメータ1における上記効果を示す説明図である。図15はローラ装置が単位構成のローラ10を有するシングルローラ構成の場合、図16はローラ装置がローラ対20を有するツインローラ構成の場合を示している。
【0169】
図15(a)及び(b)は車両の直進状態(初期状態)時のローラ10とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図であり、図15(c)及び(d)は車両のタイヤ6及びローラ10を旋回させた場合のローラ10とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図である。図15(a)~(d)それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0170】
図16(a)及び(b)は車両の直進状態(初期状態)時のローラ対20(20F,20B)とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図であり、図16(c)及び(d)は車両のタイヤ6及びローラ対20を旋回させた場合のローラ対20とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図である。図16(a)~(d)それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0171】
なお、図15(c),(d)及び図16(c),(d)で示すX軸及びY軸は、図15(a),(b)及び図16(a),(b)と比較容易にすべく、便宜上、図15(a),(b)及び図16(a),(b)のX軸及びY軸に一致させている。実際には、ローラ旋回動作及びタイヤ旋回動作に伴いタイヤ6やローラ10(ローラ対20)とX軸及びY軸との関係は変化する。
【0172】
図15で示すシングルローラ構成において、ローラ旋回機構3はローラ旋回中心C1を中心としてローラ旋回方向R1に沿ってローラ10を旋回するローラ旋回動作を実行することができる。一方、車両60はタイヤ旋回中心C6を中心としてタイヤ旋回方向R6に沿ってタイヤ6を旋回するタイヤ旋回動作を実行することができる。
【0173】
図16で示すツインローラ構成において、ローラ旋回機構3はローラ旋回中心C2を中心としてローラ旋回方向R2に沿ってローラ対20を旋回するローラ旋回動作を実行することができる。一方、車両60は上述したタイヤ旋回動作を実行することができる。
【0174】
まず、図15を参照して、単一構成のローラ10を有するシングルローラ構成のローラ装置2による効果を説明する。
【0175】
図15(a),(b)に示すように、タイヤ6のタイヤ旋回中心C6とローラ10のローラ旋回中心C1とが合致している。
【0176】
例えば、図20(a),(b)に示すように、ローラ旋回中心C1とタイヤ旋回中心C6との間にズレ量DX1及びDY1を含む旋回中心間位置ズレ量が発生しても、シャーシダイナモメータ1は図7のステップS4で示した位置調整処理を実行することにより、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C1とのXY平面における位置を一致させることができる。
【0177】
図15(a),(b)に示すように、車両60の直進状態時において、タイヤ6とローラ10との位置関係は一定の状態で変化しない。
【0178】
さらに、図15(c),(d)に示すように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を実行しても、タイヤ6とローラ10との位置関係は一定の状態で変化しない。
【0179】
このように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、常にタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C1とが一致した状態でタイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う走行試験を車両60に対して行うことができる。
【0180】
図15に示すように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ装置2が有する単一構成のローラ10上に車両60のタイヤ6を載置して、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0181】
次に、図16を参照して、ローラ対20を有するツインローラ構成のローラ装置2による効果を説明する。
【0182】
図16(a),(b)に示すように、タイヤ6のタイヤ旋回中心C6とローラ対20のローラ旋回中心C2とが合致している。
【0183】
例えば、図21(a),(b)に示すように、ローラ旋回中心C2とタイヤ旋回中心C6との間にズレ量DX2及びDY2を含む旋回中心間位置ズレ量が発生しても、シャーシダイナモメータ1は図7のステップS4で示した位置調整処理を実行することにより、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とのXY平面における位置を一致させることができる。
【0184】
図16(a),(b)に示すように、車両60の直進状態時において、タイヤ6とローラ対20との位置関係は一定の状態で変化しない。
【0185】
さらに、図16(c),(d)に示すように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を実行しても、タイヤ6とローラ対20との位置関係は一定の状態で変化しない。
【0186】
このように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、常にタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが一致した状態でタイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う走行試験を車両60に対して行うことができる。
【0187】
図16に示すように、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、ローラ装置2が有するローラ対20上に車両60のタイヤ6を載置して、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0188】
図2に戻って、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1におけるローラ装置2(2L,2R)は、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを、ベース台25とローラ10(ローラ対20)を有するローラ駆動機構8との間に高さ方向(Z方向)に沿って設けている。このため、実施の形態1のローラ装置2は、装置面積を増大させることなく、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを備えることができる。
【0189】
<実施の形態2>
(ローラ装置12)
図17は実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bに用いられるローラ装置12の構造を示す正面図である。図17では後方(-Y方向)から視た正面図を示している。ステアリング操作によって車両60の前輪側の2つのタイヤ6がタイヤ旋回動作を行う場合、少なくとも前輪側の2台のローラ装置として、図17で示すローラ装置12が用いられる。図17にXYZ直交座標系を記している。
【0190】
なお、ローラ装置2がローラ装置12に置き換わった点を除き、シャーシダイナモメータ1Bはシャーシダイナモメータ1と同様な特徴を有している。したがって、車両60の載置後のシャーシダイナモメータ1Bの全体構成は図1で示した実施の形態1のシャーシダイナモメータ1と同様である。
【0191】
以下、図2図6で示した実施の形態1のローラ装置2と同様な構成部は、同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態2のローラ装置12の特徴部分を中心に説明する。
【0192】
図17に示すように、ローラ装置12はベース台25上に設けられ、前後方向移動機構5B、左右方向移動機構4B、ローラ旋回機構3、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8を主要構成要素として含んでいる。すなわち、ローラ装置12は実施の形態1の左右方向移動機構4Tに相当する構成要素と有していない。
【0193】
以下、ローラ駆動機構8がローラ対20を搭載している場合を前提として、ローラ装置12の各構成部について説明する。ローラ駆動機構8がローラ10を搭載している場合も、ローラ駆動機構8を除く各部の構成は同じである。
【0194】
実施の形態1のローラ装置2と同様、ローラ装置12において、移動用ベッド31上にローラ旋回機構3が設けられる。ローラ旋回機構3は、旋回ベッド32、旋回用モータ42、及び旋回軸受38を主要構成要素として含んでいる。
【0195】
ローラ旋回機構3の旋回ベッド32上に中継部材32rを介して第2の前後方向移動機構である前後方向移動機構5Tが設けられる。
【0196】
ローラ装置12の前後方向移動機構5Bは、実施の形態1のローラ装置2の前後方向移動機構5Bと同様に、第1の前後方向移動処理を実行することにより、ローラ装置12全体を前後方向(Y方向)に沿って移動させることができる。
【0197】
ローラ装置12の左右方向移動機構4Bは、ローラ装置2の左右方向移動機構4Bと同様に、移動用ベッド31を左右方向(X方向)に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。
【0198】
ローラ装置12のローラ旋回機構3は、ローラ装置2のローラ旋回機構3と同様、旋回ベッド32を旋回させる旋回動作を実行する。
【0199】
ローラ装置12の前後方向移動機構5Tは、ローラ装置2の前後方向移動機構5Tと同様、移動用ベッド34を前後方向に沿って移動させる第2の前後方向移動処理を実行する。なお、実施の形態2における前後方向移動機構5Tの基台は移動用ベッド33から中継部材32rに変更されている。
【0200】
実施の形態2のローラ装置12において、上述した左右方向移動機構4B並びに前後方向移動機構5B及び5Tの組合せが位置調整機構となる。位置調整機構によって、ローラ対20上に載置されるタイヤ6のタイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更する位置調整処理が実行される。
【0201】
ローラ装置12における位置調整処理は、上述した第1の左右方向移動処理並びに第1及び第2の前後方向移動処理の組合せとなる。
【0202】
ローラ10またはローラ対20を有するローラ駆動機構8は、ローラ装置2のローラ駆動機構8と同様、前後方向移動機構5Tの移動用ベッド34上に設けられる。
【0203】
(ローラ旋回中心C2(C1)の位置調整方法)
ローラ旋回中心C2(C1)の位置調整方法は、実施の形態1と同様、図7で示すステップS1~S4によって実行される。また、図7で示したステップS4で示す位置調整処理として、実施の形態1と同様、図8で示す左右方向調整ルーチンSLRと前後方向調整ルーチンSFBとを実行している。
【0204】
前後方向調整ルーチンSFBは、実施の形態1と同様、図12で示すステップS45~S48を実行する。
【0205】
一方、ローラ装置12は、左右方向移動機構4Tに相当する構成要素を有さないため、左右方向調整ルーチンSLRとして、図9で示すステップS41及びS42のみを実行している。
【0206】
図18及び図19は左右方向調整ルーチンSLRの実行時におけるローラ装置12L及び12Rの状態を示す説明図である。図18は左右方向調整ルーチンSLRの実行開始時の状態を示し、図19は左右方向調整ルーチンSLRの実行終了時の状態を示している。なお、図18及び図19それぞれにXYZ直交座標系を記している。図18及び図19で示すローラ装置12Lが左用ローラ装置となり、ローラ装置12Rが右用ローラ装置となる。
【0207】
以下、これらの図を参照して、実施の形態2のローラ装置12による左右方向調整ルーチンSLRの処理内容を説明する。
【0208】
ここで、図18に示すように、タイヤ6Lに関し、左タイヤ旋回中心C6Lに対し左ローラ旋回中心C2Lが-X方向にズレ量|ΔX1|でズレており、右タイヤ旋回中心C6Rに対し右ローラ旋回中心C2Rが+X方向にズレ量|ΔX1|でズレているとする。
【0209】
図18において、左用ローラ装置であるローラ装置12Lにおける初期最左端線EL0と右用ローラ装置であるローラ装置12Rにおける初期最右端線ER0とが示されている。
【0210】
前述したように、ローラ装置12は、左右方向調整ルーチンSLRとして、以下のステップS41,S42の処理を並行して同時に実行する。すなわち、ローラ装置12L及び12Rは同時に位置調整処理に含まれる第1の左右方向移動処理を実行する。
【0211】
ステップS41において、ローラ装置12Lの左右方向移動機構4Bの第1の左右方向移動処理(移動内容+ΔX1)によって、左ローラ旋回中心C2Lが左タイヤ旋回中心C6Lに一致するように、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を+X方向に向けて移動させる。ステップS41で実行されるローラ装置12Lの第1の左右方向移動処理に関し、第1の左右補正方向が+X方向となり、補正用左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0212】
ステップS42において、ローラ装置12Rの左右方向移動機構4Bの第1の左右方向移動処理(移動内容-ΔX1)によって、右ローラ旋回中心C2Rが右タイヤ旋回中心C6Rに一致するように、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を-X方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置12Rの第1の左右方向移動処理に関し、第1の左右補正方向が-X方向となり、補正用左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0213】
上述したステップS41及びS42で実行されるローラ装置12Lの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理、及び、ローラ装置12Rの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理それぞれの左右方向に沿った左右移動速度も同一に設定される。
【0214】
実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bでは、ローラ装置2L及び2Rがそれぞれ第1の左右移動機構である左右方向移動機構4Bによって第1の左右方向移動処理を実行している。第1の左右方向移動処理によって、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とのX方向におけるズレ量DXが極力“0”となるように調整することができる。
【0215】
したがって、シャーシダイナモメータ1Bにおけるローラ装置12L及び12Rはそれぞれ左右方向移動機構4Bを有することにより、重要度の高いズレ量DXを補正して、X方向に沿ってタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C1(C2)とを近づけることができる。
【0216】
なお、ローラ装置12Lの左ローラ旋回中心C2Lに対するタイヤ6Lの左タイヤ旋回中心C6Lのズレ内容(+ΔX1)と、ローラ装置12Rの右ローラ旋回中心C2Rに対するタイヤ6Rの右タイヤ旋回中心C6Rのズレ内容(-ΔX1)とは、X方向に沿って互いに反対方向となり、ズレ量の絶対値が同一となる。
【0217】
シャーシダイナモメータ1Bは、ローラ装置12Lの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理とローラ装置12Rの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理とを同時に実行しているため、車両60のタイヤ6の絶対位置は移動しない。なぜなら、上述した第1の左右補正方向と第2の左右補正方向とが反対方向であり、上述した補正用左右方向移動量の絶対値が同一であるため、車両60全体にかかる力の均衡が保たれるからである。
【0218】
ここで、ステップS41及びS42の実行後に絶対位置が移動するのは、斜線部で示す。左右方向移動機構4Bの主要部、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T及びローラ駆動機構8となる。すなわち、ローラ駆動機構8に設けられるローラ対20も左右方向に沿って移動する。
【0219】
図18及び図19に示すように、ステップS41及びS42の実行前後において、初期最左端線EL0が処理後最左端線EL1に変化し、初期最右端線ER0が処理後最右端線ER1に変化する。
【0220】
したがって、ローラ装置12L及び12Rそれぞれの第1の左右方向移動処理の実行前後において、ローラ対20に対するタイヤ6の位置が左右方向(X方向)に沿って変化することになる。
【0221】
しかしながら、図19に示すように、第1の左右方向移動処理の実行後においても、ローラ対20上にタイヤ6が載置されている状態が維持されておれば、その後の走行試験に支障を来すことはない。
【0222】
したがって、ローラ対20のX方向の幅に余裕が有る場合、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bのローラ装置12の左右方向移動機構4Bのみによって、X方向に沿ってタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とを近づけることができる。
【0223】
実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは左右方向移動機構4B並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含む位置調整機構を有しているため、上述した位置調整処理を実行することができる。
【0224】
このため、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、ローラ対20上にタイヤ6を載置した状態で、平面視してタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが近づき、望ましくは旋回中心間位置ズレ量“0”になるように、タイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更することができる。
【0225】
(効果)
実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは左右方向移動機構4B並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含み、上述した位置調整処理を実行する位置調整機構を有している。
【0226】
したがって、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、実施の形態1と同様、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0227】
実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bにおけるローラ装置12は、左右方向移動機構4Bに加え、前後方向移動機構5B及び5T5を有している。
【0228】
このため、実施の形態1のローラ装置12は、実施の形態1のローラ装置2と同様、ローラ対20(ローラ10)上に車両60のタイヤ6を載置した際に旋回中心間位置ズレが発生しても、平面視してタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とを合致させることができる。
【0229】
したがって、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2(C1)とが合致した状態で、車両60に対する種々の走行試験を行うができるため、ローラ旋回動作及びタイヤ旋回動作を伴う車両60の走行試験の精度を大幅に高めることができる。
【0230】
図17に戻って、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bにおけるローラ装置12(12L,12R)は、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4B並びに前後方向移動機構5B及び5Tを、ベース台25とローラ対20(ローラ10)を有するローラ駆動機構8との間に高さ方向(Z方向)に沿って設けている。このため、実施の形態2のローラ装置12は、装置面積を増大させることなく、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4B並びに前後方向移動機構5B及び5Tを備えることができる。
【0231】
また、実施の形態2のローラ装置12は、左右方向移動機構4Tに相当する構成部を設けない分、実施の形態1のローラ装置2と比較して装置の簡略化を図ることができる。
【0232】
<その他>
上述した実施の形態では、車両試験装置としてシャーシダイナモメータ1及び1Bを取り上げたが、車両試験装置はシャーシダイナモメータに限定されない。例えば、シャーシダイナモメータ1(1B)に替えて、車両試験装置としてフリーローラ試験装置を用いても良い。フリーローラ試験装置はローラ10やローラ対20の重みだけで車両60の加減速負荷を与える装置であり、ローラ10やローラ対20に動力を伝えない装置である。このため、フリーローラ試験装置は、シャーシダイナモメータのように、ローラ10やローラ対20に負荷をかけるモータを有していない。
【0233】
このように、本開示の車両試験装置はシャーシダイナモメータやフリーローラ試験装置を含んでいる。
【0234】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0235】
1,1B シャーシダイナモメータ
2,2L,2R,12,12L,12R ローラ装置
3 ローラ旋回機構
4B,4T 左右方向移動機構
5B,5T 前後方向移動機構
6,6L,6R タイヤ
8 ローラ駆動機構
10 ローラ
20 ローラ対
20B 後方ローラ
20F 前方ローラ
60 車両
C1,C2 ローラ旋回中心
C2L 左ローラ旋回中心
C2R 右ローラ旋回中心
C6 タイヤ旋回中心
C6L 左タイヤ旋回中心
C6R 右タイヤ旋回中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21