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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089923
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】異常検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230621BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144338
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021203778
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 さやか
(72)【発明者】
【氏名】内山 泰生
(72)【発明者】
【氏名】山本 優
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器の異常を精度よく検知可能な、設備機器の異常検知システムを提供する。
【解決手段】異常検知システム1は、設備機器側装置2と、異常検知装置3と、を備え、設備機器側装置2は、共振周波数が、設備機器が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定され、設備機器が発する振動によって発電する振動発電センサ21と、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値に到達するたびに、当該電力量を消費して、信号を送信する送信部25と、を備え、異常検知装置3は、信号を受信する受信部31と、信号を受信する時間間隔を基に、設備機器の稼働状態が異常であるか否かを診断する診断部34と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備機器の異常を検知する異常検知システムであって、
前記設備機器に取り付けられる設備機器側装置と、異常検知装置と、を備え、
前記設備機器側装置は、
共振周波数が、前記設備機器が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定され、前記設備機器が発する振動によって発電する振動発電センサと、
前記振動発電センサで得られた電力量が電力閾値に到達するたびに、当該電力量を消費して、信号を送信する送信部と、
を備え、
前記異常検知装置は、
前記信号を受信する受信部と、
前記信号を受信する時間間隔を基に、前記設備機器の稼働状態が異常であるか否かを診断する診断部と、
を備えることを特徴とする設備機器の異常検知システム。
【請求項2】
前記設備機器が正常に稼働する際の前記時間間隔が正規分布するとみなし、当該正規分布の平均値に標準偏差を基にした値を減算することで下限閾値が設定され、前記平均値に前記標準偏差を基にした前記値を加算することで上限閾値が設定され、
前記診断部は、前記信号を受信する前記時間間隔が、前記下限閾値より小さいか、前記上限閾値より大きい場合に、前記設備機器の稼働状態が異常であると診断する
ことを特徴とする請求項1に記載の設備機器の異常検知システム。
【請求項3】
前記診断部は、
前記信号を受信する前記時間間隔から、前記設備機器が正常に稼働する際の前記時間間隔の平均値を減算した差分を、前記設備機器が正常に稼働する際の前記時間間隔の標準偏差で除算して得られる偏差値の、一定時間内における累積値の絶対値を計算し、
前記累積値の絶対値を、前記設備機器が正常に稼働する際の、前記累積値の絶対値の標準偏差で除算して得られる累積値の偏差値が、判定閾値よりも大きい場合に、前記設備機器の稼働状態が異常であると診断することを特徴とする請求項1に記載の設備機器の異常検知システム。
【請求項4】
前記振動発電センサは、前記設備機器が発する振動を受ける基部と、前記基部に接続軸を介して接続された錘と、前記接続軸から離間した位置で前記基部に接続された圧電素子と、を備え、前記設備機器が振動すると前記錘が振動し、共振により前記圧電素子に圧力が作用することで前記圧電素子が発電することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の設備機器の異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機器の異常を検知する異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、設備機器等に取り付けられたセンサにより、稼働中の設備機器等の状態を取得し、これを情報処理装置等に送信して解析することで、設備機器等の異常を検知することが行われている。
例えば特許文献1には、鉄道車両の台車における所望の部位に設置されるセンサと、センサから出力された信号を通信する通信部と、通信部から通信された信号を判断する判断部と、を備えた台車健全性監視装置が開示されている。台車健全性監視装置には、圧電素子を有する長尺の板部を、板部の板面に直交する方向へのたわみを許容するように支持し、鉄道車両の振動による板部のたわみ振動によって発電を行う振動発電装置が設けられている。振動発電装置は、鉄道車両に設けられたセンサへ電源を供給する。
また、特許文献2には、ベルトコンベアの異常を検知するセンサと、センサで取得されたデータを送信するデータ送信部と、ベルトコンベアによる振動によって発電し、センサによるデータ取得、およびデータ送信のための電力を供給する振動発電装置と、を備える構成が開示されている。
特許文献1、2に開示されたような構成では、異常を検出するためのセンサと、センサで検出した信号を送信するデータ送信部と、これらに電力を供給する振動発電装置とが必要であり、部品点数が多くなる。
【0003】
これに対し、特許文献3には、主軸を回転自在に支持する軸受装置の外周面上に複数の振動発電装置を配置し、これら複数の振動発電装置のそれぞれが、主軸の回転時に生じる振動で発電して、発電量情報を処理装置に送信し、処理装置が、複数の振動発電装置の発電量の違いに基づいて、主軸の回転振れを検知する構成が開示されている。
このような構成では、振動発電装置の発電量を基に異常を検知するため、軸受装置の状態を取得するためのセンサを特段には要しないが、振動発電装置を複数個、必要とするため、依然として部品点数が多くなる。
電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器の異常を精度よく検知することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-204713号公報
【特許文献2】特開2021-1075号公報
【特許文献3】特開2018-136863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器の異常を精度よく検知可能な、設備機器の異常検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、設備機器の異常を検知する異常検知システムとして、設備機器に加速度センサ等を設置することなく、当該設備機器に振動によって発電する振動発電センサを取り付け、前記振動発電センサで得られる発電情報(電力量、時刻情報)に基づき、設備機器の稼働状態が異常であると診断する異常検知装置と、を含んで構成することで、簡易な構成ながら設備機器の異常を精度よく検知できる点に着眼し、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の異常検知システムは、設備機器の異常を検知する異常検知システムであって、前記設備機器に取り付けられる設備機器側装置と、異常検知装置と、を備え、前記設備機器側装置は、共振周波数が、前記設備機器が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定され、前記設備機器が発する振動によって発電する振動発電センサと、前記振動発電センサで得られた電力量が電力閾値に到達するたびに、当該電力量を消費して、信号を送信する送信部と、を備え、前記異常検知装置は、前記信号を受信する受信部と、前記信号を受信する時間間隔を基に、前記設備機器の稼働状態が異常であるか否かを診断する診断部と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、振動発電センサは、設備機器が発する振動によって発電する。設備機器側装置は、振動発電センサで得られた電力量が電力閾値に到達すると、送信部で信号を送信する。送信部で信号を送信することによって、振動発電センサで得られた電力量が消費されるので、設備機器側装置は、電力量が消費された後に、新たに振動発電センサで得られた電力を蓄え、再び電力量が電力閾値に到達すると、送信部で信号を送信する。このように、信号は、時間間隔をおいて、繰り返し送信される。
また、振動発電センサの共振周波数は、設備機器が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定されている。このため、設備機器が正常に稼働している場合には、振動発電センサは設備機器の振動に共振し、発電量が多くなる。設備機器が正常に稼働しておらず、設備機器が発する振動の周波数が正常に稼働している場合に比べて増大または減少し、振動発電センサの共振周波数からずれた場合においては、振動発電センサにおける振動が抑えられ、発電量が少なくなる。また、設備機器が正常に稼働しておらず、設備機器が発する振動の振幅が正常に稼働している場合に比べて増大した場合においては、振動発電センサにおける発電量が多くなり、振幅が減少した場合においては、発電量が少なくなる。いずれの場合においても、結果として、設備機器が正常に稼働していない場合においては、設備機器が正常に稼働している場合よりも、発電量が多く、または少なくなる。
ここで、振動発電センサにおける発電量が多ければ、振動発電センサで得られた電力量がより速く電力閾値に到達するため、送信部で信号を送信する時間間隔は小さくなる。逆に、振動発電センサにおける発電量が少なければ、送信部で信号を送信する時間間隔は大きくなる。すなわち、設備機器が正常に稼働してない場合においては、設備機器が正常に稼働している場合よりも、受信部で信号を受信する時間間隔が、大きく、または小さくなっている。異常検知装置の診断部は、この時間間隔を基に、設備機器の稼働状態が異常であるか否かを診断する。
このように、上記のような構成においては、設備機器が正常に稼働している場合に設備機器が発する振動に対し、周波数や振幅のいずれか一方にでも大きな差異がある場合に、設備機器の稼働状態が異常であると判断され得るので、精度良く、設備機器の異常を検知することができる。
また、上記のように設備機器の異常を検知するに際し、必要となる振動発電センサは、基本的に1つあればよい。また、当該振動発電センサの他に、他の種類のセンサを特段に必要としない。このため、構成を簡易なものとすることができる。
このようにして、電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器の異常を精度よく検知可能な、設備機器の異常検知システムを提供することが可能となる。
【0007】
本発明の一態様においては、前記設備機器が正常に稼働する際の前記時間間隔が正規分布するとみなし、当該正規分布の平均値に標準偏差を基にした値を減算することで下限閾値が設定され、前記平均値に前記標準偏差を基にした前記値を加算することで上限閾値が設定され、前記診断部は、前記信号を受信する前記時間間隔が、前記下限閾値より小さいか、前記上限閾値より大きい場合に、前記設備機器の稼働状態が異常であると診断する。
上記のように、異常検知装置の診断部では、振動発電センサで得られた電力量が電力閾値に到達するたびに振動発電装置から信号が送信される時間間隔を、設備機器の稼働状態が異常であるか否かを診断するための基準としている。
ここで、上記のような構成によれば、設備機器が正常に稼働する際において受信部で信号を受信する時間間隔を正規分布とみなし、その正規分布の平均値、及び標準偏差に基づいて、下限閾値、及び上限閾値を設定し、診断部では、信号を受信する時間間隔が、下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器の稼働状態が異常であると診断する。これにより、設備機器の稼働状態における振動状態にばらつき(揺らぎ)があっても、設備機器の異常を精度よく検知することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記診断部は、前記信号を受信する前記時間間隔から、前記設備機器が正常に稼働する際の前記時間間隔の平均値を減算した差分を、前記設備機器が正常に稼働する際の前記時間間隔の標準偏差で除算して得られる偏差値の、一定時間内における累積値の絶対値を計算し、前記累積値の絶対値を、前記設備機器が正常に稼働する際の、前記累積値の絶対値の標準偏差で除算して得られる累積値の偏差値が、判定閾値よりも大きい場合に、前記設備機器の稼働状態が異常であると診断する。
例えば設備機器に部位損傷が生じ、強くかつ非常に短い、ひげが立つようなパルス的な振動が、周期的に生じるような場合においては、振動発電センサにおける発電量も同様に、強くかつ短い、パルス的な成分を有する電力波形となる。この場合には、パルス的な成分による振幅の増加は短い時間内のものであるため、振動発電センサにおける発電量は増加するものの、その増加量は非常に小さい。したがって、設備機器側装置の送信部が信号を送信する時間間隔は、設備機器が正常に稼働する際に比べると僅かに小さくなる。このように、設備機器が正常に稼働する際と、異常が生じた場合との、時間間隔の差異が僅かな場合において、診断部が、信号を受信する時間間隔の値の大きさによって設備機器の稼働状態が異常であるか否かを診断しようとしても、診断を正しく行えない可能性がある。
ここで、信号を受信する時間間隔から、設備機器が正常に稼働する際の時間間隔の平均値を減算した差分を、設備機器が正常に稼働する際の時間間隔の標準偏差で除算することによって偏差値を計算することを考える。このような偏差値は、設備機器が正常に稼働していると、概ね0に近い値となる傾向を示すが、上記のようなパルス的な振動が生じると、信号を受信する時間間隔が、設備機器が正常に稼働する際の時間間隔よりも僅かに短くなるために、設備機器が正常に稼働する際の値よりも少し小さい、負の値となる傾向を示す。このように計算される偏差値は、パルス的な振動が生じたとしても依然として正常時の0とは大きく変わらない値であるために、これ単体をもって設備機器の稼働状態を診断するためには用い得ない。しかし、パルス的な振動が周期的に生じる場合においては、偏差値の値の、一定の時間範囲内における累計値を計算すれば、それは、正常時の値との差分が蓄積されて、正常時の値との差異がより大きく反映された値となっているはずである。
このような考えに基づき、上記のような構成においては、偏差値の累積値の絶対値を、設備機器の稼働状態が異常であるか否かの診断に使用する。診断部は特に、診断をより正確に行うために、累積値の絶対値を、設備機器が正常に稼働する際の、累積値の絶対値の標準偏差で除算することによって、累積値の偏差値を計算する。このようにして計算された累積値の偏差値を、判定閾値と比較し、累積値の偏差値が判定閾値よりも大きい場合に、設備機器の稼働状態が異常であると診断する。これにより、設備機器が正常に稼働する際に比べて振動発電センサにおける発電量が僅かにしか異ならないような異常が生じた場合においても、設備機器の異常を精度よく検知することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記振動発電センサは、前記設備機器が発する振動を受ける基部と、前記基部に接続軸を介して接続された錘と、前記接続軸から離間した位置で前記基部に接続された圧電素子と、を備え、前記設備機器が振動すると前記錘が振動し、共振により前記圧電素子に圧力が作用することで前記圧電素子が発電する。
このような構成によれば、振動発電センサは、設備機器が振動すると、振動発電センサの基部が、設備機器が発する振動を受ける。すると、基部が設備機器とともに振動し、基部に接続軸を介して接続された錘が振動する。錘の振動との共振により、圧電素子に圧力が作用し、圧電素子において電力が発生される。このような構成の振動発電センサを用いることで、異常検知システムを適切に実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器の異常を精度よく検知可能な、設備機器の異常検知システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る異常検知システムの概略構成を示す図である。
図2図1の異常検知システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図2の異常検知システムの設備機器側装置に備えられた振動発電センサの構成を示す図である。
図4】振動発電センサにおける共振周波数と発電量との相関を示す図である。
図5】蓄電部における蓄電量の変化の例を示す図である。
図6】設備機器の稼働状態によって変化する、振動発電センサにおける発電量を示す図である。
図7】設備機器が正常に稼働している場合における、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。
図8】設備機器の振動の振幅が大きくなった場合における、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。
図9】設備機器の振動の周波数が変化した場合や、振動の振幅が小さくなった場合における、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。
図10】実際の設備機器における、設備機器の稼働状態に応じた振動発電センサの発電量の変化と、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る異常検知システムにおける、異常検知方法の流れを示すフローチャートである。
図12】正常に稼働している設備機器に、ある時点を契機として異常が生じた場合における、振動発電センサにおける発電量の変化を示す図である。
図13図12の場合の、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。
図14】本発明の第2実施形態に係る異常検知システムにおいて使用される、偏差値と、累積値の絶対値の、図12の場合の変化を示す図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る異常検知システムにおける、異常検知方法の流れを示すフローチャートである。
図16】本発明の異常検知システムにおける、振動発電センサの変形例を示す図である。
図17】本発明の異常検知システムにおける、振動発電センサの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、設備機器に取り付けられる設備機器側装置と異常検知装置とを備える設備機器の異常を検知する設備機器の異常検知システムである。設備機器側装置は、設備機器が発する振動によって発電する振動発電センサと、振動発電センサで得られた電力量が電力閾値に到達するたびに、信号を送信する送信部とを備えている。また、異常検知装置は、信号を受信する時間間隔を基に、設備機器の稼働状態が異常であるか否かを診断する診断部を備えている。
以下、添付図面を参照して、本発明による異常検知システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る異常検知システムの概略構成を示す図を図1に示す。図2は、図1の異常検知システムの機能構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、異常検知システム1は、監視対象となる振動を発生する設備機器100に取り付けられる設備機器側装置2と、異常検知装置3と、を備えている。異常検知システム1は、設備機器100の異常を検知する。
本実施形態においては、設備機器100は、例えば室内の空気を循環させるサーキュレータ等の、軸受に支持されて常時一定の速さで回転する回転体を備えたものである。設備機器100は、これに限られず、常時一定の速さや状態で動作する駆動系を備えたものであれば、どのようなものであってもよい。
図2に示されるように、設備機器側装置2は、振動発電センサ21と、蓄電部22と、制御部23と、時刻取得部24と、送信部25と、を備えている。
【0014】
図3は、図2の異常検知システムの設備機器側装置に備えられた振動発電センサの構成を示す図である。
図3に示されるように、振動発電センサ21は、設備機器100において、振動の発生状態を監視すべき所定の部位に装着される。振動発電センサ21は、設備機器100が発する振動によって発電する。振動発電センサ21は、設備機器100の振動を受けると、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する。振動発電センサ21は、基部211と、振動子210と、圧電素子214と、を備えている。
基部211は、設備機器100の所定の部位に固定されている。基部211は、例えば板状で、設備機器100の所定の部位の表面100fに沿って、溶接、接着、ボルト締結等によって固定されている。基部211は、設備機器100が発する振動を受ける。
振動子210は、接続軸212と、錘213と、を備えている。接続軸212は、基部211と錘213とを接続する。接続軸212は、表面100fに直交する方向に延びている。接続軸212は、例えば、帯板状、または棒状をなしている。錘213は、接続軸212の先端部に設けられている。設備機器100が振動すると、振動子210は、錘213の質量によって、基部211側の基端部を中心として、錘213とともに、錘213側の先端部が揺動するように、接続軸212が弾性変形する。振動子210を構成する錘213の質量、接続軸212の長さ、剛性等は、設備機器100が振動すると錘213が振動するように設定されている。ここで、振動子210は、その共振周波数が、設備機器100が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定されている。
圧電素子214は、接続軸212から離間した位置に配置されている。圧電素子214には、例えばピエゾ素子等を用いることができる。圧電素子214は、接続軸212に対し、接続軸212が延伸する方向に交差する方向に間隔を開けて配置されている。本実施形態において、圧電素子214は、接続軸212が延伸する方向に交差する方向の両側に一対配置されている。各圧電素子214は、支持部材215を介して基部211に接続されている。支持部材215は、基部211から、接続軸212と平行に延びている。圧電素子214は、支持部材215において、接続軸212に対向する側に設けられている。圧電素子214は、設備機器100の振動を受けて、錘213を有した振動子210が振動して接続軸212が圧電素子214に接触することによって、圧力が加えられると電気エネルギーを発生する。
本実施形態においては、例えば図3において上側に位置する圧電素子214により正の方向の起電力が生じ、下側に位置する圧電素子214により負の方向の起電力が生じるように構成されている。したがって、圧電素子214により発電される発電量の時刻歴の波形データである発電波形データは、例えば後に説明に用いられる図6に示されるような、時間とともに値が0を中心として略一定の周期で正と負の値を交互にとるような、交流電圧の波形データである。このようにして、発電波形データは、設備機器100の振動の振幅に対応した大きさの振幅と、設備機器100の振動と略同等の周波数を有する波形となる。
【0015】
図4は、振動発電センサにおける共振周波数と発電量との相関を示す図である。
図4に示されるように、振動発電センサ21においては、設備機器100から振動発電センサ21に伝わる振動の周波数が、錘213を備えた振動子210の共振周波数に近いほど、発電量が多く、共振周波数から離れるほど、発電量が少なくなる。振動子210の共振周波数は、設備機器100が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定されている。つまり、設備機器100が正常に稼働している状態では、振動発電センサ21の圧電素子214における発電量が多くなる。設備機器100が、何らかの原因で正常に稼働しなくなり、設備機器100で発生する振動の周波数が、設備機器100が正常に稼働する際の振動の周波数から離れると、振動発電センサ21に設備機器100から伝わる振動が、振動発電センサ21の共振周波数から離れ、発電量が低下する。
【0016】
蓄電部22は、振動発電センサ21の圧電素子で発生した電気エネルギーを得て、蓄電する。蓄電部22としては、例えばコンデンサ(キャパシタ)等を用いることができる。
制御部23は、蓄電部22に蓄電された電力量を監視している。制御部23は、蓄電部22における蓄電量が、予め設定された電力閾値Vp(図5参照)に到達した場合、時刻取得部24から、蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報を取得する。時刻取得部24は、例えば、GPS(Global Positioning System)、電波時計等を用いたものである。制御部23は、蓄電部22における蓄電量が、予め設定された電力閾値Vpに到達した場合、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す情報と、蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報とを関連付けた信号を、送信部25に送信する。ここで、電力閾値Vpは、蓄電部22における蓄電可能な最大電力量よりも低く、かつ、次に説明する送信部25において、1回の送信動作に要する電力量以上となるように設定される。本実施形態においては、電力閾値Vpは、送信部25において、1回の送信動作に要する電力量と略同等となるように設定されている。
【0017】
送信部25は、制御部23から信号を受け取ると、その信号を、異常検知装置3に、無線LAN等を介した通信手段により送信する。送信部25は、信号を送信する際、蓄電部22に蓄電された電力量を消費する。上記のように、本実施形態においては、電力閾値Vpは1回の送信動作に要する電力量と略同等となるように設定されているため、蓄電部22における蓄電量は、蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す信号を送信するたびに減少し、リセットされる。このように、送信部25は、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値Vpに到達するたびに、蓄電部22に蓄えられた電力量を消費して、信号を送信する。
図5は、蓄電部における蓄電量の変化の例を示す図である。
図5に示すように、設備機器100の振動によって振動発電センサ21が発電することで、蓄電部22における蓄電量が増加していき、その蓄電量が電力閾値Vpに到達すると(図5における時刻t1、t2、t3、t4のタイミング)、送信部25から信号を送信する。送信部25で信号を送信することにより、蓄電部22に蓄えられた電力量が消費される。その後、設備機器100の振動によって振動発電センサ21が発電することによって、蓄電部22における蓄電量が再び増加していく。このようにして、設備機器100が稼働している間、蓄電部22における電力量は、発電により増加して、電力閾値Vpに到達するたびに、信号の送信によって消費されて減少することが、繰り返される。
【0018】
図2に示されるように、異常検知装置3は、受信部31と、記憶部32と、演算部33と、診断部34と、結果出力部35と、を備えている。
受信部31は、送信部25から通信手段を介して送信された信号を受信する。受信部31は、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値Vpに到達するたびに送信部25から送信される信号を受信する。記憶部32は、受信部31で受信した信号を記憶する。記憶部32は、受信した信号に含まれる、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す情報と、蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報と、を蓄積して記憶する。
演算部33は、受信部31で、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値Vpに到達するたびに、送信部25から送信される信号に含まれる時刻情報の差分を、時間間隔ΔT(図5参照)として算出する。より詳細には、演算部33は、受信部31で新たに受信した信号に含まれる時刻情報と、その直前に受信部31で受信した信号に含まれる時刻情報との間の間隔である、時間間隔ΔTを算出する。
【0019】
図6は、設備機器の稼働状態によって変化する、振動発電センサにおける発電量を示す図である。図7は、設備機器が正常に稼働している場合における、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。図8は、設備機器の振動の振幅が大きくなった場合における、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。図9は、設備機器の振動の周波数が変化した場合や、振動の振幅が小さくなった場合における、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。
図6において、区間A1は、設備機器100が正常に稼働している場合における、振動発電センサ21での発電量を示している。設備機器100が正常に稼働している場合、振動発電センサ21は、振動子210が設備機器100の振動に共振し、大きな発電量で発電する(図4参照)。この区間A1では、図7に示すように、蓄電部22における蓄電量は、概ね時間間隔ΔTごとに電力閾値Vpに到達し、そのたびに、送信部25によって、信号が送信されている。
【0020】
図6において、区間A2は、設備機器100が、設備機器100に生じた何らかの異常により、正常に稼働している場合と同じ周波数のまま、より大きな振幅で振動した状態である。この場合においては、設備機器100の振動が、設備機器100が正常に稼働している場合と同じ周波数のままであるため、振動発電センサ21における発電は、振動子210が設備機器100の振動に共振しながら、効率良く行われる。設備機器100の振幅が大きいため、振動発電センサ21における時間あたりの発電量は増大する。これにより、図8に示すように、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達するまでの時間間隔ΔT’は、設備機器が正常に稼働している場合(図7参照)の時間間隔ΔTに比較すると、小さくなる。
また、区間A2とは逆に、設備機器100が、正常に稼働している場合と同じ周波数のまま、より小さな振幅で振動すると、振動発電センサ21における時間あたりの発電量は減少し、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達するまでの時間間隔ΔT”は、例えば図9に示されるように、大きくなる。
【0021】
図6において、区間A3では、設備機器100に生じた何らかの異常により、設備機器100の振動の周波数が、設備機器100が正常に稼働している場合に比較して高くなっている。この場合、設備機器100の振動の周波数が高くなることで、振動発電センサ21の振動子210の共振周波数から離れ、振動発電センサ21における発電量は少なくなる。設備機器100の振動の周波数が、区間A3とは逆に低くなる場合も、振動発電センサ21の振動子210の共振周波数から離れるので、振動発電センサ21における発電量は少なくなる。その結果、図9に示すように、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達するまでの時間間隔ΔT”は、設備機器が正常に稼働している場合(図7参照)の時間間隔ΔTに比較して大きくなる。
このように、時間間隔ΔTは、設備機器100が正常に稼働している場合に比較し、設備機器100の稼働状態に応じて増大、または減少する。
【0022】
診断部34は、上記のように算出された時間間隔ΔTを基に、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する。診断部34は、上記のように算出された時間間隔ΔTが、予め設定された下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断する。
図10は、実際の設備機器における、設備機器の稼働状態に応じた振動発電センサの発電量の変化と、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。図10は、特に、設備機器100が、正常に稼働している状態から、異常が発生し、振動の周波数が正常時とは異なる値となった状態に、遷移した場合を示すものである。
図10に示されるように、実際の設備機器100において、設備機器100が正常に稼働している場合には、その振動状態(主に振幅)にゆらぎがあり、振動発電センサ21における発電量にも揺らぎが生じている。結果として、送信部25によって信号が送信されてから、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達するまでの時間間隔にも、揺らぎが生じている。
ここで、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTが正規分布するとみなし、下限閾値、及び上限閾値を設定することができる。例えば、下限閾値は、時間間隔ΔTの平均値μに、標準偏差σを基にした値を減算することで設定される。この場合には、任意な正値を設定可能な変数aを用いて、下限閾値Aを、例えばA=μ-a×σとして表すことができる。同様に、上限閾値は、平均値μに、標準偏差σを基にした値を加算することで設定される。この場合には、上限閾値Bを、例えばB=μ+a×σとして表すことができる。
【0023】
図10に示されるように、実際の設備機器100において、設備機器100の稼働状態に、何らかの原因で異常が生じ、その振動の周波数が変化すると、振動発電センサ21における発電量が減少する。このため、送信部25によって信号が送信されてから、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達して、再び信号を発するまでの時間間隔が、設備機器100が正常に稼働している場合に比べると、大きくなっている。また、設備機器100の振幅が変化すると、振動発電センサ21における発電量が増加、または減少し、これに応じて、時間間隔が、設備機器100が正常に稼働している場合に比べると、大きくなるか、または小さくなる。診断部34は、このように発電量によって値が変化する時間間隔を、下限閾値及び上限閾値と比較することで、設備機器100の異常を検知する。
ここで、上記の変数aの値を小さく設定しすぎると、上限閾値が過剰に小さく、かつ下限閾値が大きくなり、設備機器100が正常稼働しつつも例外的な動作を一時的に行った場合等に、これを過敏に異常と誤診してしまうことがある。したがって、変数aの値は、適度に大きな値とするのが望ましい。例えば、変数aは、3以上の値とするのが望ましい。
例えば、図10の例においては、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTは、平均値μ=1.15、標準偏差σ=0.53となる。これに対し、設備機器100に異常が生じて周波数が変化した後には、時間間隔は、11.5程度の値となっている。上記の上限閾値Bを表す式に、これらの値を代入して、変数aを逆算すると、a=19.6となる。このため、上記のように例えばa=3と設定すると、図10に示されるような時間間隔の変化が生じた際に、設備機器100の稼働状況が異常であると診断することができる。
【0024】
結果出力部35は、診断部34における診断結果を、必要に応じて出力する。診断部34で、算出された時間間隔ΔTが、予め設定された下限閾値より小さいか、上限閾値より大きく、設備機器100の稼働状態が異常であると診断された場合、結果出力部35は、設備機器100における稼働状態が異常であることを示す情報を外部に出力する。結果出力部35は、例えば、図1に示されるように、異常検知装置3に備えられたモニタであり、設備機器100の稼働状態に異常が生じたことを示す情報を、メッセージ等により表示することができる。結果出力部35は、設備機器100の稼働状態に異常が生じたことを、アラーム音、アラーム音声等により外部に出力してもよい。また、結果出力部35は、設備機器100の稼働状態が異常であると診断された場合に、設備機器100の稼働を停止させるための信号を、設備機器100の稼働を制御する制御装置に送信するようにしてもよい。診断部34で、設備機器100の稼働状態が異常であると診断されていない場合に、結果出力部35は、設備機器100の稼働状態が正常であることを示す情報を出力するようにしてもよい。
【0025】
図11は、本発明の第1実施形態に係る異常検知システムにおける、異常検知方法の流れを示すフローチャートである。
図11に示されるように、上記異常検知システム1において、設備機器100の異常検知を行うには、設備機器100の稼働中、制御部23で、蓄電部22に蓄電された電力量を監視する(ステップS1)。設備機器100の稼働中、設備機器100の振動を受けて振動発電センサ21で発電した電力が、蓄電部22に蓄えられる。
制御部23では、蓄電部22の電力量が、電力閾値Vpに到達したか否かを、一定時間間隔毎に確認する(ステップS2)。その結果、蓄電部22の電力量が、電力閾値Vpに到達していなければ(ステップS2のNO)、ステップS1に戻り、蓄電量の監視を継続する。
ステップS2で、蓄電部22の電力量が、電力閾値Vpに到達した場合には(ステップS2のYes)、制御部23は、所定の信号を出力する(ステップS3)。この場合、制御部23では、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報を時刻取得部22により取得する。さらに、制御部23では、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す情報と、蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報とを関連付けた信号を、送信部25から異常検知装置3に送信させる。
【0026】
送信部25から信号が送信されると、異常検知装置3の受信部31が、信号を受信する(ステップS11)。異常検知装置3では、信号を受信すると、受信した信号に含まれる、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す情報と、蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報とを、記憶部32に記憶させる(ステップS12)。
その後、演算部33では、送信部25から信号を受信する時間間隔ΔTを算出する(ステップS13)。演算部33は、受信部31で新たに受信した信号に含まれる時刻情報と、その直前に受信部31で受信した信号に含まれる時刻情報との間の間隔である、時間間隔ΔTを算出する。
次いで、診断部34で、設備機器100の稼働状態における異常の有無を判定する(ステップS14)。これには、診断部34で、算出された時間間隔ΔTが、予め設定された下限閾値より小さいか、上限閾値より大きいか否かを判定する。その結果。時間間隔ΔTが、予め設定された下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断する。
その後、結果出力部35で、診断部34における診断結果を出力する(ステップS15)。診断部34で、設備機器100の稼働状態が異常であると診断された場合、結果出力部35は、設備機器100の稼働状態が異常であることを示す情報を出力する。このとき、診断部34で、設備機器100の稼働状態が異常であると診断されていない場合、結果出力部35は、設備機器100の稼働状態が正常であることを示す情報を出力するようにしてもよい。
【0027】
上述したような異常検知システムによれば、設備機器100の異常を検知する異常検知システム1であって、設備機器100に取り付けられる設備機器側装置2と、異常検知装置3と、を備え、設備機器側装置2は、共振周波数が、設備機器100が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定され、設備機器100が発する振動によって発電する振動発電センサ21と、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値Vpに到達するたびに、当該電力量を消費して、信号を送信する送信部25と、を備え、異常検知装置3は、信号を受信する受信部31と、信号を受信する時間間隔ΔTを基に、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する診断部34と、を備える。
このような構成によれば、振動発電センサ21は、設備機器100が発する振動によって発電する。設備機器側装置2は、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値Vpに到達すると、送信部25で信号を送信する。送信部25で信号を送信することによって、振動発電センサ21で得られた電力量が消費されるので、設備機器側装置2は、電力量が消費された後に、新たに振動発電センサ21で得られた電力を蓄え、再び電力量が電力閾値Vpに到達すると、送信部25で信号を送信する。このように、信号は、時間間隔ΔTをおいて、繰り返し送信される。
また、振動発電センサ21の共振周波数は、設備機器100が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定されている。このため、設備機器100が正常に稼働している場合には、振動発電センサ21は設備機器100の振動に共振し、発電量が多くなる。設備機器100が正常に稼働しておらず、設備機器100が発する振動の周波数が正常に稼働している場合に比べて増大または減少し、振動発電センサ21の共振周波数からずれた場合においては、振動発電センサ21における振動が抑えられ、発電量が少なくなる。また、設備機器100が正常に稼働しておらず、設備機器100が発する振動の振幅が正常に稼働している場合に比べて増大した場合においては、振動発電センサ21における発電量が多くなり、振幅が減少した場合においては、発電量が少なくなる。いずれの場合においても、結果として、設備機器100が正常に稼働していない場合においては、設備機器100が正常に稼働している場合よりも、発電量が多く、または少なくなる。
ここで、振動発電センサ21における発電量が多ければ、振動発電センサ21で得られた電力量がより速く電力閾値Vpに到達するため、送信部25で信号を送信する時間間隔ΔTは小さくなる。逆に、振動発電センサ21における発電量が少なければ、送信部25で信号を送信する時間間隔ΔTは大きくなる。すなわち、設備機器100が正常に稼働してない場合においては、設備機器100が正常に稼働している場合よりも、受信部31で信号を受信する時間間隔ΔTが、大きく、または小さくなっている。異常検知装置3の診断部34は、この時間間隔ΔTを基に、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する。
このように、上記のような構成においては、設備機器100が正常に稼働している場合に設備機器100が発する振動に対し、周波数や振幅のいずれか一方にでも大きな差異がある場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると判断され得るので、精度良く、設備機器100の異常を検知することができる。
また、上記のように設備機器100の異常を検知するに際し、必要となる振動発電センサ21は、基本的に1つあればよい。また、当該振動発電センサ21の他に、他の種類のセンサを特段に必要としない。このため、構成を簡易なものとすることができる。
このようにして、電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器100の異常を精度よく検知可能な、設備機器100の異常検知システム1を提供することが可能となる。
【0028】
また、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTが正規分布するとみなし、当該正規分布の平均値μに標準偏差σを基にした値(a×σ)を減算することで下限閾値が設定され、平均値μに標準偏差σを基にした値(a×σ)を加算することで上限閾値が設定され、診断部34は、信号を受信する時間間隔ΔTが、下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断する。
上記のように、異常検知装置3の診断部34では、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値Vpに到達するたびに振動発電装置2から信号が送信される時間間隔ΔTを、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断するための基準としている。
ここで、上記のような構成によれば、設備機器100が正常に稼働する際において受信部31で信号を受信する時間間隔ΔTを正規分布とみなし、その正規分布の平均値μ、及び標準偏差σに基づいて、下限閾値、及び上限閾値を設定し、診断部34では、信号を受信する時間間隔ΔTが、下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断する。これにより、設備機器100の稼働状態における振動状態にばらつき(揺らぎ)があっても、設備機器100の異常を精度よく検知することが可能となる。
【0029】
また、振動発電センサ21は、設備機器100が発する振動を受ける基部211と、基部211に接続軸212を介して接続された錘213と、接続軸212から離間した位置で基部211に接続された圧電素子214と、を備え、設備機器100が振動すると錘213が振動し、共振により圧電素子214に圧力が作用することで圧電素子214が発電する。
このような構成によれば、振動発電センサ21は、設備機器100が振動すると、振動発電センサ21の基部211が、設備機器100が発する振動を受ける。すると、基部211が設備機器100とともに振動し、基部211に接続軸212を介して接続された錘213が振動する。錘213の振動との共振により、圧電素子214に圧力が作用し、圧電素子214において電力が発生される。このような構成の振動発電センサ21を用いることで、異常検知システム1を適切に実現することができる。
【0030】
(第1実施形態の変形例)
次に、上記第1実施形態として示した異常検知システムの変形例を説明する。
上記第1実施形態においては、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTが正規分布するとみなし、下限閾値Aを、時間間隔ΔTの平均値μに、標準偏差σを基にした値を減算することで、A=μ-a×σとして設定し、上限閾値Bを、平均値μに、標準偏差σを基にした値を加算することで、B=μ+a×σとして設定したうえで、診断部34が、時間間隔ΔTが、下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断した。
これは、時間間隔ΔTの偏差値をαとしたときに、時間間隔ΔTは次式(1)
ΔT=μ+α×σ ・・・(1)
として表され、式(1)における時間間隔ΔTの値が、設備機器100に異常が生じた際にこれを診断し得る上限閾値及び下限閾値としての、適切な値となるように、変数aを設定する、という考えに基づいている。
本変形例では、診断部34は、信号を受信する時間間隔ΔTではなく、信号を受信する時間間隔ΔTの偏差値αを、設備機器100の異常の診断に使用する。より詳細には、式(1)を変形した、偏差値αに関する次式(2)
α=(ΔT-μ)/σ ・・・(2)
を基に、診断部34は、信号を受信する時間間隔ΔTから、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの平均値μを減算した差分(ΔT-μ)を、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの標準偏差σで除して、偏差値αを計算する。このようにして、標準偏差σで除算することにより、ばらつき幅が標準偏差σで基準化される。
そして、診断部34は、偏差値αに関して適切に設定された上限閾値と下限閾値に対して偏差値αを比較し、偏差値αが、下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断する。
設備機器100が正常に稼働する際においては、上記の差分(ΔT-μ)は、概ね0に近い値となるため、偏差値αも0に近い値となる。したがって、正の閾値を例えば3と設定し、偏差値αの絶対値が、正の閾値より大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断するようにしてもよい。偏差値αを直接、上限閾値、下限閾値と比較する場合には、上限閾値と下限閾値は、例えばそれぞれ3、-3と設定するのが望ましい。
【0031】
このようにして、本変形例においても、診断部34は、信号を受信する時間間隔ΔTを基に、より詳細には時間間隔ΔTから式(2)により計算される偏差値αを使用して、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する。
特に、本変形例においては、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTが正規分布するとみなし、診断部34は、信号を受信する時間間隔ΔTから、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの平均値μを減算した差分を、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの標準偏差σで除した、偏差値αを計算し、偏差値αを基に、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する。
このようにした場合においても、上記第1実施形態と同様に、電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器100の異常を精度よく検知可能な、設備機器100の異常検知システムを提供することが可能となる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係る異常検知システムについて説明する。第2実施形態は、特に、第1実施形態の変形例の、更なる変形例ともなっている。第2実施形態の異常検知システム1A(図1参照)においては、診断部34Aにおける処理内容が、第1実施形態及び第1実施形態の変形例とは異なっている。したがって、第2実施形態においては、主に、診断部34Aの処理内容を説明し、第1実施形態及び第1実施形態の変形例の異常検知システムと同じ構成に関しては説明を割愛する。
図12は、正常に稼働している設備機器に、ある時点を契機として異常が生じた場合における、振動発電センサにおける発電量の変化を示す図である。図13は、図12の場合の、蓄電部における蓄電量の変化を示す図である。図12図13においては、設備機器100が正常に稼働している状態は区間A4として、及び、設備機器100に異常が生じている状態は区間A5として、それぞれ図示されている。
【0033】
例えば設備機器100に部位損傷が生じ、強くかつ非常に短い、ひげが立つようなパルス的な振動が、周期的に生じるような場合には、振動発電センサ21における発電量においても同様に、図12に区間A5として示されるように、強くかつ短い、パルス的な成分を有する電力波形となる。この場合には、パルス的な成分による振幅の増加は短い時間内のものであるため、振動発電センサ21における発電量は増加するものの、その増加量は非常に小さい。したがって、設備機器側装置2の送信部25が信号を送信する時間間隔ΔTは、設備機器100が正常に稼働する際に比べると僅かに小さくなる。
例えば図13においては、区間A4の、設備機器100が正常に稼働している状態においては、時間間隔ΔTは、平均値μ=3.47秒となっている。これに対し、設備機器100に異常が発生してパルス的な振動が周期的に生じる状態である区間A5の、最初の時間間隔ΔTにおいては、2.83秒と、平均値μよりも小さい間隔となっている。
図12の場合において、区間A4の、設備機器100が正常に稼働している状態においては、標準偏差σは0.34秒となっている。ここで、第1実施形態で変数a=3としたときの下限閾値Aと上限閾値Bは、それぞれ、
A=μ-a×σ=3.47-3×0.34=2.45
B=μ+a×σ=3.47+3×0.34=4.49
となる。すなわち、この場合においては、設備機器100に異常が生じているにもかかわらず、時間間隔ΔT=2.83秒は、下限閾値A以上、上限閾値B以下の値となっており、第1実施形態における診断部34は、設備機器100の稼働状態が異常であると診断しない。
第1実施形態の変形例においても同様に、式(2)においては、偏差値αは、
α=(ΔT-μ)/σ=(2.83-3.47)/0.34=-1.88
と、設備機器100が正常に稼働する際の偏差値αの値の平均である0に比較的近く、この場合においても診断部34は、設備機器100の稼働状態が異常であると診断しない。
このように、設備機器100が正常に稼働する際と、異常が生じた場合との、時間間隔ΔTの差異が僅かな場合において、診断部34が、信号を受信する時間間隔ΔTの値の大きさによって設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断しようとしても、診断を正しく行えない可能性がある。
【0034】
ここで、信号を受信する時間間隔ΔTから、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの平均値μを減算した差分を、設備機器が正常に稼働する際の時間間隔の標準偏差で除算することによって、すなわち式(2)で示されるような偏差値αを計算することを考える。このような偏差値αは、設備機器100が正常に稼働していると、概ね0に近い値となる傾向を示すが、上記のようなパルス的な振動が生じると、信号を受信する時間間隔ΔTが、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTよりも僅かに短くなるために、設備機器100が正常に稼働する際の値よりも少し小さい、負の値となる傾向を示す。実際に上記の例においては、偏差値αは、-1.88となっている。このように計算される偏差値αは、パルス的な振動が生じたとしても依然として正常時の0とは大きく変わらない値であるために、これ単体をもって設備機器100の稼働状態を診断するためには用い得ない。しかし、パルス的な振動が周期的に複数回生じる場合においては、偏差値αの値の、一定の時間範囲内における累計値を計算すれば、それは、正常時の値との差分が蓄積されて、正常時の値との差異がより大きく反映された値となっているはずである。
このような考えに基づき、本実施形態における診断部34Aは、偏差値αの累計値、または偏差値αの累計値の絶対値を計算し、これを用いて、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する。本実施形態においては、診断部34Aは、偏差値αの累計値の絶対値Rを
R=|Σα|
として計算し、これを用いて、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する。
図14は、偏差値αと、累積値の絶対値Rの、図12の場合の変化を示す図である。図14においては、P1として示される丸印で偏差値αが、P2として示される三角印で累積値の絶対値Rが、それぞれ描かれている。設備機器100に異常が生じた際においては、累積値の絶対値Rは、偏差値α(の絶対値)よりも、大きな値となっている。
なお、偏差値αは、設備機器100が正常に稼働している場合においては、概ね0に近い値とはなるものの、厳密には0とは異なる値をとる。このため、累計値を計算する時間範囲を長くしすぎれば、設備機器100が正常に稼働していたとしても、累計値の絶対値が大きくなりすぎて、設備機器100の稼働状態が異常であると、診断部34Aが診断する可能性がある。したがって、累計値を計算する時間範囲は、このような誤診がなされないように、長すぎない時間範囲として、適切に決定する必要がある。
【0035】
診断部34Aは、更に、診断をより正確に行うために、設備機器100が正常に稼働する際の累積値の絶対値Rが正規分布するとみなし、累積値の絶対値Rを、設備機器100が正常に稼働する際の、累積値の絶対値Rの標準偏差σで除算することによって、累積値の偏差値βを計算する。累積値の偏差値βを計算するには、正確には、累積値の絶対値Rから、設備機器100が正常に稼働する際の、累積値の絶対値Rの平均値μを減算した差分を、設備機器100が正常に稼働する際の、累積値の絶対値Rの標準偏差σで除算する必要がある。しかし、設備機器100が正常に稼働する際の、累積値の絶対値Rの平均値μは、0にほぼ等しい値となるため、平均値μを減算せずとも、上記のような除算のみで、累積値の偏差値βが計算される。このようにして、標準偏差σで除算することにより、ばらつき幅が標準偏差σで基準化される。
診断部34Aは、このようにして計算された累積値の偏差値βを、判定閾値と比較し、累積値の偏差値βが判定閾値よりも大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断する。これにより、設備機器100が正常に稼働する際に比べて振動発電センサ21における発電量が僅かにしか異ならないような異常が生じた場合においても、設備機器100の異常を精度よく検知することが可能となる。
【0036】
上記のように、累積値の偏差値βには、設備機器100の微細な挙動の変化が敏感に反映されるから、設備機器100の異常を精度よく検出することができる。しかし、その反面、設備機器100が正常に稼働しているにもかかわらず、設備機器100に異常が生じていると誤って診断する可能性もある。
これを抑制するために、本実施形態においては、診断部34Aは、第1実施形態の変形例として説明したような偏差値αを基にした異常診断を、1次診断として実行し、その後に、上記のような累積値の偏差値βを基にした異常診断を、2次診断として実行する。
この、第2実施形態における異常検知方法を、図11図15を用いて説明する。図15は、第2実施形態に係る異常検知システムにおける、異常検知方法の流れを示すフローチャートである。
【0037】
異常検知システム1Aにおいて、設備機器100の異常検知を行うには、設備機器100の稼働中、制御部23で、蓄電部22に蓄電された電力量を監視する(ステップS1)。設備機器100の稼働中、設備機器100の振動を受けて振動発電センサ21で発電した電力が、蓄電部22に蓄えられる。
制御部23では、蓄電部22の電力量が、電力閾値Vpに到達したか否かを、一定時間間隔毎に確認する(ステップS2)。その結果、蓄電部22の電力量が、電力閾値Vpに到達していなければ(ステップS2のNO)、ステップS1に戻り、蓄電量の監視を継続する。
ステップS2で、蓄電部22の電力量が、電力閾値Vpに到達した場合には(ステップS2のYes)、制御部23は、所定の信号を出力する(ステップS3)。この場合、制御部23では、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報を時刻取得部22により取得する。さらに、制御部23では、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す情報と、蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報とを関連付けた信号を、送信部25から異常検知装置3に送信させる。
【0038】
送信部25から信号が送信されると、異常検知装置3の受信部31が、信号を受信する(ステップS11)。異常検知装置3では、信号を受信すると、受信した信号に含まれる、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す情報と、蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻を示す時刻情報とを、記憶部32に記憶させる(ステップS12)。
その後、演算部33では、送信部25から信号を受信する時間間隔ΔTを算出する(ステップS13)。演算部33は、受信部31で新たに受信した信号に含まれる時刻情報と、その直前に受信部31で受信した信号に含まれる時刻情報との間の間隔である、時間間隔ΔTを算出する。
【0039】
次いで、診断部34Aで、設備機器100の稼働状態における異常の有無を判定する(ステップS20)。これにはまず、図15に示されるように、診断部34Aは、信号を受信する時間間隔ΔTから、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの平均値μを減算した差分(ΔT-μ)を、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの標準偏差σで除して、偏差値αを計算する(ステップS21)。
この偏差値αを用いて、診断部34Aは、1次診断を行う。具体的には、診断部34Aは、偏差値αの絶対値を、例えば3として設定された第1判定閾値と比較する(ステップS22)。
この1次診断において、偏差値αの絶対値が第1判定閾値よりも大きければ(ステップS22のYes)、診断部34Aは、設備機器100の稼働状態が異常であると診断し(ステップS27)、図11のステップS15へ遷移する。偏差値αの絶対値が第1判定閾値以下であれば(ステップS22のNo)、ステップS23へ遷移する。
ステップS23においては、診断部34Aは、偏差値αの絶対値を、例えば1として設定された第2判定閾値と比較する。
偏差値αの絶対値が第2判定閾値以下であれば(ステップS23のNo)、診断部34Aは、偏差値αは十分に小さいため、設備機器100の稼働状態が正常であると診断し(ステップS26)、図11のステップS15へ遷移する。偏差値αの絶対値が第2判定閾値より大きければ(ステップS22のNo)、ステップS24へ遷移する。
【0040】
このように、偏差値αの絶対値が第1判定閾値以下であるため、設備機器100の稼働状態が異常であるとは診断できず、かつ、偏差値αの絶対値が第2判定閾値より大きいため、設備機器100の稼働状態が正常であるとも判断できない場合に、処理がステップS24へ遷移する。このような場合に、診断部34Aは、2次診断を行う。
具体的には、診断部34Aは、偏差値αの一定時間における累積値を計算し、この累積値の絶対値Rを、設備機器100が正常に稼働する際の、累積値の絶対値Rの標準偏差σで除算した、累積値の偏差値βを計算する(ステップS24)。
そして、診断部34Aは、累積値の偏差値βを、例えば3として設定された第3判定閾値(判定閾値)と比較する(ステップS25)。
累積値の偏差値βが第3判定閾値以下であれば(ステップS25のNo)、診断部34Aは、設備機器100の稼働状態が正常であると診断し(ステップS26)、図11のステップS15へ遷移する。累積値の偏差値βが第3判定閾値より大きければ(ステップS25のNo)、診断部34Aは、設備機器100の稼働状態が異常であると診断し(ステップS27)、図11のステップS15へ遷移する。
その後、図11に戻り、結果出力部35で、診断部34Aにおける診断結果を出力する(ステップS15)。
【0041】
このような異常検知システム1Aは、第1実施形態と同様に、設備機器100の異常を検知する異常検知システム1Aであって、設備機器100に取り付けられる設備機器側装置2と、異常検知装置3と、を備え、設備機器側装置2は、共振周波数が、設備機器100が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定され、設備機器100が発する振動によって発電する振動発電センサ21と、振動発電センサ21で得られた電力量が電力閾値Vpに到達するたびに、当該電力量を消費して、信号を送信する送信部25と、を備え、異常検知装置3は、信号を受信する受信部31と、信号を受信する時間間隔ΔTを基に、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する診断部34Aと、を備える。
このような異常検知システム1Aにおいても、第1実施形態と同様に、電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器100の異常を精度よく検知することができる。
【0042】
また、診断部34Aは、信号を受信する時間間隔ΔTから、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの平均値μを減算した差分を、設備機器100が正常に稼働する際の時間間隔ΔTの標準偏差σで除算して得られる偏差値αの、一定時間内における累積値の絶対値Rを計算し、累積値の絶対値Rを、設備機器100が正常に稼働する際の、累積値の絶対値Rの標準偏差σで除算して得られる累積値の偏差値βが、判定閾値(第3判定閾値)よりも大きい場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断する。
特に、本実施形態においては、診断部34Aは、偏差値αを計算し、偏差値αの絶対値が第1判定閾値よりも大きければ、設備機器100の稼働状態が異常であると診断し、偏差値αの絶対値が、第1判定閾値より小さい第2判定閾値以下であれば、設備機器100の稼働状態が正常であると診断し、偏差値αの絶対値が、第1判定閾値以下であり、かつ第2判定閾値より大きい場合に、累積値の偏差値βを計算して、累積値の偏差値βを基に、設備機器100の稼働状態が異常であるか否かを診断する。
このような構成によれば、既に説明したように、設備機器100の異常を精度よく検知することが可能となる。
【0043】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態においては、診断部34Aは、時間間隔ΔTから偏差値αを計算し、この偏差値αの、一定時間内における累積値の絶対値Rを計算して、これを用いて、設備機器100の異常を診断したが、精度上問題がないようであれば、絶対値を計算せずに、累積値を用いて、設備機器100の異常を診断してもよい。
また、上記第2実施形態においては、診断部34Aは、1次診断として、偏差値αを用いて設備機器100の異常を診断し、その後、2次診断として、累積値の絶対値Rを用いて設備機器100の異常を診断したが、同様に精度上問題がないようであれば、1次診断を行わずに、累積値の絶対値Rのみを用いて、設備機器100の異常を診断するように構成してもよい。
【0044】
(第1及び第2実施形態の他の変形例)
なお、本発明の異常検知システムは、図面を参照して説明した上述の各実施形態や変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な、他の変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態では、時刻取得部24を、設備機器側装置2に備えるようにしたが、これに限られない。
例えば、時刻取得部24を、異常検知装置3に備えるようにしてもよい。その場合、設備機器側装置2では、制御部23が蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達した場合、送信部25で、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達したことを示す情報を送信する。異常検知装置3では、信号を受信すると、異常検知装置3に備えた時刻取得部24において、信号を受信した時刻を取得し、これを、蓄電部22における蓄電量が電力閾値Vpに到達した時刻情報とする。演算部33では、このようにして取得した時刻情報に基づき、時間間隔ΔTを算出する。
【0045】
特に、このように時刻取得部24を異常検知装置3に備えるようにした場合においては、異常検知装置3側で、受信部31が最後に信号を受信した時刻から経過した時間を、計測することが可能となる。例えば、設備機器100に生じた異常により、振動発電センサ21による発電量が著しく減少するような場合には、設備機器側装置2から長時間にわたって信号が送信されない。このような場合に、上記各実施形態においては、異常検知装置3は設備機器側装置2からの信号を待つのみの構成となっているため、設備機器100の稼働状態が異常であると診断することができず、異常の検知が遅れてしまう。これに対し、上記のように、異常検知装置3側で、受信部31が最後に信号を受信した時刻から経過した時間を、計測するように構成すれば、診断部34が、経過した時間が、所定の時間閾値よりも大きくなった場合に、設備機器100の稼働状態が異常であると診断することが可能となる。これにより、設備機器100の異常を迅速に検知することができる。
このような構成においては、設備機器100の稼働状態が正常であるにもかかわらず、送信部25と受信部31との間の通信状況が悪化して、信号が異常検知装置3へと送信されないような不具合をも、検知することが可能となる。
【0046】
(その他の変形例)
また、異常検知システム1、1Aにおいて監視対象となる設備機器100は、振動を発するものであれば、いかなるものであってもよい。
また、振動発電センサ21は、上記各実施形態において説明したものとは異なる構成を有していてもよい。例えば、振動発電センサは、上記各実施形態と同様に、基部と、基部に接続軸を介して接続された錘とを有しつつも、上記各実施形態とは異なって、圧電素子を接続軸に沿わせて接合した構成としてもよい。この場合においては、設備機器100が振動して錘が振動すると、接続軸が撓み、これにより生じる応力を圧電素子が検出して、発電する。あるいは、接続軸そのものを、圧電素子により実現しても構わない。このような振動発電センサを用いた場合においても、上記各実施形態と同様に、異常検知システムを適切に実現可能である。
【0047】
基本的に、振動発電センサは、設備機器の振動に伴って、特に当該振動の周波数で共振することにより発電量が多くなり、他の振動数では発電量が少なくなるような性質を有するものであれば、上記各実施形態のように圧電素子を有するものでなくとも、適用可能である。
例えば、異常検知システムには、図16に示されるような、電磁誘導式の振動発電センサ40を適用することができる。振動発電センサ40は、バネ41、錘42、コイル43、及びこれらを内部に有する筐体44を備えている。バネ41の一端は、筐体44に固定されている。バネ41の他端は、磁石により形成された錘42に固定されている。錘42は、筐体44に対して、バネ41の延伸する方向に移動自在に設けられている。コイル43は、錘42の周りを周回するように設けられている。筐体44は、設備機器に固定されている。
このような構成において、設備機器が振動し、筐体44も共に振動すると、バネ41が伸縮し、錘42がバネ41の延伸する方向に往復するように、例えば図16において左右方向に移動する。すると、コイル43には、錘42が移動する方向に応じて、互いに反対側の方向に、交互に誘導電流が流れる。この誘導電流を取り出すことで、上記各実施形態として説明したような発電波形データを得ることができる。
【0048】
あるいは、異常検知システムには、図17に示されるような、静電誘導式の振動発電センサ50を適用することができる。振動発電センサ50は、バネ51、錘52、抵抗53、金属体54、帯電体55、及びこれらを内部に有する筐体56を備えている。バネ51の一端は、筐体56に固定されている。バネ51の他端は、導体により形成された錘52に固定されている。錘52は、筐体56に対して、バネ51の延伸する方向に移動自在に設けられている。錘52は、抵抗53を介して、導体である金属体54に接続されている。抵抗53の、導体54側は、接地されている。錘52と、金属体54には、これらに対向するように、エレクトレットなどの帯電体55が設けられている。
このような構成において、設備機器が振動し、筐体56も共に振動すると、バネ51が伸縮し、錘52がバネ51の延伸する方向に往復するように、例えば図17において左右方向に移動する。例えば帯電体55が、負の電荷を有する場合には、錘52が右方向に移動して帯電体55に接近すると、正の電荷を有するように帯電し、これに伴い、負の電荷が抵抗53を介して右側へ移動することで、左方向への電流が流れる。逆に、錘52が左方向に移動して帯電体55から離間すると、錘52に帯電していた正の電荷が抵抗53を介して流出することで、右方向への電流が流れる。このようにして生じる電流を取り出すことで、上記各実施形態として説明したような発電波形データを得ることができる。
【0049】
図16図17に示されるような構成において、振動数は、バネ41、51の剛性と錘42、52の重さで調整することができる。
このようにして、共振振動数を、設備機器が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定することにより、図16図17に示される振動発電センサ40、50を、上記各実施形態の振動発電センサ21に替えて、用いることができる。
すなわち、設備機器の異常を検知する異常検知システムを、設備機器に取り付けられる設備機器側装置と、異常検知装置と、を備え、設備機器側装置は、共振周波数が、設備機器が正常に稼働する際の振動の周波数となるように設定され、設備機器が発する振動によって発電する振動発電センサ40、50と、振動発電センサ40、50で得られた電力量が電力閾値に到達するたびに、当該電力量を消費して、信号を送信する送信部と、を備え、異常検知装置は、信号を受信する受信部と、信号を受信する時間間隔が、下限閾値より小さいか、上限閾値より大きい場合に、設備機器の稼働状態が異常であると診断する診断部と、を備える構成とすることができる。
このような場合においても、電源供給が必要なセンサを用いず、簡易な構成で、設備機器の異常を精度よく検知可能な、設備機器の異常検知システムを提供することが可能となる。
【0050】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、1A 異常検知システム 34 診断部
2 設備機器側装置 100 設備機器
3 異常検知装置 211 基部
21、40、50 振動発電センサ 212 接続軸
25 送信部 213 錘
31 受信部 214 圧電素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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