(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090126
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】エレベーターの乗りかご、及び、エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
B66B11/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204917
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 亮平
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306AA02
3F306CA39
(57)【要約】
【課題】荷重検出の精度が維持できると共に、メンテナンス時における作業性を確保することができるエレベーターの乗りかご、及び、エレベーターを提供する。
【解決手段】荷重センサ装置に係るかご上バネ構造体は、プーリ支持部及び上枠との間に伸縮可能に配置される複数のバネを有するバネユニットと、上枠に対してプーリ支持部が近づく方向への移動を許容すると共に、上枠に対してプーリ支持部が離れる方向への移動を制限するように上枠及びプーリ支持部間に設けられた落下防止部材と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客や荷物を乗せるかご本体と、
前記かご本体の上部において、主ロープが巻き掛けられるかご上プーリと、
前記かご上プーリの回転面に直交する方向において、前記かご上プーリを挟む位置に設けられ、前記かご上プーリを回転可能に支持する一対のプーリ支持部と、
かご本体を支持する一対の上枠と、
前記上枠と前記プーリ支持部との間に配置されるかご上バネ構造体と、を備え、
前記かご上バネ構造体は、
前記プーリ支持部及び前記上枠との間に伸縮可能に配置される複数のバネを有するバネユニットと、
前記上枠に対して前記プーリ支持部が近づく方向への移動を許容すると共に、前記上枠に対して前記プーリ支持部が離れる方向への移動を制限するように前記上枠及び前記プーリ支持部間に設けられた落下防止部材と、を有する
エレベーターの乗りかご。
【請求項2】
前記落下防止部材は、前記上枠側に設けられた上側通し穴に挿通されると共に、前記プーリ支持部側に設けられた下側通し穴に挿通された落下防止ロッドで構成されている
請求項1に記載のエレベーターの乗りかご。
【請求項3】
前記落下防止部材は、一対の折り曲げ部を有する断面がコの字形状の折り曲げ板で構成されており、一方の折り曲げ部は前記上枠側に固定され、他方の折り曲げ部は、前記プーリ支持部が前記上枠に対して離れる方向への移動のみを制限するように前記プーリ支持部側を支持する
請求項1に記載のエレベーターの乗りかご。
【請求項4】
乗客や荷物を乗せるかご本体と、
前記かご本体の上部において、主ロープが巻き掛けられるかご上プーリと、
前記かご上プーリの回転面に直交する方向において、前記かご上プーリを挟む位置に設けられ、前記かご上プーリを回転可能に支持する一対のプーリ支持部と、
かご本体を支持する一対の上枠と、
前記上枠と前記プーリ支持部との間に配置されるかご上バネ構造体と、を備え、
前記かご上バネ構造体は、
前記プーリ支持部及び前記上枠との間に伸縮可能に配置される複数のバネを有するバネユニットと、
前記上枠に対して前記プーリ支持部が近づく方向への移動を許容すると共に、前記上枠に対して前記プーリ支持部が離れる方向への移動を制限するように前記上枠及び前記プーリ支持部間に設けられた落下防止部材と、を有する乗りかご、を備える
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの乗りかご、及び、エレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗りかごの荷重を検出する荷重センサを備えたエレベーターが知られている。特許文献1では、乗りかごを支持するかご枠の上枠側に設けられたヒッチバネや、防振ゴムの変位を計測することで、乗りかごの荷重を検知する構成が開示されている。
【0003】
特許文献1では、メインロープが上枠を支持することで、乗りかごにかかる荷重を全て受け持つ。このような構成において、上枠を貫通して固定されるメインロープの端部にヒッチバネを取り付け、ヒッチバネの変位を計測することで乗りかごの荷重を検知している。
【0004】
また、特許文献1において、メインロープが、乗りかごのかご上に設けられたカーシーブを介して乗りかごに架かる荷重を全て受け持つ構成の場合には、カーシーブを支持するカーシーブ枠を、かご枠の上枠に防振ゴムを介して取り付ける。そして、防振ゴムの撓みを計測することで乗りかごの荷重を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、大積載の高速エレベーターでは、かご内の積載量が大きく、昇降行程が高いことから、テールコードやコンペンロープの質量も大きくなる。さらに、エレベーターの乗りかご自体の自重が大きいため、荷重を検知するために取り付けられるバネや防振ゴム等の弾性部材に係る荷重が大きい。このため、荷重に耐え得る弾性部材を選定する必要がある。このため、弾性部材として、大型のバネを用いたり、バネや防振ゴムの個数を増やしたりすることで、荷重検出装置を、大きな荷重に耐え得る構成とすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、乗りかごの上部のスペースは限られているため、大型のバネを用いることは難しい。また、バネの個数を増やした場合、バネの交換やかご上に設けられるプーリの交換等のメンテンナンス時において、バネの位置決めが難しく、作業効率が低下するという問題がある。
【0008】
一方、防振ゴムは、負荷する荷重と防振ゴムの変位に履歴性(ヒステリシス)が生じると共に、非線形性や劣化の影響が出やすい。このため、荷重検知装置に防振ゴムを用いた場合には、防振ゴムに対して同じ荷重が掛かった状態であっても、検出値を毎回同じにすることが難しいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、荷重検出の精度が維持できると共に、メンテナンス時における作業性を確保することができるエレベーターの乗りかご、及び、エレベーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のエレベーターの乗りかごは、乗客や荷物を乗せるかご本体と、かご本体の上部において、主ロープが巻き掛けられるかご上プーリと、かご上プーリの回転面に直交する方向において、かご上プーリを挟む位置に設けられ、かご上プーリを回転可能に支持する一対のプーリ支持部とを備える。また、かご本体を支持する一対の上枠と、上枠とプーリ支持部との間に配置されるかご上バネ構造体とを備える。そして、かご上バネ構造体は、プーリ支持部及び上枠との間に伸縮可能に配置される複数のバネを有するバネユニットと、上枠に対してプーリ支持部が近づく方向への移動を許容すると共に、上枠に対してプーリ支持部が離れる方向への移動を制限するように上枠及びプーリ支持部間に設けられた落下防止部材と、を有する。
【0011】
本発明のエレベーターは、上記乗りかごを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷重検出の精度が維持できると共に、メンテナンス時における作業性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの乗りかごの構成例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2Aは、本実施形態の乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部を正面から見た概略構成図であり、
図2Bは、乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部を横方向から見た概略構成図である。
【
図4】落下防止ロッド31を拡大して示した概略構成図である。
【
図5】
図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部を正面から見た概略構成図であり、
図5Bは、乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部を横方向から見た概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るエレベーターの乗りかご及びエレベーターの一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0015】
≪第1の実施形態≫
1.エレベーターの乗りかごの構成
まず、本発明の第1の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係るエレベーター及び乗りかごについて、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態のエレベーター1の構成例を示す概略構成図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のエレベーター1は、建築構造物内に形成された昇降路2に設けられている。エレベーター1は、昇降路2内を昇降動作し、人や荷物を載せる乗りかご40と、主ロープ13とを備える。以下では、乗りかご40が昇降移動する方向を上下方向として説明する。
【0017】
[昇降路]
昇降路2は、乗りかご40が昇降するための空間であり、建物内部の各階を上下方向に貫いて設けられている。昇降路2の内壁面には、乗りかご40の昇降を案内するガイドレール(図示を省略する)が取り付けられている。また、昇降路2の壁面における各階に相当する高さ位置には、各階に通じる乗場ドア(図示を省略する)が設けられている。
【0018】
[乗りかご]
乗りかご40は、主ロープ13を介して、釣合おもり(図示を省略する)と連結され、昇降路2内を昇降する。この乗りかご40は、昇降路2内の壁面に設けられたガイドレール(図示を省略する)に案内され、昇降路2内の上下方向に昇降する。後述するが、乗りかご40のかご本体3の前面には、乗場ドアに対応する位置に、かごドア4が設けられており、各階に乗りかごが停止した際に、かごドア4及び乗場ドアが開くことで、乗りかご40への人や荷物の乗り降りが行われる。乗りかご40については後で詳述する。
【0019】
[主ロープ]
主ロープ13は、その中腹部分が乗りかご40のかご上プーリ20(
図2A参照)に巻き掛けられていると共に、図示を省略する巻上機及び釣合いおもりに接続されている。主ロープ13が図示を省略する巻上機により巻き上げられることにより、乗りかご40が昇降動作する。
【0020】
2.乗りかご
次に、本実施形態の乗りかご40について説明する。本実施形態の乗りかご40は、かご本体3と、かご枠5と、プーリ支持部22と、かご上プーリ20とを備える。また、乗りかご40は、かご上バネ構造体24と、荷重センサ装置27とを備える。以下の説明において、乗りかご40の昇降方向を上下方向、乗りかご40の水平方向であって、かご上プーリ20の回転軸に直交する方向を左右方向、かご上プーリ20の回転軸に沿う方向を前後方向とする。
【0021】
図2Aは、本実施形態の乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部の正面から見た概略構成図であり、
図2Bは、乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部を横方向から見た概略構成図である。
【0022】
[かご本体]
かご本体3は、中空の略直方体状に形成されており、
図1に示すように、かご床9、天井及びかご床9と天井との間に設けられる側壁で構成されている。昇降路2の乗場ドアに対向するかご本体3の前面には、かごドア4が設けられている。
【0023】
[かご枠]
かご枠5は、上枠6、下枠8、及び、縦枠7で構成されており、かご枠5内部にかご本体3を支持している。下枠8は、乗りかご40の上下方向における下側に配置されており、コンペンブラケット14を支持している。この、コンペンブラケット14には、テールコード梁15及びコンペン吊り板16が固定されている。このテールコード梁15にはテールコード18が固定され、コンペン吊り板16からはコンペンロープ17が吊り下げられている。また、下枠8の乗りかご40側には、床下ベース11が設けられている。この床下ベース11とかご床9との間には、かご下防振ゴム10が複数個配置されている。かご下防振ゴム10は、所定のバネ定数を有する弾性部材で構成されている。
【0024】
縦枠7は、昇降方向に延在する部材で構成されており、乗りかご40のかごドア4が設けられた側面に隣接する両側面に設けられている。縦枠7は、上枠6と下枠8とに接続されると共に、乗りかご40を挟む上下方向の両端部には、昇降路2内のガイドレールを摺動移動するガイドローラ12が設けられている。
【0025】
上枠6は、乗りかご40の上下方向における上側に配置され、上下方向に直交する方向であって、後述するかご上プーリ20の左右方向に延在する梁状部材で構成され、対向して配置される2つの縦枠7、7間に固定されている。また、本実施形態では、
図2Bに示すように、一対の上枠6が、かご上プーリ20の前後方向において、かご上プーリ20の上端部を挟むように設けられている。上枠6は、上下方向における両端部が、かご上プーリ20が配置される側とは反対側に直角に折り曲げられた上側折り曲げ部6a及び下側折り曲げ部6bを有する断面コ字状の部材で構成されている。そして、上枠6の上下方向における下方の下側折り曲げ部6bのプーリ支持部22側の下面が後述するバネユニット30の取付面となる。
【0026】
また、かご上プーリ20の前後方向において、上枠6の下側折り曲げ部6bのバネユニット30の取付位置よりも、かご上プーリ20とは反対側の位置には、上枠6の上下方向に直交する左右方向に沿って、複数の上側通し穴(図示を省略する)が設けられている。この上側通し穴は、後述する落下防止ロッド31(本発明の落下防止部材に相当)を挿通する穴である。
【0027】
また、それぞれの上枠6の上下方向に直交する左右方向の両端面には、一対の上枠6、6をつなぐ一対の上枠間ブラケット25、25がそれぞれボルト(図示を省略する)によって固定されている。上枠間ブラケット25は、かご上プーリ20の回転軸方向に延在する長方形状の主面部25aと、その主面部25aの四辺を囲むように設けられた側面部25bとからなる箱状部材で構成されている。上枠間ブラケット25は、かご上プーリ20の回転軸方向に向かい合う側面部25bが一対の上枠6、6にボルト締結等で固定されることで、一対の上枠6、6間に固定される。
【0028】
また、上枠間ブラケット25の乗りかご40側に面する側面部25bは、後述する荷重センサ装置27の検出板28の取付片として用いられる。本実施形態では、上枠間ブラケット25は、主面部25aと、その主面部25aを囲むように設けられた側面部25bとで構成される箱状部材で構成されることにより、上枠間ブラケット25として必要な剛性及び強度を保持することができる。
【0029】
なお、上枠間ブラケット25は、一対の上枠6、6間に固定可能であり、かつ、荷重センサ装置27の検出板28を固定できる部材であれば、その形状は種々の変更が可能である。本実施形態のように、箱状部材で構成することにより、上枠間ブラケット25の軽量化を図りながらも、剛性及び強度を維持することができる。
【0030】
[かご上プーリ]
かご上プーリ20は、主ロープ13が巻き掛けられる円柱形状の部材であり、かご本体3の上下方向における上面側に設けられている。かご上プーリ20は、回転面の中央部に設けられたプーリシャフト20aによって後述するプーリ支持部22に回転可能に支持されている。以下の説明では、上下方向、及び、かご上プーリ20回転軸方向に直交する方向を左右方向とする。
【0031】
[プーリ支持部]
プーリ支持部22は、かご上プーリ20の直径よりも長い板状部材で構成されている。本実施形態では、一対のプーリ支持部22が、かご上プーリ20の回転軸に沿う方向において、かご上プーリ20を挟むように設けられている。プーリ支持部22は、上下方向における両端部が、かご上プーリ20が配置される側とは反対側に直角に折り曲げられた上側折り曲げ部22a及び下側折り曲げ部22bを有する断面コ字状の部材で構成されている。上側折り曲げ部22aの上枠6側の上面は、後述するバネユニット30の取付面となる。
【0032】
そして、かご上プーリ20を挟んで配置される一対のプーリ支持部22間には、プーリシャフト20aが支持されており、このプーリシャフト20aにかご上プーリ20が回転可能に支持されている。また、それぞれのプーリ支持部22の上下方向に直交する左右方向の両端面には、一対のプーリ支持部22をつなぐ一対のプーリ支持部間ブラケット23、23が、それぞれボルト(図示を省略する)によって固定されている。
【0033】
プーリ支持部間ブラケット23は、かご上プーリ20の回転軸方向に延在する長方形状の主面部23aと、その主面部23aの四辺を囲むように主面部23aから立設された側面部23bとで構成された箱状部材で構成されている。プーリ支持部間ブラケット23は、かご上プーリ20の回転軸方向に向かい合って設けられる側面部23bがプーリ支持部22にボルト締結等で固定されることで、プーリ支持部22間に固定される。
【0034】
また、複数の側面部23bのうち上枠6側に面する側面部23bは、後述する荷重センサ装置27のセンサ部26の取付片として用いられる。本実施形態では、プーリ支持部間ブラケット23は、上枠間ブラケット25と同様、主面部23aと、その主面部23aを囲むように設けられた側面部23bとで構成される箱状部材で構成されることにより、プーリ支持部間ブラケット23として必要な剛性及び強度を保持することができる。
【0035】
なお、プーリ支持部間ブラケット23は、一対のプーリ支持部22間に固定可能であり、かつ、荷重センサ装置27のセンサ部26を固定できる部材であれば、その形状は種々の変更が可能である。本実施形態のように、箱状部材で構成することにより、プーリ支持部間ブラケット23の軽量化を図りながらも、剛性及び強度を維持することができる。そして、このプーリ支持部間ブラケット23により、かご上プーリ20を挟持して設けられる一対のプーリ支持部22は、一体に構成される。
【0036】
また、
図2Bに示すように、プーリ支持部22は、プーリ支持部22の上下方向の両端部が、かご上プーリ20が配置される側とは反対側に直角に折り曲げられた折り曲げ部22a、22bを有する。かご上プーリ20の回転面を挟む一方の面側(一側)、及び、他方の面側(他側)では、プーリ支持部22の上方の折り曲げ部22aと、上枠6の上下方向における下方の折り曲げ部6bとの間に、かご上バネ構造体24が配置されている。
【0037】
[かご上バネ構造体]
かご上バネ構造体24は、複数(本実施形態では8つ)のバネユニット30と、複数(本実施形態では4本)の落下防止ロッド31とで構成されている。本実施形態では、バネユニット30は、かご上プーリ20を、その回転軸に沿う方向に挟む両側に、4つずつ設置されている。
【0038】
図3Aは、本実施形態のバネユニット30の部分を拡大した図であり、
図3Bは、
図3Aのa-a線上に沿う断面図であり、
図3Cは、
図3Aのb-b線上に沿う断面図である。
図3Aに示すように、バネユニット30は、それぞれ、上側固定板33と、下側固定板34と、複数のバネ35(本実施形態では3個)とで構成されている。
【0039】
上側固定板33は、3つのバネ35に対応するバネ座36を配置可能な長方形の板状部材で構成されている。上側固定板33は、バネ座36を介して、上枠6の下側折り曲げ部6bの下面にボルト37によって固定されている。上側固定板33に固定されるバネ座36は、上枠6の延在方向に沿って3つ配置されており、3つのバネ座36が、それぞれボルト37によって固定されている。
【0040】
下側固定板34は、3つのバネ35に対応するバネ座38を配置可能な長方形の板状部材で構成されている。下側固定板34は、バネ座38の配置方向と直交し、かご上プーリ20の回転軸に沿う方向に平行な方向の長さが、上側固定板33よりも長く構成されている。下側固定板34は、上側固定板33に対向してプーリ支持部22の上側折り曲げ部22aにおける上枠6と対向する上面に配置される。そして、下側固定板34は、バネ座38を介して上枠6側からボルト39で固定されている。下側固定板34に配置されるバネ座38は、上側固定板33に固定されるバネ座36に対向する位置に3つ配置されており、それぞれがボルト39で固定されている。
【0041】
また、下側固定板34には、バネ座38が設置される方向と平行に、後述する落下防止ロッド31を挿通する下側通し穴49が複数個設けられている。本実施形態では、下側通し穴49は、下側固定板34における前後方向におけるかご上プーリ側とは反対側の端部に形成されている。そのため、下側通し穴49は、下側固定板34をプーリ支持部22に載置した際、プーリ支持部22における上側折り曲げ部22aからかご上プーリ20側とは反対側に端部から突出する。また、下側固定板34に設けられる下側通し穴49は、前述した上枠6の下側折り曲げ部6bに設けられた上側通し穴に上下方向において重なる。
【0042】
複数のバネ35は、それぞれ、金属線材で構成されており、上下方向に対向して配置される上側のバネ座36と下側にバネ座38に当接するように、上側固定板33と下側固定板34の間に配置されている。本実施形態では、それぞれの上側のバネ座36と下側のバネ座38は、それぞれボルト37、39によって固定されており、それぞれのボルト37、39は、上側固定板33と下側固定板34との間に突出する凸部として構成される。そして、それぞれのバネ35は、上下方向において、凸部となるボルト37、39に嵌め込まれて配置されると共に、上側のバネ座36と下側のバネ座38とに当接するように配置されている。したがって、バネ35は、ボルト37、39によって前後方向の移動を拘束されている。これにより、上側固定板33と下側固定板34との間の距離がバネ35の自然長よりも大きくならない限りは、バネ35は、前後方向に抜け落ちることが無い。
【0043】
そして、本実施形態では、一つのバネユニット30において3つのバネが配置される。また、本実施形態では、かご上プーリ20の前後方向において、それぞれ4つのバネユニット30が配置されている。
【0044】
図4は、落下防止ロッド31を拡大して示した概略構成図である。
図4に示すように、落下防止ロッド31は、上側通し穴から下側通し穴49にかけて配置される棒状部材で構成されている。落下防止ロッド31の上下方向における上端部側及び下端部側には、それぞれネジ31aが設けられている。ネジ31aが設けられている部分に、後述するナット32a、32b(
図2B参照)が固定される。本実施形態では、
図4に示すように、上端部と下端部とに設けられるネジ31a、31aの間の中央部分31bにはネジが設けられていないが、全てにネジが設けられている構成であってもよい。
【0045】
落下防止ロッド31は
図2Bに示すように、上枠6の下側折り曲げ部6bの上面側においてナット32a(
図2Bではダブルナット)で固定されると共に、プーリ支持部22の上側折り曲げ部22aの下面側においてナット32bで固定される。これにより、落下防止ロッド31が、上枠6及びプーリ支持部22に固定されると共に、上枠6とプーリ支持部22とが固定された位置から互いに離間するのを防ぐ。一方、上枠6とプーリ支持部22との間では落下防止ロッドはナット等で固定されていないため、上枠6とプーリ支持部22とが近づく方向への移動を制限しない。
【0046】
また、落下防止ロッド31のプーリ支持部22の上側折り曲げ部22aから下方向における長さは、保全時において、バネユニット30からバネ35を取り外しできる程度に上枠6とプーリ支持部22とを離間させた際に抜けない長さに設定されている。また、落下防止ロッド31は、かご上プーリ20の前後方向において、それぞれ、回転軸を挟む位置に2箇所ずつ設けられている。
【0047】
ところで、かご上バネ構造体24は、かご本体3の自重の他、積載質量、コンペンロープ17やテールコード18の懸架質量を支える。すなわち、主ロープ13に吊るされる乗りかご40の荷重が、すべてかご上バネ構造体24に架かる。したがって、かご上バネ構造体24では、その荷重に耐え得る程度に、バネ35の一個あたりのサイズや、配置する個数等が設定される。
【0048】
[荷重センサ装置]
荷重センサ装置27は、乗りかご40に架かる荷重を検知する装置であり、上枠間ブラケット25とプーリ支持部間ブラケット23との間の空間に設けられる。また、本実施形態では、荷重センサ装置27は、かご上プーリ20の回転面に沿う方向においてかご上プーリを挟んで位置する2箇所に設けられ、上面から見た場合に、かご上プーリ20の中心部を通る対角線上に設けられている。ここで、対角線上とは、かご上プーリ20を上面から見たときに、上枠6の延在方向に平行な2辺と、上枠間ブラケット25の延在方向に平行な2辺とで形成されるいずれかの四角形の対角線である。すなわち、本実施形態では、かご上プーリ20を正面から見たとき、例えば、かご上プーリ20の中心軸を中心とすると、一方の荷重センサ装置27は、右後方に設置され、他方の荷重センサ装置27は、左手前側に設置される。
【0049】
荷重センサ装置27は、板状の部材で構成された検出板28と、検出板28の位置を検知するセンサ部26とで構成されている。検出板28は、一端が上枠間ブラケット25の上下方向における下側の側面部25bに固定され、他端がセンサ部26に対向する面を有するように折り曲げられた板状部材で構成されている。
【0050】
一方、センサ部26は、プーリ支持部間ブラケット23の上下方向における上側の側面部23bに固定された固定部26a、26bによって片持ち支持され、検出板28と対向する位置に配置されている。検出板28とセンサ部26とは所定のギャップを有して離間するように配置されている。
【0051】
本実施形態では、乗りかご40の荷重が、上枠6に架かるため、乗りかご40の荷重が大きくなることによって上枠6とプーリ支持部22との間に設けられたかご上バネ構造体24のそれぞれのバネ35が縮む。バネ35の縮みに伴って、検出板28とセンサ部26との距離が変化する。荷重センサ装置27では、センサ部26によって、検出板28までの距離を検出することで、乗りかご40に架かる荷重を検知することができる。
【0052】
3.本実施形態の乗りかごの構成による効果
前述したように、大積載の高速エレベーターの場合には、より大きな質量を支えるため、かご上に設けられる防振部材(弾性部材)は、そのサイズを大きくすることでバネ定数を大きくしたり、より密に配置したりする必要がある。本実施形態では、バネ35の落下を防止する落下防止ロッド31を設けることにより、より多くのバネ35を密に配置することができる。このため、大型のバネを用いる場合に比較し、省スペース化を図ることができる。以下に、比較例に係る乗りかごの構成を示し、本実施形態に係る乗りかごの構成による効果を説明する。
【0053】
【0054】
図6A及び
図6Bの比較例に係るかご上バネ構造体54に示すように、プーリ支持部22、複数のバネユニット30を介して上枠6側に引き上げられている。ところで、バネユニット30では、
図3Aの拡大図に示したように、それぞれのバネ35が、上側固定板33のボルト37と下側固定板34のボルト39との間に嵌め込まれているが、上側固定板33及び下側固定板34には固定されていない。また、乗りかご40の荷重の増加に伴い、それぞれのバネ35が縮む仕様とするため、上枠6とプーリ支持部22との間の距離を可変にしておく必要がある。このため、
図3Aに示すボルト37とボルト39との間を繋ぐことはできない。したがって、上枠6とプーリ支持部22とが、バネ35の自然長以上に離間すると、前後方向に落下する恐れがある。
【0055】
したがって、比較例に示す構成では、予想外の振動等によって上枠6とプーリ支持部22との間の距離が大きくなった場合に、バネ35が落下する恐れがある。また、保全時に、上枠6側からプーリ支持部22が離れる方向に移動させ、バネ35の交換作業や、かご上プーリ20のメンテナンスを行った場合、再度、プーリ支持部22を上枠6側に引き上げる作業では相互の位置決めを行う必要がある。このため、バネ35の交換や、かご上プーリ20のメンテナンス作業を容易に行うことができない。特に、かご上バネ構造体54において、バネ35の個数が多い場合には、特に上側固定板33が固定された上枠と、下側固定板34が固定されたプーリ支持部22の位置決めが難しくなる。
【0056】
これに対して、本実施形態では、かご上バネ構造体24は、上枠6とプーリ支持部22との距離を縮める方向の移動は許容し、離れる方向への移動を制限する落下防止ロッド31を備える。これにより、予想外の振動等により、上枠6とプーリ支持部22とが離れる方向に移動しようとした場合にも、上枠6とプーリ支持部22との位置を初期設定位置に保持することができるため、バネ35の落下を防止することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、保全時において、落下防止ロッド31を上側通し穴及び下側通し穴49に挿通させた状態で、例えば下側のナット32bを上下方向における下方向にずらして固定し、上枠6とプーリ支持部22とを離間させることができる。すなわち、落下防止ロッド31を上側通し穴及び下側通し穴49に挿通させた状態で、上枠6とプーリ支持部22とを離間させることができる。これにより、落下防止ロッド31で上枠6とプーリ支持部22との位置関係を上下方向において維持することができるため、再度上枠6とプーリ支持部22とを元の位置に戻す際の位置決めが容易になる。したがって、かご上プーリ20のメンテナンスや、バネ35の交換作業が容易になる。
【0058】
このように、本実施形態の構成では、上枠6とプーリ支持部22との間に多数のバネ35を配置して大容量の乗りかご40の荷重に耐え得るかご上バネ構造体24とした場合にも、バネ35の交換作業が容易とすることができるという効果を有する。
【0059】
また、荷重センサ装置27を構成するための弾性部材として、防振ゴムを適用することも考えられる。しかしながら、防振ゴムを適用した場合、前述したように、負荷する荷重と防振ゴムの変位に履歴性(ヒステリシス)が生じると共に、非線形性や劣化の影響がでやすい。これに対し、本実施形態のかご上バネ構造体24では、金属線材で構成されたバネを用いる構成であるため、非線形性や劣化の影響を受けにくく、荷重検知の精度を維持することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、上側通し穴を上枠6の上側折り曲げ部6aに設け、下側通し穴49は、下側固定板34に設ける例としたが、これに限られるものではない。上側通し穴は、上枠6に一体に取り付けられている部材に構成されていればよく、例えば上側固定板に設ける構成としてもよい。一方、下側通し穴49は、プーリ支持部22に一体に取り付けられている部材に構成されていればよく、例えば、プーリ支持部22そのものに設けられていてもよい。この場合には、プーリ支持部22の上側折り曲げ部22aの前後方向における幅を大きくし、適当な位置に下側通し穴を設ける。
【0061】
≪第2の実施形態≫
次に、本発明の第2の実施形態に係るエレベーターの乗りかごについて説明する。
図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部の正面から見た概略構成図であり、
図5Bは、乗りかご40においてかご上プーリ20を含む要部を横方向から見た概略構成図である。第2の実施形態では、第1の実施形態における落下防止ロッド31に替えて、落下防止曲げ板41を用いた点で、第1の実施形態と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるから、
図5A及び
図5Bにおいて、
図2A及び
図2Bに対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、かご上バネ構造体44は、複数のバネユニット30と落下防止曲げ板41(本発明の落下防止部材に相当)とで構成されている。落下防止曲げ板41は、上枠6とプーリ支持部22との間を支持する曲げ板であり、上端部側及び下端部側がかご上プーリ側に折り曲げられた断面コの字形状の曲げ板で構成されている。落下防止曲げ板の左右方向の長さは、本実施形態では、例えば、バネ35の外径と同程度に構成されているがこれに限られるものではない。本実施形態では、かご上プーリ20の前面側及び後ろ面側のそれぞれにおいて、回転軸を挟む2箇所に落下防止曲げ板41が配置されている。
【0063】
落下防止曲げ板41の上端部側の折り曲げ部41aは、図示を省略するボルトによって、上枠6の下側折り曲げ部6bに固定されている。また、落下防止曲げ板41の下端部側の折り曲げ部41bは、バネユニット30を構成する下側固定板34の上下方向における下面側に当接するように配置されている。なお、落下防止曲げ板41の下端部側の折り曲げ部41bは下側固定板34には固定されていない。したがって、落下防止曲げ板41は、乗りかご40の荷重の増加に伴い、プーリ支持部22の上枠6側への移動を妨げない。
【0064】
このため、第2の実施形態においても、乗りかごの40荷重が増加した場合には、上枠6が下方に引っ張られ、プーリ支持部22が上方に引っ張られることに起因して、かご上バネ構造体44のそれぞれのバネ35が縮む。このため、荷重センサ装置27により、乗りかご40の荷重の増加に伴うバネ35の縮みを検知することで、荷重を検出することができる。
【0065】
第2の実施形態においても、落下防止曲げ板41によって上枠6とプーリ支持部22とが固定されている。このため、予想外の振動等により、初期設定位置よりも上枠6とプーリ支持部22とが離れる方向に力が働いた場合にも、上枠6とプーリ支持部22との位置を保持することができるため、バネ35の離脱を防ぐことができる。
【0066】
なお、第2の実施形態の落下防止曲げ板41を用いる場合には、
図3Cに示した下側固定板34の下側通し穴49を設けなくてもよい。また、第1の実施形態における落下防止ロッド31と、第2の実施形態における落下防止曲げ板41を同時に用いる例としてもよい。この場合には、保全時において、上枠6とプーリ支持部22との位置がずれることが無いため、バネ35の交換や位置決めを容易に行うことができる。
【0067】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…エレベーター、2…昇降路、3…かご本体、4…かごドア、5…かご枠、6…上枠、7…縦枠、8…下枠、9…かご床、10…かご下防振ゴム、11…床下ベース、12…ガイドローラ、13…主ロープ、14…コンペンブラケット、15…テールコード梁、16…コンペン吊り板、17…コンペンロープ、18…テールコード、20…かご上プーリ、20a…プーリシャフト、22…プーリ支持部、23…プーリ支持部間ブラケット、24…かご上バネ構造体、25…上枠間ブラケット、26…センサ部、27…荷重センサ装置、28…検出板、30…バネユニット、31…落下防止ロッド、31a…ネジ、31b…中央部分、32a、32b…ナット、33…上側固定板、34…下側固定板、35…バネ、36、38…バネ座、37、39…ボルト、41…落下防止折り曲げ板、49…下側通し穴