(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090118
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の充電方法、リチウムイオン二次電池の充電を制御する方法ならびにリチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20230622BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230622BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20230622BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230622BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230622BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230622BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230622BHJP
【FI】
H01M10/44 A
H01M10/48 P
H01M10/058
H01M10/052
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204907
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】515090628
【氏名又は名称】株式会社スリーダムアライアンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 良太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ16
5H029HJ17
5H029HJ18
5H030AA01
5H030BB02
5H030BB03
5H030FF43
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA29
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA02
5H050GA18
5H050HA17
5H050HA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる充電方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池の充電方法は、所定の電圧V
aまで充電を行う工程Aと、所定の電圧V
aに達してからは、所定の電圧V
aを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程Bと、を少なくとも含む充電を行う。リチウムイオン二次電池の正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、を少なくとも含み、所定の電圧まで充電を行う工程において、逐次検出される電流値と電圧値とから求められる直流抵抗値Rの、該工程における直流抵抗値の最小値R
minに対する割合R/R
minが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、充電電流を増加させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む充電により、リチウムイオン二次電池を充電する方法であって、
該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、
該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、
第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、
を少なくとも含み、
該工程(A)において、逐次検出される電流値と電圧値とから求められる直流抵抗値Rの、該工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させる、
前記リチウムイオン二次電池の充電方法。
【請求項2】
前記Vaが4.0V以上の値であり、かつ該R/Rminの値が1.9以上となったとき、該充電電流を増加させる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の充電方法。
【請求項3】
以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む充電により、リチウムイオン二次電池を充電する方法であって、
該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、
該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、
第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、
を少なくとも含み、
該工程(A)において、充電電流値に対する電圧値の変化量が、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させる、
前記リチウムイオン二次電池の充電方法。
【請求項4】
前記Vaが4.0V以上の値であり、かつ該充電電流値に対する電圧値の変化量が0.25mV/A以上となったとき、該充電電流を増加させる、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池の充電方法。
【請求項5】
以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまでは所定の充電電流で充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む定電流定電圧充電により、リチウムイオン二次電池を充電する方法であって、
該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、
該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、
第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、
を少なくとも含み、
該工程(A)において、逐次検出される電圧値Vの、該工程(A)における電圧値の最小値Vminに対する割合V/Vminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させる、
前記リチウムイオン二次電池の充電方法。
【請求項6】
前記Vaが4.0V以上の値であり、かつ該V/Vminの値が1.9以上となったとき、該充電電流を増加させる、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の充電方法。
【請求項7】
リチウムイオン二次電池の充電を制御する方法であって、
該充電が、
(A)定電流充電工程と、
(B)定電圧充電工程と、
を含む、充電であり、該充電を通じて、逐次充電電流値と電圧値とを検出し、該逐次検出される充電電流値と電圧値とから直流抵抗値Rと、該充電での直流抵抗値の最小値Rminとを記憶し、
該工程(A)は、
所定の充電電流Ia1で充電する工程と、
該所定の充電電流Ia1よりも大きい充電電流Ia2で充電する工程と、
を含み、
該工程(A)において、
該充電電流Ia1で定電流充電を開始し、
該工程(A)において、該直流抵抗値Rと、直流抵抗値の最小値Rminとの比R/Rminの値があらかじめ定めた所定値以上に達したときに、該充電電流Ia2に切り替え、該電圧が所定の電圧Vaに達するまで充電し、
該電圧が、該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら、工程(B)を行う、前記方法。
【請求項8】
前記Vaが4.0V以上の値であり、かつ該R/Rminの値が1.9以上となったとき、該充電電流をIa2に切り替える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電流値と電圧値とを検出する検出部と、
検出された電圧値に基づき、充電電流の大きさを変化させる制御部と、
を少なくとも備える、リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置であって、
該リチウムイオン二次電池の充電が、以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む充電であり、
該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、
該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、
第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、
を少なくとも含み、
該工程(A)において、逐次検出される電圧値Vの、該工程(A)における電圧値の最小値Vminに対する割合V/Vminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該制御部が該充電電流を増加させる、
前記リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置。
【請求項10】
電流値と電圧値とを検出する検出部と、
検出した各値から直流抵抗値を算出する算出部と、
算出された直流抵抗値の変化に基づき、充電電流の大きさを変化させる制御部と、
を少なくとも備える、リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置であって、
該リチウムイオン二次電池の充電が、以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまでは所定の充電電流で充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む充電であり、
該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、
該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、
第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、
を少なくとも含み、
該工程(A)において、該検出部で逐次検出される電流値と電圧値とから、該算出部で直流抵抗値Rを算出し、該工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該制御部が該充電電流を増加させる、
前記リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の充電方法、リチウムイオン二次電池の充電を制御する方法、ならびにリチウムイオン二次電池の充電を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ等の携帯型コードレス製品は益々小型化、ポータブル化が進んでいる。また、大気汚染や二酸化炭素の増加等の環境問題の観点から、ハイブリッド自動車、電気自動車、電動船舶や、ドローンをはじめとする小型飛行体等の電動移動体の開発がすすめられ、実用化の段階となっている。これら電子機器や電気自動車などには、高効率、高出力、高エネルギー密度、軽量等の特徴を有する優れた二次電池が求められている。このような特性を有する二次電池の開発、研究が盛んに行われ、リチウム電池やリチウムイオン電池等の二次電池が種々実用化されている。そして、このような二次電池の充電には、充電を短時間で行うために、充電終止電圧まで電流密度の高い定電流充電(CC充電)を行うことを組み合わせた、定電流定電圧充電(CCCV充電)が行われることが一般的である。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池の負極活物質として、リチウムイオンを層間にインターカレートするグラファイトや、リチウムイオンと反応して合金を形成するケイ素、スズ等の活物質が好んで用いられている。このような負極活物質に電流を印加すると、発熱量が大きくなったり、負極上への金属リチウムの析出が発生したりすることがあり、リチウムイオン二次電池の寿命が短くなることがあった。特に、リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化を目指して正極活物質として層状構造を有するニッケル、コバルト、マンガン等とのリチウム複合酸化物を用いる場合には、所望の容量を得るために充電終止電圧を4.2V以上に設定する必要があるが、層状構造を有するリチウム複合酸化物の特性上、CC充電の時間が長くなるため、リチウムイオン二次電池の短命化が顕在化するという問題があった。
【0004】
一方、正極、負極を含む電極と、電解液とを、少なくとも含むリチウムイオン二次電池において、安定性に優れ、かつ資源的に豊富な元素で構成されたリン酸マンガンリチウム(LMP)やリン酸鉄リチウム(LFP)を正極活物質に使用する試みがなされている。特にLMPを構成するマンガン元素の一部を鉄元素で置き換えたリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)はリチウムイオン伝導性や電子伝導性が高く、安定性に優れているため、過充電・過放電に強く、サイクル寿命の長いリチウムイオン二次電池を提供することができる。そこで、LMFP正極活物質または、LMFPと従来から正極活物質として用いられている層状リチウム遷移金属酸化物とを混合した混合正極活物質を使用する取り組みが数多くなされている。
【0005】
特許文献1には、層状構造のリチウム遷移金属酸化物とオリビン構造のリチウム酸化物(リン酸鉄リチウム等)とをブレンドした混合正極活物質において、鉄原子の一部をマンガン原子等の他の元素に置き換えたリン酸マンガン鉄リチウムを用い、層状構造のリチウム遷移金属酸化物との作動電圧の差を縮めることによりトランジェント領域での出力の減少を最小化する試みが行われている。
【0006】
一方、特許文献2は、リチウム含有複合酸化物を活物質として含む正極と、合金系負極活物質を含む負極と、非水電解質とを具備する非水電解質二次電池の充電方法及び充電装置電池を開示している。特許文献2に開示された二次電池の充電方法は、二次電池の電圧を検出し、検出値が所定電圧x未満であれば、比較的小さな電流値Bで充電し、検出値が所定電圧x以上z未満であれば、比較的大きな電流値Aで充電し、検出値が所定電圧z以上y未満であれば、比較的小さな電流値Cで充電し、検出値が所定電圧y以上であれば、定電圧で充電するか充電を停止する(ここでB<A、C<A、およびx<z<yである。)ことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2015-519005号公報
【特許文献2】国際公開第2011/033704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
混合正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を充電する際には、電池の残容量(または充電度、以下「SOC」と称する。)が高くなると電池全体の直流抵抗が急激に増加し、負極活物質への負荷が大きくなり、充電終止電圧にすぐに到達してしまうという問題があるが、特許文献1は、このような課題には気づいていない。
【0009】
特許文献2には、二次電池の内部抵抗が大きい充電初期には、比較的小さな電流値Bで充電し、二次電池の内部抵抗が小さくなってから比較的大きな電流値Aで充電することにより、充電分極の大きな変動を抑えることが可能となることが開示されており、これは要するに、電池のSOCが低いときは低電流で充電し、SOCが中間的なときは高電流で充電し、SOCが高いときは再び低電流で充電する方法である。
【0010】
本発明者らは、リン酸マンガン鉄リチウムと層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを少なくとも含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を充電する際に、層状構造の遷移金属リチウム酸化物のみを用いたリチウムイオン二次電池を充電するのに比べて、CC充電の時間が短くなること、そして、一定のSOC状態になると、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値が急激に増加する特性に着目した。リチウムイオン二次電池のSOCが一定の状態になって直流抵抗値が急激に増加したタイミングで、一度充電電流密度、すなわち充電レートを高めて早めに充電終止電圧に到達させ、次いでCC充電からCV充電に移行することにより、リチウムイオン二次電池からの発熱量を抑制することができ、また負極上への金属リチウムの析出も抑えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。そこで本発明は、リン酸マンガン鉄リチウムと層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを少なくとも含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を充電する際に、合金系負極活物質に限らず炭素系負極活物質や金属リチウム等を含むあらゆる負極活物質に対しても負荷を軽減することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の形態は、以下の工程:(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、を少なくとも含む充電により、リチウムイオン二次電池を充電する方法である。ここで当該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、を少なくとも含み、該工程(A)において、逐次検出される電流値と電圧値とから求められる直流抵抗値Rの、該工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させることを特徴とする。
【0012】
本発明の別の形態は、以下の工程:(A)所定の電圧Vaまでは所定の充電電流で充電を行う工程と、(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、を少なくとも含む定電流定電圧充電により、リチウムイオン二次電池を充電する方法である。ここで当該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、を少なくとも含み、該工程(A)において、充電電流値に対する電圧値の変化量が、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させることを特徴とする。
【0013】
本発明の別の形態は、以下の工程:(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、を少なくとも含む充電により、リチウムイオン二次電池を充電する方法である。ここで当該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、を少なくとも含み、該工程(A)において、逐次検出される電圧値Vの、該工程(A)における電圧値の最小値Vminに対する割合V/Vminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させることを特徴とする。
【0014】
本発明の別の形態は、リチウムイオン二次電池の充電を制御する方法である。当該充電を制御する方法において、該充電が、(A)定電流充電工程と、(B)定電圧充電工程と、を含む、充電であり、該充電を通じて、逐次充電電流値と電圧値とを検出し、該逐次検出される充電電流値と電圧値とから直流抵抗値Rと、該充電での直流抵抗値の最小値Rminとを記憶し、該工程(A)は、所定の充電電流Ia1で充電する工程と、該所定の充電電流Ia1よりも大きい充電電流Ia2で充電する工程と、を含み、該工程(A)において、該充電電流Ia1で定電流充電を開始し、該工程(A)において、該直流抵抗値Rと、直流抵抗値の最小値Rminとの比R/Rminの値があらかじめ定めた所定値以上に達したときに、該充電電流Ia2に切り替え、該電圧が所定の電圧Vaに達するまで充電し、該電圧が、該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら、工程(B)を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の別の形態は、電流値と電圧値とを検出する検出部と、検出された電圧値に基づき、充電電流の大きさを変化させる制御部と、を少なくとも備える、リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置である。ここで該リチウムイオン二次電池の充電が、以下の工程:(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、を少なくとも含む充電であり、該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、を少なくとも含み、該工程(A)において、逐次検出される電圧値Vの、該工程(A)における電圧値の最小値Vminに対する割合V/Vminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該制御部が該充電電流を増加させることを特徴とする。
【0016】
本発明の別の形態は、電流値と電圧値とを検出する検出部と、検出した各値から直流抵抗値を算出する算出部と、算出された直流抵抗値の変化に基づき、充電電流の大きさを変化させる制御部と、を少なくとも備える、リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置である。ここで該リチウムイオン二次電池の充電が、以下の工程:(A)所定の電圧Vaまでは所定の充電電流で充電を行う工程と、(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、を少なくとも含む充電であり、該リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極活物質層の形成された正極と、集電体上に負極活物質層の形成された負極と、電解液と、を少なくとも含み、該正極活物質層は、第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、第二の正極活物質である、層状構造の遷移金属リチウム酸化物と、を少なくとも含み、該工程(A)において、該検出部で逐次検出される電流値と電圧値とから、該算出部で直流抵抗値Rを算出し、該工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該制御部が該充電電流を増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の充電方法によれば、リン酸マンガン鉄リチウムと、層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを少なくとも含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の充電中に負極活物質にかかりうる負荷を低減することができるため、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させ、電池寿命を伸ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】リン酸マンガン鉄リチウムと層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を定電流充電したときの、電池のSOC(横軸)と直流抵抗値(縦軸)との関係を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態は、リチウムイオン二次電池の充電方法、リチウムイオン二次電池の充電を制御する方法、ならびにリチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置である。まず本発明のすべての実施形態におけるリチウムイオン二次電池について以下に説明する。
【0020】
実施形態の二次電池とは、充放電可能な化学電池のことを云う。本発明の実施形態はリチウムイオン二次電池である。実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極ならびに負極を含む電極と、電解液とを少なくとも構成要素として含む。リチウムイオン二次電池の放電の際に、電位の高い方の電極が正極、電位の低い方の電極が負極である。実施形態において、電極は、電極集電体の表面に電極活物質を含む電極活物質層が形成されてなる。ここで電極集電体は、通常、金属板または金属箔から構成され、電極活物質をその表面に保持し、電流を電極活物質に供給する、あるいは電極活物質から電流が供給される役割を果たす。また、電極活物質とは、化学反応を起こしてエネルギーを放出する物質であり、特にリチウムイオン二次電池内において電池反応を起こして外部に電気エネルギーを放出することができる物質のことである。電極活物質層は、先述の電極活物質のほか、導電助剤やバインダを必要に応じて含む電極活物質混合物(電極合剤)を堆積させた層である。導電助剤を互いに結着して電極活物質層を構成するためのものである。電極活物質層は、電池反応の場を提供する。ここで導電助剤とは、電極活物質質層中の電子移動を補助するためのものである。一方、バインダとは、上述の電極活物質、および場合により導電助剤を互いに結着して電極活物質層を構成するためのものである。
【0021】
実施形態において、正極は、正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層が形成されたものである。正極集電体は、金属板または金属箔、特にアルミニウム板またはアルミニウム箔から構成され、正極活物質をその表面に保持し、電流を正極活物質に供給する、あるいは正極活物質から電流が供給される役割を果たす。ここで正極活物質として用いられる材料としては、特に限定されないが、リチウムイオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属酸化物や金属硫化物が好ましい。このような金属酸化物や金属硫化物として、バナジウムの酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの酸化物、モリブデンの硫化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、チタンの硫化物及びこれらの複合酸化物、複合硫化物等が挙げられる。このような化合物としては、たとえばCr3O8、V2O5、V5O18、VO2、Cr2O5、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2V2S5MoS2、MoS3VS2、Cr0.25V0.75S2、Cr0.5V0.5S2が挙げられる。また、LiMY2(Mは、Co、Ni等の遷移金属、YはO、S等のカルコゲン化合物)、LiM2Y4(MはMn、YはO)、WO3等の酸化物、CuS、Fe0.25V0.75S2、Na0.1CrS2等の硫化物、NiPS8,FePS8等のリン、硫黄化合物等を用いることもできる。また、マンガン酸化物、スピネル構造を有するリチウム・マンガン複合酸化物も好ましいものである。
【0022】
特に、第1正極活物質としてリン酸マンガン鉄リチウム(以下、「LMFP」と称することがある。)と、第2正極活物質として層状構造の遷移金属リチウム酸化物、具体的には、LiCoO2、LiMnO2、LiNixMnyzO2、LiNixCoyAlzO2、Li6FeO4等を少なくとも含むことが好ましい。
【0023】
実施形態において、正極活物質層は、先述の正極活物質のほか、導電助剤やバインダを必要に応じて含む正極活物質混合物(正極合剤)を堆積させた層である。正極活物質層は、電池反応(正極反応)の場を提供する。ここで導電助剤とは、正極活物質層中の電子移動を補助するためのものである。導電助剤として、カーボンナノファイバー等のカーボン繊維、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、メゾポーラスカーボン、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料を用いることができる。一方、バインダとは、上述の正極活物質、場合により導電助剤を互いに結着して正極活物質層を構成するためのものである。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリピロール類等の導電性ポリマー、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ブタジエンラバー(BR)、クロロプレンラバー(CR)、イソプレンラバー(IR)、アクリロニトリルブタジエンラバー(NBR)等の合成ゴム、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン等の多糖類を用いることができる。その他、正極活物質層には、増粘剤、分散剤、安定剤等の、電極形成のために一般的に用いられる電極添加剤を適宜使用してもよい。
【0024】
正極は、正極活物質、導電助剤、バインダを含む正極合剤を適切な溶媒に分散させたスラリを、概して平面状の正極集電体の少なくとも1つの表面に塗布し、溶媒を蒸発させて正極活物質層を形成することにより得ることができる。
【0025】
一方、実施形態において、負極は、負極集電体の表面に負極活物質を含む負極活物質層が形成されたものである。負極集電体は、金属板または金属箔、特に銅板または銅箔から構成され、負極活物質をその表面に保持し、電流を負極活物質に供給する、あるいは負極活物質から電流が供給される役割を果たす。負極集電体として銅または銅合金にリチウムを点在させたものや、銅または銅合金に他の金属種(たとえば、スズ、インジウム)をめっきや蒸着により成膜したものを用いることもできる。負極集電体の厚さは、好ましくは5μm~20μmである。ここで負極活物質として用いられる材料としては、特に限定されないが、炭素材料、特に黒鉛を挙げることができる。黒鉛は、六方晶系六角板状結晶の炭素材料であり、石墨、グラファイト等と称されることがある。黒鉛は粒子の形態であることが好ましい。黒鉛には、天然黒鉛と人造黒鉛がある。天然黒鉛は安価に大量に入手することができ、構造が安定し耐久性に優れている。人造黒鉛とは人工的に生産された黒鉛のことであり、純度が高い(同素体等の不純物がほとんど含まれていない)ため電気抵抗が小さい。実施形態における負極活物質として、天然黒鉛、人造黒鉛とも好適に用いることができる。非晶質炭素による被覆を有する天然黒鉛、あるいは非晶質炭素による被覆を有する人造黒鉛を用いることもできる。非晶質炭素とは、部分的に黒鉛に類似するような構造を有していてもよい、微結晶がランダムにネットワークした構造をとった、全体として非晶質である炭素材料のことである。非晶質炭素として、カーボンブラック、コークス、活性炭、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボン、メゾポーラスカーボン等が挙げられる。これらの負極活物質は場合により混合して用いてもよい。また、非晶質炭素で被覆された黒鉛を用いることもできる。
【0026】
実施形態において、負極活物質層は、先述の負極活物質のほか、導電助剤やバインダを必要に応じて含む負極活物質混合物(負極合剤)を堆積させた層である。負極活物質層は、電池反応(負極反応)の場を提供する。ここで導電助剤とは、負極活物質層中の電子移動を補助するためのものである。導電助剤として、カーボンナノファイバー等のカーボン繊維、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、メゾポーラスカーボン、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料を用いることができる。一方、バインダとは、上述の負極活物質、場合により導電助剤を互いに結着して負極活物質層を構成するためのものである。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリピロール類等の導電性ポリマー、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ブタジエンラバー(BR)、クロロプレンラバー(CR)、イソプレンラバー(IR)、アクリロニトリルブタジエンラバー(NBR)等の合成ゴム、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン等の多糖類を用いることができる。その他、負極活物質層には、増粘剤、分散剤、安定剤等の、電極形成のために一般的に用いられる電極添加剤物を適宜使用してもよい。
【0027】
負極は、負極活物質、導電助剤、バインダを含む正極合剤を適切な溶媒に分散させたスラリを、概して平面状の負極集電体の少なくとも1つの表面に塗布し、溶媒を蒸発させて負極活物質層を形成することにより得ることができる。
【0028】
実施形態のリチウムイオン二次電池は、電解液を含む。実施形態において電解液は、非水溶媒と、電解質と、ゼオライトとを含むことが好ましい。非水溶媒として、アセトニトリル(AN)、γ-ブチロラクトン(BL)、γ-バレロラクトン(VL)、γ-オクタノイックラクトン(OL)、ジエチルエーテル(DEE)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジオキソラン(DOL)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(MTHF)、3-メチル-1,3-オキサジリジン-2-オン(MOX)、スルホラン(S)、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等が好ましく用いられ、これらは単独でまたは二種類以上の混合物として用いることができる。
【0029】
また、実施形態で用いられる電解液に含まれる電解質としては、リチウム塩を含むことが好ましい。リチウム塩として、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiB(C2O4)2、LiN(SO2F)2(LiFSI)、LiN(SO2CF3)2、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3等が挙げられ、これらの1種または2種以上が0.5~2.0M程度の濃度で上記の非水溶媒に溶解されて用いられる。
【0030】
実施形態の二次電池には、セパレータを使用することができる。セパレータは、正極と負極との間に積層され、正極と負極を分離して短絡を防止することや、電池反応に必要な電解質を保持して高いイオン導電性を確保すること、電池反応阻害物質の通過防止、安全性確保のための電流遮断特性を有することを目的として使用される部材である。セパレータとして、ポリオレフィンフィルムを用いることができる。ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、へキセン等のα-オレフィンを重合または共重合させて得られる化合物のことであり、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセンのほか、これらの共重合体を挙げることができる。このほか、ポリイミド樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール樹脂等を用いても良い。樹脂が低融点あるいは低軟化点である場合、二次電池の温度が上昇するとセパレータが熱溶融し収縮しやすい。セパレータの熱収縮が起こると電極間での短絡を起こすという問題が生じることから、樹脂としては、融点あるいは軟化点が高いもの、たとえば、140℃以上の融点あるいは軟化点を有するものが好ましい。
【0031】
実施形態で使用するセパレータとしてポリオレフィンフィルムを用いる場合、電池温度上昇時に閉塞される空孔を有する構造、すなわち多孔質あるいは微多孔質のポリオレフィンフィルムであると好都合である。また、セパレータとして架橋されたポリオレフィンフィルムを用いることができる。なお、セパレータの片面または両面に耐熱性微粒子層を有していてもよい。耐熱性の無機微粒子として、シリカ、アルミナ(α-アルミナ、β-アルミナ、θ-アルミナ)、酸化鉄、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム等の無機酸化物;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、スピネル、マイカ、ムライト等の鉱物を挙げることができる。
【0032】
セパレータとして、三次元的に空孔が連通孔により互いに連通された多孔質樹脂膜(本明細書では、このような構造を「3DOM構造」と称するものとする。)を用いることも好ましい。このような「3DOM構造」のセパレータを用いることにより、二次電池(特にリチウム二次電池、またはリチウムイオン二次電池)中のリチウムイオンの電流分布を均一化し、リチウムデンドライトを生成することなく安全に二次電池の充放電を行うことが可能となる。リチウムイオンの拡散が均一化され、これにより拡散律速反応の場合においても、イオン電流密度が均一化されるため、リチウムの電析反応が均一に制御される。また、3DOM構造がイオン電流密度を均一化する効果によって、電流密度の高い充放電条件においても、リチウムの電析反応が均一に制御され、金属リチウム負極を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0033】
上記の正極と、負極とを、必要に応じてセパレータを介して重ね合わせ、発電素子を形成することができる。正極と負極と、場合によりセパレータは、それぞれ1以上積層することができる。かかる発電素子に、正極タブおよび負極タブ等の、電流を取り出すための部材を適宜設け、その他の電池構成要素であるガスケット、集電体、封口板、セルケース等必要な部材を適宜加え、金属製のコインセルやアルミニウムラミネートフィルム等の外装体に封入し、非水電解液を注入してリチウムイオン二次電池を得ることができる。電池の形状はラミネート型のほか、筒型、角型、コイン型等、従来知られた形状を含むどのような形状であってもよく、特に限定されるものではない。リチウムイオン二次電池が、たとえばコイン型等の電池である場合、通常、セル床板上に負極板を乗せ、その上に電解液とセパレータを、さらに負極と対向するように正極を乗せ、ガスケット、封口板と共にかしめてリチウムイオン二次電池とされる。またリチウムイオン二次電池がたとえばラミネート型の電池である場合、発電素子に正極タブ、負極タブ等の端子を付け、これを金属ラミネートフィルムで作製したバッグに挿入し、電解液を注入した後、ラミネートフィルムを封止してリチウムイオン二次電池とすることができる。リチウムイオン二次電池の構造あるいは作製方法がこれらに限定されるものではない。
【0034】
一の実施形態は、上記のリチウムイオン二次電池の充電方法である。充電方法は、以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む。リチウムイオン二次電池の充電を開始して(すなわち工程(A)を行い)、リチウムイオン二次電池の電圧が所定の値Vaになるまで工程(A)を行い、次いで、所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う。ここで、工程(A)において、逐次検出される電流値と電圧値とから直流抵抗値Rを求め、当該直流抵抗値Rの、工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合(R/Rmin)が、あらかじめ定めた所定値以上に達したときに、充電電流を増加させる。たとえば工程(A)の充電を定電流(Ia1)で開始し、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rと工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminとの比(R/Rmin)が所定値に達したときに、充電電流をIa2に上昇させる。工程(A)のある時点で、充電電流をIa1からIa2に上昇させることにより、Ia1の定電流のまま充電するのに比べて、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまでの時間が短くなる。充電電流をIa1からIa2に上昇させるタイミングとして、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rを用いることができる。リチウムイオン二次電池の充電を開始すると、通常、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値は下降してその後上昇し、次いで急激に下降して工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminを呈し、その後上昇に転じる。その後、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rと工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminとの比(R/Rmin)が所定値に達したときに充電電流を切り替えることができる。本実施形態においてリチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rが、上記のような挙動をとる(すなわち、充電開始から一度下降し、上昇し、次いで急激に下降して直流抵抗値の最小値を記録し、その後上昇に転じる)のは、実施形態の充電方法を用いるリチウムイオン二次電池の正極活物質が第一の正極活物質であるリン酸マンガン鉄リチウムと、第二の正極活物質である層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを含むことに起因すると考えられる。
【0035】
このように、工程(A)のある時点で高充電電流密度での充電に切り替え、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したら、当該所定値Vaを維持するように充電電流を徐々に減少させながら定電圧充電を行い、所定の時点で充電を終了する。本実施形態の充電方法でリチウムイオン二次電池を充電することにより、CC充電からCV充電に早めに切り替えることが可能となる。このように、工程(A)において、一時的にあえて高充電電流密度での充電に切り替えて充電するのは、CC充電よりもCV充電の電流密度が小さくなるためである。充電時の電流密度が小さい方が負極に対する負荷電圧が小さくなるため、負極上への金属リチウムの析出が抑制されると考えられる。工程(A)における高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが遅いと、負極上への金属リチウムの析出が起こりやすくなりうる。また高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが早いと、発熱量が多くなりうる。工程(A)において、高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングは、リチウムイオン二次電池のSOCが約78~85%となる時点とするのが適切である。このようなリチウムイオン二次電池のSOCの目安として、上記のR/Rminの値を用いることができる。実施形態では、R/Rminの値が1.9以上となる時点で高充電電流密度での充電に切り替えることができる。工程(A)では、このように高充電電流密度での充電に切り替えてからリチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまで充電を続ける。ここで所定値Vaは、4.0V以上、好ましくは4.1V以上、さらに好ましくは4.2V以上の値である。リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したところで、当該電圧所定値Vaを維持するようにCV充電を行う工程(B)を遂行することができる。
【0036】
二の実施形態は、上記のリチウムイオン二次電池の充電方法である。充電方法は、以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む。リチウムイオン二次電池の充電を開始して(すなわち工程(A)を行い)、リチウムイオン二次電池の電圧が所定の値Vaになるまで工程(A)を行い、次いで、所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う。ここで、工程(A)において、充電電流値に対する電圧値の変化量が、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させる。たとえば工程(A)の充電を定電流(Ia1)で開始し、リチウムイオン二次電池の充電電流値に対する電圧値の変化量が所定値に達したときに、充電電流をIa2に上昇させる。工程(A)のある時点で、充電電流をIa1からIa2に上昇させることにより、Ia1の定電流のまま充電するのに比べて、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまでの時間が短くなる。充電電流をIa1からIa2に上昇させるタイミングとして、リチウムイオン二次電池の充電電流値に対する電圧値の変化量を用いることができる。リチウムイオン二次電池の充電を開始すると、通常、リチウムイオン二次電池の充電電流値に対する電圧値の変化量は上昇し、その後、リチウムイオン二次電池の充電電流値に対する電圧値の変化量が所定値に達したときに充電電流を切り替えることができる。
【0037】
このように、工程(A)のある時点で高充電電流密度での充電に切り替え、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したら、当該所定値Vaを維持するように充電電流を徐々に減少させながら定電圧充電を行い、所定の時点で充電を終了する。本実施形態の充電方法でリチウムイオン二次電池を充電することにより、CC充電からCV充電に早めに切り替えることが可能となる。このように、工程(A)において、一時的にあえて高充電電流密度での充電に切り替えて充電するのは、CC充電よりもCV充電の電流密度が小さくなるためである。充電時の電流密度が小さい方が負極に対する負荷電圧が小さくなるため、負極上への金属リチウムの析出が抑制されると考えられる。工程(A)における高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが遅いと、負極上への金属リチウムの析出が起こりやすくなりうる。また高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが早いと、発熱量が多くなりうる。工程(A)において、高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングは、リチウムイオン二次電池のSOCが約78~85%となる時点とするのが適切である。このようなリチウムイオン二次電池のSOCの目安として、上記の充電電流値に対する電圧値の変化量の値を用いることができる。実施形態では、充電電流値に対する電圧値の変化量の値が0.25mV/A以上、好ましくは0.30mV/A以上、さらに好ましくは0.35mV/A以上となる時点で高充電電流密度での充電に切り替えることができる。工程(A)では、このように高充電電流密度での充電に切り替えてからリチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまで充電を続ける。ここで所定値Vaは、4.0V以上、好ましくは4.1V以上、さらに好ましくは4.2V以上の値である。リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したところで、当該電圧所定値Vaを維持するようにCV充電を行う工程(B)を遂行することができる。
【0038】
三の実施形態は、上記のリチウムイオン二次電池の充電方法である。充電方法は、以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む、定電流定電圧充電である。リチウムイオン二次電池の充電を開始して(すなわち工程(A)を行い)、リチウムイオン二次電池の電圧が所定の値Vaになるまで工程(A)を行い、次いで、所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う。ここで、工程(A)において、逐次検出される電圧値Vの、該工程(A)における電圧値の最小値Vminに対する割合V/Vminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させる。たとえば工程(A)の充電を定電流(Ia1)で開始し、リチウムイオン二次電池の電圧値Vの、工程(A)における電圧値の最小値Vminとの比(V/Vmin)が所定値に達したときに、充電電流をIa2に上昇させる。工程(A)のある時点で、充電電流をIa1からIa2に上昇させることにより、Ia1の定電流のまま充電するのに比べて、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまでの時間が短くなる。充電電流をIa1からIa2に上昇させるタイミングとして、上記のV/Vminの値を用いることができる。リチウムイオン二次電池の充電を開始すると、通常、V/Vminの値は上昇しその後、V/Vminの値が所定値に達したときに充電電流を切り替えることができる。
【0039】
このように、工程(A)のある時点で高充電電流密度での充電に切り替え、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したら、当該所定値Vaを維持するように充電電流を徐々に減少させながら定電圧充電を行い、所定の時点で充電を終了する。本実施形態の充電方法でリチウムイオン二次電池を充電することにより、CC充電からCV充電に早めに切り替えることが可能となる。このように、工程(A)において、一時的にあえて高充電電流密度での充電に切り替えて充電するのは、CC充電よりもCV充電の電流密度が小さくなるためである。充電時の電流密度が小さい方が負極に対する負荷電圧が小さくなるため、負極上への金属リチウムの析出が抑制されると考えられる。工程(A)における高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが遅いと、負極上への金属リチウムの析出が起こりやすくなりうる。また高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが早いと、発熱量が多くなりうる。工程(A)において、高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングは、リチウムイオン二次電池のSOCが約78~85%となる時点とするのが適切である。このようなリチウムイオン二次電池のSOCの目安として、上記の充電電流値に対する電圧値の変化量の値を用いることができる。実施形態では、V/Vminの値が1.9以上となる時点で高充電電流密度での充電に切り替えることができる。工程(A)では、このように高充電電流密度での充電に切り替えてからリチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまで充電を続ける。ここで所定値Vaは、4.0V以上、好ましくは4.1V以上、さらに好ましくは4.2V以上の値である。リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したところで、当該電圧所定値Vaを維持するようにCV充電を行う工程(B)を遂行することができる。
【0040】
四の実施形態は、上記のリチウムイオン二次電池の充電を制御する方法である。制御方法は、充電が、
(A)定電流充電工程と、
(B)定電圧充電工程と、
を含む、充電であり、該充電を通じて、逐次充電電流値と電圧値とを検出し、該逐次検出される充電電流値と電圧値とから直流抵抗値Rと、該充電での直流抵抗値の最小値Rminとを記憶し、
該工程(A)は、
所定の充電電流Ia1で充電する工程と、
該所定の充電電流Ia1よりも大きい充電電流Ia2で充電する工程と、
を少なくとも含む。リチウムイオン二次電池の充電を開始して(すなわち工程(A)を行い)、リチウムイオン二次電池の電圧が所定の値Vaになるまで工程(A)を行い、次いで、所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う。ここで、工程(A)において、逐次検出される電流値と電圧値とから直流抵抗値Rを求め、当該直流抵抗値Rの、工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合(R/Rmin)が、あらかじめ定めた所定値以上に達したときに、充電電流を増加させる。たとえば工程(A)の充電を定電流(Ia1)で開始し、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rと工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminとの比(R/Rmin)が所定値に達したときに、充電電流をIa2に上昇させる。工程(A)のある時点で、充電電流をIa1からIa2に上昇させることにより、Ia1の定電流のまま充電するのに比べて、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまでの時間が短くなる。充電電流をIa1からIa2に上昇させるタイミングとして、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rを用いることができる。リチウムイオン二次電池の充電を開始すると、通常、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値は下降し、工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminを呈し、その後上昇に転じる。その後、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rと工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminとの比(R/Rmin)が所定値に達したときに充電電流を切り替えることができる。
【0041】
このように、工程(A)のある時点で高充電電流密度での充電に切り替え、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したら、当該所定値Vaを維持するように充電電流を徐々に減少させながら定電圧充電を行い、所定の時点で充電を終了する。本実施形態の充電方法でリチウムイオン二次電池を充電することにより、CC充電からCV充電に早めに切り替えることが可能となる。このように、工程(A)において、一時的にあえて高充電電流密度での充電に切り替えて充電するのは、CC充電よりもCV充電の電流密度が小さくなるためである。充電時の電流密度が小さい方が負極に対する負荷電圧が小さくなるため、負極上への金属リチウムの析出が抑制されると考えられる。工程(A)における高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが遅いと、負極上への金属リチウムの析出が起こりやすくなりうる。また高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが早いと、発熱量が多くなりうる。工程(A)において、高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングは、リチウムイオン二次電池のSOCが約78~85%となる時点とするのが適切である。このようなリチウムイオン二次電池のSOCの目安として、上記のR/Rminの値を用いることができる。実施形態では、R/Rminの値が1.9以上となる時点で高充電電流密度での充電に切り替えることができる。工程(A)では、このように高充電電流密度での充電に切り替えてからリチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまで充電を続ける。ここで所定値Vaは、4.0V以上、好ましくは4.1V以上、さらに好ましくは4.2V以上の値である。リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したところで、当該電圧所定値Vaを維持するようにCV充電を行う工程(B)を遂行することができる。
【0042】
五の実施形態は、電流値と電圧値とを検出する検出部と、
検出された電圧値に基づき、充電電流の大きさを変化させる制御部と、
を少なくとも備える、リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置である。制御装置は、上記のリチウムイオン二次電池の充電の制御のために用いられ、充電は、以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまで充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む。リチウムイオン二次電池の充電を開始して(すなわち工程(A)を行い)、リチウムイオン二次電池の電圧が所定の値Vaになるまで工程(A)を行い、次いで、所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う。ここで、工程(A)において、逐次検出される電圧値Vの、該工程(A)における電圧値の最小値Vminに対する割合V/Vminが、あらかじめ定めた所定値以上に達したとき、該充電電流を増加させる。たとえば工程(A)の充電を定電流(Ia1)で開始し、リチウムイオン二次電池の電圧値Vの、工程(A)における電圧値の最小値Vminとの比(V/Vmin)が所定値に達したときに、充電電流をIa2に上昇させる。工程(A)のある時点で、充電電流をIa1からIa2に上昇させることにより、Ia1の定電流のまま充電するのに比べて、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまでの時間が短くなる。充電電流をIa1からIa2に上昇させるタイミングとして、上記のV/Vminの値を用いることができる。リチウムイオン二次電池の充電を開始すると、通常、V/Vminの値は上昇し、その後、V/Vminの値が所定値に達したときに充電電流を切り替えることができる。
【0043】
このように、工程(A)のある時点で高充電電流密度での充電に切り替え、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したら、当該所定値Vaを維持するように充電電流を徐々に減少させながら定電圧充電を行い、所定の時点で充電を終了する。本実施形態の充電方法でリチウムイオン二次電池を充電することにより、CC充電からCV充電に早めに切り替えることが可能となる。このように、工程(A)において、一時的にあえて高い充電電流密度での充電に切り替えて充電するのは、CC充電よりもCV充電の電流密度が小さくなるためである。充電時の電流密度が小さい方が負極に対する負荷電圧が小さくなるため、負極上への金属リチウムの析出が抑制されると考えられる。工程(A)における高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが遅いと、負極上への金属リチウムの析出が起こりやすくなりうる。また高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが早いと、発熱量が多くなりうる。工程(A)において、高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングは、リチウムイオン二次電池のSOCが約78~85%となる時点とするのが適切である。このようなリチウムイオン二次電池のSOCの目安として、上記の充電電流値に対する電圧値の変化量の値を用いることができる。実施形態では、V/Vminの値が1.9以上となる時点で高充電電流密度での充電に切り替えることができる。工程(A)では、このように高充電電流密度での充電に切り替えてからリチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまで充電を続ける。ここで所定値Vaは、4.0V以上、好ましくは4.1V以上、さらに好ましくは4.2V以上の値である。リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したところで、当該電圧所定値Vaを維持するようにCV充電を行う工程(B)を遂行することができる。
【0044】
六の実施形態は、電流値と電圧値とを検出する検出部と、
検出した各値から直流抵抗値を算出する算出部と、
算出された直流抵抗値の変化に基づき、充電電流の大きさを変化させる制御部と、
を少なくとも備える、リチウムイオン二次電池の充電をするための制御装置である。制御装置は、上記のリチウムイオン二次電池の充電の制御のために用いられ、充電は、以下の工程:
(A)所定の電圧Vaまでは所定の充電電流で充電を行う工程と、
(B)該所定の電圧Vaに達してからは、該所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う工程と、
を少なくとも含む。リチウムイオン二次電池の充電を開始して(すなわち工程(A)を行い)、リチウムイオン二次電池の電圧が所定の値Vaになるまで工程(A)を行い、次いで、所定の電圧Vaを維持するように充電電流を漸次減少させながら定電圧充電を行う。ここで、工程(A)において、逐次検出される電流値と電圧値とから直流抵抗値Rを求め、当該直流抵抗値Rの、工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合(R/Rmin)が、あらかじめ定めた所定値以上に達したときに、充電電流を増加させる。たとえば工程(A)の充電を定電流(Ia1)で開始し、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rと工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminとの比(R/Rmin)が所定値に達したときに、充電電流をIa2に上昇させる。工程(A)のある時点で、充電電流をIa1からIa2に上昇させることにより、Ia1の定電流のまま充電するのに比べて、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまでの時間が短くなる。充電電流をIa1からIa2に上昇させるタイミングとして、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rを用いることができる。リチウムイオン二次電池の充電を開始すると、通常、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値は下降し、工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminを呈し、その後上昇に転じる。その後、リチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rと工程(A)における直流抵抗値の最小値Rminとの比(R/Rmin)が所定値に達したときに充電電流を切り替えることができる。
【0045】
このように、工程(A)のある時点で高充電電流密度での充電に切り替え、リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したら、当該所定値Vaを維持するように充電電流を徐々に減少させながら定電圧充電を行い、所定の時点で充電を終了する。本実施形態の充電方法でリチウムイオン二次電池を充電することにより、CC充電からCV充電に早めに切り替えることが可能となる。このように、工程(A)において、一時的にあえて高い充電電流密度での充電に切り替えて充電するのは、CC充電よりもCV充電の電流密度が小さくなるためである。充電時の電流密度が小さい方が負極に対する負荷電圧が小さくなるため、負極上への金属リチウムの析出が抑制されると考えられる。工程(A)における高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが遅いと、負極上への金属リチウムの析出が起こりやすくなりうる。また高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングが早いと、発熱量が多くなりうる。工程(A)において、高充電電流密度での充電に切り替えるタイミングは、リチウムイオン二次電池のSOCが約78~85%となる時点とするのが適切である。このようなリチウムイオン二次電池のSOCの目安として、上記のR/Rminの値を用いることができる。実施形態では、R/Rminの値が1.9以上となる時点で高充電電流密度での充電に切り替えることができる。工程(A)では、このように高充電電流密度での充電に切り替えてからリチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達するまで充電を続ける。ここで所定値Vaは、4.0V以上、好ましくは4.1V以上、さらに好ましくは4.2V以上の値である。リチウムイオン二次電池の電圧が所定値Vaに達したところで、当該電圧所定値Vaを維持するようにCV充電を行う工程(B)を遂行することができる。
【0046】
実施形態の充電方法ならびに制御方法において、工程(A)のある時点で高充電電流密度での充電に切り替えることにより、CC充電からCV充電への切り替えを早めに行うよう制御することの意義を以下に説明する。
図1は、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)と層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを少なくとも含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を充電レート1C(
図1の場合、充電電流密度は2.7mA/cm
2)で定電流充電したときの電池のSOC(横軸)と直流抵抗値(縦軸)との関係を表したものである。リン酸マンガン鉄リチウムと層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを少なくとも含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の充電をたとえば充電レート1Cにて開始すると、直流抵抗値Rが徐々に減少し(SOC30%程度まで)、次いで増加する。その後直流抵抗値Rが一気に減少し、SOC約60%の時点で直流抵抗値の最小値R
minを記録する。リン酸マンガン鉄リチウムと層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを少なくとも含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の直流抵抗値Rが上記のような挙動をとるのは、リン酸マンガン鉄リチウムの酸化還元反応が2段階になっている、すなわち、低電位側で鉄(Fe)、高電位側でマンガン(Mn)の3価/2価の酸化還元反応が起こるからである。このまま1CレートでのCC充電を続け、直流抵抗値Rと直流抵抗値の最小値R
minの比がR/R
minが所定の値になったときに、充電レート(充電電流密度)を増加する(たとえば2C)に切り替える。
図1では、SOCが約78~85%となる範囲に高充電電流密度充電に切り替えることが好ましい。高充電電流密度充電に切り替えてそのままCC充電を続け、電池電圧が所定の値(たとえば4.3V)になった時点でCV充電に切り替え、電池電圧を維持しながら充電し、所定の時点で充電を終了する。このように電池のSOCが78~85となったときにCC充電のレートを引き上げ、CC充電の時間を短くすることが重要である。これによりリチウムイオン二次電池の発熱量を抑制し、負極への金属リチウムの析出を防ぐことができる。SOCが上記の範囲%に達する前に高充電電流密度充電に切り替えると、リチウムイオン二次電池の発熱量が大きくなるおそれがある。またSOCが上記の範囲78~85%を超えてから高充電電流密度充電に切り替えると、金属リチウムの析出を効果的に防止できない。そこでCC充電中の高充電電流密度充電への切り替えは、電池のSOCが78~85%である間に行うのが良い。
【0047】
なお、リン酸マンガン鉄リチウムと層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを含む正極活物質において、リン酸マンガン鉄リチウムの混合割合を多くした場合、やや低いSOCで高充電電流密度充電に切り替えることが好ましい。これは、LMFPの混合比が多い方が、全体に対するLMFPのMnプラトーの反応領域割合が多くなり、低SOCで高電圧に到達するためである。低SOCで高充電電流密度充電に切り替えない場合は、高電圧でのCC充電時間が長くなりリチウム析出による劣化が増大する。たとえば、リン酸マンガン鉄リチウムと層状構造の遷移金属リチウム酸化物とを含む正極活物質において、リン酸マンガン鉄リチウムの混合比を20質量%とした正極を用いたリチウムイオン二次電池を充電する場合、高充電電流密度充電に移行するタイミングは、電池のSOCが78~85%となった時点であるが、リン酸マンガン鉄リチウムの混合比を20質量%よりも多くした正極を用いたリチウムイオン二次電池を充電する場合、高充電電流密度充電に移行するタイミングは、電池のSOCが上記範囲よりも低い時点となる。リチウムイオン二次電池の充電中に電池のSOCが上記範囲になったことを検知するために、たとえば、逐次検出される電流値と電圧値とから求められる直流抵抗値Rと、直流抵抗値の最小値Rminの比R/Rmin、充電電流値に対する電圧値の変化量、逐次検出される電圧値Vと電圧値の最小値Vminとの比V/Vminの値を用いることができる。これらの値を用いて、実施形態の充電方法における工程(A)にて、適切なタイミングで高充電電流密度充電に切り替えることにより、リチウムイオン二次電池のCV充電の時間を短くし、これにより電池の発熱量を抑制することができ、金属リチウムの析出も防止することができるため、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させ寿命を伸ばすことが可能となる。
【実施例0048】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0049】
<二次電池の作製>
正極活物質であるリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、「NMC532」)と、リン酸マンガン鉄リチウム(LiMn0.7Fe0.3PO4、「LMFP」、太平洋セメント株式会社社)とを80:20の割合で混合し、これに導電助剤としてカーボンナノチューブ0.6重量%、バインダとしてポリビニリデンフルオライド(PVDF)(クレハ株式会社)2.0重量%を混合した正極合剤を得た。この正極合剤をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリを厚さ16μmのアルミニウム箔上に塗布して乾燥してプレスし、目付19mg/cm2、片面あたりの塗工厚さ55μmとなるように正極活物質層を形成した正極を得た。リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物とリン酸マンガン鉄リチウムとの混合比を以下の表1に示すように変えて、異なる正極を作製した。
一方、黒鉛と、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)2.5重量%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)2.5重量%を混合して得た負極合剤を得た。この負極合剤を水(H2O)に分散させたスラリを厚さ8μmの銅箔上に塗布して乾燥してプレスし、目付10mg/cm3、片面あたりの塗工厚さ72μmとなるように負極活物質層を形成した負極を得た。
セパレータは、片側の面をアルミナ粒子でコーティングしたポリプロピレン多孔質膜(全体の厚さ24μm)を用いた。
電解液として、非水溶媒であるエチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=1:1:1(体積比)に、電解質であるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
【0050】
上記の各正極(4×3cm)と、セパレータ(4.5×3.5cm)と、負極(4.2×3.2cm)とを重ね合わせ、電池素子を作製し、これに正極タブと負極タブを設けた。正極の空孔体積とセパレータの空孔体積(各々の単位:ミリリットル)の合計の2倍の体積の上記電解液と共に、タブを設けた電池素子をアルミニウムラミネートフィルム(厚さ:110μm)(大日本印刷株式会社)の外装体内に組み込み、外装体の周囲を封止して、セル容量40mAhのラミネート型のセル(二次電池)を得た。
【0051】
<二次電池の充放電>
[初回充放電]
上記の通り作製したラミネート型セルの初回充放電を行った。初回充放電は、雰囲気温度25℃で、0.2C電流、上限電圧4.2V、0.05Cカットオフでの定電流定電圧(CC-CV)充電を行い、その後、2.8Vまで0.2C電流での定電流(CC)放電を行った。
【0052】
[2サイクル目以降の充電条件]
上記のように初回充放電したラミネート型セルに、充放電を行った。まず、各ラミネート型セルの充電条件は、それぞれ表1に示すように異なるものとした。
実施例1は、正極活物質中のLMFPの混合比:20質量部の電池について、以下の充電条件;設定温度:25℃、充電開始時の充電レート:1C、高充電電流密度充電時の充電レート:2C(高充電電流密度充電への移行タイミングは、ラミネート型セルのSOCが78%、直流抵抗値Rの充電工程における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rmin(表1には「抵抗相対値」と記載)1.9、で充電を行った。
実施例2は、正極活物質中のLMFPの混合比:20質量部の電池について、以下の充電条件;設定温度:25℃、充電開始時の充電レート:1C、高充電電流密度充電時の充電レート:2C(高充電電流密度充電への移行タイミングは、ラミネート型セルのSOCが80%、直流抵抗値Rの充電工程における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rmin(表1には「抵抗相対値」と記載)2.0、で充電を行った。
また実施例3は、正極活物質中のLMFPの混合比:20質量部の電池について、以下の充電条件;設定温度:25℃、充電開始時の充電レート:1C、高充電電流密度充電時の充電レート:2C(高充電電流密度充電への移行タイミングは、ラミネート型セルのSOCが85%、直流抵抗値Rの充電工程における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rmin(表1には「抵抗相対値」と記載)2.2、で充電を行った。
【0053】
一方、比較例1は、正極活物質中のLMFPの混合比:20質量部の電池について、以下の充電条件;設定温度:25℃、充電開始時の充電レート:1Cで充電を行った(充電電流密度の切替なし)。
比較例2は、正極活物質中のLMFPの混合比:20質量部の電池について、以下の充電条件;設定温度:25℃、充電開始時の充電レート:2Cで充電を行った(充電電流密度の切替なし)。
比較例3は、正極活物質中のLMFPの混合比:20質量部の電池について、以下の充電条件;設定温度:25℃、充電開始時の充電レート:1C、高充電電流密度充電時の充電レート:2C(高充電電流密度充電への移行タイミングは、ラミネート型セルのSOCが75%、直流抵抗値Rの充電工程における直流抵抗値の最小値Rminに対する割合R/Rmin(表1には「抵抗相対値」と記載)1.2、で充電を行った。
さらに比較例4は、正極活物質中のLMFPの混合比:0質量部の電池について、以下の充電条件;設定温度:25℃、充電開始時の充電レート:1Cで充電を行った(充電電流密度の切替なし)。
【0054】
[2サイクル目以降の放電条件]
各実施例および比較例において、電池電圧が4.3Vになるまで定電流充電を行い、その後は定電圧充電に切り替えて充電を終了した。その後以下の放電条件;セル表面における設定温度25℃、下限電圧:2.8V、電流密度:2.7mA/cm2(1C)で定電流放電(CC放電)を行った。
各実施例および比較例において、上記の各条件での充電と、本条件での放電との組み合わせを1サイクルとした。各電池について2000サイクルの充放電を行った。
初回充放電後のセルの容量に対する1000サイクルの充放電終了後のセルの容量の割合、ならびに2000サイクルの充放電終了後のセルの容量をそれぞれ算出した。
また、2000サイクル充放電中に到達したセル表面の最高温度と充電開始前の温度との差を記録した。
【0055】
【0056】
本発明のSOC範囲、あるいは抵抗相対値の範囲において、高充電電流密度に切り替えて充電を行うと、充放電中の電池の発熱が抑制され、かつサイクル特性を向上することができる。これに対し、高充電電流密度に切り替えることなく充電を行うと、電池の発熱は抑制できるが、容量維持率の低下は回避できない(比較例1)か、あるいは、電池の発熱を抑制することができない(比較例2)。また、高充電電流密度での充電に切り替えるには、好適なタイミングがあり、このタイミングを外した時に高充電電流密度による充電に切り替えても、電池の発熱や容量維持率の低下を避けることができない(比較例3)ことがわかった。
【0057】
本発明の充電方法によりリチウムイオン二次電池を充電すると、充放電中の電池の発熱を抑制し、かつサイクル充放電による電池容量の劣化も抑制できるので、電池の寿命を伸ばすことができる。