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  • 特開-加工澱粉および揚げ物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090136
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】加工澱粉および揚げ物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/219 20160101AFI20230622BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20230622BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20230622BHJP
【FI】
A23L29/219
A23L7/157
A23L5/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204934
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】390015004
【氏名又は名称】株式会社サナス
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(72)【発明者】
【氏名】前津 晋也
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
4B025LB07
4B025LD03
4B025LG07
4B025LG14
4B025LG28
4B025LG41
4B025LG43
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP12
4B025LP15
4B025LP18
4B025LP20
4B035LC03
4B035LE17
4B035LG12
4B035LG21
4B035LG23
4B035LG32
4B035LG42
4B035LK15
4B035LP01
4B035LP07
4B035LP21
4B035LP23
4B035LP24
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、揚げ物用衣材として用いた場合、ソフトな食感を維持することが可能な油脂加工澱粉を製造する方法および油脂加工澱粉を用いた揚げ物の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、(1)澱粉として漂白澱粉若しくは未漂白澱粉を用い、澱粉と水とを混合したスラリーを温水処理する工程、
(2)温水処理工程で得られたスラリーを冷却する工程、
(3)冷却工程で得られたスラリーを脱水し乾燥し澱粉を得る脱水乾燥工程、および
(4)澱粉に油脂を添加し混合する工程を含み、
(5)澱粉として未漂白澱粉を用いた場合、温水処理工程の前に、または脱水乾燥工程の後に、澱粉を漂白する工程を含み、澱粉として漂白澱粉を用いた場合は漂白工程を行わない油脂加工澱粉の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)澱粉として漂白澱粉若しくは未漂白澱粉を用い、澱粉と水とを混合したスラリーを40~70℃の温水槽中で30~120分間加温する温水処理工程、
(2)前記温水処理工程で得られたスラリーを20~40℃で60~180分間冷却する冷却工程、
(3)前記冷却工程で得られたスラリーを脱水し乾燥し澱粉を得る脱水乾燥工程、および
(4)澱粉に油脂を添加し混合し、油脂加工澱粉を得る混合工程を含み、
(5)澱粉として未漂白澱粉を用いた場合、前記温水処理工程の前に、または前記脱水乾燥工程の後に、澱粉と水とを混合したスラリーに漂白剤を添加し反応させた後、中和し、脱水乾燥する漂白工程を含み、
澱粉として漂白澱粉を用いた場合、前記漂白工程を行わない油脂加工澱粉の製造方法。
【請求項2】
前記漂白澱粉は、澱粉と水とを混合したスラリーに漂白剤を添加し反応させた後、中和し、脱水乾燥する工程により得られる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程で得られた油脂加工澱粉を90~150℃で、1時間~7日間、加熱し熟成させる工程を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記澱粉が、甘藷澱粉、タピオカ澱粉およびコーンスターチからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の製造方法で得られた油脂加工澱粉を用意する工程、
前記油脂加工澱粉を含有する揚げ物用衣材を調製する工程、および
前記揚げ物用衣材を具材に付着させた後、油ちょう処理を行う工程、
を含む揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物用衣材として用いた場合、ソフトな食感を維持することが可能な油脂加工澱粉を製造する方法に関する。また本発明は、前記方法で得られた油脂加工澱粉を用いた揚げ物の製造方法を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
油脂加工澱粉を揚げ物用衣材として使用することで、タネ(具材)と衣が理想的な結着を得ることができること、カリっとした香ばしい食感が得られることが知られている。この技術で使用されている油脂加工澱粉の原料となるデンプンには、オキシ塩化リンを用いて処理されたリン酸架橋澱粉(特許文献1)や、溶解度を指定された架橋澱粉(特許文献2)がある。
【0003】
このような油脂加工澱粉を用いた揚げ物用衣材は、タネと衣の結着が良く、カリっとした硬い食感が得られるのが特徴で、ミックス粉などの製造に幅広く利用されている。
一方で、最近、嗜好の変化により口当たりが良い、ソフトな食感を持った食品が好まれるようになっている。揚げ物用衣材もこのような傾向にあり、従来の硬いカリっとした食感だけでは消費者のニーズにこたえることが難しくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4739459号公報
【特許文献2】特許第4530639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、揚げ物用衣材として用いた場合、タネ(具材)と衣が理想的な結着を得ることができ、かつソフトな食感が得られる油脂加工澱粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は揚げ物用衣材の食感に影響を与える要因について検討を行ったところ、油脂加工澱粉の原料に使用する澱粉によって、油調後の衣(バッター層+外層)の水分含有量が大きく異なり、その影響で衣の食感が大きく異なることを突き止めた。
すなわち、衣の水分量が30~34質量%と低いときは硬くカリっとした食感に、水分量が35~50質量%と高いときは、衣の硬い食感が改善されソフトで柔らかい食感になることが確認できた。
【0007】
従来の油脂加工澱粉を使用した場合、衣の水分量が30~34質量%に仕上がり、タネと衣は良好な結着を得ることができる。ただ、この場合、前述したとおり、衣の食感は硬くなり、改良するには乳化剤や増粘多糖類の添加が必要となっていた。
一方で、衣の水分量が35~50質量%となる従来の油脂加工澱粉を使用した場合は、衣の食感ではソフトで良好な口当たりを得ることができるが、水分量の多さが影響して、タネと衣の良好な結着が得られない、いわゆる剥がれといわれる現象が発生し、商品価値を上げることができなかった。
【0008】
そこで、検討を重ねた結果、澱粉を所定の温度で温水処理をした後に、所定の温度で冷却処理を施した澱粉を原料として得られる油脂加工澱粉を揚げ物用衣材として使用すると、一定の水分量を保ったまま、結着性とソフトな食感を有する優れた衣を有する揚げ物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、以下の発明を包含する。
1. 澱粉として漂白澱粉若しくは未漂白澱粉を用い、澱粉と水とを混合したスラリーを40~70℃の温水槽中で30~120分間加温する温水処理工程、
(2)前記温水処理工程で得られたスラリーを20~40℃で60~180分間冷却する冷却工程、
(3)前記冷却工程で得られたスラリーを脱水し乾燥し澱粉を得る脱水乾燥工程、および
(4)澱粉に油脂を添加し混合し、油脂加工澱粉を得る混合工程を含み、
(5)澱粉として未漂白澱粉を用いた場合、前記温水処理工程の前に、または前記脱水乾燥工程の後に、澱粉と水とを混合したスラリーに漂白剤を添加し反応させた後、中和し、脱水乾燥する漂白工程を含み、
澱粉として漂白澱粉を用いた場合、前記漂白工程を行わない油脂加工澱粉の製造方法。
2. 前記漂白澱粉は、澱粉と水とを混合したスラリーに漂白剤を添加し反応させた後、中和し、脱水乾燥する工程により得られる前項1に記載の製造方法。
3. 前記混合工程で得られた油脂加工澱粉を90~150℃で、1時間~7日間、加熱し熟成させる工程を含む前項1または2に記載の製造方法。
4. 前記澱粉が、甘藷澱粉、タピオカ澱粉およびコーンスターチからなる群より選ばれる少なくとも一種である前項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
5. 前項1~4の何れか一項に記載の製造方法で得られた油脂加工澱粉を用意する工程、
前記油脂加工澱粉を含有する揚げ物用衣材を調製する工程、および
前記揚げ物用衣材を具材に付着させた後、油ちょう処理を行う工程、
を含む揚げ物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油脂加工澱粉の製造方法によれば、揚げ物用衣材として用いた場合、タネ(具材)と衣が理想的な結着を得ることができ、かつソフトな食感が得られる油脂加工澱粉が得られる。また本発明の揚げ物の製造方法によれば、タネ(具材)と衣との結着性が良好で、かつソフトな食感の揚げ物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例および比較例における結着性の評価の具体例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔油脂加工澱粉の製造方法〕
<温水処理工程>
温水処理工程は、澱粉と水とを混合したスラリーを40~70℃の温水槽中で30~120分間加温する工程である。
(澱粉)
本発明では原料の澱粉として漂白澱粉若しくは未漂白澱粉を用いる。
未漂白澱粉としては、食用として利用可能な澱粉であればよく、特に制限はない。例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、片栗澱粉、葛澱粉、蕨澱粉、サゴ澱粉、ハス澱粉等が挙げられる。特に甘藷澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等が好ましい。
漂白澱粉は前述の未漂白澱粉を漂白した澱粉である。漂白澱粉として、市販の漂白澱粉を用いることが出来る。その場合、後述の漂白工程は不要となる。漂白澱粉は、次亜塩素酸塩類をアルカリ性に調整した澱粉懸濁液に添加して処理した澱粉である。同じ方法で処理する酸化デンプンとは異なり、導入されたカルボキシル基の含有量は0.10%以下で、色素成分などを酸化することで色調を改善(白度UP)しただけで、原料デンプンの物性を大きく変化させるような加工は行っていない澱粉である。
(スラリー)
スラリーは、水と澱粉とを混合することにより調製することが出来る。
スラリー中の澱粉の含有量は、好ましくは20~60質量%、より好ましくは40~50質量%である。
温水の温度は、好ましくは40~65℃、より好ましくは50~60℃である。
加温時間は、好ましくは45~75分間、より好ましくは50分~1時間である。
【0013】
<冷却工程>
冷却工程は、温水処理工程で得られたスラリーを20~40℃で60~180分間冷却する工程である。冷却の温度は、好ましくは25~35℃、より好ましくは27~32℃である。冷却の時間は、好ましくは90~150分間、より好ましくは100~120分間である。
本発明は、冷却工程を行うことを特徴とする。冷却工程を行うことにより、澱粉の膨化が低下し、得られる油脂加工澱粉の吸水性が減少した結果、揚げ物の衣に使用した場合、結着性に優れ、ソフトな食感の揚げ物が得られる。
【0014】
<脱水乾燥工程>
脱水乾燥工程は、冷却工程で得られたスラリーを脱水し乾燥し、澱粉を得る工程である。脱水方法、乾燥方法について特に制限はなく、澱粉の性状を変えずに、脱水においては水分値を60%以下、乾燥については水分値を15%以下にすることが可能な方法であれば良い。
【0015】
<漂白工程>
澱粉として、市販の漂白澱粉を用いる場合には、漂白工程は不要となる。
漂白工程は、原料の澱粉として未漂白澱粉を用いた場合、温水処理工程の前に、または脱水乾燥工程の後に、澱粉と水とを混合したスラリーに漂白剤を添加し反応させた後、中和し、脱水乾燥する工程である。
【0016】
漂白剤として次亜塩素酸またはその塩。次亜塩素酸の塩としては次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウムが挙げられる。
反応は、澱粉が糊化しない温度帯で、かつ、アルカリ性(pH7~12)で行うことが好ましい。中和は、水酸化ナトリウム、硫酸等を使用して、pH4.0~5.0で行うことが好ましい。
脱水方法、乾燥方法について特に制限はなく、澱粉の性状を変えずに、脱水においては水分値を60%以下、乾燥については水分値を15%以下にすることが可能な方法であれば良い。
【0017】
<混合工程>
混合工程は、澱粉に油脂を添加し混合し、澱粉に油脂を付着させる工程である。混合工程は、脱水乾燥工程または漂白工程で得られた澱粉に油脂を添加し油脂加工澱粉を得る工程である。
油脂としては、食用として認められている油脂、調製油、それらの混合物等が挙げられ、例えば、アマニ油、エゴマ油、くるみ油、サフラワー油、ひまわり油、ぶどう油、大豆油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油等が挙げられる。特にサフラワー油、ひまわり油等が好ましい。上述の油脂を単独で使用しても良く、複数種を併用しても良い。
【0018】
油脂の澱粉への添加量は、澱粉100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.03~2質量部がより好ましい。0.01質量部未満では、澱粉粒子の表面に油脂が十分に付着されず、澱粉の特性改善効果が弱められる傾向がある。一方、油脂の澱粉への添加量が澱粉に対して5質量部を超えると、澱粉の粉体流動性が悪くなり作業性が悪くなる傾向や油脂自体の臭い等が強くなり食品の味に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0019】
油脂の澱粉への添加方法は、澱粉に油脂を分散可能な方法であれば特に制限は無く、通常の撹拌混合、気流混合、スプレー噴霧等の常法で行うことができる。
【0020】
油脂と共に乳化剤を澱粉へ加えても良い。乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。また、これらの組合せでもよい。乳化剤を添加する場合、その添加量は、油脂100質量部に対して、10~1000質量部であることが好ましく、20~500質量部であることがより好ましい。
【0021】
<熟成工程>
混合工程により得られた油脂加工澱粉を熟成することが好ましい。熟成工程は、油脂を澱粉に定着させる工程である。
熟成は、油脂加工澱粉を80~150℃で、1時間~7日間、加熱して行うことが好ましい。
熟成工程においては、澱粉に過度の分解が起こらないように条件を設定する必要がある。加熱温度は、好ましくは90~130℃、より好ましくは100~120℃である。加熱時間は、好ましくは1時間~3日間、より好ましくは1~5時間である。
【0022】
熟成処理は、澱粉と油脂と必要により乳化剤等の他の原料とを混合したものを、例えば、各種リアクター、エクストルーダー、ドライヤー、タンク、容器、包材等に入れた状態で、常温(10℃、好ましくは15℃)以上の温度において、一定期間処理することにより行うことができる。常温以上の温度であれば当該処理は進み、高温であれば熟成に要する時間は短くなる。すなわち、常温以上の温度条件下に静置することで熟成処理を施すこともでき、加熱することでより高温下で短い時間で熟成処理(加熱熟成処理)を施すこともできる。
熟成工程においては、澱粉に過度の分解が起こらないように条件を設定する必要がある。このような熟成温度としては、90℃~150℃が好ましく、100~120℃がより好ましい。また、熟成時間は、温度が高いほど短時間でよいが、1時間~3日間が好ましく、1~5時間がより好ましい。
【0023】
〔揚げ物の製造方法〕
本発明の製造方法により得られた油脂加工澱粉は、揚げ物の製造に用いることができる。
揚げ物は、(1)本発明の製造方法で得られた油脂加工澱粉を用意する工程、
(2)前記油脂加工澱粉を含有する揚げ物用衣材を調製する工程、および
(3)前記揚げ物用衣材を具材に付着させた後、油ちょう処理を行う工程、
により製造することができる。
【0024】
<油脂加工澱粉の用意>
油脂加工澱粉は、前述のように製造したものを用意することができる。
【0025】
<揚げ物用衣材の調製>
揚げ物用衣材(バッター液)は、油脂加工澱粉と水と混合することにより製造することができる。
水の量は、100質量部の油脂加工澱粉に対して、好ましくは150~400質量部、より好ましくは200~300質量部である。
揚げ物用衣材には、本発明の油脂加工澱粉の他に、例えば、小麦粉、コーンフラワー、大豆粉等の穀粉、澱粉、膨張剤、全卵、卵白等の卵又はその加工物、乳化剤、増粘剤、食塩、糖類、香辛料等を配合してもよい。
【0026】
<油ちょう処理>
揚げ物用衣材を具材に付着させた後、油ちょう処理を行う。
具材としては、肉類、魚類などの、から揚げ、天ぷら、竜田揚げ、フライドチキン、チキンカツ、豚カツ、牛カツ、メンチカツ、コロッケ、エビフライ、イカリング、フリッター等の原料を挙げることができる。
【0027】
油ちょう処理に用いる油脂としては、食用として認められている油脂、調製油、それらの混合物等が挙げられ、例えば、アマニ油、エゴマ油、くるみ油、サフラワー油、ひまわり油、ぶどう油、大豆油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油、またこれらの分別油、脱臭油、加熱油、エステル交換油等の加工油脂等が挙げられる。油脂加工澱粉の性能の点から、エゴマ油、サフラワー油を用いるのが好ましい。上述の油脂を単独で使用しても良く、複数種を併用しても良い。
揚げ物としては、から揚げ、天ぷら、竜田揚げ、フライドチキン、チキンカツ、豚カツ、牛カツ、メンチカツ、コロッケ、エビフライ、イカリング、フリッター等を挙げることができる。
更に、本発明の油脂加工澱粉は、水畜産肉練製品(ハム、チキンナゲット、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボール、餃子・シュウマイ・ロールキャベツ、カマボコ、薩摩揚げ、はんぺん、つみれ、魚肉ソーセージ、ちくわ等)や食肉加工品(ハム、ベーコン、ステーキ、ローストビーフ等)、麺類、パン類等の食品にも用いることもできる。
【実施例0028】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0029】
実施例における食感、衣の結着性および衣の水分値の評価は以下の方法で行った。
<食感評価>
食感は、揚げ物(豚カツ)の食感について評価した。5名のパネラーで評価し、パネラー間で評価を協議して、最終的に「ソフト」または「硬い」の評価を決定し、官能評価結果を表1に示した。
【0030】
<結着性>
油ちょう後10分間放置して、豚カツを3cm幅にカットして、衣の結着を確認した。結着性は以下の基準で評価した。評価の具体例を図1に示す。5名のパネラーで評価し、パネラー間で評価を協議して、最終的に評価を決定し、結果を表1に示した。
◎:非常に良好
〇:良好
×:剥がれがあり結着していない
【0031】
<衣の水分値>
衣の結着を確認した後、衣を肉からはがし、3×3cmの大きさにカットした。カットした衣のサンプルの水分をケット水分計で測定した(kett社製赤外線水分測定器、F-240使用)。水分値は3回サンプルを測定しその平均値を値とし、表1に示した。
【0032】
<実施例1>試料1
(漂白工程)
甘藷澱粉に水を添加して、甘藷澱粉を45質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、甘藷澱粉の乾燥重量100質量部に対して0.1質量部のさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)を加え2時間反応させたのち希硫酸を加えpH4.6に中和したのち水洗・乾燥して甘藷の漂白澱粉を得た
(温水処理工程)
この漂白澱粉に水を添加して、漂白澱粉を35質量%含有するスラリーとした。このスラリーを60℃に加温した恒温槽で1時間処理した。
(冷却工程)
その後、スラリーを30℃で2時間冷却した。
(脱水乾燥工程)
その後、脱水、乾燥して澱粉を得た。
(混合工程)
得られた澱粉100質量部に対して、サフラワー油を0.1質量部加えて均一に混合した混合物を得た。
(熟成工程)
混合工程で得られた混合物を、120℃で3時間、加熱し試料1を得た。
【0033】
(揚げ物の製造)
100gの試料1と、グアガム0.5gおよび冷水200gをミキサーで攪拌し、揚げ物用衣材(バッター液)を調製した。具材として、豚カツ用ロース豚肉100gを用意し、該豚肉を、バッター液に浸した後、パン粉の順番で衣付けし、5分間静置した。その後、170℃で4分間揚げ(油調)豚カツを製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
【0034】
<実施例2>試料2
(漂白工程)
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を45質量%含有するスラリーとした。
このスラリーを40℃に加熱した後、タピオカ澱粉の乾燥重量100質量部に対して0.1質量部の次亜塩素酸ナトリウムを加え2時間反応させたのち水酸化ナトリウム・硫酸を加えpH4.6に中和したのち水洗・乾燥して漂白澱粉を得た。
(温水処理工程)
この漂白澱粉に水を添加して、漂白澱粉を含む35質量%含有するスラリーとした。このスラリーを60℃に加温した恒温槽で1時間処理した。
(冷却工程)
その後、スラリーを30℃で2時間冷却した。
(脱水乾燥工程)
その後、脱水、乾燥して澱粉を得た。
(混合工程)、
得られた澱粉100質量部に対して、サフラワー油を0.1質量部加えて均一に混合し混合物を得た。
(熟成工程)
混合工程で得られた混合物を、120℃で3時間、加熱し試料2を得た。
【0035】
(揚げ物の製造)
試料1の代わりに試料2を用いる以外は実施例1と同じ方法で揚げ物(豚カツ)を製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
【0036】
<比較例1>比較試料1
(漂白工程)
甘藷澱粉に水を添加して、甘藷澱粉を45質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、甘藷澱粉の乾燥重量100質量部に対して0.1質量部のさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)を加え2時間反応させたのち希硫酸を加えpH4.3に中和したのち水洗・乾燥して甘藷の漂白澱粉を得た。
(温水処理工程)
この漂白甘藷澱粉に水を添加して、漂白甘藷澱粉を35質量%含有するスラリーとした。このスラリーを60℃に加温した恒温槽で1時間処理した。
(脱水乾燥工程)
その後、脱水、乾燥して温水処理漂白甘藷澱粉を得た。
(混合工程)
得られた澱粉100質量部に対して、サフラワー油を0.1質量部加えて均一に混合して混合物を得た。
(熟成工程)
混合工程で得られた混合物を、120℃で3時間、加熱し比較試料1を得た。
【0037】
(揚げ物の製造)
試料1の代わりに比較試料1を用いる以外は実施例1と同じ方法で揚げ物(豚カツ)を製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
【0038】
<比較例2>比較試料2
(漂白工程)
甘藷澱粉に水を添加して、甘藷澱粉を45質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、甘藷澱粉の乾燥重量100質量部に対して0.1~0.2質量部のさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)を加え2時間反応させたのち希硫酸を加えpH4.3に中和したのち水洗・乾燥して甘藷の漂白澱粉を得た。
(混合工程)
得られた澱粉100質量部に対して、サフラワー油を0.1質量部加えて均一に混合して混合物を得た。
(熟成工程)
混合工程で得られた混合物を120℃で3時間、加熱し比較試料2を得た。
【0039】
(揚げ物の製造)
試料1の代わりに比較試料2を用いる以外は実施例1と同じ方法で揚げ物(豚カツ)を製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
【0040】
<比較例3>比較試料3の製造
(温水処理工程)
甘藷澱粉に水を添加して、甘藷澱粉35質量%含有するスラリーとした。このスラリーを60℃に加温した恒温槽で1時間加温した。
(混合工程)
得られた澱粉100質量部に対して、サフラワー油を0.1質量部加えて均一に混合して混合物を得た。
(熟成工程)
混合工程で得られた混合物を120℃で3時間、加熱し比較試料3を得た。
【0041】
(揚げ物の製造)
試料1の代わりに比較試料3を用いる以外は実施例1と同じ方法で揚げ物(豚カツ)を製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
【0042】
<比較例4>比較試料4
(漂白工程)
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を45質量%含有するスラリーとした。このスラリーを40℃に加温した後、タピオカ澱粉の乾燥重量100質量部に対して0.1質量部の次亜塩素酸ナトリウムを加え2時間反応させたのち水酸化ナトリウム・硫酸を加えpH4.6に中和したのち水洗・乾燥してタピオカの漂白澱粉を得た。
(混合工程)
この漂白タピオカ澱粉に対して、サフラワー油を0.1質量部加えて均一に混合して混合物を得た。
(熟成工程)
混合工程で得られた混合物を、120℃で3時間、加熱し比較試料4を得た。衣の結着性、水分値を実施例1と同じ方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0043】
(揚げ物の製造)
試料1の代わりに比較試料4を用いる以外は実施例1と同じ方法で揚げ物(豚カツ)を製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
<比較例5>比較試料5
試料1の代わりにリン酸架橋タピオカ澱粉を原料とした市販の油脂加工澱粉(製品名:サナスバインドA、サナス社製)を用いた以外は実施例1と同じ方法で揚げ物(豚カツ)を製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
【0045】
<比較例6>比較試料6
試料1の代わりにアセチル化タピオカ澱粉を原料とした市販の油脂加工澱粉(製品名:アザミ7、朝日化学工業社製)を用いた以外は実施例1と同じ方法で揚げ物(豚カツ)を製造し、食感、衣の結着性および衣の水分値を評価した。その結果を表1に示す。
実施例1~比較例6の工程をまとめて表1に示す。表1中「有」は工程を実施したことを示し、「無」は、工程を実施しなかったことを示す。
【0046】
【表1】
図1