(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089879
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】管内移動体
(51)【国際特許分類】
F16L 55/34 20060101AFI20230621BHJP
B61B 13/10 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
F16L55/34
B61B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204670
(22)【出願日】2021-12-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年9月8日~平成3年9月11日 第39回日本ロボット学会学術講演会 令和3年11月2日 学校法人早稲田大学 理工学術院 高西淳夫研究室ホームページ http://www.takanishi.mech.waseda.ac.jp/top/research/auto/2021_auto/01-04_WATER_j.html
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】高西 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小西 瑶果
(72)【発明者】
【氏名】先▲崎▼ 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】児玉 理
(72)【発明者】
【氏名】中村 蒼子
(72)【発明者】
【氏名】清水 智壮
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
(72)【発明者】
【氏名】大貫 彰彦
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、内部の空気圧の変化により前後方向に伸縮する伸縮アクチュエータによる推進力を高めること。
【解決手段】本発明の管内移動体11は、空気圧駆動によってガス管P内を自走可能な構造を有し、ガス管P内を移動するための推進力を生成可能に動作する推進モジュール14を含んでいる。この推進モジュール14は、前後方向に伸縮変形可能に設けられた伸縮アクチュエータ17を備えている。伸縮アクチュエータ17は、前後方向に沿って配置され、内部の空気圧の調整により弾性変形可能な弾性チューブ21と、弾性チューブ21の収縮方向に付勢する逆巻き噛合ばね24とを備えている。逆巻き噛合ばね24は、弾性チューブ21の前後方向のみの変形を許容可能に配置されるとともに、当該変形時における弾性チューブ21の回転運動を規制可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧駆動によって管状体の管内を自走可能な構造を有する管内移動体において、
前記管内を移動するための推進力を生成可能に動作する推進モジュールを含み、
前記推進モジュールは、前後方向に伸縮変形可能に設けられた伸縮アクチュエータを備え、
前記伸縮アクチュエータは、前後方向に沿って配置され、内部の空気圧の調整により弾性変形可能な弾性チューブと、当該弾性チューブの収縮方向に付勢する付勢部材とを備え、
前記付勢部材は、前記弾性チューブの前後方向のみの変形を許容可能に配置されるとともに、当該変形時における前記弾性チューブの回転運動を規制可能に構成されることを特徴とする管内移動体。
【請求項2】
前記付勢部材は、巻き方向が相反する1対の密着コイルばねを1巻きずつ交互に噛み合わせてなり、初期状態で前記各密着コイルばねが伸長された付勢状態にて、前記弾性チューブの外周側に相対移動不能に固定されることを特徴とする請求項1記載の管内移動体。
【請求項3】
空気圧駆動によって管状体の管内を自走可能な構造を有する管内移動体において、
前記管内を移動するための推進力を生成可能に動作する推進モジュールを含み、
前記推進モジュールは、前後方向に伸縮変形可能に設けられた伸縮アクチュエータを備え、
前記伸縮アクチュエータは、前後方向に沿って配置され、内部の空気圧の調整により弾性変形可能な弾性チューブと、当該弾性チューブの外周側に巻回されるとともに、巻き方向が相反するコイルばねを1巻きずつ交互に噛み合わせてなる付勢部材とを備えたことを特徴とする管内移動体。
【請求項4】
前記伸縮アクチュエータは、前記弾性チューブの外周面と前記付勢部材との間に配置され、変形時における前記弾性チューブの前記付勢部材への噛み込みを防止するカバーを更に備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の管内移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧駆動によって管状体の内部を尺取虫状に移動可能な構造を有する管内移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では、社会インフラの老朽化対策の重要性が高まっており、異常の早期発見と早期対応により事故を未然に防止するとともに、大規模な修復を要する段階よりも前に何等かの対策を行う予防保全のための検査が必要になる。ところが、ライフラインの大半が道路下に埋設されており、その配管内の点検目的のみで、道路の占用と掘削を行うことは現実的でない。ここで、ガスインフラは、高度経済成長期に地中に埋設されたガス管が老朽化して経年管となっており、検査技術の開発が特に求められている。ガスインフラの検査としては、ガスの供給停止や道路掘削を行わずに、ガス管内部の状態を検出できる検査装置が要請されるところであり、本発明者らは、配管検査のための管内移動体を既に提案している(特許文献1参照)。
【0003】
この管内移動体は、屋外のガス管の開放部分からガス管内に挿入され、空気圧駆動によってガス管内を尺取虫状に自走可能な構造となっており、分岐方向の選択を行う前端側の屈曲モジュールと、ガス管内を移動するための推進力を生成する推進モジュールとを備える。この推進モジュールは、内部の空気圧の変化により前後方向に伸縮可能に設けられたチューブ状の伸縮アクチュエータと、当該伸縮アクチュエータの前後両側に設けられた一対のバルーンとにより構成される。当該管内移動体は、伸縮アクチュエータやバルーンに対する空気の給排が地上側のポンプから送気用チューブを通じて行われるため、当該送気用チューブを牽引しながらガス管内を移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の管内移動体は、屋外から挿入されて、道路下等の地中に埋設される本支管内を点検する際に、伸縮アクチュエータによる伸縮運動により、送気用チューブを牽引しながらガス管内を自走する。ここで、ガス管内部には、多くの屈曲、分岐、段差を有する箇所等が存在しているが、管内移動体の走行距離が十分短い場合、牽引の際に考慮すべき送気用チューブの張力は小さい。しかしながら、管内移動体が前記本支管の深部まで進入する場合、多数の湾曲部や長い直線管内における管壁との摩擦により、送気用チューブの張力が増大する。従って、特許文献1の伸縮アクチュエータでは、送気用チューブを牽引しながら管内移動体を移動させるための推進力が不足する虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、簡単な構造で、内部の空気圧の変化により前後方向に伸縮する伸縮アクチュエータによる推進力を高めることができる管内移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、空気圧駆動によって管状体の管内を自走可能な構造を有する管内移動体において、前記管内を移動するための推進力を生成可能に動作する推進モジュールを含み、前記推進モジュールは、前後方向に伸縮変形可能に設けられた伸縮アクチュエータを備え、前記伸縮アクチュエータは、前後方向に沿って配置され、内部の空気圧の調整により弾性変形可能な弾性チューブと、当該弾性チューブの収縮方向に付勢する付勢部材とを備え、前記付勢部材は、前記弾性チューブの前後方向のみの変形を許容可能に配置されるとともに、当該変形時における前記弾性チューブの回転運動を規制可能に構成される、という構成を採っている。
【0008】
なお、本特許請求の範囲及び本明細書において、位置若しくは方向を示す用語である「前」は、特に明記しない限り、管内移動体が管状体内を奥に向かって移動する際の進行方向における「前」を意味し、「後」は、同進行方向における「後」を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、伸縮アクチュエータが収縮する際に、管内移動体に後行する送気用チューブ等を牽引する際に、伸縮アクチュエータに設けられた付勢部材の付勢力を利用することで、より強い推進力を得ることができる。このため、付勢部材を設けるだけの簡単な構造により、本発明者らの従前の構造の管内移動体に比べ、張力が増大した状態の送気用チューブを牽引しながらの管内移動体の移動をよりスムーズに行うことが可能となる。また、付勢部材により、弾性チューブ内の空気圧の変化によるその径方向の変形が規制されるとともに、弾性チューブの弾性変形時の回転運動が規制されることから、伸縮アクチュエータにより発生する推進力をより効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る管内移動体を含む配管検査装置の概略構成図である。
【
図2】(A)は、推進モジュールの概略断面図を含む管内移動体の模式図であり、(B)は、(A)のA-A線に沿う方向における後バルーンの概略断面図であり、(C)は、(A)のB-B線に沿う方向における前バルーンの概略断面図である。
【
図3】(A)は、噛み合わせ前の巻方向の異なる1対の密着コイルばねの概略正面図であり、(B)は、(A)の密着コイルばねを噛み合わせた後の逆巻き噛合ばねの概略斜視図である。
【
図4】(A)~(F)は、管内移動体の各動作フェーズを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1には、本実施形態に係る管内移動体を含む配管検査用ロボットの概略構成図が示されている。この図において、前記配管検査用ロボット10は、空気圧による駆動により、管状体としてのガス管P内を自走可能に設けられた管内移動体11と、ガス管Pの外側となる地上側に配置され、管内移動体11に対し、動力源となる圧縮空気の供給、排出を行う動力供給部12とを備えている。本実施形態の配管検査用ロボット10は、地下に埋設されたガス管P内を管内移動体11が自走しながら、ガス管P内の情報収集を行い、当該ガス管P内の異常発生等の状況を地上側からモニタリングするために利用される。
【0013】
前記管内移動体11は、動力供給部12による空気の給排調整を行うことで、その一部分をガス管Pの内壁に適宜接触させながら、ガス管P内を尺取虫状に移動可能な構造となっている。この管内移動体11は、ガス管P内を移動するための推進力を生成可能に動作する推進モジュール14と、推進モジュール14の前端側で屈曲可能に連なる屈曲モジュール15とを備えている。
【0014】
前記推進モジュール14は、前後方向に伸縮可能に設けられた伸縮アクチュエータ17と、伸縮アクチュエータ17の前後それぞれに連なる前バルーン18及び後バルーン19とにより構成される。
【0015】
前記伸縮アクチュエータ17は、
図2(A)に示されるように、前後方向に沿って配置され、内部の空気圧の調整により弾性変形可能な弾性チューブ21と、弾性チューブ21の前後の開放部分を閉塞可能に装着された栓22と、弾性チューブ21の外周面を被覆するカバー23と、カバー23の外周面に巻回されるとともに、巻き方向の異なるコイルばねを噛み合わせてなる付勢部材としての逆巻き噛合ばね24とを備えている。
【0016】
前記弾性チューブ21は、ゴム等の弾性体からなり、その内部に、動力供給部12の動作による空気の給排が可能な閉塞空間Sが形成される。従って、弾性チューブ21は、動力供給部12の動作により、所定のタイミングで閉塞空間S内の空気が加圧若しくは減圧されることで、膨張、収縮を行えるようになっている。
【0017】
前記カバー23は、弾性チューブ21の外周面と逆巻き噛合ばね24の間に配置され、弾性チューブ21の変形により、逆巻き噛合ばね24の隙間への弾性チューブ21の噛み込みを防止しながら伸縮可能な素材(ナイロン等)によって形成されている。これにより、弾性チューブ21の膨張、収縮時における逆巻き噛合ばね24の干渉を防止することができる。
【0018】
前記逆巻き噛合ばね24は、
図3に示されるように、巻き方向が相互に反対となる右巻きと左巻きの1対の各密着コイルばね24A,24B(同図(A)参照)を1巻きずつ交互に噛み合わせてなる。噛み合わせた後の逆巻き噛合ばね24(同図(B)参照)は、付勢されていない状態の前記各密着コイルばね24A,24Bの総和よりも少し長い全長となり、初期状態で、これら密着コイルばね24A,24Bが伸長された付勢状態にて、弾性チューブ21及びカバー23の外周側に相対移動不能に固定される。
【0019】
以上の構成によれば、圧縮空気の供給により弾性チューブ21が膨張すると、その外周側に巻回された逆巻き噛合ばね24により、弾性チューブ21は、その径方向の弾性変形が規制されて軸方向のみに伸びるように変形し、伸縮アクチュエータ17は、全体的に、所定の基準長さから、前後方向(軸方向)に伸長することになる。そして、当該伸長状態から、圧縮空気の排出によって弾性チューブ21が収縮すると、伸縮アクチュエータ17は、弾性チューブ21の弾性復帰に加え、逆巻き噛合ばね24の復元力によって、全体的に軸方向に収縮変形し、前記基準長さの状態に復帰する。なお、動力供給部12によって弾性チューブ21内の閉塞空間Sの圧力が維持されると、そのときの伸縮アクチュエータ17の長さが維持されることになる。
【0020】
また、付勢部材として、単なるコイルばねでなく、逆巻き噛合ばね24を用いることにより、伸縮アクチュエータ17の伸縮時の軸回りの回転運動が規制されることになる。すなわち、巻き方向が一方向のみのコイルばねを用いると、コイルばねの内側の弾性チューブ21の膨張により、コイルばねの拡径方向に外力が作用し、当該外力により、コイルばねの巻き方向に沿って伸縮アクチュエータ17が回転してしまい、管内移動体11が全体的に捩れ易くなってスムーズな移動が行えなくなる。この点、巻き方向が相互に異なる各密着コイルばね24A,24Bを噛み合わせて形成される逆巻き噛合ばね24を用いることにより、弾性チューブ21の膨張時における各密着コイルばね24A,24Bの回転が相殺され、管内移動体11の移動時の捩れが規制される。
【0021】
前記前バルーン18及び後バルーン19は、
図2に示されるように、それぞれ、内部の空気圧の調整により弾性変形可能なゴム等の弾性体からなる弾性チューブ26と、弾性チューブ26の前後の開放部分を閉塞可能に装着された栓27と、弾性チューブ26の内部空間中央に配置されるとともに、曲げ半径を拘束し、外力に対する折れ曲がりを防止可能なケーシングチューブ28とからなる。これらバルーン18,19は、動力供給部12により所定のタイミングで、弾性チューブ26内におけるケーシングチューブ28の外側となる内部の閉塞空間Sの空気が加圧若しくは減圧されることで、弾性チューブ26の径方向と軸方向の双方での全体的な膨張と収縮を行えるようになっている。なお、後述するように、これら前バルーン18及び後バルーン19に対しては、相互に独立したタイミングで空気が給排される。
【0022】
以上の構成の伸縮アクチュエータ17の閉塞空間Sの前方部分から、前バルーン18の内部の中央付近を接続軸29が貫通し、当該接続軸29は、前バルーン18の前方の屈曲モジュール15に繋がっている。
【0023】
以上の構成の推進モジュール14は、
図4に示される管内移動体11の6つの動作フェーズを1サイクルとした動作が順番に繰り返し行われることにより、次のように、屈曲モジュール15側を先頭にして、ガス管P内の奥に向かって管内移動体11を前進させることが可能になる。
【0024】
先ず、
図4(A)の第1のフェーズでは、同図中左側の後バルーン19が加圧されて膨張し、ガス管Pの内壁に押し当てられることで当該内壁に係止した係止状態となっている。一方、同図中右側の前バルーン18は、減圧されて最も収縮した状態となっており、ガス管Pの内壁に接触していない非係止状態となっている。更に、伸縮アクチュエータ17は、減圧され、最短となる前記基準長さの状態になっている。
【0025】
この状態から、同図(B)の第2のフェーズでは、前記基準長さの伸縮アクチュエータ17が加圧されて軸方向に伸長する。このとき、後バルーン19は、その内圧が維持されて前記係止状態に維持される一方で、前バルーン18は、前記非係止状態に維持されていることから、伸縮アクチュエータ17は前方に向かって伸長する。
【0026】
次に、同図(C)の第3のフェーズでは、前バルーン18が加圧されて内壁への前記係止状態に変わる。このとき、伸縮アクチュエータ17と後バルーン19は、第2のフェーズと同じ状態で維持される。
【0027】
更に、同図(D)の第4のフェーズでは、後バルーン19が減圧されて収縮し、内壁への係止が解除された前記非係止状態となる。このとき、伸縮アクチュエータ17と前バルーン18は、第3のフェーズと同じ状態で維持される。
【0028】
そして、同図(E)の第5のフェーズでは、伸縮アクチュエータ17が減圧されて収縮することで、その弾性と逆巻き噛合ばね24(
図1等参照)の復元力により元の基準長さの状態に復帰する。この際、前バルーン18が前記係止状態に維持される一方で、後バルーン19が前記非係止状態に維持されていることから、伸縮アクチュエータ17は、前方に向かって収縮することになる。
【0029】
この状態から、同図(F)の第6のフェーズでは、前バルーン18が、同図中実線で示されるように、再び減圧されて前記非係止状態となり、その後、伸縮アクチュエータ17の状態が維持されたまま、後バルーン19が加圧される前記第1のフェーズに戻り、以上の各フェーズが繰り返し行われる。このような第6フェーズの動作は、水平方向に延びるガス管P(水平管)内における管内移動体11の移動時に適用される。一方で、鉛直方向に延びるガス管P(鉛直管)内における管内移動体11の移動時における第6のフェーズの動作は、重力によるガス管内での管内移動体11の落下を防止するために、水平管内の移動時と異なるように設定されている。すなわち、当該鉛直管内の移動時には、前バルーン18及び後バルーン19が加圧され、前バルーン18及び後バルーン19が、それぞれ同図中破線で示されるように前記係止状態とされる。そして、伸縮アクチュエータ17の状態が維持されたまま、前バルーン18が減圧される前記第1のフェーズに戻り、前述の各フェーズが繰り返し行われる。
【0030】
なお、前述の各動作フェーズを逆順で行うと、管内移動体11はガス管P内を前述と逆方向に移動し、管内移動体11の後退動作が可能になる。
【0031】
前記屈曲モジュール15(
図1参照)は、動力供給部12(
図1参照)による空気の給排を動力源とし、推進モジュール14に対してあらゆる方向の屈曲を可能とする劣駆動機構を備えている。具体的に、屈曲モジュール15は、
図2(A)に示されるように、前端側が窄まったロケット状をなす先端部15Aと、先端部15Aを推進モジュール14に対して屈曲させる3個の空気圧シリンダ15Bとにより構成されており、当該空気圧シリンダ15Bの駆動による先端部15Aの屈曲により分岐方向の選択が行われる。なお、図示省略しているが、先端部15Aには、管内移動体11の前方のガス管内の空間を撮影可能なカメラが配置され、当該カメラで取得した画像データが屋外側に伝送されるようになっている。
【0032】
前記動力供給部12は、
図1に示されるように、空気を給排するポンプユニット31と、ポンプユニット31による空気の給排を制御する制御部32とを備えている。
【0033】
前記ポンプユニット31は、詳細な構造についての図示を省略するが、管内移動体11に繋がる送気用チューブ34を通じて、推進モジュール14及び屈曲モジュール15に対する空気の給排を可能にするポンプや制御弁等の機器によって構成される。
【0034】
前記送気用チューブ34は、
図2に示されるように、伸縮アクチュエータ17、前バルーン18及び後バルーン19の各閉塞空間S(
図2参照)内と、各空気圧シリンダ15Bとに対し、それぞれ独立して空気を給排可能に構成され、管内移動体11の移動に伴って牽引されることになる。
なお、同図において、送気用チューブ34については、便宜上、各空気圧シリンダ15Bにそれぞれ繋がる3本(一部図示省略)を送気用チューブ34Aとし、前バルーン18の閉塞空間Sに繋がる2本(一部図示省略)を送気用チューブ34Bとし、伸縮アクチュエータ17の閉塞空間Sに繋がる1本を送気用チューブ34Cとし、後バルーン19の閉塞空間Sに繋がる1本を送気用チューブ34Dとしている。
従って、
図2(B)にも示されるように、後バルーン19の内部では、ケーシングチューブ28の内部空間を送気用チューブ34A~34Cが貫通する一方、ケーシングチューブ28の外側に送気用チューブ34Dの開放端が配置される。また、
図2(C)にも示されるように、前バルーン18の内部では、ケーシングチューブ28の内部空間を、接続軸29と送気用チューブ34Aが貫通する一方、ケーシングチューブ28の外側に送気用チューブ34Bの開放端が配置される。
【0035】
前記制御部32は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、ポンプユニット31を動作制御することにより、推進モジュール14及び屈曲モジュール15に対する空気の給排調整を行いながら、管内移動体11の動作制御を行うようになっている。
【0036】
以上の実施形態によれば、内部の空気圧の調整により伸縮変形する伸縮アクチュエータ17に、逆巻き噛合ばね24を用いたことから、線径、内径、全長、材質が同一となるコイルばねよりも、収縮時に強い復元力を発揮することができ、且つ、ばねの径方向の変形時における伸縮アクチュエータ17の回転運動を抑制することができる。
【0037】
なお、伸縮アクチュエータ17に適用される付勢部材としては、弾性チューブ21の前後方向のみの変形を許容可能に配置されるとともに、弾性チューブ21の変形時における回転運動を規制可能に構成されるものであれば、前記実施形態の態様に限定されるものではない。
【0038】
また、前記実施形態では、ガス管P内の検査用として、管内移動体11をガス管P内で移動させる態様について図示説明したが、本発明はこれに限らず、他の配管やトンネルを含む他の管状体の内部空間の状況を遠隔場所で確認するためのシステム等にも適用可能である。
【0039】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
11 管内移動体
14 推進モジュール
17 伸縮アクチュエータ
21 弾性チューブ
23 カバー
24 逆巻き噛合ばね(付勢部材)
24A 密着コイルばね
24B 密着コイルばね
P ガス管(管状体)