(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090143
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】フライ用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20230622BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23D9/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204945
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛大
(72)【発明者】
【氏名】小谷 真由
(72)【発明者】
【氏名】和泉 秀征
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 憲
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DH10
4B026DK10
4B026DP10
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】フライ食品の油ちょうに使用することにより、ホットショーケース等に保存する場合であっても、良好な食感が長時間維持されるフライ食品を製造できるフライ用油脂組成物を提供する。
【解決手段】下記A成分の含有量が0.1~1.0質量%であり、且つ下記B成分の含有量が0.05~1.0質量%である、フライ用油脂組成物。
A成分:ポリグリセリンの平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステル;
B成分:ポリグリセリンの平均重合度が3~6であり、且つ構成脂肪酸が炭素数18~22の不飽和脂肪酸のポリグリセリン脂肪酸エステル。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A成分の含有量が0.1~1.0質量%であり、且つ下記B成分の含有量が0.05~1.0質量%である、フライ用油脂組成物。
A成分:ポリグリセリンの平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステル;
B成分:ポリグリセリンの平均重合度が3~6であり、且つ構成脂肪酸が炭素数18~22の不飽和脂肪酸のポリグリセリン脂肪酸エステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
から揚げ、コロッケ等、各種食品素材を食用油脂で油ちょうしてなるフライ食品は、高温の油脂を熱媒体とすることにより水分が急激に蒸発して得られるサクサクとしたクリスピーな食感が好まれている。しかし、一般にフライ食品は、油ちょうした直後は軽く、クリスピーな食感を呈していても、時間の経過とともに軟らかく、ふやけたような食感や、ゴムのような歯切れの悪い食感に変化してしまう傾向がある。
【0003】
フライ食品の良好な食感を維持する方法としては、例えば、フライ食品の油ちょうに使用する油脂組成物(フライ用油脂組成物)に各種の乳化剤を添加する方法が知られている。具体的には、例えば、動植物性油脂にジグリセリンモノ脂肪酸エステルを特定量添加する方法(特許文献1)、食用油脂に有機酸モノグリセリド及びポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量溶解せしめる方法(特許文献2)、食用油脂及び硬化油からなる油脂組成物に、構成脂肪酸として(A):炭素数が16~22の飽和脂肪酸から選択される一種または二種以上、(B)炭素数が8~14の飽和脂肪酸及び炭素数が16~22の不飽和脂肪酸から選択される一種または二種以上を特定の比率で含有するポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
一方、フライ食品を購入してすぐに食したいという消費者に向けて、製品を高温で保存できるホットショーケースが利用されており、例えばコンビニエンスストア等においては、フライ食品がホットショーケース内に陳列されて販売されている。
【0005】
しかしながら、フライ食品をホットショーケース内に保存すると、保存中の食感の変化が激しく、上記の方法をもってしても、この問題が十分に解決できるとは言えないため、これらに代わり得る新規な方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-131071号公報
【特許文献2】特開平9-074999号公報
【特許文献3】特開2011-083229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フライ食品の油ちょうに使用することにより、ホットショーケース等に保存する場合であっても、良好な食感が長時間維持されるフライ食品を製造できるフライ用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の乳化剤2種類を併用することにより、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記A成分の含有量が0.1~1.0質量%であり、且つ下記B成分の含有量が0.05~1.0質量%である、フライ用油脂組成物、からなっている。
A成分:ポリグリセリンの平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステル;
B成分:ポリグリセリンの平均重合度が3~6であり、且つ構成脂肪酸が炭素数18~22の不飽和脂肪酸のポリグリセリン脂肪酸エステル。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフライ用油脂組成物を使用して油ちょうしたフライ食品は、ホットショーケース等に保存する場合であっても、良好な食感が長時間維持される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフライ用油脂組成物は、油脂中に、下記A成分を0.1~1.0質量%、好ましくは0.3~0.8質量%、下記B成分を0.05~1.0質量%、好ましくは0.3~0.9質量%含有するものである。
A成分:ポリグリセリンの平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステル;
B成分:ポリグリセリンの平均重合度が3~6であり、且つ構成脂肪酸が炭素数18~22の不飽和脂肪酸のポリグリセリン脂肪酸エステル。
【0012】
前記油脂は、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード、魚油、乳脂等の動物油脂、これら動植物油脂に分別、水素添加、エステル交換等の処理を施した加工油脂等が挙げられる他、グリセリンジ脂肪酸エステル及びプロピレングリコールジ脂肪酸エステルもこれらに含まれる。これらの中でも、常温(15~25℃)で液状である植物油脂(例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイックヒマワリ油等)が好ましく、菜種油が特に好ましい。これら油脂は、いずれか1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明のフライ用油脂組成物に用いられるA成分は、ポリグリセリンの平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステル(即ち、ジグリセリン脂肪酸エステル)である。
【0014】
A成分を構成するポリグリセリンの平均重合度は、A成分として用いるポリグリセリン脂肪酸エステルが市販品であれば、その製造元が公表する数値を参照すれば良い。しかし、そのような数値が不明な場合は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの組成(即ち、ポリオール組成)を分析することにより求められる。その方法を、下記工程(1)~(3)に示す。
【0015】
(1)試料の調製
先ず、被検試料を、けん化分解処理して脂肪酸とポリオールとに分解する。具体的には、被検試料2.0gをけん化用フラスコに量り取り、これに0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール標準液30mLを加え、該フラスコに冷却器を付け、時々振り混ぜながら、還流するエタノールが冷却器の上端に達しないように約70~80℃の範囲内で温度を調節して穏やかに約1時間加熱した後、温水40~50mL、水40~50mL、ヘキサン100mLで順次フラスコを洗いながら分液漏斗に移す。この分液漏斗に10%塩酸約5mLを加えて分液漏斗を振り混ぜ、これにヘキサン50mLを加えて更に振り混ぜ、その後静置する。分離した下層をビーカーに採り、0.5mol/L水酸化カリウム溶液でpHを調製して中和し、60℃の通風乾燥機内にビーカーを静置し、脱水する。完全に脱水したらエタノール5~10mLを2~3回に分け入れて内容物をかき混ぜ、自然濾過する。得られた濾液をフラスコに移し、エバポレータにてエタノールを除去する。
【0016】
(2)測定方法
次に、得られた濃縮物を20mg計量し、これにピリジン(試薬特級;富士フィルム和光純薬社製)1~2mL入れて混合し溶解する。これに1,1,1,3,3,3,-ヘキサメチルジシラザン(東京化成工業社製)を0.5mL加えて混合し、更にトリフルオロ酢酸(和光特級;富士フィルム和光純薬社製)0.1mLを加えて混合する。これを約1分間放置した後、GC(ガスクロマトグラフィー)を用いて下記条件でポリオール組成分析を行う。
<GC分析条件>
装置:ガスクロマトグラム(型式:GC-2010Plus;島津製作所社製)
データ処理ソフトウェア(型式:GCsolution バージョン2.4;島津製作所社製)
カラム(型式:Ultra ALLOY-TRG;P/N:UATRG-30M-0.1F;フロンティア・ラボ社製)
カラムオーブン条件:初期温度 100℃(1分間);昇温速度 15℃/分;最終温度 365℃(11分間)
サンプル注入量:1.0μL
キャリアガス:窒素
【0017】
(3)定量
分析後、データ処理ソフトウェアによりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてポリオール組成を求め、各成分の重合度の重量平均値を算出し、平均重合度とする。
【0018】
A成分の好ましい製法の概略は次の通りである。例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器に、ジグリセリンと脂肪酸を約1:1のモル比で仕込み、通常触媒として水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は、180~260℃の範囲、好ましくは200~250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は、0.5~15時間、好ましくは1~3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価12以下を目安に決められる。反応終了後、得られた反応液に酸を加えて触媒を中和し、120℃以上180℃未満に冷却し、未反応のジグリセリンが分離した場合はそれを除去し、ポリグリセリンの平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステルを得る。
【0019】
上記処理により得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを、好ましくは、更に減圧下で蒸留して残存する未反応のジグリセリンを留去し、続いて、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出等自体公知の方法を用いて精製することにより、モノエステル体を約70質量%以上含み、且つポリグリセリンの平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステルを得ることができる。
【0020】
上記製法で原材料として用いる脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数12~18の直鎖の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)が好ましく、炭素数16~18の直鎖の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)がより好ましい。これら脂肪酸は1種類のみであっても、2種類以上を任意に組み合わせたものであっても良い。
【0021】
A成分としては、例えば、ポエムDS-100A(商品名;ポリグリセリンモノステアリン酸エステル;ポリグリセリンの平均重合度2.0;理研ビタミン社製)、ポエムDO-100V(商品名;ポリグリセリンモノオレイン酸エステル;ポリグリセリンの平均重合度2.0;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0022】
本発明のフライ用油脂組成物に用いられるB成分は、ポリグリセリンの平均重合度が3~6(好ましくは3.2~5.0、より好ましくは3.5~4.0)であり、且つ構成脂肪酸が炭素数18~22の不飽和脂肪酸のポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0023】
B成分を構成するポリグリセリンの平均重合度は、B成分として用いるポリグリセリン脂肪酸エステルが市販品であれば、その製造元が公表する数値を参照すれば良い。しかし、そのような数値が不明な場合は、上述したA成分を構成するポリグリセリンの平均重合度と同様に測定できる。
【0024】
B成分のエステル化率は、油脂への溶解性が高く本発明の効果が十分に得られるため、25~85%(好ましくは30~45%)であることが好ましい。
【0025】
前記エステル化率(%)は下記式により算出される。なお、下記式中のエステル価及び水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3-1996 エステル価]及び[2.3.6-1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
【0026】
【0027】
B成分の好ましい製法の概略は次の通りである。例えば、撹拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器に、ポリグリセリンと炭素数18~22の不飽和脂肪酸とをモル比で1:1.2~1:6.8、好ましくは1:1.5~1:3.6で仕込み、必要に応じ触媒として水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は、180~260℃の範囲、好ましくは200~250℃の範囲である。また、反応圧力条件は、減圧下又は常圧下で、反応時間は、0.5~15時間、好ましくは1~6時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価5以下を目安に決められる。反応終了後、必要に応じ、得られた反応液に酸を加えて触媒を中和し、120℃以上180℃未満に冷却し、未反応のポリオールが分離した場合はそれを除去する。以上の工程により、ポリグリセリンの平均重合度が3~6であり、且つ構成脂肪酸が炭素数18~22の不飽和脂肪酸のポリグリセリン脂肪酸エステルを得る。
【0028】
上記製法で原材料として用いるポリグリセリンは、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が3~6となるものを適宜選択して用いれば良い。そのようなポリグリセリンは、1種のみを用いても良く、2種以上を任意に組合せて用いても良い。
【0029】
上記製法で原材料として用いる脂肪酸は、炭素数18~22の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)を用いれば良い。これら脂肪酸は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意に組合せて用いても良い。
【0030】
本発明のフライ用油脂組成物の製造方法に特に制限はないが、例えば、前記油脂に対して、A成分を0.1~1.0質量%、好ましくは0.3~0.8質量%、B成分を0.05~1.0質量%、好ましくは0.3~0.9質量%添加し、所望により加熱して混合することにより製造できる。
【0031】
本発明のフライ用油脂組成物は、前記油脂、A成分及びB成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、A成分及びB成分以外の乳化剤、酸化防止剤(抽出トコフェロール、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル等)等が挙げられる。
【0032】
本発明のフライ用油脂組成物は、従来のフライ用油脂組成物と同様に、各種フライ食品の油ちょうに使用することができる。本発明のフライ用油脂組成物を使用して油ちょうできるフライ食品に特に制限はないが、例えば、素揚げ、から揚げ、竜田揚げ、カツレツ、コロッケ、フライ(エビフライ、アジフライ、カキフライ等)、ナゲット、フリッター、天ぷら、ドーナツ、揚げパン、アメリカンドッグ、フライドポテト等が挙げられる。これらの中でも、とりわけホットショーケース内に陳列されて販売されることの多い、から揚げ、ナゲット、コロッケ、ドーナツ、アメリカンドッグ等の油ちょうに使用することが好ましい。
【0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0034】
[製造例1]
[ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1)の製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ポリグリセリン(商品名:R-PG3;阪本薬品工業社製)282g、オレイン酸(商品名:ルナックO-V;花王社製)468gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.51gを加え、窒素ガス気流中235℃で、酸価2以下となるまで、約3時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物にリン酸(85質量%)1.02gを添加して触媒を中和し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1)約702gを得た。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は3.7であった。また、該ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は28%であった。
【0035】
[製造例2]
[ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品2)の製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ポリグリセリン(商品名:R-PG3;阪本薬品工業社製)249g、オレイン酸(商品名:ルナックO-V;花王社製)551gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.51gを加え、窒素ガス気流中235℃で、酸価2以下となるまで、約3時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物にリン酸(85質量%)1.02gを添加して触媒を中和し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品2)約753gを得た。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は3.7であった。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は38%であった。
【0036】
[製造例3]
[ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品3)の製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ポリグリセリン(商品名:R-PG3;阪本薬品工業社製)212g、オレイン酸(商品名:ルナックO-V;花王社製)588gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.51gを加え、窒素ガス気流中235℃で、酸価2以下となるまで、約3時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物にリン酸(85質量%)1.02gを添加して触媒を中和し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品3)約747gを得た。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は3.7であった。また、該ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は48%であった。
【0037】
[製造例4]
[ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品4)の製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ポリグリセリン(商品名:R-PG3;阪本薬品工業社製)140g、オレイン酸(商品名:ルナックO-V;花王社製)660gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.51gを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価5以下となるまで、約5.5時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物にリン酸(85質量%)1.02gを添加して触媒を中和し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品4)約759gを得た。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は3.7であった。また、該ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は83%であった。
【0038】
[製造例5]
[ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品5)の製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ポリグリセリン(商品名:R-PG3;阪本薬品工業社製)237.6g、エルカ酸(日油社製)562.4gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.8gを加え、窒素ガス気流中230℃で、酸価1以下となるまで、約2時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を冷却し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品5)約765gを得た。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は3.7であった。また、該ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は37%であった。
【0039】
[製造例6]
[ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品6)の製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ポリグリセリン(商品名:#500;阪本薬品工業社製)228.8g、オレイン酸(商品名:ルナックO-V;花王社製)571.2gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.8gを加え、窒素ガス気流中230℃で、酸価2以下となるまで、約5時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を冷却し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品6)約740gを得た。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は6.0であった。また、該ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は63%であった。
【0040】
製造例1~6で得たポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1~6)について、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度、構成脂肪酸の種類及びエステル化率(%)を表1に示す。
【0041】
【0042】
[から揚げによる評価]
(1)フライ用油脂組成物の原材料
1)ポリグリセリン脂肪酸エステル(市販品1;商品名:ポエムDO-100V;平均重合度:2.0;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
2)ポリグリセリン脂肪酸エステル(市販品2;商品名:ポエムDS-100A;平均重合度2.0;構成脂肪酸:ステアリン酸;理研ビタミン社製)
3)ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1~6)
4)ポリグリセリン脂肪酸エステル(市販品3;商品名:ポエムJ-3071RV;平均重合度3.7;構成脂肪酸:ステアリン酸;エステル化率:37%)
5)菜種油(商品名:食用なたね油;ボーソー油脂社製)
【0043】
(2)フライ用油脂組成物の原材料の配合
前記原材料を用いて調製したフライ用油脂組成物1~23の配合組成を表2~6に示した。このうち、表2~4のフライ用油脂組成物1~14は本発明の実施例であり、表5及び6のフライ用油脂組成物15~22はそれらに対する比較例であり、表6のフライ用油脂組成物23は乳化剤無添加の対照である。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
(3)から揚げの製造方法
1)表1~6に示した配合割合に従い、フライ用油脂組成物の原材料を合計900gとなるようにフライヤー(型式:EFK-A10;象印マホービン社製)に入れ、これを加熱しながら必要に応じて撹拌し、フライ用油脂組成物1~23を調製した。
2)前記フライ用油脂組成物1~23の温度を170~175℃に保ちつつ、ここに市販の冷凍から揚げ(1個当たり約60g)を2個入れて5分30秒間油ちょうした。
3)前記2)の操作を5度繰り返し、から揚げ1~23を計10個ずつ得た。
【0050】
(4)官能評価
前記(3)で得られたから揚げ1~23をホットショーケース(型式:YN-500;ヨシキン社製)に入れ、庫内温度65±5℃条件で4時間静置した後、これらの歯ごたえ及び口当たりについて官能評価を行った。評価は表7に示す評価基準に従って10名のパネラーで行い、結果は10名の評点の平均値を下記の基準に従って記号化した。結果を表8に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 平均値2.5以上
△:やや悪い 平均値1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0051】
【0052】
【0053】
表8の結果から明らかなように、実施例のフライ用油脂組成物1~14を使用して油ちょうしたから揚げ1~14は、クリスピーな歯ごたえを維持しており、口当たりも良好であった。これに対し、比較例のフライ用油脂組成物15~22及び対照のフライ用油脂組成物23を使用して油ちょうしたから揚げ15~23は、いずれの評価項目においても「△」以下の結果であった。
【0054】
[コロッケによる評価]
(1)フライ用油脂組成物の原材料
1)ポリグリセリン脂肪酸エステル(市販品1;商品名:ポエムDO-100V;平均重合度:2.0;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
2)ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品2)
3)菜種油(商品名:食用なたね油;ボーソー油脂社製)
【0055】
(2)フライ用油脂組成物の原材料の配合
前記原材料を用いて調製したフライ用油脂組成物2、6、17及び23の配合組成を表9に示した。このうち、フライ用油脂組成物2及び6は本発明の実施例であり、フライ用油脂組成物17はそれらに対する比較例であり、フライ用油脂組成物23は乳化剤無添加の対照である。
【0056】
【0057】
(3)コロッケの製造方法
1)表9に示した配合割合に従い、フライ用油脂組成物の原材料を合計900gとなるようにフライヤー(型式:EFK-A10;象印マホービン社製)に入れ、これを加熱しながら必要に応じて撹拌し、フライ用油脂組成物2、6、17及び23を調製した。
2)前記フライ用油脂組成物2、6、17及び23の温度を175~180℃に保ちつつ、ここに市販の冷凍コロッケ(1個当たり約80g)を2個入れて5分間油ちょうした。
3)前記2)の操作を5度繰り返し、コロッケ1~4を計10個ずつ得た。
【0058】
(4)官能評価
前記(3)で得られたコロッケ1~4をホットショーケース(型式:YN-500;ヨシキン社製)に入れ、庫内温度65±5℃条件で4時間静置した後、これらの歯ごたえ及び口当たりについて官能評価を行った。評価は表10に示す評価基準に従って10名のパネラーで行い、結果は10名の評点の平均値を下記の基準に従って記号化した。結果を表11に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 平均値2.5以上
△:やや悪い 平均値1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0059】
【0060】
【0061】
表11の結果から明らかなように、実施例のフライ用油脂組成物2及び6を使用して油ちょうしたコロッケ1及び2は、クリスピーな歯ごたえを維持しており、口当たりも良好であった。これに対し、比較例のフライ用油脂組成物17及び対照のフライ用油脂組成物23を使用して油ちょうしたコロッケ3及び4は、いずれの評価項目においても「△」以下の結果であった。