(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089967
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】蛍光顕微鏡システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230621BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G01N21/64 E
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199971
(22)【出願日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21215122
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カイ リッチェル
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー シュリッカー
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043BA16
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043KA09
2G043LA01
2G043NA01
2G043NA02
2G043NA05
2G043NA06
2G043NA14
2H052AA09
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】蛍光顕微鏡システムと、確実かつロバストな仕方でサンプルのraw画像からサンプルについての関連情報を抽出することができる蛍光顕微鏡システムによって、サンブルの処理画像を生成する方法と、を提供する。
【解決手段】蛍光顕微鏡システム(100)は、サンプル(102)のraw画像を取り込むように構成された光検出系(106)を有し、raw画像は、それぞれが輝度値を有する複数のピクセルを有する。蛍光顕微鏡システム(100)はさらにプロセッサ(116)を有する。プロセッサ(116)は、raw画像における無効ピクセルを特定し、それぞれの無効ピクセルに所定値を割り当て、無効ピクセルを除いた複数のピクセルの大部分の輝度値を有する輝度値範囲を特定し、特定した輝度値範囲に基づいてサンプル(102)の処理画像を生成するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出系(106)およびプロセッサ(116)を有する蛍光顕微鏡システム(100)であって、
前記光検出系(106)は、サンプル(102)のraw画像(300)を取り込むように構成され、前記raw画像(300)は、それぞれが輝度値を有する複数のピクセルを有し、
前記プロセッサ(116)は、
前記raw画像(300)における無効ピクセルを特定し、
それぞれの無効ピクセルに所定値を割り当て、
前記無効ピクセルを除いた複数の前記ピクセルの大部分の前記輝度値を有する輝度値範囲(410)を特定し、
特定した前記輝度値範囲(410)に基づいて、前記サンプル(102)の処理画像(306)を生成する、
ように構成されている、
蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項2】
前記プロセッサ(116)は、前記輝度値範囲(410)のそれぞれの輝度値に異なる色値を割り当て、前記割り当てに基づき、フォールスカラー画像として前記処理画像(306)を生成するように構成されている、
請求項1記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項3】
前記プロセッサ(116)は、前記所定値に所定の色値を割り当て、前記割り当てに基づき、フォールスカラー画像として前記処理画像(306)を生成するように構成されている、
請求項2記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項4】
前記所定の色値は、色値の範囲の色相に対する補色である、
請求項3記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項5】
前記蛍光顕微鏡システム(100)は、少なくとも1つのルックアップテーブルを有する記憶素子を有し、前記ルックアップテーブルにより、輝度値が色値に相関付けされ、前記プロセッサ(116)は、前記ルックアップテーブルに基づき、フォールスカラー画像として前記処理画像(306)を生成するように構成されている、
請求項2から4までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項6】
前記プロセッサ(116)は、前記raw画像(300)のピクセルが飽和しているか否かを特定し、それぞれ飽和ピクセルを前記無効ピクセルの1つとして特定するように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項7】
前記プロセッサ(116)は、前記raw画像(300)のピクセルの前記輝度値が、計算エラーの結果および/または検出エラーの結果であるか否かを特定し、それぞれの前記ピクセルを前記無効ピクセルの1つとして特定するように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項8】
前記プロセッサ(116)は、前記raw画像(300)のそれぞれのピクセルについて信頼値を特定し、所定の閾値を下回る信頼値を有するそれぞれのピクセルを無効ピクセルの1つとして特定するように構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項9】
前記プロセッサ(116)は、それぞれの無効ピクセルに前記所定値が前記プロセッサ(116)によって割り当てられた後、前記raw画像(300)の輝度ヒストグラム(400)を特定するように構成されており、前記輝度ヒストグラム(400)は、それぞれの輝度値についてのピクセルの個数を有しており、前記プロセッサ(116)は、前記輝度ヒストグラム(400)に基づいて、前記輝度値範囲(410)を特定するように構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項10】
前記所定値は、最小輝度値または最大輝度値である、
請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項11】
前記蛍光顕微鏡システム(100)は、前記サンプル(102)内に位置している少なくとも1つの蛍光体を励起するための励起光を放出するように構成された照明系(104)を有し、前記光検出系(106)は、励起された前記蛍光体によって放出される蛍光に基づいて、前記raw画像(300)を生成するように構成されており、前記raw画像(300)の前記輝度値は、蛍光強度に対応する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項12】
前記蛍光顕微鏡システム(100)は、蛍光広視野顕微鏡法用に構成されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項13】
前記蛍光顕微鏡システム(100)は、共焦点レーザ走査型顕微鏡法用に構成されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項14】
前記蛍光顕微鏡システム(100)は、前記raw画像(300)および/または前記処理画像(306)を表示するように構成された出力ユニット(120)を有する、
請求項1から13までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項15】
蛍光顕微鏡システム(100)により、サンプル(102)の処理画像(306)を生成する方法であって、前記方法は、
前記蛍光顕微鏡システム(100)の光検出系(106)により、前記サンプル(102)のraw画像(300)を取り込むステップであって、前記raw画像(300)は、それぞれが輝度値を有する複数のピクセルを有するステップと、
前記raw画像(300)における無効ピクセルを特定するステップと、
それぞれの無効ピクセルに所定値を割り当てるステップと、
前記無効ピクセルを除いた複数の前記ピクセルの大部分の前記輝度値を有する輝度値範囲(410)を特定するステップと、
特定した前記輝度値範囲(410)に基づいて、前記サンプル(102)の処理画像(306)を生成するステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡システムに関する。本発明はさらに、蛍光顕微鏡システムにより、サンプルの処理画像を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光顕微鏡画像は、それぞれが蛍光顕微鏡測定のデータ点に対応する複数のピクセルを有する。ほとんどのケースでは、それぞれのピクセルは、検出した蛍光強度に対応する輝度値を有する。別の複数のケースでは、蛍光顕微鏡画像は、例えば、スペクトルアンミキシングアルゴリズムによる数学的な再構成の結果である。これらのケースでは、それぞれのピクセルには、アルゴリズムによって特定されたそれぞれのピクセルの輝度値の確度を表す信頼値を割り当てることも可能である。
【0003】
蛍光顕微鏡画像のピクセルが無効であると考えることができる理由は様々である。例えば、ピクセルは、例えば、検出器のダイナミックレンジを上回る検出蛍光強度に起因して飽和されている可能性がある。検出器による読み出し中にエラーが発生して結果的に1つまたは複数のピクセルが、蛍光強度に対応しない輝度値を有することも起こり得る。さらに、ピクセルは、蛍光強度の数学的な再構成中にエラーが発生して結果的にそれぞれのピクセルに関連付けられた信頼値が低くなってしまう場合には無効とみなされることがある。無効なピクセルは、画像を表示するかまたはさらに処理する際に考慮しなければならない、蛍光顕微鏡画像におけるアーチファクトである。
【0004】
蛍光顕微鏡法では、検出器のダイナミックレンジの狭い範囲だけを利用する弱信号で作業することは一般的である。この弱信号を良好に表示するために、信号、すなわち、サンプルについての情報を有する信号を含む輝度値範囲が、選択し、ディスプレイユニットのダイナミックレンジ全体に拡大される。しかしながら、無効なピクセルは、サンプルについての情報は有しないため、無効なピクセルは、輝度値範囲の特定を妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、蛍光顕微鏡システムと、確実かつロバストな仕方でサンプルのraw画像からサンプルについての関連情報を抽出することができる蛍光顕微鏡システムによって、サンブルの処理画像を生成する方法と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題は、独立請求項の記載事項によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項および次の説明によって定められる。
【0007】
提案する蛍光顕微鏡システムは、サンプルのraw画像を取り込むように構成された光検出系を有する。raw画像は、それぞれが輝度値を有する複数のピクセルを有する。蛍光顕微鏡システムはさらにプロセッサを有する。プロセッサは、raw画像における無効ピクセルを特定し、それぞれの無効ピクセルに所定値を割り当て、無効ピクセルを除いた複数のピクセルの大部分の輝度値を有する輝度値範囲を特定し、特定した輝度値範囲に基づいてサンプルの処理画像を生成するように構成されている。
【0008】
上記の所定値は、輝度数値、NaNまたは別の数値または非数値のデータ型であってよい。所定値を無効ピクセルに割り当てることにより、無効ピクセルがマーキングされる。所定値により、無効ピクセルの輝度値が置き換えられるため、特定のピクセルが有効であるか否かについての情報を格納するためにさらなるメモリは不要である。さらに、所定値は、一般的な画像解析および操作プログラムによって容易にフィルタリング可能である。それゆえ、所定値によって無効ピクセルをマーキングすることにより、相互運用性も増大する。
【0009】
raw画像のすべての非無効ピクセルは、以下では有効ピクセルと称される。これらの有効ピクセルの輝度値は、蛍光顕微鏡システムによって測定されかつ/または特定される蛍光強度に対応する。それゆえ、有効ピクセルは、蛍光顕微鏡システムによって観察されるサンプルについての関連情報を有する。輝度値範囲を選択すると、所定値が除外される。換言すると、所定値を除外することにより、輝度の範囲を特定するときに、有効ピクセル、すなわちおそらくサンプルについての関連情報を含んでいる見込みのあるピクセルだけが考慮される。これによって蛍光顕微鏡システムにより、サンプルについての関連情報が、確実かつロバストな仕方でraw画像から抽出される。次いで、処理画像が、輝度値範囲に基づき、例えば、ダイナミックレンジ全体に輝度値範囲を拡大または引き伸ばすことによって生成される。
【0010】
好ましい実施形態では、プロセッサは、輝度値範囲のそれぞれの輝度値に異なる色値を割り当て、この割り当てに基づき、フォールスカラー画像として処理画像を生成するように構成されている。好ましくはすべての色値は、同じ色相を有する。この実施形態では、蛍光顕微鏡システムは、サンプルの着色画像によってこれらを提示することにより、ユーザが処理画像において関連情報を識別するのを支援する。これにより、蛍光顕微鏡システムは、ユーザがより効率的に作業できるようにする。
【0011】
別の好ましい実施形態では、プロセッサは、所定値に所定の色値を割り当て、この割り当てに基づき、フォールスカラー画像として処理画像を生成するように構成されている。好ましくは、所定の色値は、色値の範囲の色相に対する補色である。この実施形態では、無効ピクセルは、処理画像において強調される。これにより、ユーザは、これらを迅速に識別して、より効率的にこれらを作業できるようになる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、蛍光顕微鏡システムは、記憶素子を有する。記憶素子は、少なくとも1つのルックアップテーブルを有する。ルックアップテーブルにより、輝度値が色値に相関付される。プロセッサは、ルックアップテーブルに基づき、フォールスカラー画像として処理画像を生成するように構成されている。この実施形態では、raw画像の輝度値と処理画像の色値との間の関係が、ルックアップテーブルの形態で格納される。択一的には、raw画像の輝度値と処理画像の色値との間の関係は、関数関係の形態で格納可能である。
【0013】
別の好ましい実施形態では、raw画像のピクセルが飽和しているか否かを特定し、それぞれの飽和ピクセルを無効ピクセルの1つとして特定するようにプロセッサが構成されている。raw画像のピクセルは、その輝度値が最大値にある場合に飽和状態にある。つまり、例えば、検出器位置において受け取った、それぞれのピクセルに対応する蛍光強度が、検出器のダイナミックレンジを越えていたことを意味する。高い蛍光強度は、例えば、サンプルにおける高濃度のタンパク質の蓄積の結果である可能性がある。したがって蛍光強度の実際値は、検出される最大値よりも格段に高い可能性がある。それゆえ、飽和ピクセルは、実際のデータを表しておらず、廃棄されなければならず、すなわち無効であると特定されなければならない。
【0014】
別の好ましい実施形態では、raw画像のピクセルの輝度値が、計算エラーの結果および/または検出エラーの結果であるか否かを特定し、このようなそれぞれのピクセルを無効ピクセルの1つとして特定するようにプロセッサが構成されている。計算エラーは、例えば、スペクトルアンミキシング中に発生し得る。検出エラーの1つの例は、ライトシートアーチファクトである。計算エラーも検出エラーも共に実際のデータを表すことはなく、したがって無効であると特定されなければならない。
【0015】
別の好ましい実施形態では、raw画像のそれぞれのピクセルについて信頼値を特定し、所定の閾値を下回る信頼値を有するそれぞれのピクセルを無効ピクセルの1つとして特定するようにプロセッサが構成されている。この実施形態では、raw画像は、例えば、raw画像のそれぞれのピクセルに信頼値を割り当てる機械学習アルゴリズムを使用して取得可能である。信頼値は、プロセッサによってそれぞれピクセルの輝度値が特定された確度の尺度である。信頼値が低いと、データの信頼性は低くなる。それゆえ、信頼値の低いピクセルを無視することにより、処理画像は、実際のサンプルをより良好に表すようになる。
【0016】
別の好ましい実施形態では、それぞれの無効ピクセルに所定値がプロセッサによって割り当てられた後、raw画像の輝度ヒストグラムを特定するようにプロセッサが構成されており、この輝度ヒストグラムは、それぞれ輝度値についてピクセルの個数を有する。プロセッサは、輝度ヒストグラムに基づいて輝度値範囲を特定するように構成されている。特に、プロセッサは、輝度ヒストグラムから、所定の輝度値を除外するように構成されている。輝度ヒストグラムにより、それぞれの輝度値についてraw画像のピクセルの個数がカウントされる。特に、輝度ヒストグラムのプロットにおける尖頭および谷について、輝度ヒストグラムを解析することにより、プロセッサによって輝度値範囲を特定することができる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、所定値は、最小輝度値または最大輝度値である。最小輝度値も最大輝度値も、サンプルについての実際情報を有する見込みはない。したがって最小輝度値および最大輝度値は、実際情報を失うことなく、無効ピクセルをマーキングするために使用可能である。これにより、無効ピクセルの輝度値が置き換えられるため、メモリが節約される。
【0018】
別の好ましい実施形態では、蛍光顕微鏡システムは、サンプル内に位置している少なくとも1つの蛍光体を励起する励起光を放出するように構成された照明系を有する。光検出系は、励起された蛍光体によって放出される蛍光に基づいて、raw画像を生成するように構成されている。この実施形態では、raw画像の輝度値は、励起された蛍光体によって放出される蛍光の強度に対応する。照明系は、励起光を放出するように構成された1つまたは複数の光源、特にコヒーレント光源を有していてよい。照明系が2つ以上の異なる光源を有する場合、これらの光源は、特定の励起光を生成するようにそれぞれ構成されていてよい。択一的には照明系、白色光源と、異なる励起光を生成するために、単一波長または波長範囲を除いて白色光のすべての波長を遮断する2つ以上のフィルタを有する交換可能フィルタユニットと、を有することができる。
【0019】
別の好ましい実施形態では、蛍光顕微鏡システムは、蛍光広視野顕微鏡法用に構成されている。付加的または択一的には、蛍光顕微鏡システムは、共焦点レーザ走査型顕微鏡法用に構成されている。
【0020】
別の好ましい実施形態では、蛍光顕微鏡システムは、raw画像および/または処理画像を表示するように構成された出力ユニットを有する。
【0021】
本発明はさらに、蛍光顕微鏡システムによって、サンプルの処理画像を生成する方法に関する。この方法は次のステップ、すなわち、顕微鏡システムの光検出系により、サンプルのraw画像を取り込むステップを有し、このraw画像は、それぞれが輝度値を有する複数のピクセルを有し、上記の方法はさらに、raw画像における無効ピクセルを特定するステップと、それぞれの無効ピクセルに所定値を割り当てるステップと、無効ピクセルを除いた複数のピクセルの大部分の輝度値を有する輝度値範囲を特定するステップと、特定した輝度値範囲に基づいて、サンプルの処理画像を生成するステップと、を有する。
【0022】
この方法は、上で説明した蛍光顕微鏡システムと同じ利点を有する。特に、この方法は、蛍光顕微鏡システムに向けられた従属請求項の特徴を使用して補足可能である。
【0023】
以下では、図面を参照して特定の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】1つの実施形態による蛍光顕微鏡システムの概略図である。
【
図2】
図1による蛍光顕微鏡システムにより、サンプルの処理画像を生成する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、1つの実施形態による蛍光顕微鏡システム100の概略図である。
【0026】
蛍光顕微鏡システム100は、蛍光顕微鏡法によって、サンプル102のraw画像300(
図3aを参照されたい)を取り込むように構成されている。蛍光顕微鏡システム100の照明系104は、サンプル102内に位置している蛍光体を励起するための励起光を生成するように構成されている。蛍光顕微鏡システム100の光検出系106は、励起された蛍光体によって放出される蛍光に基づいて、サンプル102のraw画像を生成するように構成されている。光検出系106は、サンプル102に向けられた対物レンズ108および検出素子110を有する。対物レンズ108は、励起された蛍光体によって放出される蛍光を受け取り、蛍光を検出ビーム路112に向ける。本実施形態では、ビームスプリッタ114が、本実施形態では互いに垂直である照明ビーム路と検出ビーム路112との交点に配置されている。ビームスプリッタ114は、励起光が対物レンズ108を介してサンプル102へと向けられるように構成されている。ビームスプリッタ114はさらに、対物レンズ108によって受け取った蛍光が、検出素子110に向かうように構成されている。
【0027】
蛍光顕微鏡システム100はさらに、プロセッサ116、入力ユニットおよび出力ユニットを有する。プロセッサ116は、照明系104および光検出系106に接続されており、サンプル102のraw画像300を取得するために照明系104および光検出系106を制御するように構成されている。プロセッサ116は、入力ユニット118および出力ユニット120に接続されており、入力ユニット118を介してユーザ入力を受け取るように構成されている。本実施形態では、入力ユニット118は例示的にコンピュータキーボードであるように構成されている。択一的には、別の入力ユニット、例えば、コンピュータマウス、ジョイステックまたはトラックボール等が使用可能である。特に、蛍光顕微鏡システム100は、多くの異なる入力装置が使用可能であるようにセットアップされている。これにより、ユーザは、自分に最も快適な入力装置を選択することができる。
【0028】
制御ユニットはさらに、raw画像300からサンプル102の処理画像を生成する方法を実施し、出力ユニット120を介してユーザにraw画像300および処理画像306(
図3bを参照されたい)を出力するように構成されている。
図2~
図4を参照して、本方法を以下で説明する。
【0029】
図2は、上で説明した蛍光顕微鏡システム100により、サンプル102の処理画像306を生成する方法のフローチャートである。
【0030】
この処理は、ステップS200で始まる。ステップS202では、サンプル102内に位置している蛍光体を励起するために、プロセッサ116により、照明系104を制御して励起光を放出させる。またプロセッサ116により、光検出系106を制御して、励起された蛍光体によって放出される蛍光を取り込み、取り込んだ蛍光からraw画像300を生成する。raw画像300は、それぞれが輝度値を有する複数のピクセルを有する。ステップS202は、ユーザ入力によってトリガ可能である。ステップS204では、プロセッサ116により、raw画像300における無効ピクセルを特定する。無効ピクセルは、飽和ピクセル、計算エラーの結果または検出エラーの結果であってよい。いずれのケースであっても、無効ピクセルは実際のデータを表さない。ステップS206では、プロセッサ116により、それぞれの無効ピクセルに所定の輝度値を割り当てる。所定値は、最大値、最小値またはNaN等の別のデータ型であってもよく、ピクセルを無効ピクセルとして一意にマーキングする。raw画像300の別のすべてのピクセルを以下では有効ピクセルと称する。ステップS206の結果は、修正raw画像300である。
【0031】
選択的なステップS208では、プロセッサ116により、修正raw画像300の輝度ヒストグラム400(
図4を参照されたい)を特定する。プロセッサ116は、出力ユニット120を介してユーザに輝度ヒストグラム400を出力可能である。ステップS210では、プロセッサ116により、修正raw画像300のピクセルの大部分ではあるが無効ピクセルを除いたピクセルの輝度値を有する輝度値範囲410(
図4を参照されたい)を特定する。ステップS208において輝度ヒストグラム400を特定したとき、輝度値範囲410の特定は、輝度ヒストグラム400に基づいていてもよい。特に、輝度値範囲410の特定は、例えば、尖頭について輝度ヒストグラム400を解析することにより、輝度ヒストグラム400のプロットを解析することに基づいていてもよい。
図4を参照して、輝度ヒストグラム400に基づく輝度値範囲410の特定を以下でより詳細に説明する。
【0032】
ステップS212では、プロセッサ116により、輝度値範囲410に基づいて、修正raw画像300からサンプル102の処理画像306を生成する。特に、プロセッサ116は、輝度値範囲410内のそれぞれ輝度値に、好ましくは単一の色相の色値を割り当てるルックアップテーブルを修正raw画像300に適用する。これにより、フォールスカラー画像を生成する。この実施形態では、輝度値範囲410が出力ユニット120のダイナミックレンジ全体に拡大されるようにルックアップテーブルを選択する。つまり、無効ピクセルと、使用されない輝度値、すなわち、修正raw画像300において、対応するピクセルがないかまたわずかなピクセルだけに対応する輝度値と、を廃棄する。これにより、実際のデータが、ユーザにより見えるようになる。選択的には、ルックアップテーブルは、所定の色値を所定の輝度値に、すなわち無効ピクセルに割り当てることができる。好ましくは、無効ピクセルのマーキングに使用される色値の色相は、有効ピクセルの着色に使用される色値の色相の補色である。これにより、無効ピクセルは、明確にマーキングされてユーザに見えるようになる。選択的なステップS214では、ユーザは、輝度値範囲410を調整することができる。ユーザが、輝度値範囲410を再調整すると、プロセッサ116は、調整した輝度値範囲410を使用してステップS212を繰り返す。この処理は、ステップS216で終了する。
【0033】
図3aは、サンプル102のraw画像300の概略図である。
【0034】
raw画像300は、サンプル102の中心において飽和ピクセルから成る第1の領域302を有する。飽和ピクセルは、
図3aにおいて実線によって示されている。raw画像300における飽和ピクセルは、それぞれの検出器ピクセルの能力を上回る蛍光強度を検出した検出素子110のピクセルに対応する。実際の蛍光強度は、飽和ピクセルに割り当てられている最大値よりも格段に高い可能性がある。高い蛍光強度は、例えば、サンプル102のそれぞれの領域において蛍光体が大きく集中していることに起因し得る。実際の蛍光強度は、検出素子110のダイナミックレンジの外側にあるため、実際の蛍光強度は測定できない。したがって、飽和ピクセルは、実際のデータを表していない。
【0035】
raw画像300はさらに、サンプル102の中心の周りの極めて暗いピクセルから成る第2の領域304を有する。暗いピクセルは、弱い蛍光信号に対応し、
図3aでは点線で示されている。raw画像300では、飽和ピクセルは、暗いピクセルより明るく光り、これにより、暗いピクセルはほとんど見えなくなってしまう。例えば、暗いピクセルは、0~約200の輝度値を有し得るのに対し、輝度値の全範囲は0~65536である。暗いピクセルに対応するサンプル102の構造が見えるようにするために、raw画像300の輝度をスケーリングし直す必要がある。このために、プロセッサ116は、
図2を参照して上で説明した方法を実施する。
図3bを参照して、結果的に得られる処理画像306を以下で説明する。上述の実施例では、プロセッサ116により、輝度値範囲は0~200と特定され、処理画像306を生成するためにこの輝度値範囲410が全範囲まで引き伸ばされる。
【0036】
【0037】
処理画像306では、暗いピクセルを明瞭に見ることができる。このことは、
図3bにおいて暗いピクセルが実線で示されていることによって表されている。無効ピクセルがマーキングされている所定値は、輝度値範囲の外側にある。したがって、処理画像306では飽和ピクセルは見えない。
【0038】
図4は、raw画像300の輝度ヒストグラム400である。
【0039】
輝度ヒストグラム400の横座標402は、輝度値を示している。輝度ヒストグラム400の縦座標404は、1つの輝度値当たりのピクセルの個数を示している。輝度ヒストグラム400の右側の単一の尖頭406は、所定値として最大輝度値が割り当てられている無効ピクセルを表している。実際のデータは、輝度ヒストグラム400の左側の尖頭および谷の集まり408によって表されている。
【0040】
図2を参照して上で説明した方法のステップS208において特定した輝度値範囲410は、
図4において両向き矢印によって示されている。輝度の範囲は、輝度ヒストグラム400から、例えば、すべての有効ピクセルの所定のパーセンテージを有する範囲として特定可能である。択一的には、上記の輝度値を有するピクセルの個数が特定の閾値を上回る最大輝度値を特定することも可能である。この場合、この最大輝度値は、輝度値範囲410の上限として設定可能である。
【0041】
すべての図において同じ要素、類似の要素または同じ作用の要素には同じ参照符号が付されている。本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆるすべての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0042】
実施形態の個別の特徴と特徴間の相互のすべての組み合わせとの両方は、開示されているとみなされる。さらに、実施形態の個別の特徴は、先行する説明の個別の特徴または特徴グループの組み合わせにおいて、かつ/または特許請求の範囲の個別の特徴または特徴グループの組み合わせにおいて開示されているとみなされる。
【0043】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【符号の説明】
【0044】
100 蛍光顕微鏡システム
102 サンプル
104 照明系
106 光検出系
108 対物レンズ
110 検出素子
112 検出ビーム路
114 ビームスプリッタ
116 プロセッサ
118 入力ユニット
120 出力ユニット
300 像
302,304 領域
306 像
400 輝度ヒストグラム
402 横軸
404 縦座標
406 尖頭
408 集まり
410 輝度値範囲
【外国語明細書】