(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090144
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】成形機用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C08L 57/00 20060101AFI20230622BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20230622BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230622BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C08L57/00
C08K5/04
C08K3/013
C11D1/66
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204946
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】504105737
【氏名又は名称】林化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】古和 大典
【テーマコード(参考)】
4H003
4J002
【Fターム(参考)】
4H003AC03
4H003AC08
4H003DA09
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA24
4H003FA04
4J002AA011
4J002BB031
4J002BB12
4J002BB17
4J002BB20
4J002BB21
4J002BC03
4J002BG05
4J002BN15
4J002DJ047
4J002ED030
4J002EH046
4J002EH056
4J002EH156
4J002FD017
4J002FD316
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】成形処理後に成形機内に残存する樹脂若しくは樹脂組成物といった樹脂材料残存物に対し良好な洗浄効果を発揮し、少量で除去できる成形機用洗浄剤を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂成分、界面活性剤、及び、前記熱可塑性樹脂成分100質量部に対して75質量部以下の無機フィラーを含有し、前記熱可塑性樹脂成分のメルトマスフローレイト(190℃、荷重2.16kg)が0.05~15g/10分であり、前記界面活性剤が熱分解温度240℃以上のノニオン系界面活性剤である成形機用洗浄剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂成分、界面活性剤、及び、前記熱可塑性樹脂成分100質量部に対して75質量部以下の無機フィラーを含有し、
前記熱可塑性樹脂成分のメルトマスフローレイト(190℃、荷重2.16kg)が0.05~15g/10分であり、
前記界面活性剤が熱分解温度240℃以上のノニオン系界面活性剤である成形機用洗浄剤。
【請求項2】
前記界面活性剤を、前記熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、0.5~15質量部含有する請求項1に記載の成形機用洗浄剤。
【請求項3】
射出成型機用である請求項1又は2に記載の成形機用洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の成形加工には、射出成形機や押出成形機が主に使用される。これらの成形機においてはその使用後に、当該樹脂やこれに添加される顔料等の添加剤、成形時に発生する樹脂の劣化物が成形機内に残留する。これらの残留物が存在したまま、次の樹脂の成形加工を行うと残留物が成形品中に混入することになり、成形品の外観を低下させたり、期待される樹脂物性を低下させたりしてしまう。
【0003】
このような先行樹脂の影響を低減するために、次の成形加工に使用する樹脂によって成形機内部の洗浄を行うことがある。しかし、この方法では成形機の洗浄に多量の樹脂が必要となりコストがかかったり、成形機内の汚れを完全には除去できなかったりといった問題があった。
【0004】
そこで、成形機を洗浄するための洗浄剤が種々検討されるようになった。例えば、特許文献1では、メルトマスフローレイトが10~35g/10分である成形機用洗浄剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような洗浄剤では、成形機内の洗浄に多くの量が必要となることがあった。洗浄に必要な樹脂(洗浄剤)が多くなると、廃棄物が多量に排出されることになり、近年注目されるカーボンニュートラルの実現の観点からは好ましいものではない。
【0007】
以上から、本発明は、成形処理後に成形機内に残存する樹脂若しくは樹脂組成物といった樹脂材料残存物に対し良好な洗浄効果を発揮し、少量で除去できる成形機用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] 熱可塑性樹脂成分、界面活性剤、及び、前記熱可塑性樹脂成分100質量部に対して75質量部以下の無機フィラーを含有し、前記熱可塑性樹脂成分のメルトマスフローレイト(190℃、荷重2.16kg)が0.05~15g/10分であり、前記界面活性剤が熱分解温度240℃以上のノニオン系界面活性剤である成形機用洗浄剤。
[2] 前記界面活性剤を、前記熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、0.5~15質量部含有する[1]に記載の成形機用洗浄剤。
[3] 射出成型機用である[1]又は[2]に記載の成形機用洗浄剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形処理後に成形機内に残存する樹脂若しくは樹脂組成物といった樹脂材料残存物に対し良好な洗浄効果を発揮し、少量で除去できる成形機用洗浄剤を提供することができる。その結果、廃棄される樹脂を低減することが可能で、近年注目されるカーボンニュートラルの実現に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態(本実施形態)に係る成形機用洗浄剤は、熱可塑性樹脂成分、界面活性剤、及び、熱可塑性樹脂成分100質量部に対して75質量部以下の無機フィラーを含有する。以下、各成分をはじめとした種々の成分等について説明する。
【0012】
(熱可塑性樹脂成分)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂成分は、そのメルトマスフローレイト(190℃、荷重2.16kg)が0.05~15g/10分であり、0.05~10g/10分であることが好ましく、0.05~8g/10分であることがより好ましく、0.05~7g/10分であることがさらに好ましい。
【0013】
メルトマスフローレイト(MFR)が0.05g/10分未満では、置換性(洗浄剤の排出性)の低下が発生してしまい、15g/10分を超えると、洗浄力の低下が発生してしまう。
【0014】
ここで、本実施形態に係る熱可塑性樹脂成分のMFRは、ISO1133に準拠し、190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるものとする。
具体的には、予め測定温度(190℃)に加熱されたシリンダ(内径9.5mmφ)内に、乾燥した熱可塑性樹脂成分を入れる。熱可塑性樹脂成分が測定温度(190℃)に到達した後、シリンダ内に挿入されるピストンに既定の荷重(2.16kg)を掛けることにより、シリンダ下部に取り付けられたオリフィス(内径2.095mmφ)から熱可塑性樹脂成分を押し出す。そして、10分間に押し出される熱可塑性樹脂成分の質量をMFRとして求める。
【0015】
本実施形態の「熱可塑性樹脂成分」とは、熱可塑性樹脂(複数種ある場合はそれらすべて)、あるいは、熱可塑性樹脂(複数種ある場合はそれらすべて)とパラフィンとの混合物で、既述のMFRが0.05~15g/10分のものをいう。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリブテン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等を挙げられ、ポリエチレンが好ましい。
【0017】
ポリエチレンは、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、メタロセン化合物を重合触媒として用いて得られたポリエチレン、環状ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリエチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性ポリエチレン等の変性ポリエチレン樹脂が挙げられる。
【0018】
なかでも、MFRの調整のしやすさやスクリューやシリンダの汚れを効果的に洗浄する観点から、熱可塑性樹脂は超高分子量ポリエチレンを主成分(好ましくは50質量%以上、より80質量%以上)とするものが好ましい。
ここでいう超高分子量ポリエチレンとは、重量平均分子量は100万以上(好ましくは200万~1200万、より好ましくは400万~1000万)のポリエチレンをいい、エチレン単独重合体のみならず、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィン、炭素数3~20の環状オレフィン、式CH2=CHR1(R1は炭素数6~20のアリール基である)で表される化合物、及び炭素数4~20の直鎖状、分岐状または環状のジエンより成る群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとを共重合させたものも含まれる。
【0019】
また、可塑化と剥離性の観点から、熱可塑性樹脂とパラフィンとの混合物(組み合わせ)であってもよい。パラフィンとしては、流動パラフィンが好ましい。流動パラフィンは、JIS K2283で規定された測定方法で測定した40℃動粘度が1~200mm2/sであることが好ましく、5~100mm2/sであることがより好ましい。40℃動粘度が上記の範囲であることで、取扱いが容易となり、樹脂中への流動パラフィン分散性が良好となる。
【0020】
パラフィンと熱可塑性樹脂(複数種ある場合はその合計)との質量比[パラフィン/熱可塑性樹脂]は、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。0.4以下であることで、洗浄力に有効な粘度と効果を保持することができる。
なお、パラフィンを含有する場合の[パラフィン/熱可塑性樹脂]の下限は0.01程度であることが好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂成分のMFRを0.05~15g/10分とするには、当該範囲の熱可塑性樹脂を使用するか、複数種の熱可塑性樹脂を混合し、当該範囲となるように配合を調整するか、あるいは、単一の熱可塑性樹脂若しくは複数種の熱可塑性樹脂とパラフィンとを配合して当該範囲となるように配合を調整すればよい。
好ましい。
【0022】
(界面活性剤)
本実施形態に係る成形機用洗浄剤は、樹脂材料残存物への浸透と洗浄性向上の観点から、さらに界面活性剤を含むが、当該界面活性剤は、熱分解温度240℃以上のノニオン系界面活性剤を用いる。ノニオン系界面活性剤は、成形機内部での熱可塑性樹脂成分の送り性(滑り性)と汎用性の観点から好ましい。
【0023】
また、上記「熱分解温度240℃以上」とは、射出成形等の成形時に想定される成形温度よりも熱分解温度が高いことを意味し、射出成形と同程度の温度で洗浄する際に、当該温度付近で熱分解することが抑制される。その結果、樹脂材料残存物に対する界面活性剤による浸透及び洗浄効果が十分に発揮されやすくなる。したがって、熱分解温度が240℃未満では、界面活性剤が熱分解を起こしやすくなり、その機能が十分に発揮されない。熱分解温度は250℃~280℃であることが好ましく、280℃~300℃であることがより好ましい。
【0024】
ここで、界面活性剤の熱分解温度は、熱重量分析(TGA)によって測定されるもので、試料10mgを空気雰囲気下、一定の昇温速度(10℃/min)で加熱し、初期減少前の接線と減少後の接線の交点の位置から求めた温度である。
【0025】
上記ノニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等で、熱分解温度が240℃以上のものが挙げられるが、空気雰囲気下での熱分解温度が高く性能維持の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは下記式で表されるものが好ましい。
【0027】
【0028】
上記式(1)中、nは2~10の数であり、R1、R3、及び複数あるR2はそれぞれ独立に水素又は炭素数8~20の脂肪酸残基である。
nは耐熱性、洗浄性、離型性の観点から、2~8の数であることが好ましく、3~5の数であることがより好ましい。また、R1、R3、及び複数あるR2は耐熱性、洗浄性、離型性の観点から、それぞれ独立に水素又は炭素数12~20であることが好ましく、14~20であることが好ましい。
脂肪酸残基となる脂肪酸としては、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。なかでも、パルミチン酸及び/又はステアリン酸を含むことが好ましい。
【0029】
熱分解温度240℃以上のノニオン系界面活性剤は、熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、0.5~15質量部含有することが好ましく、0.5~13質量部であることがより好ましい。含有量が0.5~15であることで、洗浄力に有効な粘度と本発明の洗浄効果を良好に保持することができる。
【0030】
(無機フィラー)
本実施形態に係る洗浄剤は、研磨効果による洗浄性向上、及び粘度調整の観点から、さらに無機フィラーを含む。無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、クレイ、モンモンリロナイト、スメクタイト、カオリン、ガラスファイバ、ガラスミルドファイバ、ガラスフレーク、カーボンファイバ、カーボンフレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバ、シリカ、セラミック粒子、セラミックファイバ、およびセラミックバルーン等が挙げられる。なかでもカオリン、炭酸カルシウムおよびタルクが好ましく、タルクがより好ましい。
【0031】
無機フィラーの体積平均粒径は特に制限されず、樹脂材料残存物の洗浄効果、熱可塑性への配合のしやすさ等の観点から、0.1~50μmであることが好ましく、1~30μmであることがより好ましい。体積平均粒径は、レーザ回折散乱法により測定することができる。
【0032】
本実施形態において、無機フィラーは、熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、75質量部以下を含み、60質量部以下を含むことが好ましく、50質量部以下を含むことがより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。75質量部を超えると有効な粘度と洗浄効果を保持しにくくなる。
なお、無機フィラーは、熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上含むことが好ましく、5質量部以上含むことがより好ましい。2質量部以上含むこと無機フィラーに基づく洗浄力が得られやすくなる。
【0033】
ここで、本実施形態に係る無機フィラー及びノニオン系界面活性剤のそれぞれの効果をバランスよく良好に発揮させる観点から、これらの質量比率(無機フィラー/ノニオン系界面活性剤)は、0.2~100であることが好ましく、0.2~60であることがより好ましく、1.5~10であることがさらに好ましく、なかでも、1.5~5であることが好ましく、1.5~4であることがより好ましく、1.5~3.8であることがさらに好ましい。
【0034】
(金属石鹸)
本実施形態の成形機用洗浄剤は、さらに金属石鹸を含むことが好ましい。
金属石鹸としては、炭素数12~18の直鎖脂肪族モノカルボン酸の金属塩等が挙げられ、炭素数12~18の直鎖脂肪族モノカルボン酸としては、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノレイン酸等が挙げられる。金属塩としては、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
【0035】
(任意成分)
本発明の樹脂組成物は必要に応じて、任意成分を含むことができる。例えば、熱安定剤、金属石鹸、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、及び難燃剤等が挙げられる。
【0036】
製造時等の熱安定性を向上させるために添加される熱安定剤としては、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。熱安定性の向上効果を効果的に得る観点から、熱安定剤は、熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、0.1~4.0質量部含むことが好ましく、0.5~3.0質量部含むことがより好ましい。
【0037】
本実施形態に係る洗浄剤は、例えばタンブラーミキサーや高速ミキサーで各材料を混合し、押出機で混練(溶融混練)して得られる。その形状は、粉状、顆粒状、ペレット状、フレーク状、およびこれらの混合形態等いずれでもよい。
【0038】
ここで、溶融混練は例えば、バンバリーミキサー、二本ロール、三本ロール、単軸混練押出機、および二軸混練押出機等を用いて行うことができる。溶融混練は、一段階で実施してもよいし、複数段階で実施してもよい。溶融混練温度は、熱可塑性樹脂が充分に溶融し、かつ、熱可塑性樹脂の熱劣化が問題とならない温度であれば特に限定されない。例えば、溶融混練温度は150~250℃程度が好ましい。
【0039】
溶融混練物は必要に応じて、公知の方法により、粉状、顆粒状、ペレット状、フレーク状とすることができる。
【0040】
(洗浄方法)
本実施形態に係る成形機用洗浄剤を用いた成形機の洗浄方法は、当該洗浄剤を樹脂成形機のシリンダ内に投入し、洗浄剤を加熱して可塑化(溶融)保持し、その後、樹脂成形機のシリンダ内から可塑化した洗浄剤を排出する方法である。
【0041】
適用可能な樹脂成形機としては、例えば、射出成形機及び押出成形機等が挙げられるが、樹脂を加熱溶融させて混練(混合)するシリンダを有するものであれば、これらに特に限定されるものではない。すなわち、本発明の洗浄剤は、公知の樹脂成形機に広く適用可能である。
洗浄剤を加熱する際の樹脂成形機のシリンダ温度は、先行樹脂を処理した際の温度にもよるが、180℃以上とすることが好ましく、200℃以上とすることがより好ましく、240℃以上がさらに好ましい。なお、加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常、400℃程度である。
【0042】
本発明の成形機用洗浄剤は、押出成形機及び射出成形機における所定の作業終了時に、当該樹脂そのものや染顔料等の成形材料中に含まれており成形機内に残留する残留樹脂材料を少量で効率よく洗浄し排出させることができる。そのため、熱可塑性樹脂用成形機内を洗浄するための洗浄剤として好適に使用することで可能で、当該成形機が押出成形機又は射出成型機であることが好ましく、射出成型機用であることがより好ましい。すなわち、本発明の成形機用洗浄剤は、押出成形機用又は射出成型機用洗浄剤であることが好ましく、特に、射出成型機用洗浄剤であることがより好ましい。
【0043】
先行樹脂としては、PA(ポリアミド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル(アクリル))、PLA(ポリ乳酸)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、AS(アクリロニトリルスチレン共重合樹脂)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(ポリフッ化ビニリデン))、TPU(ポリウレタン)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)といった高極性樹脂、及び当該樹脂を主成分(50質量%以上、好ましくは70質量%以上)含む樹脂組成物に対して良好に適用できる。また、汎用樹脂に対しても良好に適用できる。
なお、高極性樹脂とは、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、スルホン基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシル基、及びアミド基等の極性基を有する樹脂をいう。
【実施例0044】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
<成形機用洗浄剤の作製>
下記表1,表2に示す配合(単位は質量部)にて、熱可塑性樹脂A~F、ノニオン系界面活性剤A,B、無機フィラー、及び金属石鹸をタンブラーで混合後、二軸混練押出機(JSW TEX30α、(株)日本製鋼所製)を用いて、200℃で溶融混練してペレット状(直径:3mm、高さ:3mm)に成形し、成形機用洗浄剤を作製した。
【0046】
なお、使用した熱可塑性樹脂A~F、ノニオン系界面活性剤A,B、無機フィラー、及び金属石鹸は下記のとおりである。
・熱可塑性樹脂A
MFRが0.1g/10minである超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量100万以上)のペレット
・熱可塑性樹脂B
MFRが0.1g/10minである超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量100万以上)と高密度ポリエチレン(MFR13g/10min)とからなる、MFRが1.5g/10minである超高分子量ポリエチレンのペレット
・熱可塑性樹脂C
MFRが0.1g/10minである超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量100万以上)と高密度ポリエチレン(MFR13g/10min)とからなる、MFRが5.0g/10minである超高分子量ポリエチレンのペレット
・熱可塑性樹脂D
MFRが0.1g/10minである超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量100万以上)と高密度ポリエチレン(MFR13g/10min)と流動パラフィンとからなる、MFRが12.0g/10minである超高分子量ポリエチレンのペレット
・熱可塑性樹脂E
MFRが0.1g/10minである超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量100万以上)と高密度ポリエチレン(MFR0.02g/10min)とからなる、MFRが0.03g/10minである超高分子量ポリエチレンのペレット
・熱可塑性樹脂F
MFRが0.1g/10minである超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量100万以上)と高密度ポリエチレン(MFR13g/10min)と流動パラフィンとからなる、MFRが18.0g/10minである超高分子量ポリエチレンのペレット
・ノニオン系界面活性剤A
ポリグリセリン脂肪酸エステル(SYグリスターTS-3S、阪本薬品工業(株)製、熱分解温度290℃、ポリグリセリン重合度(式(1)のn):4(テトラグリセリン))
・ノニオン系界面活性剤B
ポリエチレングリコールモノステアレート(ポリオキシエチレンモノステアレート)エチレンオキサイド重合度10、脂肪酸の炭素数16-18、熱分解温度230℃)
・無機フィラー
タルク粉末(林化成(株)製、体積平均粒径25μm)
【0047】
熱可塑性樹脂A~F(熱可塑性樹脂成分)は、(株)安田精機製作所製のMELT FLOW INDEX TESTER(型式SAS2000)によりMFR(190℃、荷重2.16kg)を測定した。
【0048】
<評価方法>
(1)樹脂成形
ホモポリプロピレンである三井ポリプロJ105W(三井ポリプロ社製)100重量部にBlack顔料含有マスターバッチである商品名ROYAL BLACK 9031P(越谷化成工業(株)製)を2.5質量部加えた混合物を、240℃に昇温した型締圧55トンの射出成型機((株)日本製鋼所製)に500g投入し、金型にノズルタッチせずシリンダから全て排出させた。
【0049】
(2)洗浄評価
上記成形後、射出成型機の温度を240℃に保ち、射出成型機から残存する成形用樹脂を、スクリューを回転させて排出した後に、所定量の成形機用洗浄剤をホッパーから投入し、スクリューを回転させて当該洗浄剤を排出させる洗浄処理を行った。排出させた樹脂の色から黒色が消えて成形機用洗浄剤単体の色となるまで上記洗浄処理を行って、洗浄が完了するまでに必要とした洗浄剤の使用量とから、洗浄に要した洗浄剤の量を求めた。下記の判定基準に従って、洗浄の評価を行った。結果を表1,2に示す。
【0050】
-判定基準-
A:洗浄剤の量が300g未満
B:洗浄剤の量が300g超400g以下
C:洗浄剤の量が400g超500g以下
D:洗浄剤の量が500g超550g以下
E:洗浄剤の量が550g超
評価は、A,B,Cであれば、洗浄剤の使用量が少なく実用的(合格)といえる。
【0051】
【0052】