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特開2023-89880あと施工アンカーの施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089880
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】あと施工アンカーの施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20230621BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
E04G21/12 105Z
E04G21/12 104D
E01D22/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204672
(22)【出願日】2021-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】320006276
【氏名又は名称】株式会社友仁工業
(74)【代理人】
【識別番号】100152342
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 益史
(72)【発明者】
【氏名】中前 仁志
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059GG30
(57)【要約】
【課題】アンカー筋が挿入されたアンカー孔の内部に無機系グラウト材を効率的に注入することができるあと施工アンカーの施工方法を提供する。
【解決手段】あと施工アンカーの施工方法は、アンカー孔10の内面10fとアンカー孔10に挿入したネジボルト11の外周面11cとの間に形成された隙間10dに排気用パイプ20の排気用挿入部20aとグラウト材注入用パイプ30の注入用挿入部30aとを孔口10aから挿入するパイプ挿入工程と、真空ポンプ22を駆動させて排気用パイプ20から空気を抜くことによりアンカー孔10の内部10bを減圧状態とする減圧工程と、前記減圧状態により発生する吸引力とグラウト材注入ガン32を駆動させることにより発生する加圧力とを併用してグラウト材注入用パイプ30からアンカー孔10の内部10bに無機系グラウト材34を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、
前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、
アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、
前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、
前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、
前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、
前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、
前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、
を有する、施工方法。
【請求項2】
前記グラウト材加圧減圧併用注入工程は、前記減圧工程において前記アンカー孔の前記内部が所定の減圧度になっていることを条件に開始する、請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
前記減圧工程により発生させる前記所定の減圧度は、-0.07Mpa以下である、請求項2に記載の施工方法。
【請求項4】
前記アンカー筋挿入工程において、前記アンカー筋の後端部又はその近傍の前記外周面にアンカー筋支持具を取り付け、前記アンカー孔の孔奥付近において前記アンカー筋を前記アンカー孔の横断面中央部又はその近傍に位置するように配置する、請求項1~3のいずれかに記載の施工方法。
【請求項5】
前記パイプ挿入工程において、前記排気用挿入部を前記アンカー孔の前記孔奥又はその近傍まで挿入し、前記注入用挿入部を前記孔口に浅く挿入する、請求項1~4のいずれかに記載の施工方法。
【請求項6】
前記パイプ挿入工程において、前記隙間へ挿入した前記排気用挿入部及び前記注入用挿入部により、前記孔口において前記アンカー筋を前記アンカー孔の前記横断面中央部又はその近傍に位置するように支持を行う、請求項1~5のいずれかに記載の施工方法。
【請求項7】
前記アンカー筋の前記支持は、前記隙間における前記排気用挿入部と前記注入用挿入部との離間配置により行う、請求項6に記載の施工方法。
【請求項8】
前記離間配置は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とを前記アンカー筋を介して互いに対向させることにより行う、請求項7に記載の施工方法。
【請求項9】
前記アンカー筋の支持は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とによる仮固定により行う、請求項6~8のいずれかに記載の施工方法。
【請求項10】
前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成し、前記湾曲扁平形状の凹状湾曲部が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記湾曲扁平形状の凸状湾曲部が前記アンカー孔の前記内面に接するように、前記隙間に挿入する、請求項1~9のいずれかに記載の施工方法。
【請求項11】
前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状がハート形状になるように形成し、前記ハート形状の窪みを有する側が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記ハート形状の窪みを有しない側が前記アンカー孔の前記内面に接するように、前記隙間に挿入する、請求項1~9のいずれかに記載の施工方法。
【請求項12】
前記パイプ挿入工程において、前記アンカー筋と前記排気用パイプと前記グラウト材注入用パイプとを前記アンカー孔に挿入させた状態で、前記孔口をパテ状の接着剤により密閉する、請求項1~11のいずれかに記載の施工方法。
【請求項13】
排気経路形成工程において、前記排気用パイプと前記真空ポンプとは排気用ホースを介して接合し、
前記グラウト材加圧減圧併用注入工程において、前記減圧工程を並行して行い、前記無機系グラウト材が前記排気用パイプから前記排気用ホースに出て来たことを条件に前記真空ポンプによる排気を停止し、前記減圧工程を終了する、請求項1~12のいずれかに記載の施工方法。
【請求項14】
前記減圧工程終了後、前記加圧力による前記無機系グラウト材の注入を停止し、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程を終了する、請求項13に記載の施工方法。
【請求項15】
前記グラウト材加圧減圧併用注入工程終了後、前記無機系グラウト材が硬化したら、前記排気用パイプ及び前記グラウト材注入用パイプの前記アンカー孔から外部に突出した部分を除去する後処理工程を更に有する、請求項14に記載の施工方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の施工方法を用いて前記躯体に付属物を取り付ける工程を有する、付属物の取り付け方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれかに記載の施工方法又は請求項16に記載の付属物の取り付け方法を実施するために用いられるあと施工アンカー施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体等の躯体に設けられるあと施工アンカーの施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンカー孔にアンカー筋を先付けし、その後に前記アンカー筋を固定するグラウト材を注入するあと施工アンカーの施工方法において、グラウト材として有機系グラウト材が多く使用されて来た。一方で、耐熱性能、VOCガスの発生がないという観点からは無機系グラウト材を使用することが好ましい。ところが、無機系グラウト材には、一般的に有機系グラウト材に比べて粘度が高いという性質がある。特許文献1には、既存の構造体に穿設されたアンカー孔の孔口からアンカー筋とともに空気抜き用の金属製排出パイプを孔奥まで挿入すると同時に、孔口をキャップでシールし、無機系グラウト材をキャップに設けられた注入口からポンプを用いて発生する加圧力により注入するあと施工アンカーの施工方法が開示されている。このような施工方法によれば、排出パイプからアンカー孔内の空気を排出しつつ、アンカー孔内に前記無機系グラウト材を確実に充填できる旨記載されている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、有機系グラウト材に比べて粘度の高い無機系グラウト材を用いる場合であっても、アンカー筋の外周面とアンカー孔の内面との間に形成された、無機系グラウト材を注入する隙間の寸法は、無機系グラウト材の使用量の観点から、有機系グラウト材を注入する場合と同様であることが好ましい。このような隙間に、特許文献1のように無機系グラウト材をポンプによる加圧力だけで注入する方法では、効率的にあと施工アンカーの施工ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-102600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、アンカー筋が挿入されたアンカー孔の内部に有機系グラウト材に比べて粘度が高い無機系グラウト材を効率的に注入することができるあと施工アンカーの施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面により提供される施工方法は、躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
好ましくは、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程は、前記減圧工程において前記アンカー孔の前記内部が所定の減圧度になっていることを条件に開始するように構成されている。
【0009】
好ましくは、前記減圧工程により発生させる前記所定の減圧度は、-0.07Mpa以下であるように構成されている。
【0010】
好ましくは、前記施工方法は、前記アンカー筋挿入工程において、前記アンカー筋の後端部又はその近傍の前記外周面にアンカー筋支持具を取り付け、前記アンカー孔の孔奥付近において前記アンカー筋を前記アンカー孔の横断面中央部又はその近傍に位置するように配置するように構成されている。
【0011】
好ましくは、前記施工方法は、前記パイプ挿入工程において、前記排気用挿入部を前記アンカー孔の前記孔奥又はその近傍まで挿入し、前記注入用挿入部を前記孔口に浅く挿入するように構成されている。
【0012】
好ましくは、前記施工方法は、前記パイプ挿入工程において、前記隙間へ挿入した前記排気用挿入部及び前記注入用挿入部により、前記孔口において前記アンカー筋を前記アンカー孔の前記横断面中央部又はその近傍に位置するように支持を行うように構成されている。
【0013】
好ましくは、前記アンカー筋の前記支持は、前記隙間における前記排気用挿入部と前記注入用挿入部との離間配置により行うように構成されている。
【0014】
好ましくは、前記離間配置は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とを前記アンカー筋を介して互いに対向させることにより行うように構成されている。
【0015】
好ましくは、前記アンカー筋の支持は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とによる仮固定により行うように構成されている。
【0016】
好ましくは、前記施工方法は、前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成し、前記湾曲扁平形状の凹状湾曲部が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記湾曲扁平形状の凸状湾曲部が前記アンカー孔の前記内面に接するように構成されている。
【0017】
好ましくは、前記施工方法は、前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状がハート形状になるように形成し、前記ハート形状の窪みを有する側が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記ハート形状の窪みを有しない側が前記アンカー孔の前記内面に接するように、前記隙間に挿入するように構成されている。
【0018】
好ましくは、前記施工方法は、前記パイプ挿入工程において、前記アンカー筋と前記排気用パイプと前記グラウト材注入用パイプとを前記アンカー孔に挿入させた状態で、前記孔口をパテ状の接着剤により密閉するように構成されている。
【0019】
好ましくは、前記施工方法は、排気経路形成工程において、前記排気用パイプと前記真空ポンプとは排気用ホースを介して接合し、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程において、前記減圧工程を並行して行い、前記無機系グラウト材が前記排気用パイプから前記排気用ホースに出て来たことを条件に前記真空ポンプによる排気を停止し、前記減圧工程を終了するように構成されている。
【0020】
好ましくは、前記施工方法は、前記減圧工程終了後、前記加圧力による前記無機系グラウト材の注入を停止し、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程を終了するように構成されている。
【0021】
好ましくは、前記施工方法は、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程終了後、前記無機系グラウト材が硬化したら、前記排気用パイプ及び前記グラウト材注入用パイプの前記アンカー孔から外部に突出した部分を除去する後処理工程を更に有するように構成されている。
【0022】
本発明の第2の側面により提供される付属物の取り付け方法は、本発明の第1の側面により提供される躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法を用いて前記躯体に付属物を取り付ける工程を有することを特徴としている。
【0023】
本発明の第3の側面により提供される施工システムは、本発明の第1の側面により提供される躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法又は本発明の第2の側面により提供される付属物の取り付け方法を実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アンカー筋が挿入されたアンカー孔の内部に無機系グラウト材を効率的に注入することができる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法に使用するあと施工アンカー施工システムを示す図である。
図2図1のあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの排気用挿入部及びグラウト材注入用パイプの注入用挿入部をアンカー孔に挿入した状態を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5(A)は、図1のあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの左側面図である。図5(B)は、図1のあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの正面図である。
図6図6(A)は、図1のあと施工アンカー施工システムのグラウト材注入用パイプの左側面図である。図6(B)は、図1のあと施工アンカー施工システムのグラウト材注入用パイプの正面図である。
図7図1に示すあと施工アンカー施工システムを用いたあと施工アンカー施工作業の一例を説明するための図であり、ネジボルトを挿入したアンカー孔に排気経路及びグラウト材注入経路を接続した状態を示す模式図である。
図8図7に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、排気経路の真空ポンプによりアンカー孔を減圧状態にする状態を示す模式図である。
図9図8に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、グラウト材注入経路のグラウト材注入ガンによる加圧力と減圧状態による吸引力とを併用してアンカー孔へ無機系グラウト材の注入作業を行う状態を示す模式図である。
図10図9に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、無機系グラウト材がアンカー孔の孔奥にまで達し、排気経路の排気用ホースに流入し始めた状態を示す模式図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、図10に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、排気用パイプを閉鎖することにより排気を遮断し、グラウト材注入用パイプを閉鎖することにより無機系グラウト材の注入を遮断し、アンカー孔への無機系グラウト材の注入が完了した状態を示す模式図である。図11(B)は、図11(A)のXIBで示す部分の拡大図である。
図12図11(A)及び図11(B)に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、排気経路から真空ポンプを取り外し、グラウト材注入経路からグラウト材注入ガンを取り外した状態を示す模式図である。
図13図12に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、あと施工アンカー施工箇所から排気経路及びグラウト材注入経路の不要部分を除去し、あと施工アンカー施工作業が完了した状態を示す模式図である。
図14】あと施工アンカーと鋼製ブラケットとの結合体の拡散分解図である。
図15図15(A)は、本発明の第2の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法に使用するあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの排気用挿入部及びグラウト材注入用パイプの注入用挿入部をアンカー孔に挿入した状態を示す斜視図である。図15(B)は、図15(A)のXVB-XVB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以降の説明において、上下方向などの方向は、図面の記載にしたがったものとする。
【0028】
<第1の実施形態>
[あと施工アンカー]
図13に示すように、本発明の第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法により施工されたあと施工アンカーXは、アンカー孔10、ネジボルト11、無機系グラウト材34、支持用磁石12、排気用パイプ20の排気用挿入部20a、及びグラウト材注入用パイプ30の注入用挿入部30aを具備している。あと施工アンカーXは、例えば、橋脚1に穿設したアンカー孔10の内部10bに先端部11aが外部に露出するようにネジボルト11を挿入した後、排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30の組み合わせを用いて無機系グラウト材34を注入し硬化させることにより形成されている。
【0029】
このようなあと施工アンカーXは、後述するように、橋脚1に複数設けられ、例えば、橋桁落下防止用の鋼製ブラケット4の固定に使用される。なお、橋脚1は、例えば、コンクリート構造体であり、本発明でいう躯体の一例に相当する。また、ネジボルト11は、アンカー孔10の孔口10aから外部に露出する先端部11aに雄ネジが形成された棒状の部材で、本発明でいうアンカー筋の一例に相当する。アンカー筋は、アンカー孔10に埋め込むための鉄筋をいう。アンカー筋は、ネジボルト11に限られず、例えば、異形鉄筋等でもよい。アンカー筋の材質は、鉄以外のものでもよい。アンカー筋の後端部の形状は、寸切りでもよいし、斜めカットでもよい。
【0030】
図3に示すように、アンカー孔10は、例えば、橋脚1の側面に横方向に穿設される。アンカー孔10は、その内径D1がネジボルト11の外径D2に比べて10mm程度大きくなるように、穿孔される。アンカー孔10の内面10fとネジボルト11の外周面11cとの間に厚みL1が5mm程度の隙間10dが形成される。この隙間10dに無機系グラウト材34が注入されている。また、この隙間10dに、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとが挿入される。例えば、ネジボルト11の外径D2がφ30mmである場合には、アンカー孔10の内径D1はφ40mm程度とされる。ネジボルト11のアンカー孔10内への挿入長さL6は、450mm程度であることが好ましい。ネジボルト11の後端部11bとアンカー孔10の孔奥10cの間には、間隙10gが設けられる。間隙10gの長さL7は、10~20mm程度取ることが好ましい。よって、アンカー孔10の孔奥10cまでの穿孔長L8は、460~470mm程度とされる。
【0031】
図2図3、及び図13に示すように、支持用磁石12は、隙間10dにおいて、ネジボルト11の後端部11b近傍の外周面11cに配置され、アンカー孔10の孔奥10c近傍において、ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように支持し仮固定する。支持用磁石12は、あと施工アンカーXをより精密に施工する場合に必要に応じて使用される。支持用磁石12は、本発明でいうアンカー筋支持具の一例に相当する。一方で、隙間10dにおいて、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、ネジボルト11介して互いに対向するように配置され、アンカー孔10の孔口10a又はその近傍においてネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように支持し仮固定する。
【0032】
図13に示すように、注入用挿入部30aからアンカー孔10に注入された無機系グラウト材34は、硬化することにより、排気用挿入部20a、注入用挿入部30a及び支持用磁石12により保持され仮固定されたネジボルト11を固定する。施工が完了したあと施工アンカーXにおいて、排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aは、それぞれ排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30から切り離され、隙間10dにおいて硬化した無機系グラウト材34中に埋もれた形で、アンカー孔10の内部10bに残る。
【0033】
[あと施工アンカー施工システム]
図1に示すように、本実施形態に係るあと施工アンカー施工方法において、あと施工アンカーXを施工するのにあと施工アンカー施工システムYを用いる。
【0034】
図1に示すように、あと施工アンカー施工システムYは、排気経路2とグラウト材注入経路3とを具備している。排気経路2は、矢印N2で示すようにアンカー孔10の内部10bの空気を排出して減圧するための経路であり、排気用パイプ20、排気用ホース21、真空ポンプ22、圧力計付トラップ23、バルブ24、及びガソリン式小型発電機25を有している。また、グラウト材注入経路3は、矢印N4で示すようにアンカー孔10の内部10bにグラウト材34を注入するための経路であり、グラウト材注入用パイプ30、無機系グラウト材注入用ホース31、グラウト材注入ガン32、及びカートリッジ33を有している。
【0035】
排気用パイプ20は、アンカー孔10の内部10bの空気を排出するためのもので、図2及び図3に示すように、アンカー孔10の孔口10aから隙間10dに挿入することにより取り付けられる。図3に示すように、排気用パイプ20の取り付けは、排気用挿入部20aをアンカー孔10の孔奥10c又はその近傍にまで挿入することにより行われる。排気用挿入部20aの長さL3は、穿孔長L8よりも短く設定される。この長さL5(排気用挿入部20aから孔奥10cまでの長さ)は、10mm~50mmとされる。例えば、穿孔長L8が460~470mmとすると、排気用挿入部20aの長さL3は、420mm~460mmである。図3図5(A)に示すように、排気用パイプ20の後端部20bは、アンカー孔10の外側に配置されるものであり、排気用挿入部20aとの角度A1が15°程度となるように形成され、その長さL9は80mm程度である。
【0036】
排気用パイプ20として、容易に変形可能な材料から製造されたものが使用でき、例えば、図5(A)及び図5(B)に示すように、外径D3がφ5mm、材料の厚みL10が0.3mmの銅製の丸パイプ(特別注文品)が使用される。排気用パイプ20の後端部20bは、ペンチ等を用いて押し潰すことにより、後述する真空ポンプ22による排気を遮断可能である。排気用パイプ20の材質は、銅製に限られず、真鍮、ステンレス等の金属でもよい。但し、アルミ製の管は、無機系グラウト材34と反応して水素を発生させるので不適切である。
【0037】
グラウト材注入用パイプ30は、その注入用挿入部30aからアンカー孔10に無機系グラウト材34を注入するためのもので、図2及び図3に示すように、アンカー孔10の孔口10a付近に取り付けられる。例えば、グラウト材注入用パイプ30は、注入用挿入部30aをアンカー孔10の孔口10aに浅く挿入することにより取り付けられる。グラウト材注入用パイプ30として、排気用パイプ20と同様、容易に変形可能な材料から製造されたものが使用され、例えば、図6(A)及び図6(B)に示すように外径D4がφ14mm、材料の厚みL14が0.3mmの銅管(特別注文品)が使用される。グラウト材注入用パイプ30の後端部30bは、ペンチ等を用いて押し潰すことにより、無機系グラウト材34の注入を遮断可能である。排気用パイプ20と同様、グラウト材注入用パイプ30の材質は、銅製に限られず、真鍮、ステンレス等の金属でもよい。但し、排気用パイプ20と同様、アルミ製の管は、無機系グラウト材34と反応して水素を発生させるので不適切である。
【0038】
上記したごとく、図3に示すように、アンカー孔10の内径D1は、ネジボルト11の外径D2がφ30mmである場合、φ40mm程度であることが好ましい。上記したように、排気パイプ20として、外径D3がφ5mm程度の丸パイプを使用し、グラウト材注入用パイプ30として、外径D4がφ14mm程度の丸パイプを使用すると、そのままで隙間10dに挿入するのは困難である。これを解決するために、注入用挿入部30aの横断面形状は、ハート形状に加工されることが好ましい。図4及び図6(B)に示すように、このハート形状は窪み30cを有しており、この窪み30cは尖形形状を有している。但し、窪み30cの形状は、尖形形状に限らず、R形状等としてもよい。一方で、窪み30cを有しない側は尖形形状を有している必要はない。注入用挿入部30aは、ハート形状の窪み30cを有する側をネジボルト11の外周面11cに接するように且つハート形状の窪み30cを有しない側をアンカー孔10の内面10fに接するように、隙間10dに挿入される。
【0039】
図6(A)及び図6(B)に示すように、注入用挿入部30aの横断面形状は、高さL11が6.5mm程度、幅L13が18.0mm程度であることが好ましい。また、図3及び図6(A)に示すように、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bは、アンカー孔10の外側に配置され、注入用挿入部30aとの角度A2が15°程度となるように形成され、その長さL12は80mm程度である。注入用挿入部30aの長さL2は、50mm以下、約30mm以下、20mm以上50mm以下、20mm以上40mm以下、30mm以上50mm以下、又は30mm程度とすることが好ましく、30mmとすることが特に好ましい。注入用挿入部30aの長さL2と排気用挿入部20aの長さL3との差L4は、370mm~440mm程度となる。
【0040】
図3及び図4に示すように、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、アンカー孔10の孔口10a又はその付近においてネジボルト11の周囲に互いに離間してネジボルト11を挟むようにして配置され、ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように支持する。これらの排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aは、孔口10a又はその付近において、ネジボルト11を仮固定する。よって、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、アンカー筋支持具の機能も有している。
【0041】
排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、ネジボルト11を介して互いに対向して配置されることが好ましい。その際、排気用挿入部20aは、注入用挿入部30aよりも上方になるように配置されるのが好ましい。排気用挿入部20aは、アンカー孔10の横断面上端部に配置される一方で、注入用挿入部30aは、横断面下端部に配置されるのがより好ましい。
【0042】
図1に示すように、排気用ホース21は、排気用パイプ20と後述する真空ポンプ22とを繋ぐためのものである。排気用ホース21は、無機系グラウト材34の流入を確認できるように、透明であることが好ましい。排気用ホース21として、例えば、内径5mm、外径7mmの軟質ポリ塩化ビニル製のものが挙げられる。具体的には、例えば、三洋化成株式会社製の透明ホース(商品名)が使用できる。
【0043】
排気用ホース21は、排気用パイプ20側の第1ホース部21aと後述する真空ポンプ22側の第2ホース部21bとを具備している。第1ホース部21aの第1端部21cが排気用パイプ20の後端部20bに接合されており、第2ホース部21bの第2端部21dが真空ポンプ22の吸引口22aに接合されている。第1ホース部21aと第2ホース部21bとの間には圧力計付トラップ23が設けられている。圧力計付トラップ23は、無機系グラウト材34又はアンカー孔10に含まれる水もしくは埃が真空ポンプ22に入り込むことにより発生する故障を防止するためのものである。圧力計23aは、アンカー孔10の内部10bの減圧度を確認するために設けられている。圧力計付トラップ23として、例えば、蒸気配管の水抜き装置が使用される。
【0044】
圧力計付トラップ23の第1ホース部21a側にバルブ24が接続されている。バルブ24は、排気用ホース21中における空気排出の流れを制御するために設けられている。バルブ24として、例えば、汎用ボールバルブが用いられる。バルブ24は、ハンドル24aを矢印N1で示す方向に回すと閉じた状態から開いた状態となり、排気用パイプ20と真空ポンプ22とが繋がるように構成されている。バルブ24の第1端部24bは、第1ホース部21aの第2端部21eに接合されている。なお、バルブ24の位置は上記に限定されるものではなく、例えば、圧力計付トラップ23の第2ホース部21b側に接続してもよいし、第2ホース部21bにおいて真空ポンプ22の近傍に設けてもよい。
【0045】
真空ポンプ22は、排気用パイプ20からアンカー孔10の内部10bの空気を排出することにより減圧状態とするためのものである。この減圧状態は、無機系グラウト材34をアンカー孔10に注入するための吸引力を発生させる。この吸引力と後述するグラウト材注入ガン32により発生する加圧力とを併用して、無機系グラウト材34をアンカー孔10に注入する。真空ポンプ22として、具体的には、例えば、タスコ社製の油回転式真空ポンプTA150MX(型番)が使用できる。真空ポンプ22は、ガソリン式小型発電機25と電源供給ケーブル22bにより接続されており、電源の供給を受ける。
【0046】
図1に示すように、グラウト材注入用ホース31は、無機系グラウト材34を供給するためにグラウト材注入用パイプ30と後述するグラウト材注入ガン32とを繋ぐためのものである。グラウト材注入用ホース31として、例えば、内径φ14mm、外径φ21mmの高圧ホースが好ましい。具体的には、例えば、MORY TRADE社製のmorytradeラジエターホースシリコンチューブ(商品名)が使用される。
【0047】
グラウト材注入ガン32は、電動式であり、注入ガン本体32a、カートリッジ保持部32b、及び押し子32cを具備している。注入ガン本体32aは、モーター及びこのモーターを動かすための電池を具備しており、無機系グラフト材34をアンカー孔10に注入するための加圧力を発生させる。このモーターは、スイッチ32dを押すことにより作動する。カートリッジ保持部32bは、無機系グラウト材34を収容するカートリッジ33を保持するためのものである。押し子32cは、前記モーターの作動により、矢印N3で示す方向に動き、カートリッジ33に収容された無機系グラウト材34を後方から押し出すためのものである。カートリッジ33は、無機系グラウト材34を収容するためのもので、先端に無機系グラウト材34を噴射するノズル33aを具備している。ノズル33aは、グラウト材注入用ホース31の第2端部31bに接続されている。なお、グラウト材注入ガン33は、本発明でいうグラウト材注入装置の一例に相当する。
【0048】
無機系グラウト材34として、超速硬セメントと微細な骨材とを含む粉体をカートリッジ33内で混合した材料を使用する。具体的には、例えば、(株)ケイ・エフ・シー社製のSRインクジェットカプセル(商品名)が使用できる。無機系グラウト材34は、排気用挿入部20a、注入用挿入部30a、及び支持用磁石12により保持されたネジボルト11が配置されたアンカー孔10の内部10bに注入された後、硬化する。但し、支持用磁石12は、必要に応じて使用される。
【0049】
図1図3に示すように、ネジボルト11と排気用パイプ20とグラウト材注入用パイプ30とが挿入されたアンカー孔10の孔口10aは、アンカー孔10の内部10bの密閉性維持のため、パテ状接着剤13で埋められる。パテ状接着剤13として、例えば、エポキシ樹脂系接着剤が好ましく、具体的には、例えば、ショーボンド建設株式会社製のショーボンド(登録商標)#101(型番)が使用できる。
【0050】
[あと施工アンカー施工方法]
先ず、橋脚1にアンカー孔10を穿孔する工程(アンカー孔穿孔工程)を行う。図3に示すように、内径D1がφ40mm、穿孔長L8が460~470mmのアンカー孔10を穿孔するために、φ40mmのドリルビットの460~470mmを示す位置にマーキングを施す。ハンマードリル又はコアドリルにこのドリルビットをセットし、橋脚1の穿孔予定箇所にマーキングした位置まで横方向に穿孔する。
【0051】
次に、ネジボルト11をアンカー孔10に挿入する工程(アンカー筋挿入工程)を行う。図2及び図3に示すように、ネジボルト11の後端部11b近傍の外周部に支持用磁石12を取り付け、ネジボルト11をアンカー孔10の孔奥10c付近においてアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置し、挿入長さL6が450mm、間隙10gの長さL7が10~20mmになるように挿入する。
【0052】
次に、排気用パイプ20とグラウト材注入用パイプ30をアンカー孔10に挿入し、ネジボルト11を仮固定する工程(パイプ挿入工程)を行う。図2図4に示すように、アンカー孔10の内面10fとアンカー筋11の外周面11cとの間に形成された隙間10dに横断面形状がハート形状である注入用挿入部30aと横断面形状が円形である排気用挿入部20aとを孔口10aから挿入することにより取り付ける。
【0053】
排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、隙間10dにおいて互いに離間配置することによりネジボルト11を挟むようにして挿入する。その際、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとをネジボルト11を介して互いに対向するように配置するのが好ましい。また、その際、排気用挿入部20aは、アンカー孔10の横断面上端部に位置するように配置し、注入用挿入部30aを横断面下端部に位置するように配置する。排気用挿入部20aと注入用挿入部30aの取り付けにより、ネジボルト11をアンカー孔10の孔口10a付近においてアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように仮固定する。
【0054】
次に、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとによりネジボルト11を仮固定させた状態で、孔口10aをパテ状接着剤13により密閉する。
【0055】
次に、排気用パイプ20と真空ポンプ22とを接合し、排気経路2を組み立てる工程(排気経路形成工程)を行う。具体的には、図7に示すように、先ず、第2ホース部21bに圧力計付トラップ23及びバルブ24を接合した接合体に第1ホース部21aを接合して排気用ホース21を形成する。その際、バルブ24の第1端部24bに第1ホース部21aの第2端部21eを接合する。更に、排気用パイプ20の後端部20bに第1ホース部21aの第1端部21cを接合する。次に、第2ホース部21bの第2端部21dを真空ポンプ22の吸引口22aに接合する。次に、真空ポンプ22を電源供給ケーブル22bによりガソリン式小型発電機25に接続する。
【0056】
次に、このグラウト材注入用パイプ30とグラウト材注入ガン32とを接合し、グラウト材注入経路3を組み立てる工程(グラウト材注入経路形成工程)を行う。具体的には、図7に示すように、先ず、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bにグラウト材注入用ホース31の第1端部31aを接合する。次に、モルタル状態の無機系グラウト材34を調製する。次に、調製済みの無機系グラウト材34の入ったカートリッジ33をグラウト材注入ガン32のカートリッジ保持部32bにセットし、ノズル33aをグラウト材注入用ホース31の第2端部31bに接続する。
【0057】
次に、この真空ポンプ22によりアンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程(減圧工程)を行う。図8に示すように、真空ポンプ22のスイッチを入れて駆動させ、バルブ24のハンドル24aを矢印N1で示す方向に回すことにより、矢印N2で示すようにアンカー孔10の内部10bから空気を排出し、減圧状態とする。空気の排出を続け、アンカー孔10内の減圧度が、圧力計23aの読みで-0.07Mpa以下で安定した状態(真空状態)になっていることを確認する。
【0058】
次に、グラウト材注入ガン32による加圧と真空ポンプ22による減圧とを併用したアンカー孔10への無機系グラウト材34の注入工程(グラウト材加圧減圧併用注入工程)を行う。図9に示すように、グラウト材注入ガン32のスイッチ32dを押して押し子32cを矢印N3で示すように動かし、矢印N4で示すように加圧力を発生させ、アンカー孔10の内部10bへの無機系グラウト材34の注入を開始する。この時、上記したように、アンカー孔10の内部10bは真空ポンプ22の作動による減圧状態となっている。よって、減圧状態により発生する吸引力による注入作業と真空ポンプ22による減圧作業とを同時進行する。このように無機系グラウト材34を注入作業は、グラウト材注入ガン32により発生する加圧力と真空ポンプ22により発生する吸引力とを併用して行う。この際、グラウト材注入ガン32の駆動により発生する加圧力と減圧状態により発生する吸引力とは、協働して無機系グラウト材34を注入用挿入部30aからアンカー孔10の内部10bに注入する。
【0059】
次に、図10に示すように、加圧と減圧とを併用した注入工程において、注入作業がある程度進んだら、無機系グラウト材34が真空ポンプ22側の排気用ホース21に出て来るのをチェックする。無機系グラウト材34が排気用ホース21に出て来たのを確認した場合には、図11(A)及び図11(B)に示すように、ペンチ等(図示略)を用いて排気用パイプ20の後端部20bの一部を潰して閉鎖することにより排気遮断部20cを形成し、真空ポンプ22による排気を遮断する。更に、バルブ24のハンドル24aを矢印N5で示す方向に戻して閉じる。このようにして、真空ポンプ22によりアンカー孔10の内部10bを減圧状態とする減圧工程を終了する。
【0060】
次に、図11(A)及び図11(B)に示すように、グラウト材注入ガン32の押し子32cが矢印N3で示す方向に動かなくなったことを合図にして、ペンチ等(図示略)を用いてグラウト材注入用パイプ30の後端部30bの一部を潰して閉鎖することにより注入遮断部30cを形成し、無機系グラウト材34のこれ以上の加圧力による注入を遮断する。更に、図12に示すように、バルブ24の第1端部24bから第1ホース部21aの第2端部21eを取り外すことにより排気経路2から真空ポンプ22を切り離す。また、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bからグラウト材注入用ホース31の第1端部31aを取り外すことによりグラウト材注入経路3からグラウト材注入ガン32を切り離す。このようにして、グラウト材注入ガン32による加圧と真空ポンプ22による減圧とを併用した無機系グラウト材34の注入工程を終了する。
【0061】
次に、孔口10aから外部に出ている不要部材を除去し後処理する工程(後処理工程)を行う。図13に示すように、無機系グラウト材34が硬化したら、パテ状接着剤13を除去する。排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aをアンカー孔10の内部10bに残して、排気用パイプ20の後端部20b及び第1ホース部21a、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bを除去する。そうすると、橋脚1からネジボルト11の先端部11aが突出した状態となる。
【0062】
[鋼製ブラケットの取り付け方法]
図14に示すように、あと施工アンカーXは、橋脚1に複数設けられ、例えば、橋桁落下防止用の鋼製ブラケット4の取り付けに使用される。鋼製ブラケット4は、背板40、支持板41、及び天板42を具備している。背板40は、鋼製ブラケット4を橋脚1に取り付けるための複数の取り付け穴40aを有している。取り付け穴40aは、ネジボルト11の先端部11aを通すためのものである。支持板41は、背板40の前面40bに複数設けられており、天板42を支持するためのものである。天板42は、背板40の上面40c及び支持板41の上面41aに載置されており、落下した橋桁を受けるための部分である。鋼製ブラケット4は、本発明でいう付属物の一例に相当する。
【0063】
先ず、複数のアンカー孔10を橋脚1に穿孔する。上記の施工方法によれば、複数のあと施工アンカーXの先端部11aは、略平行になるように形成される。よって、鋼製ブラケット4の取り付け穴40aの位置は、アンカー孔10を穿孔した段階で確定する。穿孔した複数のアンカー孔10の実際の配置に基づき、取り付け穴40aを形成する位置を示す図面を作成する。この図面に基づき型板版5を作製し、型板版5に従い背板40の正確な位置に取り付け穴40aを有する鋼製ブラケット4を制作する。複数のアンカー孔10は、橋脚1中の鉄筋の位置等により規則的に配置できない場合がある。型板版5は、これらのアンカー孔10の位置を確実に把握するため作製する。
【0064】
次に、上記の施工方法を用いて複数のあと施工アンカーXを施工し、施工が完了した複数のあと施工アンカーXのネジボルト11の先端部11aに螺合するナット14を用いて、鋼製ブラケット4を橋脚1に固定する。
【0065】
本実施形態によれば、あと施工アンカーXの施工に際し、アンカー孔10を穿孔し、グラウト材注入ガン32を駆動させることにより発生する加圧力と真空ポンプ22の駆動により発生する吸引力とを併用して、アンカー筋11の外周面11cとアンカー孔10の内面10fとの間に形成された隙間10dに向けて無機系グラウト材34を注入する。その結果、隙間10dに有機系グラウト材に比べて粘度の高い無機系グラウト材34を効率的に注入することができる。無機系グラウト材34を効率的に注入できることにより、あと施工アンカーXの施工の工期短縮を図ることができる。また、隙間10dを広くしなくとも無機系グラウト材34の注入作業を進めることができるので、アンカー孔10に充填される無機系グラウト材34の必要量を少なくすることができる。そのため、コスト低減を図ることができる。また、アンカー孔10を大きくしなくてもよいので、穿孔による橋脚1等の躯体の強度の低下を防止できる点でも有利である。
【0066】
また、アンカー孔10の内部10bを減圧する工程において、アンカー孔10の内部10bが所定の減圧度になっていることを条件に吸引力と加圧力とを併用して無機系グラウト材34を注入する工程を開始するので、当初から十分な吸引力と加圧力とにより無機系グラウト材34の注入作業を行うことができる。これにより、無機系グラウト材34のアンカー孔10への注入作業を効率的に進めることができるので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0067】
また、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程において、真空ポンプ22による減圧作業により発生させる減圧度は、-0.07Mpa以下である。このように真空に近い減圧状態により発生する強い吸引力とグラウト材注入ガン32による加圧力とを併用して無機系グラウト材34の注入作業を行う。そのため、無機系グラウト材34のアンカー孔10への注入作業を効率的に進めることができ、これにより、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0068】
また、ネジボルト11をアンカー孔10に挿入する工程において、ネジボルト11の後端部11bの近傍の外周面11cに支持用磁石12を取り付け、ネジボルト11をアンカー孔10の孔奥10c付近においてアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置するので、ネジボルト11の全周囲に途切れることなく無機系グラウト材34を注入することができる。これにより、橋脚1のような躯体へのネジボルト11の固定強度を大きなものとすることができる。
【0069】
また、排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30をアンカー孔10に挿入する工程において、排気用挿入部20aをアンカー孔10の孔奥10c又はその近傍まで挿入し、注入用挿入部30aを孔口10aに浅く挿入する。そのため、アンカー孔10の内部10bからの空気の排気を無機系グラウト材34の邪魔なく行うことができるので、吸引力と加圧力とを併用した無機系グラウト材34の注入を効率的に行うことができる。これにより、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0070】
また、排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aをアンカー孔10に挿入する工程において、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとによりネジボルト11を支持するので、孔口10aにおいては、支持用磁石12のような追加の部材を不要にしたり、削減したりすることができる。これにより、施工に必要な資材を少なくできるので、あと施工アンカーXの施工のコスト削減を図ることができる。
【0071】
また、ネジボルト11の支持は、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとによる仮固定により行う。作業員は、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとを取り付けると同時にネジボルト11を仮固定するので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0072】
また、ネジボルト11の支持は、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとをネジボルト11の外周面11c上において互いに離間配置することにより行う。そのため、ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置するので、ネジボルト11の全周囲に途切れることなく無機系グラウト材34を注入することができる。これにより、橋脚1等の躯体にネジボルト11を強固に固定することができる。
【0073】
また、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとの離間配置は、ネジボルト11を介して互いに対向するように配置する。そのため、ネジボルト11の支持を確実に実施できる。これにより、位置精度の良好なあと施工アンカーXの施工を行うことができる。
【0074】
また、注入用挿入部30aを横断面形状がハート形状になるように形成すると、アンカー孔10の内面10fとネジボルト11の外周面11cとにフィットしやすいので、同じ寸法の隙間10dでも、注入用挿入部30aの横断面をより大きく取ることができる。これにより、有機系グラウト材に比べて粘度の高い無機系グラウト材34の注入を効率的に行うことができるので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。また、ハート形状は、丸パイプから比較的簡単に形成できるので、供給者の負担を軽減でき、コスト削減につながる。
【0075】
また、ネジボルト11と排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとをアンカー孔10に挿入させた状態で、孔口10aをパテ状接着剤13により密閉する。そのため、孔口10aを密閉するための追加の特殊な部材を必要としないので、コスト低減を図ることができる。
【0076】
また、加圧と減圧とを併用した注入工程において、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程を並行して行い、無機系グラウト材34が排気用パイプ20から排気用ホース21に出て来たことを条件に真空ポンプ22による排気を停止し、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程を終了する。このように、適切な時期に、減圧状態による吸引力による注入を停止することにより真空ポンプ22への無機系グラウト材34の流入を防止する。これにより、真空ポンプ22の故障によるあと施工アンカー施工システムの障害を未然に防止することができる。また、無機系グラウト材34が排気用パイプ20から排気用ホース21に出て来たことを確認することにより、注入の停止時期を確実に知ることができるので、アンカー孔10への無機系グラウト材34の注入作業を効率的に進めることができる。
【0077】
また、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程終了後、無機系グラウト材34の加圧力による注入を停止し、加圧と減圧とを併用した無機系グラウト材34のアンカー孔10への注入作業を完了する。このように、注入作業を適切に行うことができるため、無機系グラウト材34の注入作業を効率的に進めることができる。これにより、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0078】
また、後処理する工程において、排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30の外部に突出した部分を除去する。これにより、アンカー孔10の内部10bに残る部材の量を最小限に留めることができるので、銅等の金属の使用量を軽減することができ、銅等の金属の資源保護を図ることができる。
【0079】
また、排気用パイプ20及び/又はグラウト材注入用パイプ30として薄く加工された銅製パイプを使用する。これにより、アンカー孔10の内部10bに残る部材の量を最小限に留めることができるので、銅等の金属の使用量を軽減することができ、銅等の金属の資源保護を図ることができる。
【0080】
また、アンカー孔10に排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aを挿入する工程において、排気用挿入部20aから孔奥10cまでの長さL5は、10~50mmとされる。また、注入用挿入部30aの長さL2と排気用挿入部20aの長さL3との差L4は、十分に長く取られる。そのため、アンカー孔10に空隙を生じることなく、無機系グラウト材34が注入される。これにより、施工後の錆の発生を防止することができる。
【0081】
また、鋼製ブラケット4の取り付け穴40aは、ネジボルト11より2mm大きい程度に形成される。よって、取り付け穴40aの位置は、ネジボルト11の数が多いほど相当の精度が必要になる。ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置することにより、複数のあと施工アンカーXの先端部11aは、略平行になるように形成されるので、この精度を出すことができる。このことにより、アンカー孔10が穿孔された段階で鋼製ブラケット4の取り付け穴40aの位置が確定するので、その時点で、図面を起こし、それに基づき型板版5を作製して、鋼製ブラケット4の制作に取り掛かることができる。これにより、従来に比べ少なくとも1.5カ月程度の工期短縮を図ることができる。従来のあと施工アンカーXの施工方法においては、ネジボルト11を全部付けた段階でしか鋼製ブラケット4の取り付け穴40aの位置を決定できず、ネジボルト11の先端部11aのセンター位置の確定に時間がかかった。よって、ネジボルト11の先端部11aのセンター位置を計測して図面を起こすのがかなり遅くなってしまっていた。
【0082】
<第2の実施形態>
図15(A)及び図15(B)を参照して、本発明の第2の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法及びそれに使用するあと施工アンカー施工システムYAを説明する。あと施工アンカー施工システムYAを用いたあと施工アンカー施工方法により、あと施工アンカーXAが施工される。あと施工アンカー施工システムYAにおいて、第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工システムYの構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素にはあと施工アンカー施工システムYと同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。また、あと施工アンカー施工システムYAを使用するあと施工アンカー施工方法において、第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工システムYを使用するあと施工アンカー施工方法と同様の部分に関しては、詳細な説明を省略する。
【0083】
図15(A)に示すように、あと施工アンカー施工システムYAは、グラウト材注入用パイプ30Aを有している点で第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工システムYと相違している。グラウト材注入用パイプ30Aは、アンカー孔10に無機系グラウト材34を注入するための注入用挿入部30Aaを具備している。注入用挿入部30Aaは、アンカー孔10の孔口10a付近に取り付けられ、注入用挿入部30aと同様の材質を有している。
【0084】
図15(B)に示すように、注入用挿入部30Aaは、その横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成されている。湾曲扁平形状の凹状湾曲部30Adの湾曲度は、凸状湾曲部30Aeの湾曲度よりも大きく形成されている。湾曲扁平形状は、例えば、三日月形形状を含む。パイプ挿入工程において、注入用挿入部30Aaは、前記湾曲扁平形状の凹状湾曲部30Adがネジボルト11の外周面11cに接するように且つ前記湾曲扁平形状の凸状湾曲部30Aeがアンカー孔10の内面10fに接するように、隙間10dに挿入される。
【0085】
本実施形態のあと施工アンカー施工方法及びそれに使用するあと施工アンカー施工システムYAによれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態によれば、注入用挿入部30Aaを横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成すると、アンカー孔10の内面10fとネジボルト11の外周面11cとにフィットしやすいので、同じ寸法の隙間10dでも、注入用挿入部30Aaの横断面をより大きく取ることができる。これにより、無機系グラウト材34の注入を効率的に行うことができるので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0086】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るあと施工アンカー施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムの具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0087】
本発明のあと施工アンカー施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムは、アンカー孔10を躯体の下面から上方向に縦に穿孔する場合にも適用することができる。この場合は、下面の孔口10aから無機系グラウト材34を注入する。
【符号の説明】
【0088】
X あと施工アンカー
1 橋脚(躯体)
10 アンカー孔
10a 孔口(アンカー孔10の)
10b 内部(アンカー孔10の)
10c 孔奥(アンカー孔10の)
10d 隙間
10f 内面(アンカー孔10の)
11 ネジボルト(アンカー筋)
11a 先端部(ネジボルト11の)
11b 後端部(ネジボルト11の)
11c 外周面(ネジボルト11の)
12 支持用磁石(アンカー筋支持具)
13 パテ状接着剤
2 排気経路
20 排気用パイプ
20a 排気用挿入部(排気用パイプ20の)
21 排気用ホース
22 真空ポンプ
3 グラウト材注入経路
30,30A グラウト材注入用パイプ
30a,30Aa 注入用挿入部(グラウト材注入用パイプ30,30Aの)
30c 窪み(注入用挿入部30aの)
30Ad 凹状湾曲部(注入用挿入部30Aaの)
30Ae 凸状湾曲部(注入用挿入部30Aaの)
31 グラウト材注入用ホース
32 グラウト材注入ガン(グラウト材注入装置)
34 無機系グラウト材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、
前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、
アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、
前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、
前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、
前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、
前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、
前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、
を有し、
前記パイプ挿入工程において、前記隙間へ挿入した前記排気用挿入部及び前記注入用挿入部により、前記孔口において前記アンカー筋を前記アンカー孔の横断面中央部又はその近傍に位置するように支持を行う、施工方法。
【請求項2】
前記アンカー筋の前記支持は、前記隙間における前記排気用挿入部と前記注入用挿入部との離間配置により行う、請求項に記載の施工方法。
【請求項3】
前記離間配置は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とを前記アンカー筋を介して互いに対向させることにより行う、請求項に記載の施工方法。
【請求項4】
前記アンカー筋の前記支持は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とによる仮固定により行う、請求項のいずれかに記載の施工方法。
【請求項5】
前記アンカー筋挿入工程において、前記アンカー筋の後端部又はその近傍の前記外周面にアンカー筋支持具を取り付け、前記アンカー孔の孔奥付近において前記アンカー筋を前記アンカー孔の前記横断面中央部又はその近傍に位置するように配置する、請求項1~のいずれかに記載の施工方法。
【請求項6】
前記パイプ挿入工程において、前記排気用挿入部を前記アンカー孔の孔奥又はその近傍まで挿入し、前記注入用挿入部を前記孔口に浅く挿入する、請求項1~4のいずれかに記載の施工方法。
【請求項7】
躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、
前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、
アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、
前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、
前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、
前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、
前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、
前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、
を有し、
前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成し、前記湾曲扁平形状の凹状湾曲部が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記湾曲扁平形状の凸状湾曲部が前記アンカー孔の前記内面に接するように、前記隙間に挿入する、施工方法。
【請求項8】
躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、
前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、
アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、
前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、
前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、
前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、
前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、
前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、
を有し、
前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状がハート形状になるように形成し、前記ハート形状の窪みを有する側が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記ハート形状の窪みを有しない側が前記アンカー孔の前記内面に接するように、前記隙間に挿入する、施工方法。
【請求項9】
前記グラウト材加圧減圧併用注入工程は、前記減圧工程において前記アンカー孔の前記内部が所定の減圧度になっていることを条件に開始する、請求項1~8のいずれかに記載の施工方法。
【請求項10】
前記減圧工程により発生させる前記所定の減圧度は、-0.07Mpa以下である、請求項に記載の施工方法。
【請求項11】
前記パイプ挿入工程において、前記アンカー筋と前記排気用パイプと前記グラウト材注入用パイプとを前記アンカー孔に挿入させた状態で、前記孔口をパテ状の接着剤により密閉する、請求項1~10のいずれかに記載の施工方法。
【請求項12】
排気経路形成工程において、前記排気用パイプと前記真空ポンプとは排気用ホースを介して接合し、
前記グラウト材加圧減圧併用注入工程において、前記減圧工程を並行して行い、前記無機系グラウト材が前記排気用パイプから前記排気用ホースに出て来たことを条件に前記真空ポンプによる排気を停止し、前記減圧工程を終了する、請求項1~11のいずれかに記載の施工方法。
【請求項13】
前記減圧工程終了後、前記加圧力による前記無機系グラウト材の注入を停止し、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程を終了する、請求項12に記載の施工方法。
【請求項14】
前記グラウト材加圧減圧併用注入工程終了後、前記無機系グラウト材が硬化したら、前記排気用パイプ及び前記グラウト材注入用パイプの前記アンカー孔から外部に突出した部分を除去する後処理工程を更に有する、請求項13に記載の施工方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の施工方法を用いて前記躯体に付属物を取り付ける工程を有する、付属物の取り付け方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかに記載の施工方法又は請求項15に記載の付属物の取り付け方法を実施するために用いられるあと施工アンカー施工システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体等の躯体に設けられるあと施工アンカーの施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンカー孔にアンカー筋を先付けし、その後に前記アンカー筋を固定するグラウト材を注入するあと施工アンカーの施工方法において、グラウト材として有機系グラウト材が多く使用されて来た。一方で、耐熱性能、VOCガスの発生がないという観点からは無機系グラウト材を使用することが好ましい。ところが、無機系グラウト材には、一般的に有機系グラウト材に比べて粘度が高いという性質がある。特許文献1には、既存の構造体に穿設されたアンカー孔の孔口からアンカー筋とともに空気抜き用の金属製排出パイプを孔奥まで挿入すると同時に、孔口をキャップでシールし、無機系グラウト材をキャップに設けられた注入口からポンプを用いて発生する加圧力により注入するあと施工アンカーの施工方法が開示されている。このような施工方法によれば、排出パイプからアンカー孔内の空気を排出しつつ、アンカー孔内に前記無機系グラウト材を確実に充填できる旨記載されている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、有機系グラウト材に比べて粘度の高い無機系グラウト材を用いる場合であっても、アンカー筋の外周面とアンカー孔の内面との間に形成された、無機系グラウト材を注入する隙間の寸法は、無機系グラウト材の使用量の観点から、有機系グラウト材を注入する場合と同様であることが好ましい。このような隙間に、特許文献1のように無機系グラウト材をポンプによる加圧力だけで注入する方法では、効率的にあと施工アンカーの施工ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-102600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、アンカー筋が挿入されたアンカー孔の内部に有機系グラウト材に比べて粘度が高い無機系グラウト材を効率的に注入することができるあと施工アンカーの施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面により提供される施工方法は、躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、を有し、前記パイプ挿入工程において、前記隙間へ挿入した前記排気用挿入部及び前記注入用挿入部により、前記孔口において前記アンカー筋を前記アンカー孔の横断面中央部又はその近傍に位置するように支持を行うことを特徴としている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される施工方法においては、以下の各構成とすることが好ましい。
【0009】
好ましくは、前記アンカー筋の前記支持は、前記隙間における前記排気用挿入部と前記注入用挿入部との離間配置により行うように構成されている。
【0010】
好ましくは、前記離間配置は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とを前記アンカー筋を介して互いに対向させることにより行うように構成されている。
【0011】
好ましくは、前記アンカー筋の前記支持は、前記排気用挿入部と前記注入用挿入部とによる仮固定により行うように構成されている。
【0012】
好ましくは、前記施工方法は、前記アンカー筋挿入工程において、前記アンカー筋の後端部又はその近傍の前記外周面にアンカー筋支持具を取り付け、前記アンカー孔の孔奥付近において前記アンカー筋を前記アンカー孔の前記横断面中央部又はその近傍に位置するように配置するように構成されている。
【0013】
好ましくは、前記施工方法は、前記パイプ挿入工程において、前記排気用挿入部を前記アンカー孔の孔奥又はその近傍まで挿入し、前記注入用挿入部を前記孔口に浅く挿入するように構成されている。
【0014】
本発明の第2の側面により提供される施工方法は、躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、を有し、前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成し、前記湾曲扁平形状の凹状湾曲部が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記湾曲扁平形状の凸状湾曲部が前記アンカー孔の前記内面に接するように、前記隙間に挿入することを特徴としている。
【0015】
本発明の第3の側面により提供される施工方法は、躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法であって、前記躯体にアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、アンカー筋を、先端部が前記アンカー孔の孔口から外部に露出するように、前記アンカー孔に挿入するアンカー筋挿入工程と、前記アンカー孔の内面と前記アンカー筋の外周面との間に形成された隙間に排気用パイプの排気用挿入部とグラウト材注入用パイプの注入用挿入部とを挿入するパイプ挿入工程と、前記排気用パイプと真空ポンプとを接合し、前記アンカー孔の内部から空気を排出する排気経路を形成する排気経路形成工程と、前記グラウト材注入用パイプとグラウト材注入装置とを接合し、無機系グラウト材を前記アンカー孔の前記内部に注入するグラウト材注入経路を形成するグラウト材注入経路形成工程と、前記真空ポンプを駆動させ、前記アンカー孔の前記内部から前記排気用パイプを介して前記空気を排出し、前記アンカー孔の前記内部を減圧状態にする減圧工程と、前記グラウト材注入装置を駆動させることにより加圧力を発生させ、前記加圧力と前記減圧状態により発生する吸引力とを併用して前記グラウト材注入用パイプから前記アンカー孔の前記内部に向けて前記無機系グラウト材を注入するグラウト材加圧減圧併用注入工程と、を有し、前記パイプ挿入工程において、前記注入用挿入部を、横断面形状がハート形状になるように形成し、前記ハート形状の窪みを有する側が前記アンカー筋の前記外周面に接するように且つ前記ハート形状の窪みを有しない側が前記アンカー孔の前記内面に接するように、前記隙間に挿入することを特徴としている。
【0016】
本発明の第1~第3の側面のいずれかにより提供される施工方法においては、以下の各構成とすることが好ましい。
【0017】
好ましくは、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程は、前記減圧工程において前記アンカー孔の前記内部が所定の減圧度になっていることを条件に開始するように構成されている。
【0018】
好ましくは、前記減圧工程により発生させる前記所定の減圧度は、-0.07Mpa以下であるように構成されている。
【0019】
好ましくは、前記施工方法は、前記パイプ挿入工程において、前記アンカー筋と前記排気用パイプと前記グラウト材注入用パイプとを前記アンカー孔に挿入させた状態で、前記孔口をパテ状の接着剤により密閉するように構成されている。
【0020】
好ましくは、前記施工方法は、排気経路形成工程において、前記排気用パイプと前記真空ポンプとは排気用ホースを介して接合し、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程において、前記減圧工程を並行して行い、前記無機系グラウト材が前記排気用パイプから前記排気用ホースに出て来たことを条件に前記真空ポンプによる排気を停止し、前記減圧工程を終了するように構成されている。
【0021】
好ましくは、前記施工方法は、前記減圧工程終了後、前記加圧力による前記無機系グラウト材の注入を停止し、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程を終了するように構成されている。
【0022】
好ましくは、前記施工方法は、前記グラウト材加圧減圧併用注入工程終了後、前記無機系グラウト材が硬化したら、前記排気用パイプ及び前記グラウト材注入用パイプの前記アンカー孔から外部に突出した部分を除去する後処理工程を更に有するように構成されている。
【0023】
本発明の第の側面により提供される付属物の取り付け方法は、本発明の第1~第3の側面のいずれかにより提供される躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法を用いて前記躯体に付属物を取り付ける工程を有することを特徴としている。
【0024】
本発明の第の側面により提供される施工システムは、本発明の第1~第3の側面のいずれかにより提供される躯体にあと施工アンカーを施工するための施工方法又は本発明の第の側面により提供される付属物の取り付け方法を実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、アンカー筋が挿入されたアンカー孔の内部に無機系グラウト材を効率的に注入することができる。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法に使用するあと施工アンカー施工システムを示す図である。
図2図1のあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの排気用挿入部及びグラウト材注入用パイプの注入用挿入部をアンカー孔に挿入した状態を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5(A)は、図1のあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの左側面図である。図5(B)は、図1のあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの正面図である。
図6図6(A)は、図1のあと施工アンカー施工システムのグラウト材注入用パイプの左側面図である。図6(B)は、図1のあと施工アンカー施工システムのグラウト材注入用パイプの正面図である。
図7図1に示すあと施工アンカー施工システムを用いたあと施工アンカー施工作業の一例を説明するための図であり、ネジボルトを挿入したアンカー孔に排気経路及びグラウト材注入経路を接続した状態を示す模式図である。
図8図7に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、排気経路の真空ポンプによりアンカー孔を減圧状態にする状態を示す模式図である。
図9図8に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、グラウト材注入経路のグラウト材注入ガンによる加圧力と減圧状態による吸引力とを併用してアンカー孔へ無機系グラウト材の注入作業を行う状態を示す模式図である。
図10図9に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、無機系グラウト材がアンカー孔の孔奥にまで達し、排気経路の排気用ホースに流入し始めた状態を示す模式図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、図10に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、排気用パイプを閉鎖することにより排気を遮断し、グラウト材注入用パイプを閉鎖することにより無機系グラウト材の注入を遮断し、アンカー孔への無機系グラウト材の注入が完了した状態を示す模式図である。図11(B)は、図11(A)のXIBで示す部分の拡大図である。
図12図11(A)及び図11(B)に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、排気経路から真空ポンプを取り外し、グラウト材注入経路からグラウト材注入ガンを取り外した状態を示す模式図である。
図13図12に示す作業に続く施工作業を説明するための図であり、あと施工アンカー施工箇所から排気経路及びグラウト材注入経路の不要部分を除去し、あと施工アンカー施工作業が完了した状態を示す模式図である。
図14】あと施工アンカーと鋼製ブラケットとの結合体の拡散分解図である。
図15図15(A)は、本発明の第2の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法に使用するあと施工アンカー施工システムの排気用パイプの排気用挿入部及びグラウト材注入用パイプの注入用挿入部をアンカー孔に挿入した状態を示す斜視図である。図15(B)は、図15(A)のXVB-XVB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以降の説明において、上下方向などの方向は、図面の記載にしたがったものとする。
【0029】
<第1の実施形態>
[あと施工アンカー]
図13に示すように、本発明の第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法により施工されたあと施工アンカーXは、アンカー孔10、ネジボルト11、無機系グラウト材34、支持用磁石12、排気用パイプ20の排気用挿入部20a、及びグラウト材注入用パイプ30の注入用挿入部30aを具備している。あと施工アンカーXは、例えば、橋脚1に穿設したアンカー孔10の内部10bに先端部11aが外部に露出するようにネジボルト11を挿入した後、排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30の組み合わせを用いて無機系グラウト材34を注入し硬化させることにより形成されている。
【0030】
このようなあと施工アンカーXは、後述するように、橋脚1に複数設けられ、例えば、橋桁落下防止用の鋼製ブラケット4の固定に使用される。なお、橋脚1は、例えば、コンクリート構造体であり、本発明でいう躯体の一例に相当する。また、ネジボルト11は、アンカー孔10の孔口10aから外部に露出する先端部11aに雄ネジが形成された棒状の部材で、本発明でいうアンカー筋の一例に相当する。アンカー筋は、アンカー孔10に埋め込むための鉄筋をいう。アンカー筋は、ネジボルト11に限られず、例えば、異形鉄筋等でもよい。アンカー筋の材質は、鉄以外のものでもよい。アンカー筋の後端部の形状は、寸切りでもよいし、斜めカットでもよい。
【0031】
図3に示すように、アンカー孔10は、例えば、橋脚1の側面に横方向に穿設される。アンカー孔10は、その内径D1がネジボルト11の外径D2に比べて10mm程度大きくなるように、穿孔される。アンカー孔10の内面10fとネジボルト11の外周面11cとの間に厚みL1が5mm程度の隙間10dが形成される。この隙間10dに無機系グラウト材34が注入されている。また、この隙間10dに、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとが挿入される。例えば、ネジボルト11の外径D2がφ30mmである場合には、アンカー孔10の内径D1はφ40mm程度とされる。ネジボルト11のアンカー孔10内への挿入長さL6は、450mm程度であることが好ましい。ネジボルト11の後端部11bとアンカー孔10の孔奥10cの間には、間隙10gが設けられる。間隙10gの長さL7は、10~20mm程度取ることが好ましい。よって、アンカー孔10の孔奥10cまでの穿孔長L8は、460~470mm程度とされる。
【0032】
図2図3、及び図13に示すように、支持用磁石12は、隙間10dにおいて、ネジボルト11の後端部11b近傍の外周面11cに配置され、アンカー孔10の孔奥10c近傍において、ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように支持し仮固定する。支持用磁石12は、あと施工アンカーXをより精密に施工する場合に必要に応じて使用される。支持用磁石12は、本発明でいうアンカー筋支持具の一例に相当する。一方で、隙間10dにおいて、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、ネジボルト11介して互いに対向するように配置され、アンカー孔10の孔口10a又はその近傍においてネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように支持し仮固定する。
【0033】
図13に示すように、注入用挿入部30aからアンカー孔10に注入された無機系グラウト材34は、硬化することにより、排気用挿入部20a、注入用挿入部30a及び支持用磁石12により保持され仮固定されたネジボルト11を固定する。施工が完了したあと施工アンカーXにおいて、排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aは、それぞれ排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30から切り離され、隙間10dにおいて硬化した無機系グラウト材34中に埋もれた形で、アンカー孔10の内部10bに残る。
【0034】
[あと施工アンカー施工システム]
図1に示すように、本実施形態に係るあと施工アンカー施工方法において、あと施工アンカーXを施工するのにあと施工アンカー施工システムYを用いる。
【0035】
図1に示すように、あと施工アンカー施工システムYは、排気経路2とグラウト材注入経路3とを具備している。排気経路2は、矢印N2で示すようにアンカー孔10の内部10bの空気を排出して減圧するための経路であり、排気用パイプ20、排気用ホース21、真空ポンプ22、圧力計付トラップ23、バルブ24、及びガソリン式小型発電機25を有している。また、グラウト材注入経路3は、矢印N4で示すようにアンカー孔10の内部10bにグラウト材34を注入するための経路であり、グラウト材注入用パイプ30、無機系グラウト材注入用ホース31、グラウト材注入ガン32、及びカートリッジ33を有している。
【0036】
排気用パイプ20は、アンカー孔10の内部10bの空気を排出するためのもので、図2及び図3に示すように、アンカー孔10の孔口10aから隙間10dに挿入することにより取り付けられる。図3に示すように、排気用パイプ20の取り付けは、排気用挿入部20aをアンカー孔10の孔奥10c又はその近傍にまで挿入することにより行われる。排気用挿入部20aの長さL3は、穿孔長L8よりも短く設定される。この長さL5(排気用挿入部20aから孔奥10cまでの長さ)は、10mm~50mmとされる。例えば、穿孔長L8が460~470mmとすると、排気用挿入部20aの長さL3は、420mm~460mmである。図3図5(A)に示すように、排気用パイプ20の後端部20bは、アンカー孔10の外側に配置されるものであり、排気用挿入部20aとの角度A1が15°程度となるように形成され、その長さL9は80mm程度である。
【0037】
排気用パイプ20として、容易に変形可能な材料から製造されたものが使用でき、例えば、図5(A)及び図5(B)に示すように、外径D3がφ5mm、材料の厚みL10が0.3mmの銅製の丸パイプ(特別注文品)が使用される。排気用パイプ20の後端部20bは、ペンチ等を用いて押し潰すことにより、後述する真空ポンプ22による排気を遮断可能である。排気用パイプ20の材質は、銅製に限られず、真鍮、ステンレス等の金属でもよい。但し、アルミ製の管は、無機系グラウト材34と反応して水素を発生させるので不適切である。
【0038】
グラウト材注入用パイプ30は、その注入用挿入部30aからアンカー孔10に無機系グラウト材34を注入するためのもので、図2及び図3に示すように、アンカー孔10の孔口10a付近に取り付けられる。例えば、グラウト材注入用パイプ30は、注入用挿入部30aをアンカー孔10の孔口10aに浅く挿入することにより取り付けられる。グラウト材注入用パイプ30として、排気用パイプ20と同様、容易に変形可能な材料から製造されたものが使用され、例えば、図6(A)及び図6(B)に示すように外径D4がφ14mm、材料の厚みL14が0.3mmの銅管(特別注文品)が使用される。グラウト材注入用パイプ30の後端部30bは、ペンチ等を用いて押し潰すことにより、無機系グラウト材34の注入を遮断可能である。排気用パイプ20と同様、グラウト材注入用パイプ30の材質は、銅製に限られず、真鍮、ステンレス等の金属でもよい。但し、排気用パイプ20と同様、アルミ製の管は、無機系グラウト材34と反応して水素を発生させるので不適切である。
【0039】
上記したごとく、図3に示すように、アンカー孔10の内径D1は、ネジボルト11の外径D2がφ30mmである場合、φ40mm程度であることが好ましい。上記したように、排気パイプ20として、外径D3がφ5mm程度の丸パイプを使用し、グラウト材注入用パイプ30として、外径D4がφ14mm程度の丸パイプを使用すると、そのままで隙間10dに挿入するのは困難である。これを解決するために、注入用挿入部30aの横断面形状は、ハート形状に加工されることが好ましい。図4及び図6(B)に示すように、このハート形状は窪み30cを有しており、この窪み30cは尖形形状を有している。但し、窪み30cの形状は、尖形形状に限らず、R形状等としてもよい。一方で、窪み30cを有しない側は尖形形状を有している必要はない。注入用挿入部30aは、ハート形状の窪み30cを有する側をネジボルト11の外周面11cに接するように且つハート形状の窪み30cを有しない側をアンカー孔10の内面10fに接するように、隙間10dに挿入される。
【0040】
図6(A)及び図6(B)に示すように、注入用挿入部30aの横断面形状は、高さL11が6.5mm程度、幅L13が18.0mm程度であることが好ましい。また、図3及び図6(A)に示すように、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bは、アンカー孔10の外側に配置され、注入用挿入部30aとの角度A2が15°程度となるように形成され、その長さL12は80mm程度である。注入用挿入部30aの長さL2は、50mm以下、約30mm以下、20mm以上50mm以下、20mm以上40mm以下、30mm以上50mm以下、又は30mm程度とすることが好ましく、30mmとすることが特に好ましい。注入用挿入部30aの長さL2と排気用挿入部20aの長さL3との差L4は、370mm~440mm程度となる。
【0041】
図3及び図4に示すように、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、アンカー孔10の孔口10a又はその付近においてネジボルト11の周囲に互いに離間してネジボルト11を挟むようにして配置され、ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように支持する。これらの排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aは、孔口10a又はその付近において、ネジボルト11を仮固定する。よって、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、アンカー筋支持具の機能も有している。
【0042】
排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、ネジボルト11を介して互いに対向して配置されることが好ましい。その際、排気用挿入部20aは、注入用挿入部30aよりも上方になるように配置されるのが好ましい。排気用挿入部20aは、アンカー孔10の横断面上端部に配置される一方で、注入用挿入部30aは、横断面下端部に配置されるのがより好ましい。
【0043】
図1に示すように、排気用ホース21は、排気用パイプ20と後述する真空ポンプ22とを繋ぐためのものである。排気用ホース21は、無機系グラウト材34の流入を確認できるように、透明であることが好ましい。排気用ホース21として、例えば、内径5mm、外径7mmの軟質ポリ塩化ビニル製のものが挙げられる。具体的には、例えば、三洋化成株式会社製の透明ホース(商品名)が使用できる。
【0044】
排気用ホース21は、排気用パイプ20側の第1ホース部21aと後述する真空ポンプ22側の第2ホース部21bとを具備している。第1ホース部21aの第1端部21cが排気用パイプ20の後端部20bに接合されており、第2ホース部21bの第2端部21dが真空ポンプ22の吸引口22aに接合されている。第1ホース部21aと第2ホース部21bとの間には圧力計付トラップ23が設けられている。圧力計付トラップ23は、無機系グラウト材34又はアンカー孔10に含まれる水もしくは埃が真空ポンプ22に入り込むことにより発生する故障を防止するためのものである。圧力計23aは、アンカー孔10の内部10bの減圧度を確認するために設けられている。圧力計付トラップ23として、例えば、蒸気配管の水抜き装置が使用される。
【0045】
圧力計付トラップ23の第1ホース部21a側にバルブ24が接続されている。バルブ24は、排気用ホース21中における空気排出の流れを制御するために設けられている。バルブ24として、例えば、汎用ボールバルブが用いられる。バルブ24は、ハンドル24aを矢印N1で示す方向に回すと閉じた状態から開いた状態となり、排気用パイプ20と真空ポンプ22とが繋がるように構成されている。バルブ24の第1端部24bは、第1ホース部21aの第2端部21eに接合されている。なお、バルブ24の位置は上記に限定されるものではなく、例えば、圧力計付トラップ23の第2ホース部21b側に接続してもよいし、第2ホース部21bにおいて真空ポンプ22の近傍に設けてもよい。
【0046】
真空ポンプ22は、排気用パイプ20からアンカー孔10の内部10bの空気を排出することにより減圧状態とするためのものである。この減圧状態は、無機系グラウト材34をアンカー孔10に注入するための吸引力を発生させる。この吸引力と後述するグラウト材注入ガン32により発生する加圧力とを併用して、無機系グラウト材34をアンカー孔10に注入する。真空ポンプ22として、具体的には、例えば、タスコ社製の油回転式真空ポンプTA150MX(型番)が使用できる。真空ポンプ22は、ガソリン式小型発電機25と電源供給ケーブル22bにより接続されており、電源の供給を受ける。
【0047】
図1に示すように、グラウト材注入用ホース31は、無機系グラウト材34を供給するためにグラウト材注入用パイプ30と後述するグラウト材注入ガン32とを繋ぐためのものである。グラウト材注入用ホース31として、例えば、内径φ14mm、外径φ21mmの高圧ホースが好ましい。具体的には、例えば、MORY TRADE社製のmorytradeラジエターホースシリコンチューブ(商品名)が使用される。
【0048】
グラウト材注入ガン32は、電動式であり、注入ガン本体32a、カートリッジ保持部32b、及び押し子32cを具備している。注入ガン本体32aは、モーター及びこのモーターを動かすための電池を具備しており、無機系グラフト材34をアンカー孔10に注入するための加圧力を発生させる。このモーターは、スイッチ32dを押すことにより作動する。カートリッジ保持部32bは、無機系グラウト材34を収容するカートリッジ33を保持するためのものである。押し子32cは、前記モーターの作動により、矢印N3で示す方向に動き、カートリッジ33に収容された無機系グラウト材34を後方から押し出すためのものである。カートリッジ33は、無機系グラウト材34を収容するためのもので、先端に無機系グラウト材34を噴射するノズル33aを具備している。ノズル33aは、グラウト材注入用ホース31の第2端部31bに接続されている。なお、グラウト材注入ガン33は、本発明でいうグラウト材注入装置の一例に相当する。
【0049】
無機系グラウト材34として、超速硬セメントと微細な骨材とを含む粉体をカートリッジ33内で混合した材料を使用する。具体的には、例えば、(株)ケイ・エフ・シー社製のSRインクジェットカプセル(商品名)が使用できる。無機系グラウト材34は、排気用挿入部20a、注入用挿入部30a、及び支持用磁石12により保持されたネジボルト11が配置されたアンカー孔10の内部10bに注入された後、硬化する。但し、支持用磁石12は、必要に応じて使用される。
【0050】
図1図3に示すように、ネジボルト11と排気用パイプ20とグラウト材注入用パイプ30とが挿入されたアンカー孔10の孔口10aは、アンカー孔10の内部10bの密閉性維持のため、パテ状接着剤13で埋められる。パテ状接着剤13として、例えば、エポキシ樹脂系接着剤が好ましく、具体的には、例えば、ショーボンド建設株式会社製のショーボンド(登録商標)#101(型番)が使用できる。
【0051】
[あと施工アンカー施工方法]
先ず、橋脚1にアンカー孔10を穿孔する工程(アンカー孔穿孔工程)を行う。図3に示すように、内径D1がφ40mm、穿孔長L8が460~470mmのアンカー孔10を穿孔するために、φ40mmのドリルビットの460~470mmを示す位置にマーキングを施す。ハンマードリル又はコアドリルにこのドリルビットをセットし、橋脚1の穿孔予定箇所にマーキングした位置まで横方向に穿孔する。
【0052】
次に、ネジボルト11をアンカー孔10に挿入する工程(アンカー筋挿入工程)を行う。図2及び図3に示すように、ネジボルト11の後端部11b近傍の外周部に支持用磁石12を取り付け、ネジボルト11をアンカー孔10の孔奥10c付近においてアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置し、挿入長さL6が450mm、間隙10gの長さL7が10~20mmになるように挿入する。
【0053】
次に、排気用パイプ20とグラウト材注入用パイプ30をアンカー孔10に挿入し、ネジボルト11を仮固定する工程(パイプ挿入工程)を行う。図2図4に示すように、アンカー孔10の内面10fとアンカー筋11の外周面11cとの間に形成された隙間10dに横断面形状がハート形状である注入用挿入部30aと横断面形状が円形である排気用挿入部20aとを孔口10aから挿入することにより取り付ける。
【0054】
排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとは、隙間10dにおいて互いに離間配置することによりネジボルト11を挟むようにして挿入する。その際、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとをネジボルト11を介して互いに対向するように配置するのが好ましい。また、その際、排気用挿入部20aは、アンカー孔10の横断面上端部に位置するように配置し、注入用挿入部30aを横断面下端部に位置するように配置する。排気用挿入部20aと注入用挿入部30aの取り付けにより、ネジボルト11をアンカー孔10の孔口10a付近においてアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように仮固定する。
【0055】
次に、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとによりネジボルト11を仮固定させた状態で、孔口10aをパテ状接着剤13により密閉する。
【0056】
次に、排気用パイプ20と真空ポンプ22とを接合し、排気経路2を組み立てる工程(排気経路形成工程)を行う。具体的には、図7に示すように、先ず、第2ホース部21bに圧力計付トラップ23及びバルブ24を接合した接合体に第1ホース部21aを接合して排気用ホース21を形成する。その際、バルブ24の第1端部24bに第1ホース部21aの第2端部21eを接合する。更に、排気用パイプ20の後端部20bに第1ホース部21aの第1端部21cを接合する。次に、第2ホース部21bの第2端部21dを真空ポンプ22の吸引口22aに接合する。次に、真空ポンプ22を電源供給ケーブル22bによりガソリン式小型発電機25に接続する。
【0057】
次に、このグラウト材注入用パイプ30とグラウト材注入ガン32とを接合し、グラウト材注入経路3を組み立てる工程(グラウト材注入経路形成工程)を行う。具体的には、図7に示すように、先ず、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bにグラウト材注入用ホース31の第1端部31aを接合する。次に、モルタル状態の無機系グラウト材34を調製する。次に、調製済みの無機系グラウト材34の入ったカートリッジ33をグラウト材注入ガン32のカートリッジ保持部32bにセットし、ノズル33aをグラウト材注入用ホース31の第2端部31bに接続する。
【0058】
次に、この真空ポンプ22によりアンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程(減圧工程)を行う。図8に示すように、真空ポンプ22のスイッチを入れて駆動させ、バルブ24のハンドル24aを矢印N1で示す方向に回すことにより、矢印N2で示すようにアンカー孔10の内部10bから空気を排出し、減圧状態とする。空気の排出を続け、アンカー孔10内の減圧度が、圧力計23aの読みで-0.07Mpa以下で安定した状態(真空状態)になっていることを確認する。
【0059】
次に、グラウト材注入ガン32による加圧と真空ポンプ22による減圧とを併用したアンカー孔10への無機系グラウト材34の注入工程(グラウト材加圧減圧併用注入工程)を行う。図9に示すように、グラウト材注入ガン32のスイッチ32dを押して押し子32cを矢印N3で示すように動かし、矢印N4で示すように加圧力を発生させ、アンカー孔10の内部10bへの無機系グラウト材34の注入を開始する。この時、上記したように、アンカー孔10の内部10bは真空ポンプ22の作動による減圧状態となっている。よって、減圧状態により発生する吸引力による注入作業と真空ポンプ22による減圧作業とを同時進行する。このように無機系グラウト材34を注入作業は、グラウト材注入ガン32により発生する加圧力と真空ポンプ22により発生する吸引力とを併用して行う。この際、グラウト材注入ガン32の駆動により発生する加圧力と減圧状態により発生する吸引力とは、協働して無機系グラウト材34を注入用挿入部30aからアンカー孔10の内部10bに注入する。
【0060】
次に、図10に示すように、加圧と減圧とを併用した注入工程において、注入作業がある程度進んだら、無機系グラウト材34が真空ポンプ22側の排気用ホース21に出て来るのをチェックする。無機系グラウト材34が排気用ホース21に出て来たのを確認した場合には、図11(A)及び図11(B)に示すように、ペンチ等(図示略)を用いて排気用パイプ20の後端部20bの一部を潰して閉鎖することにより排気遮断部20cを形成し、真空ポンプ22による排気を遮断する。更に、バルブ24のハンドル24aを矢印N5で示す方向に戻して閉じる。このようにして、真空ポンプ22によりアンカー孔10の内部10bを減圧状態とする減圧工程を終了する。
【0061】
次に、図11(A)及び図11(B)に示すように、グラウト材注入ガン32の押し子32cが矢印N3で示す方向に動かなくなったことを合図にして、ペンチ等(図示略)を用いてグラウト材注入用パイプ30の後端部30bの一部を潰して閉鎖することにより注入遮断部30cを形成し、無機系グラウト材34のこれ以上の加圧力による注入を遮断する。更に、図12に示すように、バルブ24の第1端部24bから第1ホース部21aの第2端部21eを取り外すことにより排気経路2から真空ポンプ22を切り離す。また、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bからグラウト材注入用ホース31の第1端部31aを取り外すことによりグラウト材注入経路3からグラウト材注入ガン32を切り離す。このようにして、グラウト材注入ガン32による加圧と真空ポンプ22による減圧とを併用した無機系グラウト材34の注入工程を終了する。
【0062】
次に、孔口10aから外部に出ている不要部材を除去し後処理する工程(後処理工程)を行う。図13に示すように、無機系グラウト材34が硬化したら、パテ状接着剤13を除去する。排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aをアンカー孔10の内部10bに残して、排気用パイプ20の後端部20b及び第1ホース部21a、グラウト材注入用パイプ30の後端部30bを除去する。そうすると、橋脚1からネジボルト11の先端部11aが突出した状態となる。
【0063】
[鋼製ブラケットの取り付け方法]
図14に示すように、あと施工アンカーXは、橋脚1に複数設けられ、例えば、橋桁落下防止用の鋼製ブラケット4の取り付けに使用される。鋼製ブラケット4は、背板40、支持板41、及び天板42を具備している。背板40は、鋼製ブラケット4を橋脚1に取り付けるための複数の取り付け穴40aを有している。取り付け穴40aは、ネジボルト11の先端部11aを通すためのものである。支持板41は、背板40の前面40bに複数設けられており、天板42を支持するためのものである。天板42は、背板40の上面40c及び支持板41の上面41aに載置されており、落下した橋桁を受けるための部分である。鋼製ブラケット4は、本発明でいう付属物の一例に相当する。
【0064】
先ず、複数のアンカー孔10を橋脚1に穿孔する。上記の施工方法によれば、複数のあと施工アンカーXの先端部11aは、略平行になるように形成される。よって、鋼製ブラケット4の取り付け穴40aの位置は、アンカー孔10を穿孔した段階で確定する。穿孔した複数のアンカー孔10の実際の配置に基づき、取り付け穴40aを形成する位置を示す図面を作成する。この図面に基づき型板版5を作製し、型板版5に従い背板40の正確な位置に取り付け穴40aを有する鋼製ブラケット4を制作する。複数のアンカー孔10は、橋脚1中の鉄筋の位置等により規則的に配置できない場合がある。型板版5は、これらのアンカー孔10の位置を確実に把握するため作製する。
【0065】
次に、上記の施工方法を用いて複数のあと施工アンカーXを施工し、施工が完了した複数のあと施工アンカーXのネジボルト11の先端部11aに螺合するナット14を用いて、鋼製ブラケット4を橋脚1に固定する。
【0066】
本実施形態によれば、あと施工アンカーXの施工に際し、アンカー孔10を穿孔し、グラウト材注入ガン32を駆動させることにより発生する加圧力と真空ポンプ22の駆動により発生する吸引力とを併用して、アンカー筋11の外周面11cとアンカー孔10の内面10fとの間に形成された隙間10dに向けて無機系グラウト材34を注入する。その結果、隙間10dに有機系グラウト材に比べて粘度の高い無機系グラウト材34を効率的に注入することができる。無機系グラウト材34を効率的に注入できることにより、あと施工アンカーXの施工の工期短縮を図ることができる。また、隙間10dを広くしなくとも無機系グラウト材34の注入作業を進めることができるので、アンカー孔10に充填される無機系グラウト材34の必要量を少なくすることができる。そのため、コスト低減を図ることができる。また、アンカー孔10を大きくしなくてもよいので、穿孔による橋脚1等の躯体の強度の低下を防止できる点でも有利である。
【0067】
また、アンカー孔10の内部10bを減圧する工程において、アンカー孔10の内部10bが所定の減圧度になっていることを条件に吸引力と加圧力とを併用して無機系グラウト材34を注入する工程を開始するので、当初から十分な吸引力と加圧力とにより無機系グラウト材34の注入作業を行うことができる。これにより、無機系グラウト材34のアンカー孔10への注入作業を効率的に進めることができるので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0068】
また、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程において、真空ポンプ22による減圧作業により発生させる減圧度は、-0.07Mpa以下である。このように真空に近い減圧状態により発生する強い吸引力とグラウト材注入ガン32による加圧力とを併用して無機系グラウト材34の注入作業を行う。そのため、無機系グラウト材34のアンカー孔10への注入作業を効率的に進めることができ、これにより、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0069】
また、ネジボルト11をアンカー孔10に挿入する工程において、ネジボルト11の後端部11bの近傍の外周面11cに支持用磁石12を取り付け、ネジボルト11をアンカー孔10の孔奥10c付近においてアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置するので、ネジボルト11の全周囲に途切れることなく無機系グラウト材34を注入することができる。これにより、橋脚1のような躯体へのネジボルト11の固定強度を大きなものとすることができる。
【0070】
また、排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30をアンカー孔10に挿入する工程において、排気用挿入部20aをアンカー孔10の孔奥10c又はその近傍まで挿入し、注入用挿入部30aを孔口10aに浅く挿入する。そのため、アンカー孔10の内部10bからの空気の排気を無機系グラウト材34の邪魔なく行うことができるので、吸引力と加圧力とを併用した無機系グラウト材34の注入を効率的に行うことができる。これにより、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0071】
また、排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aをアンカー孔10に挿入する工程において、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとによりネジボルト11を支持するので、孔口10aにおいては、支持用磁石12のような追加の部材を不要にしたり、削減したりすることができる。これにより、施工に必要な資材を少なくできるので、あと施工アンカーXの施工のコスト削減を図ることができる。
【0072】
また、ネジボルト11の支持は、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとによる仮固定により行う。作業員は、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとを取り付けると同時にネジボルト11を仮固定するので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0073】
また、ネジボルト11の支持は、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとをネジボルト11の外周面11c上において互いに離間配置することにより行う。そのため、ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置するので、ネジボルト11の全周囲に途切れることなく無機系グラウト材34を注入することができる。これにより、橋脚1等の躯体にネジボルト11を強固に固定することができる。
【0074】
また、排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとの離間配置は、ネジボルト11を介して互いに対向するように配置する。そのため、ネジボルト11の支持を確実に実施できる。これにより、位置精度の良好なあと施工アンカーXの施工を行うことができる。
【0075】
また、注入用挿入部30aを横断面形状がハート形状になるように形成すると、アンカー孔10の内面10fとネジボルト11の外周面11cとにフィットしやすいので、同じ寸法の隙間10dでも、注入用挿入部30aの横断面をより大きく取ることができる。これにより、有機系グラウト材に比べて粘度の高い無機系グラウト材34の注入を効率的に行うことができるので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。また、ハート形状は、丸パイプから比較的簡単に形成できるので、供給者の負担を軽減でき、コスト削減につながる。
【0076】
また、ネジボルト11と排気用挿入部20aと注入用挿入部30aとをアンカー孔10に挿入させた状態で、孔口10aをパテ状接着剤13により密閉する。そのため、孔口10aを密閉するための追加の特殊な部材を必要としないので、コスト低減を図ることができる。
【0077】
また、加圧と減圧とを併用した注入工程において、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程を並行して行い、無機系グラウト材34が排気用パイプ20から排気用ホース21に出て来たことを条件に真空ポンプ22による排気を停止し、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程を終了する。このように、適切な時期に、減圧状態による吸引力による注入を停止することにより真空ポンプ22への無機系グラウト材34の流入を防止する。これにより、真空ポンプ22の故障によるあと施工アンカー施工システムの障害を未然に防止することができる。また、無機系グラウト材34が排気用パイプ20から排気用ホース21に出て来たことを確認することにより、注入の停止時期を確実に知ることができるので、アンカー孔10への無機系グラウト材34の注入作業を効率的に進めることができる。
【0078】
また、アンカー孔10の内部10bを減圧状態とする工程終了後、無機系グラウト材34の加圧力による注入を停止し、加圧と減圧とを併用した無機系グラウト材34のアンカー孔10への注入作業を完了する。このように、注入作業を適切に行うことができるため、無機系グラウト材34の注入作業を効率的に進めることができる。これにより、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0079】
また、後処理する工程において、排気用パイプ20及びグラウト材注入用パイプ30の外部に突出した部分を除去する。これにより、アンカー孔10の内部10bに残る部材の量を最小限に留めることができるので、銅等の金属の使用量を軽減することができ、銅等の金属の資源保護を図ることができる。
【0080】
また、排気用パイプ20及び/又はグラウト材注入用パイプ30として薄く加工された銅製パイプを使用する。これにより、アンカー孔10の内部10bに残る部材の量を最小限に留めることができるので、銅等の金属の使用量を軽減することができ、銅等の金属の資源保護を図ることができる。
【0081】
また、アンカー孔10に排気用挿入部20a及び注入用挿入部30aを挿入する工程において、排気用挿入部20aから孔奥10cまでの長さL5は、10~50mmとされる。また、注入用挿入部30aの長さL2と排気用挿入部20aの長さL3との差L4は、十分に長く取られる。そのため、アンカー孔10に空隙を生じることなく、無機系グラウト材34が注入される。これにより、施工後の錆の発生を防止することができる。
【0082】
また、鋼製ブラケット4の取り付け穴40aは、ネジボルト11より2mm大きい程度に形成される。よって、取り付け穴40aの位置は、ネジボルト11の数が多いほど相当の精度が必要になる。ネジボルト11をアンカー孔10の横断面中央部10h又はその近傍に位置するように配置することにより、複数のあと施工アンカーXの先端部11aは、略平行になるように形成されるので、この精度を出すことができる。このことにより、アンカー孔10が穿孔された段階で鋼製ブラケット4の取り付け穴40aの位置が確定するので、その時点で、図面を起こし、それに基づき型板版5を作製して、鋼製ブラケット4の制作に取り掛かることができる。これにより、従来に比べ少なくとも1.5カ月程度の工期短縮を図ることができる。従来のあと施工アンカーXの施工方法においては、ネジボルト11を全部付けた段階でしか鋼製ブラケット4の取り付け穴40aの位置を決定できず、ネジボルト11の先端部11aのセンター位置の確定に時間がかかった。よって、ネジボルト11の先端部11aのセンター位置を計測して図面を起こすのがかなり遅くなってしまっていた。
【0083】
<第2の実施形態>
図15(A)及び図15(B)を参照して、本発明の第2の実施形態に係るあと施工アンカー施工方法及びそれに使用するあと施工アンカー施工システムYAを説明する。あと施工アンカー施工システムYAを用いたあと施工アンカー施工方法により、あと施工アンカーXAが施工される。あと施工アンカー施工システムYAにおいて、第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工システムYの構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素にはあと施工アンカー施工システムYと同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。また、あと施工アンカー施工システムYAを使用するあと施工アンカー施工方法において、第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工システムYを使用するあと施工アンカー施工方法と同様の部分に関しては、詳細な説明を省略する。
【0084】
図15(A)に示すように、あと施工アンカー施工システムYAは、グラウト材注入用パイプ30Aを有している点で第1の実施形態に係るあと施工アンカー施工システムYと相違している。グラウト材注入用パイプ30Aは、アンカー孔10に無機系グラウト材34を注入するための注入用挿入部30Aaを具備している。注入用挿入部30Aaは、アンカー孔10の孔口10a付近に取り付けられ、注入用挿入部30aと同様の材質を有している。
【0085】
図15(B)に示すように、注入用挿入部30Aaは、その横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成されている。湾曲扁平形状の凹状湾曲部30Adの湾曲度は、凸状湾曲部30Aeの湾曲度よりも大きく形成されている。湾曲扁平形状は、例えば、三日月形形状を含む。パイプ挿入工程において、注入用挿入部30Aaは、前記湾曲扁平形状の凹状湾曲部30Adがネジボルト11の外周面11cに接するように且つ前記湾曲扁平形状の凸状湾曲部30Aeがアンカー孔10の内面10fに接するように、隙間10dに挿入される。
【0086】
本実施形態のあと施工アンカー施工方法及びそれに使用するあと施工アンカー施工システムYAによれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態によれば、注入用挿入部30Aaを横断面形状が湾曲扁平形状になるように形成すると、アンカー孔10の内面10fとネジボルト11の外周面11cとにフィットしやすいので、同じ寸法の隙間10dでも、注入用挿入部30Aaの横断面をより大きく取ることができる。これにより、無機系グラウト材34の注入を効率的に行うことができるので、作業の省力化を図り、作業者の負担を軽減することができる。
【0087】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るあと施工アンカー施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムの具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0088】
本発明のあと施工アンカー施工方法、それを用いる付属物取り付け方法、及びそれらを実施するために用いられるあと施工アンカー施工システムは、アンカー孔10を躯体の下面から上方向に縦に穿孔する場合にも適用することができる。この場合は、下面の孔口10aから無機系グラウト材34を注入する。
【符号の説明】
【0089】
X あと施工アンカー
1 橋脚(躯体)
10 アンカー孔
10a 孔口(アンカー孔10の)
10b 内部(アンカー孔10の)
10c 孔奥(アンカー孔10の)
10d 隙間
10f 内面(アンカー孔10の)
11 ネジボルト(アンカー筋)
11a 先端部(ネジボルト11の)
11b 後端部(ネジボルト11の)
11c 外周面(ネジボルト11の)
12 支持用磁石(アンカー筋支持具)
13 パテ状接着剤
2 排気経路
20 排気用パイプ
20a 排気用挿入部(排気用パイプ20の)
21 排気用ホース
22 真空ポンプ
3 グラウト材注入経路
30,30A グラウト材注入用パイプ
30a,30Aa 注入用挿入部(グラウト材注入用パイプ30,30Aの)
30c 窪み(注入用挿入部30aの)
30Ad 凹状湾曲部(注入用挿入部30Aaの)
30Ae 凸状湾曲部(注入用挿入部30Aaの)
31 グラウト材注入用ホース
32 グラウト材注入ガン(グラウト材注入装置)
34 無機系グラウト材