(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009003
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】防融難燃加工剤および防融難燃繊維製品
(51)【国際特許分類】
D06M 13/292 20060101AFI20230112BHJP
D06M 13/477 20060101ALI20230112BHJP
D06M 11/45 20060101ALI20230112BHJP
D06M 11/47 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
D06M13/292
D06M13/477
D06M11/45
D06M11/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107351
(22)【出願日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2021111752
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208260
【氏名又は名称】大和化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】河内 雄介
(72)【発明者】
【氏名】星川 和志
(72)【発明者】
【氏名】森 桜
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AB31
4L031BA11
4L031DA16
4L033AB00
4L033AB04
4L033AC05
4L033BA39
4L033BA57
4L033BA59
(57)【要約】
【課題】繊維構造物であって、特に、タオル、衣類、帽子やテント等の風合、ベタツキ防止も優れることが望ましい用途に使用でき、さらに防融性、難燃性にも優れたものを得ること。
【解決手段】下記式(1)で示される難燃剤(a)及び/又はポリリン酸メラミンと、樹脂(b)を含み、合成繊維を含む繊維構造物に対し、防融性と難燃性を付与するための防融難燃加工剤。
【化1】
(式中、R
1は水素、フェニル基、または炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、MはMg、Al、CaまたはZnであり、mは2又は3である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される難燃剤(a)及び/又はポリリン酸メラミンと、樹脂(b)を含み、合成繊維を含む繊維構造物に対し、防融性及び難燃性を付与するための防融難燃加工剤。
【化1】
(式中、R
1は水素、フェニル基、または炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、MはMg、Al、CaまたはZnであり、mは2又は3である。)
【請求項2】
更に、リン酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、臭素系化合物、三酸化アンチモン及び五酸化アンチモンから選択される一つまたは二つ以上の難燃助剤(c)を含有する請求項1に記載の防融難燃加工剤。
【請求項3】
前記樹脂(b)が、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂から選択される一つまたは二つ以上の樹脂を含み、且つ水性溶媒や有機溶媒を含有するか、あるいは無溶媒である請求項1又は2に記載の防融難燃加工剤。
【請求項4】
前記繊維構造物に対し、請求項1又は2に記載の防融難燃加工剤で処理してなる防融難燃繊維製品。
【請求項5】
前記繊維構造物に対し、請求項3に記載の防融難燃加工剤で処理してなる防融難燃繊維製品。
【請求項6】
前記繊維構造物が、ポリエステル繊維、再生ポリエステル繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維から選択される一つまたは二つ以上の繊維で構成される請求項4に記載の防融難燃繊維製品。
【請求項7】
前記繊維構造物が、ポリエステル繊維、再生ポリエステル繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維から選択される一つまたは二つ以上の繊維で構成される請求項5に記載の防融難燃繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防融難燃加工剤および防融難燃繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリエステルやナイロン等の合成繊維は熱に弱く、火があたるとすぐに溶融し穴が開いてしまうことが知られている。
溶融する事例として、キャンプ等のアウトドアではバーベキューが行われるが、たき火の火の粉が飛んで、合成繊維の衣服を溶かし、穴が開き、火傷の危険性を有していた。
また、特許文献1に記載のように、有機ホスフォン酸塩とメラミンを含有する組成物からなる層を金属被覆布帛の片面に形成させることにより、難燃性を有する柔軟な布帛を得ることは知られている。
しかし、このような金属被覆布帛は、金属層を有することからみて、一般に使用されるような被服用の布とまではいえない。そのため、仮にこの金属被覆布帛が難燃性を有しているとしても、更に防融性、難燃性、風合、ベタツキ防止及び洗濯耐久性が全てに優れるように加工をすることまでを求めるものではない。
また、特許文献2に記載のように、ポリエステル繊維にリン含有難燃剤を付着させた後、電子線照射を行うことで防融性が得られることは知られている。
しかし、この特許文献2においては、防融性と洗濯耐久性を評価しているのみであり、一般的な衣類用途を鑑みた際の、防融性、難燃性、風合、ベタツキ防止及び洗濯耐久性が全てに優れるように加工をすることまでを求めるものではない。
【0003】
このように、単に難燃性を有する布だけではなく、上記のように防融性、難燃性、風合、ベタツキ防止及び洗濯耐久性が全てに優れる繊維構造物を得ることまでは、これまで当業者が検討すらしていない。
そして、防融性と難燃性を備えつつ、風合いと洗濯耐久性にも優れた繊維構造物とすることにより、衣類や帽子等のように、身につける繊維構造物であって、洗濯を行うようなものに対して、優れた防融性、難燃性、風合、ベタツキ防止及び洗濯耐久性を兼ね備えるころまでは、検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-285804号公報
【特許文献2】特開平5-9808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、繊維構造物であって、特に、タオル、衣類や帽子、テント等の風合、ベタツキ防止も優れることが望ましい用途に使用でき、さらに防融性、難燃性にも優れたものを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、防融難燃加工剤を採用することで上記課題を解決できることを見出し、
本発明を解決するに至った。
すなわち、本発明は、
1.下記式(1)で示される難燃剤(a)及び/又はポリリン酸メラミンと、樹脂(b)を含み、合成繊維を含む繊維構造物に対し、防融性及び難燃性を付与するための防融難燃加工剤。
【化1】
(式中、R
1は水素、フェニル基、または炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、MはMg、Al、CaまたはZnであり、mは2又は3である。)
2.更に、リン酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、臭素系化合物、三酸化アンチモン及び五酸化アンチモンから選択される一つまたは二つ以上の難燃助剤(c)を含有する1に記載の防融難燃加工剤。
3.前記樹脂(b)が、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂から選択される一つまたは二つ以上の樹脂を含み、且つ水性溶媒や有機溶媒を含有するか、あるいは無溶媒である1又は2に記載の防融難燃加工剤。
4.前記繊維構造物に対し、1~3のいずれかに記載の防融難燃加工剤で処理してなる防融難燃繊維製品。
5.前記繊維構造物が、ポリエステル繊維、再生ポリエステル繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維から選択される一つまたは二つ以上の繊維で構成される4に記載の防融難燃繊維製品。
6.JIS L1930:2014 C4M法により10回の洗濯を行った後においても、防融性及び難燃性を保持できる性質を有する4又は5に記載の防融難燃繊維製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の防融難燃加工剤により汎用的な手段により処理すると、繊維構造物全体の防融性、難燃性、風合、ベタツキ防止及び洗濯耐久性が全てに優れる効果を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の防融難燃加工剤は、式(1)で表される難燃剤(a)及び/又はポリリン酸メラミンと、樹脂(b)を含有することを基礎とする。
(難燃剤(a))
本発明において使用し得る難燃剤(a)は、
【化1】
(式中、R
1は水素、フェニル基、または炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、MはMg、Al、CaまたはZnであり、mは2又は3である。)
上記の難燃剤(a)として、MがAlであることが好ましく、R
1は水素であることが好ましい。
【0009】
難燃剤(a)の平均粒子径は1~50μmが好ましく、特に3~20μmが好ましい。平均粒子径が50μmを超えると、塗布面にザラツキが発生したり、加工剤としての固液分離が発生したりするおそれがあり、平均粒子径が1μm未満だと、加工剤中での凝集物の発生または、加工液の極度の粘度の増加が起こるおそれがある。
【0010】
発明の防融難燃加工剤がポリリン酸メラミンを含有せず、難燃剤(a)を含有する場合には、樹脂(b)固形分100重量部に対し、難燃剤(a)を10~150重量部含有することが好ましく、より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上である。またより好ましくは120重量部以下、さらに好ましくは110重量部以下、最も好ましくは100重量部以下である。難燃剤(a)の含有量が樹脂(b)固形分100重量部に対し10重量部未満の場合は、目的とする難燃性能や燃焼時の優れた防融性を得ることが難しく、150重量部を超える場合は防融難燃加工剤の粘度が高くなりすぎて加工適正に問題が生じる可能性がある。
【0011】
(ポリリン酸メラミン)
ポリリン酸メラミンは、リン酸を脱水縮合反応させ、高分子化したポリリン酸とメラミンとの反応物で、リン酸メラミンとは異なる化合物である。本発明の防融難燃加工剤が難燃剤(a)を含有せず、ポリリン酸メラミンを含有する場合には、樹脂(b)固形分100重量部に対し、ポリリン酸メラミンを20~150重量部含有することが好ましく、より好ましくは30重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、最も好ましくは50重量部以上である。またより好ましくは120重量部以下、さらに好ましくは110重量部以下、最も好ましくは100重量部以下である。ポリリン酸メラミンの含有量が樹脂(b)固形分100重量部に対し20重量部未満の場合は、目的とする難燃性能や燃焼時の優れた防融性を得ることが難しく、150重量部を超える場合は防融難燃加工剤の粘度が高くなりすぎて加工適正に問題が生じる可能性がある。
【0012】
本発明の防融難燃加工剤が難燃剤(a)とポリリン酸メラミンと樹脂を共に含有する場合には、それらの配合割合は、重量比で難燃剤(a)/ポリリン酸メラミン=90/10~30/70であるのが好ましく、防融性及び難燃性を向上させるには、特に80/20~50/50がより好ましい。
【0013】
本発明の防融難燃加工剤が難燃剤(a)とポリリン酸メラミンを共に含有する場合には、樹脂(b)固形分100重量部に対し、難燃剤(a)とポリリン酸メラミンを合計で20~150重量部含有することが好ましく、より好ましくは30重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、最も好ましくは50重量部以上である。またより好ましくは120重量部以下、さらに好ましくは110重量部以下、最も好ましくは100重量部以下である。難燃剤(a)とポリリン酸メラミンの合計の含有量が樹脂(b)固形分100重量部に対し20重量部未満の場合は、目的とする難燃性能や燃焼時の優れた防融性を得ることが難しく、150重量部を超える場合は防融難燃加工剤の粘度が高くなりすぎて加工適正に問題が生じる可能性がある。
【0014】
(樹脂(b))
本発明にて防融難燃加工剤中の樹脂(b)としては、熱可塑性樹脂が好ましい。その熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂から選択される一つまたは二つ以上の樹脂が好ましい。中でも、上記式(1)の化合物を使用する際に、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂の内、二つ以上を併用することが好ましい。これにより、防融、難燃、風合、洗濯耐久性、ベタツキ防止性を、全て満たしやすい。
中でも、水溶性、水分散性及び油溶性のいずれでも良いが、水溶性又は水分散性であるものが、防融難燃加工剤の溶媒を水性にすることができ好ましい。
そしてこの樹脂(b)の含有量は、防融難燃加工剤の固形分中10~90重量%であることが好ましい。30重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、70重量%以下がより好ましく、60重量%以下がさらに好ましい。
【0015】
(難燃助剤(c))
本発明の防融難燃加工剤に含有させても良い難燃助剤としては、リン酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、臭素系化合物、三酸化アンチモン及び五酸化アンチモンから選択される一つまたは二つ以上である。
【0016】
臭素系化合物の具体例としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0017】
そして本発明の防融難燃加工剤中の本発明の難燃助剤(c)の含有量としては、難燃性、燃焼時の優れた難燃性能と防融性の点から、好ましくは樹脂(b)固形分100重量部に対し0~150重量部の含有量であり、より好ましくは0~100重量部である。そしてさらに好ましくは、10重量部以上であり、最も好ましくは20重量部以上である。またさらに好ましくは95重量部以下であり、最も好ましくは90重量部以下である。
【0018】
(その他の難燃剤及び難燃助剤)
本発明の防融難燃加工剤に含有させても良いその他の難燃剤及び難燃助剤としては、トリスジエチルフォスフィン酸アルミニウム、ピロリン酸メラミン、フタル酸メラミン、硼酸亜鉛等の硼酸化合物、錫酸化合物、炭酸化合物、銅酸化物,酸化鉄,フェロセン、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物及びシリカ、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維、リン酸エステルである。
【0019】
(その他の添加剤)
本発明の防融難燃加工剤に、本発明の目的を損なわない範囲で添加できる添加剤としては、界面活性剤、着色剤(染料、顔料等)、整泡剤、撥水剤、架橋剤、可塑剤、耐光性向上剤、抗菌剤、防虫剤、帯電防止剤、消泡剤、分散剤等である。
【0020】
(溶媒)
本発明の防融難燃加工剤は、繊維構造物に対する処理を円滑に進める上で、液体であることが好ましい。また無溶媒でもよい。
そのために使用する溶媒としては、水、水溶性有機溶媒及び油溶性有機溶媒のいずれでも良いが、水、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒、及び水溶性有機溶媒のみのいずれかであることが好ましく、さらに水、又は、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であることがより好ましい。
使用できる有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ジアルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン原子により置換された炭化水素系溶媒である。その中でも、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンを使用することが作業環境上及び速やかな乾燥を行う上で好ましい。
本発明の防融難燃加工剤中の溶媒の量は、繊維構造物を加工する際の作業性や、繊維構造物への付着量を考慮して任意に決定できる。
【0021】
上記の成分からなる組成であり、
A.下記式(1)で示される難燃剤(a)
B.シアヌル酸メラミン
C.樹脂(b)が水分散合成樹脂
【化1】
(式中、MはAlであり、mは3である。)
なかでも、前記水分散合成樹脂が、アクリル樹脂とシリコン樹脂又は、エチレン/酢酸ビニル樹脂とシリコン樹脂、又はアクリル樹脂とシリコン樹脂とエチレン/酢酸ビニル樹脂のいずれかの組合せから選択されるときの防融難燃加工剤が、本発明による効果をより優れたものにするために好ましい。
さらにこの組み合わせによる防融難燃加工剤を、ポリエステル繊維、ポリエステル繊維と綿との混紡繊維、ポリエステル繊維とレーヨンとの混紡繊維及びナイロン繊維のいずれか1種以上を含む繊維構造物に加工してなる防融難燃繊維製品も、本発明による効果をより優れたものにするために好ましい。
【0022】
(繊維構造物)
本発明の防融難燃加工剤は、そのもののみにより成形体や繊維構造物を構成するものではなく、繊維構造体の表面処理剤として、更に場合により繊維構造物が多孔であれば、その多孔内に含浸される剤等として使用される。そして、繊維構造物の目付、厚み、構造等は公知のものとすることができる。
本発明の防融難燃加工剤により処理される繊維構造物としては、必要により着色された、公知の手段により得られた、トウ、フィラメント、撚糸、紡績糸、中綿(詰め綿)、紙、不織布、織物、編物等の形態ものである。
そして、繊維構造物は、ポリエステル繊維、再生ポリエステル繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、天然セルロース繊維、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維等の公知の合成繊維から選択される一つまたは二つ以上の繊維で構成される。
そして、繊維構造物は、フィルター、セパレータ、車両内装材やシート等の工業資材、テントやのぼり旗等の資材、下着、中着、外着、マフラー、ストール、帽子、耳掛け、手袋等の衣類製品、壁紙、障子紙、カーペット、カーテン、布張家具等のインテリア製品、毛布、布団カバー、シーツ、枕カバー等の寝具等に用いることができる。特に手触り等の感触を重視するような、下着、中着、外着、マフラー、ストール、帽子、耳掛け、手袋等の衣類製品、毛布、布団カバー、シーツ、枕カバー等の寝具等の用途に使用されるものが好ましい。
また、加熱により溶融する繊維を含有するものが好ましく、必要に応じて洗濯をして繰り返し使用される用途のものである。
【0023】
防融難燃加工剤により処理されて、防融性及び難燃性が付与される対象の本発明中の繊維構造物は、上記成分に加え、さらに必要に応じて、繊維構造物用として公知の、界面活性剤、着色剤(染料、顔料等)、整泡剤、撥水剤、架橋剤、可塑剤、耐光性向上剤、抗菌剤、防虫剤、帯電防止剤、消泡剤、分散剤等を配合できる。
【0024】
(防融難燃加工)
本発明の防融難燃加工剤を使用して、繊維構造物に対して加工を行う方法としては、繊維構造物を防融難燃加工剤中に浸漬したり、防融難燃加工剤を繊維構造物にダイレクトコーティングしたり、噴霧したりして、その後必要に応じて乾燥等する、繊維構造物を液体で処理する公知の方法を採用できる。
なお、本発明において、式(1)中のR1が水素であり、樹脂がポリエチレン樹脂又はポリウレタン樹脂で、式(1)の難燃剤と樹脂を事前に混錬し、フィルム状に成型した後、プレス機にて繊維と貼り合わせた場合には、防融性及び難燃性に若干劣る可能性がある。また、R1が炭化水素等であり、ポリウレタン樹脂に含有させてなる組成物から成形体を得た場合よりも、本発明のように、別に用意した繊維構造物に対して加工を行うほうが防融性、難燃性、風合い及び洗濯耐久性の点を総合的にみて優れた結果を得ることができる。
本発明の防融難燃加工剤の繊維構造物への付着量は、繊維構造物に対して、固形分の付着量として、好ましくは20~140g/m2、より好ましくは30~120g/m2、さらに好ましくは40~100g/m2である。
【実施例0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら具体例に限定される
ものではない。なお、実施例、比較例において、特に断りが無い場合は%表示、部表示は
重量基準である。
各表中の数値は、繊維構造物に付着した防融難燃加工剤中の各成分の固形分付着量(g/m2)である。繊維構造物に付着させる前の防融難燃加工剤自体は水性溶媒を含有する。表中の「水系ウレタン樹脂」等の「水系」はそのウレタン樹脂を配合するにあたり、予め水性溶媒に分散や溶解された各樹脂として配合したことを意味する。「溶剤系」は有機溶剤に溶解又は分散された樹脂として配合したことを意味する。
【0026】
(実施例及び比較例)
実施例及び比較例にて使用する防融難燃加工剤を、表に記載した成分および含有割合で混合して得た。繊維構造物への各成分間の付着量の重量比と、防融難燃加工剤中の各成分の重量比は同じである。
これらの防融難燃加工剤を用いて、下記の方法により繊維構造物を処理し、下記の試験を行った。
ポリエステル繊維/綿の混紡繊維(混率65/35)(目付110g/m2)を処理した結果を表1及び2に示す。ポリエステル繊維100%(目付150g/m2)を処理した結果を表3及び4に示す。ナイロンタフタ100%(目付60g/m2)を処理した結果を表5及び8に示す。ポリエステル繊維/レーヨンの混紡繊維(混率65/35)(目付200g/m2)を処理した結果を表6及び7に示す。ポリエステルタフタ100%(目付50g/m2)を処理した結果を表9及び10に示す。これらの表中の数値は繊維構造物への固形分の付着量(g/m2)である。
【0027】
(繊維構造物を処理する方法)
繊維構造物に下記表に記載の防融難燃加工剤を直接塗布するダイレクトコーティング法により塗布して、試験片を得た。
【0028】
(防融性1)
実施例及び比較例で作製した試験片を用いて、以下の基準に沿って評価した。
ライター法(オリジナル方法)
塗布面を上にした試験試料をU字型枠に水平に粘着テープで固定し、ガスライターで非塗布面から炎の先端が試料に当たるように3秒間接炎した。ライターの炎サイズは35±5mmとした。
〇:融孔が発生しないもの
×:融孔が発生したもの
【0029】
(防融性2)
スパーク花火法(オリジナル方法)
スパーク花火の燃焼部位と、塗布面を下にした試験片を水平に並べ、
以下の通り一定の間隔を空け、固定して、花火に着火した。
ナイロンタフタ100%:10mm離す
ポリエステルタフタ100%:8mm離す
スパーク花火;メーカー 井上玩具煙火「焚昇スパーク ゴールドミニ」
〇:融孔が発生しないもの
×:融孔が発生したもの
【0030】
(防融性3)
脱脂綿法(オリジナル方法)
塗布面を下にした試験片を水平に固定し、
その中心に0.15gの三角錐状の脱脂綿を載せ、脱脂綿に着火した。
〇:融孔が発生しないもの
×:融孔が発生したもの
【0031】
(難燃性)
防融処理後の試験片を、消防法の布張家具用途で用いられるクレビスバーナー法により評価を行った。
○:残炎又は残ジンが120秒以下
×:残炎又は残ジンが120秒を超える
【0032】
(防炎性)
JIS L-1091 A-1(ミクロバーナー法)とJIS L-1091 D(45°コイル法)に基づき、防炎試験を行った。
ミクロバーナー法
〇:残炎時間が3秒以内、残じん時間が5秒以内、炭化面積が30cm2以内
×:上記3点のいずれかを満たさない場合
45°コイル法
〇:接炎回数3回以上
×:接炎回数3回未満
【0033】
(風合い)
未加工布と比べた防融処理後の試験片の硬さを、十分な訓練を受けた試験官が指先で触れて風合いを確認した。
〇:未加工布と同等
△:未加工布より少し硬いが、ゴワツキなし
×:未加工布より明らかに硬く、ゴワツキあり
【0034】
(ベタツキ)
防融処理後の試験片を、十分な訓練を受けた試験官が指先で触れてベタツキ防止を確認した。
〇:未加工布と同等
△:少しベタツキ感はあるが、指にくっつく程ではない
×:指にくっつく位のベタツキがある
【0035】
(洗濯耐久性(防融性1~3))
JIS L1930:2014 C4M法により10回の洗濯を行った後に、上記防融性1~3の試験を行った。それぞれを洗濯耐久性(防融性1)、洗濯耐久性(防融性2)、洗濯耐久性(防融性3)とする。
○:防融性を保持できており、融孔が発生しなかった
×:防融性が低下し、融孔が発生した
【0036】
(洗濯耐久性(難燃性))
JIS L1930:2014 C4M法により10回の洗濯を行った後に、上記難燃性の試験を行った。
○:難燃性を保持できており、残炎又は残ジンが120秒以下であった
×:難燃性が低下し、残炎又は残ジンが120秒を超える
【0037】
(洗濯耐久性(防炎性))
JIS L1930:2014 C4M法により10回の洗濯を行った後に、上記防炎性の試験を行った。
ミクロバーナー法
〇:残炎時間が3秒以内、残じん時間が5秒以内、炭化面積が30cm2以内
×:上記3点のいずれかを満たさない場合
45°コイル法
〇:接炎回数3回以上
×:接炎回数3回未満
【0038】
リン酸メラミン:BUDIT310(CBC社)
ポリリン酸メラミン:BUDIT3141(CBC社)
シアヌル酸メラミン;STABIACE MC-2010N(堺化学工業社)
ホウ酸亜鉛;ZB2335(キンセイマテック社)
水酸化アルミニウム;ハイジライトH-32(昭和電工社)
ポリリン酸アンモニウム:FR CROS484(CBC社)
レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート:CR-733S(大八化学社)
デカブロモジフェニルエタン:SAYTEX8010(アルベマール日本株式会社)
2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン;FR-245(Shouguang Weidong Chemical Co.,Ltd)
三酸化アンチモン;AT-3(株式会社鈴裕化学)
水系ウレタン樹脂:EDOLAN HS(タナテックスケミカルジャパン社)
水系アクリル樹脂:ニューコート9500(新中村化学社)
水系塩化ビニル樹脂:ビニブラン690(日信化学工業社)
水系シリコン樹脂:KM-2002-L-1(信越化学工業社)
水系エチレン/酢酸ビニル樹脂:ビニブラン4003(日信化学工業社)
溶剤系ウレタン樹脂:クリスボンNY-324(DIC社)
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
上記の各表において、本発明に沿った例である各実施例によれば、未加工布より少し硬く、風合い又はベタツキの評価が△である場合があるものの、ごわつきが発生せず、その他の性質が優れた結果を得た。
これに対して、式(1)で示される難燃剤(a)、及びポリリン酸メラミン、シアヌル化メラミンやホウ酸亜鉛のいずれも含有せず、又は式(1)で示される難燃剤(a)の含有量が過少や不含有であったり、過多である各比較例によれば、少なくとも1つの評価の結果が×であり、本発明が意図する各効果を全て発揮できないことがわかる。