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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089815
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20230621BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H02K11/25
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204556
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 修平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 眞矢
(72)【発明者】
【氏名】今枝 雅稀
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604CC16
5H604QB14
5H611AA01
5H611AA03
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】生産性が改善された回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、ケースと、ケース内に配置されるともにコイル線が巻き回されているステータと、コイル線に接続されるバスバーと、バスバーの温度を計測するサーミスタと、ケースに固定され、ステータ、バスバー及びサーミスタをケース内に密閉するカバーを備えている。この回転電機では、バスバーが、サーミスタが搭載される搭載面を有する搭載部と、搭載部に設けられているとともにサーミスタの側部に接触してサーミスタを搭載部上に保持する保持部を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
ケース内に配置されるともにコイル線が巻き回されているステータと、
コイル線に接続されるバスバーと、
バスバーの温度を計測するサーミスタと、
ケースに固定され、ステータ、バスバー及びサーミスタをケース内に密閉するカバーと、
を備えており、
バスバーが、サーミスタが搭載される搭載面を有する搭載部と、搭載部に設けられているとともにサーミスタの側部に接触してサーミスタを搭載部上に保持する保持部と、を有している、回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
バスバーの搭載面とサーミスタの被搭載面の双方に、搭載部に対するサーミスタの位置決めを行う第1の位置決め構造が設けられている、回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
カバーとサーミスタの間に、サーミスタを搭載部に付勢する付勢部材が配置されており、
付勢部材と接触するサーミスタの第1接触面と、サーミスタと接触する付勢部材の第2接触面の双方に、サーミスタに対する付勢部材の位置決めを行う第2の位置決め構造が設けられている、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、回転電機が開示されている。特許文献1の回転電機では、バスバー(接続部部材)の端部に曲げ部を形成し、コイル線の温度を測定するためのサーミスタ(温度センサ)を、固定部材を用いて曲げ部に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-225959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、バスバーにサーミスタを取り付けるためには、固定部材が必須である。換言すると、バスバーにサーミスタを取り付けるために、バスバーに対して2部品(サーミスタと固定部材)を取り付けることが必要である。そのため、回転電機の製造工程が煩雑となる。バスバーに対してサーミスタを直接取り付ける(固定する)ことができれば、回転電機の生産性は大幅に向上する。本明細書は、生産性が改善された回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、回転電機であって、その回転電機は、ケースと、ケース内に配置されるともにコイル線が巻き回されているステータと、コイル線に接続されるバスバーと、バスバーの温度を計測するサーミスタと、ケースに固定され、ステータ、バスバー及びサーミスタをケース内に密閉するカバーを備えていてよい。この回転電機では、バスバーが、サーミスタが搭載される搭載面を有する搭載部と、搭載部に設けられているとともにサーミスタの側部に接触してサーミスタを搭載部上に保持する保持部を有していてよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術の回転電機であって、バスバーの搭載面とサーミスタの被搭載面の双方に、搭載部に対するサーミスタの位置決めを行う第1の位置決め構造が設けられていてよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第1又は第2技術の回転電機であって、カバーとサーミスタの間に、サーミスタを搭載部に付勢する付勢部材が配置されており、付勢部材と接触するサーミスタの第1接触面と、サーミスタと接触する付勢部材の第2接触面の双方に、サーミスタに対する付勢部材の位置決めを行う第2の位置決め構造が設けられていてよい。
【発明の効果】
【0008】
第1技術によると、サーミスタを、他の部品を用いることなく、バスバーに対して簡単に取り付けることができる。具体的には、サーミスタの側部が保持部に接触するようにサーミスタを搭載面上に搭載するだけで、サーミスタをバスバーに取り付けることができる。換言すると、サーミスタを、搭載部の所定位置に置くだけで、サーミスタをバスバーに取り付けることができる。これにより、回転電機の生産性を大幅に向上させることができる。また、従来の回転電機と比較すると、固定部材を必要としないので、部品コストを低減することができる。
【0009】
第2技術によると、搭載部に対するサーミスタの位置決めを容易に行うことができる。第1の位置決め構造としては、例えば、バスバーの搭載面に凹部を形成し、サーミスタ被搭載面に凸部を形成する形態が挙げられる。あるいは、バスバーの搭載面に凸部を形成し、サーミスタ被搭載面に凹部してもよい。いずれの場合も、凸部を凹部に嵌めるたけでサーミスタが搭載部に対して位置決めされる。その結果、回転電機の生産性をさらに向上させることができる。
【0010】
第3技術によると、サーミスタの被搭載面を確実にバスバーの搭載面に接触させることができるので、サーミスタがバスバーの熱を確実に受熱することができる。その結果、サーミスタの温度計測精度を向上させることができる。また、第2の位置決め構造を設けることにより、サーミスタを搭載部に確実に付勢することができる。換言すると、付勢部材がカバーとサーミスタの間から外れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】回転電機の斜視図を示す。
図2】回転電機のカバーを取り外した状態の平面図を示す。
図3】回転電機の特徴を説明するための部分拡大図(斜視図)を示す。
図4】サーミスタが搭載されるバスバーの端子部の部分拡大図(斜視図)を示す。
図5】サーミスタの斜視図を示す。
図6】サーミスタの斜視図を示す。
図7】付勢部材の斜視図を示す。
図8】サーミスタの取り付け工程を説明するための図(断面図)を示す。
図9】サーミスタをバスバーに取り付けた状態(断面図)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)
図1から図3を参照し、回転電機2の概略について説明する。なお、図中のX,Y,Zは座標を示しており、ロータ14の回転軸がZ軸に沿うように回転電機2を示している。回転電機2は、モータ(電動機)又はジェネレータ(発電機)として利用することができる。
【0013】
まず、回転電機2の外観について説明する。図1に示すように、回転電機2は、ケース50とカバー70を備えている。ケース50は、金属から構成されており、底部52と、本体部54と、周縁部56を備えている。また、ケース50は、回転電機2の軸方向に開口する開口部55を備えている(図2を参照)。ケース50の開口部55は、カバー70により閉塞されている。カバー70は、本体部71と、本体部71を囲むように本体部71の周囲に設けられている周縁部72を備えている。周縁部72には複数のボルト孔が設けられている。ケース50とカバー70は、ボルトによって締結される。
【0014】
図2に示すように、ケース50内には、ステータ12と、ステータ12の内側に配置されているロータ14と、ステータ12(ステータ12に接続されている中性バスバー40n)の温度を計測するサーミスタ90が配置されている。中性バスバー40nについては後述する。ステータ12は、コイル20をZ軸の周りに複数並べることによって形成されている。ケース50の周縁部56は、ステータ12を囲むようにステータ12の周囲に配置されている。周縁部56は、ステータ12の周方向に伸びている。周縁部56には複数のボルト孔58が設けられている。ボルト孔58を利用してケース50とカバー70が締結される(図1も参照)。カバー70によって、ステータ12、サーミスタ90及び後述するバスバー40がケース50内に密閉される。なお、回転電機2は、基準電位に電気的に接続され、ステータ12の径方向の外側に突出している接地部48nを備えていてもよい。また、回転電機2は、電源に電気的に接続され、ステータ12の径方向の外側に突出している電源部48u、48v、48wを備えていてもよい。接地部48n及び電源部48u、48v、48wについては後述する。
【0015】
(ステータの特徴)
図3を参照し、ステータ12について説明する。ステータ12は、コア30と、コア30に集中巻で巻き回されている複数のコイル20(複数のU相コイル20u、複数のV相コイル20v、複数のW相コイル20w)を備えている。また、ステータ12は、複数のバスバー40(中性バスバー40n、U相バスバー40u、V相バスバー40v、W相バスバー40w)と、複数のバスバー40を保持する保持部材60を備えている。
【0016】
ステータ12のコア30は、複数のティース32を備えている。各ティース32は、コア30の周方向に並んでおり、互いに間隔をあけて配置されている。各ティース32には、それぞれコイル20(20u、20v、20w)が巻き回されている。各コイル20(20u、20v、20w)は、Z軸周りに並んでおり、互いに間隔をあけて配置されている。
【0017】
複数のコイル20(20u、20v、20w)のうち、U相コイル20uは、U相バスバー40uに電気的に接続されている。同様に、V相コイル20vはV相バスバー40vに電気的に接続されており、W相コイル20wはW相バスバー40wに電気的に接続されている。以下、複数のコイル20(20u、20v、20w)のうち、V相コイル20vの構成について説明する。U相コイル20u及びW相コイル20wについて、V相コイル20vと実質的に同じ構成については、V相コイル20vと同じ参照番号(アルファベットの添え字のみが異なる)を付すことによって説明を省略する。
【0018】
V相コイル20vは、1本の導線22が巻き回されることにより構成されている。導線22は、コイル線の一例である。導線22は、例えば、集中巻きやアルファ巻きで巻き回されている。V相コイル20vの導線22は、巻線部24vと、巻線部24vから突出する一対の端末部26v、26nを備えている。巻線部24vは、コア30のティース32の周囲に巻き回されている。巻線部24vは、ティース32を覆うように配置されている。端末部26v、26nは、Z方向に伸びた後、屈曲し、ステータ12の径方向外側に向けて伸びている。V相コイル20vでは、導線22の一方の端末部26vは、V相バスバー40vの端子部44vに接続されている。また、導線22の他方の端末部26nは、中性バスバー40nの端子部44nに接続されている。
【0019】
次に、バスバー40について説明する。複数のバスバー40(40n、40u、40v、40w)が、コイル20(20u、20v、20w)を囲むようにコイル20の周囲に配置されている。複数のバスバー40(40n、40u、40v、40w)のうち、中性バスバー40nは、U相コイル20u、V相コイル20v、および、W相コイル20wに電気的に接続されている。また、中性バスバー40nは、基準電位に接地されている。中性バスバー40nは、上述した接地部48nを備えていてもよい(図2も参照)。この場合、接地部48nは、中性バスバー40nの本体部42nからステータ12の径方向の外側に突出している。
【0020】
複数のバスバー40(40n、40u、40v、40w)のうち、U相バスバー40uは、U相コイル20uに電気的に接続されている。V相バスバー40vは、V相コイル20vに電気的に接続されている。W相バスバー40wは、W相コイル20wに電気的に接続されている。また、U相バスバー40u、V相バスバー40v及びW相バスバー40wは、三相交流を生成するインバータを介して電源に電気的に接続されている。U、V、W相のバスバー40u、40v、40wは、それぞれ、電源に電気的に接続される電源部48u、48v、48wを備えていてもよい(図2も参照)。この場合、電源部48u、48v、48wは、それぞれ、例えば、U、V、W相のバスバー40u、40v、40wの本体部42u、42v、42wからステータ12の径方向の外側に突出している。
【0021】
回転電機2では、複数のバスバー40(40n、40u、40v、40w)を介して複数のコイル20(20u、20v、20w)に三相交流の電力が供給される。以下、複数のバスバー40(40n、40u、40v、40w)のうち、中性バスバー40nの構成について説明する。中性バスバー40nと実質的に同じ構成については、中性バスバー40nと同じ参照番号(アルファベットの添え字のみが異なる)を付すことによって説明を省略する。
【0022】
中性バスバー40nは、導電体によって略円環状に構成されている。中性バスバー40nは、本体部42nと、本体部42nから突出する複数の端子部44nを備えている。本体部42nは、ステータ12の径方向においてコイル20よりも外側に配置されている。本体部42nは、ステータ12の周方向に伸びている。本体部42nは、コイル20を囲うようにコイル20の周囲配置されている。各本体部42(42n、42u、42v、42w)は、ステータ12の径方向に並んでおり、互いに間隔をあけて配置されている。
【0023】
中性バスバー40nの各端子部44nは、本体部42nと一体に構成されている。端子部44nの基端部が本体部42nに接続されている。端子部44nは、本体部42nからZ軸方向に突出している。端子部44nの先端部にコイル20(例えば、V相コイル20v)の導線22の端末部26nが接続されている。導線22の端末部26nは、例えば、溶接等の接合方法により端子部44nに接続される。中性バスバー40nの端子部44nのうちの1個に、サーミスタ90が取り付けられている。サーミスタ90が取り付けられている端子部44nの形状は、他の端子部44nと異なる。
【0024】
次に、保持部材60の構成について説明する。保持部材60は、絶縁性を有する樹脂によって構成されている。保持部材60は、複数のバスバー40(40n、40u、40v、40w)を保持している。保持部材60は、ステータ12の周方向に伸びており、略円形状に構成されている。保持部材60は、コイル20を囲むように複数のコイル20の周囲に配置されている。
【0025】
保持部材60には、複数のバスバー40を保持するための複数の収容凹部66(中性収容凹部66n、U相収容凹部66u、V相収容凹部66v、W相収容凹部66w)が設けられている。各収容凹部66は、それぞれ、ステータ12の周方向に伸びており、略円形状に構成されている。複数の収容凹部66は、それぞれ、Z軸方向に開口している。具体的には、収容凹部66は、Z軸方向に設けられた窪みである。各収容凹部66(66n、66u、66v、66w)には、それぞれ、バスバー40(40n、40u、40v、40w)の本体部42(42n、42u、42v、42w)が収容されている。
【0026】
(サーミスタと中性バスバーの特徴)
図4から図6を参照し、サーミスタ90、及び、サーミスタ90が取り付けられている端子部44nについて説明する。図4に示すように、端子部44nは、基部45a、搭載部45b及び突出部45cを備えている。基部45aは、中性バスバー40nの本体部42nと一体に構成されており、Z軸方向に伸びている。基部45aは、実質的に、サーミスタ90が取り付けられない他の端子部44nに相当する。搭載部45bは、基部45aの先端に設けられており、ステータ12の径方向内側に向けて伸びている。搭載部45bは、基部45aと一体に構成されている。搭載部45bの表面に、サーミスタ90が搭載される(図3も参照)。すなわち、搭載部45bの表面は、サーミスタ90が搭載される搭載面である。搭載部45bの表面(搭載面)には、2個の凹部45dが設けられている。なお、凹部45dは、円柱状(円柱を取り除いた残部)であり、搭載部45bを貫通していている。
【0027】
突出部45cは、搭載部45bの先端(基部45aが設けられている位置の反対側)に設けられており、Z軸方向に伸びている。突出部45cは、搭載部45bと一体に構成されている。搭載部45bに対して基部45aが伸びる向きと、搭載部45bに対して突出部45cが伸びる向きは反対である。突出部45cには、U字状の保持部45eが形成されている。
【0028】
図5及び図6に示すように、サーミスタ90は、本体部90a、係合部90b及びケーブル90cを備えている。また、本体部90aの表面90sには2個の凹部91が形成されており、裏面90rには2個の凸部92が形成されている。凹部91は円柱状(円柱を取り除いた残部)であり、凸部92も円柱状である。凸部92,92の間隔は、上述した搭載部45bの凹部45d,45dの間隔と同一である。詳細は後述するが、本体部90aの裏面90rが、搭載部45bの表面(搭載面)に接触する。すなわち、裏面90rは、サーミスタ90の被搭載面に相当する。また、サーミスタ90を搭載部45bに搭載すると、係合部90bは、上述した保持部45e内に配置される。なお、ケーブル90cは、電源(図示省略)に接続されている。
【0029】
次に、図7を参照し、カバー70をケース50に締結する際、サーミスタ90上に配置する付勢部材100について説明する(図1及び図2も参照)。付勢部材100は、略四角柱状のゴムブロックであり、カバー70をケース50に締結する際、サーミスタ90の表面90sとカバー70の裏面に接触し、サーミスタ90を搭載部45bに押し付ける(付勢する)ために用いる。付勢部材100の表裏面のサイズは、サーミスタ90の本体部90aの表面90sのサイズと同一か、表面90sのサイズよりも大きく調整されている。また、付勢部材100の厚み(表裏面間の距離)は、カバー70をケース50に締結した際に、カバー70の裏面とサーミスタ90の表面90sの距離よりも大きくなるように調整されている。付勢部材100の裏面(サーミスタ90と接触する面)には、2個の凸部102が設けられている。サーミスタ90の表面90sは第1接触面の一例であり、付勢部材100の裏面は第2接触面の一例である。なお、凸部102は円柱状であり、凸部102,102の間隔は、上述したサーミスタ90の凹部91,91の間隔と同一である。また、凸部102の突出長さは、サーミスタ90の凹部91の深さより短い。
【0030】
次に、図8及び図9を参照し、サーミスタ90を中性バスバー40n(端子部44n)に取り付ける工程について説明する。まず、サーミスタ90の凸部92を搭載部45bの凹部45dに嵌め込みながら、サーミスタ90の裏面90rが搭載部45bの表面(搭載面)に接触するまで、サーミスタ90を搭載部45bに押し付ける。サーミスタ90が搭載部45bの表面に搭載されると、係合部90bが保持部45e内に配置され、係合部90bの側部が保持部45eに囲まれる。これにより、サーミスタ90が搭載部45b上に保持される。具体的には、サーミスタ90に対して、サーミスタ90が搭載部45bから外れるような力が加わっても、保持部45eがサーミスタ90(係合部90b)の側部に接触してサーミスタ90が搭載部45b上に保持される。すなわち、サーミスタ90が搭載部45b(中性バスバー40n)から外れることを防止することができる。また、サーミスタ90の凸部92を搭載部45bの凹部45dに嵌め込むので、搭載部45b(中性バスバー40n)に対するサーミスタ90の位置決めも同時に行われる。凸部92及び凹部45dは、搭載部45bに対するサーミスタ90の位置決めを行うための位置決め構造(第1の位置決め構造の一例)と捉えることができる。
【0031】
サーミスタ90を搭載部45bに取り付けた後、付勢部材100の凸部102をサーミスタ90の凹部91に嵌め込む。その後、カバー70をケース50に締結する(図1も参照)。カバー70をケース50に締結することによって、付勢部材100が圧縮された状態で、カバー70(カバー70の本体部71)とサーミスタ90の間に配置される。その結果、付勢部材100からサーミスタ90に対して、サーミスタ90を搭載部45bに押し付ける力(付勢力)が加わる。その結果、サーミスタ90の裏面90rが搭載部45bの表面に確実に面接触し、サーミスタ90の受熱面積(サーミスタ90と中性バスバー40nの搭載部45bの接触面積)を広く確保することができる。また、付勢部材100の凸部102をサーミスタ90の凹部91に嵌め込むので、サーミスタ90に対する付勢部材100の位置決めも同時に行われる。凸部102及び凹部91は、サーミスタ90に対する付勢部材100の位置決めを行うための位置決め構造(第2の位置決め構造の一例)と捉えることができる。
【0032】
(回転電機2の利点)
以下、回転電機2の利点を列記する。
(1)回転電機2では、中性バスバー40n(端子部44n)に、サーミスタ90を搭載するための搭載部45bが設けられており、搭載部45bにU字状の保持部45eが形成された突出部45cが設けられている。そのため、他の部材(固定部材等)を用いることなくサーミスタ90を中性バスバー40nに取り付けることができるので、部品コストの低減及び作業性が向上し、回転電機2の生産性が向上する。
(2)搭載部45bの表面(搭載面)に2個の凹部45dが設けられ、サーミスタ90の裏面90r(被搭載面)に2個の凸部92が設けられている。そして、凹部45dと凸部92によって、搭載部45bに対するサーミスタ90の位置決め構造が構成されている。凸部92を凹部45dに嵌め込むだけで搭載部45bに対するサーミスタ90の位置決めが実現され、サーミスタ90の取り付け作業を簡単にすることができる。また、凸部92を凹部45dに嵌め込むことにより、サーミスタ90が搭載部45b(中性バスバー40n)から外れることを防止することもできる。
(3)凹部45dが搭載部45bを貫通している貫通孔なので、サーミスタ90の凸部92の突出長さの自由度が高い。すなわち、凸部92の突出長さが凹部45dの深さ(搭載部45bの厚み)より長くても、サーミスタ90の裏面90rを搭載部45bの表面に接触させることができる。
(4)カバー70とサーミスタ90の間に付勢部材100が配置されていることにより、サーミスタ90の受熱面積が広く確保され、サーミスタ90の温度計測精度を向上させることができる。
(5)サーミスタ90の表面90sに2個の凹部91が設けられ、付勢部材100の裏面に2個の凸部102が設けられている。そして、凹部91と凸部102によって、サーミスタ90に対する付勢部材100の位置決め構造が構成されている。凸部102を凹部91に嵌め込むだけでサーミスタ90対する付勢部材100の位置決めを実現することができる。
(6)凸部102の突出長さがサーミスタ90の凹部91の深さより短いので、付勢部材100の裏面をサーミスタ90の表面90sに確実に接触させることができる。
(7)付勢部材100の厚みを、カバー70の裏面とサーミスタ90の表面90sの距離よりも大きくすることにより、カバー70をケース50に締結した際に、確実に付勢部材が圧縮され、サーミスタ90に対して確実に付勢力(サーミスタ90を搭載部45bに押し付ける力)を加えることができる。これにより、サーミスタ90と搭載部45b(中性バスバー40n)の接触面積が大きく確保され、サーミスタ90の温度計測精度を向上させることができる。
(8)付勢部材100の裏面サイズがサーミスタ90の表面90sのサイズと同一か、表面90sのサイズよりも大きく調整されているので、サーミスタ90(本体部90a)全体に付勢力が加わり、サーミスタ90の裏面90r全体を確実に搭載部45bに接触させることができる。
(9)付勢部材100が略四角柱状なので、付勢部材100の表面と裏面が略平行であり、付勢部材100が圧縮された際(カバー70をケース50に締結した際)に、付勢部材100の圧縮量を面方向で均一にすることができる。その結果、サーミスタ90に加わる付勢力を、サーミスタ90の面方向で均一にすることができる。これにより、サーミスタ90と搭載部45bをより良好に接触させることができる。
(10)搭載部45b(中性バスバー40n)に対するサーミスタ90の位置決め構造(凹部45dと凸部92)と、サーミスタ90に対する付勢部材100の位置決め構造(凹部91と凸部102)の2個の位置決め構造が設けられている。それにより、回転電機2を組み立てる際、凸部92を凹部45dに確実に嵌め込んだ後(サーミスタ90を搭載部45bに確実に取り付けた後)、凸部102を凹部91に確実に嵌め込み(付勢部材100をサーミスタ90に確実に取り付け)る、といった作業を省略することができる。具体的には、凸部92が凹部45d内に位置する程度にサーミスタ90を搭載部45bに取り付け、凸部102が凹部91内に位置する程度に付勢部材100をサーミスタ90に取り付けた状態でカバー70をケース50に締結すれば、付勢部材100の復元力(圧縮に抗する力)によって、凸部92が凹部45dに確実に嵌合し、凸部102が凹部91に確実に嵌合する。簡単な作業で、サーミスタ90を搭載部45b(中性バスバー40n)に確実に取り付けることができ、回転電機2の製造工程を大幅に簡略化することができる。
(11)サーミスタ90が、中性バスバー40nの端子部44nに取り付けられている。U、V、W相のコイル20(20u、20v、20w)が接続される中性バスバー40nは、最も高温になりやすい。最も高温になりやすい中性バスバー40nの発熱を計測することにより、回転電機2の性能低下に対して早期に対策することができる。
【0033】
(他の実施形態)
本明細書で開示する回転電機の要旨は、バスバーに、サーミスタが搭載される搭載面を有する搭載部と、搭載部に設けられているとともにサーミスタの側部に接触してサーミスタを搭載部上に保持する保持部を設けることである。そのため、搭載部に対するサーミスタの位置決めを行う位置決め構造(搭載部に形成された凹部とサーミスタの裏面に形成された凸部)は、必ずしも必須ではない。搭載部に対するサーミスタの位置決めを行う位置決め構造を省略しても、固定部材等の他の部品を用いることなくサーミスタを搭載部上に保持することはできる。また、搭載部,サーミスタ間の位置決め構造を省略することにより、搭載部及びサーミスタの形状をシンプルにすることができる。
【0034】
また、搭載部,サーミスタ間に位置決め構造を設ける場合であっても、位置決め構造の形態は、実施例の形態(搭載部の凹部、サーミスタ裏面の凸部)に限定されるものではない。例えば、搭載部の凹部及びサーミスタの凸部の形状は、円柱状でなくてもよい。例えば、凹部及び凸部の形状は、球状(球体の一部分の形状)であってもよく、多角形状であってもよい。凹部と凸部の形状が同一(凸部が凹部に嵌る形状)であれば、必要に応じて任意の形状を採用することができる。また、搭載部の凹部及びサーミスタの凸部の数は、それぞれ、3個以上であってもよい。あるいは、搭載部の凹部及びサーミスタの凸部の数は、それぞれ、1個であってもよい。凹部及び凸部の数が1個の場合でも、凹部及び凸部の形状を円柱状及び球状以外の形状とすることにより、いわゆるキー接合が実現され、サーミスタを搭載部に位置決めすることができる。
【0035】
また、搭載部の凹部は、貫通孔でなくてもよい。すなわち、搭載部の凹部は、搭載面に形成された窪みであってもよい。この場合、サーミスタの凸部の突出長さを搭載部の凹部の深さより短くすれば、サーミスタ90の裏面を搭載部の表面(搭載面)に接触させることができる。なお、搭載部に凸部を設け、サーミスタの裏面に凹部を設けてもよい。
【0036】
また、カバーとサーミスタの間に配置する付勢部材を省略することもできる。この場合も、固定部材等の他の部品を用いることなくサーミスタを搭載部上に保持することはできる。また、付勢部材を省略することにより、回転電機の部品コストを低減することができる。なお、カバーとサーミスタの間に付勢部材を配置する場合であっても、サーミスタに対する付勢部材の位置決めを行う位置決め構造(サーミスタに表面に形成された凹部と付勢部材の裏面に形成された凸部)は、必ずしも必須ではない。サーミスタ上に付勢部材を配置した状態でカバーをケースに締結すれば、付勢部材の復元力によって、付勢部材をカバーとサーミスタの間に挟持することができる。サーミスタ,付勢部材間の位置決め構造を省略することにより、サーミスタ及び付勢部材の形状をシンプルにすることができる。
【0037】
また、サーミスタ,付勢部材間の位置決め構造の形態も、実施例の形態(サーミスタ表面の凹部、付勢部材裏面の凸部)に限定されるものではない。凹部及び凸部の形状は、円柱状でなく、例えば、球状(球体の一部分の形状)、多角形状であってよい。凹部と凸部の形状が同一(凸部が凹部に嵌る形状)であれば、必要に応じて任意の形状を採用することができる。また、サーミスタ,付勢部材間の位置決め構造においても、凹部及び凸部の数は、それぞれ3個以上、あるいは、それぞれ1個であってもよい。なお、サーミスタの表面に凸部を設け、付勢部材の裏面に凹部を設けてもよい。
【0038】
上記実施例では中性バスバー40n(端子部44n)にサーミスタ90を搭載する例について説明したが、サーミスタ90は、U、V、W相のバスバー40u、40v、40w(端子部44u、44v、44w)に搭載してもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
2:回転電機
12:ステータ
22:コイル線(導線)
40:バスバー
45b:搭載部
45e:保持部
50:ケース
70:カバー
90:サーミスタ
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9