(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089991
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20230622BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20230622BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230622BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20230622BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20230622BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20230622BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230622BHJP
E03C 1/126 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C02F1/469
A61L9/01 B
C25B1/26 C
C25B13/02 302
C25B15/08 302
C25B9/00 D
C25B9/00 Z
E03C1/126
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204699
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】植田 充彦
【テーマコード(参考)】
2D061
4C180
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
2D061AA02
2D061AB06
2D061AB10
4C180AA07
4C180CB01
4C180CB08
4C180EA58X
4C180GG07
4C180GG08
4C180HH01
4D061DA02
4D061DA04
4D061DB09
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4D061EA09
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
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4D061EB40
4K021AB07
4K021BA03
4K021BC01
4K021CA08
4K021CA09
4K021DA15
4K021DB31
4K021DB49
4K021DC07
4K021DC13
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水供給装置を提供する。
【解決手段】次亜塩素酸水供給装置1は、蛇行状の無隔膜電解流路(第一陰陽電極間流路12)内に供給される塩水から一対の第一陰陽電極間(第一陽電極4と第一陰電極5との間)への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成ユニット2と、蛇行状の有隔膜電解流路(第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26)内のそれぞれに次亜塩素酸水生成ユニット2から供給される次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間(第二陽電極14と第二陰電極15との間)への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理ユニット3と、を備え、次亜塩素酸水処理ユニット3の陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路25)から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行状の無隔膜電解流路内に供給される塩水から一対の第一陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成ユニットと、
蛇行状の有隔膜電解流路内のそれぞれに前記次亜塩素酸水生成ユニットから供給される前記次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理ユニットと、
を備え、
前記次亜塩素酸水処理ユニットの陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する、次亜塩素酸水供給装置。
【請求項2】
前記無隔膜電解流路は、平面状の第一陽電極と、前記第一陽電極と対向する平面状の第一陰電極と、前記第一陽電極と前記第一陰電極との間に設けられたスペーサ部材とを有して構成され、
前記一対の第一陰陽電極は、前記スペーサ部材によって前記無隔膜電解流路に前記第一陽電極及び前記第一陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている、請求項1に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項3】
前記有隔膜電解流路は、第二陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一流路と、前記第一流路と対向して並設され、第二陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二流路と、前記第一流路と前記第二流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜と、を有して構成され、
前記一対の第二陰陽電極は、前記第一スペーサ部材によって前記第一流路に前記第二陽電極を露出させるとともに、前記第二スペーサ部材によって前記第二流路に前記第二陰電極を露出させることで蛇行状に構成され、
前記第一流路及び前記第二流路には、前記次亜塩素酸水生成ユニットから供給される前記次亜塩素酸水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている、請求項2に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項4】
平面状の前記第二陽電極と、前記第二陽電極と対向する平面状の前記隔膜と、前記第二陽電極と
前記隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第一流路内に前記第二陽電極及び前記隔膜を露出させる前記第一スペーサ部材とを有し、
前記第一流路は、流路に沿って露出する前記第二陽電極及び前記隔膜と、前記第一スペーサ部材と
により構成されており、
平面状の前記第二陰電極と、前記第二陰電極と対向する平面状の前記隔膜と、前記第二陰電極と前記隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第二流路内に前記第二陰電極及び前記隔膜を露出させる前記第二スペーサ部材とを有し、
前記第二流路は、流路に沿って露出する前記第二陰電極及び前記隔膜と、前記第二スペーサ部材とにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項5】
前記次亜塩素酸水生成ユニットと前記次亜塩素酸水処理ユニットとを連通接続する流路に設けられ、
前記有隔膜電解流路に前記次亜塩素酸水生成ユニットからの前記次亜塩素酸水を供給する供給ポンプを備え、
前記供給ポンプは、前記次亜塩素酸水生成ユニットからの前記次亜塩素酸水を前記第一流路及び前記第二流路に一定流速で供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水供給装置と、
前記第一流路と連通接続され、前記第一流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置と、
を備えることを特徴とする空間除菌システム。
【請求項7】
前記所定の空間には、前記所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けられており、
前記第二流路は、前記排水管と連通接続され、前記第二流路から送出される次亜塩素酸水を前記排水管に導入可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の空間除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水の電気分解によって生成した次亜塩素酸水の残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塩水の電気分解をすることで、NaClOを主成分としHClO及びNaOHを含む次亜塩素酸水が生成される。次亜塩素酸水は弱酸性側にすることで、除菌力が向上することが知られており、イオン透過能を有する隔膜を使用して生成されるpH弱酸性側に制御する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、pHが弱酸性に調整するだけでは、残留成分となるNaClO及びNaOHの抑制が十分にできているとはいえない。NaClO及びNaOHは、次亜塩素酸水が揮発後も固形分として表面に残留する成分で、この残留成分が潮解及び水に再溶解することで金属の腐食を促進する要因となる。そのため、NaClO及びNaOH成分を多く含む次亜塩素酸水をミスト噴霧すると、微小な残留成分が蓄積されるため、長期間使用時の腐食が懸念される。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、蛇行状の無隔膜電解流路内に供給される塩水から一対の第一陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成ユニットと、蛇行状の有隔膜電解流路内のそれぞれに次亜塩素酸水生成ユニットから供給される次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理ユニットとを備え、次亜塩素酸水処理ユニットの陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置の断面イメージ図である。
【
図2】
図2は、次亜塩素酸水生成ユニットの概略図である。
【
図3】
図3は、次亜塩素酸水生成ユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、次亜塩素酸水生成ユニットの垂直方向の断面イメージ図である。
【
図5】
図5は、次亜塩素酸水生成ユニットの水平方向の断面イメージ図である。
【
図6】
図6は、次亜塩素酸水処理ユニットの概略図である。
【
図7】
図7は、次亜塩素酸水処理ユニットの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、次亜塩素酸水処理ユニットの垂直方向の断面イメージ図である。
【
図9】
図9は、次亜塩素酸水処理ユニットの水平方向の断面イメージ図である。
【
図10】
図10は、次亜塩素酸水供給装置を流通した次亜塩素酸水の特性と電気透析時間との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置を用いた空間除菌システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、蛇行状の無隔膜電解流路内に供給される塩水から一対の第一陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成ユニットと、蛇行状の有隔膜電解流路内のそれぞれに前記次亜塩素酸水生成ユニットから供給される前記次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理ユニットと、を備え、次亜塩素酸水処理ユニットの陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とする。
【0010】
こうした構成によれば、次亜塩素酸水生成ユニットにおいて無隔膜電解流路内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに次亜塩素酸水処理ユニットにおいて有隔膜電解流路内に無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減した次亜塩素酸水として抽出することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を分離した次亜塩素酸水を外部に供給することが可能な、ワンパス式の次亜塩素酸水供給装置とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、無隔膜電解流路は、平面状の第一陽電極と、第一陽電極と対向する平面状の第一陰電極と、第一陽電極と第一陰電極との間に設けられたスペーサ部材とを有して構成され、一対の第一陰陽電極は、スペーサ部材によって無隔膜電解流路に第一陽電極及び第一陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている。このようにすることで、スペーサ部材に形成される流路形状により、塩水を電気分解する能力を変化させることができるので、塩水を電気分解する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0012】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、有隔膜電解流路は、第二陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一流路と、第一流路と対向して並設され、第二陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二流路と、第一流路と第二流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜とを有して構成され、一対の第二陰陽電極は、第一スペーサ部材によって第一流路に第二陽電極を露出させるとともに、第二スペーサ部材によって第二流路に第二陰電極を露出させることで蛇行状に構成され、第一流路及び第二流路には、次亜塩素酸水生成ユニットから供給される次亜塩素酸水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている。こうした構成によれば、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を、隔膜を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理ユニットとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、平面状の第二陽電極と、第二陽電極と対向する平面状の隔膜と、第二陽電極と隔膜との間に設けられ、流路に沿って第一流路内に第二陽電極及び隔膜を露出させる第一スペーサ部材とを有し、第一流路は、流路に沿って露出する第二陽電極及び隔膜と第一スペーサ部材とにより構成されている。また、平面状の第二陰電極と、第二陰電極と対向する平面状の隔膜と、第二陰電極と隔膜との間に設けられ、流路に沿って第二流路内に第二陰電極及び隔膜を露出させる第二スペーサ部材とを有し、第二流路は、流路に沿って露出する第二陰電極及び隔膜と、第二スペーサ部材とにより構成されている。このようにすることで、第一スペーサ部材に形成される流路形状、及び第二スペーサ部材に形成される流路形状により、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する能力を変化させることができるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0014】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、次亜塩素酸水生成ユニットと次亜塩素酸水処理ユニットとを連通接続する流路に設けられ、有隔膜電解流路に次亜塩素酸水生成ユニットからの次亜塩素酸水を供給する供給ポンプを備え、供給ポンプは、次亜塩素酸水生成ユニットからの次亜塩素酸水を第一流路及び第二流路に一定流速で供給することが好ましい。これにより、第一流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第二流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第一流路における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化する濃度、及び第二流路における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0015】
本発明に係る空間除菌システムは、上述した次亜塩素酸水供給装置と、第一流路と連通接続され、第一流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置とを備える構造とする。こうした構成によれば、第一流路から送出される次亜塩素酸水のミストを所定の空間に放出しても、所定の空間に残る残留成分が抑制される。つまり、第一流路から送出される次亜塩素酸水が塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水であるため、所定の空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る空間除菌システムは、所定の空間には、所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けられており、第二流路は、排水管と連通接続され、第二流路から送出される次亜塩素酸水を排水管に導入可能に構成されている構造とする。このようにすることで、第二流路から送出される次亜塩素酸水から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水を排水管に流通させるので、アルカリ性溶液によって排水管の洗浄を行うことができる。
【0017】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1の断面イメージ図である。
【0018】
次亜塩素酸水供給装置1は、塩水(塩化ナトリウム水溶液)を供給して電気分解により次亜塩素酸水を生成し、さらに生成した次亜塩素酸水に含まれる残留成分(Na+イオン等の陽イオンを有する成分:例えば、NaClO、NaOH)を、内部を流通する次亜塩素酸水から分離低減して、かつワンパス式で取り出して供給することができる装置である。
【0019】
具体的には、
図1に示すように、次亜塩素酸水供給装置1は、塩水を電気分解して次亜塩素酸水をワンパス式で生成する次亜塩素酸水生成ユニット2と、次亜塩素酸水に含まれる残留成分の分離低減をワンパス式で行う次亜塩素酸水処理ユニット3と、次亜塩素酸水生成ユニット2の流路に塩水を流通させるとともに、次亜塩素酸水処理ユニット3の流路に次亜塩素酸水を流通させるための陽極側供給ポンプ29及び陰極側供給ポンプ31と、を備える。
【0020】
<次亜塩素酸水生成ユニット>
図1~
図5を参照して、次亜塩素酸水供給装置1を構成する次亜塩素酸水生成ユニット2について説明する。
図2は、次亜塩素酸水生成ユニット2の概略図である。
図3は、次亜塩素酸水生成ユニット2の分解斜視図である。
図4は、次亜塩素酸水生成ユニット2の垂直方向の断面イメージ図である。
図5は、次亜塩素酸水生成ユニット2の水平方向の断面イメージ図である。
【0021】
次亜塩素酸水生成ユニット2は、
図2~
図5に示すように、第一陽電極4と、第一陰電極5と、第一陰陽電極間スペーサ6と、第一陽電極用パッキン7aと、第一陰電極用パッキン7bと、第一陽電極側槽筐体側面8aと、第一陰電極側槽筐体側面8bと、第一陰陽電極溶液供給口9と、第一陽電極溶液抽出口10と、第一陰電極溶液抽出口11と、第一陰陽電極間流路12と、電気分解電源13と、を備える。
【0022】
第一陽電極4は、平面状の電極板である。第一陽電極4は、第一陰陽電極間スペーサ6によって第一陰陽電極間流路12に沿って電極板の表面が露出している。第一陽電極4は、電気分解電源13によって電流が流れると陽極として機能する電極である。第一陽電極4は、第一陰電極5と対向して略平行に配置されている。第一陽電極4は、チタン基材の表面に白金を含む触媒が形成されており、電気分解による次亜塩素酸の発生効率が高い材料を使用する。白金を含む触媒は、少なくとも第一陰陽電極間流路12に沿って露出される第一陽電極4の面に形成されている。塩水のNaClを電気分解して、NaClO及びHClO及びNaOHを含む次亜塩素酸水を生成することができる。
【0023】
第一陰電極5は、平面状の電極板である。第一陰電極5は、第一陰陽電極間スペーサ6によって第一陰陽電極間流路12に沿って電極板の表面が露出している。第一陰電極5は、電気分解電源13によって電流が流れると陰極として機能する電極である。第一陰電極5は、第一陽電極4と対向して略平行に配置されている。第一陰電極5は、第一陽電極4と同様に表面に白金を含む触媒を形成する。白金を含む触媒は、少なくとも第一陰陽電極間流路12に沿って露出される第一陰電極5の面に形成されている。また、第一陰陽電極間流路12に沿って露出させて電気分解を行う領域の第一陽電極4と第一陰電極5は同形状とし、対向距離の短い方がイオンを移動させやすく、電気分解も起こしやすい。対向距離が短いと流路を流れる流量が少なくなり、生成できる次亜塩素酸水も少なくなるため、必要な次亜塩素酸水生成量を確保したうえで、対向距離を10mm以下程度に短くすることが望ましい。
【0024】
そして、第一陽電極4及び第一陰電極5は、一対の対向電極として第一陰陽電極を構成する。
【0025】
第一陰陽電極間スペーサ6は、絶縁性の部材である。第一陰陽電極間スペーサ6は、第一陽電極4と第一陰電極5との間の距離を所定の間隔に制御する。第一陰陽電極間スペーサ6は、第一陰陽電極間スペーサ6の内部に、後述する第一陰陽電極間流路12を形作る第一陰陽電極間流路孔12aを有している。第一陰陽電極間流路孔12aは、第一陰陽電極間スペーサ6の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。また、第一陰陽電極間スペーサ6の表面には、第一陽電極4及び第一陰電極5との密着性をあげるために、第一陰陽電極間スペーサ6と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。なお、第一陰陽電極間スペーサ6は、請求項の「スペーサ部材」に相当する。
【0026】
第一陽電極用パッキン7aは、第一陽電極4の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第一陰陽電極間スペーサ6と密着して外周方向に、第一陰陽電極間流路12内の溶液(後述する第一陰陽電極供給溶液9a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第一陽電極用パッキン7aの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。第一陽電極用パッキン7aは、第一陽電極4より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第一陰陽電極間スペーサ6と第一陽電極側槽筐体側面8aとを密着しながら、第一陽電極4の厚みで保持されることが望ましい。
【0027】
第一陰電極用パッキン7bは、第一陰電極5の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第一陰陽電極間スペーサ6と密着して外周方向に、第一陰陽電極間流路12内の溶液(後述する第一陰陽電極供給溶液9a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第一陰電極用パッキン7bは、第一陰電極5より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第一陰陽電極間スペーサ6と第一陰電極側槽筐体側面8bと密着しながら、第一陰電極5の厚みで保持されることが望ましい。
【0028】
第一陽電極側槽筐体側面8aは、第一陽電極4の外側に直接接触するように配置されている。第一陽電極側槽筐体側面8aは、第一陽電極4の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第一陽電極側槽筐体側面8aの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外側に漏れが発生することはない。第一陽電極4の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電気分解の効率向上にもつながる。
【0029】
第一陰電極側槽筐体側面8bは、第一陰電極5の外側に直接接触するように配置されている。第一陰電極側槽筐体側面8bは、第一陰電極5の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第一陰電極側槽筐体側面8bの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。第一陰電極5の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電気分解の効率向上にもつながる。
【0030】
第一陰陽電極溶液供給口9は、電気分解する塩水を第一陰陽電極間流路12内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第一陽電極45の外側から塩水を供給するため、第一陰陽電極溶液供給口9は、第一陽電極4より外周の位置に加工されている。なお、第一陰陽電極溶液供給口9は、第一陰電極5の外周の位置に加工されてもよいし、第一陽電極4及び第一陰電極5の両方の外側の位置に加工されてもよい。
【0031】
第一陰陽電極供給溶液9aは、塩水である。第一陰陽電極供給溶液9aは、第一陰陽電極溶液供給口9から第一陰陽電極間流路12に導入される。
【0032】
第一陽電極溶液抽出口10は、電気分解した第一陽電極抽出溶液10aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられてあり、陽電極側接続チューブ28及び陽電極側供給ポンプ29へとつながっている。第一陽電極4の外側に第一陽電極抽出溶液10aを抽出するため、第一陽電極溶液抽出口10は、第一陽電極4より外周の位置に加工されている。
【0033】
第一陽電極抽出溶液10aは、塩水から電気分解した次亜塩素酸水である。第一陽電極抽出溶液10aは、第一陰陽電極間流路12から第一陽電極溶液抽出口10に導入される。
【0034】
より詳細には、第一陽電極抽出溶液10aには、塩水を電気分解することで、次亜塩素酸水の成分であるNaClO及びHClOが生成されて含まれる。また、他の成分として、電気分解で生成されるNaOH、NaClOから分解してできたNaCl、及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClなどが含まれる。塩水の電気分解が進むにつれて、NaClの濃度は減少し、NaClO、HClO、及びNaOHの濃度が上昇する。HClOとNaOHの反応によりNaClOとなることから、塩水の電気分解が十分にされるとNaClOを含む次亜塩素酸水が生成される。陽イオンであるNa+イオンを含む成分は、揮発後に残留成分となるものであり、塩水の電気分解によって生じる残留成分としては、NaClO、NaOH、及びNaClがあてはまる。
【0035】
第一陰電極溶液抽出口11は、電気分解した第一陰電極抽出溶液11aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられてあり、陰電極側接続チューブ30及び陰電極側供給ポンプ31へとつながっている。第一陰電極5の外側に第一陰電極抽出溶液11aを抽出するため、第一陰電極溶液抽出口11は、第一陰電極5より外周の位置に加工されている。
【0036】
第一陰電極抽出溶液11aは、塩水から電気分解した次亜塩素酸水である。第一陰電極抽出溶液11aは、第一陰陽電極間流路12から第一陰電極溶液抽出口11に導入される。
【0037】
より詳細には、第一陽陰極抽出溶液11aには、塩水を電気分解することで、次亜塩素酸水の成分であるNaClO及びHClOが生成されて含まれる。また、他の成分として、電気分解で生成されるNaOH、NaClOから分解してできたNaCl、及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClなどが含まれる。塩水の電気分解が進むにつれて、NaClの濃度は減少し、NaClO、HClO、及びNaOHの濃度が上昇する。HClOとNaOHの反応によりNaClOとなることから、塩水の電気分解が十分にされるとNaClOを含む次亜塩素酸水が生成される。陽イオンであるNa+イオンを含む成分は、揮発後に残留成分となるものであり、塩水の電気分解によって生じる残留成分としては、NaClO、NaOH、及びNaClがあてはまる。
【0038】
第一陰陽電極間流路12内では、電気分解された次亜塩素酸水は流通過程で混合されるものの、第一陽電極4近傍には塩水の陰イオン成分であるCl-イオンが多く分布し、第一陰電極5近傍には塩水の陽イオン成分であるNa+イオンが多く分布するような濃度勾配を持って流れている。そのため、第一陰陽電極間で電気分解を行うと、第一陽電極4近傍には酸性に寄った溶液が流れ、第一陰電極近傍にはアルカリ性に寄った溶液が流れることになる。第一陽電極溶液抽出口10及び第一陰電極溶液抽出口11は、第一陽電極4及び第一陰電極5の外周にあたるため電圧の印加がされない場所にあたるが、第一陽電極4及び第一陰電極5の近傍に第一陽電極溶液抽出口10及び第一陰電極溶液抽出口11を設計しているので、酸性及びアルカリ性に寄った次亜塩素酸水がそれぞれ抽出される。具体的には、第一陽電極4側に設けた第一陽電極溶液抽出口10から第一陽電極抽出溶液10aとしてHCl及びHClOを多く含む酸性の次亜塩素酸水が抽出され、第一陰電極5側に設けた第一陰電極溶液抽出口11から第一陰電極抽出溶液11aとしてNaOHを多く含むアルカリ性の次亜塩素酸水が抽出される。
【0039】
ここで、第一陰陽電極溶液供給口9は、鉛直方向の下方側に配置されることが望ましく、第一陽電極溶液抽出口10及び第一陰電極溶液抽出口11は、鉛直方向の上方側に配置されることが望ましい。流路内の電気分解反応により、酸素ガス及び水素ガス等が発生する際に、各抽出口が上方に配置されてある方がガスをより効率的に溶液とともに排出することができる。
【0040】
第一陰陽電極間流路12は、第一陽電極4と第一陰陽電極間スペーサ6と第一陰電極5とによって囲まれた領域に形成される流路であり、いわゆる無隔膜電解流路である。第一陰陽電極間流路12は、第一陰陽電極間スペーサ6の第一陰陽電極間流路孔12aによって蛇行して構成されている。より詳細には、第一陰陽電極間流路12は、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気分解を行う距離を稼いでいる。さらに第一陰陽電極間流路12の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気分解時間を長くすることができる。第一陰陽電極間流路12において液の逆流を低減するため、第一陰陽電極間流路12が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。第一陰陽電極間流路12は、その一方に第一陰陽電極溶液供給口9が設けられ、他方に第一陽電極溶液抽出口10及び第一陰電極溶液抽出口11が設けられており、内部に第一陰陽電極供給溶液9aが流通している。電気分解量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、第一陽電極溶液抽出口10の後段に陽電極側供給ポンプ29を設置し、第一陰電極溶液抽出口11の後段に陰電極側供給ポンプ31を設置して制御することができる。各供給ポンプは、一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気分解する時間を一定に制御できるため、抽出する次亜塩素酸水の濃度を安定的に制御することができる。
【0041】
電気分解電源13は、第一陽電極4及び第一陰電極5と接続され、第一陽電極4及び第一陰電極5に電流及び電圧を印加することができる直流電源である。電気分解電源13は、一定の電流となるように定電流制御の電源として使用してもよいし、一定の電圧となるように定電圧制御の電源として使用してもよい。なお、電気分解電源13は、スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水生成ユニット2への塩水の通水ごとに、第一陽電極4と第一陰電極5の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させるように制御してもよい。
【0042】
以上のように、次亜塩素酸水生成ユニット2は、各部材によって構成される。
【0043】
<次亜塩素酸水供給ユニット>
次に、
図1、
図6~
図9を参照して、次亜塩素酸水供給装置1を構成する次亜塩素酸水供給ユニット3について説明する。
図6は、次亜塩素酸水処理ユニット3の概略図である。
図7は、次亜塩素酸水処理ユニット3の分解斜視図である。
図8は、次亜塩素酸水処理ユニット3の垂直方向の断面イメージ図である。
図9は、次亜塩素酸水処理ユニット3の水平方向の断面イメージ図である。
【0044】
次亜塩素酸水処理ユニット3は、
図6~
図9に示すように、第二陽電極14と、第二陰電極15と、隔膜16と、第二陽電極側スペーサ17と、第二陰電極側スペーサ18と、第二陽電極用パッキン19a、第二陰電極用パッキン19b、第二陽電極側槽筐体側面20aと、第二陰電極側槽筐体側面20bと、第二陽電極溶液供給口21と、第二陽電極溶液抽出口22と、第二陰電極溶液供給口23と、第二陰電極溶液抽出口24と、第二陽電極側流路25と、第二陰電極側流路26と、電気透析電源27と、を備える。
【0045】
第二陽電極14は、平面状の電極板である。第二陽電極14は、第二陽電極側スペーサ17によって第二陽電極側流路25の流路に沿って電極板の表面が露出している。第二陽電極14は、電気透析電源27によって電流が流れると陽極として機能する電極である。第二陽電極14は、第二陰電極15と対向して略平行に配置されている。第二陽電極14は、チタン基材の表面に白金を含む触媒が形成されており、電気分解による次亜塩素酸の発生効率が高い材料を使用する。白金を含む触媒は、少なくとも第二陽電極側流路25の流路に沿って露出される第二陽電極14の面に形成されている。電気透析により陽イオンを移動させて、残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を生成することが主目的であるが、NaClOから分解してできたNaCl及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClも、白金電極により次亜塩素酸へと変化させることが可能となる。
【0046】
第二陰電極15は、平面状の電極板である。第二陰電極15は、第二陰電極側スペーサ18によって第二陰電極側流路26の流路に沿って電極板の表面が露出している。第二陰電極15は、電気透析電源27によって電流が流れると陰極として機能する電極である。第二陰電極15は、第二陽電極14と対向して略平行に配置されている。第二陰電極15は、第二陽電極14と同様に表面に白金を含む触媒を形成する。白金を含む触媒は、少なくとも第二陰電極側流路26の流路に沿って露出される第二陰電極15の面に形成されている。また、第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26に沿って露出させて電気透析を行う領域の第二陽電極14と第二陰電極15は同形状とし、対向距離の短い方がイオンの移動をさせやすい。対向距離が短いと流路を流れる流量が少なくなり、生成できる次亜塩素酸水も少なくなるため、必要な次亜塩素酸水生成量を確保したうえで、対向距離を10mm以下程度に短くすることが望ましい。
【0047】
そして、第二陽電極14及び第二陰電極15は、一対の対向電極として第二陰陽電極を構成する。
【0048】
隔膜16は、平面状の薄膜である。隔膜16は、第二陽電極14及び第二陰電極15と対向して略平行に配置されている。隔膜16は、第二陽電極側流路25と第二陰電極側流路26とを隔てるように設けている。隔膜16は、次亜塩素酸水の残留成分であるNaClO及びNaOHに関係するNa+イオンのような陽イオンを移動させることが可能なイオン交換膜(陽イオン交換膜)である。隔膜16は、第二陽電極14及び第二陰電極15に電圧を印加することで、第二陰電極15に陽イオンを移動させることができる。この陽イオン交換膜としては、デュポン社製ナフィオンなどが挙げられる。なお、第二陰電極15側は、陽イオンを濃縮するため、長時間使用時に水道水等に含まれるスケール成分が析出する可能性がある。スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水処理ユニット3への次亜塩素酸水の通水ごとに、第二陽電極14と第二陰電極15の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させる。転極して使用することを想定する際には、第二陽電極14及び第二陰電極15は、同様の白金を含む触媒処理にしておくことが望ましい。
【0049】
第二陽電極側スペーサ17は、絶縁性の部材である。第二陽電極側スペーサ17は、第二陽電極14と隔膜16との間の距離を所定の間隔に制御する。第二陽電極側スペーサ17は、第二陽電極側スペーサ17の内部に、後述する第二陽電極側流路25を形作る第二陽電極側流路孔25aを有している。第二陽電極側流路孔25aは、第二陽電極側スペーサ17に形成された第二陽電極側流路25を形成する孔のことである。第二陽電極側流路孔25aは、第二陽電極側スペーサ17の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。また、第二陽電極側スペーサ17の表面には、第二陽電極14及び隔膜16との密着性をあげるために、第二陽電極側スペーサ17と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。なお、第二陽電極側スペーサ17は、請求項の「第一スペーサ部材」に相当する。
【0050】
第二陰電極側スペーサ18は、絶縁性の部材である。第二陰電極側スペーサ18は、第二陰電極15と隔膜16の距離を制御する。第二陰電極側スペーサ18は、第二陰電極側スペーサ18の内部に、後述する第二陰電極側流路26を形作る第二陰電極側流路孔26aを有している。第二陰電極側流路孔26aは、第二陰電極側スペーサ18に形成された第二陰電極側流路26を形成する孔のことである。第二陰電極側流路孔26aは、第二陰電極側スペーサ18の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。ここで、第二陰電極側流路孔26aと第二陽電極側流路孔25aとは、互いに対向するように配置されている。また、第二陰電極側スペーサ18の表面には、第二陰電極15及び隔膜16との密着性をあげるために、第二陰電極側スペーサ18と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。なお、第二陰電極側スペーサ18は、請求項の「第二スペーサ部材」に相当する。
【0051】
第二陽電極用パッキン19aは、第二陽電極14の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第二陽電極側スペーサ17と密着して外周方向に、第二陽電極側流路25内の溶液(後述する第二陽電極供給溶液21a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第二陽電極用パッキン19aの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。第二陽電極用パッキン19aは、第二陽電極14より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第二陽電極側スペーサ17と第二陽電極側槽筐体側面20aとを密着しながら、第二陽電極14の厚みで保持されることが望ましい。
【0052】
第二陰電極用パッキン19bは、第二陰電極15の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第二陰電極側スペーサ18と密着して外周方向に第二陰電極側流路26内の溶液(後述する第二陰電極供給溶液23a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第二陰電極用パッキン19bの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。第二陰電極用パッキン19bは、第二陰電極15より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第二陰電極側スペーサ18と第二陰電極側槽筐体側面20bと密着しながら、第二陰電極15の厚みで保持されることが望ましい。
【0053】
第二陽電極側槽筐体側面20aは、第二陽電極14の外側に直接接触するように配置されている。第二陽電極側槽筐体側面20aは、第二陽電極14の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第二陽電極側槽筐体側面20aの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。第二陽電極14の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電気透析の効率向上にもつながる。
【0054】
第二陰電極側槽筐体側面20bは、第二陰電極15の外側に直接接触するように配置されている。第二陰電極側槽筐体側面20bは、第二陰電極15の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第二陰電極側槽筐体側面20bの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。第二陰電極15の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電極透析の効率向上にもつながる。
【0055】
第二陽電極溶液供給口21は、電気透析する第二陽電極供給溶液21aを流路内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第二陽電極14の外側から第二陽電極供給溶液21aを供給するため、第二陽電極溶液供給口21は、第二陽電極14より外周の位置に加工されている。
【0056】
第二陽電極供給溶液21aは、次亜塩素酸水生成ユニット2において塩水から電気分解した次亜塩素酸水である。より詳細には、第二陽電極供給溶液21aは、第一陽電極溶液抽出口10から供給される第一陽電極抽出溶液10aであり、HCl及びHClOを多く含む酸性の次亜塩素酸水である。第二陽電極供給溶液21aは、第二陽電極溶液供給口21から第二陽電極側流路25に導入される。
【0057】
第二陽電極溶液抽出口22は、電気透析した第二陽電極抽出溶液22aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第二陽電極14の外側に第二陽電極抽出溶液22aを抽出するため、第二陽電極溶液抽出口22は、第二陽電極14より外周の位置に加工されている。
【0058】
第二陽電極抽出溶液22aは、HClOが主成分の次亜塩素酸水である。第二陽電極抽出溶液22aは、第二陽電極側流路25から第二陽電極溶液抽出口22に導入される。
【0059】
より詳細には、第二陽電極抽出溶液22aは、第二陽電極供給溶液21aを第二陽電極側流路25に流通させて、第二陽電極供給溶液21aから残留成分の要因となる陽イオンを分離希薄化した溶液である。第二陽電極供給溶液21aに、次亜塩素酸水ユニット2において塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水(第一陽電極供給溶液10a)を使用しているので、第二陽電極抽出溶液22aには、陽イオンであるNa+イオンが分離希薄化され、HClOの成分が主成分の次亜塩素酸水となる。pHは酸性を示す。
【0060】
第二陰電極溶液供給口23は、電気透析する第二陰電極供給溶液23aを流路内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第二陰電極15の外側から第二陰電極供給溶液23aを供給するため、第二陰電極溶液供給口23は、第二陰電極15より外周の位置に加工されている。
【0061】
第二陰電極供給溶液23aは、次亜塩素酸水生成ユニット2において塩水から電気分解した次亜塩素酸水である。より詳細には、第二陰電極供給溶液23aは、第一陰電極溶液抽出口11から供給される第一陰電極抽出溶液11aであり、NaOHを多く含むアルカリ性の次亜塩素酸水である。第二陰電極供給溶液23aは、第二陰電極溶液供給口23から第二陰電極側流路26に導入される。
【0062】
第二陰電極溶液抽出口24は、電気透析した第二陰電極抽出溶液24aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第二陰電極15の外側に第二陰電極抽出溶液24aを抽出するため、第二陰電極溶液抽出口24は、第二陰電極15より外周の位置に加工されている。
【0063】
第二陰電極抽出溶液24aは、NaClO及びNaOHが主成分の次亜塩素酸水である。第二陰電極抽出溶液24aは、第二陰電極側流路26から第二陰電極溶液抽出口24に導出される。
【0064】
より詳細には、第二陰電極抽出溶液24aは、第二陰電極供給溶液23aを第二陰電極側流路26に流通させて、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化された溶液である。第二陰電極供給溶液23aに、次亜塩素酸水ユニット2において塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水(第一陰電極供給溶液11a)を使用しているので、第二陰電極抽出溶液24aには、陽イオンであるNa+イオンが分離濃縮化され、NaOHとして生成されることで、NaOHとNaClOが主成分の次亜塩素酸水となる。pHはアルカリ性を示す。
【0065】
ここで、第二陽電極溶液供給口21及び第二陰電極溶液供給口23は、鉛直方向の下方側に配置されることが望ましく、第二陽電極溶液抽出口22及び第二陰電極溶液抽出口24は、鉛直方向の上方側に配置されることが望ましい。流路内の電気透析反応及び電気分解反応により、酸素ガス及び水素ガス等が発生する際に、抽出口が上方に配置されてある方がガスをより効率的に溶液とともに排出することができる。
【0066】
第二陽電極側流路25は、第二陽電極14と第二陽電極側スペーサ17と隔膜16とによって囲まれた領域で形成される流路である。第二陽電極側流路25は、第二陽電極側スペーサ17の第二陽電極側流路孔25aによって蛇行して構成されている。より詳細には、第二陽電極側流路25は、水平方向に往復し下から上に陽極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第二陽電極側流路25の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。第二陽電極側流路25において液の逆流を低減するため、第二陽電極側流路25が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。第二陽電極側流路25は、その一方に第二陽電極溶液供給口21が設けられ、他方に第二陽電極溶液抽出口22が設けられており、内部に陽極側溶液である第二陽電極供給溶液21aが流通している。なお、第二陽電極側流路25は、請求項の「第一流路」に相当する。
【0067】
第二陰電極側流路26は、第二陰電極15と第二陰電極側スペーサ18と隔膜16によって囲まれた領域で形成される流路である。第二陰電極側流路26は、第二陰電極側スペーサ18の第二陰電極側流路孔26aによって蛇行して構成されている。より詳細には、第二陰電極側流路26は、水平方向に往復し下から上に陰極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第二陰電極側流路26の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。第二陰電極側流路26において液の逆流を低減するため、第二陰電極側流路26が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に流れる構造とすることが望ましい。第二陰電極側流路26は、その一方に第二陰電極溶液供給口23が設けられ、他方に第二陰電極溶液抽出口24が設けられており、内部に陰極側溶液である第二陰電極供給溶液23aが流通している。なお、第二陰電極側流路26は、請求項の「第二流路」に相当する。
【0068】
第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26は、隔膜16を挟んで対称な形状で対向している。つまり、第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26は、隔膜16を挟んで互いに対向する蛇行形状で構成されている。このようにして、第二陽電極側流路25と第二陰電極側流路26とは、いわゆる有隔膜電解流路を構成している。そして、第二陽電極側流路25内を流通する次亜塩素酸水に含まれるNa+イオンが第二陰電極側流路26側に移動する。イオンの移動量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、第二陽電極溶液供給口21の前段に陽電極側供給ポンプ29を設置し、第二陰電極溶液供給口23の前段に陰電極側供給ポンプ31を設置して制御することができる。各ポンプは、一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気透析および電気分解する時間を一定に制御できるため、抽出する次亜塩素酸水の濃度を安定的に制御することができる。
【0069】
電気透析電源27は、第二陽電極14及び第二陰電極15と接続され、第二陽電極14及び第二陰電極15に電流及び電圧を印加することができる直流電源である。電気透析電源27は、一定の電流となるように定電流制御の電源として使用してもよいし、一定の電圧となるように定電圧制御の電源として使用してもよい。なお、電気透析電源27は、スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水処理ユニット3への次亜塩素酸水の通水ごとに、第二陽電極14と第二陰電極15の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させるように制御してもよい。
【0070】
陽電極側接続チューブ28は、
図1に示すように、次亜塩素酸水生成ユニット2の第一陽電極溶液抽出口10と、陽電極側供給ポンプ29を介して次亜塩素酸水処理ユニット3の第二陽電極溶液供給口21とを接続するチューブである。陽電極側接続チューブ28は、陽電極側供給ポンプ29が動作することによって次亜塩素酸水生成ユニット2で生成された次亜塩素酸水(第一陽電極抽出溶液10a)を、次亜塩素酸水処理ユニット3の第二陽電極溶液供給口21に送液する。陽電極側接続チューブ28は、例えばシリコンチューブなどを使用することができる。
【0071】
陰電極側接続チューブ30は、次亜塩素酸水生成ユニット2の第一陰電極溶液抽出口11と、陰電極側供給ポンプ31を介して次亜塩素酸水処理ユニット3の第二陰電極溶液供給口23とを接続するチューブである。陰電極側接続チューブ30は、次亜塩素酸水生成ユニット2で生成された次亜塩素酸水((第一陰電極抽出溶液11a)を、次亜塩素酸水処理ユニット3の第二陰電極溶液供給口23に送液する。陰電極側接続チューブ30は、例えばシリコンチューブなどを使用することができる。
【0072】
陽電極側接続チューブ28及び陰電極側接続チューブ30には、例えば、同一内径及び同一長さのものが用いられ、内部を流通する溶液の流量及び流速に差異が生じないようにしている。
【0073】
陽電極側供給ポンプ29は、次亜塩素酸水生成ユニット2において生成した第一陽電極抽出溶液10aを第二陽電極供給溶液21aとして供給する流れを生じさせるポンプである。より詳細には、陽電極側供給ポンプ29は、第一陰陽電極溶液供給口9、第一陰陽電極間流路12、第一陽電極溶液抽出口10、第二陽電極溶液供給口21、第二陽電極側流路25、及び第二陽電極溶液抽出口22の順に流通する各溶液(塩水、第一陰陽電極供給溶液9a、第一陽電極抽出溶液10a、第二陽電極供給溶液21a、第二陽電極抽出溶液22a)の流れを生じさせる。この際、陽電極側供給ポンプ29は、次亜塩素酸水生成ユニット2を流れる溶液の流速を一体に制御すると同時に、次亜塩素酸水処理ユニット3を流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0074】
陰電極側供給ポンプ31は、次亜塩素酸水生成ユニット2において生成した第一陰電極抽出溶液11aを第二陰電極供給溶液23aとして供給する流れを生じさせるポンプである。より詳細には、陰電極側供給ポンプ31は、第一陰陽電極溶液供給口9、第一陰陽電極間流路12、第一陰電極溶液抽出口11、第二陰電極溶液供給口23、第二陰電極側流路26、及び第二陰電極溶液抽出口23の順に流通する各溶液(塩水、第一陰陽電極供給溶液9a、第一陰電極抽出溶液11a、第二陰電極供給溶液22a、第二陰電極抽出溶液24a)の流れを生じさせる。この際、陰電極側供給ポンプ31は、次亜塩素酸水生成ユニット2を流れる溶液の流速を一体に制御すると同時に、次亜塩素酸水処理ユニット3を流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0075】
第一陰陽電極間流路12の流速は、陽電極側供給ポンプ29と陰電極側供給ポンプ31との合計量として制御される。また、陽電極側供給ポンプ29及び陰電極側供給ポンプ31は、請求項の「供給ポンプ」に相当する。
【0076】
以上のように、次亜塩素酸水処理ユニット3は、各部材によって構成される。
【0077】
次亜塩素酸水供給装置1は、
図1に示すように、上述した次亜塩素酸水生成ユニット2と次亜塩素酸水処理ユニット3との間を、各ユニットの陽電極側の流路に設けた陽電極側接続チューブ28を介して連結し、各ユニットの陰電極側の流路に設けた陰電極側接続チューブ30を介して連結して構成される。そして、次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水生成ユニット2に塩水を連続的に導入し、次亜塩素酸水処理ユニット3から次亜塩素酸水を外部に連続的に供給する。より詳細には、次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水生成ユニット2に連続的に導入される塩水を電気分解し、次亜塩素酸水処理ユニット3の陽電極側における第二陽電極側流路25から送出される第二陽電極抽出溶液22aを酸性の次亜塩素酸水として外部に供給する。また、次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水処理ユニット3の陰電極側における第二陰電極側流路26から送出される第二陰電極抽出溶液24aをアルカリ性の次亜塩素酸水として外部に供給する。
【0078】
次に、
図4及び
図5を参照して、次亜塩素酸水生成ユニット2での処理動作について説明する。
【0079】
図4及び
図5に示すように、次亜塩素酸水生成ユニット2では、第一陰陽電極溶液供給口9を通って塩水である第一陰陽電極供給溶液9aが第一陰陽電極間流路12に連続的に供給される。そして、第一陰陽電極溶液供給口9から供給された第一陰陽電極供給溶液9aは、蛇行して形成された第一陰陽電極間流路12を流通していく。この際、第一陰陽電極供給溶液9aは、第一陰陽電極間流路12を流通していくと同時に、両端の第一陽電極4及び第一陰電極5に電圧が印加される。電圧が印加されると、第一陽電極4側には陰イオン(Cl
-イオン)、第一陰電極5側には陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられ、電気分解により第一陽電極4側にはHCl及びHClO、第一陰電極5側にはNaOHが生成される。さらにHClOとNaOHが反応することで、NaClOが生成される。これを繰り返すことにより、NaClOが主成分となり、HClO及びNaOH及び残留したNaClが含まれる次亜塩素酸水が生成される。
【0080】
次亜塩素酸水生成ユニット2での処理動作では、第一陰陽電極間流路12にて電気分解を行う時間を長くすることで、NaClの電気分解量を多くして、第一陽電極抽出溶液10a及び第一陰電極抽出溶液11aの中に残留するNaCl(塩水)を低減することができる。電気分解を行う時間を長くするためには、第一陰陽電極間流路12の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気分解を行う距離を稼いでいる。さらに第一陰陽電極間流路12の断面積を小さくすることでも距離が長くなり、電気分解時間を長くすることができる。
【0081】
次に、
図8及び
図9を参照して、次亜塩素酸水処理ユニット3での処理動作について説明する。
【0082】
図8及び
図9に示すように、次亜塩素酸水処理ユニット3では、第二陽電極溶液供給口21を通って次亜塩素酸水である第二陽電極供給溶液21aが第二陽電極側流路25に連続的に供給され、第二陰電極溶液供給口23を通って次亜塩素酸水である第二陰電極供給溶液23aが第二陰電極側流路26に連続的に供給される。そして、第二陽電極溶液供給口21から供給された第二陽電極供給溶液21aは、蛇行して形成された第二陽電極側流路25を流通していき、第二陰電極溶液供給口23から供給された第二陰電極供給溶液23aは、同じく蛇行して形成された第二陰電極側流路26を流通していく。この際、第二陽電極供給溶液21a及び第二陰電極供給溶液23aは、隔膜16を挟んで対向し、同じ方向に流通されて第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26をそれぞれ流通していくと同時に、両端の第二陽電極14及び第二陰電極15に電圧が印加される。電圧が印加されると、第二陽電極14側には陰イオン、第二陰電極15側には陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられる。隔膜16は、陽イオンのみを透過可能な膜で構成されているため、第二陽電極側流路25を流通する第二陽電極供給溶液21aに含まれる陽イオン(Na
+イオン)は、隔膜16を透過して、第二陰電極側流路26の第二陰電極供給溶液23aを通って第二陰電極15側に陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられる。反対に、第二陰電極側流路26を流通する陰イオンは、隔膜16を透過できないため、第二陽電極側流路25に含まれる陰イオンのみが第二陽電極14に引き付けられる。これを繰り返すことにより、第二陽電極側流路25を流通する第二陽電極供給溶液21aに含まれる陽イオン(Na
+イオン)が、第二陰電極側流路26を流通する第二陰電極供給溶液23aに移動して電気透析が進行し、第二陽電極側流路25を流通する第二陽電極供給溶液21aは、陽イオン(Na
+イオン)が分離希薄化され、第二陰電極側流路26を流通する第二陰極供給溶液23aは、陽イオン(Na
+イオン)が濃縮化されて抽出される。その結果、第二陽電極溶液抽出口22から、第二陽電極抽出溶液22aとして、残留成分となるNaClO及びNaOHが分離希薄化してHClO成分が主成分となった次亜塩素酸水が抽出される。反対に、第二陰電極溶液抽出口24から、第二陰電極抽出溶液24aとして、残留成分を構成するNa
+イオンが濃縮化され、NaOHとして生成された成分を含む溶液(次亜塩素酸水)が抽出される。
【0083】
次亜塩素酸水処理ユニット3での処理動作では、第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26にて電気透析を行う時間を長くすることで、陽イオン(Na+イオン)の移動量をより多くして、第二陽電極抽出溶液22aのNaClO及びNaOHからなる残留成分をより低減することができる。電気透析を行う時間を長くするためには、第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26の断面積を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。
【0084】
第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26を通る各溶液の流速は、同じとなるように各ポンプを制御しているが、互いに異なるようにしてもよい。流速が異なる場合には、抽出される各溶液の濃度に影響する。例えば、第二陽電極側流路25の流速を相対的に速くして、第二陰電極側流路26の流速を相対的に遅くした場合には、第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26の流速を同じにした場合に比べて、第二陰電極側流路26から抽出した第二陰電極抽出溶液24aは少量かつ濃度が濃い溶液となる。これにより、第二陰電極抽出溶液24aを排液する場合には、第二陰電極側流路26の流速を遅くすることが望ましい。
【0085】
次に、
図10を参照して、実際に次亜塩素酸水供給装置1(次亜塩素酸水生成ユニット2及び次亜塩素酸水処理ユニット3)を流通して第二陽電極溶液抽出口22及び第二陰電極溶液抽出口24からそれぞれ抽出した第二陽電極抽出溶液22a及び第二陰電極抽出溶液24aの次亜塩素酸水の特性(導電率、pH、及び有効塩素濃度)について説明する。
図10は、次亜塩素酸水供給装置1を流通した次亜塩素酸水の特性と電気透析時間との関係を示す図である。より詳細には、
図10の(a)は、次亜塩素酸水供給装置1による電気透析時間と導電率の関係を示す図である。
図10の(b)は、次亜塩素酸水供給装置1による電気透析時間とpHの関係を示す図である。
図10の(c)は、次亜塩素酸水供給装置1による電気透析時間と有効塩素濃度の関係を示す図である。
【0086】
なお、
図10での実験評価では、次亜塩素酸水生成ユニット2に、流路断面積26mm
2、流路長675mmの第一陰陽電極間流路12を形成したものを用い、次亜塩素酸水処理ユニット3に、流路断面積8mm
2、流路長675mmの第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26を形成したものを用いた。また、陽電極側供給ポンプ29及び陰電極側要求ポンプ31の流量条件としては、ともに153mL/h及び250mL/hの条件の流速で流通させて次亜塩素酸水生成ユニット2の電気分解時間、及び次亜塩素酸水処理ユニット3の電気透析時間を調整し、第二陽電極抽出溶液22a及び第二陰電極抽出溶液24aの導電率、pH、及び有効塩素濃度の測定を行った。
【0087】
また、第一陰陽電極溶液供給口9に供給した9aの塩水は、導電率:405μS/cm、pH:6.7、有効塩素濃度:0ppm、及び塩化物イオン濃度:138ppmとなるものを使用した。また電気分解電源13及び電気透析電源27には、0.2Aの定電流を印加可能な電源を使用して電気分解及び電気透析を行った。ここで、電気分解時間とは、溶液が第一陽電極4及び第一陰電極5に流路内で直接触れている時間を指しており、電気分解時間が長いほど、流速は遅いことになる。また、電気透析時間とは、溶液が第二陽電極14および第二陰電極15に流路内で直接触れている時間を指しており、電気透析時間が長いほど、流速は遅いことになる。今回、陽極側および陰極側の流速は同一に設定して電気透析を行っている。
【0088】
図10の(a)に示す導電率の推移を見ると、電気透析時間が長いほど、言い換えると流速が遅くなるほど、第二陽電極溶液抽出口22から抽出した第二陽電極抽出溶液22aの導電率(陽極側の導電率)が低下し、陰極側溶液抽出口12から抽出した陰極側抽出溶液12aの導電率(陰極側の導電率)は増加している。これは、次亜塩素酸水生成ユニット2で生成された次亜塩素酸水を、次亜塩素酸水処理ユニット3の第二陽電極側流路25に流通させると、陽極側溶液に含まれる陽イオンであるNa
+イオンが隔膜16を通って陰極側に移動し、陽極側はNaClOからHClOに変化して導電率が低下したと考えられる。NaClOは、Na
+イオンとClO
-イオンに電離するが、HClOは分子として存在することが主であるため、NaClOからHClOに変化することで導電率は低下する。
【0089】
図10の(b)に示すpHの推移を見ると、第二陽電極抽出溶液22aのpH(陽極側のpH)は弱酸性側に変化し、第二陰電極抽出溶液24aのpH(陰極側のpH)はアルカリ性側に変化している。このことから、陽極側でのHClOへの変化の影響がうかがえる。陽極側において電気透析時間を長くするほどpHが中性に近づいているのは、溶液中にわずかに残っている塩化物イオンが電気分解によって次亜塩素酸に変化しているためと考えられる。一方、陰極側は、Na
+イオンが移動することでNaOHが形成されて、アルカリ性へと変化するためである。
【0090】
図10の(c)に示す有効塩素濃度の推移を見ると、第二陽電極抽出溶液22aの有効塩素濃度(陽極側の有効塩素濃度)は、電気透析時間とともに増加する。
図10(a)に示す導電率が405μS/cm以下に低下している流速条件では、有効塩素濃度の上昇率は低下しており、HClOへの変化が完了してきていると考えられる。また、第二陰電極抽出溶液24aについても同様に、有効塩素濃度(陰極側の有効塩素濃度)は、電気透析時間とともに増加する。これは、陽電極側供給ポンプ29及び陰電極側供給ポンプ31の流速が遅くなると、次亜塩素酸水生成ユニット2での電気分解時間が増加して次亜塩素酸水生成量が増えるため、次亜塩素酸水処理ユニット3の第二陰電極抽出口24で抽出される次亜塩素酸水量も増えることが要因と考えられる。
【0091】
次亜塩素酸水供給装置1は、陽極側からは除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水を、陰極側からは洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水を同時に抽出することができる。HClO主体の次亜塩素酸水は、残留成分の抑制された溶液で、除菌力を維持しながら、空間噴霧時でも残留成分起因による金属腐食を抑制することが可能になる。一方、NaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水は、残留成分が残る溶液のため空間噴霧はできないが、洗浄力の高い溶液であり排水口等の酸性の汚れがある部位に流すことで洗浄効果をもたらすことができる。次亜塩素酸水処理装置1では、陽極側で生成するHClO主体の次亜塩素酸水を空間除菌に使用しつつ、反対側の陰極側で生成されるNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水も洗浄として活用が可能となる。
【0092】
以上、本実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0093】
(1)次亜塩素酸水供給装置1は、蛇行状の無隔膜電解流路(第一陰陽電極間流路12)内に供給される塩水から一対の第一陰陽電極間(第一陽電極4と第一陰電極5との間)への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成ユニット2と、蛇行状の有隔膜電解流路(第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26)内のそれぞれに次亜塩素酸水生成ユニット2から供給される次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間(第二陽電極14と第二陰電極15との間)への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理ユニット3と、を備え、次亜塩素酸水処理ユニット3の陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路25)から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とした。
【0094】
こうした構成によれば、次亜塩素酸水生成ユニット2において無隔膜電解流路(第一陰陽電極間流路12)内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに有隔膜電解流路(第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26)内に無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減した次亜塩素酸水として抽出することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を分離した次亜塩素酸水を外部に供給することが可能な、ワンパス式の次亜塩素酸水供給装置1とすることができる。
【0095】
また、次亜塩素酸水供給装置1では、各流路(無隔膜電解流路及び有隔膜電解流路)を蛇行形状にすることで、塩水及び次亜塩素酸水がそれぞれ電極及び隔膜に接触する経路が長くなり、塩水の電気分解、及び次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンの分離を行う処理の距離及び時間を長くすることができる。つまり、電極のサイズに対して、塩水の電気分解、及び次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンの分離を効率的に行うことができる。
【0096】
(2)次亜塩素酸水供給装置1では、次亜塩素酸水生成ユニット2の無隔膜電解流路(第一陰陽電極間流路12)は、平面状の第一陽電極4と、第一陽電極4と対向する平面状の第一陰電極5と、第一陽電極5と第一陰電極5との間に設けられた第一陰陽電極間スペーサ6とを有して構成され、一対の第一陰陽電極(第一陽電極4及び第一陰電極5)は、第一陰陽電極間スペーサ6によって無隔膜電解流路に第一陽電極4及び第一陰電極5を露出させることで蛇行状に構成した。このようにすることで、第一陰陽電極間スペーサ6に形成される流路形状により、塩水を電気分解する能力を変化させることができるので、塩水を電気分解する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0097】
(3)次亜塩素酸水供給装置1では、次亜塩素酸水処理ユニット3の有隔膜電解流路(第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26)は、第二陽電極14が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陽電極側流路25と、第二陽電極側流路25と対向して並設され、第二陰電極15が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陰電極側流路26と、第二陽電極側流路25と第二陰電極側流路26とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜16とを有して構成され、一対の第二陰陽電極(第二陽電極14及び第二陰電極15)は、第二陽電極側スペーサ17によって第二陽電極側流路25に第二陽電極14を露出させるとともに、第二陰電極側スペーサ18によって第二陰電極側流路26に第二陰電極15を露出させることで蛇行状に構成され、第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26には、次亜塩素酸水生成ユニット2から供給される次亜塩素酸水がいずれも同じ方向に流通するように構成した。
【0098】
こうした構成によれば、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を、隔膜16を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理ユニット3とすることができる。より詳細には、陽極側から抽出される次亜塩素酸水は、残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化した次亜塩素酸水となり、陰極側から抽出される次亜塩素酸水は、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化した次亜塩素酸水となる。つまり、次亜塩素酸水供給装置1の陽極側から、残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化した次亜塩素酸水を得るとともに、次亜塩素酸水供給装置1の陰極側から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄力の高い次亜塩素酸水を同時に得ることができる。
【0099】
(4)次亜塩素酸水供給装置1は、平面状の第二陽電極14と、第二陽電極14と対向する平面状の隔膜16と、第二陽電極14と隔膜16との間に設けられ、流路に沿って第二陽電極側流路25内に第二陽電極14及び隔膜16を露出させる第二陽電極側スペーサ17とを有し、第二陽電極側流路は、流路に沿って露出する第二陽電極14及び隔膜16と第二陽電極側スペーサ17とにより構成した。また、平面状の第二陰電極14と、第二陰電極15と対向する平面状の隔膜16と、第二陰電極15と隔膜16との間に設けられ、流路に沿って第二陰電極側流路26内に第二陰電極15及び隔膜16を露出させる第二陰電極側スペーサ18とを有し、第二陰電極側流路26は、流路に沿って露出する第二陰電極15及び隔膜16と、第二陰電極側スペーサ18とにより構成した。このようにすることで、第二陽電極側スペーサ17に形成される流路形状、及び第二陰極側スペーサ18に形成される流路形状により、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する能力を変化させることができるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0100】
(5)次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水生成ユニット2と次亜塩素酸水処理ユニット3とを連通接続する流路に設けられ、有隔膜電解流路(第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26)に次亜塩素酸水生成ユニット2からの次亜塩素酸水を供給する供給ポンプ(陽電極側供給ポンプ29及び陰電極側供給ポンプ31)を備える。供給ポンプは、次亜塩素酸水生成ユニット2からの次亜塩素酸水を第二陽電極側流路25及び第二陰電極側流路26に一定流速で供給するようにした。これにより、第二陽電極側流路25内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第二陰電極側流路26内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第二陽電極側流路25における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化する濃度、及び第二陰電極側流路26における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0101】
(実施の形態2)
図1及び
図11を参照して、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム40について説明する。
図11は、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム40の概略図である。なお、以下で説明する実施の形態2に係る空間除菌システム40は、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1を組み込んだシステムである。実施の形態2の説明においては、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1と実質的に同様の構成については、同様の符号を付し、説明を一部簡略化または省略する場合がある。
【0102】
本実施の形態2に係る空間除菌システム40は、浴室空間において、次亜塩素酸水供給装置1から生成された次亜塩素酸水をミスト噴霧装置44から噴霧するとともに排水口46に流すことで、浴室空間に対する除菌と洗浄とを行うシステムである。なお、浴室空間は、請求項の「所定の空間」に相当する。
【0103】
具体的には、
図11に示すように、空間除菌システム40は、次亜塩素酸水供給装置1(次亜塩素酸水生成ユニット2、次亜塩素酸水処理ユニット3、陽電極側供給ポンプ29、及び陰電極側供給ポンプ31)と、陽電極側抽出溶液タンク41と、陰電極側抽出溶液タンク42と、陽電極側抽出溶液浴室配管43と、ミスト噴霧装置44と、陰電極側抽出溶液浴室配管45と、排水口46と、を備える。
【0104】
次亜塩素酸水供給装置1を構成する次亜塩素酸水生成ユニット2は、塩水(塩化ナトリウム水溶液)を供給して、電気分解により次亜塩素酸水を生成するユニットである。上述した通り、次亜塩素酸水生成ユニット2によって生成される次亜塩素酸水には、次亜塩素酸水の成分であるNaClO及びHClOが生成されて含まれる。また、他の成分として、電気分解で生成されるNaOH、NaClOから分解してできたNaCl、及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClなどが含まれる。より詳細には、次亜塩素酸水生成ユニット2では、陽電極側供給ポンプ29及び陰電極側供給ポンプ31が動作することによって、第一陽電極4側に設けた第一陽電極溶液抽出口10から第一陽電極抽出溶液10aとしてHCl及びHClOを多く含む酸性の次亜塩素酸水が抽出され、第一陰電極5側に設けた第一陰電極溶液抽出口11から第一陰電極抽出溶液11aとしてNaOHを多く含むアルカリ性の次亜塩素酸水が抽出される。
【0105】
次亜塩素酸水処理ユニット3は、次亜塩素酸水生成ユニット2から供給される次亜塩素酸水を流通させて、第二陽電極側流路25から除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である第二陽電極抽出溶液22aを抽出し、第二陰電極側流路26から洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である第二陰電極抽出溶液24aを抽出するユニットである。第二陽電極抽出溶液22aは、陽電極側抽出溶液タンク41で貯められた後、陽電極側抽出溶液浴室配管43にてミスト噴霧装置44に送液される。そして、ミスト噴霧装置44から第二陽電極抽出溶液22aが浴室空間に噴霧される。また、第二陰電極抽出溶液24aは、陰電極側抽出溶液タンク42で貯められた後、陰電極側抽出溶液浴室配管45にて排水口46に送液される。排水口46に第二陰電極抽出溶液24aが流通され、排水口46を経由して排水管に流れる。
【0106】
陽電極側抽出溶液タンク41は、第二陽電極側流路25から抽出した除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である第二陽電極抽出溶液22aを、ミスト噴霧装置44に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陽電極側抽出溶液タンク41は、陽電極側抽出溶液浴室配管43を介してミスト噴霧装置44と接続される。
【0107】
陰電極側抽出溶液タンク42は、第二陰電極側流路26から抽出した洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である第二陰電極抽出溶液24aを、排水口46に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陰電極側抽出溶液タンク42は、陰電極側抽出溶液浴室配管45を介して排水口46と接続される。
【0108】
陽電極側抽出溶液浴室配管43は、陽電極側抽出溶液タンク41から、ミスト噴霧装置44まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び天井に施工されてあり、天井に設置されたミスト噴霧装置44と接続されている。
【0109】
陰電極側抽出溶液浴室配管45は、陰電極側抽出溶液タンク42から、排水口46まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び床面に施工されてあり、排水口46に接続されている。
【0110】
ミスト噴霧装置44は、次亜塩素酸水を浴室空間にミスト状にして噴霧する装置である。より詳細には、ミスト噴霧装置44は、陽電極側抽出溶液タンク41から陽電極側抽出溶液浴室配管43を通って搬送されてくる次亜塩素酸水である第二陽電極抽出溶液22aを微細なミストにして放出する装置である。ミスト噴霧装置44は、浴室空間の天井から浴室空間全体にミストが噴霧できるように噴霧部が天井から浴室側に突出して設置されている。ミストの噴霧方式としては、圧縮空気を使用して微細化する二流体噴霧方式、超音波素子を使用して10μm以下の微細ミストを噴霧する超音波方式、又は回転体から溶液を放出して破砕し1μm以下の微細ミストを噴霧する破砕噴霧方式などが挙げられる。
【0111】
排水口46は、浴室空間内で発生した水あるいは汚れを浴室空間外に排出するための排水管と接続するための接続口である。排水口46には、陰電極側抽出溶液タンク42から陰電極側抽出溶液浴室配管45を通って第二陰電極抽出溶液24aを搬送し、洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である第二陰電極抽出溶液24aにより、排水口46及び排水口46に接続される排水管の汚れを洗浄することができる。
【0112】
以上、本実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム40によれば、以下の効果を享受することができる。
【0113】
(6)空間除菌システム40は、次亜塩素酸水供給装置1と、第二陽電極側流路25と連通接続され、第二陽電極側流路25から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出するミスト噴霧装置44とを備える構造とした。こうした構成によれば、第二陽電極側流路25から送出される次亜塩素酸水のミストを所定の空間に放出しても、所定の空間に残る残留成分が抑制される。つまり、第二陽電極側流路25から送出される次亜塩素酸水が塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水であるため、所定の空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0114】
(7)空間除菌システム40では、浴室空間には、浴室空間内で発生する水を排出する排水口46が設けられており、第二陰電極側流路26は排水口46と連通接続され、第二陰電極側流路26から送出される次亜塩素酸水を排水口46に導入可能に構成されている構造とした。このようにすることで、第二陰電極側流路26から送出される次亜塩素酸水から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水を排水口46(及び排水口46に接続された排水管)に流通させるので、アルカリ性溶液によって排水管の洗浄を行うことができる。
【0115】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、塩水の電気分解によって生成したHClO主体の次亜塩素酸水に含まれる残留成分を低減した次亜塩素酸水を連続的に供給することが可能な装置であり、こうした次亜塩素酸水を用いてミスト噴霧することで浴室空間のカビ及び菌に対して除菌を行いながら、浴室内で使用される金属等への腐食を抑制することを可能とする有用な手段である。
【符号の説明】
【0117】
1 次亜塩素酸水供給装置
2 次亜塩素酸水生成ユニット
3 次亜塩素酸水処理ユニット
4 第一陽電極
5 第一陰電極
6 第一陰陽電極間スペーサ
7a 第一陽電極用パッキン
7b 第一陰電極用パッキン
8a 第一陽電極側槽筐体側面
8b 第一陰電極側槽筐体側面
9 第一陰陽電極溶液供給口
9a 第一陰陽電極供給溶液
10 第一陽電極溶液抽出口
10a 第一陽電極抽出溶液
11 第一陰電極溶液抽出口
11a 第一陰電極抽出溶液
12 第一陰陽電極間流路
12a 第一陰陽電極間流路孔
13 電気分解電源
14 第二陽電極
15 第二陰電極
16 隔膜
17 第二陽電極側スペーサ
18 第二陰電極側スペーサ
19a 第二陽電極用パッキン
19b 第二陰電極用パッキン
20a 第二陽電極側槽筐体側面
20b 第二陰電極側槽筐体側面
21 第二陽電極溶液供給口
21a 第二陽電極供給溶液
22 第二陽電極溶液抽出口
22a 第二陽電極抽出溶液
23 第二陰電極溶液供給口
23a 第二陰電極供給溶液
24 第二陰電極溶液抽出口
24a 第二陰電極抽出溶液
25 第二陽電極側流路
25a 第二陽電極側流路孔
26 第二陰電極側流路
26a 第二陰電極側流路孔
27 電気透析電源
28 陽電極側接続チューブ
29 陽電極側供給ポンプ
30 陰電極側接続チューブ
31 陰電極側供給ポンプ
40 空間除菌システム
41 陽電極側抽出溶液タンク
42 陽電極側抽出溶液タンク
43 陽電極側抽出溶液浴室配管
44 ミスト噴霧装置
45 陰電極側抽出溶液浴室配管
46 排水口