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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089992
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】輻射空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20230622BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230622BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20230622BHJP
   F24D 3/12 20060101ALN20230622BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20230622BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F5/00 101B
F24F11/64
F24D3/12 A
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204700
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小林 純哉
(72)【発明者】
【氏名】重森 正宏
【テーマコード(参考)】
3L070
3L260
【Fターム(参考)】
3L070AA04
3L070AA07
3L070AA09
3L070BD11
3L070BD16
3L070DD04
3L070DE09
3L070DF06
3L070DF10
3L070DF15
3L260AB06
3L260AB07
3L260AB11
3L260BA20
3L260BA24
3L260CA13
3L260FB32
3L260FB48
3L260FB62
(57)【要約】
【課題】輻射パネル表面の結露の発生を抑制しつつ、空間の温熱快適性を向上させることが可能な輻射空調システムを提供する。
【解決手段】輻射空調システム100は、吹出スリット22を有する複数の吹出ノズル13を備える送風装置11と、被空調空間1に熱輻射を発生させる複数の冷温水輻射パイプ32を有する輻射熱発生装置31と、運転動作を制御する制御装置51とを備える。複数の吹出ノズル13は、それぞれ吹出スリット22が同一面上に位置するように間隙を有して並設され、複数の冷温水輻射パイプ32のそれぞれは、隣接する吹出ノズル13の間隙に配置され、かつ、送風装置11から送風される吹出空気により誘引される誘引空気が通過する風路上に配置される。制御装置51は、被空調空間1の湿度が第一基準湿度未満の場合に輻射熱発生装置31の運転動作を実行させ、第一基準湿度以上の場合に輻射熱発生装置31の運転動作を停止させる制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状の吹出口を有する複数の吹出ノズルと、前記吹出ノズルに空気を送風する送風機と、を有して構成される送風装置と、
被空調空間に熱輻射を発生させる複数のパイプを有する輻射熱発生装置と、
前記輻射熱発生装置の運転動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の吹出ノズルは、それぞれ前記吹出口が同一面上に位置するように間隙を有して並設され、
前記複数のパイプのそれぞれは、隣接する前記吹出ノズルの前記間隙に配置され、かつ、前記送風装置から送風される吹出空気により誘引される誘引空気が通過する風路上に配置され、
前記制御装置は、前記被空調空間の湿度が前記第一基準湿度未満の場合に前記輻射熱発生装置の運転動作を実行させ、前記被空調空間の湿度が第一基準湿度以上の場合に前記輻射熱発生装置の運転動作を停止させる制御を行うことを特徴とする輻射空調システム。
【請求項2】
前記被空調空間の前記湿度は、前記複数のパイプよりも上流側における前記誘引空気が通過する風路上に設置された湿度センサが検知する検知湿度であり、
前記制御装置は、前記検知温度に基づいて、前記輻射熱発生装置の運転動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の輻射空調システム。
【請求項3】
前記被空調空間の空気を除湿する除湿装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記被空調空間の絶対湿度が前記被空調空間の目標温度及び目標湿度から算出される目標絶対湿度以上の場合に前記除湿装置の運転動作を実行させ、前記目標絶対湿度未満の場合に前記除湿装置の運転動作を停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の輻射空調システム。
【請求項4】
前記複数のパイプは、前記被空調空間への輻射熱を、前記パイプの内部に冷温水チラーで生成した冷温水を供給することで発生させることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の輻射空調システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記冷温水の温度を前記被空調空間の露点温度よりも高くなるように前記冷温水チラーを制御することを特徴とする請求項4に記載の輻射空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の輻射熱を活用して室内を空調する輻射空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、冷温水などの熱媒が流れる多数のパイプをパネルに埋め込み、熱放射により室内などを空調する輻射パネルを利用した輻射空調システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-19533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の輻射空調システムでは、空間内を循環する空気による対流熱伝達がほとんど発生しないため、冷却熱を生じる物体を活用して空間を冷却することができず、快適性を向上させることができなかった。一方で、従来の輻射空調システムでは、空間内の湿度が高い状態で輻射パネルによる冷却を行うと、輻射パネルの表面に結露が発生してしまうという課題があった。そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、輻射パネル表面での結露の発生を抑制しつつ、空間の温熱快適性を向上させることが可能な輻射空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る輻射空調システムは、スリット状の吹出口を有する複数の吹出ノズルと、吹出ノズルに空気を送風する送風機と、を有して構成される送風装置と、被空調空間に熱輻射を発生させる複数のパイプを有する輻射熱発生装置と、輻射熱発生装置の運転動作を制御する制御装置と、を備える。複数の吹出ノズルは、それぞれ吹出口が同一面上に位置するように間隙を有して並設され、複数のパイプのそれぞれは、隣接する吹出ノズルの間隙に配置され、かつ、送風装置から送風される吹出空気により誘引される誘引空気が通過する風路上に配置されている。そして、制御装置は、被空調空間の湿度が第一基準湿度未満の場合に輻射熱発生装置の運転動作を実行させ、被空調空間の湿度が第一基準値以上の場合に輻射熱発生装置の運転動作を停止させる制御を行うことを特徴とするものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、輻射パネル表面の結露の発生を抑制しつつ、空間の温熱快適性を向上させることが可能な輻射空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る輻射空調システムの基本構成を示す斜視図である。
図2図2は、輻射空調システムの全体配置を示す側面図である。
図3図3は、輻射空調システムにおける送風装置の設置イメージを示す配置図である。
図4図4は、輻射空調システムにおける輻射熱発生装置の冷温水パイプ及び冷温水生成装置との接続関係を示す接続概略図である。
図5図5は、輻射空調システムを構成する送風装置の吹出ノズルと輻射熱発生装置の冷温水パイプの配置関係を示す構成図である。
図6図6は、送風装置内の空気の流れ方向を示す上面図である。
図7図7は、送風装置の吹出ノズルからの吹出空気及び冷温水パイプ近傍に発生する誘引空気の流れ方向を示す断面図である。
図8図8は、制御装置の概略機能ブロック図である。
図9図9は、除湿制御に関する制御装置の基本処理動作を示すフローチャート図である。
図10図10は、冷水温度制御に関する制御装置の基本処理動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る輻射空調システムは、スリット状の吹出口を有する複数の吹出ノズルと、吹出ノズルに空気を送風する送風機と、を有して構成される送風装置と、被空調空間に熱輻射を発生させる複数のパイプを有する輻射熱発生装置と、輻射熱発生装置の運転動作を制御する制御装置と、を備える。複数の吹出ノズルは、それぞれ吹出口が同一面上に位置するように間隙を有して並設され、複数のパイプのそれぞれは、隣接する吹出ノズルの間隙に配置され、かつ、送風装置から送風される吹出空気により誘引される誘引空気が通過する風路上に配置されている。そして、制御装置は、被空調空間の湿度が第一基準湿度未満の時に輻射熱発生装置の運転動作を実行させ、被空調空間の湿度が第一基準値以上の時に輻射熱発生装置の運転動作を停止させる制御を行う。
【0009】
こうした構成によれば、被空調空間の空気(吹出ノズルの間隙に誘引された誘引空気)の湿度が第一基準湿度未満であり、被空調空間の空気が十分に除湿されている場合には、被空調空間の空気がパイプ表面との間で熱交換するとともに、吹出ノズルからの吹出空気と一体となることにより、微風速な面状の均一流として被空調空間へ送風される。一方で、被空調空間の空気の湿度が第一基準湿度以上であり、被空調空間の空気が十分に除湿されておらず、湿度が高い場合には、輻射熱発生装置が停止されて、そのまま微風速な面状の均一流として被空調空間へ送風される。このため、パイプ表面での結露が生じない範囲において空調しつつ、温度の偏りあるいはドラフト感を抑制した空調を実現することができる。つまり、パイプ表面(輻射パネル表面)での結露を抑制しつつ、被空調空間の温熱快適性を向上させることが可能な輻射空調システムとすることができる。
【0010】
また、本発明に係る輻射空調システムでは、被空調空間の湿度は、複数のパイプよりも上流側における誘引空気が通過する風路上に設置された湿度センサが検知する検知湿度であり、制御装置は、検知温度に基づいて、輻射熱発生装置の運転動作を制御するようにしてもよい。このようにすることで、被空調空間内において最も結露発生の可能性が高いパイプ表面を流通する被空調空間の空気(吹出ノズルの間隙に誘引された誘引空気)の検知湿度に基づいて輻射熱発生装置の運転動作が制御される。このため、輻射熱発生装置の運転動作の制御による結露抑制の効果をより高精度で享受することができる。
【0011】
また、本発明に係る輻射空調システムは、被空調空間の空気の除湿を行う除湿装置をさらに備える。制御装置は、被空調空間の絶対湿度が被空調空間の目標温度及び目標湿度から算出される目標絶対湿度以上の場合に除湿装置の運転動作を実行させ、目標絶対湿度未満の場合に除湿装置の運転動作を停止させる制御を行うようにしてもよい。このようにすることで、被空調空間の温度状態にかかわらず、除湿装置によって除湿目標値となる絶対湿度まで継続して除湿制御が実行される。このため、被空調空間を冷却せずとも、十分に除湿することができ、結露抑制の効果をさらに高めることができる。
【0012】
また、本発明に係る輻射空調システムでは、複数のパイプは、被空調空間への輻射熱を、パイプの内部に冷温水チラーで生成した冷温水を供給することで発生させるようにしてもよい。このようにすることで、予め冷温水チラーにて温度調節をした冷温水をパイプに送ることで、継続的に熱を発生させることが可能になる。このため、空間の温熱快適性を容易に高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る輻射空調システムでは、制御装置は、冷温水の温度を被空調空間の露点温度よりも高くなるように冷温水チラーを制御するようにしてもよい。このようにすることで、被空調空間内において最も結露発生の可能性が高いパイプ表面の温度が、結露を発生させない範囲の温度に制御される。このため、輻射熱発生装置の動作制御による結露発生を確実に抑制することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0015】
(実施の形態1)
まず、図1及び図2を参照して、本実施の形態1に係る輻射空調システム100について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る輻射空調システム100の基本構成を示す斜視図である。図2は、輻射空調システム100の全体配置を示す側面図である。なお、図1及び図2では、システムを構成する主要な装置及び代表的な構成のみを示しており、各装置の詳細な構成については、図3以降を参照して後述する。
【0016】
輻射空調システム100は、気流、熱交換、除湿、及び熱輻射の組み合わせによって居住空間(被空調空間1)の温熱環境を高める役割、つまり居住空間の温熱快適性を向上させる役割を担うシステムである。
【0017】
具体的には、図1に示すように、輻射空調システム100は、送風装置11と、輻射熱発生装置31と、除湿装置41と、制御装置51(図8参照)と、を有して構成される。送風装置11は、吹出ノズル13と総称される吹出ノズル13a、13b、13c、13dと、送風機ボックス14と、送風機15(図2参照)と、吹出スリット22と総称される吹出スリット22a、22b、22c、22dと、を備えて構成される。輻射熱発生装置31は、冷温水輻射パイプ32と総称される冷温水輻射パイプ32a、32b、32cと、給水管33と、排水管34と、冷温水生成チラー35と、送水ポンプ36と、を備えて構成される。除湿装置41は、図2に示すように、除湿機42と、搬送ファン43と、を備えて構成される。また、被空調空間1の内部には、図1に示すように、温度センサ52と、湿度センサ53と、リモコン54と、表示パネル55とがそれぞれ設けられ、制御装置51とそれぞれ通信可能に構成されている。
【0018】
輻射空調システム100は、住宅の一部である被空調空間1内に設置される。ここで、被空調空間1とは、居住者がその内部で生活を営む場として利用する空間を指し、リビング、ダイニング、寝室、個室、又は子供部屋等が含まれる。なお、押入、クローゼット、又は機械室等の居住者が内部で活動しない空間は含まない。また、被空調空間1は、天井面、床面、及び側壁面を含む壁面による閉空間を構成するが、図1では、被空調空間1の内部に設置された輻射空調システム100の配置を見やすくするため、図面手前側の側壁面及び天井面を透過して表示させている。送風装置11を構成する送風機ボックス14、吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)、輻射熱発生装置31の冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)、及び除湿装置41の各構成要素は、それぞれ被空調空間1の天井面付近に配置される。
【0019】
送風機ボックス14は、被空調空間1の循環空気を給気して吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)に送風するために必要な機器類及び風路を集約して内蔵するための枠体である。詳細は後述するが、送風機ボックス14の内部には、送風機15をはじめ複数の構成部材が設置されている。送風機ボックス14は、被空調空間1内において、天井面と奥側の側壁面とに接触するように配置されている。なお、本実施の形態では、送風機ボックス14は、天井面と奥側の側壁面に接触するように配置したが、必ずしも被空調空間1の内側から接触させる必要はなく、例えば天井面に吊下げる、あるいは、室内の下がり天井部に内蔵するように配置してもよい。
【0020】
吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)は、送風機15(送風機15a、15b)から送風された空気を被空調空間1に送風する役割を担い、吹出スリット22(吹出スリット22a、22b、22c、22c)を有する略直方体型の部材である。本実施の形態では、吹出ノズル13a、13b、13c、13dは、すべて同一の形状である。吹出ノズル13a、13b、13c、13dは、それぞれ、図1に示すように、6つの面のうち最も断面積の小さい2つの面のうちの一方の面が送風機ボックス14と接触しており、吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)と送風機ボックス14とは、空気が通過するための穴を介して互いに連通している。また、6つの面のうち最も断面積の小さい2つの面のうちの他方の面は、被空調空間1の側壁面(送風機ボックス14と接触する奥側の側壁面と対向する側壁面)に接触している。また、その他の最も断面積の小さい2つの面を除く4つの面は、送風機ボックス14、被空調空間1の天井面、及び隣り合う吹出ノズル13(例えば吹出ノズル13aと吹出ノズル13b)とは互いに接触しておらず、被空調空間1を占める空気が吹出ノズル13の周囲を通過可能な状態に設置されている。本実施の形態では、被空調空間1と連通した吹出ノズル13周囲の空気が通過する空間を、誘引空間2と定めることとする。また、吹出スリット22a、22b、22c、22dは、それらの全てが天井面と略平行な同一面上に位置している。つまり、吹出ノズル13a、13b、13c、13dの吹出スリット22側は、同一面上に位置するように間隙を有して並設されていると言える。
【0021】
その他の送風装置を構成する詳細な要素配置等については、図3及び図5を参照して後述する。
【0022】
冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)は、被空調空間1の内部を占める空気の温度を変化させる、あるいは、被空調空間1を構成する壁面及び内部に存在する物体(家具または人体など)との間で熱輻射を発生させるための中空部材であり、その内部を水が通過可能に構成されている。冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)は、それぞれ同じ材質で構成されており、特にその表面は、樹脂などの輻射率が高い素材を用いるのが好ましいが、他の素材で代用することも可能である。
【0023】
冷温水生成チラー35は、被空調空間1の空調及び熱輻射を発生させるための水を生成するための装置であり、内部に水を加熱冷却させる機構と、加熱冷却用の水を貯水するためのタンクと、水の温度制御を行う機構とを備えている。なお、冷温水生成チラー35は、請求項の「冷温水チラー」に相当する。
【0024】
給水管33は、冷温水生成チラー35で温度調節を行った水を冷温水輻射パイプ32に送るための配管である。給水管33は、上流側から冷温水生成チラー35、送水ポンプ36、及び冷温水輻射パイプ32の順に接続されている。
【0025】
排水管34は、冷温水輻射パイプ32を循環して戻ってきた水を冷温水生成チラー35に返すための配管である。排水管34は、上流側から冷温水輻射パイプ32及び冷温水生成チラー35の順に接続されている。なお、本実施の形態では、給水管33、排水管34、冷温水生成チラー35、及び送水ポンプ36は、被空調空間1内に配置されているが、構成する天井面、床面、及び側壁面を超えて被空調空間1の外部に配置してもよく、居住空間の妨げにならない任意の位置に配置しても本発明の作用及び効果に影響するものではない。
【0026】
その他の冷温水輻射パイプ32、給水管33、及び排水管34との接続関係の詳細など、輻射熱発生装置31の詳細については、図5を参照して後述する。
【0027】
除湿装置41は、被空調空間1内の空気を除湿するための装置である。除湿装置41は、筐体内部に除湿機42と、搬送ファン43とを備えて構成される。そして、除湿装置41は、図2に示すように、被空調空間1の外部にあたる天井裏空間3に設置され、吹出用ダクト46を介して除湿機吹出口44と接続され、吸込用ダクト47を介して除湿機吸込口45と接続されている。そして、除湿装置41は、被空調空間1の空気を除湿機吸込口45から取り込み、除湿機42にて除湿した後、除湿機吹出口44から除湿した空気を被空調空間1へ放出する。この一連の空気の流れは、搬送ファン43を駆動することによって発生させている。なお、除湿装置41に起因する風路と、送風装置11に起因する風路とは、互いに独立したものとなっている。
【0028】
除湿機42は、内部に取り込んだ被空調空間1の空気を冷却して結露させることで除湿する部材である。除湿機42の内部には、冷却器と放熱器とを備えており、取り込んだ空気を冷却して結露させた後に処理した熱を空気に戻すことにより、乾燥した空気、すなわち相対湿度の低い除湿空気として放出する。なお、本実施の形態では、冷却除湿方式または所謂コンプレッサー方式による除湿機を用いているが、デシカント方式の除湿機を用いても本発明の作用及び効果に影響するものではない。
【0029】
搬送ファン43は、筐体内部に空気を流通させるためのファンであり、筐体内部の風路内において除湿機42の上流側に配置される。搬送ファン43が運転動作することにより、除湿機吸込口45から除湿機吹出口44に向かう空気の流れを生成する。これにより、除湿装置41は、除湿機吸込口45から被空調空間1の空気を取り込み、除湿機吹出口44から除湿された空気を吹き出すことができる。
【0030】
除湿機吹出口44は、除湿機42を通過して除湿された空気を被空調空間1に送出する開口である。除湿機吹出口44は、被空調空間1の天井面の任意の位置に設置され、除湿機吹出口44から吹き出される空気が被空調空間1の床面に向けて送風されるように配置されている。
【0031】
除湿機吸込口45には、被空調空間1の空気を吸い込んで除湿機42に送出する開口である。除湿機吸込口45は、被空調空間1の天井面の任意の位置に配置され、かつ除湿機吹出口44から吹き出される空気が直接流入しないように、除湿機吹出口44から離れた位置に配置される。
【0032】
吹出用ダクト46は、除湿装置41の流路の下流側において、除湿装置41と除湿機吹出口44とを連通接続するダクトである。
【0033】
吸込用ダクト47は、除湿装置41の流路の上流側において、除湿装置41と除湿機吸込口45とを連通接続するダクトである。
【0034】
制御装置51は、送風装置11、輻射熱発生装置31、及び除湿装置41の運転動作を制御する装置である。制御装置51の構成に関する詳細については、図8を参照して後述する。
【0035】
温度センサ52は、被空調空間1の空気の温度(現在温度)を検知して、後述する制御装置51に送信するセンサである。また、湿度センサ53は、被空調空間1の空気の相対湿度(現在湿度)を検知して、後述する制御装置51に送信するセンサである。なお、湿度センサ53が検知する現在湿度は、請求項の「検知湿度」に相当する。
【0036】
本実施の形態では、温度センサ52及び湿度センサ53は、冷温水輻射パイプ32に流通する空気(後述する誘引空気Q1)の温度及び湿度をそれぞれ検知するために、吹出ノズル13の一つである吹出ノズル13cの側面(吹出ノズル13cのノズル長の中央部分)に設置されている。つまり、温度センサ52及び湿度センサ53は、冷温水輻射パイプ32よりも上流側における誘引空気Q1が通過する風路上に設置されている。
【0037】
リモコン54は、利用者が被空調空間1に対する設定温度(目標温度)及び設定湿度(目標湿度)等を入力するためのボタンスイッチ等を有する装置である。リモコン54は、被空調空間1内の壁面における利用者が操作可能な任意の位置に設置される。リモコン54は、制御装置51と無線通信によって接続され、入力された目標温度及び目標湿度に関する情報を制御装置51に送信する。
【0038】
表示パネル55は、液晶モニタ等であり、被空調空間1内の壁面における利用者が視認可能な任意の位置に設けられる。表示パネル55は、表示画面に、送風装置11、輻射熱発生装置31、及び除湿装置41の運転動作状況、並びに、現在温度、現在湿度、目標温度、及び目標湿度等を表示する。
【0039】
次に、図3を参照して、送風装置11の詳細な構成について説明する。図3は、輻射空調システム100における送風装置11の設置イメージを示す配置図である。
【0040】
送風装置11は、微風速な面状の均一流を被空調空間1に送風する装置である。本実施の形態では、送風装置11は、図1に示すように、被空調空間1の天井面付近に配置され、微風速な面状の均一流を被空調空間1の天井面から床面に向けて送風する。
【0041】
具体的には、図3に示すように、送風装置11は、吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)と、送風機ボックス14と、送風機15と総称される送風機15a、15bと、送風用チャンバ18と総称される送風用チャンバ18a、18bと、吸込口21と、吹出スリット22(吹出スリット22a、22b、22c、22d)と、送風機吹出口23と総称される送風機吹出口23a、23bとを備えて構成される。本実施の形態では、送風装置11は、複数(ここでは2つ)の送風ユニット12(送風ユニット12a、12b)に分けて構成されている。
【0042】
ここで、送風ユニット12aは、吹出ノズル13a、13bと、送風機ボックス14の一部と、送風機15aと、送風用チャンバ18aと、吸込口21の一部と、吹出スリット22a、22bと、送風機吹出口23aとを備えている。また、送風ユニット12bは、吹出ノズル13c、13dと、送風機ボックス14の一部と、送風機15bと、送風用チャンバ18bと、吸込口21の一部と、吹出スリット22c、22dと、送風機吹出口23bとを備えている。なお、送風ユニット12を構成する構成部材は、必ずしも上述のような構成でなくてもよく、少なくとも1つの送風機と、吹出ノズルと、送風用チャンバ、吸込口、吹出スリット、送風機吹出口を備えていればよい。
【0043】
このように、送風装置11を複数の送風ユニット12に分けることにより、任意の被空調空間1における送風機構を送風ユニット12の組み合わせで表すことが可能になり、システムの汎用化を図ることができる。
【0044】
以下、本実施の形態における送風装置11を構成する構成要素の詳細を説明する。なお、送風ユニット12aと送風ユニット12bとは、同等の構成要素を有しているため、ここでは、送風装置11に含まれる送風ユニットとして、送風ユニット12aを例にして説明する。
【0045】
送風ユニット12aは、上述した通り、吹出ノズル13a、13bと、送風機ボックス14の一部と、送風機15aと、送風用チャンバ18aと、吸込口21の一部と、吹出スリット22a、22bと、送風機吹出口23aとを備えて構成される。
【0046】
送風機15aは、被空調空間1と送風機ボックス14との間に圧力差を発生させ、被空調空間1から循環空気を吸込口21から取り込み送風用チャンバ18aに送風する。送風機15aは、羽根車16aとモータ17aとを備えており、モータ17aによって羽根車16aを駆動させることで送風する。
【0047】
送風用チャンバ18aは、送風機15aから送風された循環空気を一時的に蓄積する空間であり、送風機15から供給された空気の分布を均一化して吹出ノズル13a及び吹出ノズル13bへの送風量を等しくする役割を担っている。また、送風機ボックス14内において、送風機15aと送風用チャンバ18aとは、壁(仕切板)によって隔てられており、互いに送風機吹出口23aを介して連通している。送風用チャンバ18aは、送風機15aと接続している面と反対側の面で吹出ノズル13a及び吹出ノズル13bとそれぞれ連通しており、送風機15aから吹出ノズル13a及び吹出ノズル13bまでの連続した風路をそれぞれ形成する。
【0048】
吹出ノズル13a、13bは、各々が有している6つの面のうち、床面方向に向いている面にそれぞれ吹出スリット22a、22bを有している。吹出スリット22(吹出スリット22a、22b)は、送風用チャンバ18a及び吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b)を通過して供給された空気を被空調空間1に送風するための吹出口であり、送風機ボックス14から吹出ノズルが伸びる方向に沿ってスリット状に形成されている(図3中の左右方向に相当)。この左右方向の吹出ノズル13a、13bの長さを吹出ノズル長さとすると、この長さは、送風機ボックス14との接触面の1辺の長さに対して十分に長いものとし、送風機ボックス14との接触面は、吹出スリット22a、22bの法線方向の長さを同接線方向に対して長くとるのが好ましい。このとき、吹出ノズル13a、13bは、例えば接触面の辺の長さが縦17cm、横4cmであるとき、吹出ノズル長さは2m程度に設定される。また、吹出ノズル13aと吹出ノズル13bとは、吹出スリット22a、22bが天井面と略平行な同一面上に位置するように、互いに略平行に並設され、吹出ノズル13aと吹出ノズル13bとの間には所定の間隔(例えば16cm)が設けられている。このようにすることで、吹出ノズル13aと吹出ノズル13bとの間の誘引空間2を十分に確保しつつ、広範囲にわたる吹出方向の気流を生成することを可能にする。なお、吹出ノズル13bと、送風ユニット12bの吹出ノズル13bとの間も同じ所定の間隔(例えば16cm)となるように、送風ユニット12aと送風ユニット12bとが並設される。
【0049】
送風ユニット12aは、以上のように構成される。
【0050】
そして、送風ユニット12aでは、送風機15aが作動すると、被空調空間1内の空気を吸込口21から吸い込み、吸い込んだ空気を送風機吹出口23aを介して送風用チャンバ18a内に送出する。そして、送風用チャンバ18a内に送出された空気は、吹出ノズル13aに送出される。吹出ノズル13aに送出された空気は、吹出スリット22aから被空調空間1の床面方向に吹き出される。また、送風用チャンバ18a内に送出された空気は、吹出ノズル13aと同様、吹出ノズル13bにも送出される。吹出ノズル13bに送出された空気は、吹出スリット22bから被空調空間1の床面方向に吹き出される。この際、吹出ノズル13aと吹出ノズル13bとの間には、吹出スリット22a及び吹出スリット22bから吹き出された空気(後述する吹出空気Q0)に誘引された空気(後述する誘引空気Q1)が流入し、流入した誘引空気Q1は、吹出空気Q0と合わさって被空調空間1の床面方向に吹き出される。
【0051】
次に、図4を参照して、輻射熱発生装置31の詳細構成について説明する。図4は、輻射熱発生装置31における冷温水輻射パイプ32及びその他関連構成の接続関係を示す接続概略図である。
【0052】
輻射熱発生装置31は、冷温水などの熱媒が流れる多数のパイプの輻射熱によって被空調空間1の空調を行う装置である。本実施の形態では、輻射熱発生装置31は、送風装置11から吹き出される誘引空気Q1の温調を主として行う。
【0053】
具体的には、図4に示すように、輻射熱発生装置31は、冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)と、給水管33と、排水管34と、冷温水生成チラー35と、送水ポンプ36と、を備えて構成される。本実施の形態では、冷温水輻射パイプ32aは、4本の直線形状のパイプ(パイプ32a1、32a2、32a3、32a4)を有するパイプ群を構成している。冷温水輻射パイプ32b及び冷温水輻射パイプ32cも同様に、それぞれ4本の直線形状のパイプ32b1、32b2、32b3、32b4を有するパイプ群及びパイプ32c1、32c2)、32c3、32c4を有するパイプ群をそれぞれ構成している。
【0054】
ここで、これらのパイプ群は、冷温水輻射パイプ32a、32b、32cの符号の最後が「1」及び「2」、並びに、「3」及び「4」のパイプが、それぞれ一方の端部側で直接接続しており、符号の最後が「1」及び「3」のパイプが他方の端部側で給水管33と直接接続され、「2」及び「4」のパイプが他方の端部側で排水管34と直接接続されている。このようにすることで、冷温水輻射パイプ32a、32b、32cは、それぞれ同一の給水管33及び排水管34とそれぞれ接続した、単一の閉じた系を形成することになる。これにより、熱源となる冷温水の供給経路を1つにまとめることができるため、設備の簡素化を図ることができる。なお、これらの冷温水輻射パイプ32の接続関係については、必ずしもこの順序で接続する必要はなく、(a)少なくとも1本のパイプが給水管33と接続し、また給水管33と接続しているパイプと同数のパイプが排水管34と接続していること、(b)パイプ同士が直接接続する場合、それらの一方は給水管33と、もう一方は排水管34と接続していること、のすべての条件を満足していれば問題ない。例えば、冷温水輻射パイプ32a、32b、32cの符号の最後が「1」及び「2」のパイプが給水管33と接続され、符号の最後が「3」及び「4」のパイプが排水管34と接続され、また符号の最後が「1」及び「3」、並びに、「2」及び「4」のパイプがそれぞれ直接接続されるような構成にしてもよい。
【0055】
給水管33及び排水管34は、全ての冷温水輻射パイプ32a、32b、32cと給水及び排水を確実に行うため、冷温水輻射パイプ32a、32b、32cよりも径の太いパイプを用い、大流量に対応した構成にするのが好ましい。例えば冷温水輻射パイプ32に含まれる全てのパイプの径が5mmの場合、給水管33及び排水管34は、それぞれ20mm程度の径のものを用いる。なお、給水管33及び排水管34の太さを「径」と表記したが、必ずしも断面は円形である必要はなく、例えば直方体形状の断面形状を有した配管を用いてもよい。
【0056】
次に、図1及び図4を参照して、輻射熱発生装置31の内部を周回する水の流れについて説明する。
【0057】
まず、図1及び図4に示すように、冷温水生成チラー35に導入された水は、冷温水生成チラー35内にて加熱あるいは冷却される。ここで加熱あるいは冷却には、例えば冷媒を使用したヒートポンプ方式などが用いられる。そして、加熱あるいは冷却された冷温水は、冷温水生成チラー35に内蔵されるタンクなどに一時的に貯水され、送水ポンプ36が駆動されることで、任意の流量で給水管33へと送水される。その後、給水管33に供給された冷温水は、冷温水輻射パイプ32a、32b、32cに、それぞれ分配されて送水され、送風装置11の吹出ノズル13付近を周回して排水管34へと回収される。排水管34へ回収された水は、冷温水生成チラー35に順次送られ、再度熱源として利用される。このように、輻射熱発生装置31内の水は、熱源として繰り返し利用され、少量の水利用でシステムを完結させることが可能である。ただし、配管部へのスケール付着などにより、内部を流れる水の水質悪化などが懸念される場合には、浄化用フィルタまたは水道などと接続した別経路を設定して冗長性を確保し、水の浄化または交換を行うようにすることが好ましい。
【0058】
ここで、本実施の形態における輻射熱発生装置31を使用する場合の水の温度推移イメージとして、冷房期の使用を例にして説明する。
【0059】
輻射熱発生装置31では、冷温水生成チラー35に25℃で流入した水は、18℃に冷却されて給水管33に送られる。その後、冷温水輻射パイプ32に分配された冷水は、被空調空間1内を通過中に空間内の空気(送風装置11から吹き出される誘引空気Q1)との熱交換、並びに、被空調空間1を構成する壁面、内部に配置された家具、又は人体などの輻射体との間で熱輻射が発生し、次第に温められる。冷温水輻射パイプ32から排水管34に回収される時点で25℃になった水は、冷温水生成チラー35に再度送られて18℃に冷却される、というサイクルを繰り返す。なお、ここで示した温度推移は、あくまでも一例であり、例えば暖房期の利用時においてはこの限りではない。また、給水管33を通過中の冷温水が外部環境によって容易に変化しうる場合、熱源としての能力不足または冷温水輻射パイプ32a、32b、32cの間での冷温水温度の不均一化が懸念されるが、このような場合には、給水管33に断熱性の高い材質を利用するなどの対策を施すのが好ましい。
【0060】
次に、図5を参照して、送風装置11における吹出ノズル13及び輻射熱発生装置31における冷温水輻射パイプ32との配置関係について説明する。図5は、輻射空調システム100を構成する送風装置11の吹出ノズル13と輻射熱発生装置31の冷温水輻射パイプ32との配置関係を示す構成図である。
【0061】
吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)は、図5に示すように、被空調空間1内の天井面からオフセットして、天井面と吹出スリットとの間に誘引空間2を形成するように配置される。吹出ノズル13a、13b、13c、13dは、床面方向に向いている面に吹出スリット22a、22b、22c、22dをそれぞれ有している。また、吹出ノズル13a、13b、13c、13dは、等間隔で並列に配置されており、これに伴って吹出スリット22a、22b、22c、22dも等間隔で並列に配置されている。この配置間隔は、例えば、それぞれの吹出ノズル13の中心線の間隔(それぞれの吹出スリット22の間隔)が200mm、吹出ノズル13の間の間隙(誘引空間2の一部)が160mmとなるように配置される。なお、吹出スリット22のそれぞれは、吹出ノズル13の長さ方向に沿って設けられている。吹出スリット22の位置は、吹出ノズル13の当該面を吹出ノズル13の並列方向(長さ方向に垂直な方向)に2等分する線上に設けられている。
【0062】
そして、図5に示すように、輻射空調システム100では、互いに隣接する吹出ノズル13の間隙に冷温水輻射パイプ32が配置されている。冷温水輻射パイプ32は、互いに隣接する吹出ノズル13の間隙に形成される風路上にそれぞれ配置されているとも言える。より詳細には、吹出ノズル13aと吹出ノズル13bとの間には冷温水輻射パイプ32aが配置され、吹出ノズル13bと吹出ノズル13cとの間には冷温水輻射パイプ32bが配置され、吹出ノズル13cと吹出ノズル13dとの間には冷温水輻射パイプ32cが配置される。言い換えれば、冷温水輻射パイプ32aは、吹出ノズル13aと吹出ノズル13bとの間に形成される風路上に配置され、冷温水輻射パイプ32bは、吹出ノズル13bと吹出ノズル13cとの間に形成される風路上に配置され、冷温水輻射パイプ32cは、吹出ノズル13cと吹出ノズル13dとの間に形成される風路上に配置される。
【0063】
ここで、冷温水輻射パイプ32は、互いに隣接する吹出ノズル13間の全ての間隙に複数本、且つ、同一本数のパイプを有する。そして、冷温水輻射パイプ32のそれぞれは、すべて隣接パイプ間の距離が同一間隔となるように配置され、且つ、連続して配置されているパイプの端に位置しているパイプ(例えば図5のパイプ32a1及びパイプ32a4)は、全て最も近接している吹出ノズル13と一定の距離を有して位置している。これらの距離は、例えば隣接パイプ間の距離が40mm、近接する吹出ノズル13との距離が20mmとなるように設けられる。このようにすることで、隣接パイプ間、及び近接する吹出ノズル13との間には、誘引空間2を通過してきた気流の風路が形成され、通過した気流が均一な分布を保ったまま被空調空間1に到達させることができる。なお、冷温水輻射パイプ32の各パイプ周辺の気流の通過経路については、図7を参照して後述する。
【0064】
また、冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)は、吹出スリット22(吹出スリット22a、22b、22c)の面と同一面上に配置され、且つ、全てのパイプ群(パイプ32a1~32a4など)についてもすべて、吹出スリット22と同一面上に配置される。より詳細には、複数のパイプ(パイプ32a1~32a4など)の全ては配置する高さが同一であり、且つ、それらのパイプは、その最下点が吹出スリット22と同一高さになるように配置される。このようにすることで、冷温水輻射パイプ32は、吹出ノズル13の陰となることなく、被空調空間1に対して露出した位置に配置される。この場合、被空調空間1内に配置された人体などとの熱輻射が確実に行われ、被空調空間1内に居住する人が感じる温熱快適性をさらに高めることができる。なお、この効果は、熱輻射による2物体間に熱移動量が、2物体間の直接面している断面積と、2物体間の距離に比例するという原理に基づくものである。
【0065】
次に、図6を参照して、送風装置11内における空気の流れについて説明する。図6は、送風装置11内の空気の流れを示す上面図である。
【0066】
送風装置11では、吸込口21から吸い込んだ吸込空気A0は、送風機15a及び送風機15bの働きによって、送風ユニット12aへ流入する空気A1aと、送風ユニット12bへ流入する空気A1bに分配される。ここで、送風ユニット12aと送風ユニット12bとは、互いに同一の構成であり、且つ、配置が送風ユニット12aと送風ユニット12bとの間の境界線に関して対称であることから、送風ユニット12aと送風ユニット12bでは、空気A1aの風量=空気A1bの風量の関係がおおむね成り立つ。その後、送風機吹出口23a及び送風機吹出口23bを通過した空気A2a及び空気A2bは、それぞれ送風用チャンバ18a及び送風用チャンバ18bに一時的に蓄積され、送風機15a及び送風機15bからの押込みによって吹出ノズル13a、13b及び吹出ノズル13c、13dへと順次送風される。
【0067】
吹出ノズル13a、13b、13c、13dには、それぞれノズル空気A3a、A3b、A3c、A3dが送風される。なお、それぞれの風量の関係は、厳密に規定されるものではないが、吹出ノズル13aと吹出ノズル13bを、また吹出ノズル13cと吹出ノズル13dを、それぞれ送風用チャンバ18a及び送風用チャンバ18bの中心線に関して対称となるように配置することにより、ノズル空気A3aの風量=ノズル空気A3bの風量=ノズル空気A3cの風量=ノズル空気A3dの風量となることが望ましい。そして、ノズル空気A3a、A3b、A3c、及びA3dは、それぞれノズル長さ方向に向かって流れつつ、その一部が吹出空気Q0(図7参照)として吹出スリット22a、22b、22c、及び22dから図面奥向きに流出する。なお、図6では記載を省略したが、吹出スリット22から流出する風量をノズル長さ方向に依らず一定にするため、吹出ノズル13内部に整流用のフィンなどを設けてもよい。
【0068】
次に、図7を参照して、吹出ノズル13からの吹出空気Q0の流れ及びそれに起因して誘引される吹出ノズル13及び冷温水輻射パイプ32近傍に発生する誘引空気Q1の流れについて説明する。図7は、送風装置11の吹出ノズル13からの吹出空気Q0及び冷温水輻射パイプ32近傍に発生する誘引空気Q1の流れ方向を示す断面図である。
【0069】
吹出ノズル13a、13b、13c、13dに送風された空気は、吹出スリット22a、22b、22c、22dから吹出空気Q0として被空調空間1に放出される。ここで、吹出ノズル13a、13b、13c、13dは、上述したように同程度の風量を吹出スリット22a、22b、22c、22dからそれぞれ放出するため、吹出空気Q0は、吹出ノズル13の並列方向に分布の偏りなく、吹出スリット22の間隔ごとにピークを持つような風速分布となる。この吹出空気Q0は、スリット状の吹出口を活用することにより風量に対して比較的風速の大きい性質を有しているため、吹出方向に直進性の高い気流を生成する。また、この吹出空気Q0に起因して、吹出ノズル13周辺と誘引空間2との間で圧力差が発生し、吹出ノズル13と天井面との間の誘引空間2に流入する誘引空気Q1が発生する。ここで、誘引空気Q1は、吹出スリット22の断面積に対して非常に広大な断面積を有する誘引空間2に導入される空気であるため、風量に対して風速が非常に小さい性質を有しており、一般に風量の関係は、吹出空気Q0の風量<誘引空気Q1の風量の関係が成り立つ。
【0070】
誘引空気Q1は、吹出ノズル13の吹出空気Q0の吹出方向に誘引され、冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)の近傍を通過する。このとき、冷温水輻射パイプ32の径が、隣接する吹出ノズル13の間に十分な空間を確保した状態で配置されていることにより、誘引空気Q1は、その分布を損なうことなく、直進性を保ったままパイプ近傍を通過し、誘引空気Q2として被空調空間1に放出される。すなわち、風量の関係は、(誘引空気Q1の風量-誘引空気Q2の風量)/誘引空気Q2の風量<<1が成り立つ。
【0071】
また、誘引空気Q1は、冷温水輻射パイプ32の近傍を通過して誘引空気Q2となる際に、対流熱伝達による加熱又は冷却が行われる。例えば、誘引空気Q1の温度T1が28℃(被空調空間1の温度と同一温度)、冷温水輻射パイプ32の表面温度Tpが18℃のとき、誘引空気Q2の温度T2は、温度T1と温度Tpの間のある値(例えば25℃)に冷却される。そして、冷却された誘引空気Q2は、吹出ノズル13からの吹出空気Q0と一体となることにより、微風速な面状の均一流として被空調空間1へ送風される。
【0072】
このように、輻射熱発生装置31では、送風装置11による吹出空気Q0及び誘引空気Q1を活用することにより、被空調空間1の空気を空調し、温熱快適性を高めることができる。なお、一般的に冷温水輻射パイプ32表面の熱伝達係数は、表面を流れる気流の風速が大きいほど大きくなることから、誘引空気Q1の発生により、気流が発生しない場合に比べて高い空調能力を得ることができる。また、このため、本実施の形態においては、輻射空調システム100の温熱快適性をさらに高めることができる。
【0073】
次に、図8を参照して、制御装置51の基本機能について説明する。図8は、制御装置51の基本機能を示す概略ブロック図である。
【0074】
制御装置51は、入力部51aと、処理部51bと、出力部51cと、記憶部51dと、計時部51eと、を備えて構成される。また、制御装置51は、温度センサ52、湿度センサ53、リモコン54、輻射熱発生装置31、除湿装置41、及び表示パネル55と互いに通信可能に接続されている。
【0075】
入力部51aは、温度センサ52から送信される被空調空間1の温度に関する情報(第一情報)と、湿度センサ53から送信される被空調空間1の湿度に関する情報(第二情報)と、リモコン54から送信される利用者の入力設定に関する情報(第三情報)とを受け付ける。入力部51aは、受け付けた第一情報~第三情報を処理部51bに出力する。
【0076】
記憶部51dは、処理部51bにより参照または更新されるデータを記憶する。例えば、記憶部51dは、送風装置11、輻射熱発生装置31、及び除湿装置41の動作態様を決定するアルゴリズムを記憶している。また、記憶部51dは、入力部51aが受け付けた第一情報~第三情報を時系列に記憶している。そして、記憶部51dは、記憶したデータ(記憶データ)を、処理部51bからの要求に応じて処理部51bに出力する。
【0077】
計時部51eは、処理部51bが実行するプログラムの中で、必要に応じて時間の測定に使用される。そして、計時部51eは、現在時刻を示すデータ(時刻データ)を処理部51bに出力する。
【0078】
処理部51bは、入力部51aからの第一情報~第三情報と、記憶部51dからの記憶データと、計時部51eからの時刻データとを受け付ける。処理部51bは、受け付けた各情報を用いて、一定時間(例えば5分)ごとに、被空調空間1に対する送風動作、除湿動作、及び冷却動作を特定する。より詳細には、処理部51bは、第三情報に基づいて送風装置11の運転動作の実行あるいは停止を特定する。また、処理部51bは、計時部51eから取得する時刻データに基づいて一定時間ごとに、記憶部51dに記憶された目標湿度と、被空調空間1に設置された湿度センサ53で検知される現在湿度との間の湿度差に基づいて、除湿装置41の運転動作の実行あるいは停止を特定する。また、送風装置11の運転動作が実行中の場合、処理部51bは、計時部51eから取得する時刻データに基づいて一定時間ごとに、記憶部51dに記憶された目標温度と、被空調空間1に設置された温度センサ52で検知される現在温度との間の湿度差、あるいは、被空調空間1に設置された温度センサ52及び湿度センサ53で検知される現在温度及び現在湿度に関する情報に基づいて、輻射熱発生装置31の運転動作の実行あるいは停止を特定するとともに、輻射熱発生装置31の運転動作の実行を特定した場合には、運転動作の実行時における冷水温度を特定する。そして、処理部51bは、特定した制御情報を出力部51cに出力する。さらに、処理部51bは、表示パネル55の表示情報を更新して、更新された表示情報を出力部51cに出力する。なお、処理部51bで実行される除湿装置41及び輻射熱発生装置31の処理動作の特定方法については、図9及び図10を参照して後述する。
【0079】
出力部51cは、処理部51bから受け付けた制御情報を、送風装置11、除湿装置41、及び輻射熱発生装置31にそれぞれ出力する。また、表示パネル55は、処理部51bから受け付けた表示情報を、表示パネル55に出力する。
【0080】
そして、送風装置11は、出力部51cから出力された制御情報に基づいた送風動作を実行する。また、除湿装置41は、出力部51cから出力された制御情報に基づいた除湿動作を実行する。また、輻射熱発生装置31は、出力部51cから出力された制御情報に基づいた冷却動作を実行する。また、表示パネル55は、出力部51cから出力された表示情報に基づいて、画面表示を更新する。
【0081】
以上のようにして、制御装置51は、除湿装置41、及び輻射熱発生装置31の各動作を実行させる。
【0082】
次に、図9を参照して、制御装置51による除湿制御の処理動作について説明する。図9は、制御装置51の除湿制御に関する処理動作を示すフローチャート図である。なお、除湿装置41の動作は、基本的に冷房期においてのみその処理動作を変化させるため、以下では冷房期の処理動作制御に限定して説明する。
【0083】
<除湿制御動作>
まず、制御装置51は、計時部51eからの情報に基づいて時間経過の判定を実施する。(ステップS01)。その結果、制御装置51は、前回の処理から一定時間(例えば10分)が経過していない場合(ステップS01のNO)には、再度ステップS01へ戻る。一方、前回の処理から一定時間が経過した場合(ステップS01のYES)には、ステップS02へ進み、除湿制御に関する処理動作の特定に移行する。
【0084】
次に、制御装置51は、被空調空間1に設置された温度センサ52及び湿度センサ53から取得された現在温度及び現在湿度に関する情報、及び、リモコン54から入力された目標温度及び目標湿度に関する情報をそれぞれ取得し、被空調空間1の現在絶対湿度及び目標絶対湿度をそれぞれ算出して特定する。そして、ステップS03に進む。
【0085】
ステップS03では、除湿装置41の除湿動作判定として、ステップS02で算出した現在絶対湿度が、目標絶対湿度を超えているかを判定する。判定の結果、現在絶対湿度が目標絶対湿度を超えている場合(ステップS03のYES)には、被空調空間1に対する除湿処理が必要であると判定し、除湿装置41の除湿運転を「ON」とし、除湿装置41による除湿動作を実行させる(ステップS04)。一方、判定の結果、現在絶対湿度が目標絶対湿度以下である場合(ステップS03のNO)には、被空調空間1に対する除湿処理が不要であると判定し、除湿装置41の除湿運転を「OFF」とし、除湿装置41による除湿動作を行わずに(ステップS05)、処理動作を終了する。
【0086】
このようにして、制御装置51は、除湿装置41の除湿動作を特定し、ステップS01に戻って除湿制御の処理動作を繰り返す。
【0087】
次に、図10を参照して、制御装置51による冷水温度制御に関する処理動作について説明する。図10は、冷水温度制御に関する制御装置51の処理動作を示すフローチャート図である。
【0088】
<冷水温度制御>
まず、制御装置51は、計時部51eからの情報に基づいて時間経過の判定を実施する(ステップS11)。その結果、制御装置51は、前回の処理から一定時間(例えば10分)が経過していない場合(ステップS11のNO)には、再度ステップS11へ戻る。一方、前回の処理から一定時間が経過した場合(ステップS11のYES)には、ステップS12へ進み、除湿制御に関する処理動作の特定に移行する。
【0089】
次に、制御装置51は、被空調空間1に設置された温度センサ52及び湿度センサ53から取得された現在温度及び現在湿度に関する情報、及びリモコン54から入力された目標温度及び目標湿度に関する情報をそれぞれ取得する(ステップS12)。そして、ステップS13に進む。
【0090】
ステップS13では、制御装置51は、輻射熱発生装置31の運転動作判定として、ステップS12で取得した現在温度が、目標温度を超えているかを判定する。判定の結果、現在温度が目標温度を超えている場合(ステップS13のYES)には、被空調空間1に対する冷却処理が必要であると判定し、輻射熱発生装置31による処理動作を特定するためにステップS14に進む。一方、判定の結果、現在温度が目標温度以下である場合(ステップS13のNO)には、被空調空間1に対する冷却処理が不要であると判定し、輻射熱発生装置31の冷却運転を「OFF」とし、輻射熱発生装置31による冷却動作を行わずに(ステップS18)、処理動作を終了する。
【0091】
続いて、ステップS14では、制御装置51は、被空調空間1の現在湿度情報をもとに、輻射熱発生装置31の運転動作を行うか否かを判定する。より詳細には、被空調空間1の現在絶対湿度が、第一基準湿度を超えているかを判定する。ここで、第一基準湿度は、被空調空間1の冷却を開始できる絶対湿度として定められ、例えば14.2g/kg(温度28℃、相対湿度60%相当の絶対湿度値)と定められる。
【0092】
そして、ステップS14での判定の結果、現在絶対湿度が第一基準湿度未満である場合(ステップS14のYES)には、輻射熱発生装置31の運転動作を実行すると判定し、ステップS15に進む。一方、判定の結果、現在絶対湿度が第一基準湿度以上である場合(ステップS14のNO)には、輻射熱発生装置31の運転動作を実行しないと判定し、輻射熱発生装置31の冷却運転を「OFF」とし、輻射熱発生装置31による冷却動作を行わずに(ステップS18)、処理動作を終了する。これにより、被空調空間1の現在絶対湿度が高い状態であれば、冷温水輻射パイプ32の冷却が発生せず、現在絶対湿度が第一基準湿度まで低下してから冷温水輻射パイプ32が冷却されるため、被空調空間1の除湿前段階における冷温水輻射パイプ32表面での結露を抑制することができる。
【0093】
続いて、ステップS15では、制御装置51は、被空調空間1に設置された温度センサ52及び湿度センサ53から取得された現在温度及び現在湿度に関する情報に基づいて、被空調空間1の露点温度を算出して特定する。ここで、露点温度は、所定の絶対湿度値において結露を発生させない下限の温度を示すものである。ステップS15での処理は、冷温水輻射パイプ32の冷却に用いる冷水の温度を結露しない範囲に制御するための前段階として行われる。なお、露点温度は、例えば下記式(1)及び式(2)のような実験式を用いることで求めることができる。
【0094】
Tdp=A+B*t+C*rh+D/rh (rh≧60)・・・式(1)
Tdp=E+F*t+G*rh (rh<60)・・・式(2)
ここで、Tdpは露点温度、tは温度、rhは相対湿度である。また、A、B、C、D、E、F、Gはそれぞれ実験的に得られる定数であり、A=―4.8、B=0.983、C=0.109、D=―583、E=-26.44、F=0.899、G=0.3545である。
【0095】
続いて、ステップS16では、制御装置51は、ステップS15で特定された露点温度をもとに、冷水温度を特定する。より詳細には、制御装置51は、輻射熱発生装置31の設定水温を、ステップS15で特定した露点温度を下回らない最低の整数値となるように更新する。すなわち、例えば露点温度が17.5℃であれば、設定水温は18℃に定められる。その後ステップS17に進み、特定された冷水温度にて輻射熱発生装置31による冷却動作を実行させる。なお、冷水温度が被空調空間1の現在温度よりも高い場合には、冷温水輻射パイプ32の表面温度は、設定水温よりも高くなるため、このように設定水温が被空調空間1の露点温度を下回らないように制御することで、冷温水輻射パイプ32の表面温度は露点温度よりも高くなる。このため、冷温水輻射パイプ32の表面での結露を確実に抑制することができる。
【0096】
以上のようにして、制御装置51は、輻射熱発生装置31による冷却動作を特定し、ステップS11に戻って処理動作を繰り返す。
【0097】
以上、本実施の形態1に係る輻射空調システム100によれば、以下の効果を享受することができる。
【0098】
(1)輻射空調システムは、吹出スリット22(吹出スリット22a、22b、22c、22c)を有する複数の吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)と、吹出ノズル13に空気を送風する送風機15(送風機15a、15b)と、を有して構成される送風装置11と、被空調空間1に熱輻射を発生させる複数の冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)を有する輻射熱発生装置31と、輻射熱発生装置31の運転動作を制御する制御装置51と、を備える。複数の吹出ノズル13は、それぞれ吹出スリット22が同一面上に位置するように間隙を有して並設される。複数の冷温水輻射パイプ32のそれぞれは、隣接する吹出ノズル13の間隙に配置され、かつ、送風装置11から送風される吹出空気Q0により誘引される誘引空気Q1が通過する風路上に配置されている。そして、制御装置51は、被空調空間1の湿度(現在湿度)が第一基準湿度未満の時に輻射熱発生装置31の運転動作を実行させ、被空調空間1の湿度が第一基準値以上の時に輻射熱発生装置31の運転動作を停止させる制御を行うようにした。
【0099】
これにより、被空調空間1の空気(吹出ノズルの間隙に誘引された誘引空気Q1)の湿度が第一基準湿度未満であり、被空調空間1の空気が十分に除湿されている場合には、被空調空間1の空気が冷温水輻射パイプ32の表面との間で熱交換するとともに、吹出ノズル13からの吹出空気Q0と一体となることにより、微風速な面状の均一流として被空調空間1へ送風される。一方で、被空調空間1の空気の湿度が第一基準湿度以上であり、被空調空間1の空気が十分に除湿されておらず、湿度が高い場合には、輻射熱発生装置31が停止されて、そのまま微風速な面状の均一流として被空調空間1へ送風される。このため、冷温水輻射パイプ32の表面での結露が生じない範囲において空調しつつ、温度の偏りあるいはドラフト感を抑制した空調を実現することができる。つまり、冷温水輻射パイプ32の表面(輻射パネル表面)での結露を抑制しつつ、被空調空間1の温熱快適性を向上させることが可能な輻射空調システム100とすることができる。
【0100】
(2)輻射空調システム100では、被空調空間1の湿度は、複数の冷温水輻射パイプ32よりも上流側における誘引空気Q1が通過する風路上に設置された湿度センサ53が検知する検知湿度(現在湿度)であり、制御装置51は、検知温度に基づいて、輻射熱発生装置31の運転動作を制御するようにした。これにより、被空調空間1内において最も結露発生の可能性が高い冷温水輻射パイプ32の表面を流通する被空調空間1の空気(吹出ノズル13の間隙に誘引された誘引空気Q1)の検知湿度に基づいて輻射熱発生装置31の運転動作が制御される。このため、輻射熱発生装置31の運転動作の制御による結露抑制の効果をより高精度で享受することができる。
【0101】
(3)輻射空調システム100は、被空調空間1の空気を除湿する除湿装置41を備える。制御装置51は、被空調空間1の現在絶対湿度が被空調空間1の目標温度及び目標湿度から算出される目標絶対湿度以上の場合に除湿装置41の運転動作を実行させ、目標絶対湿度未満の場合に除湿装置41の運転動作を停止させるように制御するようにした。これにより、被空調空間1の温度状態にかかわらず、除湿装置41によって除湿目標値となる絶対湿度まで継続して除湿制御が実行される。このため、被空調空間1を冷却せずとも、十分に除湿することができ、結露抑制の効果をさらに高めることができる。
【0102】
(4)輻射空調システム100では、複数の冷温水輻射パイプ32は、被空調空間1への輻射熱を、冷温水輻射パイプ32の内部に冷温水生成チラー35で生成した冷温水を供給することで発生させるようにした。これにより、予め冷温水生成チラー35にて温度調節をした冷温水を冷温水輻射パイプ32に送ることで、継続的に熱を発生させることが可能になる。このため、被空調空間1の温熱快適性を容易に高めることができる。
【0103】
(5)輻射空調システム100では、制御装置51は、冷温水生成チラー35にて生成される冷温水の温度を被空調空間1の露点温度より高くなるように制御するようにした。これにより、被空調空間1内において最も結露発生の可能性が高い冷温水輻射パイプ32表面の温度が、結露を発生させない範囲の温度に制御される。このため、輻射熱発生装置31の動作制御による結露発生を確実に抑制することができる。
【0104】
(6)輻射空調システム100は、微風速な面状の空気(吹出空気Q0)を生じさせる複数の吹出ノズル13(吹出ノズル13a、13b、13c、13d)を有する送風装置11と、互いに隣接する吹出ノズル13間のそれぞれに配置され、熱輻射を発生させる複数の冷温水輻射パイプ32(冷温水輻射パイプ32a、32b、32c)を有する輻射熱発生装置31と、を備えて構成した。そして、輻射熱発生装置31は、冷温水輻射パイプ32に流入する空気(誘引空気Q1)の湿度(現在湿度)に基づいて運転動作を実行するようにした。
【0105】
これにより、誘引空気Q1が十分に除湿されている場合には、輻射熱発生装置31が運転動作を実行することによって、送風装置11が送風する送風面全体で偏りなく温度調整を行うことができる一方、誘引空気Q1が十分に除湿されておらず湿度が高い場合には、輻射熱発生装置31が運転動作を停止することによって、誘引空気Q1を温度調整することなくそのまま微風速な面状の均一流として被空調空間1へ送風することができる。つまり、輻射熱発生装置31の運転動作に起因した冷温水輻射パイプ32の表面での結露の発生を抑制しつつ、被空調空間1の全体において温度の偏りあるいはドラフト感を抑制した空調を実現し、体感温度ムラのない被空調空間1を実現することができる。
【0106】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0107】
本実施の形態1に係る輻射空調システム100では、冷温水輻射パイプ32を、吹出スリット22と同一面上になるように配置したが、これに限られない。冷温水輻射パイプ32が、吹出ノズル13の陰になることなく、被空調空間1に露出した配置であればよいため、例えば、冷温水輻射パイプ32を、吹出スリット22が構成する面よりも吹出空気Q0の流れる下流側において、全ての冷温水輻射パイプ32を同一面上に配置するようにしてもよい。あるいは、冷温水輻射パイプ32のそれぞれを、隣接する吹出ノズル13間の隙間に形成される空間内に配置するようにしてもよい。なお、こうした場合には、全ての冷温水輻射パイプ32を同一面上に配置してもよいし、異なるように配置してもよい。このようにしても、冷温水輻射パイプ32と被空調空間1との間に障害物がないので、熱輻射を促進させることができる。このため、輻射熱による温熱快適性をさらに高めることができる。
【0108】
また、本実施の形態1に係る輻射空調システム100では、吹出ノズル13間に配置されるパイプ群を4本のパイプで構成したが、これに限られない。少なくとも1本のパイプが給水管33及び排水管34に接続され、且つ、接続する本数が同一本数であればよいため、例えば、パイプ群を構成するパイプは、2本、6本、8本などの本数であってもよい。
【0109】
また、本実施の形態1に係る輻射空調システム100では、送風装置11を、被空調空間1を構成する天井面に対してオフセットして設け、吹出ノズル13からの吹出空気Q0が、天井面から床面の方向に向かって送風されるようにしたが、これに限られない。例えば、送風装置11を、被空調空間1の側壁面に対してオフセットして設け、吹出ノズル13からの吹出空気Q0が反対側の側壁面に向かって送風するようにしてもよい。このようにしても、側壁面と吹出ノズル13との間の誘引空間2から広範囲に誘引空気Q1を取り込み、反対側の側壁面に向かって安定した送風を実現することができる。
【0110】
また、本実施の形態1に係る輻射空調システム100では、除湿機吹出口44及び除湿機吸込口45は1つとしたが、これに限られない。被空調空間1全体の代表的な温湿度の空気を取り込み、それらを均一に除湿できればよいため、除湿機吹出口44及び除湿機吸込口45を天井面の複数箇所に設けて送風するようにしてもよい。この場合、複数の除湿機吹出口44及び複数の除湿機吸込口45のそれぞれを接続する吹出用ダクト46及び吸込用ダクト47は、分岐ダクトなどを使用して結合あるいは分離させ、除湿装置41への流入及び除湿装置41からの流出経路は、それぞれ1つに集約されるように構成する。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る輻射空調システムは、輻射パネル表面の結露の発生を抑制しつつ、被空調空間内の温熱快適性を高めることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0112】
100 輻射空調システム
1 被空調空間
2 誘引空間
3 天井裏空間
11 送風装置
12、12a、12b 送風ユニット
13、13a、13b、13c、13d 吹出ノズル
14 送風機ボックス
15、15a、15b 送風機
16a、16b 羽根車
17a、17b モータ
18、18a、18b 送風用チャンバ
21 吸込口
22、22a、22b、22c、22d 吹出スリット
23、23a、23b 送風機吹出口
31 輻射熱発生装置
32、32a、32b、32c 冷温水輻射パイプ
32a1、32a2、32a3、32a4 パイプ
32b1、32b2、32b3、32b4 パイプ
32c1、32c2、32c3、32c4 パイプ
33 給水管
34 排水管
35 冷温水生成チラー
36 送水ポンプ
41 除湿装置
42 除湿機
43 搬送ファン
44 除湿機吹出口
45 除湿機吸込口
46 吹出用ダクト
47 吸込用ダクト
51 制御装置
51a 入力部
51b 処理部
51c 出力部
51d 記憶部
51e 計時部
52 温度センサ
53 湿度センサ
54 リモコン
55 表示パネル
A0 吸込空気
A1a、A1b 空気
A2a、A2b 空気
A3a、A3b、A3c、A3d ノズル空気
Q0 吹出空気
Q1 誘引空気
Q2 誘引空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10