(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089882
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】発泡ビーズの脱臭方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/22 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
C08J9/22 CER
C08J9/22 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204674
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】591080874
【氏名又は名称】日本ケミカル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】上山 昇
(72)【発明者】
【氏名】中岫 弘
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24
4F074AA32
4F074BA36
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA39
4F074BA40
4F074BA75
4F074CA38
4F074CA44
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074CC46Z
4F074DA33
(57)【要約】
【課題】有機発泡剤に由来する臭いが低減された発泡ビーズの脱臭方法を提供する。
【解決手段】発泡ビーズの脱臭方法は、有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズAを発泡させて発泡粒子Bを形成する発泡工程と、発泡粒子Bをサイロ9で熟成させて発泡ビーズCを得る熟成工程とを有し、サイロ9は、水平方向に延在する横型であり、熟成工程において、発泡粒子は、サイロ9の延在方向の一端側に設けられた供給口10から供給され、サイロ9の延在方向の他端側に設けられた取出口11から取り出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する発泡工程と、前記発泡粒子をサイロで熟成させて発泡ビーズを得る熟成工程とを有し、
前記サイロは、水平方向に延在する横型であり、前記熟成工程において、前記発泡粒子は、前記サイロの延在方向の一端側に設けられた供給口から供給され、前記サイロの延在方向の他端側に設けられた取出口から取り出されることを特徴とする発泡ビーズの脱臭方法。
【請求項2】
前記サイロは、該サイロ内の空気を外部へ排出する排気装置を有し、前記熟成工程は、前記排気装置によって前記サイロ内の空気を排気しながら前記発泡粒子を熟成させることを特徴とする請求項1記載の発泡ビーズの脱臭方法。
【請求項3】
前記排気装置は、前記サイロの前記一端側の側面に設けられることを特徴とする請求項2記載の発泡ビーズの脱臭方法。
【請求項4】
前記供給口は、前記サイロの前記一端側の側面に設けられ、前記排気装置は、前記供給口の直下に設けられることを特徴とする請求項3記載の発泡ビーズの脱臭方法。
【請求項5】
前記サイロ内の底面の全部または一部が、前記取出口に向けて下向きに傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の発泡ビーズの脱臭方法。
【請求項6】
前記発泡工程後、前記発泡粒子は40℃~80℃の温度で送粒され前記サイロに供給されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の発泡ビーズの脱臭方法。
【請求項7】
前記有機発泡剤は脂肪族炭化水素類であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の発泡ビーズの脱臭方法。
【請求項8】
前記発泡ビーズがクッション用ビーズであることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項記載の発泡ビーズの脱臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ビーズの脱臭方法に関し、特にクッションの充填材として用いられるクッション用ビーズの脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡スチロールなどの樹脂発泡体は、軽量性、緩衝性、成形加工性などに優れており、農水産物などの収容容器や、各種商品の緩衝材、建築用建材など、様々な産業分野で利用されている。樹脂発泡体は、発泡ビーズを用いて型内成形することで得られる。また近年では、発泡ビーズ自体も、クッションや枕などの充填材として利用され、需要が高まっている。
【0003】
クッションとしては、縫製された袋体の内部に、発泡ビーズが充填されてなるビーズクッションが知られている。この種のクッションは、使用時において、内部に充填されている発泡ビーズが体圧によって流動し、体形に沿うように変形して体圧を分散させる。その結果、体を包み込むようなフィット感が生まれ、心地良さを与えるものとなっている。
【0004】
発泡ビーズは、一般に、原料ビーズ(発泡性粒子)を発泡させる発泡工程と、得られた発泡粒子を熟成させる熟成工程を経て製造される(例えば、特許文献1参照)。この製造方法の概略について、
図4に基づいて説明する。
【0005】
図4において、まず発泡工程は、予備発泡機21を用いて行われる。原料ビーズには、例えば、ペンタンやブタンなどの有機発泡剤が含浸された樹脂ビーズが用いられる。予備発泡機21は、投入ホッパー22と、予備発泡槽23と、撹拌翼24と、該撹拌翼24を回転させるモータ25とを有している。投入ホッパー22から予備発泡槽内に投入された原料ビーズは、撹拌翼24で撹拌されながら、大気圧または加圧下において蒸気によって加熱されるなどして、所定の発泡倍率に発泡する。得られた発泡粒子は、予備発泡槽23の下部に設けられた排出口23aから排出ホッパー26に排出される。
【0006】
続く熟成工程では、発泡工程で得られた発泡粒子が、サイロ29に移されて熟成される。排出ホッパー26とサイロ29は送粒管27で接続されており、送粒管27の端部に設けられた送風機28によって、発泡粒子が配送される。
図4において、発泡粒子は、縦型のサイロ29の天井部に設けられた供給口30からサイロ内へ供給される。この発泡粒子には、空気だけでなく、有機発泡剤由来の有機ガス(ブタンガスなど)も含まれているため、サイロ29では、その有機ガスと空気を置換させるための熟成が行われる。熟成期間は1日~2日程度である。熟成後、サイロ29の底部に設けられた取出口31から発泡ビーズが取り出される。この発泡ビーズは、樹脂発泡体の原料や、クッションなどの充填材として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような従来の方法では、サイロから取り出された発泡ビーズには、未だ有機発泡剤由来の有機ガスが残存している場合がある。その場合、発泡ビーズから有機発泡剤に由来する臭いが生じてしまい、例えば、当該発泡ビーズを用いたクッションなどの製品にも影響を与えるおそれがある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、有機発泡剤に由来する臭いが低減された発泡ビーズの脱臭方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発泡ビーズの脱臭方法は、有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する発泡工程と、上記発泡粒子をサイロで熟成させて発泡ビーズを得る熟成工程とを有し、上記サイロは、水平方向に延在する横型であり、上記熟成工程において、上記発泡粒子は、上記サイロの延在方向の一端側に設けられた供給口から供給され、上記サイロの延在方向の他端側に設けられた取出口から取り出されることを特徴とする。
【0011】
なお、本発明において、サイロの延在方向の一端側とは、該サイロの中央部よりも延在方向の一端に近い側に存在する部分(一端部を含む)をいい、サイロの延在方向の他端側とは、該サイロの中央部よりも延在方向の他端に近い側に存在する部分(他端部を含む)をいう。
【0012】
上記サイロは、該サイロ内の空気を外部へ排出する排気装置を有し、上記熟成工程は、上記排気装置によって上記サイロ内の空気を排気しながら上記発泡粒子を熟成させることを特徴とする。
【0013】
上記排気装置は、上記サイロの上記一端側の側面に設けられることを特徴とする。
【0014】
上記供給口は、上記サイロの上記一端側の側面に設けられ、上記排気装置は、上記供給口の直下に設けられることを特徴とする。
【0015】
上記サイロ内の底面の全部または一部が、上記取出口に向けて下向きに傾斜していることを特徴とする。
【0016】
上記発泡工程後、上記発泡粒子は40℃~80℃の温度で送粒され上記サイロに供給されることを特徴とする。
【0017】
上記有機発泡剤は脂肪族炭化水素類であることを特徴とする。
【0018】
上記発泡ビーズがクッション用ビーズであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発泡ビーズの脱臭方法は、有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する発泡工程と、該発泡粒子をサイロで熟成させて発泡ビーズを得る熟成工程とを有し、サイロは、水平方向に延在する横型であり、熟成工程において、発泡粒子は、サイロの延在方向の一端側に設けられた供給口から供給され、サイロの延在方向の他端側に設けられた取出口から取り出されるので、サイロ内において発泡粒子と空気とが接触する面積が増大し、発泡粒子に残存する有機ガスと空気との置換を促進させることができる。これにより、有機発泡剤に由来する臭いが低減された発泡ビーズを得ることができる。
【0020】
サイロは、サイロ内の空気を外部へ排出する排気装置を有し、熟成工程は、排気装置によってサイロ内の空気を排気しながら発泡粒子を熟成させるので、発泡粒子が新しい空気と接触する機会を増やすことで、発泡粒子に残存する有機ガスと空気との置換をより促進させることができる。
【0021】
また、排気装置は、サイロの一端側の側面に設けられるので、例えば、サイロ内に堆積した発泡粒子の間をぬって空気が排出されやすく、発泡粒子に残存する有機ガスを除去しやすくなる。また、サイロ内の空気の流れが生じやすくなる。
【0022】
供給口は、サイロの一端側の側面に設けられ、排気装置は、供給口の直下に設けられるので、空気の流れによって、発泡粒子がサイロに投入される際に脱水などが行われやすくなり、さらに、気化した比重が重い有機ガス(ブタンガスなど)を効率的に排出でき、臭いを低減しやすくなる。
【0023】
サイロ内の底面の全部または一部が、取出口に向けて下向きに傾斜しているので、発泡粒子が取出口に向かって移動しやすく取り出し性を確保しつつ、有機発泡剤に由来する臭いを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の発泡ビーズの脱臭方法の一例を示す概略図である。
【
図4】従来の発泡ビーズの脱臭方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の発泡ビーズの脱臭方法は、(1)有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する発泡工程と、(2)発泡粒子をサイロで熟成させて発泡ビーズを得る熟成工程とを有する。
【0026】
上記脱臭方法の原料となる樹脂ビーズ(発泡性粒子)は、周知の方法で、熱可塑性樹脂に有機発泡剤を含浸させることで得られる。例えば、スチレンモノマーを水中で撹拌して重合させ、そこへ有機発泡剤を加えることで、有機発泡剤が含浸されたポリスチレン樹脂ビーズが得られる。
【0027】
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;これらの共重合体などを用いることができる。また、熱可塑性樹脂として、複数の樹脂を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を組み合わせて用いることができる。
【0028】
有機発泡剤としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類や、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、エチルクロライド、メチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類などが挙げられる。脂肪族炭化水素類は、それ自体が発泡ビーズに残存しやすく、有機ガスとして不快な臭いの原因となりやすいが、本発明の脱臭方法によれば、脂肪族炭化水素類に起因する臭いの低減も好適に図ることができる。
【0029】
樹脂ビーズは、熱可塑性樹脂および有機発泡剤以外の添加剤として、気泡調整剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤などをさらに含有してもよい。本発明に用いる樹脂ビーズとしては、市販品を用いることもできる。
【0030】
本発明の発泡ビーズの脱臭方法の一例を
図1に基づいて説明する。本発明の脱臭方法は、特に臭いが課題となりやすい充填材用ビーズ(特にクッション用ビーズ)に有用である。成形用ビーズにも臭いが残存するため、本脱臭方法を適用可能であるが、成形用ビーズは、最終的に型内成形で例えば80℃程度まで加熱されることから、樹脂発泡体(完成品)には臭いは無い。
【0031】
充填材用ビーズとしては、近時需要が増加しつつあるクッション用ビーズが挙げられる。ここで、クッション用ビーズは、大別して、平均粒径が0.5mm以上1.0mm未満の小粒子タイプと、平均粒径が1.0mm以上3.0mm以下の大粒子タイプがある。なお、平均粒径はレーザー回析・散乱法で測定される値である。小粒子タイプは表面積が小さく、常温(15℃~25℃)の風乾で乾燥させやすいため、脱臭が行いやすい。一方、大粒子タイプは、粒子の表面積が大きく乾燥させにくいため、臭いが粒子の表面に付着しやすい。本発明の脱臭方法によれば、このような大粒子タイプの発泡ビーズであっても脱臭することができる。
【0032】
(1)発泡工程
この工程では、上述した樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する。本発明で用いる発泡方法は特に限定されず、周知の方法を採用することができる。例えば、水蒸気などによって加熱し、樹脂ビーズ内に溶解している有機発泡剤を膨張させ発泡させる方法(加熱発泡)や、高圧雰囲気下から低圧雰囲気下に一気に開放し、樹脂ビーズ内に溶解している有機発泡剤を膨張させ発泡させる方法などが挙げられる。
【0033】
なお、発泡条件は、所定の発泡倍率(例えば30倍~70倍)まで発泡させることができる条件であればよく、加圧条件や加熱条件などは特に限定されない。発泡倍率は、樹脂ビーズの投入量と加熱時間などで確定される。
【0034】
図1に示す発泡工程では、予備発泡機1を用いて加熱発泡を行う。予備発泡機1は、投入ホッパー2と、予備発泡槽3と、撹拌翼4と、該撹拌翼4を回転させるモータ5とを有している。投入ホッパー2から予備発泡槽内に樹脂ビーズAを投入した後、撹拌翼4で撹拌しながら、予備発泡槽3に蒸気または蒸気と空気の混合体を導入して一定の条件で加熱し続け、樹脂ビーズAが所定の発泡倍率に達した後、加熱を停止する。例えば、蒸気圧で80℃~95℃で加熱させる。そして、発泡粒子Bを、予備発泡槽3の下部に設けられた排出口3aから排出ホッパー6に排出される。
【0035】
排出直後は、発泡粒子Bはブロッキングしている。これを、例えば排出ホッパー6内にて撹拌機(図示省略)で撹拌しながら、送風機(図示省略)のエアーなどによって送粒管7へ配送する。なお、発泡粒子Bの粒子温度は、予備発泡槽3内では、80℃程度であるが、排出直後には、常温撹拌と送風機のエアーなどによって50℃~60℃程度に低下する。
【0036】
(2)熟成工程
この工程では、発泡粒子Bをサイロ9で熟成させながら乾燥して発泡ビーズCを得る。排出ホッパー6とサイロ9は送粒管7で接続されており、例えば、送粒管7の排出ホッパー側の端部には圧縮空気を送る送風機8が設けられている。送粒管7に導入された発泡粒子Bは、圧縮空気によって浮遊させつつ空送される。なお、発泡粒子Bの配送方法は、
図1の方法に限定されるものではない。
【0037】
発泡粒子Bは、常温の3~4倍の温度で送粒されることが好ましい。具体的には、40℃~80℃(より好ましくは50℃~60℃)でサイロ9に送粒されることが好ましい。排出ホッパー6から送粒管7へ移動させる時点での発泡粒子Bの粒子温度は50℃~60℃程度であり、この温度を維持するようにしてサイロ9へ供給される。排出ホッパー6から送粒管7へ移動させる時点では発泡粒子Bは、蒸気の水分で湿潤の状態である。湿潤の状態のまま、サイロで常温乾燥されれば、水分中に含まれている臭いの成分が粒子の表面に付着しやすくなる。そのため、常温よりも高い温度で送粒することで、上述の大粒子タイプの発泡ビーズであっても、サイロ9へ投入されるまでに(例えばサイロ9へ投入直前までに)完全脱水させやすくなり、臭いの低減を図りやすい。
【0038】
上記のように、高温で送粒を行う目的は、湿潤の状態の発泡粒子を一挙に気化・乾燥させるためである。例えば、後述するように、サイロ9の供給口10の近傍に換気扇などの排気装置12を設けることで、外部へ空気の流れをつくり、サイロ9の投入直前で、発泡粒子Bの脱水と脱臭を同時に行うことができる。送粒してきた発泡粒子は高温であり、常温の空気の流れによって気化が促進されることから、排気装置12を設ける構成は、脱水と脱臭の面で好ましい。
【0039】
送粒管7は、供給口10まで断熱構造であることが好ましい。例えば、送粒管7として断熱層を有する断熱管を用いてもよく、また、送粒管7の外周を断熱材で覆うなどしてもよい。また、送風機8は、ヒータ機能を備えるなどして、40℃~80℃程度の温風を送風可能であることが好ましい。
【0040】
図1に示すように、サイロ9は、水平方向に延在する横型であり、X方向に延在した略直方体形状である。
図1のX方向が延在方向である。サイロ9において、延在方向の一端側には供給口10が設けられており、延在方向の他端側には取出口11が設けられている。熟成工程では、一端側の供給口10から発泡粒子Bが供給され、他端側の取出口11から発泡ビーズCが取り出される。発泡粒子Bは、上述したように、高温で送粒することにより、高い温度状態でかつ脱水した状態でサイロ9へ投入されることが好ましい。なお、熟成工程では発泡粒子Bの冷却や更なる乾燥も行われる。
【0041】
ここで、従来の熟成工程は、
図4に示したようにサイロ29を用いて行われていた。
図4のサイロ29は、鉛直方向に延在する縦型であり、サイロ29の上部の供給口30から供給された発泡粒子は、縦型のサイロ内に堆積して熟成される。そして、サイロ29の底部の取出口31から発泡ビーズとして取り出される。
【0042】
これに対して、本発明の脱臭方法では、
図1に示すように、横型のサイロ9を用いることで、従来のサイロに比べて、サイロ内において発泡粒子が空気と接触する面積が増大し、発泡粒子に残存する有機ガスと空気との置換が促進されやすい。これにより、発泡ビーズCの臭いをより低減させることができる。また、この方法によれば、臭いの除去を早期に図れることから、熟成期間の短縮化も期待できる。
【0043】
熟成工程の運転例としては、サイロ9に、その内容積に対して10~50%程度の空間を残して発泡粒子Bが供給される。その後、発泡粒子Bは、サイロ内で24時間~48時間程度、熟成される。この熟成工程は、後述する排気装置12でサイロ内の空気を排気しながら行うことが好ましい。なお、熟成工程は、バッチ式に限らず、連続式で行ってもよい。例えば、一定時間サイクルで、発泡粒子の一部投入と発泡ビーズの一部取り出しを繰り返して、連続的に行ってもよい。連続式の場合、サイロ内の発泡粒子は一端側から他端側に向かって略水平方向に徐々に移動していく。連続式の場合も、投入された発泡粒子はサイロ内において24時間~48時間程度、熟成されるようにすることが好ましい。
【0044】
サイロの構成について、
図2を用いて更に説明する。
図2は、
図1のサイロの断面概略図であり、熟成期間中の状態を示している。サイロ9の材質には金属材や樹脂材などを用いることができる。サイロ9の内容積は、特に限定されないが、例えば100m
3~500m
3である。
【0045】
図2に示すように、供給口10は、サイロ9の延在方向の一端部である側面9aに設けられている。この場合、発泡粒子はサイロ9に対して横から供給される。一方、取出口11は、サイロ9の延在方向の他端側に設けられおり、具体的には、側面9aとは反対側の端部である側面9b寄りの底部9cに設けられている。取出口11には、開閉可能な蓋などが設けられている。
【0046】
サイロ9の内部の底面13の一部は、取出口11に向けて下向きに傾斜している。このように傾斜していることにより、横型のサイロ9としながらも、発泡粒子が取出口11に向かって移動しやすくなる。
【0047】
また、サイロ9は、内部の空気を外部へ排出する排気装置12を有することが好ましい。
図2では、排気装置12は、側面9aにおいて供給口10の直下に設けられている。これにより、外部へ空気の流れをつくり、発泡粒子がサイロ9に投入される直前で、該発泡粒子の脱水と脱臭を同時に行うことができる。また、気化した有機ガスは比重が重いので、供給口10の直下の排気装置12によって、その有機ガスを効率的に排出することができる。
【0048】
サイロ9において、排気装置12が設置される高さは、特に限定されないが、例えば、サイロ内で空気の流れを生じやすいことから、発泡粒子が堆積しない高さ領域に設けられることが好ましい。例えば、サイロ9の一端側の側面9aの高さに対して1/3以上の高さ領域に設けられる。この高さ領域は、側面9aの高さに対して1/2以上の高さ領域であってもよく、2/3以上の高さ領域であってもよい。排気装置12によって、発泡粒子が冷めないうち(高い温度状態のうち)に風を当てることで、有機ガスを除去しやすくなる。
【0049】
なお、排気装置12が、発泡粒子が堆積する高さ領域に設けられる場合であっても、発泡粒子の間をぬって空気が排出されることになるため、発泡粒子に空気を多く接触させることができる。その結果、発泡粒子に残存する有機ガスを除去しやすくなると考えられる。
【0050】
排気装置12としては、例えばプロペラファンやシロッコファンなどの排気ファン(換気扇)を用いることができる。
【0051】
サイロ9の横寸法L(延在方向に沿った長さ)は、例えば5m~30mであり、好ましくは10m~30mである。また、横寸法Lは、縦寸法(鉛直方向に沿った長さ)よりも大きく、縦寸法と横寸法Lとの比は、例えば(1:2)~(1:6)であり、好ましくは(1:2.5)~(1:5)である。
【0052】
図3には、サイロの他の形態の断面概略図を示す。
図3(a)に示すサイロ9Aは直方体状であり、サイロ内に底部材14が設けられている。これにより、サイロ内の底面の一部が、取出口11に向けて下向きに傾斜した構成になっている。なお、
図3(a)では、サイロ内の底面13は平面と傾斜面で構成される。
【0053】
また、
図3(b)に示すサイロ9Bは、供給口10および取出口11の位置が、
図2に示したサイロ9の位置とは異なっている。サイロ9Bにおいて、供給口10は、延在方向の一端側に設けられており、具体的には、側面9a寄りの天井部9dに設けられている。また、側面9aの上部の供給口10の近傍に排気装置12が設けられている。また、取出口11は、延在方向の他端部である側面9bに設けられている。サイロ9Bでは、サイロ内の底面13が傾斜面のみで形成されており、底面13の全部が一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、取り出し性に優れる。なお、サイロ内の底面13を傾斜角度が異なる複数の傾斜面で形成してもよい。
【0054】
本発明に用いられるサイロの形態を上記
図2~
図3で示したが、これらの形態における各構成(供給口や取出口の配置など)は、互いに組み合わせることができる。また、サイロは、上記
図2~
図3の形態に限定されず、例えば、サイロに、該サイロの内外を貫通する通気孔を設けるなどしてもよい。この場合、例えば、排気装置が設けられる位置とは反対側の位置(例えば
図2では側面9b)に通気孔を設けてもよい。
【0055】
本発明の脱臭方法は、上記
図1~
図3の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の脱臭方法によって脱臭された発泡ビーズは、有機発泡剤に由来する臭いを低減できるので、発泡ビーズの脱臭方法として広く用いることができる。特に、ビーズクッションなどの製品の充填材として用いられる発泡ビーズの脱臭方法に好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 予備発泡機
2 投入ホッパー
3 予備発泡槽
4 撹拌翼
5 モータ
6 排出ホッパー
7 送粒管
8 送風機
9、9A、9B サイロ
10 供給口
11 取出口
12 排気装置
13 底面
14 底部材
A 樹脂ビーズ
B 発泡粒子
C 発泡ビーズ