(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090138
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】遅延時間測定方法および遅延時間測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 27/28 20060101AFI20230622BHJP
H04B 17/00 20150101ALI20230622BHJP
H04L 25/02 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
G01R27/28 Z
H04B17/00 Z
H04L25/02 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204938
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000101330
【氏名又は名称】アストロデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101269
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 道夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂昭
【テーマコード(参考)】
2G028
5K029
【Fターム(参考)】
2G028BF05
2G028CG20
2G028CG24
2G028DH04
2G028DH11
2G028DH14
2G028LR09
5K029CC01
5K029KK21
5K029KK22
(57)【要約】
【課題】被測定部材における信号の伝送遅延時間を定量的に測定し得る遅延時間測定方法を得る。
【解決手段】正弦波等の電気信号を発生し得る掃引信号発生器12が、低周波数域から高周波数域まで、周波数を順次変更しつつ電気信号を繰り返して出力する。掃引信号発生器12に繋がる分岐点14で源信号が分岐され、一方の配線24がHDMIケーブル16の一端に繋がる。HDMIケーブル16の他端にもこの配線24が繋がり、分岐点14から伸びる配線26と配線24とが演算回路18に繋がる。演算回路18に接続される周波数測定器20が電気信号の振幅変化を観測し、合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数を順次変更しつつ発生した源信号を演算回路に直接出力すると共に、遅延時間を計測すべき被測定部材を介した源信号を演算回路に入力し、
さらに、演算回路でこれら2つの信号を合成した合成信号を作成して出力し、
次に、この合成信号の振幅変化を観測して合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを判断し、この周波数を元にして遅延時間を算出する、遅延時間測定方法。
【請求項2】
最初に大きく振幅が変動した際の合成信号の最大振幅が、周囲の周波数における最大振幅の半分以下あるいは2倍以上とされる請求項1に記載の遅延時間測定方法。
【請求項3】
演算回路にて、入力された2つの信号を加算処理して合成信号を出力し、最初に大きく合成信号の振幅が低下した第1ディップ点を遅延時間算出の基準とする請求項1または請求項2に記載の遅延時間測定方法。
【請求項4】
演算回路にて、入力された2つの信号から合成信号を出力し、最初に大きく合成信号の振幅が増大した第1ピップ点を遅延時間算出の基準とする請求項1または請求項2に記載の遅延時間測定方法。
【請求項5】
周波数を順次変更しつつ源信号を出力する掃引信号発生器と、
掃引信号発生器から源信号が直接入力されると共に、遅延時間を計測すべき被測定部材を介した源信号が入力されて、これら信号の合成信号を作成して出力する演算回路と、
演算回路からの合成信号が入力されて合成信号の振幅変化を観測して、合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを判断し、この周波数を元にして遅延時間を算出する周波数測定器と、
を含む遅延時間測定装置。
【請求項6】
周波数測定器において、最初に大きく振幅が変動した際の合成信号の最大振幅が、周囲の周波数における最大振幅の半分以下あるいは2倍以上としたときを遅延時間算出の基準とする請求項5に記載の遅延時間測定装置。
【請求項7】
演算回路にて、入力された2つの信号を加算処理して合成信号を出力し、周波数測定器にて、最初に大きく合成信号の振幅が低下した第1ディップ点を遅延時間算出の基準とする請求項5または請求項6に記載の遅延時間測定装置。
【請求項8】
演算回路にて、入力された2つの信号から合成信号を出力し、周波数測定器にて、最初に大きく合成信号の振幅が増大した第1ピップ点を遅延時間算出の基準とする請求項5または請求項6に記載の遅延時間測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送線や回路等を信号が通過する際の遅延時間を定量的に測定し得る遅延時間測定方法および遅延時間測定装置に関し、特に送信機と受信機との間を繋ぐ伝送線の遅延時間を測定するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ等を構成する受信回路への送信信号を送る際には、いわゆる4K、8K等の高解像度の表示に合わせて、高速大容量の信号伝送が要求されるようになってきた。これに伴い、例えばHDMI(登録商標:High-Definition Multimedia Interface(高精細度マルチメディアインターフェース))ケーブル等がテレビと録画装置との間などに用いられることがある。このHDMIケーブルは従来のように1本の伝送線で構成されているものと異なり、複数本の伝送線が並列して内蔵されていて、これら複数本の伝送線で並列的に信号を伝送することにより、高速大容量の伝送を可能としている。
【0003】
このように複数本の伝送線で並列的に信号を送信機側から受信機側に伝送する場合、伝送線間の性能差等により、複数の伝送線間の伝送時間の遅延量に大きな相違が生じるおそれがある。そして、複数の伝送線間であまりに大きな伝送時間の相違が生じた場合、本来送信しようとしたデータを受信機で受信しても正しく合成できず、この受信機にてデータの誤りに伴うエラーが発生する結果として、画像や音声が乱れるおそれがあった。
【0004】
これに対して下記のような先行技術文献が知られている。例えば特許文献1には、アナログ出力に対する回線遅延時間測定を行うものであり、送信部から被測定装置に送出した信号とこれとは別の信号を出力信号が所定の値となるまでの時間差を計測して、遅延時間として出力する技術が示されている。
【0005】
また、特許文献2には、測定対象となる回路素子の遅延時間を測定するために、回路素子の入力端で受けた信号と回路素子から出力された信号とを合成した合成信号中に表れるパルスを計数して計数値を得て、パルス毎にパルスの前縁部の時点から所定期間経過した時点でのカウンタの計数値が1であるか否かを判定する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6549341号公報
【特許文献2】特開2019?60744公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2の技術では、アナログ信号やデジタル信号の遅延時間を計測できるものの、測定に際して複雑な信号処理が必要であり扱いづらい欠点を有しているので、簡易に伝送線等の被測定部材における信号の伝送遅延時間を定量的に測定することは困難であった。
【0008】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、被測定部材における信号の伝送遅延時間を定量的に測定し得る遅延時間測定方法および遅延時間測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る遅延時間測定方法は、周波数を順次変更しつつ発生した源信号を演算回路に直接出力すると共に、遅延時間を計測すべき被測定部材を介した源信号を演算回路に入力し、
さらに、演算回路でこれら2つの信号を合成した合成信号を作成して出力し、
次に、この合成信号の振幅変化を観測して合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを判断し、この周波数を元にして遅延時間を算出する、遅延時間測定方法とされる。
【0010】
請求項1に係る遅延時間測定方法の作用を以下に説明する。
本請求項に係る遅延時間測定方法は、低周波数から高周波数まで周波数を順次変更しつつ発生した源信号を演算回路に直接出力すると共に、遅延時間を計測すべき被測定部材を介した源信号を演算回路に入力する。そして、この演算回路にて、これら2つの信号を合成した合成信号を作成して出力されるが、この合成信号の振幅変化を観測して合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを判断し、この周波数を元にして遅延時間を算出する。
【0011】
具体的には、源信号が被測定部材から出力された時点における遅延によって、直接出力された源信号に対して180度位相がずれて信号が最初に反転した周波数を最初に大きく振幅が変動した周波数とする。ここで、この180度位相がずれて信号が最初に反転した周波数の逆数が送遅延時間を意味する。すなわち、この周波数の1サイクルの時間をTとすると、T/2が伝送遅延時間を意味することになる。
【0012】
以上より、本請求項に係る遅延時間測定方法によれば、被測定部材を介した信号と源信号との合成信号を元にして最初の振幅の変動点を検出し、伝送遅延時間を算出することで、簡易に被測定部材における信号の伝送遅延時間を定量的に測定できることになる。
【0013】
請求項2のように、最初に大きく振幅が変動した際の合成信号の最大振幅が、周囲の周波数における最大振幅の半分以下あるいは2倍以上とされる遅延時間測定方法とすることで、観測された合成信号の振幅の変動から、被測定部材における信号の伝送遅延時間を確実に得ることができる。
【0014】
請求項3のように、演算回路にて、入力された2つの信号を加算処理して合成信号を出力し、最初に大きく合成信号の振幅が低下した第1ディップ点を遅延時間算出の基準とすることで、請求項1または請求項2の遅延時間測定方法において、この第1ディップ点を元にして簡易に被測定部材における信号の伝送遅延時間を得ることができる。
【0015】
請求項4のように、演算回路にて、入力された2つの信号から合成信号を出力し、最初に大きく合成信号の振幅が増大した第1ピップ点を遅延時間算出の基準とする請求項1または請求項2に記載の遅延時間測定方法において、この第1ピップ点を元にして簡易に被測定部材における信号の伝送遅延時間を得ることができる。
【0016】
請求項5に係る遅延時間測定装置は、周波数を順次変更しつつ源信号を出力する掃引信号発生器と、
掃引信号発生器から源信号が直接入力されると共に、遅延時間を計測すべき被測定部材を介した源信号が入力されて、これら信号の合成信号を作成して出力する演算回路と、
演算回路からの合成信号が入力されて合成信号の振幅変化を観測して、合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを判断し、この周波数を元にして遅延時間を算出する周波数測定器と、
を含む遅延時間測定装置とされる。
【0017】
請求項5に係る遅延時間測定装置の作用を以下に説明する。
本請求項においては、掃引信号発生器から周波数を順次変更しつつ出力された源信号が、遅延時間を計測すべき被測定部材を介して演算回路に入力されるだけでなく、掃引信号発生器からこの源信号が演算回路に直接入力される。これに伴い、演算回路からこれら2つの信号を合成した合成信号が周波数測定器に出力され、この周波数測定器が合成信号の振幅変化を観測することで、合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを判断し、この判断された周波数を元にして遅延時間を算出する。
【0018】
従って、合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく変動しているかを周波数測定器にて判断できることから、掃引信号発生器からの源信号が被測定部材から出力された時点における遅延によって、前述と同様に直接出力された源信号に対して180度位相がずれて信号が最初に反転した周波数を最初に大きく振幅が変動した周波数とする。そして、前述と同様にこの180度位相がずれて信号が最初に反転した周波数の逆数が送遅延時間を意味することになる。
【0019】
以上より、本請求項に係る遅延時間測定装置によれば、請求項1と同様に、被測定部材を介した信号と源信号との合成信号を元にして最初の振幅の変動点を周波数測定器にて検出し、伝送遅延時間を算出することで、簡易に被測定部材における信号の伝送遅延時間を定量的に測定できることになる。
【0020】
請求項6のように、周波数測定器において、最初に大きく振幅が変動した際の合成信号の最大振幅が、周囲の周波数における最大振幅の半分以下あるいは2倍以上としたときを遅延時間算出の基準とする遅延時間測定装置とすることで、観測された合成信号の振幅の変動から、被測定部材における信号の伝送遅延時間を確実に得ることができる。
【0021】
請求項7のように、演算回路にて、入力された2つの信号を加算処理して合成信号を出力し、周波数測定器にて、最初に大きく合成信号の振幅が低下した第1ディップ点を遅延時間算出の基準とすることで、請求項5または請求項6の遅延時間測定装置において、この第1ディップ点を元にして簡易に被測定部材における信号の伝送遅延時間を得ることができる。
【0022】
請求項8のように、演算回路にて、入力された2つの信号から合成信号を出力し、周波数測定器にて、最初に大きく合成信号の振幅が増大した第1ピップ点を遅延時間算出の基準とする請求項5または請求項6に記載の遅延時間測定装置において、この第1ピップ点を元にして簡易に被測定部材における信号の伝送遅延時間を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
上記に示したように、本発明の遅延時間測定方法および遅延時間測定装置は、被測定部材における信号の伝送遅延時間を定量的に測定し得るという優れた技術的な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る遅延時間測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施例に係る遅延時間測定装置に適用された周波数測定器で得られた出力信号の特性曲線を表すグラフを示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施例に係る遅延時間測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】第2の実施例及び第3の実施例に係る遅延時間測定装置に適用された周波数測定器で得られた出力信号の特性曲線を表すグラフを示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施例に係る遅延時間測定装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る遅延時間測定方法および遅延時間測定装置の第1の実施例を以下に
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
本実施例の遅延時間測定装置10は、例えば長さ1メートルのHDMIケーブル16を構成する各伝送線を被測定部材とした装置である。
図1は本実施例に係る装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
この
図1に示すように、正弦波等の源信号とされる電気信号を発生し得る掃引信号発生器12が、1ヘルツ程度の低周波数域から例えば10ギガヘルツ程度の高周波数域まで、周波数を順次変更しつつ電気信号を繰り返して出力することとなる。また、この掃引信号発生器12に配線22が分岐点14まで繋がり、この分岐点14で配線24と配線26と分岐されていて、この内の一方の配線とされる配線24がHDMIケーブル16の一端に繋がっている。
【0027】
ただし、端子を選択してHDMIケーブル16を構成する4本の伝送線の内の1本の伝送線に、図示しないものの具体的に配線24が繋がることになる。つまり、この1本の伝送線が本実施例における遅延時間を計測すべき対象とされる。
【0028】
そして、HDMIケーブル16の他端にもこの配線24が繋がっていて、先ほどの分岐点14から伸びる配線26とこの配線24とが加算回路とされる演算回路18に繋がっている。この演算回路18は、電気信号の振幅変化を観測し得る周波数測定器20に、配線28を介して接続されている。
【0029】
従って、掃引信号発生器12から源信号である電気信号が演算回路18に直接入力されるだけでなく、遅延時間を計測すべき伝送線を介した電気信号もこの演算回路18に入力される。さらに、この演算回路18がこれら2つの電気信号を加算処理して合成信号を作成して出力するのに伴い、この合成信号が演算回路18から周波数測定器20に入力されて、周波数測定器20にて振幅変化を観測することが可能となる。
【0030】
以上より、この周波数測定器20が合成信号の幅広い周波数の振幅変化を観測することで、周波数測定器20上に
図2に示すような特性曲線を表す出力信号のグラフを図示しないモニター等により表示できると共に、合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく低下するように変動しているかを判断できる。
【0031】
次に、本実施の形態に係る遅延時間測定装置10による遅延時間測定方法ついて、以下に具体的に説明する。
まず、掃引信号発生器12が低周波数から高周波数まで周波数を順次変更しつつ発生した源信号とされる電気信号を演算回路18に直接出力すると共に、遅延時間を計測すべきHDMIケーブル16の1本の伝送線を介して電気信号を演算回路18に入力する。このことで、直接出力された電気信号に対して、HDMIケーブル16の1本の伝送線を介した電気信号が遅延することなる。
【0032】
さらに、低周波数から高周波数までこれら2つの電気信号を演算回路18にて加算処理して合成信号を作成して出力し、周波数測定器20に入力する。次に、この加算信号とされる合成信号の振幅変化を周波数測定器20にて観測して、この合成信号の振幅がいずれの周波数にて最初に大きく低下するように変動するかをこの周波数測定器20が判断する。
【0033】
このとき、
図2のグラフに出力信号の特性曲線を表すが、この図に示すように最初に大きく低下するように変動した際の合成信号の極小の最大振幅M2が、周囲の周波数における最大振幅M1の半分以下とされた周波数を第1ディップ点F1として、遅延時間算出の基準とする。そして、この第1ディップ点F1の周波数の逆数をその周波数の1サイクルの時間Tとすると、T/2が伝送遅延時間を意味することになる。なお、
図2のグラフに示す第1ディップ点F1に続いて最大振幅が大きく低下した周波数を第2ディップ点F2、第3ディップ点F3とする。
【0034】
以上より、本実施例に係る遅延時間測定方法によれば、HDMIケーブル16の1本の伝送線を介した電気信号と源信号との合成信号を元にして最初の振幅の変動点である第1ディップ点F1を検出するのに伴って、伝送遅延時間を算出する。このことで、簡易にこの伝送線における信号の伝送遅延時間を定量的に測定できることになる。
【0035】
次に、本実施例に係る遅延時間測定装置10の作用を以下に説明する。
本実施例の遅延時間測定装置10においては、掃引信号発生器12から周波数を順次変更しつつ繰り返し出力された源信号である電気信号が、遅延時間を計測すべきHDMIケーブル16を構成する1本の伝送線を介して演算回路18に入力されるだけでなく、この電気信号が掃引信号発生器12から演算回路18に直接入力される。
【0036】
演算回路18にて2つの電気信号を加算処理して合成信号を出力するのに伴い、合成された合成信号が周波数測定器20に出力されて、この周波数測定器20が合成信号の振幅変化を観測する。そして、合成信号の最大振幅がいずれの周波数にて、その周囲の周波数における
図2に示す最大振幅M1の半分以下程度に最初に大きく低下するように変動しているかを周波数測定器20が判断する。
【0037】
従って、本実施例の遅延時間測定装置10によれば、掃引信号発生器12からの源信号である電気信号がHDMIケーブル16の伝送線から出力された時点での遅延によって、演算回路18に直接入力された源信号に対してこの伝送線からの電気信号が遅延する。さらに、最初に180度位相ずれて電気信号が源信号に対して反転して振幅が極小となる周波数が、最初に大きく最大振幅が低下した周波数とされる第1ディップ点F1とされ、これを極小の最大振幅M2のポイントとして周波数測定器20が検出することになる。
【0038】
これに伴い、前述のようにこの第1ディップ点F1の周波数の逆数をその周波数の1サイクルの時間Tとすると、T/2が伝送遅延時間を意味することになるので、周波数測定器20にて伝送遅延時間を判定できるようになる。
【0039】
以上より、本実施例に係る遅延時間測定装置10によっても、HDMIケーブル16の伝送線を介した電気信号と源信号との合成信号を元にして最初の振幅の変動点を検出し、伝送遅延時間を算出する。このことで、簡易にHDMIケーブル16の伝送線における電気信号の伝送遅延時間を定量的に測定できることになる。すなわち、この伝送線を通過して遅延した配線24からの電気信号と分岐点14から直接入力された配線26からの電気信号との時間差を元にして、遅延時間の測定が簡易かつ定量的に測定できるようになる。
【0040】
さらに、端子を次々に変更すること、HDMIケーブル16の上記と異なる残り3本の伝送線の遅延時間を同様に順次測定することができる。このことから、4本の伝送線の遅延時間の相違を把握可能となり、もし遅延時間の相違が大きい場合はHDMIケーブル16が必要な規格内に入っているかの判断が可能となる。
【0041】
次に、本発明に係る遅延時間測定方法および遅延時間測定装置の第2の実施例を以下に
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
本実施例は第1の実施例とほぼ同様の構成を有しているので、同一の部分の説明を省略する。なお、
図3は本実施例に係る装置の構成を示すブロック図である。また、第1の実施例では演算回路18を加算回路としてこの演算回路18にてこの加算処理されていたが、本実施例ではこの図に示すように減算回路として演算回路30にてこの減算処理することとした。
【0042】
従って、本実施例では、掃引信号発生器12から電気信号が演算回路30に直接入力されると共に、遅延時間を計測すべき伝送線を介して電気信号がこの演算回路30に入力される。そして、この演算回路30がこれら2つの電気信号を減算処理して合成信号を作成して出力し、この合成信号が周波数測定器20に入力されて、振幅変化が観測される。
【0043】
これに伴い、第1ディップ点F1の替わりに、周囲の周波数における最大振幅M1に対して最初に最大振幅M3が大きく増大するように変動した点を
図4に示す第1ピップ点F11とする。この第1ピップ点F11では、演算回路30に入力された源信号に対して、HDMIケーブル16を構成する伝送線からの電気信号はやはり、180度位相がずれて電気信号が反転している。
【0044】
なお、第1の実施例と同様に
図4に示す第1ピップ点F11に続いて最大振幅が大きく増大した周波数を第2ピップ点F12、第3ピップ点F13とする。そして、第1の実施例と同様にこの第1ピップ点F11の周波数の逆数をその周波数の1サイクルの時間Tとすると、T/2が伝送遅延時間を意味することになる。
【0045】
従って、本実施例では
図4に示すような特性曲線となるものの、合成信号の最大振幅がいずれの周波数にて、その周囲の周波数における最大振幅M1の2倍以上程度に最初に大きく増大するように変動しているかを周波数測定器20が判断し、この第1ピップ点を遅延時間算出の基準点と判断することができる。
【0046】
以上より、本実施例に係る遅延時間測定装置10によれば、第1の実施例と同様に伝送遅延時間を算出することで、簡易にHDMIケーブル16の各伝送線における電気信号の伝送遅延時間を定量的に測定できることになる。
【0047】
次に、本発明に係る遅延時間測定方法および遅延時間測定装置の第3の実施例を以下に
図4及び
図5を参照しつつ説明する。
本実施例は第1の実施例とほぼ同様の構成を有しているので、同一の部分の説明を省略する。なお、
図5は本実施例に係る装置の構成を示すブロック図である。また、第1の実施例及び第2の実施例では、掃引信号発生器12が正弦波等の源信号とされる単独の電気信号を発生していたが、本実施例の掃引信号発生器12は相互に位相が180度相違する2つの電気信号が周波数を同期しつつ発生されている。但し、1ヘルツ程度の低周波数域から例えば10ギガヘルツ程度の高周波数域まで、周波数を順次変更しつつ電気信号を繰り返して出力することは、第1の実施例等と同様である。
【0048】
つまり、本実施例では、掃引信号発生器12は図示しない2つの端子を有し、一方の端子から送り出される源信号に対して、他方の端子に位相が180度遅れた源信号が送り出されることになっている。そして、第1の実施例等で用いていた分岐点14を無くし、本実施例では、HDMIケーブル16の一端に繋がる配線24が一方の端子に接続され、第1の実施例と同様の加算回路とされる演算回路18に直接繋がる配線26が他方の端子に接続されている。
【0049】
従って、本実施例では、掃引信号発生器12からの他方の端子からの電気信号が演算回路18に直接入力されると共に、遅延時間を計測すべき伝送線であるHDMIケーブル16を介して一方の端子からの電気信号がこの演算回路18に入力される。そして、この演算回路18がこれら2つの電気信号を加算処理して合成信号を作成して出力し、この合成信号が周波数測定器20に入力されて、振幅変化が観測される。
【0050】
ここで、相互に位相が180度相違する2つの源信号が掃引信号発生器12の2つの端子から送り出されているので、HDMIケーブル16において電気信号が遅延して180度位相が相違することとなる周波数では、演算回路18において位相が合致して0度となる結果、本実施例では振幅が極大化するので、周波数測定器20にてこの振幅変化が観測されることになる。
【0051】
これに伴い、第1ディップ点F1の替わりに、第2の実施例と同様に周囲の周波数における最大振幅M1に対して最初に最大振幅M3が大きく増大するように変動した点を前述の
図4に示す第1ピップ点F11とする。この第1ピップ点F11では、HDMIケーブル16を構成する伝送線からの電気信号がずれた結果として、演算回路18に直接入力された源信号の電気信号に対して、位相が一致している。
【0052】
なお、
図4に示すように第2の実施例と同様に、第1ピップ点F11に続いて最大振幅が大きく増大した周波数を第2ピップ点F12、第3ピップ点F13とする。そして、第1の実施例と同様にこの第1ピップ点F11の周波数の逆数をその周波数の1サイクルの時間Tとすると、T/2が伝送遅延時間を意味することになる。
【0053】
従って、本実施例では
図4に示すような特性曲線となるものの、合成信号の最大振幅がいずれの周波数にて、その周囲の周波数における最大振幅M1の2倍以上程度に最初に大きく増大するように変動しているかを周波数測定器20が判断し、この第1ピップ点を遅延時間算出の基準点と判断することができる。
【0054】
以上より、本実施例に係る遅延時間測定装置10によれば、第1の実施例と同様に伝送遅延時間を算出することで、簡易にHDMIケーブル16の各伝送線における電気信号の伝送遅延時間を定量的に測定できることになる。
【0055】
なお、上記各実施例において、例えば送信機と受信機との間を繋ぐHDMIケーブル16の各伝送線の遅延時間を定量的に測定し、HDMIケーブル16が規格に合致するかの判定を可能としたが、他のケーブルや素子、回路基板等の遅延時間を定量的に測定することとしても良い。さらに、上記各実施例において信号を電気信号として遅延時間の測定をしたが、光ケーブル等の光を伝送信号とするようなものにも、本発明を適用できることは言うまでもない。
【0056】
他方、掃引信号発生器12の掃引周波数帯域も測定対象物とされる被測定部材に合わせて変更しても良く、電気信号等の信号の種類も正弦波だけでなく、矩形波やのこぎり波等の他の波形を採用しても良い。また、周波数測定器20は、幅広い周波数を検出可能なだけでなく、制御装置であるCPU及び、振幅量を検出し最大振幅を判断できると共に振幅である電圧の閾値を設定可能な判断回路等をも内蔵している。
【0057】
この一方、第2の実施例においては演算回路30にて減算処理をしたが、第3の実施例のように電気信号を180度反転した信号を加算しても
図4に示すような周波数応答特性が得られるので、180度反転した信号を採用しても良い。また、掃引信号発生器12からHDMIケーブル16に送り出す源信号の位相と演算回路18に直接送り出す源信号の位相とのずれを第3の実施例と逆にしても良い。さらに、上記各実施例で用いられている配線24及び配線26はその長さ及び特性を相互に同一のものとし、これら配線による測定データへの影響を極力低減することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の遅延時間測定方法および遅延時間測定装置はケーブルや回路基板等の遅延時間を計測できるだけでなく、測定対象物である各種試料における遅延時間等の物理量を計測できるので、種々の産業分野に適用可能ともなる。
【符号の説明】
【0059】
10 遅延時間測定装置
12 掃引信号発生器
14 分岐点
16 HDMIケーブル
18 演算回路
20 周波数測定器
30 演算回路
F1 第1ディップ点
F11 第1ピップ点