IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 曙機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-裁断機および裁断方法 図1
  • 特開-裁断機および裁断方法 図2
  • 特開-裁断機および裁断方法 図3
  • 特開-裁断機および裁断方法 図4
  • 特開-裁断機および裁断方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090053
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】裁断機および裁断方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/08 20060101AFI20230622BHJP
   B26D 1/06 20060101ALI20230622BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20230622BHJP
   B65H 23/04 20060101ALI20230622BHJP
   B65H 35/04 20060101ALI20230622BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B26D3/08 Z
B26D1/06
B26D7/06 Z
B65H23/04
B65H35/04
B26D5/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204790
(22)【出願日】2021-12-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】391003048
【氏名又は名称】曙機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】久米原 勇也
(72)【発明者】
【氏名】福島 達也
【テーマコード(参考)】
3C027
3F104
【Fターム(参考)】
3C027HH09
3C027HH12
3F104AA01
3F104AA08
3F104JC06
3F104KA11
(57)【要約】
【課題】廃棄対象(滓)となる素材を発生させることなく、ハーフカットによって所定寸法および所望する間隔で素材を裁断する。
【解決手段】一本刃32によるハーフカットを行う裁断機10において、仮基材d0にゴムなどの基材Dを貼り付け、送りローラ40が裁断機本体10のテーブル70に沿って仮基材(両面テープなど)d0と一体的な基材D’を送り出す。一方、積層化機構60によって、引張ローラ50が離型紙などの基材d1をテーブル70へ送り出し、テーブル70に沿って基材d1上に搭載された基材D”を、一本刃32により所定ピッチPでハーフカットを行う。そして、送りローラ40と引張ローラ50との回転駆動量を相違させ、基材d1の送り量をより多くすることにより、ハーフカット後の基材D”において間隔Mを所定間隔で形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着によって仮基材に貼り付けた長尺の素材を送り出す送りローラと、
送り出された前記素材を、基材の表面に搭載させる積層化機構と、
前記基材に搭載された前記素材を、切断面上でハーフカットする一本刃と、
前記基材を送り出すとともに、ハーフカットされて前記基材に貼り付けられた前記素材を搬出する引張ローラとを備え、
前記送りローラによる素材送り量と比べ、前記引張ローラによる基材送り量を多くすることで、基材表面上のハーフカットされた前記素材間に、あらかじめ定められた間隔を設けることが可能であることを特徴とする裁断機。
【請求項2】
所定ピッチで前記素材をハーフカットし、
定められた回数分ハーフカットを行う度に、前記引張ローラによる基材送り量をより多くすることを特徴とする請求項1に記載の裁断機。
【請求項3】
前記積層化機構による前記素材の搭載位置が、前記送りローラと前記一本刃との間にあることを特徴とする請求項1または2に記載の裁断機。
【請求項4】
前記積層化機構による前記素材の搭載位置が、前記一本刃の切断位置の傍に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の裁断機。
【請求項5】
前記積層化機構が、傾斜面が所定の距離間隔を空けて互いに向かい合う一対の傾斜部を備え、
前記一対の傾斜部の間に形成される前記切断面に沿った隙間が、前記一本刃の切断位置の傍に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の裁断機。
【請求項6】
前記引張ローラが、前記素材を上方から押し付け、上下方向に移動可能な第1、第2の可動ローラと、前記基材を支持する固定ローラとを備え、
前記第1、第2の可動ローラが、単一のアクチュエータにより、連動して上下方向に移動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の裁断機。
【請求項7】
前記アクチュエータからの駆動力を前記第1の可動ローラへ伝達する第1の動力伝達機構と、
前記アクチュエータからの駆動力を前記第2の可動ローラへ伝達する第2の動力伝達機構とを備え、
前記第1の動力伝達機構が、連結シャフトを介して前記第2の動力伝達機構と連結していることを特徴とする請求項6に記載の裁断機。
【請求項8】
前記素材が、前記送りローラと前記引張ローラとの間で、前記切断面に沿って搬送されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の裁断機。
【請求項9】
粘着により仮基材に貼り付けた長尺の素材を送り出し、
基材を送り出すとともに、送り出された前記素材を前記基材の表面に搭載させ、
前記基材に搭載された前記素材を、一本刃により切断面上でハーフカットし、
ハーフカットされて前記基材に貼り付けられた前記素材を搬出する裁断方法であって、
素材送り量と比べ、基材送り量を多くすることで、基材表面上のハーフカットされた前記素材間に、あらかじめ定められた間隔を設けることを特徴とする裁断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻かれた長尺の素材などを切断する裁断機に関し、特に、ハーフカット可能な裁断機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロール状に巻かれたゴム、樹脂フィルムなどの素材を型抜きする裁断機では、粘着性のある基材(剥離紙)表面に素材を貼り付け、ロールフィーダ(ローラ)によって、素材を切断箇所へ送り出し、ハーフカットによる型抜きを行う。そして、型抜きされた素材が粘着した状態で基材を搬出し、巻き取る(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-219394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した裁断機では、所望する寸法および間隔で基材表面に貼り付けらえた素材を得ることができる一方、廃棄対象(滓)となる裁断後の素材を搬出し、巻き取る構成が必須となる。
【0005】
したがって、廃棄対象(滓)となる素材を発生させることなく、ハーフカットによって所定寸法および所望する間隔で素材を裁断できることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である裁断機は、長尺の素材(ロール状の素材など)を一本刃によりハーフカットし、素材を所定寸法にするとともに、素材間に所望の間隔を設けることを可能にする裁断機であって、裁断機は、粘着によって仮基材に貼り付けた長尺の素材を送り出す送りローラと、送り出された素材を、基材の表面に搭載させる積層化機構と、基材に搭載された素材を、切断面上でハーフカットする一本刃と、基材を送り出すとともに、ハーフカットされて基材に貼り付けられた素材を搬出する引張ローラとを備える。ここで、「粘着によって仮基材に貼り付けた長尺の素材」とは、仮基材あるいは素材どちらかの(あるいは両方の)粘着性によって素材が仮基材に貼り付くことを表す。基材および素材においても、どちらか一方に(あるいは両方に)粘着性をもつ構成にすればよい。
【0007】
本発明では、仮素材に送りローラによる素材送り量と比べ、引張ローラによる基材送り量を多くすることで、基材表面上のハーフカットされた素材間に、あらかじめ定められた間隔を設けることが可能である。積層化機構によって、基材に搭載された素材は、ハーフカット前において素材に対して摺動可能なように構成し、ハーフカット後に貼り付け状態にすることができる。例えば、弾性発泡体などの部材を、一本刃による裁断のときに素材上から当てる、接触させる構成などにより、一本刃の引張ローラ側にある素材を基材表面に貼り付けることが可能である。一本刃による裁断は、引張ローラによる基材送りが終了するまで待機すればよい。
【0008】
例えば、所定ピッチで素材をハーフカットし、定められた回数分ハーフカットを行う度に、引張ローラによる基材送り量をより多くすることが可能である。引張ローラによる基材送り量をより多くするとき、送りローラと一本刃の動作を引張ローラの動作終了に合わせてタイミング調整することが可能である。
【0009】
本発明の他の一態様である裁断方法は、粘着によって仮基材に貼り付けた長尺の素材を送り出し、基材を送り出すとともに、送り出された素材を基材の表面に搭載させ、基材に搭載された素材を、一本刃により切断面上でハーフカットし、ハーフカットされて基材に貼り付けられた素材を搬出する裁断方法であって、素材送り量と比べ、基材送り量を多くすることで、基材表面上のハーフカットされた素材間に、あらかじめ定められた間隔を設ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、廃棄対象(滓)となる素材を発生させることなく、ハーフカットによって所定寸法および所望する間隔で素材を裁断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態である裁断機の概略的構成図である。
図2】裁断機本体の送りローラ付近を部分的に側面側から示した概略的構成図である。
図3】裁断機本体の積層化機構付近を部分的に側面側から示した概略的構成図である。
図4】引張ローラおよびその周囲の機構を示した概略的構成図である。
図5】送りローラ、引張ローラおよび一本刃の動作タイミングチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態である裁断機について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態である裁断機の概略的構成図である。
【0014】
裁断機10は、刃部30を設けた裁断機本体20を備え、ロール状の素材100を裁断機本体20へ送り出し、刃部30により裁断(切断)する。そして、裁断後の素材(以下、製品素材という)200をリール210により巻き取る。素材100は、ここではゴムや樹脂フィルムなどから成る。
【0015】
裁断機10は、ロール状の素材100とともに、リール130に巻かれたロール状の仮基材120と、リール170に巻かれたロール状の基材(以下、離型紙という)160とを設置している。仮基材120は、少なくともその一方の表面が粘着性のある素材から成り、ここでは下面に台紙を貼り付けた両面テープとして構成される。また、基材160は、ここでは離型紙(剥離紙)として構成されている。
【0016】
裁断機本体20には、ロール状に巻かれた素材100および仮基材120を裁断機本体20側(下流側)へ引き出し、刃部30側(下流側)へ送り出すローラ(以下、送りローラという)40が設けられている。ロール状の素材100は、ローラ対で構成される仮貼り付け機構80により、仮基材120の表面に貼り付けられ、裁断機本体20のテーブル70の表面に沿って移動する。テーブル70には図示しない当て板などが搭載され、その表面70Sが切断面として構成される。
【0017】
素材100と仮基材120の幅は、ここでは同一あるいは仮基材120の幅の方が狭く、素材100は、仮基材120と一体的に1枚のシート状になって搬送される。以下では、巻き出されて搬送される素材100および仮基材120を、それぞれ、必要に応じて符号「D」、符号「d0」で表す。また、仮基材120の表面に貼り付けられた状態で搬送される素材100を、必要に応じて符号「D’」で表す。なお、粘着性のある仮基材120に素材100を貼り付ける代わりに、粘着性のある素材100に対して粘着性のない仮基材120を貼り付ける構成にしてもよい。この場合、粘着性のある素材100を仮基材120の幅より狭くしてもよい。
【0018】
送りローラ40は、下側の固定ローラ40Aと上下方向移動可能な上側の可動ローラ40Bとを備え、素材D’を軸回転しながら矜持し、刃部30の下方へ送り出すロールフィーダとして構成される。送りローラ40は、図示しないサーボモータなどのアクチュエータによって駆動制御される。一方、リール170に巻かれたロール状の基材160は、ローラ91~95を経由して、テーブル70の切断面70Sに送り出される。基材160は、ここでは仮基材120によって粘着性をもった素材100と寸法(幅)が同じあるいは素材100よりも幅が広く、以下では、必要に応じて基材160を符号「d1」で表す。なお、粘着性のある基材160に対して粘着性のない素材100を貼り付ける構成にしてもよい。この場合、粘着性のある基材160の幅を素材100より広くすればよい。
【0019】
裁断機本体20には、積層化機構60が設けられている。積層化機構60は、素材D’が貼り付けられている仮基材(両面テープ)d0から、裏面側の台紙を剥離させるとともに、貼り合わせ可能なように、素材D’を基材d1の表面に重ねさせる構造をもつ。素材D’は、基材d1に搭載された状態で、切断面70Sに沿って搬送される。以下では、貼り合わせ後の素材Dを、必要に応じて符号「D”」で表す。
【0020】
図2は、裁断機本体20の送りローラ40付近を部分的に側面側から示した概略的構成図である。図3は、裁断機本体20の積層化機構60付近を部分的に側面側から示した概略的構成図である。ただし、ここでは素材Dの厚さを誇張して描いている。また、図2では、可動ローラ40Bが上方へ退避した状態を示している。
【0021】
刃部30は、一本刃(例えばトムソン刃)32を備え(図2参照)、素材D”の幅方向(搬送方向に垂直な方向)に沿うように、取り付けられている。また、スポンジなどによって構成される弾性発泡体(跳ね出し)33が、一本刃32の側面に取り付けられている。刃部30は、図示しない駆動機構(例えばクランク機構あるいは油圧機など)によって上下方向に移動可能であり、所定のタイミングで昇降する。
【0022】
刃部30の上下移動を制御する制御部85(図1参照)は、刃部30の最下点位置を調整可能であり一本刃32の最降下点の位置が基材d1の表面と一致するように、刃部30の昇降を制御する。これにより、基材d1は切断されず、素材Dのみ切断されるハーフカットが行われる。
【0023】
図3に示すように、積層化機構60は、所定間隔離れて互いに向かい合う傾斜面62S、64Sをそれぞれ形成し、ともにナイフエッジ形状である一対の傾斜部62、64を含む。傾斜部62、64との間には、テーブル70の表面(切断面70S)に沿って隙間CPが形成されている。
【0024】
送りローラ40によって搬送される素材D’が隙間CP付近まで搬送されると、上述したように、両面テープで構成される仮基材d0から台紙が剥がれる。台紙は、傾斜部62の先端部62Tから反る方向に向けて剥がれ、リール150(図1参照)によって巻かれる。以下、素材D’から剥がされた仮基材d1の一部(台紙)を、必要に応じて符号「d2」で表す。
【0025】
素材D’から剥離した仮基材の一部d2は、傾斜部62と傾斜部64との間を通ってテーブル70から離れていく。一方、テーブル70側へ搬送される基材d1は、傾斜部62、64との間を通ってテーブル70の表面側に搬送される。そして、切断面70Sに沿って移動するハーフカット対象の素材D’が、基材d1の表面に搭載される。このような素材D’の基材d1への乗り継ぎ(積層化)が、一本刃32によるハーフカット位置(以下、切断位置という)Gの傍に形成された隙間CPにおいて行われる。
【0026】
ここで、ハーフカットされる直前の素材D’は、粘着性のある基材d1の表面に搭載されているが、基材d1は素材D’に対して摺動可能な状態にある。一本刃32とともに昇降する弾性発泡体33が素材D’を基材d1の表面に押し付けることにより、ハーフカット後の素材D”が基材d1に貼り付けられた状態となり、その後一体的に搬送される。
【0027】
図1を参照すると、引張ローラ50は、ハーフカットされた素材D”を軸回転しながら矜持し、素材D”をリール210側(下流側)へ送り出し、搬出する。それと同時に、引張ローラ50は、リール170に巻かれた基材d1を、積層化機構60およびテーブル70に向けて送り出す。素材D”は、巻取機構(図示せず)によってリール210によって巻き取られる。素材D’から剥離された仮基材の一部(両面テープの台紙)d2は、ローラ95~99を介して、図示しない巻取機構によりリール150に巻かれる。
【0028】
図4は、引張ローラ50およびその周囲の機構を示した概略的構成図である。ここでは、素材D”の搬送方向下流側から見た図を示している。
【0029】
引張ローラ50は、上下方向に移動可能な一対の可動ローラ50A1、50A2と、可動ローラ50A1、50A2と向かい合う固定ローラ50Bとを備える。可動ローラ50A1、50A2が素材D”を上面側から押し付け、固定ローラ50Bが素材D”を裏面側(基材d1側)から支持することによって、素材D”に適度なテンションを掛ける。
【0030】
可動ローラ50A1、50A2を軸支するシャフト55は、その両側に配置された動力伝達機構58A、58Bと連結する。動力伝達機構58A、58Bは、ここではラック&ピニオンギアによって構成されている。可動ローラ50A1、50A2は、動力伝達機構58A、58Bのラックの動きにそれぞれ伴って上下方向に移動する。動力伝達機構58A、58Bの上方には、可動ローラ50A1、50A2の移動を制限するストッパー54A、54Bが、それぞれ設けられている。
【0031】
サーボモータ56は、動力伝達機構58Aのピニオンギアと連結するとともに、2つの動力伝達機構58A、58B両方を駆動するアクチュエータとして構成されている。具体的には、動力伝達機構58A、58Bが、シャフト55と平行な連結シャフト52の両端と連結し、動力伝達機構58Bのラックは、サーボモータ56の駆動によって動力伝達機構58Aのラックと同じ移動量だけ上下方向に移動する。
【0032】
このような連結機構により、可動ローラ50A1、50A2は、1つのサーボモータ56によって、一体的に上下方向に移動する。また、サーボモータ56は、ハーフカットされた素材D”に対して適切な張力を与えるため、トルク制御に従って可動ローラ58A1、58A2を上下方向に移動させる。固定ローラ50Bは、サーボモータ57によって駆動される。
【0033】
本実施形態における裁断機10では、一本刃によるハーフカットと、ハーフカット直前における積層化(重ね合わせ)と、送りローラ40、引張ローラ40の軸回転制御を行うことによって、廃棄対象となる素材部分を発生させることなく、型抜きと同様の製品素材を作り出す。以下、これについて詳述する。
【0034】
図5は、送りローラ40、引張ローラ50および一本刃32の動作タイミングチャートを示した図である。
【0035】
一本刃32による切断は、あらかじめ定められたピッチP(図2参照)で行われる。制御部80(図1参照)は、送りローラ40、引張ローラ50の回転開始タイミング(同期)および回転速度を制御し、素材D’(D”)を間欠的に移動させる。
【0036】
すなわち、素材D”がピッチPだけ進む、すなわち切断位置に到達すると、送りローラ40、引張ローラ50を停止させて一本刃32を降下させる。そして、ハーフカット後、送りローラ40、引張ローラ50を再び駆動させる。図5では、送りローラ40、引張ローラ50が周期T1に従って駆動されている。
【0037】
ピッチPに従って素材D”をハーフカットしている期間、送りローラ40、引張ローラ50の駆動量は等しく、送りローラ40による素材D’の送り量と引張ローラ50による基材d1の送り量は同じ量になる。そのため、ハーフカット後の素材D”の切断面両側に隙間は生じず、実質的に素材D”は連なった状態にある。
【0038】
一方、送りローラ40、引張ローラ50の駆動量を相違させることにより、ハーフカット後の素材D”に対し、あらかじめ定められた間隔を設けることができる。具体的には、送りローラ40の駆動時間よりも引張ローラ50の駆動時間を長くする。
【0039】
上述したように、ハーフカットを行う前の素材D’は、基材d1の表面に搭載された状態にあって、基材d1に貼り付けられた状態にない。したがって、送りローラ40の停止中に引張ローラ50を軸回転させると、基材d1は、素材D’に対して下流側へ移動していく。図3では、基材d1の移動とともに移動していくハーフカット後の素材部分を符号「D”2」で表し、ハーフカット後も基材D’と連なる素材部分を符号「D”1」で表している。
【0040】
送りローラ40と比べて引張ローラ50の駆動時間を長くすることによって、基材d1が駆動時間差だけ下流側に向けてより長く移動する。そして、引張ローラ50が停止すると、一本刃32が降下し、素材D”と間隔を空けた状態で次のハーフカットが行われる。図5では、送りローラ40の駆動時間、引張ローラ50の駆動時間をt1、t2(t2>t1)で表している。また、間隔を設けるときのハーフカット時間間隔T1’は上述した周期T1より長い。
【0041】
ここでは、素材D’を3回ハーフカットする度に間隔Mを設けるように構成されている(図2参照)。送りローラ40および引張ローラ50の駆動および同期タイミングの調整、そして一本刃32の昇降動作およびそのタイミング調整は、制御部85によって実行される。このハーフカット処理を継続することにより、一定の距離間隔で間隔Mを設けた素材D”を基材d1に貼り付けた製品素材200を得ることができる。
【0042】
このように本実施形態によれば、一本刃32によるハーフカットを行う裁断機10において、(ここでは両面テープである)仮基材d0に対してゴムなどの基材Dを貼り付け、送りローラ40が裁断機本体10のテーブル70に沿って貼り付けられた基材D’を送り出す。一方、積層化機構60によって、引張ローラ50が離型紙などの基材d1をテーブル70側へ送り出し、素材D’がテーブル70に沿って基材d1上に搭載され、搭載された状態の基材D”を、一本刃32によりハーフカットする。
【0043】
そして、送りローラ40と引張ローラ50との回転駆動量、すなわち素材D’のテーブル70に沿った送り量と、基材d1のテーブル70に沿った送り量を相違させ、基材d1の送り量をより多くすることにより、ハーフカット後の基材D”において間隔Mを所定の距離間隔で設ける。
【0044】
素材D’を基材d1へ搭載する重ね合わせをハーフカット直前に行うことにより、間隔Mの長さ、ハーフカットのピッチを任意に調整可能となり、所望する寸法で製品素材200を得ることができる。このとき、従来の裁断機のように、廃棄対象となる裁断された基材が発生しない。
【0045】
基材d1に対して素材D’を摺動させながら引張ローラ50の駆動時間t2を送りローラ40の駆動時間t1より長くするように構成されているが、積層化機構60が、ハーフカットを行う切断位置Gの傍に設けられていることにより、精度よく定められた長さの隔Mを形成することが可能である。
【0046】
したがって、素材Dの材質、素材Dの使用用途などに応じて、間隔Mの長さおよび素材Dの寸法を、途中で切り替える、あるいは任意に設定変更することができる。なお、積層化機構60は、切断位置Gの直前に限定されず、送りローラ40側の位置であればよく、例えば、送りローラ40よりも切断位置Gに近い箇所に形成すればよい。
【0047】
引張ローラ50の可動ローラ50A1、50A2は、単一のサーボモータ56によってその上下方向の位置が制御される。そのため、積層化機構60による素材Dの基材d1表面への搭載、間隔Mを設けるための送りローラ40と引張ローラ50の駆動制御を行うとき、適切なテンションを素材D”にかけて搬出することができる。
【0048】
基材d0は両面テープに限定されず、一方の表面に粘着性のある基材d1を積層化機構60によって素材D’に重ねる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 裁断機
30 刃部
32 一本刃
40 送りローラ
50 引張ローラ
60 積層化機構
D 素材
d0 仮基材
d1 基材



図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着によって仮基材に貼り付けた長尺の素材を送り出す送りローラと、
送り出された前記素材を、テーブル上の切断面に沿って形成される隙間において、前記仮基材から剥がし、基材の表面に前記素材を搭載させる積層化機構と、
前記素材の搬送方向に垂直な幅方向に沿う一本刃であって、前記基材に摺動可能に搭載された前記素材を、切断面上でハーフカットする一本刃と、
前記基材を送り出し、ハーフカットされて前記基材と一体的に搬送されるように貼り付けられた前記素材を搬出する引張ローラと
前記送りローラと前記引張ローラとを駆動制御し、前記素材を間欠的に移動させる制御部とを備え、
前記制御部が、前記送りローラによる素材送り量と比べ、前記引張ローラによる基材送り量を多くすることで、基材表面上のハーフカットされた前記素材間に、あらかじめ定められた間隔を設けることが可能であることを特徴とする裁断機。
【請求項2】
所定ピッチで前記素材をハーフカットし、
前記制御部が、定められた回数分ハーフカットを行う度に、前記引張ローラによる基材送り量をより多くすることを特徴とする請求項1に記載の裁断機。
【請求項3】
前記隙間が、前記送りローラよりも、前記一本刃の切断位置近くに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の裁断機。
【請求項4】
前記隙間が、前記一本刃の切断位置の傍に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の裁断機。
【請求項5】
前記積層化機構が、前記切断面に対して傾斜する傾斜面が所定の距離間隔を空けて互いに向かい合う一対の傾斜部を備え、
前記隙間が、前記一対の傾斜部の間に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の裁断機。
【請求項6】
前記素材が、前記送りローラと前記引張ローラとの間で、前記切断面に沿って搬送されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の裁断機。
【請求項7】
送りローラによって、粘着により仮基材に貼り付けた長尺の素材を送り出し、
テーブル上の切断面に沿って形成される隙間において、送り出された前記素材を前記仮基材から剥がし、基材の表面に前記素材を搭載させ、
前記素材の搬送方向に垂直な幅方向に沿う一本刃によって、前記基材に摺動可能に搭載された前記素材を、切断面上でハーフカットし、
引張ローラによって、前記基材を送り出し、ハーフカットされて前記基材と一体的に搬送されるように貼り付けられた前記素材を搬出し、
制御部によって、前記送りローラと前記引張ローラとを駆動制御し、前記素材を間欠的に移動させる裁断方法であって、
素材送り量と比べ、基材送り量を多くすることで、基材表面上のハーフカットされた前記素材間に、あらかじめ定められた間隔を設けることを特徴とする裁断方法。