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  • 特開-スラブの振動低減構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090103
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】スラブの振動低減構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/43 20060101AFI20230622BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20230622BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
E04B5/43 H
E04B5/02 L
E04B1/98 E
E04B1/98 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204885
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】521552419
【氏名又は名称】山下建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲留 康一
(72)【発明者】
【氏名】山本 将敬
(72)【発明者】
【氏名】山下 徹
(72)【発明者】
【氏名】上野 和也
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DG01
2E001EA05
2E001FA01
2E001FA02
2E001FA15
2E001GA51
2E001LA01
2E001LA12
(57)【要約】
【課題】従来よりも容易に振動を抑制することができるスラブの振動低減構造を提供する。
【解決手段】本発明のスラブの振動低減構造は、複数の階層を有する既存の建築物を対象として、所定の階層における下階スラブ10の上面から上階スラブ20の下面の間に支柱1を設けて、少なくとも一方のスラブ10、20の振動を低減し、支柱1の下端は下階スラブ10の上面に固定され、支柱1の上端には支柱1の高さを調整可能な高さ調整機構2が設置され、高さ調整機構2の上面は上階スラブ20の下面を支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階層を有する既存の建築物を対象として、所定の階層における下階スラブの上面から上階スラブの下面の間に支柱を設けて、少なくとも一方のスラブの振動を低減し、
支柱下端は下階スラブの上面に固定され、支柱の上端には支柱の高さを調整可能な高さ調整機構が設置され、
高さ調整機構の上面は上階スラブの下面を支持することを特徴とするスラブの振動低減構造。
【請求項2】
請求項1に記載のスラブの振動低減構造であって、
支柱の上端に設けられた高さ調整機構は上階スラブと天井との間に配置されており、
天井には、支柱の周囲に位置させて、高さ調整機構を操作可能とすべく開口部が設けられていることを特徴とするスラブの振動低減構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスラブの振動低減構造であって、
下階スラブの上面には治具がアンカーで固定され、
支柱の下端部は治具とボルトで接合されることで固定されていることを特徴とするスラブの振動低減構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のスラブの振動低減構造であって、
複数の支柱が直線状に配置され、
直線状に配置された一連の支柱の高さ調整機構の上に、一連の支柱の設置範囲の全長に亘って直線状のスペーサが配置され、
支柱の上端の高さ調整機構と上階スラブの下面とは、スペーサを介して接合されることを特徴とするスラブの振動低減構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のスラブの振動低減構造であって、
支柱の上端の高さ調整機構と上階スラブの下面との間に、緩衝材が挟まれていることを特徴とするスラブの振動低減構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブの振動低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下階スラブと上階スラブとの間に支柱を設けてスラブの振動を低減することが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のものでは、支柱の中央に高さ調整機構を設けて支柱を伸縮可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-41684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来よりも容易に振動を抑制することができるスラブの振動低減構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]上記目的を達成するため、本発明のスラブの振動低減構造は、
複数の階層を有する既存の建築物を対象として、所定の階層における下階スラブの上面から上階スラブの下面の間に支柱を設けて、少なくとも一方のスラブの振動を低減し、
支柱下端は下階スラブの上面に固定され、支柱の上端には支柱の高さを調整可能な高さ調整機構が設置され、
高さ調整機構の上面は上階スラブの下面を支持することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、高さ調整機構が支柱の上端に設けられているため、高さ調整機構で高さ調整を行うときに支柱の自重を受けることがなく、高さ調整機構の高さ調整を容易に行うことができる。また、本発明によれば、高さ調整が容易であるため、スラブの振動も従来よりも容易に低減することができる。
【0007】
[2]また、本発明においては、支柱の上端に設けられた高さ調整機構は上階スラブと天井との間に配置されており、天井には、支柱の周囲に位置させて、高さ調整機構を操作可能とすべく開口部が設けられていることが好ましい。
【0008】
かかる構成によれば、高さ調整機構を天井裏に隠すことができ、室内の美観を保つことができる。また、高さ調整機構を操作するための開口を天井に設ければよいため、床に設ける場合と比較して、床に開口を設けることによる段差が形成されることがなく、歩行の邪魔となることを避けることができる。
【0009】
[3]また、本発明においては、下階スラブの上面には治具がアンカーで固定され、支柱の下端部は治具とボルトで接合されることで固定されていることが好ましい。
【0010】
[4]また、本発明においては、複数の支柱が直線状に配置され、直線状に配置された一連の支柱の高さ調整機構の上に、一連の支柱の設置範囲の全長に亘って直線状のスペーサが配置され、支柱の上端の高さ調整機構と上階スラブの下面とは、スペーサを介して接合されることが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、直線状に配置された複数の支柱でスペーサを介してスラブを支持するため、スラブを点ではなく線で支持することができ、スラブの振動をより効果的に低減することができる。
【0012】
[5]また、本発明においては、柱の上端の高さ調整機構と上階スラブの下面との間に、緩衝材が挟まれていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発明のスラブの振動低減構造の実施形態を示す説明図。
図2】本実施形態のスラブの振動低減構造において支柱が直線状に並ぶ状態を示す説明図。
図3】発明のスラブの振動低減構造の他の実施形態を示す説明図。
図4】他の実施形態のスラブの振動低減構造においてスペーサの固定状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1,2を参照して、発明のスラブの振動低減構造の実施形態を説明する。本実施形態のスラブの振動低減構造は、複数の階層を有する既存の建築物において、近くを走行する鉄道や自動車などの影響によって共振するスラブの振動を低減させるために適用されるものである。
【0015】
本実施形態のスラブの振動低減構造は、下階スラブ10の上面に起立させた複数の角筒状の支柱1(なお、支柱1は円筒状であってもよい)と、支柱1の上端に設けられたスクリュージャッキからなる高さ調整機構2と、高さ調整機構2の上端に配置されたスペーサ3と、スペーサ3と上階スラブ20との間に配置された薄型の緩衝材4とを備えている。
【0016】
下階スラブ10及び上階スラブ20は、スラブ本体11,21と、スラブ本体11,21を下方から支える小梁12,22と、を備えている。図2に示すように、複数の支柱1は、下階スラブ10の小梁12(又は大梁であってもよい)の上に位置するようにスラブ本体11上に等間隔で直線状に配置されている。なお、図2では、支柱1が2本しか描かれていないが、支柱1は3本以上あってもよい。
【0017】
支柱1の下端部は、下階スラブ10のスラブ本体11にアンカー5で固定された治具6にボルト7で接合されている。
【0018】
また、本実施形態のスラブの振動低減構造が用いられる建築物においては、下階スラブ10の小梁12と、上階スラブ20の小梁22とは上面視で同一箇所に位置するように配置されている。スペーサ3は、角筒形状であり、上階スラブ20の小梁22に沿うように小梁22の下面にゴムなどの緩衝材4を挟んで配置されている。スペーサ3は、複数の高さ調整機構2で下方から支えられている。このように、本実施形態のスラブの振動低減構造によれば、スペーサ3を介して支柱1及び高さ調整機構2で上階スラブ20が下方から支えられるため、上階スラブ20を点ではなく線で支えることができ、効果的に上階スラブ20の振動を低減させることができる。
【0019】
上階スラブ20の小梁22の下方には、間隔を存して天井30が配置されている。天井30には、支柱1を挿通させる貫通孔31が設けられている。高さ調整機構2は、天井30と上階スラブ20の小梁22との間の天井裏に配置されている。このように、高さ調整機構2を天井裏に配置することにより、室内の美観を保つことができる。
【0020】
天井30には、高さ調整機構2を調整するために開口自在な開口部32が設けられている。このように、高さ調整機構2を天井裏に設けることにより、開口部32を天井30に設ければよくなるため、高さ調整機構2を床下に配置して床に開口部を設けた場合と比較して、床に開口部を設ける必要がなく、床に段差が発生することを回避することができ、歩行の邪魔となることを避けることができる。
【0021】
作業者は、開口部32を開いて高さ調整機構2を調整することができる。また、高さ調整機構2が支柱1の上端に設けられているため、高さ調整機構2で高さ調整を行うときに、支柱1の自重を受けることがなく高さ調整を容易に行うことができる。また、本実施形態のスラブの振動低減構造によれば、高さ調整機構2の高さ調整が容易であるため、スラブの振動も従来よりも容易に低減することができる。
【0022】
なお、本実施形態においては、高さ調整機構2としてスクリュージャッキを説明したが、発明の高さ調整機構はこれに限らず、高さを調整することができれば、他のものであってもよい。
【0023】
また、本実施形態のスラブの振動低減構造においては、小梁12、22に沿って支柱1を配置したものを説明したが、発明のスラブの振動低減構造はこれに限らない。例えば、図3図4に他の実施形態として示すように、小梁12,22が存在しない位置に支柱1を設けてもよい。この場合、下階スラブ10を挟んだその下の階や上階スラブ20を挟んだその上の階にも支柱1を設けることが好ましい。
また、本実施形態では緩衝材4はスペーサ3と上階スラブ20との間に配置されたものを説明したが、発明のスラブの振動低減構造の緩衝材は高さ調整機構2とスペーサ3との間に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 支柱
2 高さ調整機構
3 スペーサ
4 緩衝材
5 アンカー
6 治具
7 ボルト
10 下階スラブ
11 スラブ本体
12 小梁
20 上階スラブ
21 スラブ本体
22 小梁
30 天井
31 貫通孔
32 開口部
図1
図2
図3
図4