(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090119
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】映像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/58 20140101AFI20230622BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G03B21/58
G03B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204908
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】520220238
【氏名又は名称】株式会社有電社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】広田 修
(72)【発明者】
【氏名】木下 晴喜
(72)【発明者】
【氏名】奥 和博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳人
【テーマコード(参考)】
2H021
2K203
【Fターム(参考)】
2H021AA05
2H021BA01
2K203FA62
2K203FA82
2K203FB04
2K203FB09
2K203GC22
2K203GC30
2K203HB26
2K203MA40
(57)【要約】
【課題】 裏面にマグネットシートを貼合したスクリーンの、保持板のつなぎ目と重なった部分での明るさの不連続な変化を解消する映像装置及びその方法を提供する。
【解決手段】 プロジェクター1、スクリーン2及びスクリーン2を設置するための保持体3を具備する映像装置であって、スクリーン2は裏面に貼合したマグネットシート6を有し、保持体3は複数の区分板4をつなぎ目5を介して配置接合してなり、区分板4はマグネットシート6に付着する手段を有し、さらに、区分板4のつなぎ目5の段差に起因するマグネットシート6の凹凸を区分板4の裏面側から平坦化する裏面のスクリーン平坦化手段10(つなぎ目5の箇所への区分板4の裏面の固定具としてのマグネットである)を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクター、スクリーン及び前記スクリーンを設置するための保持体を具備する映像装置であって、
前記スクリーンは裏面に貼合したマグネットシートを有し、
前記保持体は複数の区分板をつなぎ目を介して配置接合してなり、
前記区分板は前記マグネットシートに付着する手段を有し、
さらに、前記区分板のつなぎ目の段差に起因する前記マグネットシートの凹凸を前記区分板の裏面側から平坦化する裏面のスクリーン平坦化手段を具備し、
該裏面のスクリーン平坦化手段が、前記つなぎ目の箇所への前記区分板の裏面の固定具としてのマグネットであることを特徴とする映像装置。
【請求項2】
前記マグネットシートに付着する手段は、マグネットが付着する薄板を芯材の両面に配置した構造を有する複合板であることを特徴とする請求項1に記載の映像装置。
【請求項3】
前記区分板の裏面の固定具としてのマグネットが、棒磁石、マグネットベルト又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1又は2に記載の映像装置。
【請求項4】
前記区分板の裏面の固定具としてのマグネットが、異方性マグネットであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の映像装置。
【請求項5】
前記プロジェクターが、超短焦点プロジェクターであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の映像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーンに投影された映像の明るさが保持体のつなぎ目で不連続に変化するように見える錯視現象を解消する映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターにより投影された画像を、プロジェクターと同方向から視認するために反射型スクリーンが開発されている。5Gのスマートフォンを介して動画の高画質・大画面での視聴要望が増えており、既にスマートフォンと無線で接続できる4K超短焦点プロジェクターが市販されている。このような背景より、超短焦点プロジェクターに対応でき、60~120インチと大型で高輝度、高解像度、および明るい部屋での高コントラスト視聴可能な反射型スクリーンへの要望が高まっている。超短焦点4Kプロジェクター用の大型反射型スクリーンにおいては、視認時の平面性を確保し、丸めて運べる等の可搬性が重要となり、スクリーンの裏面にマグネットシートを貼合したものが提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、反射型スクリーン用シートの反射面とは反対側の面に可撓性を有する磁性層をしてなる反射型スクリーンが開示され、可撓性を有する磁性層は、熱可塑性樹脂中に強磁性体粉を分散し、シート状に成型したものが好適であるとしている。
【0004】
特許文献2には、省電力化に適した空間結像アイリス面方式のディスプレイに用いる反射型スクリーン(以下、空間結像アイリス面方式・反射型スクリーンともいう。)において、対角60~120インチあるいはそれ以上の大型ディスプレイにも適用できるようにした反射型スクリーンの裏面にマグネットシートを貼合したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-72847号公報
【特許文献2】特許第5971742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
裏面にマグネットシートを貼合したスクリーンを用いる場合は、マグネット(磁石ともいう。)が付着する保持体に前記マグネットシートを付着させて使用する。前記スクリーンは可撓性を有するため大画面であっても丸めて容易に搬送できるという利点がある。一方、前記保持体は、これを複数の板に区分してなる区分板を視認場所でつなぎ合わせて一体化することで簡易に搬送できる。この場合、前記保持体は前記つなぎ目を有し、前記スクリーンは前記つなぎ目との重なり部を有する。
【0007】
しかし、前記区分板を複数配置させて形成した保持体が前記つなぎ目を有し、前記スクリーンが前記つなぎ目との重なり部を有する状態の下で、前記つなぎ目と重なったスクリーンの部分で明るさが不連続的に変化するように見える錯視現象が生じ、映像が見苦しくなる場合がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、裏面にマグネットシートを貼合したスクリーンの、保持体のつなぎ目と重なった部分での明るさが不連続的に変化するように見える錯視現象を簡易に解消しうる、映像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、前記錯視現象の原因及び対策について検討し、その結果、以下の知見を得た。
(ア)保持体のつなぎ目に段差があると、その段差によりマグネットシートを介してスクリーン表面にも段差の影響が現れる。この保持体の断面方向に生じる段差により保持体の平面性が損なわれるところ、すなわち保持体の平面のズレ部であるエッジが、段差の値で1μm程度でも存在すると、スクリーンに投影された明るさの変化が、エッジの両側で不連続になるように見える錯視現象が生じる。
(イ)上記の錯視現象は、マグネットを用いて保持体の裏面側からつなぎ目の両側を密着して面一に揃えた状態に固定することで、簡易に解消することができる。
【0010】
本発明は、上述の知見に基づき、さらに検討を加えてなされたものであり、以下の要旨構成を有する。
[1] プロジェクター、スクリーン及び前記スクリーンを設置するための保持体を具備する映像装置であって、
前記スクリーンは裏面に貼合したマグネットシートを有し、
前記保持体は複数の区分板をつなぎ目を介して配置接合してなり、
前記区分板は前記マグネットシートに付着する手段を有し、
さらに、前記区分板のつなぎ目の段差に起因する前記マグネットシートの凹凸を前記区分板の裏面側から平坦化する裏面のスクリーン平坦化手段を具備し、
該裏面のスクリーン平坦化手段が、前記つなぎ目の箇所への前記区分板の裏面の固定具としてのマグネットであることを特徴とする映像装置。
[2] 前記マグネットシートに付着する手段は、マグネットが付着する薄板を芯材の両面に配置した構造を有する複合板であることを特徴とする[1]に記載の映像装置。
[3] 前記区分板の裏面の固定具としてのマグネットが、棒磁石、マグネットベルト又はこれらの組み合わせであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の映像装置。
[4] 前記区分板の裏面の固定具としてのマグネットが、異方性マグネットであることを特徴とする[1]~[3]のいずれか一つに記載の映像装置。
[5] 前記プロジェクターが、超短焦点プロジェクターであることを特徴とする[1]~[4]のいずれか一つに記載の映像装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、つなぎ目を有する保持体に磁力で付着させて用いるスクリーンの、前記つなぎ目の段差を簡易に無くして映像の錯視現象を解消することができ、大画面のスクリーンの設置及び調整の作業性及び作業効率の向上につながるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る映像装置の一例を示す模式図である。
【
図3】保持体及び裏面の固定具としてのマグネットの一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の好ましい適用対象である空間結像アイリス面方式の映像装置の一例を示す模式図である。
【
図5】
図4の映像装置の空間結像アイリス面方式・反射型スクリーンの一例を示す断面図である。
【
図6】つなぎ目の段差に起因するマグネットシートの凹凸を示す模式図である。
【
図7】マグネットの磁力作用方向の種類を示す模式図である。
【
図8】マグネットの着磁の種類を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の相対関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面間の相互関係においても、互いの寸法の相対関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
[映像装置]
本発明の映像装置は、例えば
図1に示すように、プロジェクター1、スクリーン2及びスクリーン2を設置するための保持体3を具備する。
【0015】
[プロジェクター]
プロジェクター1は、静止画又は動画の画像光をスクリーン2へ投射する手段であり、通常のプロジェクターを使用できるが、好ましくは、超短焦点プロジェクターである。
プロジェクターが超短焦点プロジェクターである場合、画像光の出射口からスクリーン面までの距離が10~80cm程度と非常に短く、60インチサイズ以上の大画面では画像光の主光線の入射角が非常に大きくなるため、画像の歪みの原因であるスクリーン面の僅かな凹凸によって、水平な線が波打つように曲がり画像に乱れが生じる場合がある。これに対し、本発明では、スクリーン面の僅かな凹凸をなくすことができるため、超短焦点プロジェクターを用いても画像の乱れは生じない。したがって、超短焦点プロジェクターを具備する本発明の映像装置によれば、超短焦点プロジェクターを具備する従来の映像装置では到達し得ない高画質の映像を観賞することができるため、好ましい。
【0016】
[スクリーン]
スクリーン2は、前記画像光を受けて表示画像を拡散しかつ前記画像光をプロジェクター1側へ反射し、前記表示画像をプロジェクター1側で観察者が観賞する。
スクリーン2の保持体3への設置を容易とするために、スクリーン2は裏面に貼合したマグネットシート6を有するものとする。なお、スクリーン2は表示画像の形に合わせて、一般的な矩形平面状体が好ましい。また、スクリーン2は、大型スクリーンの場合持ち運びしやすいという可搬性の点で、マグネットシート6を貼合した形態で筒状に丸められる可撓性のシート状体が好ましい。なお、マグネットシート6を貼合したスクリーン2を、以下、マグネットスクリーンともいう。マグネットスクリーンの厚さは、約1mmが好ましい。約1mmより薄いと磁力が弱く保持体との付着時にシワ等の変形を生じやすく、さらに保持体から剥がれる虞がある。約1mmより厚いとスクリーン2が重く可搬性を損なう。また、丸めるのが困難である。
【0017】
なお、スクリーン2としては、画像の高輝度、高解像度、および明るい部屋でも高コントラストとなる点で、空間結像アイリス面方式・反射型スクリーン(例えば特許文献2参照)であることが好ましい。前記空間結像アイリス面方式とは、
図4に示すように、プロジェクター1から焦点距離fのスクリーン2の反射面までの距離aと、前記反射面から視認者の目までの距離bとが、1/a+1/b=1/fの関係式を満たす(ただし、a,bはそれぞれ±10%以内の許容範囲を有する。)ようにして、視認者の目の位置を空間結像アイリス面30とする方式である。この方式に用いるスクリーンとしては、例えば
図5に示すように、平坦な基板35と、 基板35正面側を被覆する層をなし、該層の表面形状により面内の左右方向と上下方向とで拡散角度が異なる表面形状依存型の異方性拡散層39と、 基板35背面側を被覆する層をなし、該層の背面側が、レンズ面36aと非レンズ面36bを備え該層の背面側に凸となる単位レンズが複数配列したフレネルレンズ面形状であり、該フレネルレンズ面形状の面がスクリーン2の反射面になる、焦点距離fのレンズ層36と、レンズ層36の、レンズ面36a、又は、レンズ面36a及び非レンズ面36bを被覆する層をなし、該層が高反射率(反射率60%以上)の金属からなる反射層37と、反射層37の背面側を被覆して、反射層37を保護する保護層38と、保護層38の背面側に貼合したマグネットシート6と、を有する。マグネットシート6は両面接着テープ(図示せず)にてスクリーン2裏面に貼合される。
【0018】
なお、スクリーン2は対角60インチ以上の大型スクリーンである場合、より効果的となる。対角60インチ未満では、保持体3がつなぎ目5なしの一体物の場合でも持ち運びが容易なためである。
【0019】
[保持体及び区分板]
一方、保持体3は、大型スクリーンの場合の可搬性の点で、複数の区分板4をつなぎ目5を介して配置接合してなり、かつスクリーン2を設置する際、丸めた状態から保持体3へ広げて固定するのを容易とするために、区分板4はマグネットシート6に付着する手段を有するものとする。ここで、「マグネットシート6に付着する」とは、マグネットシート6の磁気により磁化され生じた磁力でマグネットシート6に付着することを意味する。
【0020】
区分板4は、軽量化のために、例えば
図2に示すように、マグネットシート6等のマグネットが付着する薄板7を芯材8の両面に配置した構造を有する複合板9からなるものが好ましい。薄板7の材料としては、スチール等の金属材料が挙げられる。薄板7の厚さは1mm以下が好ましい。芯材8の材料としては、発泡ポリエチレン等の高分子材料が挙げられる。芯材8の厚さは1~2mmが好ましい。
【0021】
また、本発明では、区分板4の「マグネットシートに付着する手段」とスクリーン2裏面の「マグネットシート」との双方のうち一方を他方と交換した形態としてもよい。これによっても、スクリーン2を保持体3に簡易に固定することができる。ただし、前記交換後の形態において、スクリーン2裏面の「マグネットシートに付着する手段」は、スクリーン2の丸め易さのため、可撓性に富み、区分板4の「マグネットシート」は、保持体3の変形し難さのため、可撓性に乏しいことが好ましい。
【0022】
[裏面のスクリーン平坦化手段]
さらに、本発明の映像装置は、区分板4のつなぎ目5の段差に起因するマグネットシート6の凹凸を区分板4の裏面側から平坦化する裏面のスクリーン平坦化手段10(
図3参照)を具備する。
【0023】
前記裏面のスクリーン平坦化手段10がない状態では、複数の区分板4をつなぎ目5を介して配置接合して保持体3となす際に、
図6に模式的に示すように、つなぎ目5のところに段差40が生じる場合がある。段差40が存在すると、保持体3とマグネットシート6の間に生じる磁力50により、マグネットシート6が段差40に倣う形で保持体3に密着するため、マグネットシート6には段差40に倣った形の凹凸が生じ、これに倣ってスクリーン2の表面にも凹凸が生じる。この凹凸が前述のエッジ起因の錯視現象の原因となる。この錯視現象は、スクリーン2の拡散特性にも関係するが、空間結像アイリス面方式のスクリーンでは、段差40の値(区分板の板厚方向に平行な方向の寸法)が数μmと僅かであっても発現する場合がある。
【0024】
裏面のスクリーン平坦化手段10(
図3参照)は、つなぎ目5の箇所への区分板4の裏面の固定具としてのマグネットである。前記裏面の固定具をマグネットとしたことにより、つなぎ目5の段差が簡易に解消でき、しかも、前記裏面の固定具を非マグネットとした場合に比べて、つなぎ目5の箇所に区分板4の裏面を固定する作業(以下、裏面固定作業ともいう。)の効率が格段に向上する。
【0025】
[区分板の裏面の固定具としてのマグネット]
区分板4の裏面の固定具としてのマグネット(以下、裏面固定用マグネットともいう。)は、つなぎ目5の両側の区分板4,4の裏面を面一に連結し固定するように配置することで、前記裏面固定作業に供されるが、この裏面固定作業の容易性の観点から、棒磁石11(マグネットバーとも称される。)であること(
図3(a))、マグネットベルト12(ゴム磁石又はラバーマグネットとも称される。)であること(
図3(b))又は棒磁石11とマグネットベルト12との組み合わせであること(
図3(c))が好ましい。
【0026】
前記裏面固定用マグネットは、磁力が強い程よいが汎用のネオジム磁石の強さがあれば十分である。ただし、磁石の強さが強すぎると付着後に引き剥がすことが困難になるので、引き剥がせる程度の磁石の強さを選定するのがよい。なお、前記裏面固定用マグネットの選定にあたっては、吸着力が70~200gf/cm2の範囲内のものが好ましい。吸着力が70gf/cm2未満では裏面の固定状態が不安定であり、吸着力が200gf/cm2超では付着後の引き剥がしが困難である。なお、より好ましくは90~140gf/cm2である。
【0027】
ここで、吸着力は、以下の方法で測定される。すなわち、板状マグネットを測定対象とし、移動テーブル上に貼り付け、その上からロードセル付きのスチール製の吸着板を隙間なく吸着させ、移動テーブルを下降させて、測定対象と吸着板が分離した時の荷重をロードセルで検出して吸着力(吸着面の単位面積当たりの荷重で表す場合もある)を得るという方法である。なお、吸着力は測定対象の厚さとともに増加することに留意する必要がある。
【0028】
なお、磁石には、材料別の種類として、上記ネオジム磁石のほか、フェライト磁石、サマリウム・コバルト磁石及びアルニコ磁石があり、いずれも前記裏面固定用マグネットとして用いうる。
【0029】
[棒磁石及びマグネットベルト]
棒磁石11は、前記裏面固定作業の作業性及び固定の安定・確実性の観点から丸棒型ではなく直方体型が好ましく、その寸法は、例えば市販品の長さ40mm×幅15mm×厚さ5mmが挙げられるが、これに限定されず適宜決定すればよい。また、十分な固定状態を得るために、棒磁石11は、つなぎ目5の1本当たり複数配置し、各棒磁石11の厚さ方向を区分板4の厚さ方向に合わせ、各棒磁石11の長さ方向をつなぎ目5の長さ方向と交差させること(
図3(a),(c))が好ましい。また、2つ以上の棒磁石11を隣接配置する場合、隣接する2つの棒磁石11の配置間隔を10~15cmとすると、十分な固定状態を得つつ、前記裏面固定用マグネットの使用量の徒な増加を抑止できて好ましい。
【0030】
マグネットベルト12は長さ方向に直交する矩形断面を有する長尺物であり、前記裏面固定作業の作業性及び固定の安定・確実性の観点から、つなぎ目5の1本当たり1本のマグネットベルト12を用い、マグネットベルト12の厚さ方向を区分板4の厚さ方向に合わせ、マグネットベルト12の幅方向のほぼ中心位置(すなわち幅方向中心点を起点とする幅方向距離が全幅の±15%以内の範囲領域内の位置)がつなぎ目5の位置と一致する配置とすること(
図3(b)、(c))が好ましい。また、マグネットベルト12の寸法は、厚さ=3~4mm、幅=40~50mmとし、長さは、マグネットベルト12の単独使用の場合(
図3(b))、つなぎ目5の1本の長さから、0~32cmを減じた長さとすると、十分な固定状態を得つつ、前記裏面固定用マグネットの使用量の徒な増加を抑止できて好ましい。
【0031】
また、棒磁石11とマグネットベルト12との組み合わせの場合(
図3(c))、マグネットベルト12の長さ方向の両端部から各16cmの部分をマグネットベルトより吸着力が強い一つ又は複数の棒磁石11で置換し、その際、隣接する2つの棒磁石11の配置間隔及び隣接する棒磁石11とマグネットベルト12の配置間隔を上記と同じ10~15cmとすることで、マグネットベルト単独より強力な固定状態を確保できる。
【0032】
また、前記裏面固定用マグネットとして用いうるマグネットには、一般に、全方向に同じように磁力50が作用するように磁区45が合体してなる等方性マグネット(
図7(a))と、一定方向にのみ磁力50が作用するように磁区45が合体してなる異方性マグネット(
図7(b))とがあるが、より高い吸着力が得られる異方性マグネットが好ましい。なお、異方性マグネットを用いる場合、異方性マグネットの磁力50が作用する方向を前記裏面固定用マグネットの厚さ方向とすべきことはいうまでもない。
【0033】
また、前記裏面固定用マグネットとして用いうるマグネットには、一般に、着磁の種類として片面多極着磁(
図8(a))、両面多極着磁(
図8(b))及び両面着磁(
図8(c))があるが、好ましくは、より高い吸着力が得られる片面多極着磁である。
【0034】
また、本発明の映像装置(
図1、
図2及び
図3参照)を用いて前記錯視現象を防止する方法(以下、錯視防止方法ともいう。)は、スクリーン2の裏面にマグネットシート6を貼合し、保持体3は複数の区分板4をつなぎ目5を介して配置接合し、区分板4にマグネットシート6を付着させる工程、さらに、区分板4のつなぎ目5の段差40に起因するマグネットシート6の凹凸(
図6参照)を、裏面のスクリーン平坦化手段10を用いて区分板4の裏面側から平坦化する裏面のスクリーン平坦化工程、を有し、裏面のスクリーン平坦化手段10が、つなぎ目5の箇所への区分板4の裏面の固定具としての裏面固定用マグネットを用いるものである。
【0035】
前記錯視防止方法においては、前記区分板4を、マグネットが付着する薄板7を芯材8の両面に配置した複合板9とすること(
図2参照。)が好ましい。また、前記錯視防止方法においては、前記裏面固定用マグネットが、棒磁石11、マグネットベルト12又はこれらの組み合わせであることが好ましく、また、前記裏面固定用マグネットが、異方性マグネットであることが好ましい。
【実施例0036】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
実施例1として、
図1に示した形態を有する映像装置を製作した。プロジェクター1は汎用の超短焦点4Kプロジェクターを用いた。スクリーン2は
図5に示した空間結像アイリス面方式・反射型スクリーン(100インチ16:9、厚さ0.9mm)とし、裏面にマグネットシート6(厚さ0.3mm)を貼合した形態のマグネットスクリーンとした。映像装置は、
図4のように空間結像アイリス面30が形成される配置構成とした。
【0037】
保持体3は
図1のようにスクリーン2との重なり部の外側に縦横の余白ができる矩形状体となるように設計したが、外側に縦横の余白ができないようにスクリーンと同じ大きさにしてもよい。該矩形状体と同一形状の素板を横方向に3分割(ほぼ3等分)して3枚の矩形状の区分板4とし、該3枚の区分板4を、縦方向に延在するつなぎ目5(区分板4の横方向端面)を介して配置接合して、保持体3を形成した。区分板4は
図2に示す形態とし、発泡スチロールからなる芯材8(厚さ2mm)の両面に、マグネットが付着する薄板7(スチール製、厚さ0.5mm)を配置して形成した。
【0038】
実施例1では、前記裏面固定用マグネットとして、マグネットベルト12を使用した(
図3(b))。
【0039】
区分板4の配置接合に際し、隣り合う区分板4の端部がつなぎ目5で密接するように配置し、つなぎ目5の両側の区分板4の裏面を面一に連結し固定するようにマグネットベルト12を配置して付着させた。マグネットベルト12としては、異方性マグネットかつ片面多極着磁の磁性体を混合したゴム磁石からなる、厚さ30mm×幅40mm×長さ(=区分板4の縦長さ)の寸法のもの(吸着力110gf/cm2)を使用し、幅方向のほぼ中心がつなぎ目5の直上に位置し、多極着磁側の片面が区分板4の裏面と付着するように配置した。この配置及び付着の手作業は容易に遂行できた。
【0040】
実施例1の映像装置によれば、保持体3に段差40の発生を防止できて、スクリーン2の表面が平坦な状態に維持され、プロジェクター1からスクリーン2への投影映像には前述の錯視現象が発現しなかった。なお、マグネットベルト12を区分板4の裏面から剥がす手作業は容易に遂行できた。
【0041】
[実施例2]
実施例2として、実施例1において、前記裏面固定用マグネットを、マグネットベルト12(
図3(b))から棒磁石11(
図3(a))に変更し、それ以外は実施例1と同様とした。
【0042】
区分板4の配置接合に際し、隣り合う区分板4の端部がつなぎ目5で密接するように配置し、つなぎ目5の両側の区分板4の裏面を面一に連結し固定するように棒磁石11を配置して付着させた。棒磁石11としては、市販のネオジム磁石からなる、厚さ5mm×幅13.5mm×長さ40mmの寸法のもの(吸着力15kgf)を使用し、長さ方向がつなぎ目5の延在方向とほぼ直交し、長さ方向のほぼ中心位置がつなぎ目5の直上に位置するように、複数個を各つなぎ目5の延在方向に約15cmの配置間隔で配置した。この配置及び付着の手作業は容易に遂行できた。
【0043】
実施例2の映像装置によれば、保持体3の裏面の段差40の発生を防止できて、スクリーン2の表面が平坦な状態に維持され、プロジェクター1からスクリーン2への投影映像には前述の錯視現象が発現しなかった。なお、マグネットベルト12を区分板4の裏面から剥がす手作業は容易に遂行できた。