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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008994
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】アピキサバンの溶出性の改善方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20230112BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230112BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230112BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230112BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230112BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/26
A61P7/02
A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107153
(22)【出願日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2021110713
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 築
(72)【発明者】
【氏名】安田 将之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓哉
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA41
4C076BB01
4C076CC14
4C076DD05
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD66
4C076EE16
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF06
4C076FF09
4C086AA01
4C086AA10
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA20
4C086ZA54
(57)【要約】
【課題】本発明は、薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物からのアピキサバンの溶出性を効率的に改善する方法、アピキサバンの溶出性が改善された医薬組成物、及び当該医薬組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物からアピキサバンの溶出性を改善する方法は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を用いて、前記アピキサバンを非晶質化する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物からアピキサバンの溶出性を改善する方法であって、
ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を用いて、前記アピキサバンを非晶質化する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アピキサバンと前記結晶化阻害剤の混合物を加熱して溶融した後に冷却することにより前記アピキサバンを非晶質化する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬組成物が錠剤である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
更に、非晶質化された前記アピキサバン、迅速崩壊性顆粒、及び滑沢剤含有混合物を混合して打錠する工程を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶化阻害剤としてポリビニルピロリドンを用いる請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記結晶化阻害剤としてポリビニルピロリドンに加えて糖アルコールを用いる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶化阻害剤としてヒドロキシプロピルセルロースを用いる請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
薬効成分であるアピキサバンと結晶化阻害剤を含有し、
前記アピキサバンが非晶質であり、且つ、
前記結晶化阻害剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物を製造するための方法であって、
ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を用いて、前記アピキサバンを非晶質化する工程を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物からのアピキサバンの溶出性を改善する方法、アピキサバンの溶出性が改善された医薬組成物、及び当該医薬組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アピキサバン(化学名:1-(4-メトキシフェニル)-7-オキソ-6-[4-(2-オキソピペリジン-1-イル)フェニル]-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-c]ピリジン-3-カルボキサミド)は、外因性および内因性の血液凝固経路の収束点である第Xa因子を阻害することにより、その下流のプロトロンビンからトロンビンへの変換を抑制し、直接的な抗血液凝固作用および間接的な抗血小板作用を示す薬剤である(非特許文献1)。
【0003】
アピキサバンは、水にほとんど溶けないため(非特許文献1)、その溶出性を制御するための技術が種々開発されている。例えば特許文献1には、アピキサバンの放出を制御するための、アピキサバンの溶解性改良形態を含む製剤形が開示されている。また、特許文献2には、効率的で、より経済的で、危険がより少なく、且つ環境に配慮された、非晶質アピキサバンを含む組成物が開示されている。特許文献3には、アピキサバンの粒径と製剤の溶出性との関係が記載されており、特許文献4には、アピキサバンとヒドロキシエチルセルロースを含む顆粒を含むことにより溶出性が改善された医薬組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-530141号公報
【特許文献2】国際公開第2013/164839号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2017/182908号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2020/127819号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「エリキュース(登録商標)錠2.5mg エリキュース(登録商標)錠5mg」添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、溶出性の改善を課題とした、薬効成分としてアピキサバンを含有する製剤は種々開発されている。しかし、例えば溶出性のためにアピキサバン原薬の粒径を制御する発明があるが、原薬の粒径の制御、特に過剰な微小化には多大なエネルギーを要することがあり、医薬組成物の全体的な製造効率が低下するおそれがある。
そこで本発明は、薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物からのアピキサバンの溶出性を効率的に改善する方法、アピキサバンの溶出性が改善された医薬組成物、及び当該医薬組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の結晶化阻害剤を用いて薬効成分であるアピキサバンを非晶質化すれば、アピキサバンの溶出性が顕著に改善されることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0008】
[1] 薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物からアピキサバンの溶出性を改善する方法であって、
ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を用いて、前記アピキサバンを非晶質化する工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 前記アピキサバンと前記結晶化阻害剤の混合物を加熱して溶融した後に冷却することにより前記アピキサバンを非晶質化する前記[1]に記載の方法。
[3] 前記医薬組成物が錠剤である前記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 更に、非晶質化された前記アピキサバン、迅速崩壊性顆粒、及び滑沢剤含有混合物を混合して打錠する工程を含む前記[3]に記載の方法。
[5] 前記結晶化阻害剤としてポリビニルピロリドンを用いる前記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記結晶化阻害剤としてポリビニルピロリドンに加えて糖アルコールを用いる前記[5]に記載の方法。
[7] 前記結晶化阻害剤としてヒドロキシプロピルセルロースを用いる前記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[8] 薬効成分であるアピキサバンと結晶化阻害剤を含有し、
前記アピキサバンが非晶質であり、且つ、
前記結晶化阻害剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上であることを特徴とする医薬組成物。
[9] 薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物を製造するための方法であって、
ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を用いて、前記アピキサバンを非晶質化する工程を含むことを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、薬効成分であるアピキサバンの溶出性に優れているため、消化管からのアピキサバンの有効な吸収が可能になる。よって本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、薬効成分としてアピキサバンを含有する製剤の一つの形態として、産業上非常に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、アピキサバン原薬と、特定の結晶化阻害剤を用いて非晶質化したアピキサバンのX線構造回折データである。
図2図2は、アピキサバン結晶、又は結晶化阻害剤を用いて非晶質化したアピキサバンを含む錠剤から溶出試験第1液(pH1.2)への溶出性を示すグラフである。
図3図3は、アピキサバン結晶、又は結晶化阻害剤を用いて非晶質化したアピキサバンを含む錠剤から溶出試験第2液(pH6.8)への溶出性を示すグラフである。
図4図4は、コーティングした非晶質アピキサバン固体分散体末を含む錠剤から溶出試験第1液(pH1.2)への溶出性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物からアピキサバンの溶出性を改善する方法、及び、本発明に係る薬効成分としてアピキサバンを含有する医薬組成物の製造方法は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を用いて、前記アピキサバンを非晶質化する工程を含む。
【0012】
本発明に係る医薬組成物は、薬効成分としてアピキサバンを含有する。アピキサバンの化学名は1-(4-メトキシフェニル)-7-オキソ-6-[4-(2-オキソピペリジン-1-イル)フェニル]-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-c]ピリジン-3-カルボキサミドであり、アピキサバンは以下の化学構造を有し、外因性および内因性の血液凝固経路の収束点である第Xa因子を阻害することにより、その下流のプロトロンビンからトロンビンへの変換を抑制し、直接的な抗血液凝固作用および間接的な抗血小板作用を示す。
【0013】
【化1】
【0014】
原薬としてのアピキサバンは、フリー体であってもよいし、医薬上許容される塩であってもよい。アピキサバンの医薬上許容される塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、硝酸塩などの無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、パモ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、スルファニル酸塩、2-アセトキシ安息香酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、シュウ酸塩、イセチオン酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
【0015】
原薬であるアピキサバンは、一般的に結晶であるが、本発明では結晶化阻害剤により非晶質化されるため、その大きさは特に制限されず、適宜調整すればよい。例えば、体積基準の累積50%粒子径(D50)を1μm以上、300μm以下とすることができ、10μm以上、100μm以下が好ましい。また、体積基準の累積90%粒子径(D90)は、50μm以上、500μm以下とすることができ、90μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がより更に好ましく、また、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がより更に好ましい。本発明では、比較的大きな原薬アピキサバンを使用できるため、医薬組成物の生産性は高い。なお、本開示において体積基準の累積50%粒子径(D50)や体積基準の累積90%粒子径(D90)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により体積基準で測定するものとする。
【0016】
本発明に係る医薬組成物におけるアピキサバンの量や割合は、アピキサバンがその作用効果を発揮可能な範囲で適宜調整すればよい。例えば、1錠など1製剤あたりのアピキサバンの量としては、1mg以上、100mg以下とすることができ、2mg以上が好ましく、5mg以上がより好ましく、また、50mg以下が好ましく、20mg以下がより好ましく、15mg以下または10mg以下がより更に好ましい。また、1製剤あたりのアピキサバンの割合は、0.5質量%以上、20質量%以下とすることができ、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、また、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより更に好ましい。例えば、1錠あたりのアピキサバンの量を2.5±0.25mgまたは5±0.5mgとすることができる。
【0017】
本発明では、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を用いて、アピキサバンを非晶質化する。例えば、原薬アピキサバンは一般的に結晶であるところ、溶融や溶解させた後、結晶化阻害剤によりアモルファス状態で固化すればよい。
【0018】
結晶化阻害剤は、比較的低い融点を有し、溶融または溶解したアピキサバンの再結晶化を阻害するものである。具体的には、溶融状態でアピキサバンを溶解したり、また、アピキサバンの固化プロセスにおける結晶化を阻害する。結晶化阻害剤は、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
結晶化阻害剤のうちポリビニルピロリドンとは、N-ビニル-2-ピロリドンが重合した水溶性の高分子化合物である。結晶化阻害剤として使用されるポリビニルピロリドンの分子量は特に制限されないが、例えば重量平均分子量で5000以上、3000000以下のものを使用できる。ポリビニルピロリドンのK値(粘性特性値)も特に制限されないが、例えば、10以上、120以下のものを使用できる。
【0020】
ヒドロキシプロピルセルロースとは、セルロースの水酸基の一部または全部が2-ヒドロキシプロピル基で置換されたセルロース誘導体である。
【0021】
糖アルコールとは、アルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成する糖の一種である。糖アルコールとしては、例えば、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール等の単糖アルコール;及び、6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール、6-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトール(マルチトール)、6-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトール(イソマルチトール)、4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルシトール(ラクチトール)等の二糖アルコールが挙げられる。なお、イソマル(Isomalt)は、6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトールと6-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトールの混合物である。
【0022】
アピキサバン原薬を非晶質化する方法としては、例えば、原薬であるアピキサバン結晶と結晶化阻害剤とを混合した上で、少なくともアピキサバン結晶が溶融または溶解するまで加熱した後、固化するまで冷却すればよい。アピキサバン結晶と結晶化阻害剤との混合物を溶融または溶解する手段としては、例えば、ホットメルト造粒機(Hot melt granulator)やエクストルーダーが挙げられる。加熱温度は、少なくともアピキサバン結晶が溶融または溶解する範囲で適宜調整すればよいが、例えば、150℃以上、350℃以下とすることができ、300℃以下が好ましい。また、冷却条件は、アピキサバンが非晶質化する範囲で適宜調整すればよいが、結晶化阻害剤を用いるため冷却速度を速める必要は特になく、常温まで放冷すればよい。
【0023】
或いは、アピキサバン原薬と結晶化阻害剤を溶媒に溶解した後、溶媒を留去すればよい。溶媒としては、アピキサバン原薬と結晶化阻害剤を適度に溶解できるものであれば特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール溶媒;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒が挙げられ、これら2以上の混合溶媒を用いてもよい。また、アピキサバン原薬と結晶化阻害剤を溶媒に溶解するために、加熱してもよい。
【0024】
溶媒の留去方法は、アピキサバンを非晶質化できれば特に制限されないが、例えば、減圧蒸留や噴霧乾燥が挙げられる。
【0025】
結晶化阻害剤の使用量は、アピキサバンを非晶質化できる範囲で適宜調整すればよいが、例えば、アピキサバンに対して2質量倍以上、50質量倍以下とすることができる。当該割合としては、3質量倍以上が好ましく、また、30質量倍以下が好ましく、20質量倍以下がより好ましく、15質量倍以下がより更に好ましい。
【0026】
アピキサバンと結晶化阻害剤の混合溶融物を冷却したものや、アピキサバンと結晶化阻害剤を含む溶液を濃縮して得たものは、通常、塊体であるので、解砕した後に整粒することが好ましい。溶液を噴霧乾燥して得られた粉体も、所望の粒度に整粒することが好ましい。例えば、結晶化阻害剤を含む非晶質アピキサバン整粒末の体積基準の累積50%粒子径(D50)としては、30μm以上、1000μm以下とすることができる。
【0027】
結晶化阻害剤を含む非晶質アピキサバン整粒末は、コーティングされていてもよい。コーティングの皮膜形成剤としては、例えば、エチルセルロース、タルク、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、シェラック、ツェイン、及びこれら2以上の混合物が挙げられる。
非晶質アピキサバン整粒末は、常法によりコーティングすればよい。例えば、非晶質アピキサバン整粒末を流動または転動させつつ、皮膜形成剤を含む溶液または分散液を噴霧し、乾燥した後に解砕すればよい。コーティングされた非晶質アピキサバン整粒末も、例えば、体積基準の累積50%粒子径(D50)が30μm以上、1000μm以下程度になるよう更に整粒してもよい。
【0028】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、医薬製剤に配合される一般的な添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、界面活性剤、甘味料、香料などが挙げられる。
【0029】
賦形剤は、製剤の成形性や服用し易さの向上のために薬効成分を希釈したり製剤を増量したりするために配合される添加剤である。賦形剤としては、例えば、乳糖、結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトール、デキストリン、白糖などが挙げられる。賦形剤の量は適宜調整すればよいが、例えば、製剤全体に対して20質量%以上、80質量%以下とすることができ、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、また、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0030】
崩壊剤は、水分を取り込んで錠剤の崩壊を促進させ、薬効成分が放出され易くするために配合される成分である。崩壊剤としては、特に制限されないが、例えばクロスカルメロースナトリウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、軽質無水ケイ酸、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)等が挙げられる。崩壊剤の量は、製剤が服用後に良好に崩壊して薬効成分を放出できる範囲で適宜調整すればよい。例えば、製剤全体に対して5質量%以上、30質量%以下とすることができ、10質量%以上、25質量%以下が好ましい。
【0031】
結合剤は、各成分を結合し、顆粒や錠剤の強度を増すために加えられる成分である。結合剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース等を用いることができる。製剤における結合剤の量や割合は、所望の製剤強度や顆粒強度などに応じて適宜調整すればよい。例えば、製剤全体に対して0.1質量%以上、10質量%以下とすることができる。当該割合としては、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がより更に好ましく、また、5質量%以下が好ましい。
【0032】
滑沢剤は、各成分の表面に付着してその流動性を高めたり、各成分の装置への付着を抑制したりするために加えられる成分である。滑沢剤としては、特に制限されないが、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等を用いることができ、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。滑沢剤の量や割合は、例えば各成分の混合や打錠が良好に行える範囲で適宜調整すればよい。例えば、製剤全体に対して0.05質量%以上、5質量%以下とすることができる。当該割合としては、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、また、4質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0033】
流動化剤は、各成分の流動性を高めて各成分の均一な混合を促進する成分であり、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。流動化剤の量や割合は、例えば各成分の混合や打錠が良好に行える範囲で適宜調整すればよく、例えば製剤全体に対して0.05質量%以上、5質量%以下とすることができる。当該割合としては、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、また、4質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0034】
甘味料や香料は、各成分、特に薬効成分であるアピキサバンの作用効果が阻害されない範囲で、それぞれの作用効果が発揮される範囲で微量配合すればよい。
【0035】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物の剤形は特に制限されないが、例えば錠剤、細粒剤、ドライシロップ剤が挙げられる。錠剤としては、薬効成分であるアピキサバンを含む顆粒と、滑沢剤などの他の成分を混合して打錠することにより製造される一般的な錠剤の他、薬効成分含有顆粒、迅速崩壊性顆粒、及び滑沢剤含有混合物を含有する圧縮成形体である口腔内崩壊錠が挙げられる。細粒剤は、アピキサバンを含む顆粒を主成分とする。なお、ドライシロップは、水に分散して服用されるものである。
【0036】
本発明に係る口腔内崩壊錠に含まれる薬効成分含有顆粒は、薬効成分であるアピキサバンの他、賦形剤、崩壊剤、結合剤、界面活性剤などを含んでもよい。薬効成分含有顆粒の大きさは、適宜調整すればよい。例えば体積基準の累積50%粒子径(D50)を30μm以上、300μm以下とすることができ、50μm以上、200μm以下が好ましい。
【0037】
本発明に係る口腔内崩壊錠に含まれる迅速崩壊性顆粒は、口腔内で水分を吸収して本発明に係る口腔内崩壊錠の崩壊を迅速に促進し、薬効成分であるアピキサバンの放出を速めるための顆粒である。迅速崩壊性顆粒は、少なくとも賦形剤と崩壊剤を含む。
【0038】
本発明に係る口腔内崩壊錠に含まれる滑沢剤含有混合物は、滑沢剤を含み、薬効成分含有顆粒と迅速崩壊性顆粒との良好な混合を促進し、これらの混合物の打錠を容易にするものである。滑沢剤含有混合物は少なくとも滑沢剤を含み、その他、賦形剤、流動化剤、甘味料、香料などを含んでもよい。
【0039】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物の水分量は特に制限されないが、例えば、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。当該水分含量の下限は特に制限されず、0質量%でもよいが、当該水分含量は例えば0.2質量%以上とすることができる。当該水分含量は、例えばカールフィッシャー法により測定することができる。
【0040】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物が、口腔内崩壊錠などの錠剤である場合、その硬度は特に制限されないが、例えば、当該硬度としては25N以上、200N以下が好ましく、30N以上、150N以下がより好ましい。当該硬度は、例えば、打錠圧により調整することができる。
【0041】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物が口腔内崩壊錠である場合、その崩壊時間は特に制限されないが、例えば、90秒以下であることが好ましく、60秒以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、その剤形に応じて一般的な方法により製造することができる。例えば錠剤の場合、前記の通り結晶化阻害剤を用いてアピキサバンを非晶質化した後、非晶質アピキサバンを賦形剤や滑沢剤などの添加剤と混合した後、打錠すればよい。
【0043】
口腔内崩壊錠などの錠剤の場合、錠剤の大きさは適宜調整すればよい。例えば錠剤の形状は経口で服用し易い円盤形やレンズ形などとし、その直径を4mm以上、10mm以下、厚さを2mm以上、5mm以下、1錠あたりの重さを50mg以上、360mg以下程度とすることができる。
【0044】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物の投与量は、患者の症状、重篤度、年齢、性別などに応じて適宜調整すればよいが、例えば、アピキサバンの投与量に換算して、1日あたり1mg以上、20mg以下を1回以上、3回以下、5日間以上、10日間以下にわたって投与すればよい。特に、80歳以上の患者、体重が60kg以下の患者、血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上の患者には、投与量を比較的低くし、例えば一日あたりアピキサバン2.5mgを1日2回投与することが好ましい。
【0045】
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、薬効成分であるアピキサバンに加えて、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及び糖アルコールから選択される1以上の結晶化阻害剤を含み、アピキサバンは非晶質である。その結果、アピキサバンの溶出性、少なくとも胃中溶出性と十二指腸での溶出性が改善されていることが実証されている。
【実施例0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0047】
実施例1
(1)アピキサバンの非晶質化
表1に示す組成でアピキサバン原薬(D50:68.2μm,D90:163μm)とポリビニルピロリドン(「Kollidon 30」BASF社製)を混合し、Hot Melt Granulator(「HAAKETM MiniCTW マイクロコニカル二軸スクリューコンパウンダー 567-2090」Thermo Fisher scientific社製)に投入し、180℃で溶融した後、室温まで自然冷却することにより固化させた。得られた固化混合物を衝撃式粉砕機にて粉砕した後、30M篩で整粒することにより、整粒末を得た。
得られた整粒末を、アピキサバン原薬と共にX線構造回折で分析した。結果を図1に示す。
図1に示された結果の通り、アピキサバン原薬には明確な回折ピークが認められ、結晶であるのに対して、上記で得られた整粒末には明確な回折ピークが認められず、非晶質であった。
【0048】
(2)迅速崩壊性顆粒の調製
表1に示す組成で、乳糖水和物、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸、及びデンプングリコール酸ナトリウムを流動層造粒乾燥機に投入して混合した。別途、トウモロコシデンプンを精製水に分散させ、造粒液を得た。混合物に造粒液を噴霧して乾燥した後、乾式整粒機で整粒することにより、迅速崩壊性顆粒を得た。
【0049】
(3)打錠
表1に示す組成で、迅速崩壊性顆粒と、軽質無水ケイ酸およびラウリル硫酸ナトリウムを混合し、更にステアリン酸マグネシウムを混合した。得られた混合物と上記非晶質アピキサバンを表1に示す組成で量り取って混合し、打錠することにより、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0050】
実施例2
表1に示す組成でアピキサバン原薬(D50:68.2μm,D90:163μm)とヒドロキシプロピルセルロース(「HPC-L」日本曹達社製)を混合し、Hot Melt Granulator(「HAAKETM MiniCTW マイクロコニカル二軸スクリューコンパウンダー 567-2090」Thermo Fisher scientific社製)に投入し、210℃で溶融した後、室温まで自然冷却することにより固化させた。得られた固化混合物を衝撃式粉砕機にて粉砕した後、30M篩で整粒することにより、整粒末を得た。
得られた整粒末をX線構造回折で分析した。結果を図1に示す。
図1に示された結果の通り、アピキサバン原薬には明確な回折ピークが認められ、結晶であるのに対して、上記で得られた整粒末には明確な回折ピークが認められず、非晶質であった。
得られた非晶質アピキサバンを用いた以外は実施例1(2),(3)と同様にして、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0051】
実施例3
表1に示す組成でアピキサバン原薬(D50:68.2μm,D90:163μm)、ポリビニルピロリドン(「Kollidon 30」BASF社製)、及びイソマル水和物を混合し、Hot Melt Granulator(「HAAKETM MiniCTW マイクロコニカル二軸スクリューコンパウンダー 567-2090」Thermo Fisher scientific社製)に投入し、180℃で溶融した後、室温まで自然冷却することにより固化させた。得られた固化混合物を衝撃式粉砕機にて粉砕した後、30M篩で整粒することにより、整粒末を得た。
得られた整粒末をX線構造回折で分析した。結果を図1に示す。
図1に示された結果の通り、アピキサバン原薬には明確な回折ピークが認められ、結晶であるのに対して、上記で得られた整粒末には明確な回折ピークが認められず、非晶質であった。
得られた非晶質アピキサバンを用いた以外は実施例1(2),(3)と同様にして、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0052】
比較例1
表1に示す組成で、乳糖水和物、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸、及びデンプングリコール酸ナトリウムを流動層造粒乾燥機に投入して混合した。別途、トウモロコシデンプンを精製水に分散させ、造粒液を得た。混合物に造粒液を噴霧して乾燥した後、乾式整粒機で整粒することにより、迅速崩壊性顆粒を得た。
表1に示す組成で、迅速崩壊性顆粒、アピキサバン原薬、ポリビニルピロリドン(「Kollidon 30」BASF社製)、軽質無水ケイ酸、及びラウリル硫酸ナトリウムを混合し、更にステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠することにより、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0053】
比較例2
表1に示す組成で、ポリビニルピロリドンの代わりにヒドロキシプロピルセルロース(「HPC-L」日本曹達社製)を用いた以外は比較例1と同様にして、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0054】
比較例3
表1に示す組成で、ポリビニルピロリドンの代わりにポリビニルピロリドン(「Kollidon 30」BASF社製)とイソマル水和物を用いた以外は比較例1と同様にして、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
試験例1: 溶出試験
日本薬局方 6.10溶出試験法のパドル法により、及び実施例1~3及び比較例1~3のアピキサバン含有口腔内崩壊錠の薬剤溶出性を試験した。
具体的には、溶出試験機に溶出試験第1液(pH1.2,関東化学社製)または溶出試験第2液(pH6.8,関東化学社製)の10倍希釈液(900mL)を入れ、試験液の温度を37±0.5℃に調整し、50rpmで撹拌しつつ、各錠剤1錠を加えた。錠剤の添加から、溶出試験第1液を用いた場合には5,10,15,30,60,及び120分後に、溶出試験第2液を用いた場合には更に240分後に溶出液20mLを採取し、口径0.45μm以下のメンブランフィルターで濾過した。濾液のうち最初の10mLは除き、次の濾液を試料溶液とした。
別途、定量用アピキサバン約20mgを正確に量り、試験液を加えて正確に200mLとし、標準溶液とした。試料溶液と標準溶液を30μLずつ正確に量りとり、以下の条件の液体クロマトグラフィーで各液のアピキサバンピーク面積ATとAsを測定し、下記式により溶出率を算出した。測定は各錠剤につき6回ずつ行い、平均を算出した。胃液に相当する溶出試験第1液を用いた場合の結果を図2に、小腸内環境に相当する溶出試験第2液を用いた場合の結果を図3に示す。
【0057】
[液体クロマトグラフィーの条件]
カラム: 内径4.6mm×長さ10cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの
カラム温度: 40℃付近の一定温度
移動相: リン酸水素二ナトリウム3.6gを水1000mLに溶解し、リン酸を加えてpHを7.0に調整し、得られた溶液650mLにアセトニトリル350mLを混和したもの
流量: アピキサバンの保持時間が約4.5分になるよう調整
【0058】
【数1】
【0059】
図2及び図3に示される結果の通り、結晶であるアピキサバン原薬をそのまま用いて製造した比較例1~3の口腔内崩壊錠からのアピキサバンの溶出性は、全く十分ではなかった。
それに対して、特定の結晶化阻害剤を用いてアピキサバンを非晶質化した上で製造した実施例1~3の口腔内崩壊錠からのアピキサバンの溶出性は、胃液に相当する溶出試験第1液、及び小腸内環境に相当する溶出試験第2液の両方に対して、顕著に改善されていた。
以上の結果の通り、特定の結晶化阻害剤を用いて薬効成分であるアピキサバンを非晶質化することにより、医薬組成物からのアピキサバンの溶出性を顕著に改善できることが実証された。
【0060】
実施例4~7
(1)アピキサバンの非晶質化
表2に示す組成でアピキサバン原薬(D50:40.166μm,D90:108.450μm)とヒドロキシプロピルセルロース(「HPC-SSL」日本曹達社製)を、2軸エクストルーダー(「Pharma11」サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、230℃で溶融混合した後、室温まで自然冷却することにより、固体分散体を製造した。得られた固体分散体をピンミル粉砕機で解砕することにより、実施例4のための固体分散体末を得た。
【0061】
(2)固体分散体末のコーティング
実施例5~7では、得られた固体分散体末をコーティングした。
具体的には、精製水と99.5%エタノールを混和して混合溶媒を得た。得られた混合溶媒に、表2に示す組成でエチルセルロース(「エトセルPremium 7FP」Nutrition&Biosciences社製)を溶解させ、更にタルク(「タルカンハヤシ」林化成社製)を分散させて、コーティング液を得た。
固体分散体末を流動層造粒乾燥機に仕込み、コーティング液にてコーティングを行い、乾燥した後、乾式整粒機で整粒することにより整粒末を得た。
【0062】
(3)迅速崩壊性顆粒の調製
表2に示す組成で、乳糖水和物、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸、及びデンプングリコール酸ナトリウムを流動層造粒乾燥機に投入して混合した。別途、トウモロコシデンプンを精製水に分散させ、造粒液を得た。混合物に造粒液を噴霧して乾燥した後、乾式整粒機で整粒することにより、迅速崩壊性顆粒を得た。
【0063】
(4)打錠
表2に示す組成で、コーティング整粒末、迅速崩壊性顆粒、軽質無水ケイ酸およびステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠することにより、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0064】
【表2】
【0065】
試験例2: 溶出試験
溶出試験機に溶出試験第1液(pH1.2,関東化学社製)を用い、試験例1と同様の条件で、実施例4~7のアピキサバン含有口腔内崩壊錠の薬剤溶出性を試験した。結果を図4に示す。
【0066】
図4に示される結果の通り、アピキサバンを非晶質化する限り、コーティング量が少ないほど溶出性が高い傾向は認められるが、コーティングしてもアピキサバンの溶出性は十分に維持されることが示された。なお、コーティング量が10質量%以上である場合、10質量%の製剤(実施例6)と20質量%の製剤(実施例7)とで溶出性は変わらなかった。その理由の一つとしては、核粒子が球形ではなく歪な形態をしていることにより、均一にコーティングできなかったことが考えられる。
【0067】
実施例8
組成を表3に示す通りにした以外は実施例5~7と同様にして、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を製造した。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例9
(1)アピキサバンの非晶質化
表4に示す組成でアピキサバン原薬(D50:40.166μm,D90:108.450μm)とヒドロキシプロピルセルロース(「HPC-SSL」日本曹達社製)を、2軸エクストルーダー(「Pharma11」サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、230℃で溶融混合した後、室温まで自然冷却することにより、固体分散体を製造した。得られた固体分散体をピンミル粉砕機で解砕することにより、固体分散体末を得た。
【0070】
(2)固体分散体末のコーティング
精製水と99.5%エタノールを混和して混合溶媒を得た。得られた混合溶媒に、表4に示す組成でエチルセルロース(「エトセルPremium 7FP」Nutrition&Biosciences社製)を溶解させ、更にタルク(「タルカンハヤシ」林化成社製)を分散させて、コーティング液Iを得た。
固体分散体末を流動層造粒乾燥機に仕込み、コーティング液Iにてコーティングを行い、乾燥した後、乾式整粒機で整粒することによりコーティング整粒末Iを得た。
更に、上記混合溶媒にアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを溶解させ、更にタルク(「タルカンハヤシ」林化成社製)を分散させて、コーティング液IIを得た。
コーティング整粒末Iを流動層造粒乾燥機に仕込み、コーティング液IIにてコーティングを行い、乾燥した後、乾式整粒機で整粒することによりコーティング整粒末IIを得た。
【0071】
(3)迅速崩壊性顆粒の調製
表4に示す組成で、乳糖水和物、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸、及びデンプングリコール酸ナトリウムを流動層造粒乾燥機に投入して混合した。別途、トウモロコシデンプンを精製水に分散させ、造粒液を得た。混合物に造粒液を噴霧して乾燥した後、乾式整粒機で整粒することにより、迅速崩壊性顆粒を得た。
【0072】
(4)打錠
表4に示す組成で、コーティング整粒末II、迅速崩壊性顆粒、軽質無水ケイ酸およびステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠することにより、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0073】
【表4】
【0074】
実施例10
(1)アピキサバンの非晶質化
表5に示す組成でアピキサバン原薬(D50:40.166μm,D90:108.450μm)とヒドロキシプロピルセルロース(「HPC-SSL」日本曹達社製)を、2軸エクストルーダー(「Pharma11」サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、230℃で溶融混合した後、室温まで自然冷却することにより、固体分散体を製造した。得られた固体分散体をピンミル粉砕機で解砕することにより、固体分散体末を得た。
【0075】
(2)固体分散体末のコーティング
精製水と99.5%エタノールを17:150(質量比)で混和して混合溶媒を得た。得られた混合溶媒に、表5に示す組成でエチルセルロース(「エトセルPremium 7FP」Nutrition&Biosciences社製)を溶解させ、更にタルク(「タルカンハヤシ」林化成社製)を分散させて、コーティング液を得た。
固体分散体末を流動層造粒乾燥機に仕込み、コーティング液にてコーティングを行い、乾燥した後、乾式整粒機で整粒することによりコーティング整粒末を得た。
【0076】
(3)打錠
表5に示す組成で、乳糖水和物、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを混合した。得られた混合物と上記コーティング整粒末を表5に示す組成で量り取って混合し、打錠することにより、アピキサバン錠を得た。
【0077】
【表5】
図1
図2
図3
図4