(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090107
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】滅菌バッグ
(51)【国際特許分類】
A61L 2/26 20060101AFI20230622BHJP
B65D 33/01 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61L2/26
B65D33/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204891
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小堀 稔文
【テーマコード(参考)】
3E064
4C058
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC20
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3E064FA01
3E064HD07
3E064HD10
3E064HE01
4C058AA12
4C058BB05
4C058BB07
4C058EE13
4C058EE15
4C058EE16
4C058JJ15
4C058JJ16
(57)【要約】
【課題】滅菌作用を奏する媒体に対し充分な通気性を有し、効果的な滅菌処理を行うことができる滅菌バッグを提供する。
【解決手段】透明樹脂フィルム1と、通気性材料から成るシート3とが、それぞれの周縁部4に沿った少なくとも一辺で互いに貼り合された袋体から成る滅菌バッグであって、前記透明樹脂フィルム1は、前記シート3と対向する側の表面に凹凸構造を有する。また、凹凸構造の凸部の大きさが20nm以上、50μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルムと、通気性材料から成るシートとが、それぞれの周縁部に沿った少なくとも1辺で互いに貼り合された袋体から成る滅菌バッグであって、
前記透明樹脂フィルムは、前記シートと対向する側の表面に凹凸構造を有することを特徴とする滅菌バッグ。
【請求項2】
前記凹凸構造の凸部の大きさが20nm以上、50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の滅菌バッグ。
【請求項3】
前記凹凸構造が周期的な凹凸構造であり、前記凸部の大きさが20nm以上、250nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の滅菌バッグ。
【請求項4】
前記凹凸構造が周期的な凹凸構造であり、前記凸部の大きさが150nm以上、400nm以下であり、且つ、前記表面に平行な面における前記凸部の断面積が、前記シートに近づくにつれて小さくなっていることを特徴とする請求項2に記載の滅菌バッグ。
【請求項5】
前記シートが、前記凹凸構造の凹部の大きさよりも大きい径の繊維の集合体から成ることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の滅菌バッグ。
【請求項6】
前記透明樹脂フィルムの凹凸構造は、前記シートとの貼り合せ面を除いた表面に形成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の滅菌バッグ。
【請求項7】
前記透明樹脂フィルムの前記シートと対向する側と反対側の表面に、微細な周期的凹凸構造を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の滅菌バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器や衛生用品等の滅菌に使用される滅菌バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器等の滅菌処理において、被滅菌物を袋体内に内包して滅菌処理を行うことで、被滅菌物への細菌の再付着を防ぐことができる滅菌バッグが一般的に用いられている。滅菌バッグは、少なくともその一部に滅菌作用を奏する媒体である過酸化水素ガスやエチレンオキサイドガス(EOG)、水蒸気といった気体は透過し、かつ、細菌は通過させない部材を備えている。全体が不織布の様な通気性を有しかつ不透明な材料から成る滅菌バッグもあるが、内包物を視認できるといった観点から、少なくともその一部に透明樹脂フィルムが用いられた滅菌バッグが幅広く使用されている。
【0003】
このような滅菌バッグにおいては、滅菌処理工程での減圧又は加圧などにより、透明樹脂フィルムと滅菌バッグの内包物とが、密着してしまう場合があった。透明樹脂フィルムは、一般的に非通気性(上記滅菌作用を奏する媒体である各種気体の透過度が著しく低い)であり、被滅菌物の透明樹脂フィルムと密着した部分は、上記滅菌作用を奏する媒体である各種気体に晒されずに滅菌不良となってしまう課題がある。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1には、表面が凹凸の熱可塑性樹脂層を有する耐熱性プラスチックフィルムと、周縁シール部の全部又は一部に配置された不織布から成る滅菌バッグが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1の滅菌バッグでは、上記滅菌作用を奏する媒体である各種気体が袋体内へと侵入できる箇所は、周縁シール部分に配置された不織布部分のみであった。また、周縁シール部分は一般的に少なくとも数mm以上の幅を持って形成されるため、各種気体が袋体内へと侵入するために不織布を通過する距離が少なくとも数mm以上に及ぶ。そのため、通気性が著しく悪く、効果的な滅菌ができないといった問題があった。
【0007】
さらには、上記のように周縁シール部分に配置された不織布部分のみが通気性を有する構造であるため、シールの方法、シールされた部分の幅や厚みによっては、不織布の通気孔を潰してしまい、更に通気性を低下させてしまう懸念もあった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、滅菌作用を奏する媒体に対し充分な通気性を有し、効果的な滅菌処理を行うことができる滅菌バッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のように構成した滅菌バッグを提供するものである。すなわち、本発明の滅菌バッグは、透明樹脂フィルムと、通気性材料から成るシートとが、それぞれの周縁部に沿った少なくとも一辺で互いに貼り合された袋体から成る滅菌バッグであって、前記透明樹脂フィルムは、前記シートと対向する側の表面に凹凸構造を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、袋体の一方の面が通気性材料から成るシートで構成されているため、滅菌作用を奏する媒体に対して充分な通気性を有し、効果的な滅菌処理を行うことができる。また、袋体の他方の面を構成する透明樹脂フィルムの内面、つまりシートと対向する側の表面に凹凸構造を有するため、内包した被滅菌物との密着を防止して効果的な滅菌処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る滅菌バッグ概略断面図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る滅菌バッグの概略斜視図。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る透明樹脂シートに形成された凹凸構造の概略斜視図。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る滅菌バッグの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する本発明の実施の形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を説明するための一例である。したがって、本発明の技術的範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかる概略断面図である。滅菌バッグ10は、透明樹脂フィルム1と、通気性材料から成るシート(以下、通気性シートと記す)3とを、周縁部4にて貼り合わせて得られる袋体から構成される。透明樹脂フィルム1の、通気性シート3と対向する側の表面には、周期的な凹凸構造を有した凹凸形成層2が設けられている。
【0014】
凹凸形成層2に形成された凹凸構造において、凸部2bの大きさは、20nm以上、50μm以下であることが望ましい。ここで、凸部2bの大きさとは、凹凸形成層2のうち連続層を形成している部分の表面における凸部の断面の長さを言う。この表面は、凸部2b間の凹部2aの最も低い箇所を連ねた面と表現することもできる。後述するように、凸部2bの形状は様々なものを含むが、前記断面が円形の場合には、その直径で表される。また、前記断面が多角形状或いは他の形状の場合には、この形状の外接円の直径と考えることもできる。
【0015】
この実施形態においては、凹凸構造は周期的構造としたが、凸部2bがランダムに形成された形状であっても構わない。また、互いに隣接する凸部と凸部との間に、前述の連続層の表面に平行な部分を有しても良いし、このような平行な部分を有さず、互いに隣接する凸部2bが密接して配置されていても良い。
【0016】
(透明樹脂フィルム)
図1に示す透明樹脂フィルム1は細菌を遮断する機能を有する。この透明樹脂フィルム1は、単層構造でも多層構造であってもよい。例えば、本実施形態の透明樹脂フィルム1は、外気に触れる側に位置する上層と、バッグの内面に位置する下層との二層構造から成る。
【0017】
透明樹脂フィルム1の上層及び下層には、それぞれ別々の機能を付与させても良い。例えば、上層には、バリア性や耐熱性、剛性を、下層には柔軟性や比較的低温での熱可塑をそれぞれ付与させることができる。このように別々の機能を付与することによって、滅菌処理後の外気からの細菌遮断効果を高め、高圧蒸気滅菌などの高温処理にも耐える滅菌バッグとすることができる。また、滅菌工程中或いは取扱い時にピンホールや傷がついたり、破裂などの事故が発生することを防ぐことができる。更に、下層を熱可塑性樹脂とすることで、対向する通気性シート3とヒートシール(熱圧着)により貼り合せる場合には、簡便に封止することが可能となる。
【0018】
このような上層を構成する材料として、二軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ナイロンに代表されるポリアミド(PA)フィルムがその好適例として挙げられる。これらのフィルムであれば、その特性から、上記のようなバリア性や耐熱性、剛性を持った上層を形成することが可能となる。
【0019】
また、これらのフィルムは可視光波長域の全光線透過率が高く、ヘイズ値は小さいため、優れた透明性を示す。その具体的な例として挙げられる、T60 ルミラー ♯75(東レ株式会社)は、全光線透過率(550nm)89.0%、ヘイズ値は1.1%を示す、厚さ75μmのPETフィルムである。このようなフィルムを透明樹脂フィルム1の上層に用いることで、被滅菌物などの内包物を容易に視認することができる。更には、これらのフィルムは用途を限らず幅広く用いられており、Roll to Rollなどによって大量安価に製造できるため、滅菌バッグの低コスト化も可能となる。この上層の厚みは、細菌遮断性並びに強度保持と取扱いやすさとの兼ね合いより、20~100μmの範囲であることが好ましい。
【0020】
透明樹脂フィルム1の下層を構成する材料としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、無延伸のポリプロピレン(PP)フィルムがその好適例として挙げられる。これらのフィルムであれば、100~120℃程度の温度でヒートシールが可能である。そのため、上述の構成材料から成る上層との組み合わせで、上層側と接触するヒートシーラーとの融着を防ぎつつ、下層側と接触する通気性シート3とのヒートシールを容易に行うことができる。
【0021】
また、上述の構成材料から成る上層との組み合わせで、透明樹脂フィルム1に適度な柔軟性を持たせ、取り扱いやすくすることもできる。このような観点から、下層の厚みは、5~30μmの範囲であることが好ましい。LDPEフィルムや無延伸PPフィルムは、二軸延伸PETフィルムやナイロンフィルムに比べて透明度が劣る為、厚すぎると滅菌バッグ内の視認性を損なう恐れがある。
【0022】
本実施形態における透明樹脂フィルム1の好ましい厚さは、上層と下層を合わせて25~130μmとなるが、用途等に応じて、更に厚い透明樹脂フィルムを用いても良い。JIS(日本工業規格)の包装用語規格Z0108によれば、厚さ250μm未満のものをフィルム、厚さ250μm以上のものをシートと呼んでいるが、本発明においては、厚さにかかわらず、フィルムと呼ぶこととする。また、本実施形態では、二層構造としたが、単層構造としても良い。
【0023】
その他、透明樹脂フィルム1として、ポリ乳酸(PLA)に代表される植物資源などバイオマス由来の原料から製造されたフィルムも問題なく使用できる。PLAフィルム・シートは原料に石油を用いず、カーボンニュートラルであり、生分解性に優れることから、これを用いることにより、環境に配慮した滅菌バッグを製造することができる。ここで、カーボンニュートラルとは、原料である植物が吸収する二酸化炭素量と、燃焼や分解により最終的に大気中に排出される二酸化炭素量が同じであるため、地球上の二酸化炭素量を増やすことがないことを言う。また、近年、原材料にバイオマスを使用したPEを使用したフィルム・シートなども盛んに開発されており、これらを用いても何ら問題はない。
【0024】
本実施形態の上層並びに下層の二層から成る透明樹脂フィルム1の製造方法は、特に制限されることはなく、公知技術より適宜選択すればよい。例えば、上層を基材とし、接着剤を介して熱圧着により貼り付けるドライラミネート法や、キャスティング法、グラビアコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法などの湿式成膜方法によって上層上に下層を形成する方法が挙げられる。
【0025】
また、透明樹脂フィルム1のフィルムの表面に、透明性向上、撥水または親水、強度向上などの機能付与を目的として、種々のコーティングが施されていても何ら問題はなく使用できる。その一例として、低屈折材料(例えば、MgF2)の単層薄膜、或いは低屈折材料(例えば、SiO2)と高屈折材料(例えば、TiO2)とを交互に積層した多層膜を、透明樹脂フィルム1の外気に触れる側の表面に形成しても良い。このようなコーティングにより、反射率を低減させることで、滅菌バッグ内の視認性を更に向上させることができる。上記の単層薄膜或いは多層膜は、真空蒸着法などにより、成膜することが可能である。
【0026】
(凹凸形成層)
凹凸形成層2は、透明樹脂フィルム1の通気性シート3と対向する側の表面に配置され、その表面に微細な凹凸構造が形成されている。凹凸構造の凹部2aが、滅菌処理工程において、滅菌作用を奏する媒体である各種気体が通気性シート3から滅菌バッグ10内へと侵入した際に、各種気体の通路あるいは保持空間となる。このことによって、滅菌バッグ10内に内包された被滅菌物が、上記各種気体に対して暴露不全となることを防ぐことができる。
【0027】
凹凸形成層2は、透明樹脂フィルム1を構成する一部として形成されても良いし、透明樹脂フィルム1とは別の構成材料を用いて、透明樹脂フィルム1に積層される形で形成されても良い。例えば、本実施形態では、上層並びに下層の二層から成る透明樹脂フィルム1の下層の一部として、通気性シート3と対向する側の表面上に形成されている。
【0028】
本実施形態において、凹凸構造は、透明樹脂フィルム1と通気性シート3を貼り合わせる部分であるそれぞれの周縁部4を除いた全面に配置されている。その凸部2bの大きさは、20nm以上、50μm以下であることが好ましい。これにより、凹凸構造を介して、透明樹脂フィルム1とバッグに内包された被滅菌物などの間に、滅菌作用を奏する各種気体が侵入するあるいは保持される適切な空間を設けることができる。
【0029】
凸部2bの大きさが20nm以下では、凹部2aへ気体が侵入しづらくなる。また、凹凸構造の周期が非常に短くなることで、巨視的に平坦に近づき、透明樹脂フィルム1と内包物とが密着しやすくなるといった理由から、上述の気体暴露不全防止効果を発揮することが困難になる。
【0030】
一方、凸部2bの大きさが50μm以上では、透明樹脂フィルム1と内包物との接触面積の増加、凹凸形成層2の表面に対し平行方向へ侵入、通過する気体への抵抗増加などにより、内包した被滅菌物を効果的に滅菌することができなくなる恐れがある。
【0031】
凹凸構造の形状については、何ら制限されることなく、その形成方法や用途に応じた種々の形状を選択することができる。例えば、ライン&スペース、ホール、ディンプル、ピラー、モスアイといった形状が挙げられる。中でも、モスアイ形状は、光の進行方向に沿って屈折率が段階的に変化するため、反射率を低下させることができ、滅菌バッグ内の視認性を向上させられるといった点で、特に好ましい。さらには、凹凸形成層2が配置される全面に亘って、その凹凸形状が一定である必要は必ずしもなく、不揃いであったり、複数種類の凹凸形状が混在したりしても、何ら問題なく適用できる。
【0032】
また、凹凸形成層2は、滅菌効果を奏する各種気体の通路あるいは保持空間を確保できていれば、透明樹脂フィルム1の通気性シート3と対向する側の表面の全面ではなく、一部にのみ配置されていても何ら問題はない。特に、透明樹脂フィルム1と通気性シート3との接着面である周縁部4においては、その面上に被滅菌物が接触しないため、凹凸形成層2を配置する必要性はなく、予め平坦な面としても良い。その場合、凹凸を形成する面積の縮小により、製造コストの削減が可能となる。更には、平坦な面は、凹凸形成層2を構成する部材と同じ材質で構成しても構わないが、異なる材質の部材を用いても良い。この場合、平坦な面を凹凸形成が困難な部材で構成することができ、材料選択の幅が広がる。
【0033】
この凹凸形成層2の作成方法としては、その材料や凹凸の形状、サイズなどに適した公知の微細構造形成技術を適宜選択できる。例えば、可視光の波長よりも短い周期で配置された多数の凹凸からなる微細周期構造体であれば、所謂ナノインプリント法を用いて作製することができる。ナノインプリント法とは、微細凹凸構造と逆の形状を有する型を用いて、熱や圧力、紫外線(UV)を加えて基板の表面に形成すべき微細凹凸構造を転写する方法である。ナノインプリント法を用いる事で、簡便かつ安価に、さらには高い再現性で大量に作製する事ができる。
【0034】
本実施形態のように、凹凸構造が二層構造の下層の一部に形成され、下層がLDPEフィルムや無延伸PPフィルムなどの熱可塑性樹脂素材から成る場合は、熱ナノインプリント法が好適に用いられる。熱ナノインプリント法を用いる場合、凹凸構造のアスペクト比(凸部2bの高さ又は凹部2aの深さDと、凹凸周期Pとの比;D/P)が0.25~2.0の範囲であることが好ましく、さらには0.5~1.0の範囲であることがより好ましい。ここで、凹部2aの深さDとは、凸部2bの頂部を基準として考えた場合である。平坦な面に複数の凹部2aを設けることによって凹凸構造が形成された場合には、このように凹部2aの深さDと表現する方が好ましい場合がある。
【0035】
ここで、凹凸周期Pは、互いに隣接する凸部2bが密接して配置されている場合は、前述の凸部2bの大きさと等しい。また、前述のように連続層の表面に平行な部分を挟んで互いに隣接する凸部2bが配置された場合には、凸部の大きさ(凸部の底辺における長さ)と高さの比がアスペクト比となる。
【0036】
アスペクト比が前述した範囲であれば、熱ナノインプリント法を用いた場合に、比較的低い押圧で、高い転写性が得られる。構造転写のための加熱及び加圧の条件については、所望の構造が転写できれば特に制限はないが、被転写材が軟化するガラス転移点付近の温度、数MPa~数十MPaの押圧が加えられる。
【0037】
光(紫外線、以下UVと記す)ナノインプリント法を用いて凹凸形成層2を作成しても良く、その場合、透明樹脂フィルム1の一部または全部がUV硬化性樹脂から形成される。或いは、透明樹脂フィルム1を基材としてその上にUV硬化性樹脂の塗布層を形成しても良い。UV硬化性樹脂材料としては、アクリル系やビニル系などのラジカル重合タイプのものや、エポキシ系やビニルエーテル系などのイオン重合タイプのものなど、種々の材料を適用できる。中でもエポキシ系UV硬化性樹脂は、その重合反応の構造(エポキシ環が開環しながら重合していく)に起因して硬化収縮が少ないことから、可視光の波長よりも短い周期の微細凹凸構造の形成には、より適している。
【0038】
また、UV硬化後の樹脂から転写型を引き剥がす際に生じる離型不良(パターン欠陥の発生)を防止するため、離型性に優れたフッ素含有UV硬化性樹脂材料を用いても良く、下地への濡れ性や密着性、光硬化性に優れた有機無機複合型UV硬化性樹脂を用いても良い。
【0039】
更には、基材となる透明樹脂フィルム1と、凹凸形成層2が形成されるUV硬化性樹脂層の間に、密着性の向上などを目的として下地(プライマー)層を形成しても、何ら問題はない。このような下地層を形成する材料としては、主剤となるシランカップリング剤に、イソプロピルアルコール(IPA)や硝酸、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を加えたものなどが挙げられる。加えて、UV硬化性樹脂層や下地層の形成前に、透明樹脂フィルム1の表面に、UVオゾン処理や大気圧プラズマ処理など処理を行っても良い。
【0040】
上述したような凹凸形成層2の形成に際して、CMT-400U(東芝機械株式会社製)のようなRolltoRoll転写方式の装置を用いた場合、高生産性・高スループットでの製造が可能である。また、透明樹脂フィルム1や通気性シート3といった本発明の滅菌バッグを構成する他の部材の製造工程とも相性が良く、大面積化も容易に行えることなどから、本発明の滅菌バッグの製造コスト低減に繋げることができる。
【0041】
更に、上述のようなナノインプリント法を含む各種構造転写法だけでなく、ウェット/ドライエッチングなどの化学的処理法、短パルスレーザーや集束イオンビーム(FIB)といった高エネルギー光照射による直接加工などの物理的処理法、いずれの処理法も凹凸形成層2の作成方法として選択可能である。
【0042】
例えば、パルス幅がピコ秒やフェムト秒といった極短時間のパルスレーザーを基材に照射することで、凹凸形成層2を作成することができる。この方法を用いると、高速かつ加工部位周辺への熱変性を抑えながら局所的に、数百nm~数十μmオーダーの微細凹凸構造を作成することができる。特に、フェムト秒レーザーでは、固体の熱緩和時間(>10-12秒)よりも短いパルス幅であるため、より効果的である。
【0043】
また、フェムト秒レーザーパルスを、加工が可能となるエネルギー密度の下限(レーザーアブレーションしきい値)近傍のレーザーエネルギー密度(レーザーフルエンス)で照射する方法を用いることもできる。この方法を用いると、LIPPS(Laser Indeced Periodical Surface Structure)と呼ばれる、レーザー波長と同程度かそれ以下の間隔を有する微細周期構造が、入射光の偏光方向に垂直の方向に自己組織的に形成されることが知られている。このLIPPSを、凹凸形成層2を構成する凹凸構造として、そのまま用いても良い。
【0044】
本実施形態の滅菌バッグを用いた滅菌処理においては、被滅菌物と一緒に、インジケータ(ケミカルインジケータ)を滅菌バッグ内に内包しても良い。このインジケータは、滅菌作用を奏する媒体となる各種気体を検知し、変色することで、滅菌処理が正確に処理されたか否かを判定する機能を有する。
【0045】
ケミカルインジケータは紙片状のものが一般的に用いられているが、従来のように滅菌処理工程において非通気性樹脂フィルムへの密着が発生した場合にはケミカルインジケータの変色が不十分となり、滅菌処理が行われたどうかの正確な判定ができなくなる。これに対し、本実施形態の滅菌バッグを用いた滅菌処理においては、凹凸形成層2により、ケミカルインジケータも各種気体を暴露させることができ、変色不良を防ぐことができる。
【0046】
また、上述のような凹凸形成層2により、高い撥水/撥油性を発現することで汚れの付着も防ぐことができる。そのため、衛生面に優れ、その使用用途により適した滅菌バッグの提供が可能となる。
【0047】
(通気性シート)
通気性シート3は、気体、特には滅菌作用を奏する媒体である過酸化水素ガスやEOG、水蒸気といった気体のうち少なくとも1種を透過させる材料から構成される。また、通気性シート3として、細菌を通過させない材料を用いることが望ましい。この通気性シート3を通過した滅菌作用を奏する各種気体は、滅菌バッグ10の袋内及び凹凸形成層2の凹部2aに効率的に侵入し、内包した被滅菌物を効果的に滅菌できる。
【0048】
通気性シート3の材料として、繊維の集合体を用いることができる。具体的な部材としては、繊維状樹脂から成る不織布シートや滅菌紙などが挙げられる。不織布シートとしては、所謂フラッシュ紡糸法により製造されたものを用いても良い。フラッシュ紡糸法とは、材料となる熱可塑性樹脂を溶融したものを、ノズルから高圧で繊維状に吐出し、それを網目状に堆積後、繊維どうしを熱結着(サーマルボンド)して形態安定化させる方法である。そして、この方法に用いる熱可塑性樹脂の一例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0049】
HDPEから成る不織布シートは、優れた細菌バリア性能に加え、引裂や突刺に対する高い強度を持つ。また、低発塵性であるため、本発明の滅菌バッグの通気性シート3に適用することで、内包物の視認性に優れ、被滅菌物との密着を防止して効果的な滅菌処理を行うことができ、耐久性にも優れた滅菌バッグの提供が可能となる。また、透明樹脂フィルム1の上層にLDPEやPPを用いた場合には、それらとの強固なヒートシールが可能である。そのため、別途シール形成のための部材や構造を用意する必要がなく、扱いが簡便であると共に製造費用の削減にも繋がる。更には、HDPEから成る不織布シートは、パルプ(セルロース繊維)を主成分とした滅菌紙とは異なり、過酸化水素を吸着しないため、過酸化水素ガス滅菌においても何ら問題なく使用できるといった点でも非常に好ましい。
【0050】
このようなHDPEから成る不織布シートの具体例としては、この限りではないが、タイベック(旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ 株式会社)が挙げられる。タイベックは、直径0.5~10μm(平均4μm)のHDPE極細連続長繊維から成る不織布シートで、その優れた透気性や破裂強度と高い細菌バリア性から、本発明の滅菌バッグの通気性シート3として好適である。中でも、タイベック 1073B、1059、2FS(4058B)をより好ましく用いることができる。
【0051】
ここでは、通気性シート3に適用可能な不織布シートの材質の一例として、HDPEを挙げたが、熱可塑性を有し、押し出し成形可能な樹脂材料であれば特に制限はない。例えば、LDPE、中密度(MDPE)、PP、PET、PA(ナイロン6、ナイロン6,6など)、ポリエステル、エチレン系共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、エチレン-ポリプロピレン共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体など)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)など)、あるいはこれらの共重合体などから、一種あるいはそれ以上を適宜選択して使用しても良い。
【0052】
このような不織布シートの製造方法としては、溶融紡糸法、乾式・湿式紡糸法、電界紡糸法など公知の紡糸技術の中から、その樹脂材料と用途に適した方法を用いることができる。特に、電界紡糸法の一種であるエレクトロスプレーデポジション法(ESD法)を用いた場合は、ナノサイズの超極細繊維径の不織布を作ることもできるため、作製される不織布の厚みや空孔サイズの制御が比較的容易にできる。
【0053】
通気性シート3が滅菌紙からなる場合、滅菌紙の材質は、パルプ100%でも良いし、強度や耐久性向上などのためにパルプ基材上にコーティングが施されたものでも良いし、パルプに加えてPEやPPといった樹脂が混抄されたものでも良い。樹脂混抄紙は、発塵が少ない、ヒートシール性があるなどの付加機能により、より好適に用いることができる。
【0054】
また、滅菌紙を構成するセルロース繊維の直径については、特に制限はないが、凹部2aの大きさよりも大きい径であることが望ましい。セルロース繊維の直径が凹部2aの大きさよりも小さい場合、凹部2aに繊維が入り込む虞がある。繊維が入り込むと、滅菌処理工程での減圧又は加圧などによる滅菌バッグ袋体内の膨張・収縮を妨げるなど、滅菌効果に悪影響を及ぼす懸念がある。一方、繊維の直径が非常に大きい場合では、滅菌紙の気体透過性と細菌バリア性に直接影響を及ぼす厚みや空孔のサイズの制御が困難となる問題がある。従って、セルロース繊維の直径としては、0.4μm~100μmの範囲であることが好ましい。
【0055】
通気性シート3は、単層構造でも多層構造でも良い。例えば、上記の様なHDPEから成る不織布フィルムと、滅菌紙とを積層した構造でも良い。
【0056】
また、通気性シート3は、バッグ内の被滅菌物を効果的に滅菌するために必要な通気性を確保できていれば、その一部に非通気性部分を有していても何ら問題はない。特に、透明樹脂フィルム1との貼り付け部分においては、通気性を有する必要性はない。特に、ヒートシールによる貼り付けでは、ヒートシール時の熱及び圧力によって透明樹脂フィルム1や通気性シート3が軟化・溶融する場合がある。この場合、通気性シート3の有する空孔が失われる為、必然的に通気性がなくなることになるので、透明樹脂フィルム1との貼り付け部分は予め非通気性としても良い。被滅菌物を袋内に入れた後にヒートシールして封止する部分についても、同様に予め非通気性としても良い。非通気性部分は、通気性シート3を構成する部材と同じ材料で構成しても構わないが、異なる材質の部材を用いることもできる。
【0057】
通気性シート3の厚みは、細菌侵入防止及び強度保持と、通気性及び取扱い易さとの兼ね合いより、20~200μmの範囲であることが好ましく、50~200μmの範囲がより好ましい。
【0058】
(周縁部)
図1に示す周縁部4は、透明樹脂フィルム1及び通気性シート3、それぞれの端部を貼り合わせることで袋状に形成する際の貼り合わせ部分となる。
図2は、本実施形態の滅菌バッグの概略斜視図である。
図2では、滅菌バッグ10の端部の3辺が周縁部4として貼り合わされており、残りの1辺(開口部5)は開口している状態が図示されている。このような構成で、被滅菌物を挿入した後に開口部5も貼り合わせることで袋体内を封止し、滅菌処理が行うことができる。
【0059】
周縁部4は、透明樹脂フィルム1及び通気性シート3の端部のうち、少なくとも1辺が貼り合わされて形成されていれば良い。透明樹脂フィルム1及び通気性シート3がロール状のシート材として製造供給される場合、シートの長手方向に沿って端部2辺が予め貼り合わされる形で周縁部4が形成されても良い。この場合、被滅菌物に応じて適切な長さでシート材を切断して使用できるため、無駄が少なく利便性に優れる滅菌バッグを提供することができる。
【0060】
本実施形態は、周縁部4の形成方法、即ち、透明樹脂フィルム1と通気性シート3を貼り合わせる方法として、主にヒートシールを想定したものである。しかしながら、封止が担保され、内包物を細菌の再汚染からバリアできれば、ヒートシールによる貼り合せに限定されることはない。例えば、接着剤による接着や、高周波や超音波などによる融着など、種々の方法を適用することができる。その際、透明樹脂フィルム1及び通気性シート3の材質に応じて、イージーピール性がある周縁部4を形成する方法が、より好ましく選択される。
【0061】
本実施形態においては、透明樹脂フィルム1と通気性シート3のそれぞれの周縁部において、互いに貼り合せた例を説明した。ただ、これらを貼り合せる箇所としては、それぞれの周縁部に沿って、周縁部から内側に入った箇所で貼り合せるようにしても良い。
【0062】
<第2実施形態>
本実施形態の滅菌バッグは、凹凸形成層2に周期的な凹凸構造が形成され、周期的な凹凸構造の凸部2bの大きさが20nm以上、250nm以下である以外は、上述した第1実施形態と同様である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態(
図1)と同一構成部分についての説明は省略する。
【0063】
本実施形態においては、周期的な凹凸構造が、可視光の波長(約400~800nm)よりも小さいサイズで形成されている。そのため、透明樹脂フィルム1とバッグに内包された被滅菌物などとの密着を防ぎつつ、光の散乱によって透明樹脂フィルム1が白濁して滅菌バッグ内の視認性が低下してしまう現象を抑制することが可能となる。即ち、光の波長と同等以上で大きくなるミー散乱の影響を抑えることができる。ミー散乱は、波長依存性がなく、異方性がある(光の進行方向の前方に強い)ため、透明樹脂フィルム1の透明度に大きな影響を及ぼす。
【0064】
ミー散乱の影響をより抑えるためには、周期的な凹凸構造の大きさが可視光波長の約1/10以下となるように形成するのがより好ましい。更には、周期的な凹凸構造の大きさが小さいほど、可視光波長より十分短い構造領域で支配的となるレイリー散乱の影響も抑制することができる。
【0065】
周期的な凹凸構造の周期Pは、凹凸構造体(凹凸形成層)の屈折率をnとしたとき、P<400/n(nm)とすることが好ましく、このような条件においては可視光の散乱がより生じ難くなる。凹凸形成層の材料の例として挙げられるLDPEは、n=1.54、PPはn=1.49であり、それぞれ約259nm、約268nmより短い周期であれば高い散乱防止効果を得られる。したがって、本実施形態の滅菌バッグにおいては、その条件を満たすため、被滅菌物などの内包物の視認性に優れた滅菌バッグとなる。
【0066】
周期的な凹凸構造の作成方法については、所望の構造体が得られれば特に制限はないが、凹凸のサイズが非常に微小であるため、前述のナノインプリント法が適している。
【0067】
本実施形態の滅菌バッグにおいては、透明樹脂フィルム1とバッグに内包された被滅菌物などとの密着による滅菌不良を防ぐことができる。また、内包物の視認性に優れる為、滅菌処理工程中の被滅菌物の状態確認が容易にできる、滅菌処理後のケミカルインジータの変色確認並びに滅菌処理済判定が容易にできる、被滅菌物の取違いを防止できるといった効果を発揮できる。
【0068】
<第3実施形態>
本実施形態の滅菌バッグは、周期的な凹凸構造を有し、凸部2bの大きさが150nm以上、400nm以下であり、凸部2bの大きさが高さ方向に連続的に小さくなっていること以外は上述した第1実施形態と同様である。ここで、凸部2bの形状に関しては、凹凸形成層2のうち連続層を形成している部分の表面に平行な面における凸部2bの断面積が、通気性シート3に近づくにつれて小さくなっていると表現することもできる。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態(
図1)と同一構成部分についての説明は省略する。
【0069】
図3は、本実施形態における凹凸構造の概略斜視図である。
図3の左側の図のように、本実施形態においては、凹凸形成層2に周期的な凹凸構造21が形成されている。凹凸構造の凸部の形状としては、例えば
図3(a)に示すような円錐形状の凸部21aとすることができる。凸部21aの最頂部から最底部に向かうにつれて、凹凸形成層2の表面に平行な面における凸部の断面積は徐々に増加する。そして、それに対応した有効屈折率も凸部21aの最頂部から最底部に向かい連続的に変化する。つまり、滅菌バッグの袋内側(内包物側)の最表層から透明樹脂フィルム1に向かって滑らかな有効屈折率分布を有する。そのため、この周期的な凹凸構造21に光が入射した場合には、急激な屈折率差がないため、光は殆ど反射されずに透明樹脂フィルム1内に到達する。したがって、被滅菌物などの内包物の視認性に優れた滅菌バッグとなる。
【0070】
本実施形態の周期的な凹凸構造体21における凸部の形状は、
図3(a)に例示した円錐形状に限らない。即ち、凸部2bの幅が高さ方向に連続的に変化すれば、釣り鐘型形状なども含め、特に制限なく目的に応じた形状を適宜に選択することができる。例えば、
図3(b)に示す三角錐形状の凸部21bや、
図3(c)に示す四角錐形状の凸部21cとしても良い。
図3(a)に例示した円錐形状も含め、これらの形状は凸部の高さ方向の屈折率の連続変化が、直線的(一次関数比例)であり、特に好ましい。
【0071】
凹凸構造の周期的な配列方法についても特段制限はないが、
図3の左側に示すような六方細密配列であれば、平坦部の露出面積が少なく、より良好な反射防止効果が得られる。また、周期的な凹凸構造の作成方法については、所望の構造が得られれば特に制限はないが、凹凸のサイズが非常に微小であるため、前述のナノインプリント法が適している。
【0072】
<第4実施形態>
本実施形態の滅菌バッグは、透明樹脂フィルム1の通気性シート3側と反対側の表面に、通気性シート側の表面とは別の微細な周期的凹凸構造を有する以外は上述した第1実施形態と同様である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態(
図1)と同一構成部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0073】
図4は、本実施形態に係る滅菌バッグの概略断面図である。本実施形態の滅菌バッグ110は、透明樹脂フィルム1の通気性シート3と対向する側の表面に、凹部20a及び凸部20bが周期的に形成された凹凸形成層20を有する。また、透明樹脂フィルム1の凹凸形成層20が形成された面と反対側(滅菌バッグの袋状の外側)の表面にも、微細な周期的凹凸構造6が形成されている。
【0074】
微細な周期的凹凸構造6は、その形状やサイズについて、特に制限はないが、本発明の第2実施形態や第3実施形態にて説明した周期的な凹凸構造と同様の構造とすることができる。このような構成とすることによって、透明樹脂フィルム1の両面において、前述の光散乱軽減効果や光反射防止効果が得られるため、内包物の視認性をより高めることが可能となる。勿論、凹凸形成層20と、微細な周期的凹凸構造6とが異なる形状やサイズで、それぞれ別の機能を果たしていても良い。また、微細な周期的凹凸構造6が、透明樹脂フィルム1の表面の全面ではなく、その一部にのみ配置されていても何ら問題はない。
【0075】
微細な周期的凹凸構造6の作成方法としては、所望の構造体が得られれば特に制限はないが、凹凸のサイズが非常に微小であるため、前述のナノインプリント法が適している。特に、透明樹脂フィルム1の材料として、二軸延伸PETやPEN、PAなどの比較的耐熱性の高い樹脂を用いた場合は、それを基材としてその上にUV硬化樹脂を塗工し、UVナノインプリント法で形成するのが望ましい。
【0076】
<他の実施形態>
以上、本発明の第1~4実施形態を詳細に説明したが、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態は、処理対象物として鉗子や注射器、内視鏡などの医療器具を処理する滅菌バッグを想定したものである。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、各種衛生用品、科学実験用器具、工業用器材などの滅菌に用いる滅菌バッグにも適用可能である。また、本発明は、滅菌処理に限らず、内包物の気体暴露を要する科学的/工業的処理用途に応用することもできる。
【符号の説明】
【0077】
1 透明樹脂フィルム
2 凹凸形成層
3 通気性シート
4 周縁部