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特開2023-89827縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089827
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20230621BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20230621BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01L21/68 V
F27D5/00
F27D3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204571
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 直也
【テーマコード(参考)】
4K055
5F131
【Fターム(参考)】
4K055AA06
4K055HA01
4K055HA12
4K055HA18
4K055HA23
4K055HA25
4K055NA05
5F131AA02
5F131BA02
5F131BA04
5F131CA09
5F131CA12
5F131DA05
5F131DA43
5F131EA04
5F131GA03
5F131GA33
5F131GA52
5F131GA55
5F131GA62
(57)【要約】
【課題】複数のウェハ支持部を備えた縦型ウェハボートにおいて、ウェハの撓み発生を抑え、ウェハを傷つけることなく歩留まり低下を抑制すること。
【解決手段】天板4と、前記天板に一端が固定され、他端が底板5に固定された複数の支柱2、3と、前記複数の支柱から径方向内側に突出するウェハ支持部2a、3aとを有する縦型ウェハボート1であって、少なくとも1つの支柱に形成されるウェハ支持部3aが、シリコンウェハの径方向に伸びる延伸部3a3と、前記延伸部の根元において上方に突起する根元部3a1と、前記延伸部の先端において上方に突起する先端部3a2とを有し、前記根元部はシリコンウェハの周縁部を支持し、前記先端部はシリコンウェハの下面中央部を支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板に一端が固定され、他端が底板に固定された複数の支柱と、前記複数の支柱から径方向内側に突出するウェハ支持部とを有する縦型ウェハボートであって、
少なくとも1つの支柱に形成されるウェハ支持部が、シリコンウェハの径方向に伸びる延伸部と、前記延伸部の根元において上方に突起する根元部と、前記延伸部の先端において上方に突起する先端部とを有し、
前記根元部はシリコンウェハの周縁部を支持し、前記先端部はシリコンウェハの下面中央部を支持することを特徴とする縦型ウェハボート。
【請求項2】
前記複数の支柱に形成されるウェハ支持部が、それぞれシリコンウェハの径方向に伸びる延伸部と、前記延伸部の根元において上方に突起する根元部と、前記延伸部の先端において上方に突起する先端部とを有し、
前記根元部はシリコンウェハの周縁部を支持し、前記先端部はシリコンウェハの下面中央部を支持し、
前記シリコンウェハの下面中央部は、ウェハ中心点を含む領域であることを特徴とする請求項1に記載された縦型ウェハボート。
【請求項3】
前記シリコンウェハの下面中央部は、シリコンウェハの径に対しウェハ中心点から10%以内の領域であることを特徴とする請求項2に記載された縦型ウェハボート。
【請求項4】
前記延伸部の上面から前記根元部及び前記先端部の上面までの高さ寸法が100μm以上300μm以下に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された縦型ウェハボート。
【請求項5】
前記ウェハ支持部において、前記根元部及び前記先端部の上面の周縁部は面取り加工がされた状態であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された縦型ウェハボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型ウェハボート及びシリコンウェハの熱処理方法に関し、特に半導体デバイスの製造に使用されるシリコンウェハを熱処理工程において保持する縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、シリコンウェハ(以下、ウェハとも呼ぶ)に対し酸化や拡散、CVD等の熱処理が行われる。この熱処理時に使用されるウェハボートとしては、垂直に立設した複数(例えば4本)のボート支柱に対し、水平方向にウェハ支持部(ウェハ格納用溝)が延設された縦型ウェハボートが知られている。
そして、このウェハ支持部にウェハを搭載し、所定の熱処理を行うことで、高スループットを実現し、ウェハの量産化を図っている。
【0003】
従来の縦型ウェハボートにウェハを載置するとき、図7に示すようにウェハは縦型ウェハボート50に立設された複数のボート支柱51~54の溝60内に置かれて保持される。この溝60はボートの支柱51~54の延在方向に対して直交方向に形成されている。
前記ボートの溝60にウェハを水平に積層する場合、ウェハをその外周の数点(例えば4点)で保持する。ここで、ウェハを水平に保持した場合、ウェハの自重により、下方にくぼむ撓みが生ずる。
この結果、図8に示すように、ウェハWはボートの溝60の角と、点或いは線で接触することになる。
【0004】
ウェハWの中央が撓み、その周縁部とボートの溝60の角とが、点或いは線接触した場合、ウェハ周縁部が擦れ、パーティクルが発生する、或いはウェハ周縁部に傷が生じる虞が高くなる。即ち、パーティクルやウェハ周縁部の傷が生じると、それが歩留まりの悪化等の原因となるという課題があった。
【0005】
このような課題を解決するものとして、特許文献1には、図9(a)に平面図で示すように支柱70の径方向内側に突出し、シリコンウェハWの周縁部を保持する凸部71、75を備え、その先端を球状部72に形成した縦型ウェハボートが開示されている。この縦型ウェハボートにおいて、例えば1つの凸部75については、その長さを径方向に沿って、例えばウェハ中央まで長く形成することが記載されている。
このようにすれば、凸部71先端が球状部72であるため、ウェハ周縁部における擦れがなくなり、また、1つの凸部75でウェハ中央を支持することでウェハ中央の撓み発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-18929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された縦型ウェハボートにあっては、図9(b)に示すように先端が球状部72に形成された凸部75がウェハ中央部まで径方向に延伸されている場合、その凸部75に対向するウェハ周縁部W1が下方に撓むため、凸部75の延伸部分75aがウェハ下面に接触し、そのウェハ下面の接触部分において傷が生じる虞があった。
そして、ウェハの下面に傷が生じると、その後のデバイス製造工程において、その傷が問題となることがあった。例えば、デバイス製造工程において、ピンチャック式のステッパを用いる場合、ピンチャックのピンの上にウェハの下面の傷が乗ったときに、デフォーカス(焦点不良)が生じる虞があった。
そのため、傷のあるウェハ下面の領域は製品に使用できず、歩留まりが低下するという課題があった。
【0008】
本発明は、複数のウェハ支持部を備えた縦型ウェハボートにおいて、シリコンウェハを熱処理する際に、シリコンウェハを撓ませずに支持することで、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することのできる縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係る縦型ウェハボートは、天板と、前記天板に一端が固定され、他端が底板に固定された複数の支柱と、前記複数の支柱から径方向内側に突出するウェハ支持部とを有する縦型ウェハボートであって、少なくとも1つの支柱に形成されるウェハ支持部が、シリコンウェハの径方向に伸びる延伸部と、前記延伸部の根元において上方に突起する根元部と、前記延伸部の先端において上方に突起する先端部とを有し、前記根元部はシリコンウェハの周縁部を支持し、前記先端部はシリコンウェハの下面中央部を支持することに特徴を有する。
尚、前記複数の支柱に形成されるウェハ支持部が、それぞれシリコンウェハの径方向に伸びる延伸部と、前記延伸部の根元において上方に突起する根元部と、前記延伸部の先端において上方に突起する先端部とを有し、前記根元部はシリコンウェハの周縁部を支持し、前記先端部はシリコンウェハの下面中央部を支持し、前記シリコンウェハの下面中央部は、ウェハ中心点を含む領域であることが望ましい。また、前記シリコンウェハの下面中央部は、シリコンウェハの径に対しウェハ中心点から10%以内の位置に形成されていることが望ましい。
また、前記延伸部の上面から前記根元部及び前記先端部の上面までの高さ寸法が100μm以上300μm以下に形成されていることが望ましい。
また、前記ウェハ支持部において、前記根元部及び前記先端部の上面の周縁部は面取り加工がされた状態であることが望ましい。その場合、前記根元部及び前記先端部の上面の周縁部はR面に加工がされた状態でもよい。
【0010】
このように本発明は、シリコンウェハの周縁部を複数のウェハ支持部で支持する構成であって、少なくとも1本の支柱に形成されるウェハ支持部が、ウェハ径方向に伸びる延伸部を有し、延伸部の根元に上方に突起する根元部が形成され、延伸部の先端に上方に突起する先端部が形成される。そして、2つのウェハ支持部と根元部によりウェハ周縁部を支持するとともに、先端部によりウェハの下面中央部を支持する。
これによりシリコンウェハに熱処理を施した際に、シリコンウェハを撓ませずに支持することができ、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコンウェハの熱処理方法は、前記縦型ウェハボートを用いたシリコンウェハの熱処理方法であって、前記縦型ウェハボートが有する複数の第1のウェハ支持部によりシリコンウェハの周縁部を支持するとともに、前記縦型ウェハボートが有する少なくとも1つの第2のウェハ支持部により前記シリコンウェハの周縁部と下面中央部とを支持し、前記縦型ウェハボートに支持されたシリコンウェハに対し熱処理を施すことに特徴を有する。
【0012】
このような方法によれば、シリコンウェハに熱処理を施した際に、シリコンウェハを撓ませずに支持することができ、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のウェハ支持部を備えた縦型ウェハボートにおいて、シリコンウェハを熱処理する際に、シリコンウェハを撓ませずに支持することで、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することのできる縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る縦型ウェハボートの全体を示す正面図である。
図2図2は、図1に示した縦型ウェハボートが有する一組のウェハ支持部のウェハ支持位置を示す平面図である。
図3図3は、図1に示した縦型ウェハボートが有する一ウェハ支持部のウェハ支持位置を示す側面図である。
図4図4は、ウェハ支持部を拡大して示す斜視図である。
図5図5は、他のウェハ支持部を拡大して示す斜視図である。
図6図6(a)、(b)は、本発明の変形例を示す平面図である。
図7図7は、従来の縦型ウェハボートの全体を模式的に示す正面図である。
図8図8は、従来の縦型ウェハボートにおけるシリコンウェハの載置例を示す側面図である。
図9図9(a)、(b)は、従来の縦型ウェハボートの他の構成を示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る縦型ウェハボート及びそれを用いたシリコンウェハの熱処理方法の実施形態について図面に基づき説明する。図1は、本実施形態に係る縦型ウェハボートの全体を示す正面図である。図2は、図1に示した縦型ウェハボートが有する一組のウェハ支持部のウェハ支持位置を示す平面図である。また、図3は、図1に示した縦型ウェハボートが有する一ウェハ支持部のウェハ支持位置を示す側面図である。
【0016】
図1に示すように、縦型ウェハボート1は、ウェハ挿入方向の始端側に配された2本の支柱2と、ウェハ挿入方向の終端側に配された1本の支柱3とを具備している。前記各支柱2、3の下端部は、円板形状の底板5に立設(固定)され、さらに各支柱2の上端部は、円板状の天板4によって支持(固定)されている。
【0017】
図1に示すように前記各支柱2、3には、それぞれ多数のシリコンウェハWを支持するために複数の板状のウェハ支持部2a、3aが形成されている。各支柱2、3におけるウェハ支持部2a、3aは、縦方向に50~150個、多段に形成されている。
【0018】
図2図3に示すようにウェハ支持部3aは、ウェハ径方向に例えば直線状に延びる延伸部3a3を有し、延伸部3a3の根元に上方に突起する根元部3a1が形成され、延伸部3a3の先端に上方に突起する先端部3a2が形成されている。図示するように根元部3a1と先端部3a2の上面がウェハW下面に接するように形成されている。また、ウェハWを支持した際に、図3に示すように延伸部3a3とウェハWとの間には空隙部Sが形成される。
【0019】
ここで、ウェハ支持部3aの先端部3a2は、ウェハWの中央部C(破線で示す領域)の下面を支持するように、ウェハ支持部3aの長さが形成されている。また、ウェハ支持部3aの根元部3a1は、ウェハWの周縁部を支持する。そのため、2つのウェハ支持部2aと併せて、従来の3箇所のウェハ周縁部支持の構成に加え、ウェハWの下面の中央部Cを支持する構成となり、ウェハWの中央及び周縁部の撓みを抑制することができる。
前記ウェハWの中央部Cは、ウェハ中心点を含む領域であり、シリコンウェハWの径に対しウェハ中心点から10%以内の位置に形成されている。前記中央部CがシリコンウェハWの径に対しウェハ中心点から10%を超える位置に形成されている場合、ウェハ中央の撓みが大きくなりすぎる虞がある。
【0020】
また、図3に示すようにウェハ支持部3aにおいて、延伸部3a3の上面から根元部3a1及び先端部3a2の上面までの高さ寸法、即ち空隙部Sの高さ寸法dは、100μm以上300μm以下に形成されている。空隙部Sの高さ寸法dが100μm未満の場合、延伸部3a3がウェハWの下面に接触する虞がある。また、空隙部Sの高さ寸法dが300μmより大きい場合、ウェハ保持部の強度が低下する。
【0021】
図4は、ウェハ支持部3aを拡大して示す斜視図である。根元部3a1の上面側において、前端部及び左右両側端部は、シリコンウェハWを載置する際の接触により根元部3a1の欠けやウェハWへの傷つけ、パーティクルの発生等を防止するために、面取りされたR面3a1aが形成されている。
同様に、先端部3a2の上面側において、前後端部及び左右両側端部には、シリコンウェハWを載置する際の接触により先端部3a2の欠けやウェハWへの傷つけ、パーティクルの発生等を防止するために、面取りされたR面3a2aが形成されている。
【0022】
また、図5は、ウェハ支持部2aを拡大して示す斜視図である。ウェハ支持部2aの上面側において、前端部及び左右両側端部は、シリコンウェハWを載置する際の接触によりウェハ支持部2aの欠けやウェハWへの傷つけ、パーティクルの発生等を防止するために、面取りされたR面2a1が形成されている。
【0023】
また、図4図5に示すように上下に隣り合うウェハ支持部2a、3aのピッチt1は、例えば12mmに形成され、各ウェハ支持部2a、根元部3a1、先端部3a3の厚さt2は、例えば8mmに形成されている。
また、ウェハ支持部2a、根元部3a1、先端部3a3の上面の径方向長さt3は、例えば8mmに形成されている。ウェハ支持部2a、根元部3a1、先端部3a3の上面の周方向幅(横幅)t4は、例えば15mmに形成されている。
【0024】
また、この縦型ウェハボート1は、SiC質基材により形成されるが、基材内部から外方への不純物の拡散を抑制するために、その表面にSiC膜を被覆させることが望ましい。前記SiC質基材としては、反応焼結SiCすなわちカーボン成分を含むSiC焼成体にSiを含浸し、前記カーボン成分とSiの一部とが反応し、SiC化されたSi-SiCであることが好ましい。或いは、SiCの成形体を高温で熱処理した再結晶質SiC、焼結助剤を添加し焼結した自焼結SiC等でもよい。また、前記SiC膜としては、高純度で結晶質のSiC膜を形成することのできるCVDによるSiC膜が好ましい。
【0025】
このような縦型ウェハボート1は次のようにして製造することができる。
まず、SiC質基材を支柱2、3、天板4、底板5を所定の形状に機械加工して製作する。ウェハ支持部3aの形成においては、延伸部3a3の長さをウェハWの径によって決定する。即ち、延伸部3a3の先端に形成する先端部3a2の上面がウェハWの下面中央(中央部C)に位置するように延伸部3a3の長さを決定し形成する。
【0026】
また、ウェハ支持部3aにおいて、延伸部3a3の上面と、根元部3a1及び先端部3a2の上面との高さ方向長さの差、即ち空隙部Sの高さ(深さ)dが、100μm以上300μm以下となるように形成する。
また、各ウェハ支持部2a、根元部3a1、及び先端部3a2の上面側の周縁部は面取り加工を施す。ここで、図4図5に示したようにR面取り加工を施すことが好ましいが、単に上面縁部の鋭角部を斜めにカットするようにしてもよい(C面取り加工を施してもよい)。
【0027】
その後、支柱2、3、天板4、底板5を組み立てる。この際、シリコンウェハWの下面中央(中央部C)に、ウェハ支持部3aの先端部3a2が位置するように支柱3を配置する。また、ウェハ支持部2aをウェハW側に向けて2本の支柱2を配置する。
上記組み立て後、ボート表面にSiC被覆膜をCVD法により形成し、本発明の縦型ウェハボート1が得られる。
【0028】
このように製造された縦型ウェハボート1を用いて、シリコンウェハWの熱処理を行う場合、支柱2、3の各段に形成されたウェハ支持部2a(第1のウェハ支持部)、及びウェハ支持部3a(第2のウェハ支持部)において、シリコンウェハWの周縁部を2つのウェハ支持部2aと、1つのウェハ支持部3aの根元部3a1とにより保持する。
さらに、前記ウェハ支持部3aの先端部3a2によりシリコンウェハWの下面中央(中央部C)を支持する。即ち、ウェハ支持部3aにおいて、延伸部3a3の根元側に形成された根元部3a1の上面によりウェハ周縁部を支持するとともに、延伸部3a3の先端側に形成された先端部3a2の上面によりウェハ下面中央(中央部C)を支持する。
【0029】
同様にして、複数のシリコンウェハWを支柱2、3の各段に形成されたウェハ支持部2a、3aにより保持した後、縦型ウェハボート1を炉内に配置し、所定の熱処理を実施する。
ここで、ウェハ支持部3aは、その先端部3a2によりウェハ下面中央部Cを支持するため、ウェハ中央の下方への撓みが抑制される。さらに、ウェハ支持部3aにおいて、延伸部3a3の根元部3a1によりウェハ周縁部を支持するため、ウェハ周縁部が下方に撓むことがなく、延伸部3a3とウェハ下面との接触が防止される。
【0030】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、シリコンウェハWの周縁部を複数のウェハ支持部2a、3aで支持する構成であって、1本の支柱3に形成されるウェハ支持部3aが、ウェハW径方向に伸びる延伸部3a3を有し、延伸部3a3の根元に上方に突起する根元部3a1が形成され、延伸部3a3の先端に上方に突起する先端部3a2が形成される。そして、2つのウェハ支持部2aと根元部3a1によりウェハW周縁部を支持するとともに、先端部3a2によりウェハWの下面中央を支持する。
これによりシリコンウェハWに熱処理を施した際に、シリコンウェハWを撓ませずに支持することができ、パーティクル、及び傷の発生を抑制し、歩留まり低下を抑制することができる。
【0031】
尚、前記実施の形態においては、3本の支柱2、3に形成されたウェハ支持部2a、3aによりシリコンウェハWを支持する構成としたが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。
例えば、4本の支柱に形成されたウェハ支持部によりシリコンウェハWを支持するようにしてもよい。その場合、図6(a)に示すように支柱2を2本、支柱3を2本の構成とし、2つの先端部3a2によりシリコンウェハWの下面中央部Cを支持するようにしてもよい。或いは、図6(b)に示すように支柱2を3本、支柱3を1本の構成としてもよい。
【0032】
また、前記実施の形態においては、ウェハ支持部3aの先端部3a2によりウェハ下面中央(中央部C)を支持するものとしたが、これはシリコンウェハWの中心点を支持する構成に限らず、破線で示したウェハ中央部Cの領域内であれば、先端部2a2の支持位置がウェハ中心点よりも前後或いは左右に前後してもよい。
【0033】
また、前記実施の形態においては、ウェハボート1は、SiC基材の表面にSiC膜を形成したものとしたが、本発明にあっては、その構成に限定されず、例えば、SiC基材のみで形成されたものでもよい。
【実施例0034】
本発明に係る縦型ウェハボートについて、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に示した縦型ウェハボートを製造し、得られた縦型ウェハボートを用いてウェハの熱処理を行うことによりその性能を検証する実験を行った。
【0035】
(実験1)
実験1では、縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度700℃にて2時間、4回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、傷の発生を観察した。
【0036】
(実施例1)
実施例1では、図1乃至図5に示した縦型ウェハボート1(直径300mmのシリコンウェハ用)を製造し、この縦型ウェハボート1に直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度700℃にて2時間、4回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、傷の発生を観察した。
【0037】
(比較例1)
比較例1では、従来のように3本の支柱に形成されたウェハ支持部でシリコンウェハの周縁部を支持する縦型ウェハボート(直径300mmのシリコンウェハ用)を製造し、この縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度700℃にて2時間、4回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、傷の発生を観察した。
【0038】
表1に実験1の結果を示す。尚、表1において、○は傷なし、△は傷が4箇所以下、×は傷が5箇所以上を示す。
表1に示すように実施例1では、4回の操業のうち、いずれもパーティクル発生数はゼロとなり、ウェハ下面の傷も確認されなかった。
一方、比較例1では、いずれの操業でも20個以上のパーティクルが確認され、更にウェハ下面の傷が確認された。
【0039】
【表1】
【0040】
(実験2)
実験2では、図1乃至図5に示した構成の縦型ウェハボートにおいて、空隙部Sの高さdについて最適値を検証した。
【0041】
(実施例2)
実施例2では、空隙部Sの高さdを100μmとした縦型ウェハボート(直径300mmのシリコンウェハ用)を製造し、この縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度700℃にて2時間、1回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、傷を観察した。
【0042】
(実施例3)
実施例3では、空隙部Sの高さdを300μmとした縦型ウェハボート(直径300mmのシリコンウェハ用)を製造し、この縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度700℃にて2時間、1回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、傷を観察した。
【0043】
(比較例2)
比較例2では、空隙部Sの高さdを95μmとした縦型ウェハボート(直径300mmのシリコンウェハ用)を製造し、この縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度700℃にて2時間、1回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、傷を観察した。
【0044】
(比較例3)
比較例3では、空隙部Sの高さdを310μmとした縦型ウェハボートを製造し、この縦型ウェハボートに直径300mmの1枚のシリコンウェハを保持し、炉内温度700℃にて2時間、1回の操業を連続して実施し、ウェハ上におけるパーティクル、傷を観察した。
【0045】
実験2の結果を表2に示す。尚、表2において、○は傷なし、△は傷が4箇所以下、×は傷が5箇所以上を示す。
表2に示すように実施例2、3では、パーティクル発生数はゼロとなり、ウェハ下面の傷も確認されなかった。
一方、比較例2、3では、20個以上のパーティクルが確認され、更にウェハ下面の傷が確認された。
【0046】
【表2】
【0047】
本実施例の結果、空隙部の深さdを100μm以上300μm以下に形成した本発明の構成により、熱処理においてシリコンウェハを撓ませることなく支持し、パーティクルや傷の発生を抑えることができることを確認した。
【符号の説明】
【0048】
1 ウェハボート
2 支柱
2a ウェハ支持部(第1のウェハ支持部)
2a1 R面
3 支柱
3a ウェハ支持部(第2のウェハ支持部)
3a1 根元部
3a1a R面
3a2 先端部
3a2a R面
3a3 延伸部
4 天板
5 底板
C 中央部(下面中央部)
S 間隙
W シリコンウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9