(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089890
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】低放射寝具構造、低放射寝具及び低放射マット
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
A47G9/02 F
A47G9/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215572
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】512043360
【氏名又は名称】日本遮熱株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】野口 彩乃
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102BA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、軽量で温かい布団や毛布或いは低放射マット等寝具を提供するものである。
【解決手段】 布団や毛布の表面の表皮にアルミ蒸着層を設け、アルミ蒸着層の低放射性能を利用し内部を保温するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具に構築される低放射寝具構造で有って、
少なくても布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層の何れか片面にアルミ蒸着層を設け、前記アルミ蒸着層が布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層よりも外皮側に形成されている事を特徴とする低放射寝具構造
【請求項2】
着色層が、前記アルミ蒸着層より外皮側に形成されている事を特徴とする請求項1に記載の低放射寝具構造
【請求項3】
請求項1から2の何れか一項に記載の低放射寝具構造を備える事を特徴とする低放射寝具及び低放射マット
【請求項4】
請求項3の低放射寝具及び低放射マットで、長手方向の平面の片側に頭部が入る様にアール形やU字形等に切込みを設けた低放射寝具及び低放射マット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団や毛布の表面の外皮にアルミ蒸着層を設け、軽量で温かい寝具を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
二枚の布地の間に中綿を入れ、中間の仕切り布地によって中綿を上下二層に区分し、布地の周縁部を縫製した掛け布団で、一方の側布地がその外側の中綿層と共に比較的大きく且つ独立して連続する多数の山形を成す様にキルテイング縫製され、他方の側布地が平坦な状態に形成されている。このキルテイング縫製側にアルミ蒸着した遠赤外線反射薄膜を設けた不織布を用いた掛け布団がある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとしている課題】
【0004】
その為次のような問題があった。
布団の布地の間にアルミ蒸着層を設け、保温性を高める事はこれ迄実施されてきた。しかし、アルミ蒸着層等反射材は反射性能や放射性能が高い事が重要で、これらの性能を利用するには反射材の少なくても片面に反射や放射の為の空間が必要である。
若し、反射材と他の素材等が接触して使用されるなら、それは伝導熱の伝達に繋がる。反射材は熱伝導率が高く、この様な使用方法であると却って熱が伝わりやすく、断熱性能は大きく低下する。
本発明は、これらの問題を解決する為になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
寝具に構築される低放射寝具構造で有って、少なくても布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層の何れか片面にアルミ蒸着層を設け、前記アルミ蒸着層が布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層よりも外皮側に形成されている事を特徴とする低放射寝具構造である。
【0006】
布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層の何れか片面にアルミ蒸着層を設け、前記アルミ蒸着層が布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層よりも外皮側に形成され、着色層はその外側に形成されている事を特徴とする低放射寝具構造である。
【0007】
布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層の何れか片面にアルミ蒸着層を設け、前記アルミ蒸着層が布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層よりも外皮側に形成され、着色層は更にその外側に形成されている事を特徴とする低放射寝具及び低放射マットである。
【0008】
布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層の何れか片面にアルミ蒸着層を設け、前記アルミ蒸着層が布団や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層よりも外皮側に形成され、更にその外皮側に着色層が形成されている低放射寝具及び低放射マットで、長手方向の平面の片側に頭部が入る様にアール形やU字形等に切込みを設けた低放射寝具及び低放射マットである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】布の外皮にアルミ蒸着層を設けた布団の断面図を示している。
【
図2】長手方向の片側に、首が入る様に台形状に切込みを設けた布団の平面図である。
【
図3】布団の上に載せた低放射マットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。
冬、布団1に入ると寒さを感じるが、やがて体温によって布団1が暖められ、しかもその熱は中綿3等に保温され少しずつ温かさを感じる。
その状態を維持しながら朝まで就寝出来れば良いが、時々寒さを感じ目が覚めてトイレに行く事も多い。この傾向は、年齢と共に増える事になる。
夜、目が覚めてしまう原因は種々あるようだが、就寝環境も大きく影響する。例えば、布団1の中の温度は32~34℃、湿度は50%前後が良い環境であると言う報告がある。
若し、この状態で就寝するとしても室温は精々23℃前後、布団1との温度差は10℃以上になる。即ち、布団1からは絶えず室内側に向って熱が伝達されている事になる。この熱の中で最も大きなものが輻射熱で有るが、布団1等の放射率は95%もある。布団1の温度を維持しようとすると、その分だけ体から布団1に熱を奪われている事になり体温は低下する。
【0011】
冬の寒さ対策として、電気毛布等が良く使用されている。
電気毛布は予めスイッチを入れておけば、寝た瞬間から暖かさが冷たい肌に伝わり心地よい感じがする。目が覚めている間は、温度調整すればその心地よさも連続して維持する事が出来る。
しかし、時間が経つに連れ体温は低下する。すると、体温との温度差が出来、熱くて布団1をはいだりし、いつの間にか心地よさはなくなってしまう。
即ち、体温以上の熱源を体の外側から供給しても、熱バランスが崩れ快適な就寝は出来ない事もある。
【0012】
本発明は、寝具に構築される低放射寝具構造で有って、少なくても布団1や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層6の何れか片面にアルミ蒸着層4を設け、前記アルミ蒸着層4が布団1や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層6よりも外皮側に形成されている事を特徴とする低放射寝具構造である。
【0013】
布団1の内部にアルミ蒸着層4を設けたものは販売されているが、本発明はこれとは全く逆で布団1の外皮側にアルミ蒸着層4が形成されている。
毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層6の場合は、何れか片面にアルミ蒸着層4が形成されているが、勿論使用する時はアルミ蒸着層4が大気側になる様にする。
【0014】
一般的に、布団1や毛布は厚い方が空気を沢山含む事が出来、断熱性が高いと言われている。しかし、本発明はアルミ蒸着層4が布団1や毛布の屋外側の表皮に施工されている事が重要で、布団1や毛布の厚みや素材には全くこだわらない。
【0015】
アルミ蒸着層4は、一般的な真空蒸着等で施工するが、特に工法等には拘らない。高純度のアルミ蒸着層4は輻射熱に対して高反射率の素材で、多くの所で使用されている。
但し、その性能を十分発揮させるにはアルミ蒸着層4の低放射性能を利用するのが効率的で、接触する物が無く大気に接している事が最も好ましい。一般的に、アルミ蒸着層4単体の反射率は95%~98%と高い値を持っている。
更に、アルミ蒸着層4は透湿性が高く、人体から出る水蒸気を屋外に排出出来るので布団1に湿気が溜まりにくいのも特徴である。
【0016】
本発明は、布団1や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層6の何れか片面にアルミ蒸着層4を設け、前記アルミ蒸着層4が布団1や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層6よりも外皮側に形成され、着色層9は更にその外側に形成されている事を特徴とする低放射寝具構造である。
【0017】
布団1や毛布或いは低放射マットは殆ど室内で使用するが、アルミ蒸着層4は反射率も95~98パーセントと高く証明等が当たるとピカピカして違和感がある。そこで、アルミ蒸着層4の屋外側に着色層9を設けたり、素材に着色したりして色付けをしている。
その結果、着色層9をアルミ蒸着層4の外側に形成した場合、放射率は5~75パーセント迄低下するが、布団1の95パーセントと比較したらその性能は高いので問題は無い。
【0018】
布地2の表皮にアルミ蒸着層4を形成した布団1のメカニズムを説明する。
この場合、掛け布団1に施工した場合と敷布団1に施工した場合では、全く逆の性能を利用するので別々に説明する
先ず、掛け布団1に使用した場合を説明する。
この場合、熱は体から室外側に向って移動するのでアルミ蒸着層4を屋外側に設け低放射性能を利用する。
体から布団1に伝達される熱は、伝導熱、対流熱、輻射熱の3つの形態で伝達されるが、布団1の場合の主たる熱移動は伝導熱と輻射熱である。布団1は、綿や羽毛等を使用し厚みを持たせ、熱の伝わりにくい空気を断熱媒体として利用するのが特徴である。空気を断熱に使うと言う事は空間が多い事を意味し、輻射熱の影響も大きいと考えられる。
体から布団1への熱移動は、接触により伝導熱の形態をとって中綿3の繊維層6や空気層7に伝達、やがて布団1の外側の布地2まで熱移動する。一方、布地2は密度が低い為、体から放射される輻射熱は体側の布地2を透過し、直接外側の布地2まで熱移動、外側の布地2で発熱するものもある。
この様にして外側の布地2に伝達された熱は、低温の室内の空気に伝達されることになるが、この時最も大きな熱移動が輻射熱の放射である。布地2の放射率は、95パーセントにもなり、忽ちこの布地2表面から多くの熱が奪われるのである。
本発明は、この布地2の表面の屋外側にアルミ蒸着層4が設けてある。
アルミ蒸着層4は、輻射熱の放射率が5~10パーセント程度で、この層の表面からは輻射熱は殆ど放射されない状況にする事が出来る。
一方布団1の内部では、中綿3を透過してきた輻射熱の多くはこのアルミ蒸着層4で反射され、再び中綿3側に戻され布団1の保温のための熱となる。更に、中綿3から屋外側に移動しようとする伝導熱もこのアルミ蒸着層4にて阻止され中綿3内に滞留する。この様に、アルミ蒸着層4から屋外側に伝達される熱は非常に少なく、布団1は確実に保温された状態になる。
又、体温から伝達される熱は体温以上にはならず、心地よい温度環境が得られる。
もう一つ、布団1だけの場合とアルミ蒸着層4使用とでは大きな違いがある。布団1は、中綿3内の空気の温度が外側に向って徐々に低下していくのに対し、アルミ蒸着層4を設けるとアルミ蒸着層4の表面に温度境界が出来、アルミ蒸着層4と体との間の空間の温度はほぼ同じである。即ち、この空間では体とほぼ同じ温度の熱が滞留していて熱の移動が少なく、非常に心地よい環境を作る出すことが出来る。
次に、敷布団1に使用した場合を説明する。
この場合、熱は体温から床方向に移動するのでアルミ蒸着層4は人体側にして使用する。即ち、この場合は輻射熱の反射性能を利用する。
ただ、アルミ蒸着層4と体が接触すると、熱伝導率の高いアルミ蒸着層4から人体に伝導熱が多く伝達され逆効果になる。そこで、密度の低い敷毛布を双方の間に使用し、輻射熱が発生できる様な空間を作る事が好ましい。
この場合、体から放射される輻射熱は、敷毛布を透過しアルミ蒸着層4の表面で反射され再び体に戻される。自分の熱が戻されるので、非常に心地よい温度と言える。
勿論、体からの伝導熱もあるが、体とアルミ蒸着層4の間にある密度の低い敷毛布がこれを阻止するので、温かい環境を作る事が出来る。
【0019】
本発明は、布団1や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層6の何れか片面にアルミ蒸着層4を設け、前記アルミ蒸着層4が布団1や毛布、或いは低密度の樹脂シートや繊維層6よりも外皮側に形成され、更にその外側に着色層9が形成されている低放射寝具及び低放射マット8で、長手方向の平面の片側に頭部が入る様にアール形やU字形等に切込みを設けた低放射寝具及び低放射マットをも提案する。
【0020】
本提案は、表面にアルミ蒸着層4を設けた布団1や毛布の平面部分のどちらか一方に、頭部の両側の布団1は肩迄掛かり、頭部は首くらいまで掛かる様にアール型やU字型等切り欠きの有る寝具である。
布団1や毛布は首まで掛けて寝るのが一般的だが、肩が寒いのは誰しも経験している。そこで、本提案では、布団1や毛布の一部を肩迄伸ばして製作している。勿論、布団1や毛布の屋外側にはアルミ蒸着層4が設けてあるので、その突き出た部分も温かいのは言うまでもない。
【0021】
[遮熱試験1]
身体の上に市販の厚み3ミリメートル毛布を置き、その上にアルミ蒸着層をもったTHB-JP3(日本遮熱株式会社製)という厚さ3ミリメートルの遮熱材を置いた。THB-JP3は、着色層、アルミ蒸着層、ポリエステル綿の構成である。重さは、80g/m2、反射率は73~79%である。
室温は、21℃であった。
10分後、毛布の表面とJP3の表面をサーモグラフィーで温度測定した。
【0022】
[結果1]
両者の温度は、以下です。
表面温度は、着色層が3.2℃も低い温度で有った。
▲1▼着色層表面温度:21.7℃
▲2▼毛布の表面温度:24.9℃
【0023】
[考察1]
イ)内部から外部に向かって放射される温度は、低い方が保温性能は高い。本試験では、着色層が3,2℃も低く保温性能が良い事を示している。
【発明の効果】
【0024】
本発明の寝具用布団やマットを使用すると、体の芯まで温まる気がすると言う話をよく聞く。又、高齢者から、夜間のトイレの回数が半分になったとの話が非常に多くある。
【0025】
寝具用低放射マットは、密度が非常に低いので収縮して保管でき、緊急避難用に保温マットとしても利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 布団
2 布地
3 中綿
4 アルミ蒸着層
5 切込み
6 繊維層
7 空気層
8 低放射マット
9 着色層