(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090051
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】道路縁高付与装置
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
G09B29/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204788
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元気
(72)【発明者】
【氏名】横山 亮
(72)【発明者】
【氏名】車 文韜
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032HB11
2C032HC27
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、道路以外の地物を避けたうえで道路面の標高を抽出して道路縁高を付与することができる、道路縁高付与装置を提供することにある。
【解決手段】本願発明の道路縁高付与装置は、3次元地形モデル記憶手段と道路縁モデル記憶手段、着目領域設定手段、道路縁高算出手段を備えたものである。着目領域設定手段は、道路縁モデル上に複数の着目基準点を生成するとともに、着目基準点を基準として着目領域を設定する手段であり、道路縁高算出手段は、着目領域を3次元地形モデルに配置したときに着目領域に属する複数の構成点を着目構成点として抽出するとともに、着目構成点に係る高さ情報の統計値を道路縁高として算出する手段である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元座標を具備する複数の構成点に基づく3次元地形モデルを記憶する3次元地形モデル記憶手段と、
道路縁を表した2次元の道路縁モデルを記憶する道路縁モデル記憶手段と、
前記道路縁モデル上に複数の着目基準点を生成するとともに、該着目基準点を基準としてあらかじめ定められた大きさと形状を有する2次元の着目領域を設定する着目領域設定手段と、
前記着目領域を前記3次元地形モデルに配置したときに該着目領域に属する複数の前記構成点を着目構成点として抽出するとともに、該着目構成点に係る高さ情報の統計値を道路縁高として算出する道路縁高算出手段と、を備え、
前記着目領域に対応する前記着目基準点に、前記道路縁高を付与する、
ことを特徴とする道路縁高付与装置。
【請求項2】
前記道路縁モデルを境界として前記着目領域を複数の分割領域に分割する着目領域分割手段と、
前記分割領域に属する複数の前記構成点に係る高さ情報の統計値をそれぞれ分割領域代表高として算出するとともに、最も低い該分割領域代表高に係る該分割領域を道路側領域として設定する道路側領域設定手段と、をさらに備え、
前記道路縁高算出手段は、前記道路側領域に属する複数の前記構成点を前記着目構成点として抽出したうえで前記道路縁高を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の道路縁高付与装置。
【請求項3】
前記道路側領域設定手段は、前記分割領域のうち前記着目基準点に接する2以上の候補分割領域を抽出するとともに、該候補分割領域のうち最も低い前記分割領域代表高に係る該候補分割領域を前記道路側領域として設定する、
ことを特徴とする請求項2記載の道路縁高付与装置。
【請求項4】
道路側領域設定手段は、前記分割領域に属する複数の前記構成点に係る高さ情報の中央値を前記分割領域代表高として算出したうえで、前記道路側領域を設定する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の道路縁高付与装置。
【請求項5】
3次元座標を具備する複数の構成点に基づく3次元地形モデルを記憶する3次元地形モデル記憶手段と、
道路縁を表した2次元の道路縁モデルを記憶する道路縁モデル記憶手段と、
前記道路縁モデル上に複数の着目基準点を生成するとともに、該着目基準点を基準として該道路縁モデルに対して垂直であってあらかじめ定められた長さを有する2次元の着目線分を設定する着目線分設定手段と、
前記着目線分を前記3次元地形モデルに配置したときに該着目線分の線上及び/又は近傍にある複数の前記構成点を着目構成点として抽出し、該着目構成点に係る高さ情報の統計値を道路縁高として算出する道路縁高算出手段と、を備え、
前記着目領域に対応する前記着目基準点に、前記道路縁高を付与する、
ことを特徴とする道路縁高付与装置。
【請求項6】
前記道路縁モデルを境界として前記着目線分を複数の分割線分に分割する着目線分分割手段と、
前記分割線分の線上及び/又は近傍にある複数の前記構成点に係る高さ情報の統計値を分割線分代表高として算出するとともに、最も低い該分割線分代表高に係る該分割線分を道路側線分として設定する道路側線分設定手段と、をさらに備え、
前記道路縁高算出手段は、前記道路側線分の線上及び/又は近傍にある複数の前記構成点を前記着目構成点として抽出したうえで前記道路縁高を算出する、
ことを特徴とする請求項5記載の道路縁高付与装置。
【請求項7】
前記道路側線分設定手段は、前記分割線分のうち前記着目基準点を端点とする2以上の候補分割線分を抽出するとともに、該候補分割線分のうち最も低い前記分割線分代表高に係る該候補分割線分を前記道路側線分として設定する、
ことを特徴とする請求項6記載の道路縁高付与装置。
【請求項8】
前記道路側線分設定手段は、前記分割線分の線上及び/又は近傍にある前記構成点に係る高さ情報の中央値を前記分割線分代表高として算出したうえで、前記道路側線分を設定する、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の道路縁高付与装置。
【請求項9】
前記道路縁高算出手段は、前記着目構成点に係る高さ情報のうちあらかじめ定められたパーセンタイル値を前記道路縁高として算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の道路縁高付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地物に対して標高などの高さ情報を付与する技術に関するものであり、より具体的には、道路縁の近傍にある高さ情報の統計処理を行うことで、その道路縁の高さ(以下、「道路縁高」という。)を決定する道路縁高付与装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、地形情報(空間情報)の需要が高まっており、例えば、道路上や沿道に設置された施設をより高度に管理することを目的にその形状や設置位置といった施設の空間情報を要望する管理者などが増加している。同時に、現在官民一体となって推進しているSociety5.0の実現にとっても、社会インフラストラクチャー(以下、単に「社会インフラ」という。)の高度な維持管理は重要な課題と位置付けられている。さらに、自動運転技術の実用化が進むなか、道路縁(道路境界線)をはじめとする道路に関する種々の空間情報が多方面から切望されているところである。
【0003】
従来、空間情報を示すものとしては、地形図など2次元(2D)の平面的な図面(平面図)が主流であった。平面図は、等高線や端点標高など「高さ情報」を示すことはあるものの、専ら平面位置を示すことに主眼が置かれており、3次元(3D)の空間として対象範囲を把握することは難しかった。一方、近年では計測技術の進歩に伴い大量の3次元計測点(以下、「3次元点群」という。)を容易に取得することができるようになり、しかも情報技術の進歩に伴いこの3次元点群を容易にハンドリングできるようになってきた。
【0004】
例えば道路を含む地形の3次元点群を取得するには、空中写真測量や航空レーザー計測、地上型レーザー計測、MMS(Mobile Mapping System)といった計測手法が採用されている。このうちMMSは、レーザースキャナやカメラ、自己位置を取得するための衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)、IMU(Inertial Measurement Unit)、オドメトリなどのセンサを移動車両に搭載したものであり、これにより車道上を移動しながらレーザースキャナによって3次元点群を取得することができる。
【0005】
MMSなどによって得られた3次元点群は、計測対象の地形の3次元モデル(以下、「3D地形モデル」という。)として利用するのが一般的である。この3D地形モデルは、対象地形を3次元座標で表したものであって、DSM(Digital Surface Model)やDEM(Digital Elevation Model)に代表される地形モデルである。
【0006】
通常、3D地形モデルは、対象とする平面範囲を複数分割した小領域によって構成される。この小領域は、メッシュとも呼ばれ、例えば直交するグリッドに区切られて形成されるもので、それぞれの小領域は代表点を備えている。計測によって得られる3次元点群はランダムデータ(平面的に不規則な配置のデータ)であることが多いため、小領域の代表点に高さを与えるには幾何計算されることが多い。この計算方法としては、ランダムデータから形成される不整三角網によって高さを求めるTIN(Triangulated Irregular Network)による手法、最も近いレーザー計測点を採用する最近傍法(Nearest Neighbor)による手法のほか、逆距離加重法(IDW:Inverse Distance Weighting)、Kriging法、平均法などを挙げることができる。
【0007】
3D地形モデルは、対象地形を平面的かつ立体的に把握することができることから、平面図に比べると種々の用途に利用することができる。しかしながら、計測結果に基づく3D地形モデルはあくまで3次元座標を基本とする空間情報を提示するにとどまり、地物の属性までは示すことができない。すなわち3D地形モデルを目視しただけでは、道路縁がどこなのか、オフィスビルの外縁(いわゆるエッジ)がどこなのか、理解することができないわけである。
【0008】
3D地形モデルに対して地物の属性情報を付与するとなると、地物の調査が必要となる。つまり、空中写真を目視しながら地物の属性を抽出したり、あるいは作業者が直接現地に赴いて目視した情報を図面に記録したりするなど、いずれにしろ人による判断が必要になるわけである。しかしながら、例えば道路の延長は一般に相当の延長を有していることから、調査にかかる作業量は膨大であり、その労力や作業時間を考えると多大なコストを要することとなる。
【0009】
ところで、上記したように従来は主に平面図を利用していた。そして、この平面図をラスターデータやベクターデータとして(つまりデジタル化して)利用するケースもあり、さらに地物を図形(ポリラインやポリゴン)化したうえで属性情報を付与したものを利用するケースもあった。あるいは、近年の機械学習技術の進歩によって、空中写真や平面図から機械的(自動的)に地物を抽出し、その図形と属性情報を抽出することも可能になってきた。このように、標高などの高さ情報は備えていないものの地物の属性情報を有する「2次元の地形モデル」が別に用意されているケースは考えられる。そして、このような2次元の地形モデルを利用すれば、3D地形モデルに地物の属性情報を付与するにあたって、人による地物の調査を省略(あるいは大幅に削減)することができることとなる。
【0010】
そこで特許文献1では、2次元地図データに表される地物の形状線に、計測による点群を用いて標高を付与することで3次元の地物形状線を生成する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既述したとおり、3D地形モデルはあくまで3次元座標を基本とする空間情報を提示するにとどまり、3D地形モデルを目視しただけでは道路縁がどこなのか理解することができない。そのため道路縁高を付与するためには、空中写真を目視しながら処理していくなど人による作業が避けられず、多大なコストを要する結果となる。そこで、ラスターデータやベクターデータなど平面図をデジタル化した「2次元の地形モデル」を利用することによって、人による作業を低減することができる可能性について示唆した。
【0013】
例えば、「道路縁」という属性情報と、その平面位置(座標情報)とを具備する2次元の地形モデル(以下、特に「道路縁モデル」という。)を3D地形モデルに配置したうえで、3D地形モデルを構成する3次元点(以下、「構成点」という。)の中から道路縁モデルの周辺にある構成点を抽出し、これを道路縁高とすることが考えられる。ところが、道路縁の周辺には、家屋やオフィスビルなど道路以外の建物が位置することも多く、単に道路縁モデルの周辺にあるからといってその構成点を直ちに道路縁高とすることができないケースもある。
【0014】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、道路面の高さ情報を抽出したうえで道路縁高を付与することができる道路縁高付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、道路縁モデルを基準として着目領域や着目線分を発生させるとともに、この着目領域(着目線分)に係る構成点に着目し、その着目した構成点に対して統計処理を行うことによって得られる高さ情報を道路縁高として付与する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0016】
本願発明の道路縁高付与装置は、3次元地形モデル記憶手段と道路縁モデル記憶手段、着目領域設定手段、道路縁高算出手段を備えたものである。このうち3次元地形モデル記憶手段は、3次元座標を具備する複数の構成点に基づく3次元地形モデルを記憶する手段であり、道路縁モデル記憶手段は、道路縁を表した2次元の道路縁モデルを記憶する手段である。また着目領域設定手段は、道路縁モデル上に複数の着目基準点を生成するとともに、着目基準点を基準としてあらかじめ定められた大きさと形状を有する2次元の着目領域を設定する手段であり、道路縁高算出手段は、着目領域を3次元地形モデルに配置したときに着目領域に属する複数の構成点を着目構成点として抽出するとともに、着目構成点に係る高さ情報の統計値を道路縁高として算出する手段である。そして、着目領域に対応する着目基準点に道路縁高を付与する。
【0017】
本願発明の道路縁高付与装置は、着目領域分割手段と道路側領域設定手段をさらに備えたものとすることもできる。この着目領域分割手段は、道路縁モデルを境界として着目領域を複数の分割領域に分割する手段であり、道路側領域設定手段は、分割領域に属する複数の構成点に係る高さ情報の統計値をそれぞれ分割領域代表高として算出するとともに、最も低い分割領域代表高に係る分割領域を道路側領域として設定する手段である。この場合、道路縁高算出手段は、道路側領域に属する複数の構成点を着目構成点として抽出したうえで道路縁高を算出する。
【0018】
本願発明の道路縁高付与装置は、分割領域のうち着目基準点に接する2以上の候補分割領域を抽出するとともに、候補分割領域のうち最も低い分割領域代表高に係る候補分割領域を道路側領域として設定したうえで、道路縁高を算出することもできる。
【0019】
本願発明の道路縁高付与装置は、分割領域に属する複数の構成点に係る高さ情報の中央値を分割領域代表高として道路側領域を設定したうえで、道路縁高を算出することもできる。
【0020】
本願発明の道路縁高付与装置は、着目領域設定手段に代えて着目線分設定手段を備えたものとすることもできる。この着目線分設定手段は、道路縁モデル上に複数の着目基準点を生成するとともに、着目基準点を基準として道路縁モデルに対して垂直であってあらかじめ定められた長さを有する2次元の着目線分を設定する手段である。この場合、道路縁高算出手段は、着目線分を3次元地形モデルに配置したときに着目線分の近傍(線上を含む)にある複数の構成点を着目構成点として抽出し、着目構成点に係る高さ情報の統計値を道路縁高として算出する。
【0021】
本願発明の道路縁高付与装置は、着目線分分割手段と道路側線分設定手段を備えたものとすることもできる。この着目線分分割手段は、道路縁モデルを境界として着目線分を複数の分割線分に分割する手段であり、道路側線分設定手段は、分割線分の近傍(線上を含む)にある複数の構成点に係る高さ情報の統計値を分割線分代表高として算出するとともに、最も低い分割線分代表高に係る分割線分を道路側線分として設定する手段である。この場合、道路縁高算出手段は、道路側線分の近傍(線上を含む)にある複数の構成点を着目構成点として抽出したうえで道路縁高を算出する。
【0022】
本願発明の道路縁高付与装置は、分割線分のうち着目基準点を端点とする2以上の候補分割線分を抽出するとともに、候補分割線分のうち最も低い分割線分代表高に係る候補分割線分を道路側線分として設定したうえで、道路縁高を算出することもできる。
【0023】
本願発明の道路縁高付与装置は、分割線分の近傍(線上を含む)にある構成点に係る高さ情報の中央値を分割線分代表高として道路側領域を設定したうえで、道路縁高を算出することもできる。
【0024】
本願発明の道路縁高付与装置は、着目構成点に係る高さ情報のうちあらかじめ定められたパーセンタイル値を道路縁高として算出することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本願発明の道路縁高付与装置には、次のような効果がある。
(1)道路縁モデルを利用するため、自動的に道路縁高を付与することができる。その結果、オペレータ(作業者)の負担を軽減することができ、さらにデータ化作業にかかるコストを抑えることができるとともに、いわゆるヒューマンエラーの低減に貢献することができる。
(2)道路縁周辺にある屋根の高さを誤って抽出することが回避されるため、現状に即した道路縁高を付与することができる。
(3)現状に即した道路縁が付与され、すなわち現状に即した3D地形モデルが得られることから、道路施設等をより高度に管理することができ、また自動運転にとってより有益な地図情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施形態における本願発明の道路縁高付与装置の主な構成を示すブロック図。
【
図2】(a)は着目領域設定手段によって道路縁モデル上に一定の間隔で生成された着目基準点を模式的に示す平面モデル図、(b)は着目基準点を中心とする円で設定された着目領域を模式的に示す平面モデル図。
【
図3】着目領域分割手段が着目領域を分割することによって設定された第1の分割領域と第2の分割領域を模式的に示す平面モデル図。
【
図4】着目領域分割手段によって設定された第1の分割領域と第2の分割領域、第3の分割領域、第4の分割領域を模式的に示す平面モデル図。
【
図5】第1の実施形態における道路縁高付与装置の主な処理の流れの一例を示すフロー図。
【
図6】第2の実施形態における本願発明の道路縁高付与装置の主な構成を示すブロック図。
【
図7】着目基準点を基準として設定された着目線分を模式的に示す平面モデル図。
【
図8】着目線分分割手段が着目線分を分割することによって生成された第1の分割線分と第2の分割線分を模式的に示す平面モデル図。
【
図9】着目線分分割手段によって設定された第1の分割線分と第2の分割線分、第3の分割線分、第4の分割線分を模式的に示す平面モデル図。
【
図10】第2の実施形態における道路縁高付与装置の主な処理の流れの一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願発明の道路縁高付与装置の一例を、図に基づいて説明する。
【0028】
本願発明の道路縁高付与装置は、道路縁の上に複数の基準点(以下、「着目基準点」という。)を適当な間隔で設定するとともに、その着目基準点に基づいて所定の範囲を設定することを技術的特徴のひとつとしている。そして、この「所定の範囲」を設定するにあたっては、着目基準点に基づく領域(以下、「着目領域」という。)によって設定する実施形態(以下、「第1の実施形態」という。)と、着目基準点に基づく線分(以下、「着目線分」という。)によって設定する実施形態(以下、「第2の実施形態」という。)に大別することができる。そこで、第1の実施形態と第2の実施形態に分けてそれぞれ説明することとする。
【0029】
1.第1の実施形態
図1は、第1の実施形態における本願発明の道路縁高付与装置100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように道路縁高付与装置100は、着目領域設定手段101、道路縁高算出手段102、3次元地形モデル記憶手段108、道路縁モデル記憶手段109を含んで構成され、さらに着目領域分割手段103や道路側領域設定手段104を含んで構成することもできる。
【0030】
道路縁高付与装置100を構成する着目領域設定手段101、道路縁高算出手段102、着目領域分割手段103、道路側領域設定手段104は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバなどによって構成することができる。
【0031】
また、3次元地形モデル記憶手段108と道路縁モデル記憶手段109は、汎用的コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)の記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0032】
以下、第1の実施形態における本願発明の道路縁高付与装置100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0033】
(3次元地形モデル記憶手段)
3次元地形モデル記憶手段108は、「3D地形モデル」を記憶する手段である。ここで「3D地形モデル」とは、既述したとおり3次元座標を有する多数の構成点(つまり、3次元点群)によって構成されるモデルであり、DSMやDEMを例示することができるが、ランダム配置された単なる3次元点群も含まれる。
【0034】
(道路縁モデル記憶手段)
道路縁モデル記憶手段109は、「道路縁モデル」を記憶する手段である。ここで「道路縁モデル」とは、既述したとおり「道路縁」という属性情報と、その平面位置(座標情報)とを具備する2次元のデータであり、ポリラインなどデジタル化された道路縁のデータである。
【0035】
(着目領域設定手段)
着目領域設定手段101は、道路縁モデルの上に複数の着目基準点を生成する手段である。なお着目領域設定手段101は、
図2(a)に示すように道路縁モデルELの上に一定の間隔(あるいは、不定の間隔)で着目基準点PAを自動生成することもできるし、オペレータの操作で任意の位置に着目基準点を設定することもできる。さらに、一旦生成された着目基準点の位置を、オペレータの操作によって変更することもできる。
【0036】
また着目領域設定手段101は、2次元の所定領域(以下、「着目領域」という。)を設定する手段でもある。この着目領域は、着目基準点PAを基準とする領域であって、あらかじめ定められた大きさと形状を有する2次元の領域(平面領域)のことである。例えば、
図2(b)に示すように着目基準点PAを中心とする所定半径の円を着目領域RAとすることもできるし、そのほか着目基準点PAを中心とする所定寸法の楕円や多角形などを着目領域RAとすることもできる。
【0037】
(着目領域分割手段)
着目領域分割手段103は、道路縁モデルELを境界として着目領域RAを分割することによって、複数の領域(以下、「分割領域RS」という。)を設定する手段である。例えば
図3では、着目領域分割手段103が円形の着目領域RAを2分することによって、第1の分割領域RS01と第2の分割領域RS02を設定している。なお
図3に示す着目領域RAは、着目基準点PAを中心とする円形であり、当然ながら道路縁モデルELは着目基準点PAを通っていることから、第1の分割領域RS01と第2の分割領域RS02はそれぞれ同形で同面積の半円(中心角180°)とされる。もちろん、道路縁モデルELが折れている場合は同面積の半円とはならず、それぞれ面積が異なる扇形の分割領域が設定され、着目領域RA内で道路縁モデルELが複数個所で折れている場合は扇形とはならず、さらに着目領域RAが円形でないときもやはり扇形とはならない。いずれにしろ、着目領域RAはで道路縁モデルELによって分割される。
【0038】
(道路側領域設定手段)
図3に示すように、着目領域RAを3D地形モデルに配置すると、その着目領域RAにはいくつかの構成点PCが属することとなる。そして、構成点PCは高さ情報(以下、便宜上「高さ情報」を「標高値」とした例で説明する)を具備していることから、着目領域RAに属する構成点PCを利用すれば着目領域RAに係る着目基準点PAの標高値を求めることができる。なお、ここでいう「着目領域RAに属する」とは、構成点PCを着目領域RAに平面投影したときに、その構成点PCが着目領域RAの領域内に含まれる状態を意味する。
【0039】
ところで多くの場合、道路縁を挟んで一方が道路となり、その他方は道路ではない領域(以下、「一般領域」という。)となる。したがって、
図3に示すように着目領域RAを2つの分割領域RS(第1の分割領域RS01と第2の分割領域RS02)に分割した場合、どちらか一方を道路として選定したうえで、その道路とされた分割領域RS(以下、特に「道路側領域」という。)に属する構成点PCに基づいて着目基準点PAの標高値を求めることが望ましい。
【0040】
道路側領域設定手段104は、複数の分割領域RSの中から道路側領域を設定する手段である。以下、道路側領域設定手段104が道路側領域を設定する処理手順について詳しく説明する。まず道路側領域設定手段104は、分割領域RSに属する複数の構成点PCに係る標高値に基づいて、その分割領域RSを代表する標高値(以下、「分割領域代表高」という。)を算出する。このとき、複数の構成点PCに係る標高値の中央値を分割領域代表高としたり、構成点PCに係る標高値の平均値や最頻値、低標高値側パーセンタイル(後述する)といったその他の統計値を分割領域代表高としたり、あるいは単に構成点PCに係る標高値の最小値を分割領域代表高としたりすることができる。
【0041】
それぞれの分割領域RSに係る分割領域代表高が得られると、道路側領域設定手段104はそれら分割領域RSの中から1の分割領域RSを選定する。一般的に、道路の方が一般領域よりも標高値が低い。そこで道路側領域設定手段104は、最も小さい(低い)値を示す分割領域代表高を抽出し、その抽出された分割領域代表高に係る分割領域RSを選定するとともに道路側領域として設定する。
【0042】
ところで、
図3の例では着目領域分割手段103によって2つの分割領域RS(第1の分割領域RS01と第2の分割領域RS02)が設定されているが、着目領域分割手段103は3以上の分割領域RSを設定することもある。例えば
図4では、いわゆるT字路の交差点を示しており、比較的大きな半径の円によって着目領域RAが設定されているため、この場合の着目領域分割手段103は、3つの道路縁モデルELで着目領域RAを分割することによって、4つの分割領域RS(第1の分割領域RS01、第2の分割領域RS02、第3の分割領域RS03、第4の分割領域RS04)を設定している。
【0043】
3以上の分割領域RSが設定された場合、道路側領域設定手段104は、それぞれの分割領域RSについて分割領域代表高を算出したうえで、最も小さい(低い)値を示す分割領域代表高を抽出し、その抽出された分割領域代表高に係る分割領域RSを道路側領域として設定することができる。あるいは、道路側領域設定手段104は、3以上の分割領域RSの中から着目基準点PAに接する分割領域RS(以下、「候補分割領域」という。)を抽出したうえで、道路側領域を設定することもできる。
図4からも分かるように着目基準点PAに接する分割領域RSが道路側領域であることは明らかであり、そこで3以上の分割領域RSが設定された場合、着目基準点PAに接する分割領域RSを「候補分割領域」として抽出し、さらにこれら候補分割領域から選別して道路側領域を設定するわけである。
図4の例では、4つの分割領域RS(第1の分割領域RS01~第4の分割領域RS04)が設定されていることから、道路側領域設定手段104は着目基準点PAに接する第1の分割領域RS01と第2の分割領域RS02を候補分割領域として抽出するとともに、これら候補分割領域(つまり、第1の分割領域RS01と第2の分割領域RS02)に対して分割領域代表高を算出し、最も小さい標高値を示す分割領域代表高を抽出したうえで道路側領域(
図4では第2の分割領域RS02)を設定する。
【0044】
(道路縁高算出手段)
道路縁高算出手段102は、道路側領域設定手段104によって設定された道路側領域に基づいて「道路縁高」を算出する手段である。以下、道路縁高算出手段102が道路縁高を算出する処理手順について詳しく説明する。まず道路縁高算出手段102は、道路側領域に属する構成点PC(以下、特に「着目構成点」という。)を抽出する。そして、抽出された着目構成点の標高値を用いて道路縁高を算出する。このとき、道路縁高算出手段102によって1の着目構成点が抽出されたときは、その着目構成点に係る標高値をそのまま道路縁高とする。一方、2以上の着目構成点が抽出されたときは、2以上の着目構成点に係る標高値のうち特定の低標高側パーセンタイルとなる標高値を道路縁高とする。ここで低標高側パーセンタイルとは、従来用いられているパーセンタイルの概念のことであり、特に低い方から数えて特定%となる位置にある標本を示す概念である。例えば、200の標高値を用いて低い順から並べたとき、標高値が小さい側から数えて10番目の着目構成点は5パーセンタイルとなり、低標高側パーセンタイルを3パーセンタイルとして指定した場合は6番目の着目構成点が選出されることになるわけである。そのほか、2以上の着目構成点に係る標高値を統計処理した値(中央値や最頻値など)を道路縁高としたり、あるいは単に着目構成点に係る標高値の最小値を道路縁高としたりすることもできる。ここで得られた道路縁高は、対応する着目領域RAに係る着目基準点PAが道路縁高として付与される。
【0045】
ここまで複数の分割領域RSから選出された道路側領域に基づいて、道路縁高算出手段102が道路縁高を算出する処理手順について説明した。これに限らず道路縁高算出手段102は、着目領域RAに属する構成点PCをすべて着目構成点としたうえで、これら着目構成点による統計値(低標高側パーセンタイルや中央値、最頻値)などを道路縁高として算出する仕様とすることもできる。すなわちこのケースでは、着目領域RAを分割して分割領域RSを設定する処理や、道路側領域を設定する処理を実行することなく、単に着目領域RAに係る着目構成点を用いて道路縁高として算出し、したがってこの場合は着目領域分割手段103や道路側領域設定手段104を省略することができるわけである。
【0046】
(処理の流れ)
以下、
図5を参照しながら第1の実施形態における道路縁高付与装置100の主な処理について詳しく説明する。
図5は、第1の実施形態における道路縁高付与装置100の主な処理の流れの一例を示すフロー図である。なおこのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0047】
図5に示すように、まず道路縁モデル記憶手段109から道路縁モデルELを読み出し(
図1)、着目領域設定手段101が道路縁モデルEL上に複数の着目基準点を生成する(
図5のStep211)。さらに着目領域設定手段101は、着目基準点PAを基準とする着目領域RAを設定する(
図5のStep212)。
【0048】
着目領域RAが設定されると、着目領域分割手段103が複数の分割領域RSを設定する(
図5のStep213)。そして道路側領域設定手段104が、それぞれの分割領域RSについて分割領域代表高を算出し(
図5のStep214)、この分割領域代表高に基づいて道路側領域を設定する(
図5のStep215)。
【0049】
道路側領域が設定されると、道路縁高算出手段102がこの道路側領域に属する構成点PCを着目構成点として抽出し(
図5のStep216)、これら着目構成点に基づいて道路縁高を算出する(
図5のStep217)。そして、ここで得られた道路縁高は、対応する着目領域RAに係る着目基準点PAの道路縁高として付与される。なお、着目領域RAの設定(Step212)~道路縁高の算出(Step217)からなる一連の処理は、全ての着目基準点PAに対して実行する仕様とすることもできるし、ある特定区間(例えば、交差点~交差点など)を1単位として実行する仕様とすることもできる。この場合、特定区間内で代表する1の着目基準点PAに対してのみこの一連の処理(Step212~Step217)を実行して道路側領域(例えば、道路縁モデルELより左側)を設定し、その道路側領域側(例えば、左側)を当該特定区間内にある他の着目基準点PAに対して適用することができる。あるいは、特定区間内にある全部または一部の着目基準点PAに対して実行して道路側領域を設定し、より数が多かった側(例えば、左側)を当該特定区間内における道路側領域側(例えば、左側)として設定することもできる。
【0050】
2.第2の実施形態
続いて、本願発明の第2の実施形態について説明する。なお、本願発明の第1の実施形態と第2の実施形態は、着目領域RAを設定する手法において相違するものの、他の点については概ね共通する。そこで、ここまで説明した本願発明の第1の実施形態に関する内容と重複する説明は避け、本願発明の第2の実施形態に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.第1の実施形態」で説明したものと同様である。
【0051】
図6は、第2の実施形態における本願発明の道路縁高付与装置100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように道路縁高付与装置100は、着目線分設定手段105、道路縁高算出手段102、3次元地形モデル記憶手段108、道路縁モデル記憶手段109を含んで構成され、さらに着目線分分割手段106や道路側線分設定手段107を含んで構成することもできる。
【0052】
道路縁高付与装置100を構成する着目線分設定手段105、道路縁高算出手段102、着目線分分割手段106、道路側線分設定手段107は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバなどによって構成することができる。
【0053】
以下、第2の実施形態における本願発明の道路縁高付与装置100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0054】
(着目線分設定手段)
着目線分設定手段105は、道路縁モデルの上に複数の着目基準点を生成するとともに、この着目基準点PAを基準とする線分(以下、「着目線分」という。)を設定する手段である。この着目線分SAは、
図7に示すように道路縁モデルELに対して垂直であって着目基準点PAを通る線分であり、あらかじめ定められた長さで設定される線分である。また着目線分は、道路縁モデルELが配置される同一の平面上に設定される。
【0055】
(着目線分分割手段)
着目線分分割手段106は、道路縁モデルELを境界として着目線分SAを分割することによって、複数の線分(以下、「分割線分SS」という。)を設定する手段である。例えば
図8では、着目線分分割手段105が着目線分SAを2分することによって、第1の分割線分SS01と第2の分割線分SS02を設定している。なお
図8に示す着目線分SAは、その中点が着目基準点PAと一致していることから、第1の分割線分SS01と第2の分割線分SS02はそれぞれ同じ寸法(長さ)とされる。
【0056】
(道路側線分設定手段)
図8に示すように、着目線分SAを3D地形モデルに配置すると、その着目線分SAの線上や近傍にはいくつかの構成点PCが配置されることとなる。ここで「着目線分SAの近傍」とは、文字どおり着目線分SAの近い位置にあるという意味で、具体的には着目線分SAからあらかじめ定めた距離閾値より近い位置にある状態であり、例えば構成点PCから着目線分SAに対して設定した垂線の長さがこの距離閾値を下回るときはこの構成点PCは着目線分SAの近傍にあるとされる。
【0057】
既述したように、道路縁を挟んで一方が道路、その他方は一般領域となり、したがって
図8に示すように着目線分SAを2つの分割線分SS(第1の分割線分SS01と第2の分割線分SS02)に分割した場合、どちらか一方を道路として選定したうえで、その道路とされた分割線分SS(以下、特に「道路側線分」という。)の線上や近傍にある構成点PCに基づいて着目基準点PAの標高値を求めることが望ましい。
【0058】
道路側線分設定手段107は、複数の分割線分SSの中から道路側線分を設定する手段である。以下、道路側線分設定手段107が道路側線分を設定する処理手順について詳しく説明する。まず道路側線分設定手段107は、分割線分SSの線上や近傍にある複数の構成点PCに係る標高値に基づいて、その分割線分SSを代表する標高値(以下、「分割線分代表高」という。)を算出する。このとき、複数の構成点PCに係る標高値の中央値を分割線分代表高としたり、構成点PCに係る標高値の平均値や最頻値、低標高値側パーセンタイルといったその他の統計値を分割線分代表高としたり、あるいは単に構成点PCに係る標高値の最小値を分割線分代表高としたりすることができる。
【0059】
それぞれの分割線分SSに係る分割線分代表高が得られると、道路側線分設定手段107はそれら分割線分SSの中から1の分割線分SSを選定する。一般的に、道路の方が一般領域よりも標高値が低い。そこで道路側線分設定手段107は、最も小さい(低い)値を示す分割線分代表高を抽出し、その抽出された分割線分代表高に係る分割線分SSを選定するとともに道路側線分として設定する。
【0060】
ところで、
図8の例では着目線分分割手段106によって2つの分割線分SS(第1の分割線分SS01と第2の分割線分SS02)が設定されているが、着目線分分割手段106は3以上の分割線分SSを設定することもある。例えば
図9では、本線道路とこれに並行する側道を示しており、比較的長い寸法によって着目線分SAが設定されているため、この場合の着目線分分割手段106は、3つの道路縁モデルEL(そのうち1つはU字状に折り返す)で着目線分SAを分割することによって、5つの分割線分SS(第1の分割線分SS01、第2の分割線分SS02、第3の分割線分SS03、第4の分割線分SS04、第5の分割線分SS05)を設定している。
【0061】
3以上の分割線分SSが設定された場合、道路側線分設定手段107は、それぞれの分割線分SSについて分割線分代表高を算出したうえで、最も小さい(低い)値を示す分割線分代表高を抽出し、その抽出された分割線分代表高に係る分割線分SSを道路側線分として設定することができる。あるいは、道路側線分設定手段107は、3以上の分割線分SSの中から着目基準点PAを端点とする分割線分SS(以下、「候補分割線分」という。)を抽出したうえで、道路側線分を設定することもできる。
図9からも分かるように着目基準点PAを端点とする分割線分SSが道路側線分であることは明らかであり、そこで3以上の分割線分SSが設定された場合、着目基準点PAを端点とする分割線分SSを「候補分割線分」として抽出し、さらにこれら候補分割線分から選別して道路側線分を設定するわけである。
図9の例では、5つの分割線分SS(第1の分割線分SS01~第5の分割線分SS05)が設定されていることから、道路側線分設定手段107は着目基準点PAを端点とする第1の分割線分SS01と第2の分割線分SS02を候補分割線分として抽出するとともに、これら候補分割線分(つまり、第1の分割線分SS01と第2の分割線分SS02)に対して分割線分代表高を算出し、最も小さい値を示す分割線分代表高を抽出したうえで道路側線分(
図9では第2の分割線分SS02)を設定する。
【0062】
(第2の実施形態における道路縁高算出手段)
第2の実施形態における道路縁高算出手段102は、道路側線分設定手段107によって設定された道路側線分に基づいて「道路縁高」を算出する。以下、第2の実施形態における道路縁高算出手段102が道路縁高を算出する処理手順について詳しく説明する。まず道路縁高算出手段102は、道路側線分の線上や近傍にある構成点PC(第2の実施形態における「着目構成点」)を抽出する。そして、抽出された着目構成点の標高値を用いて道路縁高を算出する。このとき、道路縁高算出手段102によって1の着目構成点が抽出されたときは、その着目構成点に係る標高値をそのまま道路縁高とする。一方、2以上の着目構成点が抽出されたときは、2以上の着目構成点に係る標高値のうち特定の低標高側パーセンタイルとなる標高値を道路縁高とする。そのほか、2以上の着目構成点に係る標高値を統計処理した値(中央値や最頻値など)を道路縁高としたり、あるいは単に着目構成点に係る標高値の最小値を道路縁高としたりすることもできる。ここで得られた道路縁高は、対応する着目線分SAに係る着目基準点PAの道路縁高として付与される。
【0063】
ここまで複数の分割線分SSから選出された道路側線分に基づいて、道路縁高算出手段102が道路縁高を算出する処理手順について説明した。これに限らず道路縁高算出手段102は、着目線分SAの線上や近傍にある構成点PCをすべて着目構成点としたうえで、これら着目構成点による統計値(低標高側パーセンタイルや中央値、最頻値)などを道路縁高として算出する仕様とすることもできる。すなわちこのケースでは、着目線分SAを分割して分割線分RSを設定する処理や、道路側線分を設定する処理を実行することなく、単に着目線分SAに係る着目構成点を用いて道路縁高として算出し、したがってこの場合は着目線分分割手段106や道路側線分設定手段107を省略することができるわけである。
【0064】
(処理の流れ)
以下、
図10を参照しながら第2の実施形態における道路縁高付与装置100の主な処理について詳しく説明する。
図10は、第2の実施形態における道路縁高付与装置100の主な処理の流れの一例を示すフロー図である。なおこのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0065】
図10に示すように、まず道路縁モデル記憶手段109から道路縁モデルELを読み出し(
図6)、着目線分設定手段105が道路縁モデルEL上に複数の着目基準点PAを生成する(
図10のStep221)。さらに着目線分設定手段105は、着目基準点PAを基準とする着目線分SAを設定する(
図10のStep222)。
【0066】
着目線分SAが設定されると、着目線分分割手段106が複数の分割線分SSを設定する(
図10のStep223)。そして道路側線分設定手段107が、それぞれの分割線分SSについて分割線分代表高を算出し(
図10のStep224)、この分割線分代表高に基づいて道路側線分を設定する(
図10のStep225)。
【0067】
道路側線分が設定されると、道路縁高算出手段102が道路側線分の線上や近傍にある構成点PCを着目構成点として抽出し(
図10のStep226)、これら着目構成点に基づいて道路縁高を算出する(
図10のStep227)。そして、ここで得られた道路縁高は、対応する着目線分SAに係る着目基準点PAの道路縁高として付与される。なお、着目線分SAの設定(Step222)~道路縁高の算出(Step227)からなる一連の処理は、全ての着目基準点PAに対して実行する仕様とすることもできるし、ある特定区間(例えば、交差点~交差点など)を1単位として実行する仕様とすることもできる。この場合、特定区間内で代表する1の着目基準点PAに対してのみこの一連の処理(Step222~Step227)を実行して道路側線分(例えば、道路縁モデルELより左側)を設定し、その道路側線分(例えば、左側)を当該特定区間内にある他の着目基準点PAに対して適用することができる。あるいは、特定区間内にある全部または一部の着目基準点PAに対して実行して道路側線分を設定し、より数が多かった側(例えば、左側)を当該特定区間内における道路側線分(例えば、左側)として設定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明の道路縁高付与装置は、道路施設をはじめとする様々な施設の管理や、自動運転に使用される地図情報として、特に好適に利用することができる。また本願発明によれば、高齢者や車いすにとって有益な段差情報を高い精度で提供することができ、さらに防災計画にも有効活用することができるなど、本願発明の道路縁高付与装置は、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0069】
100 本願発明の道路縁高付与装置
101 (道路縁高付与装置の)着目領域設定手段
102 (道路縁高付与装置の)道路縁高算出手段
103 (道路縁高付与装置の)着目領域分割手段
104 (道路縁高付与装置の)道路側領域設定手段
105 (道路縁高付与装置の)着目線分設定手段
106 (道路縁高付与装置の)着目線分分割手段
107 (道路縁高付与装置の)道路側線分設定手段
108 (道路縁高付与装置の)3次元地形モデル記憶手段
109 (道路縁高付与装置の)道路縁モデル記憶手段
EL 道路縁モデル
PA 着目基準点
PC 構成点
RA 着目領域
RS 分割領域
SA 着目線分
SS 分割線分