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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089946
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】溶接方法およびそれぞれの溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/06 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
B29C65/06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022191816
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】21215320.9
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522238491
【氏名又は名称】ブランソン ウルトラスチャル ニーデルラッスン デル エマーソン テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング アンド カンパニー オーエイチジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヘイコ プリエム
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング クレッケル
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AH17
4F211AH63
4F211AK04
4F211AR07
4F211AR11
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD07
4F211TJ11
4F211TJ14
4F211TJ15
4F211TN21
4F211TN26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複雑な溶接輪郭を有する部品の溶接を短いサイクルタイムで実現する装置及び方法を提供する。
【解決手段】第1の部品を受け入れるための上側治具(112)、第2の部品を受け入れるための下側治具(116)、各部品を予熱する予熱装置(118)および制御装置、を備えた溶接装置(100)を用い、各部品を溶接する方法であって、各治具を第1の駆動装置(130)によって初期位置から隣接位置まで移動させ、かつ予熱装置(118)を第2の駆動装置(140)によってパーキング位置から予熱位置まで移動させる工程と、予熱する工程と、各治具を移動させ、予熱装置(118)をパーキング位置まで移動させる工程と、各治具を離間位置から溶接位置まで移動させる工程と、各治具の溶接位置において各部品を溶接する工程と、各治具を溶接位置から初期位置まで移動させる工程とを含む方法。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品を受け入れるための上側支持体(110)に装着された上側治具(112)、第2の部品を受け入れるための下側支持体(114)に装着された下側治具(116)、前記第1および/または前記第2の部品を予熱するための予熱装置(118)および制御装置を備えた溶接装置(100)を用いて第1の部品を第2の部品に溶接するための溶接方法であって、
a.前記上側治具(112)および前記下側治具(116)を第1の駆動装置(130)によって初期位置から隣接位置まで第1の軸(132)に沿って互いに対して移動させ、かつ少なくとも部分的に同時に前記予熱装置(118)を第2の駆動装置(140)によってパーキング位置から予熱位置まで移動させる工程(工程S2)と、
b.前記予熱装置(118)によって前記第1および/または前記第2の部品を予熱する工程(工程S3)と、その後に
c.前記上側治具(112)および前記下側治具(116)を前記第1の駆動装置(130)によって前記隣接位置から離間位置まで前記第1の軸(132)に沿って互いに対して移動させ、かつ少なくとも部分的に同時に前記予熱装置(118)を前記第2の駆動装置(140)によって前記予熱位置から前記パーキング位置まで移動させる工程(工程S4)と、
d.前記上側治具(112)および前記下側治具(116)を前記第1の駆動装置(130)によって前記離間位置から溶接位置まで前記第1の軸(132)に沿って互いに対して移動させる工程(工程S5)と、
e.前記上側治具(112)および前記下側治具(116)の溶接位置において第1および第2の部品を互いに溶接する工程(工程S6)と、
f.前記上側治具(112)および前記下側治具(116)を前記第1の駆動装置(130)によって前記溶接位置から前記初期位置まで前記第1の軸(132)に沿って互いに対して移動させる工程(工程S7)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記制御装置は、少なくとも部分的に同時に前記第1の駆動装置(130)および前記第2の駆動装置(140)が作動または起動されるようにそれらを制御する、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記第2の駆動装置(140)は前記予熱装置(118)を前記第1の軸(132)に垂直な第2の軸(142)に沿って移動させ、前記予熱装置(118)を前記第1の軸(132)に平行な第3の軸(152)に沿って移動させるために第3の駆動装置(150)が提供されている、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記制御装置は前記第1の駆動装置(130)および前記第2の駆動装置(140)と共に前記第3の駆動装置(150)を制御し、前記第1の駆動装置(130)、前記第2の駆動装置(140)および前記第3の駆動装置(150)の少なくとも2つを同時に作動させる、請求項3に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記溶接方法は振動溶接方法または赤外線溶接方法である、請求項1乃至4のうちの1項に記載の溶接方法。
【請求項6】
前記第1および第2の部品はプラスチック材料からなる、請求項1乃至4のうちの1項に記載の溶接方法。
【請求項7】
前記第1の駆動装置(130)および前記第2の駆動装置(140)はサーボ駆動装置である、請求項1乃至4のうちの1項に記載の溶接方法。
【請求項8】
1つの駆動装置(130、140、150)は主駆動装置として機能し、残りの駆動装置(130、140、150)は従駆動装置として機能する、請求項1乃至4のうちの1項に記載の溶接方法。
【請求項9】
1つの駆動装置(130、140、150)の故障の場合に、残りの駆動装置すなわち少なくとも部分的に同時に作動される駆動装置(130、140、150)を前記制御装置によって停止させる、請求項1乃至4のうちの1項に記載の溶接方法。
【請求項10】
請求項1に記載の溶接方法を用いて第1の部品を第2の部品に溶接するための溶接装置(100)であって、
a.前記第1の部品を受け入れるための上側支持体(110)に装着された上側治具(112)と、
b.前記第2の部品を受け入れるための下側支持体(114)に装着された下側治具(116)と、
c.第1および/または第2の部品を予熱するための予熱装置(118)と、
d.前記上側(110)および前記下側支持体(114)は第1の駆動装置(130)によって初期位置、隣接位置、離間位置および溶接位置の間で第1の軸(132)に沿って互いに対して移動可能であることと、
e.前記予熱装置(118)は、パーキング位置と予熱位置との間で第2の駆動装置(140)によって移動可能であることと、
f.前記溶接装置(100)は、少なくとも部分的に同時に前記第1の駆動装置(130)および前記第2の駆動装置(140)が作動されるようにそれらを制御する制御装置を備えることと、
を備える、溶接装置(100)。
【請求項11】
前記第2の駆動装置(140)は前記予熱装置(118)を前記第1の軸(132)に垂直な第2の軸(142)に沿って移動させ、前記予熱装置(118)を前記第1の軸(132)に平行な第3の軸(152)に沿って移動させるために第3の駆動装置(150)が提供されている、請求項10に記載の溶接装置(100)。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第1の駆動装置(130)、前記第2の駆動装置(140)および前記第3の駆動装置(150)の少なくとも2つが同時に作動されるように前記駆動装置(130、140、150)を制御する、請求項11に記載の溶接装置(100)。
【請求項13】
前記溶接装置(100)は振動溶接装置または赤外線溶接装置である、請求項10~12のうちの1項に記載の溶接装置(100)。
【請求項14】
第1および第2の部品はプラスチック材料からなる、請求項10乃至12のうちの1項に記載の溶接装置(100)。
【請求項15】
前記第1の駆動装置(130)および前記第2の駆動装置(140)はサーボ駆動装置である、請求項10乃至12のうちの1項に記載の溶接装置(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部品を受け入れための上側支持体に装着された上側治具、第2の部品を受け入れるための下側支持体に装着された下側治具ならびに第1および/または第2の部品を予熱するための予熱装置および制御装置を備えた溶接装置を用いて、第1の部品を第2の部品に溶接するための溶接方法に関する。さらに本発明はそれぞれの溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の部品を受け入れための上側支持体に装着された上側治具と第2の部品を受け入れるための昇降テーブルなどの下側支持体に装着された下側治具とを備えた、第1の部品を第2の部品に溶接するための溶接装置が先行技術において知られている。
【0003】
通常そのような装置は、好ましくはプラスチック材料で作られている2つの部品を互いに溶接するために使用される。溶接装置は、その中に下側治具および上側治具が配置されているハウジングをさらに備える。この目的を達成するために、下側治具は下側支持体としての昇降テーブルに固定されており、上側治具は上側支持体としての上側治具板に強固に装着されている。
【0004】
さらに公知のプラスチック溶接装置は、溶接前に第1および第2の部品を予熱するための予熱装置をさらに備えている場合がある。この点に関して予熱装置は通常では昇降テーブルに結合されているが、例えば予熱装置をハウジングに直接固定することにより昇降テーブルから独立して移動可能になっている場合もある。下側支持体としての昇降テーブルにより下側治具を上側治具の方向に移動させて、特に摩擦もしくは振動溶接によりそれぞれ、あるいは赤外線溶接により下側治具内の第1の部品を上側治具内の第2の部品に溶接することができる。
【0005】
そのような溶接装置は、例えば自動車産業または医療技術において使用されている。そのような溶接装置のための自動車産業での用途はライトの生産であるが、プラスチックからなるかプラスチックを含有する他の部品または部品群の生産もある。同様の方法で溶接装置は、医療技術における装置および/または部品群の生産あるいは消費財の生産において使用される場合がある。
【0006】
予熱装置を備えた公知の溶接装置の基本操作は以下のとおりである。最初にユーザは第2の部品を下側治具の上に配置する。その後に第1の部品を下側治具内の第2の部品の上に位置決めする。次いで下側治具を含む昇降テーブルおよびその上に配置された部品は、第1の部品が上側治具に当接するまで初期位置から上側治具の方向に移動する。この移動は、溶接装置が配置されている床または地面に対して垂直な1つの軸のみに沿って生じる。
【0007】
次いで昇降テーブルはこの垂直軸に沿って、予熱装置を当該部品の間に配置することができる位置に戻る。例えば昇降テーブルは初期位置に戻る。その後に予熱装置を、パーキング位置から溶接される部品間の整列位置まで第1の軸に垂直な、すなわち床または地面に対して水平な第2の軸に沿って移動させる。予熱装置を整列位置において2つの部品の間に配置した後に、2つの部品が溶接される場所において加熱可能になるような新しい別個の垂直な移動により、すなわち床または地面に垂直な軸に沿った予熱位置への移動により予熱装置を移動させる。さらに、予熱装置が予熱位置に到着した後に、下側治具を第1の軸に沿って予熱装置に隣接する位置に移動させる。この位置を隣接位置とも呼ぶ。
【0008】
予熱の後に昇降テーブルを垂直軸に沿って移動させて、予熱装置をパーキング位置に移動させるのを可能にする位置に戻す。例えば昇降テーブルは初期位置に戻る。昇降テーブルが初期位置に到着した後に、予熱装置を最初に垂直軸に沿って整列位置に戻し、その後に第2の水平軸に沿ってパーキング位置に戻す。
【0009】
第1の部品を第2の部品に溶接するために、次に昇降テーブルを第1の軸に沿って溶接位置に移動させる。第1の部品の第2の部品への溶接は摩擦もしくは振動溶接により、あるいは予め加熱した部品を互いに対して押し付けることにより行う。
【0010】
溶接を終了した後に、昇降テーブルはその上に配置された下側治具ならびに第1および第2の部品の複合体と共に、垂直軸に沿って溶接位置から初期位置に戻る。昇降テーブルが初期位置に到着するとすぐに、ユーザは第1および第2の部品の複合体を取り外すことができる。
【0011】
予熱装置に関する上記溶接装置の第1の欠点は、複雑な突起部またはアンダーカットを有する部品を加熱および溶接しなければならない場合に明らかになる。摩擦もしくは振動溶接において突起部またはアンダーカットは、特に互いに対して溶接される部品の恣意的でない可変角度位置により生じる。特に2つの部品は、摩擦もしくは振動溶接力をそれぞれの部品の接合部に効果的に伝達することができるような方法でそれぞれの治具に配置しなければならない。互いにに対する2つの部品のこの自由に決定することができない角度位置ならびに垂直軸のみに沿った治具の可動性により、互いに溶接される部品に応じてアンダーカットまたは突起部が生じる。垂直軸に沿った移動中に、これらは部品の少なくとも1つおよび/または治具もしくは予熱装置の1つの損傷および/または破壊が生じる。
【0012】
さらに溶接装置の移動は時間がかかり、従って長いサイクルタイムが生じる。
【0013】
この分野において、アンダーカットおよび/または突起部を含む複雑な溶接輪郭を有する2つの部品の互いへの溶接を可能にするために、いくつかの代替法がBRANSON社によって開発されてきた。
【0014】
EP 2 837 492 A1(欧州特許出願公開第2837492号公報)に記載されている第1の例によれば、振動溶接システムは、上側治具のための上側支持体と下側治具を受け入れるための昇降テーブルとを備える。下側治具は垂直な駆動装置によって持ち上げることができる。振動溶接システムは、下側治具を水平方向に移動させることができる少なくとも1つの水平の駆動装置も有する。この振動溶接システムは、それにより下側治具を水平面外に旋回させることもできる少なくとも1つの旋回駆動装置も備える。
【0015】
それぞれの駆動装置の制御に関して基本的に2つの種類が存在する。第1の種類の場合、下側治具をそれぞれの他の駆動装置から独立してそれぞれの垂直、水平および旋回駆動装置によって移動させる。これは水平面内での移動、水平面外への旋回およびz軸に沿った移動が同時に生じ得ることを意味する。
【0016】
これとは対照的に第2の種類の場合、移動はそれぞれの駆動装置の1つのみによって生じる。これは、1つの手順すなわちz軸、x軸、y軸に沿った移動または旋回のみが生じることを意味する。当然ながらこれらの2つの種類の混合された種類が可能である。
【0017】
この装置またはシステムはそれぞれ、当該装置を異なる部品のために使用することができるように駆動装置を作動または起動させるために使用される制御曲線を異なる溶接輪郭に適合させるのを可能にするが、予熱装置は存在しない。
【0018】
予熱装置を有する他の溶接装置が、EP 3 009 254 A2(欧州特許出願公開第3009254号公報)およびEP 3 020 532 A1(欧州特許出願公開第3020532号公報)に記載されている。EP 3 009 254 A2(欧州特許出願公開第3009254号公報)に記載されている溶接装置のための予熱装置は支持体と、少なくとも1つの第1の予熱装置と、少なくとも1つの第1の予熱装置を開始位置から予熱位置に支持体の第1の表面に対して旋回させることができる旋回装置とを備える。このようにして第1の部品のアンダーカットを迂回することができ、第1の部品を第1の予熱装置により加熱することができる。
【0019】
他方、EP 3 020 532 A1(欧州特許出願公開第3020532号公報)は、溶接装置が第1の支持体および第2の支持体にそれぞれ配置された第1および第2の治具を備えることを記載している。第1の治具は、第1の位置と第2の位置との間で第1の駆動装置によって第1の方向に線形に第1の支持体に対して移動可能である。第1の方向に沿った移動は、その原点が第1の治具の第1の位置に置かれた第1の想像上の極座標系によって定められる。第1のz軸としてのz軸は第2の支持体の方向に延在している。第2の支持体の方向に正の第1のz軸と第1の方向との間の第1の傾斜角は0≦ν1≦λ/2であり、それにより第1の治具内の第1の部品を第2の治具内の第2の部品を係合させることができる。言い換えると、この装置は対角線方向への移動を実現する。
【0020】
EP 3 009 254 A2(欧州特許出願公開第3009254号公報)およびEP 3 020 532 A1(欧州特許出願公開第3020532号公報)に開示されている装置の欠点は、それぞれの装置を1つの特定の部品およびひいては製造される複合体に適合させるという点である。さらにその構築は複雑であり、コストが高く、かつ長いサイクルタイムを有する。
【0021】
従って本発明の課題は、予熱装置を有する溶接装置の上記欠点を克服する第1の部品を第2の部品に溶接するための溶接方法を提供することにある。特に、複雑な構造の溶接を可能にすると共に、同時に異なる部品に適用可能であり、かつ公知の方法と比較して短いサイクルタイムを実現する溶接方法を提供しなければならない。さらに1つの課題は、それぞれの溶接装置を提供することにある。特に本溶接装置は、複雑な溶接構造を有する部品の予熱ならびにこれらの部品のそれぞれの溶接を可能にすると共に、同時に少なくともより容易に異なる部品に適用可能である。
【発明の概要】
【0022】
上記問題は、独立請求項1に記載の第1の部品を第2の部品に溶接するための溶接方法、ならびに独立請求項10に記載の第1の部品を第2の部品に溶接するための溶接装置によって解決される。さらなる好ましい実施形態および開発は、以下の記載および図面ならびに添付の特許請求の範囲から得られる。
【0023】
第1の部品を第2の部品に溶接するための本発明の溶接方法は、第1の部品を受け入れための上側支持体に装着された上側治具、第2の部品を受け入れるための下側支持体に装着された下側治具、第1および/または第2の部品を予熱するための予熱装置および制御装置を備えた溶接装置を使用する。本溶接方法は、上側および下側治具を第1の駆動装置によって初期位置から隣接位置まで第1の軸に沿って互いに対して移動させ、かつ少なくとも部分的に同時に予熱装置を第2の駆動装置によってパーキング位置から予熱位置まで移動させる工程と、予熱装置によって第1および/または第2の部品を予熱する工程と、その後に上側治具および下側治具を第1の駆動装置によって隣接位置から離間位置まで第1の軸に沿って互いに対して移動させ、かつ少なくとも部分的に同時に予熱装置を第2の駆動装置によって予熱位置からパーキング位置まで移動させる工程と、上側治具および下側治具を第1の駆動装置によって離間位置から溶接位置まで第1の軸に沿って互いに対して移動させる工程と、上側および下側治具の溶接位置において第1および第2の部品を互いに溶接する工程と、上側治具および下側治具を第1の駆動装置によって溶接位置から初期位置まで第1の軸に沿って互いに対して移動させる工程とを含む。
【0024】
さらなる理解のために本溶接方法について、上側支持体に装着された上側治具と下側支持体に装着された下側治具とを備えたそれぞれの溶接装置の動作に関して以下で説明する。上側および下側治具は第1の軸に沿って互いに対して移動可能である。これは好ましくは、上側治具が有利には強固に装着されている上側支持体が上側治具板であるという点、および下側治具が装着されている下側支持体が昇降テーブルであるという点において実現される。結果としてそのような例示的な構成では、下側支持体としての昇降テーブルのみを第1の軸に沿って移動させる。この構成は以下でも詳細に説明されているように、振動溶接装置の場合に特に好ましい。それにも関わらず赤外線溶接方法が使用される場合には、上側支持体の可動性も提供される場合がある。完全性のために第1の軸は好ましくは垂直軸であること、すなわち本溶接装置が配置されている床に垂直であることに注目されたい。さらに、互いに溶接される第1および第2の部品は好ましくはプラスチック材料からなる。
【0025】
簡略化のために、第1の部品は既に上側治具内に配置されており、かつ第2の部品は既に下側治具内に配置されていると仮定する。さらに第1の部品は一例として複雑なアンダーカットを有する。本開示の構想内ではアンダーカットは、それが空間における当該部品の向きに応じて当該部品の領域を覆うように当該部品から突出するそれぞれの部品の要素である。さらにアンダーカットという用語を明確にするために、ここではU字形の部品または部品の領域を仮定する。このU字形の領域を上または下から見た場合、全ての領域に自由にアクセス可能であるためそれはアンダーカットを含んでいない。しかしU字形の領域を側面から見た場合、一方の脚すなわち前脚はそれぞれ他方の脚すなわち後脚を覆う。従って空間における当該部品の向きに応じて、一方の脚は他方の脚を覆う。従ってそれぞれの前脚は本開示に関してアンダーカットを表す。
【0026】
上記説明から、アンダーカットによって覆われた表面、例えば加熱される表面に向かう好ましくは赤外線予熱装置である予熱装置の移動は直線移動により可能になり得ないということになる。例示的なU字形の部品を再び参照し、かつ予熱装置が当該部品の左側に配置されていると仮定すると、予熱装置は左側から当該部品に向かって移動する。U字形の部品の前脚は左脚であり、従ってこれは迂回されるアンダーカットを表す。U字形の部品の後脚は右脚である。この場合、予熱装置は前脚と衝突するので、この右脚に後脚の方向への移動だけで予熱装置が到達することはできない。従って明確性のためにアンダーカットは、アンダーカットを表し、かつ迂回しなければならない想像上の点または曲線であると仮定する。この迂回後にのみ、予熱装置を加熱される第1の部品の表面の隣りに配置することができる。
【0027】
最初に上側および下側治具を、予熱装置を間に配置することができる互いからの距離に位置付ける。この位置を初期位置と呼び、これはまた、開始位置すなわちプラスチック溶接装置のアイドル状態において上側および下側治具が有する位置であってもよい。さらに、予熱装置が互いに対する上側および下側治具の移動を妨げないように、予熱装置がパーキング位置に配置されており、すなわち上側および下側治具の間にはないものと仮定する。
【0028】
上記点から開始して、最初に第2の駆動装置による予熱装置のパーキング位置から予熱位置までの移動が生じる。例示的なU字形の部品の場合には、1つの軸に沿った単なる移動では十分になり得ない。従ってこの例では、第2の駆動装置は第1の軸に垂直な第2の軸に沿った移動を実現し、予熱装置を第1の軸に平行な第3の軸に沿って移動させるために第3の駆動装置がさらに提供されている。従ってパーキング位置から予熱位置への予熱装置の移動は、少なくとも部分的に同時に第2の駆動装置および第3の駆動装置を作動または起動させることにより生じる。例えば、第2の駆動装置が予熱装置を第2の軸に沿って所定の距離にわたって移動した後に、さらに第3の軸に沿った移動が生じるように、さらに第3の駆動装置を作動または起動させる。従って組み合わせた移動は対角線方向への移動となる。従って、パーキング位置から予熱位置までの移動は連続的な移動であることが特に好ましい。連続的な移動はこの点に関して、中間停止または中間位置を伴わない移動を定める。従ってこの効果を実現するために、少なくとも部分的に同時に第2および第3の駆動装置を作動または起動させる。結果として予熱装置の経路は、当該軸のそれぞれに沿って別々に予熱装置を移動させる先行技術と比較して短くなる。
【0029】
さらに、パーキング位置から予熱位置までの予熱装置の移動が生じるのと少なくとも部分的に同時に、第1の駆動装置による上側および下側治具の初期位置から隣接位置までの第1の軸に沿った互いに対する移動が生じる。従って、第1の駆動装置ならびに第2および第3の駆動装置の少なくとも1つも同時に作動または起動される。さらなる結果として、これらの組み合わせまたは同時移動により、さらなる時間の節約を実現することができる。
【0030】
そのような移動を同時に実現するために、駆動装置は例えば電子カムディスクによって一緒に制御される。従って駆動装置は好ましくは電子的に結合されるか、あるいは互いに同期される。これは特に制御装置によって実現してもよい。これにより、それぞれの移動は互いに依存している。この過程のさらなる結果は、第1の部品、第2の部品および/または本溶接装置の損傷が回避可能になるような共通制御により残りの駆動装置が好ましくは自動的に停止されるので、1つの駆動装置の故障の場合に明らかになる。
【0031】
予熱装置が予熱位置に到着し、かつ上側および下側治具が隣接位置に配置された後に、予熱装置による第1および/または第2の部品の予熱が生じる。この目的を達成するために、用途に応じて予熱装置は好ましくは赤外線予熱装置である。さらに予熱装置は好ましくは第1および/または第2の予熱装置を有し、ここでは第1の予熱装置は予熱位置において上側治具に面する上側に配置されており、第2の予熱装置は予熱位置において下側治具に面する下側に配置されている。
【0032】
予熱後に、上側および下側治具を隣接位置から、パーキング位置への予熱装置の移動を可能にする初期位置または任意の中間位置であってもよい離間位置まで互いに対して移動させる。従って少なくとも部分的に同時に、上に説明されているように予熱装置を好ましくは連続的に予熱位置からパーキング位置まで移動させる。従って上記移動は逆になる。
【0033】
予熱装置が上側および下側治具の溶接位置への移動を妨げなくなったらすぐに、それぞれの移動が生じてもよい。例えば好ましい実施形態によれば、予熱装置がそのような移動を妨げなくなった直後または予熱装置がパーキング位置に到着した直後のいずれかにその移動が生じる。次いで上側および下側治具の溶接位置において、第1および第2の部品の互いとの溶接が公知の方法において生じる。好ましくは、本溶接方法は振動もしくは摩擦溶接方法であるか、あるいは本溶接方法は赤外線溶接方法である。後者の場合に、予熱装置は赤外線予熱装置であり、溶接の工程において予熱された第1および第2の部品を互いに対して単に押し付ける。
【0034】
例えば上側治具内に配置された第1の部品中に存在するアンダーカットに応じて、第2の部品を含む下側治具が第1の部品内のアンダーカットを迂回することができるように、下側治具を空間において移動可能に配置しなければならない。上側治具の移動は摩擦もしくは振動溶接中に生じる力により実現可能ではないため、これは特に摩擦もしくは振動溶接装置に当てはまる。これらの場合に、EP 2 837 492 A1(欧州特許出願公開第2837492号公報)に記載されているように、例えば下側治具または下側支持体を使用することが特に好ましい。この点に関して特に好ましい実施形態によれば、制御装置は本溶接装置の好ましくはさらなる駆動装置、特に好ましい全ての駆動装置を制御する。結果として、例示のためのEP 2 837 492 A1(欧州特許出願公開第2837492号公報)の下側治具または下側支持体に関して、第1および/または第2の駆動装置を作動または起動させるのと少なくとも部分的に同時に、昇降テーブルを水平面において移動させ、かつ/または昇降テーブルを旋回させるための駆動装置も作動または起動させることができる。
【0035】
赤外線溶接装置の場合、ここでは摩擦もしくは振動溶接力(すなわち特に摩擦溶接プロセス中の振動)が上側治具に対して作用しないため、上側治具を空間において移動可能に配置することもできる。
【0036】
従って本発明の溶接方法の1つの利点は、中間停止もしくは位置を回避することにより本溶接装置の要素が移動する経路を短くすること、および/または異なる要素の移動が同時に生じることである。これはそれぞれ、先行技術の溶接方法と比較して時間の節約を実現する。従って溶接プロセスをより効率的にし、すなわちサイクルタイムを短くし、かつ出力を増加させる。
【0037】
さらに、それぞれの駆動装置が互いに電子的に結合されるか同期されるように同時に生じる移動が共通の制御によって制御されるので、1つの駆動装置の故障の場合に第1の部品、第2の部品および/または本溶接装置の損傷は信頼できる方法で回避可能である。
【0038】
本溶接方法の好ましい実施形態によれば、少なくとも部分的に同時に第1および第2の駆動装置が作動または起動されるように、制御装置はそれらを制御し、好ましくは電子的に結合または同期させる。その移動または駆動装置の電子的結合または同期を実現する制御装置は、主制御装置すなわちホスト制御装置または別個の主制御装置すなわちホスト制御装置として機能する駆動装置の1つの制御装置であってもよい。既に存在する制御装置の1つを用いて費用対効果の高い実施形態を実現する。他方、主制御装置すなわちホスト制御装置としての別個の制御装置の利用により、十分な処理能力および異なる用途を考慮したより高い可変性を保証する。
【0039】
本溶接方法の有利な実施形態では、第2の駆動装置は予熱装置を第1の軸に垂直な第2の軸に沿って移動させ、予熱装置を第1の軸に平行な第3の軸に沿って移動させるために第3の駆動装置が提供されている。この点に関して本溶接方法のさらなる好ましい実施形態によれば、制御装置は第3の駆動装置を制御し、好ましくは第1および第2の駆動装置と電子的に結合または同期させ、同時に第1、第2および第3の駆動装置の少なくとも2つを作動または起動させる。これらの実施形態についてはU字形の第1の部品を有する上記例において詳細に説明してきた。特定の利点として、互いに溶接される異なる部品への適合に関する本溶接方法および本溶接装置の柔軟性をこのようにして高める。さらに、同様に上に記載されているように、少なくとも2つの駆動装置を同時に作動または起動させることにより本溶接装置の構造的要素を2つの位置間で移動させるために必要な時間を減らす。
【0040】
本溶接方法の好ましい実施形態によれば、第1および第2の駆動装置はサーボ駆動装置である。サーボ駆動装置を使用して、名目上の経路または名目上の角度の形態の名目上の位置の値で指定された目標移動に追従する。これは、サーボ駆動装置が小さい逸脱で指定された目標経路または目標角度に追従することを意味する。そのような過程は、設定値と実際の値とを比較するための実際の値の測定および対照を必要とする。サーボ駆動装置はそれに応じて、動力学、設定範囲および/または移動の正確性に対する高い要求~非常に高い要求による電子的位置、速度および/またはトルク制御を備えた駆動装置である。サーボ駆動装置という用語の代わりに、サーボ軸という用語が多くの場合に使用される。第1および第2の駆動装置としてのそのようなサーボ駆動装置の使用は、信頼できる移動の制御および1つの駆動装置の故障の場合に、これらの駆動装置の電子的結合または同期により駆動装置(特に全ての駆動装置)の移動の迅速な中断を保証する。
【0041】
本溶接方法のさらなる好ましい実施形態では、1つの駆動装置は主駆動装置として機能し、残りの駆動装置は従駆動装置として機能し、好ましくは最初に制御装置によって作動または起動される駆動装置は主駆動装置として定められる。例えば予熱位置に到着するために、予熱装置を最初に第2の駆動装置によって第2の軸に沿って指定距離または所定の距離にわたって移動させる。この距離に達した際に、対角線方向への移動が生じるように制御装置によってさらに第3の駆動装置を作動または起動させる。さらに、第1の駆動装置の作動が所定の距離を実現する第2の駆動装置にも依存するように、第1の駆動装置を同時に作動または起動させてもよい。
【0042】
本溶接方法の特に好ましい実施形態では、1つの駆動装置の故障の場合に、残りの駆動装置すなわち少なくとも部分的に同時に作動または起動される駆動装置は、制御装置によって停止される。従って制御装置内の駆動装置の電子的結合または同期により、予熱装置、上側および/または下側治具の移動が同時に実施されるとしても、溶接される部品および/または本溶接装置の損傷は回避可能である。
【0043】
本発明の溶接方法を用いて第1の部品を第2の部品に溶接するための本発明の溶接装置は、第1の部品を受け入れための上側支持体に装着された上側治具、第2の部品を受け入れるための下側支持体に装着された下側治具ならびに第1および/または第2の部品を予熱するための予熱装置を備え、ここでは上側および下側支持体は、第1の駆動装置によって初期位置、隣接位置、離間位置および溶接位置間で第1の軸に沿って互いに対して移動可能であり、予熱装置は第2の駆動装置によってパーキング位置と予熱位置との間で移動可能であり、ここでは少なくとも部分的に同時に第1および第2の駆動装置が作動または起動されるように本溶接装置はそれらを制御する、好ましくは電子的に結合または同期させる制御装置を備える。その移動または駆動装置の電子的結合または同期を実現する制御装置は、主制御装置すなわちホスト制御装置または別個の主制御装置すなわちホスト制御装置として機能する駆動装置の1つの制御装置であってもよい。既に存在する制御装置の1つを用いて費用対効果の高い実施形態を実現する。他方、主制御装置すなわちホスト制御装置としての別個の制御装置の利用により、十分な処理能力およびより高い可変性を保証する。本発明の溶接装置を用いて本発明の溶接方法を実施する。従って、得られる技術的効果および利点に関しては、冗長になるのを避けるために本発明の溶接方法の上記説明を参照する。
【0044】
本溶接装置の好ましい実施形態によれば、第2の駆動装置は予熱装置を第1の軸に垂直な第2の軸に沿って移動させ、予熱装置を第1の軸に平行な第3の軸に沿って移動させるために第3の駆動装置が提供されている。好ましくは、制御装置は第1、第2および第3の駆動装置の少なくとも2つが同時に作動または駆動されるように駆動装置を制御する。これらの実施形態については、U字形の第1の部品を有する上記例において詳細に説明してきた。特定の利点として、互いに溶接される異なる部品への適合に関する完全な溶接装置の柔軟性をこのようにして高める。さらに、同様に上に記載されているように、少なくとも2つの駆動装置を同時に作動または起動させることにより本溶接装置の構造的要素を2つの位置間で移動させるために必要な時間を減らす。
【0045】
本溶接装置は好ましくは振動溶接装置または赤外線溶接装置である。さらなる好ましい第1および第2の部品はプラスチック材料からなる。これにより本溶接装置がプラスチック溶接装置となる。さらに第1および第2の駆動装置はサーボ駆動装置であることが好ましい。これらの実施形態のそれぞれについて本溶接方法のそれぞれの実施形態に関して上で考察してきたため、繰り返しを避けるためにこれらの説明を参照する。
【0046】
以下では、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図面では、同じ参照符号は同じ要素および/または部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】初期位置にある予熱装置を有する溶接装置。
図2】予熱装置が中間位置に位置決めされている状態の図1に係る溶接装置を示す。
図3】予熱装置が予熱位置に位置決めされている状態の図1に係る溶接装置を示す。
図4】予熱装置が予熱位置に位置決めされ、かつ下側治具が隣接位置に位置決めされている状態の図1に係る溶接装置を示す。
図5】先行技術に係る溶接装置の構造的部品の移動の図を示す。
図6】本発明の溶接方法の一実施形態に係る溶接装置の構造的部品の移動の図を示す。
図7】簡略化された電子カムディスクの図を示す。
図8】本発明の溶接方法の一実施形態の時間T1/T1’における本溶接装置を示す。
図9】本発明の溶接方法の一実施形態の時間T2/T2’における本溶接装置を示す。
図10】本発明の溶接方法の一実施形態の時間T3/T3’における本溶接装置を示す。
図11】本発明の溶接方法の一実施形態の時間T4/T4’における本溶接装置を示す。
図12】本発明の溶接方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下では、本発明の方法の一実施形態がそれぞれの溶接装置の機能に基づいて説明されている。本溶接方法の技術的効果の理解を高めるために、最初に公知の手順が図1乃至5に例解されている。
【0049】
溶接装置1は、上側支持体10に装着された上側治具12および下側支持体14に装着された下側治具16を備える。上側治具12および下側治具16は第1の駆動装置30によって第1の軸32に沿って互いに対して移動可能である。この例では、上側治具12が強固に装着されている上側支持体10は上側治具板であり、下側治具16が装着されている下側支持体14は昇降テーブルである。結果として、そのような例示的な構成では、下側支持体としての昇降テーブル14のみを第1の軸32に沿って移動させる。
【0050】
さらに溶接装置1は、第1の予熱装置20および第2の予熱装置22を有する予熱装置18を備える。第1の予熱装置20は予熱位置において上側治具12に面する上側に配置されており、第2の予熱装置22は予熱位置において下側治具16に面する下側に配置されている。さらに予熱装置18は、第2の軸42に沿った移動のために第2の駆動装置40を備える。第2の軸42は第1の軸32に垂直である。さらに、第3の軸52に沿った予熱装置18の移動のために第3の駆動装置50が提供されている。第3の軸52は第1の軸32に平行である。
【0051】
図1では、それぞれの溶接装置1の上側治具12および下側治具16が初期位置すなわち開始位置に配置されている。予熱装置18はパーキング位置に配置されている。
【0052】
上側治具12および下側治具16の形状により反映される溶接される部品の形状により、アンダーカットが存在する。アンダーカットは、空間における当該部品の向きに応じてそれが当該部品の領域を覆うようにそれぞれの部品から突出している要素である。この例では、上側治具12は切妻を有する屋根のように形成されており、言い換えるとそれは反転されたV形状を提供する。下側治具16は相補的な形状を有する。第1および第2の部品は、それらが上側治具12および下側治具16によって提供される形態に一致するように形成されている。さらに第1の予熱装置20および第2の予熱装置22も、それぞれの治具12、16によって提供される形態に一致する形状を有する。
【0053】
反転V形状の上側治具12を第1の軸32に沿って下から、すなわち下側治具16から見た場合、全ての領域に自由にアクセス可能であるため、それはアンダーカットを含んでいない。しかし上側治具12を側面から見た場合、一方の側面すなわち左側は他方の側面すなわち右側面をそれぞれ覆う。従って空間における向きに応じて一方の側面は他方の側面を覆う。従ってそれぞれの左側は本開示に関してアンダーカットを表す。従って明確性のためにアンダーカットは、アンダーカットを表し、かつ迂回しなければならない想像上の点または曲線であると仮定する。この迂回後にのみ、予熱装置18を加熱される第1の部品の表面の隣りに配置することができる。さらに上記説明から、アンダーカットによって覆われた表面、例えば加熱される表面に向かう予熱装置18の移動は、単一の直線移動により可能になり得ないということになる。
【0054】
この操作は、第1の工程においてユーザが第2の部品を下側治具16の上に配置するような操作である。その後に第1の部品を下側治具16内の第2の部品の上に配置する。次いで、下側治具16およびその上に配置された部品を含む下側支持体14は、第1の部品が上側治具12に当接するまで初期位置から上側治具12の方向に移動する。この移動は第1の駆動装置30により第1の軸32に沿って生じる。第1の軸32は、溶接装置1が配置されている床または地面に対して垂直である。次いで、下側支持体14はこの垂直な第1の軸32に沿って、予熱装置18を当該部品の間に配置することができる位置(ここでは初期位置)に戻る。例えば昇降テーブルは初期位置に戻る。
【0055】
アンダーカットを迂回するために、第2の工程において予熱装置18を第2の駆動装置40によってパーキング位置から溶接される部品間の整列位置まで第1の軸32に垂直な、すなわち床または地面に対して水平な第2の軸42に沿って移動させる。この位置は図2に示されている。第2の駆動装置40によって実現される経時的なそれぞれの移動曲線は図5に符号44によって示されている。
【0056】
整列位置において予熱装置18を2つの部品の間に配置した後に、第3の工程において予熱装置18を第3の駆動装置50によって第3の軸52に沿って予熱位置に移動させる。この位置は図3に示されている。第3の駆動装置50によって実現される経時的な対応する移動曲線が図5に符号54によって示されている。
【0057】
第4の工程において、予熱装置18が予熱位置に到着した後に、下側治具16を第1の軸32に沿って予熱装置18に隣接した位置に移動させる。この位置は隣接位置とも呼び、図4に示されている。第1の駆動装置30によって実現される経時的な移動曲線は図5に符号34によって示されている。
【0058】
次いで第5の工程において予熱が生じ、ここでは本溶接装置の全ての構造的要素がそれらの位置に保持されている。これは、それぞれの移動曲線から図5において見ることができる。
【0059】
予熱後に上記移動を逆の順番で行う。従って第6の工程において下側支持体14を第1の軸32に沿って、予熱装置18をパーキング位置に移動させることができる位置に戻す。移動曲線34に従って下側支持体14を初期位置に戻す(図3を参照)。
【0060】
次に第7の工程において、予熱装置18を第3の駆動装置50によって第3の軸52に沿って整列位置に戻す(図2を参照)。第8の工程において、予熱装置18を第2の駆動装置40によって第2の軸42に沿ってパーキング位置に移動させる(図1を参照)。それぞれの移動およびそれらのシーケンス順序は図5にも示されている。
【0061】
第1の部品を第2の部品に溶接するために、次に第9の工程において下側支持体14を第1の軸32に沿って溶接位置に移動させる。第1の部品の第2の部品への溶接は第10の工程において生じる。
【0062】
溶接の終了後に、第11の工程において下側支持体14は下側治具16ならびにその上に配置された第1および第2の部品の複合体と共に、溶接位置から第1の軸32に沿って初期位置に戻る。下側支持体14が初期位置に到着するとすぐに、ユーザは第1および第2の部品の複合体を取り外すことができる。
【0063】
上記から図5に関して、各駆動装置の起動は特に非常に複雑な部品を溶接する場合に衝突を回避するために、一度に1回のみ生じる。これは全ての種類の駆動装置、すなわちサーボ駆動装置、空気圧駆動装置または油圧駆動装置に当てはまる。
【0064】
次に図6図12を参照しながら、上で考察した溶接方法と比較して本発明の溶接方法の一実施形態について説明する。
【0065】
ここで使用される溶接装置100は、上側支持体110に装着された上側治具112および下側支持体114に装着された下側治具116を備える。上側治具112および下側治具116は第1の駆動装置130によって第1の軸132に沿って互いに対して移動可能である。ここでは、上側治具112が強固に装着されている上側支持体110は上側治具板であり、下側治具116が装着されている下側支持体114は昇降テーブルである。結果としてそのような例示的な配置では、下側支持体114としての昇降テーブルのみを第1の軸132に沿って移動させる。
【0066】
この構成は振動溶接装置の場合に特に好ましい。それにも関わらず赤外線溶接方法が使用される場合には、上側支持体110の可動性も提供される場合がある。完全性のために、第1の軸132は好ましくは垂直軸であること、すなわち溶接装置100が配置されている床に垂直であることに注目されたい。さらに、互いに溶接される第1および第2の部品は好ましくはプラスチック材料からなる。
【0067】
溶接装置100は、第1の予熱装置120および第2の予熱装置122を有する予熱装置118も備える。第1の予熱装置120は予熱位置において上側治具112に面する上側に配置されており、第2の予熱装置122は予熱位置において下側治具116に面する下側に配置されている。さらに予熱装置118は、第2の軸142に沿った移動のために第2の駆動装置140を備える。第2の軸142は第1の軸132に垂直である。さらに第3の軸152に沿った予熱装置118の移動のために第3の駆動装置150が提供されている。第3の軸152は第1の軸132に平行である。
【0068】
さらに溶接装置100は、第1の駆動装置130、第2の駆動装置140および第3の駆動装置150を制御する、好ましくは電子的に結合するか同期させるための制御装置を備える。制御装置は、主制御装置すなわちホスト制御装置または別個の主制御装置すなわちホスト制御装置として機能する駆動装置130、140、150のうちの1つの制御装置であってもよい。既に存在する制御装置の1つを用いて費用対効果の高い実施形態を実現する。他方、主制御装置すなわちホスト制御装置としての別個の制御装置の利用により、異なる用途を考慮して十分な処理能力およびより高い可変性を保証する。
【0069】
さらに駆動装置130、140および150に関して、それらはサーボ駆動装置として実現される。そのようなサーボ駆動装置の使用により当該移動の信頼できる制御を保証し、以下で考察されているように制御装置により、1つの駆動装置の故障の場合に駆動装置(特に全ての駆動装置)の移動の迅速な中断を達成することができる。さらにサーボ駆動装置は、空気圧もしくは油圧駆動装置と比較して迅速な移動を提供すると共に、同時に発生するノイズを少なくし、かつエネルギーの消費を減らすという利点を有する。
【0070】
図8では、それぞれの溶接装置100の上側治具112および下側治具116は初期位置すなわち開始位置に配置されている。予熱装置118はパーキング位置に配置されている。
【0071】
第1の工程S1は、第1および第2の部品を上側治具112および下側治具116内に配置するための上記第1の工程と同一である。第1の工程S1の最後に、溶接装置100は図8に示されており、かつ図6および図7には符号T1によって示されている位置を有する。この点に関して、図7は、駆動装置130、140および150の移動を制御するために制御装置によって使用される簡略化された電子カムディスクを例解している。
【0072】
次に第2の工程S2では、予熱装置18の第2の駆動装置140および第3の駆動装置150によるパーキング位置から予熱位置までの移動は中間位置を伴わずに生じる。これを達成するために、第2の駆動装置140および第3の駆動装置150は、同時に少なくとも部分的にそれらが作動または起動されるように制御装置によって制御される。
【0073】
例えば図6および図7に関して、第2の駆動装置140が予熱装置18を第2の軸142に沿って所定の距離にわたって移動させた後(図6および図7の符号T2ならびに図9に示されている位置を参照)、さらに第3の軸152に沿った移動が生じるように、第3の駆動装置150をさらに作動または起動させる。従って当該移動は連続的であり、組み合わせた移動は対角線方向への移動となる。連続的な移動はこの点に関して中間停止または中間位置を伴わない移動を定める。
【0074】
また符号T2において開始して第1の駆動装置130が作動または駆動されると、第1の軸132に沿った下側支持体114の移動が生じる(図6および図7を参照)。
【0075】
理解をより容易にするために、図10図6および図7の符号T3における位置を示す。第2の工程S2の最後に、溶接装置100は符号T4に対応する図11の構成を示す。
【0076】
このような過程の手順の結果として、当該軸のそれぞれに沿って別々に予熱装置18を移動させる上記溶接方法と比較して予熱装置118の経路は短くなる。工程S3において溶接される部品の予熱が生じ得る前に必要とされる時間のさらなる減少は、制御装置によって予熱装置118の第3の駆動装置150を作動または起動させるのと同時の初期位置から隣接位置までの下側支持体114の移動によって達成される。
【0077】
上述のようにそのような移動を同時に実現するために、駆動装置130、140および150は例えば電子カムディスクによって一緒に制御される。従って駆動装置130、140および150は好ましくは互いに結合されるか同期される。これは制御装置によって実現される。これにより、1つの駆動装置130、140、150の故障の場合に残りの駆動装置が共通制御により好ましくは自動的に停止されるように、それぞれの移動は互いに依存している。従って第1の部品、第2の部品および/または溶接装置100の損傷が回避可能である。
【0078】
さらに第2の駆動装置140はこの例では主駆動装置として機能し、残りの駆動装置130、150は従駆動装置として機能する。これは、残りの駆動装置が作動または起動されることなく第2の駆動装置140が最初に作動または起動されるという事実による。従って、第2の駆動装置140が符号T2によって示されている所定の距離を実現した後にのみ、残りの駆動装置が制御装置によって作動または起動される。
【0079】
次に工程S3において予熱が生じる。この目的を達成するために用途に応じて、予熱装置は好ましくは赤外線予熱装置である。
【0080】
その後に工程S4において上記移動を逆の順番で行い、これは図6に符号T3’、T2’およびT1’によって示されている。従って下側治具116を隣接位置から、予熱装置118のパーキング位置への移動を可能にする初期位置または任意の中間位置であってもよい離間位置まで第1の軸132に沿って移動させる。従って少なくとも部分的に同時に、上に説明されているように予熱装置118を好ましくは連続的に予熱位置からパーキング位置まで移動させる。工程S4の最後に、溶接装置100を図8に示されている位置に配置する。
【0081】
次に工程S5~S7において、上に説明されている工程9~11を行う。従って下側治具116を溶接位置に移動させ、当該部品を互いに溶接し、ユーザが製造された第1および第2の部品の複合体を取り外すことができるように、下側治具116を初期位置に戻す。
【0082】
符号の一覧
1 溶接装置
10 上側支持体
12 上側治具
14 下側支持体
16 下側治具
18 予熱装置
20 第1の予熱装置
22 第2の予熱装置
30 第1の駆動装置
32 第1の軸
34 第1の駆動装置30によって第1の軸32に沿って実現される移動シーケンス
40 第2の駆動装置
42 第2の軸
44 第2の駆動装置40によって第2の軸42に沿って実現される移動シーケンス
50 第3の駆動装置
52 第3の軸
54 第3の駆動装置50によって第3の軸52に沿って実現される移動シーケンス
100 溶接装置
110 上側支持体
112 上側治具
114 下側支持体
116 下側治具
118 予熱装置
120 第1の予熱装置
122 第2の予熱装置
130 第1の駆動装置
132 第1の軸
134 第1の駆動装置130によって第1の軸132に沿って実現される移動シーケンス
136 第1の駆動装置130によって第1の軸132に沿って実現される移動のための簡略化された電子カムディスク
140 第2の駆動装置
142 第2の軸
144 第2の駆動装置40によって第2の軸42に沿って実現される移動シーケンス
146 第2の駆動装置140によって第2の軸142に沿って実現される移動のための簡略化された電子カムディスク
150 第3の駆動装置
152 第3の軸
154 第3の駆動装置150によって第3の軸152に沿って実現される移動シーケンス
156 第3の駆動装置150によって第3の軸152に沿って実現される移動のための簡略化された電子カムディスク

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】