(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089943
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】剥離紙、その製造方法、及び、粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 29/06 20060101AFI20230621BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230621BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20230621BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20230621BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230621BHJP
【FI】
B32B29/06
B32B27/00 L
D21H27/00 A
C09J7/40
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191405
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021204102
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 純也
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AK42B
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB05D
4F100DG10A
4F100JK15B
4F100JL14C
4F100JN21
4F100YY00B
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4L055BE08
4L055BE09
4L055EA11
4L055EA12
4L055GA42
4L055GA43
(57)【要約】
【課題】プラスチックフィルムを使用することなく、ポリラミネート剥離紙と同程度の高い平滑性を有する剥離紙を提供すると共に、剥離紙のリサイクルを容易にする。
【解決手段】紙基材2上に平滑剤層3が形成され、平滑剤層3上に剥離剤層4が形成された剥離紙1であって、当該剥離紙1の剥離剤層4側のJIS P 8119に基づくベック平滑度が、1万秒以上である、または、当該剥離紙1の剥離剤層4側の表面におけるJIS B 0632:2001(ISO11562:1996)及びISO 16610-21:2011に準拠したレーザー顕微鏡を用いての表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrが、0.16以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に平滑剤層が形成され、前記平滑剤層上に剥離剤層が形成された剥離紙であって、
当該剥離紙の前記剥離剤層側のJIS P 8119に基づくベック平滑度が、1万秒以上である、
ことを特徴とする剥離紙。
【請求項2】
紙基材上に平滑剤層が形成され、前記平滑剤層上に剥離剤層が形成された剥離紙であって、
当該剥離紙の前記剥離剤層側の表面におけるJIS B 0632:2001(ISO11562:1996)及びISO 16610-21:2011に準拠したレーザー顕微鏡を用いての表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrが、0.16以下である、
ことを特徴とする剥離紙。
【請求項3】
紙基材と、前記紙基材上に形成される平滑剤層と、前記平滑剤層上に形成される剥離剤層とを備える剥離紙の製造方法であって、
前記紙基材上に平滑剤層を形成する平滑剤層形成工程と、前記平滑剤層上に剥離剤層を形成する剥離剤層形成工程とを含み、
前記平滑剤層形成工程は、前記紙基材上に、平滑剤を塗布し、前記平滑剤が湿潤状態にあるときに、前記平滑剤の塗布面に、フィルムの平滑面を密着し、前記平滑剤を乾燥させた後に、前記フィルムを剥離して前記平滑剤層を形成する、
ことを特徴とする剥離紙の製造方法。
【請求項4】
前記請求項3に記載の剥離紙の製造方法によって得られる剥離紙上に、粘着剤を塗工し、塗工された前記粘着剤の表面に透明基材を積層する、
ことを特徴とする粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙、その製造方法、及び、粘着シートの製造方法に関し、更に詳しくは、平滑性に優れた剥離紙、その製造方法、及び、粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にラベル等の粘着シートは、剥離紙上に、粘着剤層及び表面基材が積層されて構成されている。このような粘着シートでは、剥離紙の表面に凹凸があると、その凹凸が粘着剤層に転写される。このため、表面基材が、透明基材からなる透明な粘着シートでは、粘着剤層に転写された凹凸に起因する乱反射等によって、粘着シートの透明性が損なわれる。
【0003】
このため、このような透明基材を用いた粘着シートでは、表面が平滑な剥離紙として、紙基材上に、ポリエチレン等のプラスチックフィルムをラミネートし、その上に剥離剤層を形成した、いわゆる、ポリラミネート剥離紙が使用される場合が多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年、プラスチックゴミ問題が深刻化しており、環境対策として脱プラスチックが重要視され、プラスチックの使用量の削減が求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、プラスチックフィルムを使用することなく、ポリラミネート剥離紙と同程度の高い平滑性を有する剥離紙、その製造方法、及び、粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0008】
(1)本発明に係る剥離紙は、紙基材上に平滑剤層が形成され、前記平滑剤層上に剥離剤層が形成された剥離紙であって、
当該剥離紙の前記剥離剤層側のJIS P 8119に基づくベック平滑度が、1万秒以上である。
【0009】
本発明に係る剥離紙によると、紙基材上に表面が平滑な平滑剤層を形成することによって、JIS P 8119に基づくベック平滑度が、1万秒以上というポリラミネート剥離紙と同程度の高い平滑度の剥離紙を得ることができる。しかも、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用する必要がないので、プラスチックの使用量を削減することができ、脱プラスチックに貢献することができる。
【0010】
更に、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用しないので、リサイクルが容易となり、当該剥離紙から効率的に紙をリサイクルすることができる。
【0011】
(2)本発明に係る剥離紙は、紙基材上に平滑剤層が形成され、前記平滑剤層上に剥離剤層が形成された剥離紙であって、
当該剥離紙の前記剥離剤層側の表面におけるJIS B 0632:2001(ISO11562:1996)及びISO 16610-21:2011に準拠したレーザー顕微鏡を用いての表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrが、0.16以下である。
【0012】
本発明に係る剥離紙によると、紙基材上に表面が平滑な平滑剤層を形成することによって、剥離剤層側の表面におけるJIS B 0632:2001(ISO11562:1996)及びISO 16610-21:2011に準拠したレーザー顕微鏡を用いての表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrが、0.16以下というポリラミネート剥離紙と同程度の表面粗さを有する平滑な剥離紙を得ることができる。しかも、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用する必要がないので、プラスチックの使用量を削減することができ、脱プラスチックに貢献することができる。
【0013】
更に、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用しないので、リサイクルが容易となり、当該剥離紙から効率的に紙をリサイクルすることができる。
【0014】
(3)本発明に係る剥離紙の製造方法は、紙基材と、前記紙基材上に形成される平滑剤層と、前記平滑剤層上に形成される剥離剤層とを備える剥離紙の製造方法であって、
前記紙基材上に平滑剤層を形成する平滑剤層形成工程と、前記平滑剤層上に剥離剤層を形成する剥離剤層形成工程とを含み、前記平滑剤層形成工程は、前記紙基材上に、平滑剤を塗布し、前記平滑剤が湿潤状態にあるときに、前記平滑剤の塗布面に、フィルムの平滑面を密着し、前記平滑剤を乾燥させた後に、前記フィルムを剥離して前記平滑剤層を形成する。
【0015】
本発明に係る剥離紙の製造方法によると、紙基材上に形成される平滑剤層の表面は、密着された後に剥離されるフィルムの平滑面が転写されるので、ポリラミネート剥離紙と同程度の高い平滑性を有する剥離紙を得ることができる。
【0016】
(4)本発明に係る粘着シートの製造方法は、上記(3)の製造方法によって得られる剥離紙上に、粘着剤を塗工し、塗工された前記粘着剤の表面に透明基材を積層する。
【0017】
本発明に係る粘着シートの製造方法によると、上記(3)の製造方法によって得られる剥離紙、すなわち、高い平滑性を有する剥離紙上に、粘着剤を介して透明基材を積層して透明な粘着シートを製造するので、粘着剤層に剥離紙の表面の凹凸が転写されるといったことがない。これによって、当該粘着シートを剥離紙から剥がして対象物に貼り付けたときに、粘着剤層の凹凸に起因する乱反射等が生じないので、透明基材の透明性が損なわれることがなく、高い透明性を保つことができる。
【0018】
しかも、プラスチックフィルムを有するポリラミネート剥離紙を使用しないので、プラスチックの使用量を削減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の剥離紙によれば、紙基材上に表面が平滑な平滑剤層を形成することによって、JIS P 8119に基づくベック平滑度が、1万秒以上というポリラミネート剥離紙と同程度の高い平滑度の剥離紙を得ることができる。
【0020】
また、本発明の剥離紙によれば、紙基材上に表面が平滑な平滑剤層を形成することによって、剥離剤層側の表面におけるJIS B 0632:2001(ISO11562:1996)及びISO 16610-21:2011に準拠したレーザー顕微鏡を用いての表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrが、0.16以下というポリラミネート剥離紙と同程度の表面粗さを有する平滑な剥離紙を得ることができる。
【0021】
しかも、本発明の剥離紙は、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用する必要がないので、プラスチックの使用量を削減することができ、脱プラスチックに貢献することができる。
【0022】
更に、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用しないので、リサイクルが容易となり、当該剥離紙から効率的に紙をリサイクルすることができる。
【0023】
本発明の剥離紙の製造方法によれば、紙基材上に形成される平滑剤層の表面に、フィルムの平滑面を転写して、高い平滑性を有する剥離紙を得ることができる。
【0024】
本発明の粘着シートの製造方法によれば、高い平滑性を有する剥離紙上に、粘着剤を介して透明基材を積層することによって、透明な粘着シートを製造するので、粘着剤層に剥離紙の表面の凹凸が転写されるといったことがなく、透明基材の高い透明性を保つことができる。
【0025】
しかも、本発明の粘着シートは、プラスチックフィルムを有するポリラミネート剥離紙を使用しないので、プラスチックの使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る剥離紙の模式的な概略断面図である。
【
図2】
図2は
図1の剥離紙の製造方法における平滑剤層形成工程を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は
図2の平滑剤層形成工程において、紙基材の平滑剤塗布面に、フィルムが密着された状態を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は
図2の平滑剤層形成工程において、平滑剤層からフィルムが剥離された状態を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は本発明の実施形態に係る製造方法によって製造された粘着シートの模式的な概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る剥離紙の模式的な概略断面図である。なお、この
図1及び後述の
図3~
図5では、紙基材2の表面の凹凸を誇張して示している。
【0029】
この実施形態の剥離紙1は、シート状の紙基材2上に、平滑剤層3、及び、剥離剤層4が積層された構造となっている。
【0030】
紙基材2は、例えば、上質紙、再生紙、片艶紙、耐油紙、コート紙、アート紙、クラフト紙、グラシン紙、キャスコート紙等の紙製の基材である。
【0031】
平滑剤層3は、紙基材2の表面の微小な凹凸を覆って平滑な面を形成するための層である。この平滑剤層3を形成する平滑剤は、結着剤中に充填剤、架橋剤などを添加したものが用いられる。結着剤である樹脂としては、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、例えば、炭酸ジルコニウムなどが挙げられる。充填剤としては、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、炭酸ジルコニウム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。
【0032】
剥離剤層4を形成する剥離剤としては、特に限定はなく、例えば、シリコーン系、フッ素系、アルキッド樹脂、長鎖アルキル系樹脂、各種ワックス類等の剥離剤が挙げられる。これらの中でも、剥離特性から、剥離剤はシリコーン系剥離剤を含むのが好ましい。
【0033】
この実施形態の剥離紙1では、紙基材2の表面の微小な凹凸を、平滑剤層3によって覆うと共に、後述する製造方法によって、平滑剤層3の表面を平滑にしている。この表面が平滑な平滑剤層3上に、剥離剤層4が形成されて剥離紙1が得られる。
【0034】
このように剥離紙1は、紙基材2の表面の微小な凹凸を覆う、表面が平滑な平滑剤層3を備えているので、従来のポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用することなく、高い平滑性を有している。
【0035】
この剥離紙1は、後述のように、剥離剤層4側のJIS P 8119の規格に基づくベック平滑度が、1万秒以上である。また、剥離剤層4側の表面におけるJIS B 0632:2001(ISO11562:1996)及びISO 16610-21:2011に準拠したレーザー顕微鏡を用いての表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrが、0.16以下である。
【0036】
平滑剤層3は、剥離剤層4を形成する工程において、剥離剤が紙基材2の内部へ浸透するのを防ぐ目止め層としての機能も備えている。
【0037】
本実施形態の剥離紙1の表面は、紙基材2の表面の凹凸が表れていない高い平滑性を有しているので、この剥離紙1に、粘着剤層及び表面基材を積層して粘着シートを形成した場合に、粘着シートの粘着剤層に、剥離紙の表面の凹凸が転写されることはなく、粘着シートの外観を損なうこともない。
【0038】
次に、この実施形態の剥離紙の製造方法について説明する。
【0039】
この実施形態の剥離紙の製造方法は、紙基材2上に平滑剤層3を形成する平滑剤層形成工程と、平滑剤層3上に剥離剤層4を形成する剥離剤層形成工程とを含み、平滑剤層形成工程は、紙基材2上に、平滑剤を塗布し、平滑剤が湿潤状態にあるときに、平滑剤の塗布面に、フィルムの平滑面を密着し、平滑剤を乾燥させた後に、フィルムを剥離して平滑剤層3を形成するものである。
【0040】
図2は、この実施形態の剥離紙の製造方法における平滑剤層形成工程を示す概略構成図である。
【0041】
この平滑剤層形成工程では、巻回されたフィルム6が、フィルム送出し装置5から引き出される。このフィルム6は、平滑な面を有するフィルムである。このようなフィルム6としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミド(ナイロン)フィルム、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。
【0042】
また、巻回された紙基材2が、基材送出し装置7から引き出される。基材送出し装置7から引出された紙基材2は、平滑剤塗布ローラ8で、その表面に平滑剤3aが塗布される。平滑剤3aが塗布された紙基材2は、フィルム6と接合するための接合ローラ9へ送られる。
【0043】
接合ローラ9では、紙基材2の湿潤状態にある平滑剤塗布面に、フィルム6が密着され、紙基材2とフィルム6とが、平滑剤3aの層を介して接合される。
【0044】
接合された紙基材2とフィルム6は、乾燥装置10に送られる。この乾燥装置10において、紙基材2とフィルム6との間に挟まれた平滑剤3aが乾燥されて、
図3に示すように、平滑剤層3が形成される。このとき、紙基材2と平滑剤層3とが接着されると共に、平滑剤層3のフィルム6側には、フィルム6の平滑な面が転写される。
【0045】
乾燥装置10で平滑剤層3が形成された後、剥離装置11によって、平滑剤層3からフィルム6が剥離される。剥離されたフィルム6は、フィルム巻き取りローラ12によって巻き取られる。フィルム6が剥離されることによって、紙基材2の表面に平滑剤層3が露出する。この平滑剤層3の表面は、
図4に示すように、フィルム6の平滑な面が転写されている。
【0046】
平滑剤層3が形成された紙基材2は、巻き取りローラ13に巻き取られる。
【0047】
このようにして得られた紙基材2は、紙基材2の一方の面上に、平滑面を有する平滑剤層3が形成されている。
【0048】
上記のようにして紙基材2上に平滑剤層3が形成された後、次の剥離剤層形成工程では、例えば、ブレードコータ、グラビアコータ、エアナイフコータ等の塗工装置を使用し、平滑剤層3上に、剥離剤を塗布し、乾燥する。これによって、上記
図1に示される剥離紙1を得る。
【0049】
このように本実施形態の剥離紙の製造方法によれば、紙基材2に平滑剤3aを塗布してフィルム6と密着させ、乾燥してフィルム6を剥離することによって、フィルム6の平滑面が転写された平滑面を有する平滑剤層3を形成することができる。
【0050】
本件発明者は、本実施形態の剥離紙を実施例とし、本出願人がそれぞれ製造するポリラミネート剥離紙及びグラシン剥離紙を、それぞれ比較例1及び比較例2として平滑度等の物性を測定した。比較例1及び比較例2では、紙基材の表面に、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)からなる目止め剤を塗工した。
【0051】
実施例の紙基材は、コート紙を使用し、平滑剤を塗布した塗布面に密着させる平滑面を有するフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。
【0052】
平滑剤としては、結着剤及び充填剤等を含む主剤と、硬化剤と、水とを、85.26:10.34:4.40の重量%で混合した材料を使用した。
【0053】
平滑剤層の厚みは、1.5μmとした。
【0054】
また、ポリラミネート剥離紙の紙基材は、グラシン紙を使用し、ラミネートフィルムは、ポリエチレンを使用した。
【0055】
剥離剤層は、実施例、比較例1及び比較例2で共通の剥離剤とした。
【0056】
測定項目は、平滑度、光沢度、及び、表面粗さとした。
【0057】
平滑度については、JIS P 8119の規格に準拠してベック平滑度を測定した。このベック平滑度の測定では、ガラス平面と試験片(剥離紙)の接触面を一定量の大気圧空気が流れるのに必要な時間を測定する。
【0058】
光沢度(%)については、JIS Z 8741の規格に準拠して60°での光沢度(%)を測定した。
【0059】
表面粗さについては、JIS B 0632:2001(ISO11562:1996)及びISO 16610-21:2011に準拠してレーザー顕微鏡を用いて、界面の展開面積比(Sdr)を測定した。
【0060】
測定結果を、下記表1に示す。
【0061】
【表1】
平滑度については、実施例と、グラシン剥離紙である比較例2の測定は可能であったが、ポリラミネート剥離紙である比較例1では、ポリラミネート部分の柔軟性により空気の排出を遮断してしまい測定が不可能であった。
【0062】
実施例の剥離紙の平滑度は、1万秒以上であり、グラシン剥離紙である比較例2の2330秒に比べて大幅に長く、平滑度が優れていることが分かる。
【0063】
ポリラミネート剥離紙である比較例1は、上記のように平滑度が測定できなかったために、実施例と比較することはできない。
【0064】
しかし、60°の光沢度は、ポリラミネート剥離紙である比較例1は、65.5(%)であるのに対して、実施例は、76.5(%)であり、光沢度が大幅に向上していることが分かる。
【0065】
また、表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrについては、グラシン剥離紙である比較例2が0.6404であるのに対して、ポリラミネート剥離紙である比較例1は、0.1599であり、実施例は、0.1562である。比較例1及び実施例は、比較例2に比べて、完全に平坦な面の展開面積比Sdrである「0」に対して近い値を示している。したがって、実施例の剥離紙は、ポリラミネート剥離紙である比較例1と同程度の表面粗さであることが分かる。
【0066】
このように実施例の剥離紙は、ポリラミネート剥離紙に比べて、60°の光沢度は、約10%も向上しており、表面粗さに関する界面の展開面積比Sdrは、完全な平坦面に対して、ポリラミネート剥離紙と同程度に近い値となっている。すなわち、実施例の剥離紙が、ポリラミネート剥離紙と同程度以上の高い平滑性を有していることが分かる。
【0067】
本実施形態の剥離紙は、60°の光沢度が65.5(%)であるポリラミネート剥離紙に比べて光沢が向上しているのが好ましく、本実施形態の剥離紙は、60°の光沢度が、66.0(%)以上であるのが好ましく、70.0(%)以上であるのがより好ましく、75.0(%)以上であるのが一層好ましい。
【0068】
上記のように本実施形態の剥離紙1は、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用する必要がないので、プラスチックの使用量を削減することができ、脱プラスチックに貢献することができる。
【0069】
この脱プラスチックの動きと共に、環境への配慮から紙素材のリサイクルも図られている。
【0070】
ポリラミネート剥離紙は、リサイクルする場合に、「離解」が困難であることが知られている。この離解が不充分であると、回収効率が著しく阻害されると共に、残り滓の廃棄による環境汚染の問題も生じる。
【0071】
本実施形態の剥離紙では、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用しないので、リサイクルが容易となり、当該剥離紙から効率的に紙をリサイクルすることができる。
【0072】
以下、このリサイクルについて詳細に説明する。
【0073】
一般に古紙のリサイクル工程は、以下の各工程で構成されている。
【0074】
(1)古紙をパルパーに投入し、水で分解する、いわゆる、離解を行う。
【0075】
(2)比重の大きい異物(例えば、ポリラミネートフィルム)をクリーナーによって除去する。
【0076】
(3)細かい異物をスクリーンによって除去する。
【0077】
(4)エキストラクターまたはシックナーによって洗浄および脱水(濃縮)を行う
(5)叩解機で繊維長を揃える。
【0078】
(6)円網抄紙機で紙を抄造する。
【0079】
(7)ヤンキードライヤーで乾燥する。
【0080】
(8)ワインダーで紙を巻き取る。
【0081】
上記のようにして紙が再生されるのであるが、ポリラミネート剥離紙は、上記(1)の工程である「離解」が非常に困難である。
【0082】
これに対し、本実施形態の剥離紙は、ポリラミネート剥離紙のようなプラスチックフィルムを使用しないので、リサイクル工程において最初に行われる離解が円滑に行われる。
【0083】
本件発明者は、ポリラミネート剥離紙に比べて、本実施形態の剥離紙は、離解が容易であることを検証する試験を行った。
【0084】
具体的には、上記の平滑度、光沢度、及び、表面粗さを測定した上記と同じ構成の実施例及び比較例1について、ステキヒト法によってサイズ度(水の浸透抵抗度)を、JIS P 8122:2004に準拠して測定した。実施例と比較例1について、サンプル5個ずつそれぞれ測定し、その5個の平均値を測定結果とした。
【0085】
その測定結果を、下記表2に示す。
【0086】
【表2】
ポリラミネート剥離紙である比較例1は、300秒経過しても染み込みが見られないので、300秒で測定を停止した。
【0087】
これに対して、実施例の剥離紙は、浸透に要する時間が46秒であった。
【0088】
このように、実施例の剥離紙は、比較例1のポリラミネート剥離紙よりも格段に水が浸透し易いことが分かる。
【0089】
更に、本件発明者は、実施例の剥離紙の離解度についての評価試験を行った。
【0090】
離解は、実施例の剥離紙50gに対して、水1.5Lを入れて2Lのパルプ離解機にて実施した。
【0091】
その結果、実施例の剥離紙は、12分で完全に離解することが確認できた。
【0092】
このように本実施形態に係る剥離紙は、リサイクル工程において最初に行われる離解が容易であり、離解が円滑に行われる。したがって、それに続く工程を円滑に行うことができ、その結果、紙を効率的にリサイクルすることができる。すなわち、本実施形態の剥離紙は、リサイクルに適していることが分かる。
【0093】
剥離紙のリサイクルにおいては、樹脂を廃棄する場合も想定される。本出願人が製造するポリラミネート剥離紙の例では、ポリラミネート剥離紙の全体の厚みが、例えば、80μmであって、その内、樹脂であるポリラミネートフィルムの厚みが、例えば、18μmである。
【0094】
これに対して、本実施形態の剥離紙では、剥離紙の全体の厚みが、例えば、72μmであって、その内、樹脂である平滑剤層の厚みが、例えば、1.5μmである。
【0095】
したがって、剥離紙のリサイクルにおいて、樹脂を廃棄する場合、本実施形態の剥離紙は、従来のポリラミネート剥離紙に比べて廃棄される樹脂の量を大幅に低減することができる。
【0096】
このように樹脂を廃棄する場合には、その廃棄量を可及的に低減することが望まれる。
【0097】
そこで、本件発明者は、平滑剤層を形成するために、平滑剤層形成用の塗液の塗工量について検討した。
【0098】
具体的には、安定して平滑剤層を形成できる塗工量を把握するための試験を行った。
【0099】
下記表3にその試験結果を示す。
【0100】
【表3】
表3では、平滑剤層形成用の塗液のドライ塗工量(g/m
2)、このドライ塗工量と略同じ値となる平滑剤層の厚み(μm)、及び、平滑剤層の状態の各項目をそれぞれ示している。
【0101】
ドライ塗工量が、1.8(g/m2)、1.5(g/m2) 、1.0(g/m2) までは、安定して平滑剤層を形成することができた。しかし、ドライ塗工量が、0.6(g/m2) になると、平滑剤層を形成することができなかった。
【0102】
この試験結果から平滑剤層の形成には、ドライ塗工量が、1.0(g/m2)以上必要であり、ドライ塗工量が、1.0(g/m2)以上であれば、好適に平滑剤層を形成することができる。
【0103】
図5は、本発明の実施形態に係る粘着シートの製造方法によって製造された粘着シート15の模式的な概略断面図である。
【0104】
この粘着シート15は、上記
図1に示される剥離紙1上に、粘着剤層16及び表面基材としての透明基材17を積層したものである。
【0105】
この粘着シート15は、上記の製造方法で製造された
図1に示される剥離紙1に、粘着剤を塗工し、透明基材17を貼合わせて製造される透明な粘着シートである。
【0106】
この透明基材17としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、セロファン等が挙げられる。
【0107】
粘着剤層16の粘着剤としては、特に限定はなく、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリオレフィン系、ビニルエーテル系等が挙げられる。
【0108】
この実施形態の粘着シート15は、上記のように高い平滑性を有する剥離紙1上に、粘着剤層16及び透明基材17が積層されて形成されるので、粘着剤層16に、剥離紙の表面の凹凸が転写されるといったことがない。これによって、粘着シート15を、剥離紙1から剥がして対象物に貼付けた場合に、粘着剤層16の凹凸に起因する乱反射等によって、透明基材17の透明性が損なわれることがない。
【0109】
しかも、この粘着シート15は、プラスチックフィルムを有するポリラミネート剥離紙を使用しないので、プラスチックの使用量を削減することができ、脱プラスチックに貢献することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 剥離紙
2 紙基材
3 平滑剤層
4 剥離剤層
6 フィルム
15 粘着シート
16 粘着剤層
17 透明基材