(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089932
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ニコチンアミドモノヌクレオチドの安定化剤、複合体、複合体を含む組成物、安定化方法、及び組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/13 20160101AFI20230621BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230621BHJP
A23L 2/42 20060101ALI20230621BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230621BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20230621BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20230621BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230621BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230621BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230621BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230621BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230621BHJP
A61K 31/706 20060101ALN20230621BHJP
A61P 3/02 20060101ALN20230621BHJP
【FI】
A23L33/13
A23L5/00 K
A23L2/00 N
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/66
A23L29/00
A61K47/36
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/44
A61K9/08
A61K31/706
A61P3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180802
(22)【出願日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2021203808
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521550219
【氏名又は名称】王 建強
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】王 建強
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B117
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE05
4B018MD44
4B018ME14
4B018MF03
4B018MF09
4B035LC05
4B035LE03
4B035LE20
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG04
4B035LG15
4B035LG16
4B035LG17
4B035LG20
4B035LG21
4B035LG22
4B035LG23
4B035LG25
4B035LG28
4B035LG29
4B035LG40
4B035LK19
4B035LP44
4B117LC04
4B117LC15
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK13
4B117LK15
4B117LK16
4B117LL09
4B117LP14
4C076BB01
4C076CC21
4C076CC40
4C076DD21
4C076DD58
4C076EE30
4C076EE51
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG45
4C086AA04
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC21
(57)【要約】
【課題】加熱によるニコチンアミドモノヌクレオチドの加水分解を抑制することができる安定化剤を提供する。
【解決手段】本発明の安定化剤は、ニコチンアミドモノヌクレオチドの安定化剤であって、ミネラル類、脂質類、ビタミン類、タンパク質、及び多糖類を含むことを特徴とする。ニコチンアミドモノヌクレオチドに安定化剤を加えると複合体を形成し、熱によるニコチンアミドモノヌクレオチドの加水分解が抑制される。本発明により、飲食品及びサプリメント等のように加熱による殺菌工程が必要な製品において、ニコチンアミドモノヌクレオチドを安定化させることができ、ニコチンアミドモノヌクレオチドの効果を損なうことを防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミドモノヌクレオチドの安定化剤であって、ミネラル類、脂質類、ビタミン類、タンパク質、及び多糖類の少なくとも一つを含む安定化剤。
【請求項2】
前記ニコチンアミドモノヌクレオチドが、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドである、請求項1記載の安定化剤。
【請求項3】
前記ニコチンアミドモノヌクレオチド、及び請求項1又は2記載の安定化剤を含む複合体。
【請求項4】
請求項3記載の複合体を含む組成物。
【請求項5】
前記組成物が飲料である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ニコチンアミドモノヌクレオチドの安定化方法であって、請求項1又は2記載の安定化剤を前記ニコチンアミドモノヌクレオチドに添加する工程を含む、安定化方法。
【請求項7】
ニコチンアミドモノヌクレオチドを含む組成物の製造方法であって、前記ニコチンアミドモノヌクレオチドの安定化工程を含み、前記安定化工程が、請求項6記載の安定化方法により実施される製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドの安定化剤、複合体、複合体を含む組成物、安定化方法、及び組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニコチンアミドモノヌクレオチド(以下、「NMN」という。)を摂取することで、加齢による退行性変化が改善されることが種々の研究で示されている。このため、NMNは、飲食料品や医薬品、化粧品等の添加成分として注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、NMNを有効成分とする、健康補助食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、NMNは、熱と水で容易に分解される不安定な物質である。特に、熱水中では短時間で分解が起こるため、飲食料品等に添加した後の加熱滅菌工程に耐えられず、加水分解してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、加熱滅菌工程におけるNMNの加水分解を抑制することができる、NMNの安定化剤、複合体、複合体を含む組成物、安定化方法、及び組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のNMNの安定化剤は、ミネラル類、脂質類、ビタミン類、タンパク質、及び多糖類の少なくとも一つを含む。
【0008】
本発明の複合体は、NMN及び本発明の安定化剤を含む。
【0009】
本発明の組成物は、本発明の前記複合体を含む。
【0010】
本発明のNMNの安定化方法は、本発明の安定化剤を前記NMNに添加する工程を含む。
【0011】
本発明のNMNを含む組成物の製造方法は、本発明の前記安定化方法による、安定化工程により実施される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱滅菌工程におけるNMNの加水分解を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1におけるNMN安定性比較試験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0015】
本発明のNMN及び安定化剤を含む複合体は、例えば、前記NMNが、α-NMN、β-NMN、及びこれらの混合物からなる群より選ばれてもよい。
【0016】
前記タンパク質は、例えば、コラーゲン等があげられ、前記コラーゲンから得られたゼラチンであってもよい。
【0017】
前記多糖類は、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギナン、グァーガム、アラビアガム、寒天、アルギン酸及びその塩、カラヤガム、スクシノグリカン、食物繊維、でんぷん、デキストリン、シクロデキストリン、及びセルロース等があげられる。
【0018】
前記ミネラル類は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、ヨウ素、セレン、クロム、マンガン、モリブデン等があげられる。
【0019】
前記ビタミン類は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、ビタミンC、パントテン酸、葉酸、ビオチン等があげられる。
【0020】
本発明の複合体に含まれる安定化剤は、例えば、前記ミネラル類、前記脂質類、前記ビタミン類、前記タンパク質、及び前記多糖類から複数を選択してもよいし、いずれか一つを選択してもよい。
【0021】
本発明の複合体を含む組成物は、特に限定されないが、例えば、飲料、食料、健康補助食品(サプリメント)、機能性食品、医薬品、医薬部外品であってもよい。
【0022】
本発明のNMNの安定化方法は、本発明の安定化剤と前記NMNを配合、粉砕、攪拌する工程と、前記攪拌したものに溶媒を添加して混合する工程と、前記溶媒を乾燥する工程を含んでも良い。前記安定化剤と前記NMNの配合比率は、特に限定されないが、例えば、前記安定化剤の前記NMNに対するモル比が1以上であってもよく、上限は特に限定されないが、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、6以下、4以下、又は2以下であってもよい。前記粉砕する工程は、特に限定されないが、例えば、乳鉢‐乳棒等による粉砕、ボールミル、振動ミル、ロールミル、ジェットミル等であってもよい。前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒が挙げられる。前記乾燥する工程は、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、自然乾燥等であってもよい。
【0023】
本発明のNMNを含む組成物の製造方法は、本発明の前記NMNの安定化工程を含んでもよい。
【0024】
本発明のNMN及び安定化剤を含む複合体は、複合体形成前後のNMNの変化率が、例えば、99.0~99.9%、99.0~99.6%、又は、99.0%~99.4%であってもよい。なお、前記NMNの変化率は、後述する方法により算出することができる。
【0025】
(NMNの変化率算出方法)
複合体形成前として、NMN及び安定化剤を精製水に溶解したものを用意する。また、複合体形成後として、NMN及び安定化剤を含む複合体を精製水に溶解したもの(以下、「複合体形成後のNMN」という。)を用意する。これらを、液体クロマトグラフ(以下、「HPLC」という。)を用いて分析する。得られたクロマトグラムから、ピーク面積を算出する。
【0026】
本発明のNMN及び安定化剤を含む複合体は、熱処理後のNMNの残存率が、NMN単体を同条件で熱処理した場合よりも高いことを特徴とする。前記熱処理の温度は、例えば、40~200℃、60~150℃、80~100℃であり、前記熱処理の時間は、例えば、1~180分、15~120分、30~60分であるが、これに限定されるものではない。前記熱処理後のNMNの残存率は、後述の方法により算出することができる。
【0027】
本発明のNMN及び安定化剤を含む複合体は、中長期間保存後のNMNの残存率が、NMN単体を同条件で保存した場合よりも高いことを特徴とする。前記中長期間保存の温度は、例えば、20~96℃、25~70℃、35~50℃であり、前記中長期間の保存期間は、例えば、3時間~2か月、2か月~1年、1年~2年であるが、これに限定されるものではない。
【実施例0028】
次に、本発明の実施例について説明する、ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0029】
[実施例1]
NMN及び安定化剤を精製水に溶解させ、NMNナノ複合物溶解液を得た。前記NMNナノ複合物溶解液を、HPLCで分析した。つぎに前記NMNナノ複合物溶解液を、96℃で滅菌したものについて、HPLCで分析した。さらに、前記滅菌後、40℃にて1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月で保存したものを、HPLCで分析した。結果を
図1に示す。
【0030】
[比較例1]
NMNを30mlの精製水に溶解させ、NMN溶解液を得た。前記NMN溶解液を、HPLCで分析した。つぎに、前記NMN溶解液を、96℃で滅菌したものについて、HPLCで分析した。さらに、前記滅菌後、40℃にて1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月で保存したものを、HPLCで分析した。結果を
図1に示す。
【0031】
なお、
図1において、縦軸は残存率(%)、横軸は保存条件(試験条件)を表す。
【0032】
図1に示した通り、高温環境において、NMN単体よりも、安定化剤存在下のNMNの方が、残存率が高い結果となった。このことから、NMNは安定化剤の存在によって加水分解を受けにくくなり、高温環境において安定性が向上することが分かった。
【0033】
また、中長期の保存環境においても、NMN単体よりも、安定化剤存在下のNMNの方が、残存率が高い結果となった。このことから、NMNは安定化剤の存在によって加水分解を受けにくくなり、中長期間保存において安定性が向上することが分かった。