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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089847
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/04 20060101AFI20230621BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20230621BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20230621BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20230621BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20230621BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20230621BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20230621BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20230621BHJP
   F24F 8/108 20210101ALN20230621BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230621BHJP
【FI】
F24F13/04
F24F3/16
F24F3/00 Z
F24F7/08 A
F24F7/10 A
F24F7/10 101
F24F11/74
F24F11/46
F24F13/02 C
F24F7/10 101Z
F24F8/108 310
F24F8/108 320
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204603
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】新井 勘
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝英
(72)【発明者】
【氏名】根岸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】淵▲崎▼ 礼奈
【テーマコード(参考)】
3L053
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BD04
3L080AC01
3L080AC02
3L260AB07
3L260AB17
3L260AB18
3L260BA07
3L260BA09
3L260BA13
3L260BA42
3L260CA12
3L260CB54
3L260CB63
3L260FA03
3L260FA07
3L260FC04
(57)【要約】
【課題】空調機の搬送動力やダクトサイズの増大を抑える。
【解決手段】空調システム(10)は、室内の温度を設定温度に調節する。空調システムには、仮給気温度に調節された空調空気を作り出す空調機(11)と、前記空調機から室内(5)に向けて空調空気を導くダクト(31)と、前記ダクトの下流側に設置されたチャンバ(35)と、前記チャンバに対して室内の空気を送り込む送風機(38)と、が設けられている。前記チャンバにて前記ダクトからの空調空気と室内の空気が混合されて、目標給気温度の空調空気が前記チャンバから室内に供給される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の温度を設定温度に調節する空調システムであって、
仮給気温度に調節された空調空気を作り出す空調機と、
前記空調機から室内に向けて空調空気を導くダクトと、
前記ダクトの下流側に設置されたチャンバと、
前記チャンバに対して室内の空気を送り込む送風機と、を備え、
前記チャンバにて前記ダクトからの空調空気と室内の空気が混合されて、目標給気温度の空調空気が前記チャンバから室内に供給されることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記チャンバには前記ダクトからの空調空気と室内の空気の混合を促進させる混合部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
室内と前記チャンバを循環する空気を浄化するフィルタを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記空調機は室内の温度に応じて仮給気温度を再設定しており、
仮給気温度が空調負荷の処理能力を減らす方向に再設定されたときに前記送風機が送風量を減らすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記送風機の連通先を室内と屋外で切り替えるダンパーを備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記空調機が屋外からの外気と室内からの還気を含む混合空気から空調空気を作り出していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記チャンバが床下チャンバであり、床吹出口から空調空気が吹き出されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項8】
前記送風機が前記床下チャンバに設けられていることを特徴とする請求項7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記チャンバが天井内に設けられ、天井吹出口から空調空気が吹き出されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調システムとして建物内で空気を循環させて空調と換気を実施するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の空調システムでは、屋外から空調機に外気が導入されると共に、空調対象となる室内から空調機に還気が吸い込まれている。室内からの還気は空調機で外気と混合されて再利用され、還気の一部は空調機から屋外に向けて排出されている。また、空調機では還気と外気の混合空気に対して温湿度調節等の空調処理が施され、空調処理後の空気が空調機からダクトを通じて室内に供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-18000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室内の空調負荷を処理するために、給気温度に応じて空調機の送風量が調節されるが、室内の設定温度と給気温度の温度差が小さくなるほど空調機の送風量を増やさなければならない。このため、空調機の搬送動力やダクトサイズが増大するという問題が生じていた。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、空調機の搬送動力やダクトサイズの増大を抑えることができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の空調システムは、室内の温度を設定温度に調節する空調システムであって、仮給気温度に調節された空調空気を作り出す空調機と、前記空調機から室内に向けて空調空気を導くダクトと、前記ダクトの下流側に設置されたチャンバと、前記チャンバに対して室内の空気を送り込む送風機と、を備え、前記チャンバにて前記ダクトからの空調空気と室内の空気が混合されて、目標給気温度の空調空気が前記チャンバから室内に供給される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の空調システムは、ダクトの下流側のチャンバにおいて仮給気温度の空調空気と室内の空気が混合されて目標給気温度の空調空気が作り出される。空調機の送風量と送風機の送風量でチャンバから室内に空調空気が供給されて室内が設定温度に調節される。このとき、送風機によって室内からチャンバに送り込まれる送風量分だけ空調機の送風量を抑えることができ、空調機の搬送動力及びダクトサイズの増大を抑えることができる。また、ダクトを通過する空調空気が抑えられることで、ダクトでの圧力損失が小さくなりシステム全体に要する搬送動力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の空調システムの模式図である。
図2】第1の実施形態の空調システムの空気の状態変化の空気線図を模式的に示す図である。
図3】第2の実施形態の空調システムの模式図である。
図4】比較例1の天井吹出空調の空調システムの模式図である。
図5】比較例2の床吹出空調の空調システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
先ず、本実施形態の空調システムについて説明する前に、比較例の天井吹出空調の空調システムと床吹出空調の空調システムについて説明する。図4は、比較例1の天井吹出空調の空調システムの模式図である。図5は、比較例2の床吹出空調の空調システムの模式図である。
【0010】
図4に示すように、比較例1の天井吹出空調の空調システム100では、空調機101から天井吹出口102まで給気ダクト103が延びており、室内吸込口104から空調機101まで還気ダクト106が延びている。室内107の温度に応じて空調機101で空調空気の給気温度(吹出温度)や送風量が調節され、天井吹出口102から空調空気が吹き出されて室内107の温度が設定温度に維持されている。天井吹出空調では、例えば、冷房時の室内107の設定温度が26℃に設定された場合に空調空気の給気温度が16℃に調節されている。
【0011】
また、図5に示すように、比較例2の床吹出空調の空調システム110では、空調機111から床下チャンバ112まで給気ダクト113が延びており、室内吸込口114から空調機111まで還気ダクト116が延びている。床吹出空調でも室内117の温度に応じて空調機111で空調空気の給気温度や送風量が調節されるが、床面に近い在室者の不快感(冷感)を考慮して、天井吹出空調よりも室内117の設定温度との温度差が小さくなるように給気温度が設定されている。例えば、冷房時の室内117の設定温度が26℃に設定される場合に空調空気の給気温度が19℃に調節されている。
【0012】
天井吹出空調では室内107の設定温度(26℃)と給気温度(16℃)の温度差が10℃である。一方で、床吹出空調では室内117の設定温度(26℃)と給気温度(19℃)の温度差が7℃である。このため、床吹出空調では空調空気の送風量を40%程度増やさなければ、室内117の空調負荷(冷房負荷)を処理することができない。空調空気の送風量を増やすためには空調機111の搬送動力や給気ダクト113のダクトサイズを大きくしなければならない。そこで、本実施形態の床吹出空調の空調システムでは、ダクト下流に室内の空気を吸い込んで空調空気の送風量を確保することで、空調機の送風量を抑えて搬送動力及びダクトサイズの増大を抑えている。
【0013】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態の空調システムについて、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、第1の実施形態の空調システムの模式図である。なお、以下の説明では、冷房時の空調について説明するが、暖房時の空調についても同様である。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態の部屋1は二重床構造になっており、床スラブ2と床面3の間に床下空間が形成されている。部屋1の室内5には、インテリアゾーンとペリメーターゾーンが設定されている。床下空間にはインテリアゾーンとペリメーターゾーンを仕切るように気流止め7が設置されて、インテリアゾーンの床下チャンバ35とペリメーターゾーンの床下チャンバ45が形成されている。床下チャンバ35には空調機11が接続されており、床下チャンバ45にはペリメーター空調機41が接続されている。
【0015】
インテリアゾーンの空調システム10では、空調機11と床下チャンバ35が給気ダクト(ダクト)31によって接続されており、部屋1の側壁4と空調機11が還気ダクト32によって接続されている。空調機11には屋外から外気が導入されると共にインテリアゾーンから還気が吸い込まれている。還気は空調システム10内で循環しており、還気の一部が空調機11から屋外に排出されている。空調機11では還気と外気が混合され、混合空気に対して温度調節等が行われて空調空気が作り出されて、空調機11から床下チャンバ35に向けて空調空気が送り出されている。
【0016】
空調機11のケース12の内側が隔壁13によって給気通路14と排気通路15に仕切られている。ケース12には、給気通路14に連なる外気取込口16と、排気通路15に連なる還気排出口17と、が形成されている。ケース12の内側には、外気取込口16の下流かつ還気排出口17の上流で、給気通路14と排気通路15を跨ぐように全熱交換器18が設置されている。全熱交換器18によって排気通路15の還気と給気通路14の外気の間で熱交換されている。給気通路14の全熱交換器18よりも上流側には、外気取込口16から取り込んだ外気を浄化する第1のフィルタ19が設置されている。
【0017】
ケース12の隔壁13には、給気通路14の全熱交換器18よりも下流側で排気通路15の全熱交換器18よりも上流側にダンパー21が設置されている。ダンパー21によって排気通路15の還気が給気通路14に入り込み、還気と外気が混合されて外気の温度調節に再利用されている。給気通路14のダンパー21よりも下流側に冷温水コイル22が設置されており、冷温水コイル22によって混合空気が仮給気温度に調節されて空調空気が作り出される。なお、仮給気温度とは、最終的な目標給気温度に調節される前に、目標給気温度よりも室内5の設定温度に近づくように一時的に調節された仮の給気温度である。給気通路14の冷温水コイル22の下流側には空調空気を加湿する加湿器23が設置され、加湿器23の下流側には空調空気を浄化する第2のフィルタ24が設置されている。
【0018】
給気通路14の最下流には給気ファン25が設置されており、排気通路15の最上流には還気ファン26が設置されている。給気ファン25及び還気ファン26としては、送風量を変更可能なインバータファンが用いられている。給気ファン25の送風口には給気ダクト31が接続され、還気ファン26の吸込口には還気ダクト32が接続されている。給気ファン25から床下チャンバ35に給気ダクト31が延びており、給気ダクト31によって空調機11から室内5に向けて空調空気が導かれている。側壁4の室内吸込口6から還気ファン26に還気ダクト32が延びており、還気ダクト32によって室内5から空調機11に向けて還気が導かれている。
【0019】
給気ダクト31の途中には、空調空気の送風量を変更する可変風量装置33が設置されている。給気ファン25及び可変風量装置33によって空調機11からインテリアゾーンに供給される空調空気の送風量が調節されている。還気ファン26によってインテリアゾーンから空調機11に吸い込まれる還気の送風量が調節されている。給気ダクト31の下流側には、インテリアゾーン用(室内用)の床下チャンバ35が設置されている。床下チャンバ35には、床下チャンバ35に対してインテリアゾーンの空気を送り込む混合ファン(送風機)38が設けられている。混合ファン38の吸込口は床面3に露出している。
【0020】
床下チャンバ35では、仮給気温度の空調空気とインテリアゾーンの空気が混合されて目標給気温度の空調空気が作り出される。なお、目標給気温度とは、最終的にインテリアゾーン(室内5)に供給される給気温度である。例えば、仮給気温度が16℃の空調空気にインテリアゾーンの空気が混合されて目標給気温度である19℃の空調空気が作り出される。このとき、混合ファン38から床下チャンバ35に送り込まれる送風量分だけ、給気ファン25の送風量を抑えることができる。このように、空調機11で空調空気が仮給気温度に調節された後に、床下チャンバ35でインテリアゾーンの空気を利用して空調空気が目標給気温度に調節されることで、空調機11による空調空気の送風量を抑えることができる。
【0021】
床下チャンバ35の混合ファン38の下流側には、空調機11からの空調空気とインテリアゾーンの空気の混合を促進させる混合部材36が設けられている。混合部材36によって空調機11からの空調空気とインテリアゾーンの空気が滞留し易くなって効果的に混合される。混合部材36としては、例えばパンチングパネルが用いられている。混合部材36の下流側の床面3には、インテリアゾーンに目標給気温度の空調空気を吹き出す床吹出口37が設置されている。床吹出口37から混合ファン38へのショートサーキットが起こらない程度に、床面3の床吹出口37が混合ファン38の吸込口から離されている。空調空気の供給によってインテリアゾーンが設定温度に調節されている。
【0022】
上記したように、インテリアゾーンの空気の一部は混合ファン38を通じて床下チャンバ35に送り込まれており、インテリアゾーンと床下チャンバ35の間で空気の一部が循環している。混合ファン38には、インテリアゾーンと床下チャンバ35を循環する空気を浄化する第3のフィルタ(フィルタ)39が設けられている。これにより、第3のフィルタ39を通過した清浄な空気をインテリアゾーンと床下チャンバ35で循環させることができる。また、混合ファン38が床下チャンバ35に設けられることで、混合ファン38のメンテナンス及び第3のフィルタ39の交換作業が容易になる。
【0023】
このように、インテリアゾーンの空調システム10では、インテリアゾーンと床下チャンバ35の間で循環する空気を、空調温度の温度調節に再利用することで空調機11の送風量の増加を抑えている。これにより、空調機11の送風量を増やすことなく、床吹出口37からインテリアゾーンへの空調空気の送風量を増加させることができる。空調機11の搬送動力及び給気ダクト31のダクトサイズの増大が抑えられる。混合ファン38によって床下チャンバ35にダイレクトに空気が送り込まれるので風路抵抗が最小限に抑えられる。給気ファン25だけで送風量を確保する構成と比較して給気系統全体の圧力損失を小さくできる。
【0024】
例えば、空調システム10では、空調機11から床下チャンバ35への空調空気の送風量が10000[m/h]、インテリアゾーンから空調機11への還気の送風量が10000[m/h]、インテリアゾーンから床下チャンバ35への空気の送風量が4000[m/h]に設定されている。これにより、床下チャンバ35からインテリアゾーンへの空調空気の送風量が14000[m/h]になり、空調機11だけで空調空気をインテリアゾーンに送風する構成と比較して空調空気の送風量が40%増加している。空調空気の送風量の増加によって空調負荷の処理能力が確保されている。
【0025】
給気ファン25は可変風量制御されているが、混合ファン38は一定風量に制御されている。室内の空調負荷が減少すると可変風量制御されるが、可変風量御御の限界がきたときに給気温度リセット制御が実施される。この給気温度リセット制御が空調負荷の処理能力を減らす方向に移行したときには混合ファン38の送風量が減らされる。すなわち、空調機11はインテリアゾーンの温度に応じて仮給気温度を再設定しており、仮給気温度が空調負荷の処理能力を減らす方向に再設定されたときに混合ファン38の送風量が減らされる。例えば、空調空気の送風によってインテリアゾーンが過冷却された場合には、給気温度リセット制御によって空調機11で仮給気温度が昇温方向に再設定されたときに混合ファン38の送風量が減らされる。なお、図1では混合ファン38が1台のみ図示されているが、床下チャンバ35に必要に応じて複数台の混合ファン38が設けられており、混合ファン38の停止台数の制御によって送風量が調節される。
【0026】
空調システム10の空調負荷の処理能力が空調負荷に対して過大な場合に、混合ファン38の送風量が減らされて空調負荷の処理能力が調節されている。なお、図示は省略するが、給気温度リセット制御を実施するために、空調システム10には室内温度センサや給気温度センサ等の各種センサの他、空調機11を制御するコントロールユニットが設けられている。また、空調システム10では、空調機11の仮給気温度の値が目標給気温度と同じ値に再設定されたときに混合ファン38の送風量が減らされてもよい。なお、混合ファン38としては、給気ファン25と同様にインバータファンが用いられてもよい。
【0027】
ペリメーターゾーンの空調システム40は、インテリアゾーンの空調システム10とは屋外からの外気を床下チャンバ45に取込可能な点で相違している。空調システム40、10が略同様な構成であるため、ここでは主に相違点についてのみ説明する。ペリメーター空調機41には給気ダクト42が接続されており、給気ダクト42の途中には可変風量装置43が設置されている。給気ダクト42の下流側には、ペリメーターゾーン用(室内用)の床下チャンバ45が設置されている。床面3には循環ファン(送風機)52、第4のフィルタ(フィルタ)53、ダンパー54を含む循環ユニット51が設置されている。
【0028】
循環ファン52の送風口が床下チャンバ45内に連なっており、循環ファン52の吸込口には第4のフィルタ53を介してダンパー54が設置されている。ダンパー54は循環ファン52の連通先をペリメーターゾーンと屋外に切替可能に形成されている。循環ファン52の連通先がペリメーターゾーン側に切り替わると、循環ファン52によって床下チャンバ45にペリメーターゾーンの空気が送り込まれる。循環ファン52の連通先が屋外側に切り替わると、循環ファン52によって床下チャンバ45に外気が送り込まれる。ペリメーターゾーンの空気及び外気は第4のフィルタ53を通過することで浄化される。
【0029】
床下チャンバ45では、仮給気温度の空調空気にペリメーターゾーンの空気又は外気が混合されて目標給気温度の空調空気が作り出される。床下チャンバ45の循環ファン52の下流側には、ペリメーター空調機41からの空調空気とペリメーターゾーンの空気又は外気の混合を促進させる混合部材46が設けられている。混合部材46の下流側の床面3には、ペリメーターゾーンに目標給気温度の空調空気を吹き出す床吹出口47が設置されている。床吹出口47から循環ファン52へのショートサーキットが起こらない程度に、床面3の床吹出口47が循環ファン52の吸込口から離されている。空調空気の供給によってペリメーターゾーンが設定温度に調節されている。
【0030】
このように、ペリメーターゾーンの空調システム40では、ペリメーターゾーンと床下チャンバ45の間で循環する空気を、空調温度の温度調節に再利用することでペリメーター空調機41の送風量の増加を抑えている。また、中間期等にはダンパー54によって循環ファン52の連通先を屋外側に切り替えて、ペリメーターゾーンの空気の代わりに外気を空調空気に混合して目標給気温度の空調空気を作り出すこともできる。これにより、ペリメーター空調機41の搬送動力及び給気ダクト42のダクトサイズの増大が抑えられる。なお、図示省略しているが、ペリメーターゾーンの空調システム40にも室内空気を排気する排気系統が設けられている。
【0031】
図1及び図2を参照して、空調システムの空気の状態変化について説明する。図2は、第1の実施形態の空調システムの空気の状態変化の空気線図を模式的に示す図である。なお、ここではインテリアゾーンの空調システムの各地点の空気の状態について説明するが、ペリメーターゾーンの空調システムの各地点の空気の状態も同様である。また、図2の縦軸は絶対湿度であり、横軸は乾球温度である。
【0032】
図1及び図2に示すように、屋外地点P1の外気の温度が最も高くなっている。屋外地点P1の外気が空調機11に取り込まれると、全熱交換器18において外気と還気が熱交換されて外気の温度が下げられる。空調機11の混合地点P2では、屋外からの外気とインテリアゾーン(室内5)からの還気が混合されて、混合空気の温度が室内地点P5の温度に近づけられる。混合空気が冷温水コイル22を通過することで空調空気が作り出され、空調機11の出口地点P3では空調空気が仮給気温度(例えば、16℃)まで下げられて空調機11から給気ダクト31に送り出される。
【0033】
空調機11から給気ダクト31を介して床下チャンバ35に空調空気が送り出される。床下チャンバ35では混合ファン38によって空調空気にインテリアゾーンの空気が混合され、床吹出口37の吹き出し地点P4では空調空気が目標給気温度(例えば、19℃)まで上げられる。床吹出口37から目標給気温度の空調空気が所定の送風量で拡散されて、インテリアゾーンの室内地点P5の温度が設定温度(例えば、26℃)に調節されている。そして、インテリアゾーンから空調機11に還気が戻される。
【0034】
以上のように、第1の実施形態のインテリアゾーンの空調システム10によれば、給気ダクト31の下流側の床下チャンバ35において仮給気温度の空調空気とインテリアゾーンの空気が混合されて、目標給気温度の空調空気が作り出される。空調機11の送風量と混合ファン38の送風量で床下チャンバ35からインテリアゾーンに目標給気温度の空調空気が供給されて、インテリアゾーンが設定温度に調節される。このとき、混合ファン38によってインテリアゾーンから床下チャンバ35に送り込まれる送風量分だけ空調機11の送風量を抑えることができ、空調機11の搬送動力及びダクトサイズの増大を抑えることができる。また、給気ダクト31を通過する空調空気が抑えられることで、給気ダクト31での圧力損失が小さくなりシステム全体に要する搬送動力を低減することができる。ペリメーターゾーンの空調システム40のおいても同様な効果が得られる。
【0035】
特に、床吹出空調では天井吹出空調と比べて、設定温度に対する目標給気温度の温度差が小さくなる分、室内5の空調負荷の処理に要する室内5への送風量を増やさなければならない。このような床吹出空調であっても、混合ファン38、循環ファン52の送風量分だけ、空調機11、ペリメーター空調機41の送風量を抑えてダクトサイズの増大を抑えることができる。
【0036】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態の空調システムについて、添付図面を参照して詳細に説明する。図3は、第2の実施形態の空調システムの模式図である。なお、第2の実施形態の空調システムは、主に天井吹出空調である点で、第1の実施形態の床吹出空調の空調システムと相違している。したがって、第2の実施形態については、第1の実施形態と同様な構成については極力説明を省略する。
【0037】
図3に示すように、第2の実施形態の部屋61は二重天井構造になっており、天井スラブ62と天井63の間に天井内空間が形成されている。天井内にはチャンバボックス(チャンバ)85及び各種ダクトが設置されている。空調機71と天井内のチャンバボックス85が給気ダクト(ダクト)81によって接続されており、部屋61の側壁64と空調機71が還気ダクト82によって接続されている。空調機71は、第1の実施形態の空調機11と同様に構成されており、第1のフィルタ72、全熱交換器73、冷温水コイル74、加湿器75、第2のフィルタ76、給気ファン77、還気ファン78、ダンパー79を有している。
【0038】
給気ファン77とチャンバボックス85が給気ダクト81で接続されており、給気ダクト81を通じて空調機71からチャンバボックス85に空調空気が送り出されている。側壁64の室内吸込口66と還気ファン78が還気ダクト82で接続されており、還気ダクト82を通じて室内65から空調機71に還気が吸い込まれている。給気ダクト81の途中には、空調空気の送風量を変更する可変風量装置83が設置されている。給気ダクト81の下流側にはチャンバボックス85が設置されており、チャンバボックス85の下面は室内65に空調空気を吹き出す天井吹出口86になっている。
【0039】
天井63には、室内65から空気を吸い込む天井吸込口88が設置されている。天井吹出口86から天井吸込口88へのショートサーキットが起こらない程度に、天井63の天井吸込口88が天井吹出口86から離されている。天井内の側壁64には外気取込口89が設置されている。天井吸込口88及び外気取込口89は、天井内に設置された天井ダクト91を介してチャンバボックス85に接続されている。天井ダクト91の上流側は天井吸込口88側の分岐ダクトと外気取込口89側の分岐ダクトに分かれており、各分岐ダクトの途中にはそれぞれダンパー92、93が設置されている。
【0040】
天井ダクト91の分岐地点よりも下流側には、第5のフィルタ(フィルタ)94及び循環ファン(送風機)95が設置されている。ダンパー92、93は循環ファン95の連通先を室内65と屋外に切替可能に形成されている。ダンパー92が開いてダンパー93が閉じることで、循環ファン95の連通先が室内65側に切り替わってチャンバボックス85に室内65の空気が送り込まれる。ダンパー92が閉じてダンパー93が開くことで、循環ファン95の連通先が屋外側に切り替わってチャンバボックス85に外気が送り込まれる。室内65の空気及び外気は第5のフィルタ94を通過することで浄化される。
【0041】
チャンバボックス85では、仮給気温度の空調空気に室内65の空気又は外気が混合されて目標給気温度の空調空気が作り出される。チャンバボックス85の内側には空調機71からの空調空気と室内65の空気又は外気の混合を促進させる混合部材87が設けられており、チャンバボックス85において空調機71からの空調空気に室内65の空気又は外気が効果的に混合される。チャンバボックス85の天井吹出口86から室内65に空調空気が供給されて室内65が設定温度に調節されている。また、第1の実施形態と同様に、空調機71によって仮給気温度が空調負荷の処理能力を減らす方向に再設定されたときに循環ファン95が送風量を減らしてもよい。
【0042】
このように、空調システム70では、室内65と天井内のチャンバボックス85の間で循環する空気を、空調温度の温度調節に再利用することで空調機71の送風量を抑えている。また、中間期等にはダンパー92、93によって循環ファン95の連通先を屋外に切り替えて、室内65の空気の代わりに外気を空調空気に混合して目標給気温度の空調空気を作り出すこともできる。天井吹出空調では、床吹出空調と比較して設定温度と目標給気温度の温度差が大きく、送風量が少なく設定されている。このため、空調機71の搬送動力及び給気ダクト81のダクトサイズをより小さくすることができる。
【0043】
以上のように、第2の実施形態の空調システム70では天井吹出空調が実施されている。天井吹出空調では床吹出空調と比べて、設定温度に対する目標給気温度の温度差が大きくなる分、室内65の空調負荷の処理に要する室内65への送風量を抑制することができる。よって、天井吹出空調では、循環ファン95の送風量分だけ、空調機71の送風量を抑えてダクトサイズをより縮小することができる。
【0044】
なお、第1の実施形態では、室内から床下チャンバにダイレクトに空気が送り込まれているが、還気ダクトから床下チャンバに室内の空気が送り込まれてもよいし、還気ダクトから給気ダクトに室内の空気が送り込まれてもよい。
【0045】
また、第1の実施形態では、チャンバとして床下の空間を利用した床下チャンバを例示したが、チャンバの形状や大きさは特に限定されない。例えば、チャンバは床下に設置されたチャンバボックスでもよい。
【0046】
また、第1の実施形態では、送風機としての混合ファンにフィルタが設けられているが、フィルタは室内と床下チャンバを循環する空気を浄化可能な箇所に設置されていればよい。例えば、床吹出口にフィルタが設置されていてもよい。
【0047】
また、第2の実施形態では、室内から天井内のチャンバボックスに空気が送り込まれているが、還気ダクトからチャンバボックスに室内の空気が送り込まれてもよいし、還気ダクトから給気ダクトに室内の空気が送り込まれてもよい。
【0048】
また、第2の実施形態では、チャンバとして天井内に設置されたチャンバボックスを例示したが、チャンバの形状や大きさは特に限定されない。例えば、チャンバは天井内の空間を利用した天井チャンバでもよい。
【0049】
また、第2の実施形態では、天井ダクトにフィルタが設けられているが、フィルタは室内とチャンバボックスを循環する空気を浄化可能な箇所に設置されていればよい。例えば、チャンバボックスにフィルタが設置されていてもよい。
【0050】
また、第2の実施形態では、チャンバボックスに天井吸込口が形成されているが、天井吹出口が天井に設置されて、ダクトを介してチャンバボックスが天井吹出口に接続されていてもよい。
【0051】
また、第1、第2の実施形態では、屋外からの外気と室内からの還気を含む混合空気から空調空気が作り出されているが、室内の還気から空調空気が作り出されてもよい。この場合、空調システムとは別に部屋から室内空気を排気する換気設備が設けられている。
【0052】
以上の通り、本実施形態の空調システム(10、40、70)は、室内の温度を設定温度に調節する空調システムであって、仮給気温度に調節された空調空気を作り出す空調機(11、71、ペリメーター空調機41)と、空調機から室内(5、65)に向けて空調空気を導くダクト(給気ダクト31、42、81)と、ダクトの下流側に設置されたチャンバ(床下チャンバ35、45、チャンバボックス85)と、チャンバに対して室内の空気を送り込む送風機(混合ファン38、循環ファン52、95)と、を備え、チャンバにてダクトからの空調空気と室内の空気が混合されて、目標給気温度の空調空気がチャンバから室内に供給されている。この構成によれば、ダクトの下流側のチャンバにおいて仮給気温度の空調空気と室内の空気が混合されて目標給気温度の空調空気が作り出される。空調機の送風量と送風機の送風量でチャンバから室内に空調空気が供給されて室内が設定温度に調節される。このとき、送風機によって室内からチャンバに送り込まれる送風量分だけ空調機の送風量を抑えることができ、空調機の搬送動力及びダクトサイズの増大を抑えることができる。また、ダクトを通過する空調空気が抑えられることで、ダクトでの圧力損失が小さくなってシステム全体に要する搬送動力を低減することができる。
【0053】
本実施形態の空調システムにおいて、チャンバにはダクトからの空調空気と室内の空気の混合を促進させる混合部材(36、46、87)が設けられている。この構成によれば、空調機からの空調空気と室内の空気を滞留させて効果的に混合させることができる。
【0054】
本実施形態の空調システムは、室内とチャンバを循環する空気を浄化するフィルタ(第3のフィルタ39、第4のフィルタ53、第5のフィルタ94)を備えている。この構成によれば、清浄な空気を室内とチャンバで循環させることができる。
【0055】
本実施形態の空調システムにおいて、空調機は室内の温度に応じて仮給気温度を再設定しており、仮給気温度が空調負荷の処理能力を減らす方向に再設定されたときに送風機が送風量を減らしている。この構成によれば、空調負荷の処理能力が空調負荷に対して過大な場合に送風機の送風量を減らして空調負荷の処理能力を調節することができる。
【0056】
本実施形態の空調システムは、送風機の連通先を室内と屋外で切り替えるダンパー(54、92、93)を備えている。この構成によれば、室内の空気の代わりに屋外の外気を空調空気に混合して目標給気温度の空調空気を作り出すことができる。
【0057】
本実施形態の空調システムにおいて、空調機が屋外からの外気と室内からの還気を含む混合空気から空調空気を作り出している。この構成によれば、室内の温度調節と共に換気を実施することができる。
【0058】
本実施形態の空調システムにおいて、チャンバが床下チャンバ(35、45)であり、床吹出口(37、47)から空調空気が吹き出される。この構成によれば、床吹出空調では天井吹出空調と比べて、設定温度に対する目標給気温度の温度差が小さくなる分、室内の空調負荷の処理に要する室内への送風量を増やさなければならない。このような床吹出空調であっても、送風機の送風量分だけ、空調機の送風量を抑えてダクトサイズの増大を抑えることができる。
【0059】
本実施形態の空調システムにおいて、送風機が床下チャンバに設けられている。この構成によれば、送風機によって室内からチャンバにダイレクトに空気が送り込まれるので風路抵抗を最小限に抑えることができる。また、送風機のメンテナンスが容易になる。
【0060】
本実施形態の空調システムにおいて、チャンバ(チャンバボックス85)が天井内に設けられ、天井吹出口(86)から空調空気が吹き出される。この構成によれば、天井吹出空調では床吹出空調と比べて、設定温度に対する目標給気温度の温度差が大きくなる分、室内の空調負荷の処理に要する室内への送風量を抑えることができる。よって、天井吹出空調では、送風機の送風量分だけ、空調機の送風量を抑えてダクトサイズをより縮小することができる。
【0061】
なお、本実施形態及び変形例を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0062】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0063】
5、65 :室内
10、40、70:空調システム
11、71 :空調機
31、42、81:給気ダクト(ダクト)
35、45 :床下チャンバ(チャンバ)
36、46、87:混合部材
37、47 :床吹出口
38 :混合ファン(送風機)
39 :第3のフィルタ(フィルタ)
41 :ペリメーター空調機(空調機)
52、95 :循環ファン(送風機)
53 :第4のフィルタ(フィルタ)
54、92、93:ダンパー
85 :チャンバボックス(チャンバ)
86 :天井吹出口
94 :第5のフィルタ(フィルタ)
図1
図2
図3
図4
図5