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特開2023-90203スプリングガイド及びスプリングガイドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090203
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】スプリングガイド及びスプリングガイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20230622BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20230622BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230622BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F16F9/32 B
F16F1/12 N
B29C45/26
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205041
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健太
【テーマコード(参考)】
3J059
3J069
4F202
【Fターム(参考)】
3J059BA01
3J059BB01
3J059BC04
3J059BD01
3J059CA01
3J059EA03
3J059GA03
3J069AA50
3J069CC02
3J069DD39
4F202AB25
4F202AG28
4F202AH17
4F202AM36
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK06
4F202CK42
4F202CK52
(57)【要約】
【課題】スプリングガイドの強度を向上させる。
【解決手段】繊維強化樹脂で形成されるスプリングガイド100は、車体を弾性支持するコイルスプリング4を支持する円板状のベース部110と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通する円筒部112と、を備え、円筒部112では、繊維強化樹脂が周方向に配向する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂で形成されるスプリングガイドであって、
車体を弾性支持するコイルスプリングを支持する円板状のベース部と、
ショックアブソーバのシリンダが挿通する円筒部と、を備え、
前記円筒部では、前記繊維強化樹脂が周方向に配向することを特徴とするスプリングガイド。
【請求項2】
請求項1に記載のスプリングガイドであって、
前記円筒部の内周に形成された第一ウェルド部から前記スプリングガイドの外周に向けて突出して形成される第一リブをさらに備えることを特徴とするスプリングガイド。
【請求項3】
請求項1に記載のスプリングガイドであって、
前記ベース部の表面から突出して形成され外周面が前記コイルスプリングの内周に対向して前記コイルスプリングの位置を規定するガイド部をさらに備え、
前記ガイド部は、前記円筒部の内周に形成された第一ウェルド部と連続して形成されることを特徴とするスプリングガイド。
【請求項4】
請求項1に記載のスプリングガイドであって、
前記ベース部に形成され、前記ベース部に溜まった液体を排出するための水抜き孔と、
前記水抜き孔の内周に形成された第二ウェルド部から前記スプリングガイドの外周に向けて突出して形成される第二リブと、をさらに備えることを特徴とするスプリングガイド。
【請求項5】
車体を弾性支持するコイルスプリングを支持する円板状のベース部と、ショックアブソーバのシリンダが挿通する円筒部と、を備え、繊維強化樹脂で形成されるスプリングガイドの製造方法であって、
前記円筒部の周方向に流れるように射出成型用の型に前記繊維強化樹脂を注入する成形工程を有することを特徴とするスプリングガイドの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のスプリングガイドの製造方法であって、
前記スプリングガイドは、前記円筒部が形成される際に前記繊維強化樹脂が合流して形成される第一ウェルド部から前記スプリングガイドの外周に向けて突出して形成される第一リブをさらに備え、
前記成形工程では、前記型に一つのみ設けられる前記ゲートから前記繊維強化樹脂を導いて前記第一リブを成形することを特徴とするスプリングガイドの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のスプリングガイドの製造方法であって、
前記成形工程では、前記第一リブと、前記ゲートと、前記円筒部の中心軸と、が直線上に位置するように前記第一リブを成形することを特徴とするスプリングガイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングガイド及びスプリングガイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、減衰機構を内蔵するシリンダに取り付けられると共に、車体と車輪との間に配置されたスプリングの車輪側の端部を支持する樹脂スプリングシートが開示されている。特許文献1に記載の樹脂スプリングシートには、シリンダが挿通される円筒状部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-105492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような樹脂スプリングシートでは、シリンダが円筒状部に挿通される際には、円筒状部に径方向の荷重が作用する。樹脂製のスプリングシートは強度が低く脆いため、樹脂スプリングシートの円筒状部にシリンダを挿通する際に円筒部が破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、スプリングガイドの強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、繊維強化樹脂で形成されるスプリングガイドであって、車体を弾性支持するコイルスプリングを支持する円板状のベース部と、ショックアブソーバのシリンダが挿通する円筒部と、を備え、円筒部では、繊維強化樹脂が周方向に配向することを特徴とする。
【0007】
この発明では、円筒部において、繊維強化樹脂の強化繊維が周方向に配向する。そのため、シリンダが円筒部に挿通される際に、円筒部に作用する荷重の向きと、強化繊維の配向の向きとが直交する。よって、円筒部の強度を向上させることができる。
【0008】
本発明は、スプリングガイドは、円筒部の内周に形成された第一ウェルド部からスプリングガイドの外周に向けて突出して形成される第一リブをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
この発明では、第一リブは、第一ウェルド部からスプリングガイドの外周に向けて突出して形成される。つまり、第一リブは、円筒部が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて形成される。よって、射出成形時に円筒部に形成されるウェルドを小さくすることができるため、円筒部の強度を向上させることができる。
【0010】
本発明は、スプリングガイドは、ベース部の表面から突出して形成され外周面がコイルスプリングの内周に対向してコイルスプリングの位置を規定するガイド部をさらに備え、ガイド部は、円筒部の内周に形成された第一ウェルド部と連続して形成されることを特徴とする。
【0011】
この発明では、コイルスプリングの位置を規定するガイド部は、第一ウェルド部と連続して形成される。第一ウェルド部は、円筒部において強度が低くなりやすいものの、第一ウェルド部がガイド部により補強されることにより、円筒部の強度を向上させることができる。
【0012】
本発明は、ベース部に形成され、ベース部に溜まった液体を排出するための水抜き孔と、水抜き孔の内周に形成された第二ウェルド部からスプリングガイドの外周に向けて突出して形成される第二リブと、をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
この発明では、第二リブは、第二ウェルド部からスプリングガイドの外周に向けて突出して形成される。つまり、第二リブは、水抜き孔が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて形成される。よって、ベース部が水抜き孔を有するスプリングガイドであっても、射出成形時にベース部に形成されるウェルドを小さくすることができるため、ベース部の強度を向上させることができる。
【0014】
本発明は、車体を弾性支持するコイルスプリングを支持する円板状のベース部と、ショックアブソーバのシリンダが挿通する円筒部と、を備え、繊維強化樹脂で形成されるスプリングガイドの製造方法であって、円筒部の周方向に流れるように射出成型用の型に繊維強化樹脂を注入する成形工程を有することを特徴とする。
【0015】
この発明では、円筒部において、繊維強化樹脂の強化繊維が周方向に配向する。そのため、シリンダが円筒部に挿通される際に、円筒部に作用する荷重の向きと、強化繊維の配向の向きとが直交する。よって、円筒部の強度を向上させることができる。
【0016】
本発明は、スプリングガイドの製造方法であって、スプリングガイドは、円筒部が形成される際に繊維強化樹脂が合流して形成される第一ウェルド部からスプリングガイドの外周に向けて突出して形成される第一リブをさらに備え、成形工程では、型に一つのみ設けられるゲートから繊維強化樹脂を導いて第一リブを成形することを特徴とする。
【0017】
本発明は、成形工程では、第一リブと、ゲートと、円筒部の中心軸と、が直線上に位置するように第一リブを成形することを特徴とする。
【0018】
これらの発明では、第一リブは、第一ウェルド部からスプリングガイドの外周に向けて突出して形成される。つまり、第一リブは、円筒部が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて成形される。よって、射出成形時に円筒部に形成されるウェルドを小さくすることができるため、円筒部の強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スプリングガイドの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンション装置の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るスプリングガイドの斜視図である。
図3A図2におけるI-I線に沿った側面断面図である。
図3B図2におけるII-II線に沿った側面断面図である。
図4A】金型の断面模式図であり、図3Aに対応して示す。
図4B】金型の断面模式図であり、図3Bに対応して示す。
図5A】繊維強化樹脂を注入した金型の断面模式図であり、図4Aに対応して示す。
図5B】繊維強化樹脂を注入した金型の断面模式図であり、図4Bに対応して示す。
図6】成形工程における繊維強化樹脂の流れを示す平面模式図である。
図7】本発明の実施形態の変形例におけるサブマリンゲートの位置を示す平面模式図であり、図6に対応して示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るスプリングガイド100について説明する。スプリングガイド100は、サスペンション装置10に設けられるものである。サスペンション装置10は、自動車(図示せず)に取り付けられ、減衰力を発生させて車両走行中に路面から受ける衝撃や振動を吸収して車体を安定的に懸架する装置である。
【0022】
図1は、サスペンション装置10の部分断面図である。図1に示すように、サスペンション装置10は、車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバ1と、ショックアブソーバ1のピストンロッド(以下、ロッドと記す)1aの先端に取り付けられるアッパーマウント2と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bの外周に取り付けられるスプリングガイド100と、スプリングガイド100とアッパーマウント2との間に設けられ、車体を弾性支持するコイルスプリング4と、ロッド1aに嵌装されショックアブソーバ1の縮み側のストロークを規制するバンプクッション5と、シリンダ1bにおけるロッド1a側の端部に嵌装されるバンプストッパ6と、ロッド1aを保護する筒状のダストブーツ7と、を備える。
【0023】
ショックアブソーバ1は、シリンダ1bと、シリンダ1bの開口部から突出する円柱状のロッド1aと、を有する。ロッド1aの下端部には、シリンダ1b内を伸側室と圧側室とに区画するピストン(不図示)が連結されている。
【0024】
シリンダ1bにおけるロッド1a側とは反対側の端部には、車輪を保持するナックル(不図示)とショックアブソーバ1とを連結するためのナックルブラケット1cが設けられる。説明の便宜上、アッパーマウント2側をサスペンション装置10の上側、ナックルブラケット1c側をサスペンション装置10の下側として上下方向を規定する。なお、サスペンション装置10の上下方向は、サスペンション装置10の軸方向(中心軸方向)であり、ショックアブソーバ1の伸縮方向である。また、サスペンション装置10の径方向(ショックアブソーバ1の径方向)は、サスペンション装置10の軸方向に直交する方向である。以降では、サスペンション装置10の軸方向(具体的には、シリンダ1bの軸方向)を単に「軸方向」とも称し、サスペンション装置10の径方向(具体的には、シリンダ1bの径方向)を単に「径方向」とも称する。また、サスペンション装置10の軸方向上側を単に「上方」とも称し、サスペンション装置10の軸方向下側を単に「下方」とも称する。
【0025】
ショックアブソーバ1は、アッパーマウント2を介して車体に連結されるとともに、ナックルブラケット1cによりナックルに連結されて車両に組み付けられる。このように構成されたショックアブソーバ1は、ロッド1aがシリンダ1bに対して軸方向に移動したときに、減衰力が発生するように構成されている。サスペンション装置10は、このショックアブソーバ1の減衰力によって車体の振動を素早く減衰させる。
【0026】
コイルスプリング4は、スプリングガイド100とアッパーマウント2との間に設けられる。コイルスプリング4は、スプリングガイド100とアッパーマウント2とによって圧縮された状態で挟持され、ショックアブソーバ1を伸長方向に付勢する。アッパーマウント2とコイルスプリング4の上端部との間にはラバーシート8が設けられる。これにより、アッパーマウント2とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。
【0027】
図2は、スプリングガイド100の斜視図である。また、図3A図2におけるI-I線に沿った側面断面図であり、後述する第一リブ130、水抜き孔114、及び第二リブ140を含む断面図である。図3B図2におけるII-II線に沿った側面断面図であり、後述する第一リブ130、水抜き孔114、及び第二リブ140を含まない断面図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、スプリングガイド100は、シリンダ1bの外周に取り付けられ、コイルスプリング4を下方から支持する部材である。スプリングガイド100は、繊維強化樹脂で形成される。繊維強化樹脂とは、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を樹脂に配合させたものである。図1図3Bに示すように、スプリングガイド100は、コイルスプリング4を支持する円板状のベース部110と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通する円筒部112と、円筒部112の外周面から突出して形成される第一リブ130と、ベース部110の表面から突出して形成され外周面がコイルスプリング4の内周に対向してコイルスプリング4の位置を規定するガイド部としてのハブ113と、を備える。
【0029】
ベース部110は、円筒部112にショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通された状態において、軸方向に垂直な平面に対して傾斜して形成される。図1においては、ベース部110が、車輪側が上方に位置し、車体側が下方に位置するようにサスペンション装置10に設けられた状態を示す。ベース部110には、ベース部110におけるハブ113の周囲に設定される領域110cにコイルスプリング4の下端部が支持される。ベース部110は、ベース部110の径方向外側の端部から斜め上方に向かって延びる側壁111を有する。側壁111は、円環状であり、ベース部110から上方に向かうにつれて内径が大きくなるように傾斜する。
【0030】
ベース部110の表面には、弾性部103Aが設けられる。これにより、スプリングガイド100のベース部110とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。言い換えれば、コイルスプリング4は、弾性部103Aを介してベース部110に支持される。弾性部103Aは、ベース部110の繊維強化樹脂よりも弾性率が低い材料からなり、例えば、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、シリコーンエラストマー等の熱可塑性エラストマーが採用される。なお、弾性部103Aの材料は、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマーや、他の樹脂材料を採用してもよい。また、ベース部110の表面に弾性部103Aが設けられなくてもよい。
【0031】
円筒部112は、ベース部110に形成され、ベース部110から上方及び下方に突出する。円筒部112は、ベース部110を軸方向に貫通しショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通される挿通孔120を有する。図1に示すように、円筒部112は、ベース部110の中心から偏心した位置(本実施形態においては、車体側に偏心した位置)に形成される。
【0032】
図2に示すように、円筒部112には、その内周面121から径方向内側に向かって突出する凸部122が設けられる。凸部122は、ショックアブソーバ1のシリンダ1bの外周面を支持する。凸部122は、円筒部112の周方向に沿って等間隔で複数配置されるとともに、円筒部112の軸方向に沿って直線状に設けられる。凸部122は、例えば、その断面形状が丸みを帯びた台形状あるいは半円形状となるように形成され、シリンダ1bの外周面に線接触する。このため、スプリングガイド100は、円筒部112の中心軸がシリンダ1bの中心軸に一致するように位置決めされる。なお、シリンダ1bと円筒部112のはめあい、具体的にはシリンダ1bと円筒部112に形成される凸部122とのはめあいは、「すきまばめ」であってもよいし、「しまりばめ」であってもよい。「しまりばめ」を採用する場合、円筒部112とシリンダ1bとの間のガタがなくなり、ガタによる異音の発生を防止することができる。また、サスペンション装置10の動作の応答性を向上することもできる。
【0033】
図1に示すように、シリンダ1bの外周面には、スプリングガイド100を支持する金属製の支持リング3が溶接により固定されている。スプリングガイド100は、スプリングガイド100の円筒部112の下端部が支持リング3によって支持されることにより、シリンダ1bの外周に取り付けられる。つまり、スプリングガイド100は、上方からシリンダ1bに嵌め込まれ、支持リング3に当接することで、シリンダ1bに取り付けられる。なお、支持リング3は、シリンダ1bの外周面に溶接以外の方法により固定させてもよく、例えば支持リング3にシリンダ1bを圧入させて支持リング3をシリンダ1bの外周面に固定させてもよい。
【0034】
図2図3Bに示すように、第一リブ130は、矩形状であり、ハブ113の裏面から下方に突出する。第一リブ130は、円筒部112の外周面から放射状に延びるとともに円筒部112の周方向に離れて複数形成される。第一リブ130の延長線は、円筒部112の中心軸と交差する。第一リブ130により、ハブ113の強度が向上するとともに、後述するように円筒部112の強度が向上する。
【0035】
ハブ113は、円筒部112の周方向における一部と連続し、コイルスプリング4の内側において、ベース部110から上方に突出する。具体的には、ハブ113は、円筒部112におけるベース部110の中心側と連続し、ベース部110と円筒部112の間にわたって三日月状に形成される。なお、ハブ113は、円筒部112の周方向における全体と連続して形成されてもよい。ハブ113は、下方に開口部を有し、内部には空洞113aが形成される。ハブ113の空洞113a内には、ハブ113の裏面から第一リブ130が突出して形成される。ハブ113の外周は、コイルスプリング4の下端部の内周に当接し、コイルスプリング4の径方向の位置を規定する。ハブ113によってコイルスプリング4の下端部が支持されるので、コイルスプリング4の傾き(倒れ)が防止される。
【0036】
図1図2、及び図3Aに示すように、スプリングガイド100は、ベース部110に形成されベース部110に溜まった液体を排出するための水抜き孔114と、水抜き孔114と連続してベース部110に形成される第二リブ140と、をさらに備える。
【0037】
水抜き孔114は、本実施形態ではベース部110における車体側に形成される。これにより、ベース部110における下方側に水抜き孔114が形成されるため、ベース部110に溜まった液体が水抜き孔114から効率よく排出される。第二リブ140は、矩形状であり、ベース部110の裏面から突出して形成される。第二リブ140は、水抜き孔114の放射方向に延びて形成される。さらに、第二リブ140は、円筒部112の中心軸との間に水抜き孔114の中心軸が位置するように形成される。第二リブ140により、後述するようにベース部110の強度が向上する。なお、第二リブ140は、ベース部110の表面から突出して形成されてもよい。
【0038】
次に、図4A図5Bを参照して、スプリングガイド100の製造方法について説明する。
【0039】
本実施形態では、スプリングガイド100は、ゲートとしてサブマリンゲート151cを用いた射出成形により一体成形される。図4A及び図4Bは、射出成形に用いられる射出成形用の型としての金型150を示す断面模式図であり、金型150がスプリングガイド100の成形のために位置決めされた状態を示す。図4A図3Aに示す断面図に対応し、図4B図3Bに示す断面図に対応する。
【0040】
金型150は、スプリングガイド100におけるベース部110の表面側を成形するための第一金型160と、スプリングガイド100におけるベース部110の裏面側を成形するための第二金型170と、第二金型170に挿入され円筒部112を成形するための第三金型180と、を有する。第二金型170には円柱状の孔177が形成される。第三金型180は円柱状であり、第二金型170の孔177に挿入される。図4A及び図4Bに示すように、金型150は、第一金型160が第二金型170及び第三金型180に対向するようにして位置決めされる。スプリングガイド100は、金型150がこのように位置決めされた状態で、サブマリンゲート151cから金型150内に繊維強化樹脂を注入することで成形される。
【0041】
第一金型160には、スプリングガイド100におけるベース部110の表面側を成形するための成形面161が形成される。成形面161は、スプリングガイド100におけるベース部110の表面側の形状に対応して形成される。第二金型170には、スプリングガイド100におけるベース部110の裏面側を成形するための成形面171が形成される。成形面171は、スプリングガイド100におけるベース部110の裏面側で、かつ、円筒部112から外側の領域を成形するために形成される。成形面171は、スプリングガイド100の裏面側の形状に対応して形成され、成形面171には、水抜き孔114に対応する円柱状の凸部171a(図4A参照)が形成される。第三金型180には、円筒部112を成形するための環状の成形面181が形成される。成形面181は、円筒部112の内周面121及び円筒部112の下端の形状に対応して形成される。
【0042】
図4A及び図4Bに示すように、金型150が位置決めされた状態では、第一金型160の成形面161、第二金型170の成形面171、及び第三金型180の成形面181との間で、スプリングガイド100を成形するための成形領域190が形成される。成形領域190は、以下の各領域を有する。第一金型160の成形面161と第二金型170の成形面171の間には、ベース部110及び側壁111に対応するベース部成形領域192と、ハブ113に対応するハブ成形領域191と、が形成される。第二金型170の成形面171には、第一リブ130に対応する第一リブ成形領域193(図4A参照)と、第二リブ140に対応する第二リブ成形領域194(図4A参照)と、が形成される。第三金型180の成形面181と、第一金型160の成形面161と、第二金型170の成形面171と、の間には、円筒部112に対応する円筒部成形領域195が形成される。
【0043】
また、金型150には、成形領域190に繊維強化樹脂を注入するための注入流路151が形成される。注入流路151は、第一金型160に形成され円筒部成形領域195の中心軸Oに沿って直線状に延びるスプルー151aと、第一金型160及び第三金型180に形成されスプルー151aの端部から90度屈曲して径方向外方に直線状に延びるランナー151bと、第三金型180に形成されランナー151bと円筒部成形領域195を連通するサブマリンゲート151cと、を有する。本実施形態においては、サブマリンゲート151cは一つのみである。サブマリンゲート151cは、金型150が位置決めされた状態で、複数の第一リブ成形領域193のうちの一つとの間に円筒部成形領域195の中心軸Oが位置するように形成される。さらに、サブマリンゲート151cは、第二リブ成形領域194との間に第二金型170の成形面171の凸部171aの中心軸が位置するように形成される。
【0044】
スプリングガイド100の製造方法は、金型位置決め工程と、成形工程と、金型分離工程と、を含む。図4A及び図4Bに示すように、金型位置決め工程では、第一金型160、第二金型170、及び第三金型180を位置決めして、繊維強化樹脂を充填する成形領域190を形成する。金型位置決め工程が完了したら、成形工程を行う。
【0045】
図6は、成形工程における成形領域190内の繊維強化樹脂の流れを示す平面模式図である。なお、図6においては、第一リブ成形領域193は、サブマリンゲート151cとの間に円筒部成形領域195の中心軸Oが位置するように形成されるものを一つのみ代表して図示している。また、以下の成形工程の説明においても、第一リブ成形領域193については、サブマリンゲート151cとの間に円筒部成形領域195の中心軸Oが位置するように形成されるものを代表して説明する。
【0046】
図5A図6に示すように、成形工程では、溶融した繊維強化樹脂をスプルー151a、ランナー151b、サブマリンゲート151cを通じて金型150の成形領域190内に注入し、成形領域190内に繊維強化樹脂を充填する。サブマリンゲート151cは円筒部成形領域195と連通するため、成形工程においては、サブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に円筒部112の周方向に繊維強化樹脂を注入することとなる。
【0047】
成形工程においてサブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に注入した繊維強化樹脂の流れについて詳しく説明する。サブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に注入した繊維強化樹脂は、図6に矢印Aで示すように、円筒部成形領域195内を周方向の二方向に分かれて流れる。円筒部成形領域195内を二方向に分かれて流れる繊維強化樹脂は、円筒部成形領域195内の第一合流位置196で合流する。具体的には、第一合流位置196は、円筒部成形領域195内においてサブマリンゲート151cとの間に円筒部成形領域195の中心軸Oが位置する場所である。第一合流位置196では、円筒部112が形成される際に二方向に流れる繊維強化樹脂の流れが合流して境界面である第一ウェルド部145(図6参照)が形成される。第一ウェルド部145は、円筒部112の内周に形成される。このように、円筒部成形領域195内を周方向の二方向に分かれて流れる繊維強化樹脂により円筒部112が成形される。よって、円筒部112では、繊維強化樹脂が周方向に配向する。
【0048】
第一リブ成形領域193は、サブマリンゲート151cとの間に円筒部成形領域195の中心軸Oが位置するように形成される。つまり、第一リブ成形領域193は、第一合流位置196と連通する。よって、第一リブ成形領域193内には、図6に矢印Bで示すように、第一合流位置196において合流した二つの流れの繊維強化樹脂がそれぞれ流れ込む。第一リブ成形領域193内に流れ込んだ繊維強化樹脂は、第一リブ成形領域193内を充填する。このようにして、二つの流れの繊維強化樹脂により第一リブ130が成形される。言い換えれば、成形工程では、第一リブ130と、型に一つのみ設けられるサブマリンゲート151cと、円筒部112の中心軸Oと、が直線上に位置するように第一リブ130を成形する。第一リブ130は、第一ウェルド部145からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される。
【0049】
また、円筒部成形領域195は、ハブ成形領域191とも連通する。よって、円筒部成形領域195内の繊維強化樹脂は、図6に矢印Cで示すようにハブ成形領域191内にも流れ込む。ハブ成形領域191内に流れ込んだ繊維強化樹脂は、主にハブ成形領域191の周方向に沿うようにハブ成形領域191内を流れ、ハブ成形領域191内を充填する。また、繊維強化樹脂は、円筒部成形領域195内の第一合流位置196からもハブ成形領域191内に流れ込む。具体的には、繊維強化樹脂は、第一合流位置196の上端からハブ成形領域191内に流れ込み、ハブ成形領域191内を充填する。さらに、繊維強化樹脂は、第一リブ成形領域193内からもハブ成形領域191内に流れ込み、ハブ成形領域191内を充填する。このようにして、ハブ113が成形される。ハブ113は、第一ウェルド部145と連続して形成される。
【0050】
また、円筒部成形領域195は、ベース部成形領域192とも連通する。よって、円筒部成形領域195内の繊維強化樹脂は、ベース部成形領域192内に流れ込む。さらに、ベース部成形領域192は、ハブ成形領域191とも連通する。よって、ハブ成形領域191内の繊維強化樹脂も、ベース部成形領域192内に流れ込む。ベース部成形領域192内に流れ込んだ繊維強化樹脂は、図6に矢印Dで示すようにベース部成形領域192の周方向に沿って流れるものと、図6に矢印Eで示すように第二金型170の成形面171の凸部171aの周方向に沿って流れるものがある。
【0051】
ベース部成形領域192の周方向に沿って流れる繊維強化樹脂は、ベース部成形領域192内を充填する。凸部171aの周方向に沿って流れる繊維強化樹脂は、図6に矢印Eで示すように凸部171aの周りを周方向の二方向に分かれて流れ、ベース部成形領域192内を充填する。これにより、ベース部110及び側壁111が成形される。凸部171aの周りを周方向の二方向に分かれて流れる繊維強化樹脂は、ベース部成形領域192内の第二合流位置197で合流する。具体的には、第二合流位置197は、凸部171aの外周においてサブマリンゲート151cとの間に凸部171aの中心軸が位置する場所である。第二合流位置197では、水抜き孔114が形成される際に二方向に流れる繊維強化樹脂の流れが合流して境界面である第二ウェルド部146(図6参照)が形成される。第二ウェルド部146は、水抜き孔114の内周に形成される。
【0052】
ここで、第二リブ成形領域194は、サブマリンゲート151cとの間に凸部171aの中心軸が位置するように形成される。つまり、第二リブ成形領域194は、第二合流位置197から延びて形成される。よって、図6に矢印Eで示す二つの流れの繊維強化樹脂は、合流して第二リブ成形領域194内にそれぞれ流れ込み、第二リブ成形領域194内を充填する。このようにして、二つの流れの繊維強化樹脂により第二リブ140が成形される。第二リブ140は、第二ウェルド部146からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される。
【0053】
以上のようにして、成形領域190内に繊維強化樹脂が充填される。なお、上記した繊維強化樹脂の流れの方向については、全ての繊維強化樹脂が各領域内を上記の方向に流れるということではない。また、「周方向」についても、繊維強化樹脂の流れの厳密な方向を示すものではなく、局所的に繊維強化樹脂が周方向以外に流れてもよい。例えば、円筒部成形領域195内においては、サブマリンゲート151cの周囲や第一ウェルド部145では繊維強化樹脂が厳密には周方向に流れないが、円筒部成形領域195内全体として強化樹脂が周方向に流れる。成形領域190内への繊維強化樹脂の充填が完了したら、金型150の熱を除去し、繊維強化樹脂を冷却し硬化させる。これにより、成形工程が完了する。成形工程が完了したら、金型分離工程を行う。
【0054】
金型分離工程では、第一金型160を第二金型170及び第三金型180から分離させるように、第一金型160、または、第二金型170及び第三金型180を移動させる。これにより、ランナー151bよりも断面積が小さいサブマリンゲート151cが切断される。サブマリンゲート151cが切断されることにより、サブマリンゲート151cの残部であるゲートカット跡が円筒部112の内周面121に形成される。なお、金型150の分離によりサブマリンゲート151cを切断するのではなく、ニッパー等の工具によりサブマリンゲート151cを切断してもよい。この場合も、ゲートカット跡が円筒部112の内周面121に形成される。そして、第三金型180を第二金型170の孔177から取り外し、インジェクタピン(図示省略)により、スプリングガイド100を金型150から分離する。これにより、金型分離工程が完了し、スプリングガイド100が完成する。
【0055】
ここで、完成したスプリングガイド100において、ショックアブソーバ1のシリンダ1bが円筒部112に挿通される際には、円筒部112に径方向の荷重が作用する。本実施形態におけるスプリングガイド100では、円筒部112において、繊維強化樹脂の強化繊維が周方向に配向する。具体的には、本実施形態におけるスプリングガイド100の製造方法では、成形工程においては、サブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に円筒部112の周方向に繊維強化樹脂が注入される。そのため、シリンダ1bが円筒部112に挿通される際に円筒部112に作用する荷重の向きと、強化繊維の配向の向きが直交する。よって、シリンダ1bが円筒部112に挿通される際に円筒部112に作用する荷重を、繊維強化樹脂に含まれる樹脂と強化繊維の両方により受けることができる。したがって、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0056】
また、一般に、射出成形においては、金型内の材料の複数の流れが合流して境界面であるウェルドが形成されると、ウェルドが形成された部分では他の部分よりも強度が低くなる。本実施形態では、成形工程において、第一合流位置196及び第二合流位置197にそれぞれ第一ウェルド部145及び第二ウェルド部146が形成される。
【0057】
ここで、成形工程においては、第一リブ130は、第一合流位置196から繊維強化樹脂が導かれて成形される。言い換えれば、第一リブ130は、第一ウェルド部145からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される。つまり、第一リブ130は、円筒部112が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて形成される。これにより、第一合流位置196においてウェルドが形成された繊維強化樹脂の部分は、円筒部成形領域195内に留まることなく、第一リブ成形領域193内に流れ込む。第一リブ成形領域193内に流れ込んだ繊維強化樹脂は、第一リブ成形領域193の角部193a(より正確には、ハブ成形領域191における角部193aと隣接する箇所)に向かう。つまり、第一合流位置196においてウェルドが形成された繊維強化樹脂の部分は、角部193aに誘導される。よって、射出成形時に円筒部112に形成されるウェルド(第一ウェルド部145)を小さくすることができる。よって、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、ウェルドが形成された繊維強化樹脂の部分は第一リブ成形領域193内の角部193aに誘導されるため、円筒部112に形成される第一ウェルド部145は小さくなる。しかしながら、第一ウェルド部145は、円筒部112において強度が低くなりやすい。しかしながら、成形工程においては、ハブ113は、円筒部成形領域195内の第一合流位置196から繊維強化樹脂が導かれて成形される。つまり、ハブ113は、第一ウェルド部145と連続して成形される。よって、円筒部112がハブ113により補強されることにより、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0059】
また、第二リブ成形領域194は、サブマリンゲート151cとの間に第二金型170の成形面171の凸部171aの中心軸が位置するように形成される。成形工程においては、凸部171aの周方向の二方向に分かれて流れる強化繊維樹脂は、第二合流位置197で合流し、第二リブ成形領域194内にそれぞれ流れ込んで第二リブ成形領域194内を充填する。つまり、第二リブ140がサブマリンゲート151cとの間に水抜き孔114の中心軸が位置するように成形される。言い換えれば、第二リブ140は、第二ウェルド部146からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される。つまり、第二リブ140は、水抜き孔114が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて形成される。これにより、ベース部110が水抜き孔114を有するスプリングガイド100であっても、射出成形時にベース部110に形成されるウェルド(第二ウェルド部146)を小さくすることができる。よって、ベース部110の強度を向上させることができる。
【0060】
また、第一リブ130及び第二リブ140は、ベース部110から軸方向に突出するため、軸方向の力に対してベース部110を補強する効果を有する。よって、成形工程において上記のように第一リブ130及び第二リブ140が成形されることで、円筒部112及びベース部110の強度を向上させることができる。
【0061】
また、成形工程においては、サブマリンゲート151cの残部であるゲートカット跡が形成される。本実施形態のゲートカット跡は、ディスクゲート等の他のゲートを用いた場合と比較して断面積が小さいため、ゲートカット跡から水等が繊維強化樹脂へ吸収されることが抑制される。よって、スプリングガイド100の劣化が抑制される。
【0062】
なお、スプリングガイド100は第一リブ130及びハブ113の一方のみを有してもよく、第一リブ130及びハブ113の両方を有さなくてもよい。つまり、成形工程においては、第一リブ130及びハブ113を成形することは必須ではなく、サブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に円筒部112の周方向に繊維強化樹脂を注入すればよい。しかしながら、この場合では円筒部112に形成される第一ウェルド部145が大きくなりやすいため、成形工程においては、少なくとも第一リブ130を成形することが好ましい。第一リブ130を成形することで、第一合流位置196においてウェルドが形成された繊維強化樹脂の部分は、第一リブ成形領域193の角部193aに誘導される。よって、射出成形時に円筒部112に形成される第一ウェルド部145を小さくすることができる。また、第一リブ130を成形する際は、コイルスプリング4の位置を規定するためのハブ113を利用し、ハブ113の裏面から突出するように成形することで、第一リブ130を容易に成形することができる。
【0063】
また、スプリングガイド100は水抜き孔114及び第二リブ140を有さなくてもよく、水抜き孔114及び第二リブ140の両方を有さなくてもよい。つまり、成形工程においては、水抜き孔114及び第二リブ140を成形することは必須ではない。しかしながら、スプリングガイド100に水抜き孔114を成形する場合は、ウェルドを第二リブ140に位置させるため、第二リブ140をともに成形することが好ましい。
【0064】
また、第一リブ130は、第一ウェルド部145の直線上に形成されなくてもよく、第一ウェルド部145の一部から突出して形成されてもよい。また、第二リブ140についても、第二ウェルド部146の直線上に形成されなくてもよく、第二ウェルド部146の一部から突出して形成されてもよい。
【0065】
また、スプリングガイド100は、サブマリンゲート151cを用いて射出成形する方法に限らず、トンネルゲートやピンゲート等を用いて射出成形してもよい。
【0066】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0067】
成形工程においては、サブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に円筒部112の周方向に繊維強化樹脂を注入するため、円筒部112において、繊維強化樹脂の強化繊維が周方向に配向する。よって、シリンダ1bが円筒部112に挿通される際に円筒部112に作用する荷重の向きと、強化繊維の配向の向きが直交するため、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0068】
成形工程においては、第一リブ130が、第一合流位置196から繊維強化樹脂が導かれて成形される。よって、射出成形時に円筒部112に形成される第一ウェルド部145を小さくすることができ、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0069】
成形工程においては、ハブ113が、第一合流位置196から繊維強化樹脂を導いて成形される。つまり、ハブ113は、円筒部112における射出成形時に強度が低くなりやすい箇所と連続して成形される。よって、ハブ113が成形されることにより、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0070】
成形工程においては、第二リブ140がサブマリンゲート151cとの間に水抜き孔114の中心軸が位置するように成形される。これにより、ベース部110が水抜き孔114を有するスプリングガイド100であっても、射出成形時に形成されるウェルドを第二リブ140内に位置させることができる。よって、ベース部110の強度を向上させることができる。
【0071】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0072】
<変形例1>
上記実施形態では、成形工程において、金型150に一つのみ設けられるサブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に繊維強化樹脂を注入する場合について説明した。成形工程での繊維強化樹脂の注入方法は、これに限られない。例えば、図7に示すように、金型150に複数設けられるサブマリンゲート151cから円筒部成形領域195内に繊維強化樹脂を注入してもよい。言い換えれば、成形工程では、円筒部成形領域195の少なくとも一箇所から円筒部112の周方向に繊維強化樹脂を注入すればよい。なお、図7においては、サブマリンゲート151cが120度間隔を空けて三つ設けられる場合を示す。この構成であっても、本実施形態と同様に、円筒部112において、繊維強化樹脂の強化繊維が周方向に配向するため、円筒部112の強度を向上させることができる。なお、複数のサブマリンゲート151cから繊維強化樹脂を注入する場合は、図7に矢印で示すように、隣り合うサブマリンゲート151cからの流れが合流する位置から第一リブ成形領域193に繊維強化樹脂を導いて第一リブ130を形成すればよい。具体的には、周方向に隣り合うサブマリンゲート151cとの中間に第一リブ成形領域193が位置するように、第三金型180に複数のサブマリンゲート151cを形成すればよい。
【0073】
また、サブマリンゲート151cがベース部成形領域192内に設けられ、サブマリンゲート151cからベース部成形領域192内に繊維強化樹脂を注入してもよい。この場合であっても、繊維強化樹脂は円筒部成形領域195内を周方向の二方向に分かれて流れ、円筒部112では、繊維強化樹脂が周方向に配向する。つまり、スプリングガイド100の製造方法においては、円筒部112の周方向に流れるように繊維強化樹脂を注入する成形工程を有すればよい。
【0074】
<変形例2>
上記実施形態では、第一リブ130及び第二リブ140は矩形状である。これに限らず、第一リブ130及び第二リブ140は、例えば、図3Aに示す断面において下方や水平方向に向かって突出する三角形状であってもよい。この構成であっても、本実施形態と同様に、射出成形時に形成されるウェルドを第一リブ130内及び第二リブ140内に位置させることができる。また、第一リブ130及び第二リブ140は、それぞれ対応する第一ウェルド部145及び第二ウェルド部146からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される構成であればよい。例えば、第一リブ130は円筒部112の放射方向と異なる方向に延びて形成されてもよく、第二リブ140は、水抜き孔114の放射方向と異なる方向に延びて形成されてもよい。
【0075】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
【0076】
繊維強化樹脂で形成されるスプリングガイド100は、車体を弾性支持するコイルスプリング4を支持する円板状のベース部110と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通する円筒部112と、を備え、円筒部112では、繊維強化樹脂が周方向に配向する。
【0077】
この構成では、円筒部112において、繊維強化樹脂の強化繊維が周方向に配向する。そのため、シリンダ1bが円筒部112に挿通される際に、円筒部112に作用する荷重の向きと、強化繊維の配向の向きとが直交する。よって、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0078】
スプリングガイド100は、円筒部112の内周に形成された第一ウェルド部145からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される第一リブ130をさらに備える。
【0079】
この構成では、第一リブ130は、第一ウェルド部145からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される。つまり、第一リブ130は、円筒部112が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて形成される。よって、射出成形時に円筒部112に形成される第一ウェルド部145を小さくすることができるため、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0080】
スプリングガイド100は、ベース部110の表面から突出して形成され外周面がコイルスプリング4の内周に対向してコイルスプリング4の位置を規定するガイド部としてのハブ113をさらに備え、ハブ113は、円筒部112の内周に形成された第一ウェルド部145と連続して形成される。
【0081】
この構成では、コイルスプリング4の位置を規定するハブ113は、第一ウェルド部145と連続して形成される。第一ウェルド部145は、円筒部112において強度が低くなりやすいものの、第一ウェルド部145がハブ113により補強されることにより、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0082】
スプリングガイド100は、ベース部110に形成され、ベース部110に溜まった液体を排出するための水抜き孔114と、水抜き孔114の内周に形成された第二ウェルド部146からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される第二リブ140と、をさらに備えることを特徴とする。
【0083】
この構成では、第二リブ140は、第二ウェルド部146からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される。つまり、第二リブ140は、水抜き孔114が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて形成される。よって、ベース部110が水抜き孔114を有するスプリングガイド100であっても、射出成形時にベース部110に形成される第二ウェルド部146を小さくすることができるため、ベース部110の強度を向上させることができる。
【0084】
車体を弾性支持するコイルスプリング4を支持する円板状のベース部110と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通する円筒部112と、を備え、繊維強化樹脂で形成されるスプリングガイド100の製造方法は、円筒部112の周方向に流れるように射出成型用の型としての金型150に繊維強化樹脂を注入する成形工程を有する。
【0085】
この構成では、円筒部112において、繊維強化樹脂の強化繊維が周方向に配向する。そのため、シリンダ1bが円筒部112に挿通される際に、円筒部112に作用する荷重の向きと、強化繊維の配向の向きと、が直交する。よって、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0086】
スプリングガイド100は、円筒部112の外周面から突出して形成される第一リブ130をさらに備え、成形工程では、円筒部成形領域195に設けられるゲートとしてのサブマリンゲート151cから繊維強化樹脂を注入し円筒部成形領域195において繊維強化樹脂の流れが合流する第一合流位置196から繊維強化樹脂を導いて第一リブ130を成形する。
【0087】
スプリングガイド100の製造方法であって、スプリングガイド100は、円筒部112が形成される際に繊維強化樹脂が合流して形成される第一ウェルド部145からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される第一リブ130をさらに備え、成形工程では、金型150に一つのみ設けられるゲートとしてのサブマリンゲート151cから繊維強化樹脂を導いて第一リブ130を成形する。
【0088】
スプリングガイド100の製造方法であって、成形工程では、第一リブ130と、サブマリンゲート151cと、円筒部112の中心軸Oと、が直線上に位置するように第一リブ130を成形する。
【0089】
これらの構成では、第一リブ130は、第一ウェルド部145からスプリングガイド100の外周に向けて突出して形成される。つまり、第一リブ130は、円筒部112が形成される際に流れが合流した繊維強化樹脂が導かれて成形される。よって、射出成形時に円筒部112に形成される第一ウェルド部145を小さくすることができるため、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0090】
スプリングガイド100は、ベース部110から表面に突出して形成され外周面がコイルスプリングの内周に接触してコイルスプリングの位置を規定するガイド部としてのハブ113をさらに備え、成形工程では、第一合流位置196から繊維強化樹脂を導いてハブ113を成形する。
【0091】
この構成では、コイルスプリングの位置を規定するハブ113が、円筒部成形領域195において繊維強化樹脂の流れが合流する第一合流位置196から繊維強化樹脂を導いて成形される。つまり、ハブ113は、円筒部112における射出成金型150時に強度が低くなりやすい箇所と連続して成形される。よって、ハブ113が成形されることにより、円筒部112の強度を向上させることができる。
【0092】
スプリングガイド100は、ベース部110に形成され、ベース部110に溜まった液体を排出するための水抜き孔114と、水抜き孔114と連続してベース部110に形成される第二リブ140と、をさらに備え、成形工程では、サブマリンゲート151cとの間に水抜き孔114の中心軸が位置するように第二リブ140を成形することを特徴とする。
【0093】
この構成では、ベース部110が水抜き孔114を有するスプリングガイド100であっても、第二リブ140がサブマリンゲート151cとの間に水抜き孔114の中心軸が位置するように成形されることで、射出成形時に形成されるウェルドを第二リブ140内に位置させることができる。よって、ベース部110の強度を向上させることができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0095】
1・・・ショックアブソーバ、1b・・・シリンダ、4・・・コイルスプリング、100・・・スプリングガイド、110・・・ベース部、112・・・円筒部、113・・・ハブ(ガイド部)、114・・・水抜き孔、130・・・第一リブ、140・・・第二リブ、145・・・第一ウェルド部、146・・・第二ウェルド部、150・・・金型(射出成形用の型)、151c・・・サブマリンゲート(ゲート)
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7