(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089869
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】木材の防腐防蟻部材及び防腐防蟻部材付き木材
(51)【国際特許分類】
B27M 1/08 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
B27M1/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021204644
(22)【出願日】2021-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】319009370
【氏名又は名称】古川 英志
(72)【発明者】
【氏名】古川 英志
【テーマコード(参考)】
2B250
【Fターム(参考)】
2B250AA05
2B250BA08
2B250CA11
2B250FA14
(57)【要約】
【課題】木材防腐剤による処理を行うことなく、また、木材防腐剤を用いるとしても少量で済み、且つ特別な換気経路を設けることなく、木材の防腐防蟻を図る、木材の防腐防蟻部材及び防腐防蟻部材付き木材を提供することにある。
【解決手段】木材の防腐防蟻部材101は、防腐防蟻対象の木材10に張り付けて、当該木材10の腐食を防止する部材であって、全体が網状を成す複数の開口部4を有する矩形状の銅板で構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐防蟻対象の木材に張り付けて、当該木材の腐食を防止する部材であって、
全体が網状を成す複数の開口部を有する矩形状の銅板で構成された、
木材の防腐防蟻部材。
【請求項2】
前記木材に対する係合領域を有する、
請求項1に記載の木材の防腐防蟻部材。
【請求項3】
前記係合領域は、前記銅板の端部であり前記開口部が形成されない部分である、
請求項2に記載の木材の防腐防蟻部材。
【請求項4】
前記銅板は、一方向への引き延ばす前の状態で複数のスリットを有し、
前記複数の開口部は、前記銅板の前記一方向への引き延ばしによる前記スリットの変形によって形成される、
請求項1から3のいずれかに記載の木材の防腐防蟻部材。
【請求項5】
前記開口部の周囲に、前記木材に打ち付けることのできる突起部を有し、
前記突起部は、前記銅板の前記一方向への引き延ばしによる前記スリットの変形によって形成される、
請求項4に記載の木材の防腐防蟻部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の木材の防腐防蟻部材と、当該木材の防腐防蟻部材が張り付けられた前記木材と、で構成される防腐防蟻部材付き木材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の防腐防蟻用の部材及びその防腐防蟻用の部材を設けた防腐防蟻部材付き木材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物に用いられる木材は、重量あたりの強度が高い、加工性が高い、熱伝導性が低い、調湿性がある、といった長所がある。しかし、環境によっては腐朽の虞がある。例えば、木造家屋では、基礎の上に土台が載せられ、束石ブロックの上に束柱が立てられ、束柱の上には大引が載置される。このような木造家屋においては床下の湿気により、木材腐朽菌やシロアリ等の微生物が発生・活動し、木材を腐朽させてしまうことがある。
【0003】
一般的に、木材の防腐性を高めるためには木材防腐剤が使用される。木材防腐剤としては、油状防腐剤(クレオソート油)、油溶性防腐剤(ナフテン酸金属塩)、水溶性防腐剤(CCA、AAC、ACQ、CUAZ)、乳化性防腐剤(ナフテン酸金属塩)等が用いられる。
【0004】
また、木材の防腐の観点から床下の環境を改善するため、床下の換気性を高めた防腐防蟻構造が特許文献1に開示されている。この防腐防蟻構造は、床下換気口から吸気した空気を小屋裏空間に設けた排気装置により屋外へ排出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、木材防腐剤により処理された木材は、その木材防腐剤の有効期間が木造建築物の床下以外の構造部の耐用年数に比べて短い。また、木材防腐剤の有効期間中に薬品臭を放つという問題もある。
【0007】
特許文献1に示されている防腐防蟻構造では、特別な換気経路を構成する必要があり、高コスト化、工期の長期間化、容積効率の低下、といった新たな問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、木材防腐剤による処理を行うことなく、また、木材防腐剤を用いるとしても少量で済み、且つ特別な換気経路を設けることなく、木材の防腐防蟻を図る、木材の防腐防蟻部材及び防腐防蟻部材付き木材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の木材の防腐防蟻部材は、防腐対象の木材に張り付けて、当該木材の腐食を防止する部材であって、全体が網状を成す複数の開口部を有する矩形状の銅板で構成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の防腐防蟻部材付き木材は、前記木材の防腐防蟻部材と、当該木材の防腐防蟻部材が張り付けられた前記木材と、で構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、木材防腐剤による処理を行うことなく、また、木材防腐剤を用いるとしても少量で済み、且つ特別な換気経路を設けることなく、木材の防腐防蟻を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の木材の防腐防蟻部材を適用する木造家屋の床下部分を示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)、
図2(B)は、本発明の木材の防腐防蟻部材101の平面図である。
【
図3】
図3(A)は防腐防蟻部材101の部分拡大平面図であり、
図3(B)は
図3(A)におけるB-B部分の断面図である。
【
図4】
図4は防腐防蟻対象の木材10に防腐防蟻部材101を打ち付けた状態での防腐防蟻部材付き木材201の正面図である。
【
図5】
図5は防腐防蟻部材付き木材201の断面図である。
【
図6】
図6は第2の実施形態に係る防腐防蟻部材付き木材202の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《第1の実施形態》
図1は本発明の木材の防腐防蟻部材を適用する木造家屋の床下部分を示す斜視図である。この例では、コンクリートで構成された基礎21の上に土台11が載置され、束石ブロック22の上に束柱12及び大引13が載置される。土台11及び大引13の上には根太14が配列される。この根太14の上部に床板15が敷かれる。
【0014】
本実施形態では、土台11の下面、束柱12の下面又は立ち上がり部に適用される。
【0015】
図2(A)、
図2(B)は、本発明の木材の防腐防蟻部材(以降、単に「防腐防蟻部材」という。)101の平面図である。
【0016】
図2(B)に示す状態で、防腐防蟻部材101は、全体が網状を成す複数の開口部4を有する矩形状の銅板(銅帯)1で構成されている。防腐防蟻部材101は防腐防蟻対象の木材に対する係合領域2を有する。
【0017】
図2(A)は、
図2(B)に示した防腐防蟻部材101を形成する前段階での平面図である。銅板1は、一方向(
図2(A)における左右方向)への引き延ばす前の状態で複数のスリット3を有する。
図2(B)に示した複数の開口部4は、銅板1の一方向への引き延ばしによるスリット3の変形によって形成される。
【0018】
図2(A)、
図2(B)において、銅板1の引き伸ばし方向の端部は係合領域2である。この係合領域2にはスリット3及び開口部4は形成されていない。この係合領域2は後に示すように、銅釘の打ち付けしろとして用いられる。また、
図2(A)に示す状態から
図2(B)に示す状態へ、銅板1を引き延ばす際の掴みしろとして用いられる。
【0019】
図3(A)は防腐防蟻部材101の部分拡大平面図であり、
図3(B)は
図3(A)におけるB-B部分の断面図である。
図3(B)に表れているように、開口部4の周囲には、木材に打ち付けることのできる(張り付けることのできる)突起部5を有する。この突起部5は、銅板1の引き延ばしによって、
図2(A)中のスリット3が変形することによって形成される。
【0020】
図4は防腐防蟻対象の木材10に防腐防蟻部材101を打ち付けた状態での防腐防蟻部材付き木材201の正面図である。この防腐防蟻部材101を
図1に示した土台11に適用する場合は、
図4は土台11の下面図である。
図5は防腐防蟻部材付き木材201の断面図である。これらの図に示すように、防腐防蟻部材101の係合領域2を木材10に銅釘6を打ち付けることによって、防腐防蟻部材101は木材10に張り付けられる。また、防腐防蟻部材101の突起部(
図3(B)中の突起部5)が木材10に打ち付けられることによって、防腐防蟻部材101の全体が木材10に接する。
【0021】
防腐防蟻部材101は、
図2(B)に示した状態にしてから、木材10に張り付けてもよいし、
図2(A)に示した状態で、その一方の係合領域2を木材10に打ち付けた後に引き延ばして、他方の係合領域2を木材10に打ち付けてもよい。
【0022】
なお、
図1に示した大引13の側面に本発明の木材の防腐防蟻部材を適用してもよい。
【0023】
本実施形態によれば、防腐防蟻部材101は
図2(A)に示した状態で小型であるので、小型梱包で出荷できる。なお、一間用とか二間用とか、引き延ばし後の長さを梱包箱等に表示しておけば、延ばし過ぎることにより幅が狭くなったり、木材の両端にまで広がらなかったりする、といったことを防止できる。
【0024】
図4に示した防腐防蟻部材付き木材201は、銅板1の銅イオンによる防腐防蟻効果を有するので、木材防腐剤による処理を行うことなく、また、木材防腐剤を用いるとしても少量で済み、且つ特別な換気経路を設けることなく、木材の防腐防蟻を図ることができる。
【0025】
また、木造建築物の建造後、網目状の開口部4から徐々に緑青が広がる。このことにより、木材10の防腐防蟻部材101の張り付け面の防腐防蟻効果が更に高まる。また、その後、緑青は木材の全体に行き渡り、木材全体の防腐防蟻効果が得られる。
【0026】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、防腐防蟻部材の形状及び木材への取り付け構造が第1の実施形態で示した例とは異なる防腐防蟻部材及び防腐防蟻部材付き木材について示す。
【0027】
図6は防腐防蟻部材付き木材202の部分斜視図である。この防腐防蟻部材付き木材202は、木材10に、銅板1で形成された防腐防蟻部材102が張り付けられている。第1の実施形態では、木材10の所定面に独立した防腐防蟻部材101が張り付けられた例であったが、防腐防蟻部材付き木材202では、木材10の正面から端面を渡って背面にまで、防腐防蟻部材102が木材10に張り付けられている。木材10の背面に張り付けられる防腐防蟻部材102の構造は、木材10の正面に張り付けられる防腐防蟻部材102の構造と同様である。
【0028】
このように、木材の複数面に防腐防蟻部材を張り付けてもよい。また、木材の複数面に亘って銅板が連続していてもよい。
【0029】
図6に示した例では、木材10の端面を経由して防腐防蟻部材102を折り曲げたが、端面を経由せずに、例えば木材の正面から上面又は下面に渡って防腐防蟻部材を張り付けてもよい。
【0030】
以上、2つの実施形態を例示したが、本発明は上述した各実施形態に限られるものではなく、当業者によって適宜変形及び変更が可能である。いうまでもなく、本発明の範囲は上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【0031】
例えば、スリット3の変形によって開口部4を形成することに限らず、銅板1に予め開口部4を例えば打ち抜きによって形成してもよい。その場合には、開口部4のバリを突起部として利用できる。
【0032】
また、以上に示した実施形態では、木造建築物の床下に使用される木材に適用する例を示したが、本発明はこれに限られず、一般的な木材に適用できる。
【0033】
さらに、本発明の防腐防蟻部材は防腐剤による処理が施された木材にも適用できる。その場合は、用いる防腐剤の量を大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0034】
1…銅板
2…係合領域
3…スリット
4…開口部
5…突起部
6…銅釘
10…木材
11…土台
12…束柱
13…大引
14…根太
15…床板
21…基礎
22…束石ブロック
101,102…木材の防腐防蟻部材
201,202…防腐防蟻部材付き木材
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐防蟻対象の木材に張り付けて、当該木材の腐食を防止する部材であって、
全体が網状を成す複数の開口部を有する矩形状の銅板で構成され、
前記木材に対する係合領域を有する、
木材の防腐防蟻部材。
【請求項2】
前記係合領域は、前記銅板の端部であり前記開口部が形成されない部分である、
請求項1に記載の木材の防腐防蟻部材。
【請求項3】
前記銅板は、一方向への引き延ばす前の状態で複数のスリットを有し、
前記複数の開口部は、前記銅板の前記一方向への引き延ばしによる前記スリットの変形によって形成される、
請求項1又は2に記載の木材の防腐防蟻部材。
【請求項4】
前記開口部の周囲に、前記木材に打ち付けることのできる突起部を有し、
前記突起部は、前記銅板の前記一方向への引き延ばしによる前記スリットの変形によって形成される、
請求項3に記載の木材の防腐防蟻部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の木材の防腐防蟻部材と、当該木材の防腐防蟻部材が張り付けられた前記木材と、で構成される防腐防蟻部材付き木材。