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特開2023-90207電子レンジ用容器の蓋及び電子レンジ用容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090207
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電子レンジ用容器の蓋及び電子レンジ用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205049
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000239138
【氏名又は名称】株式会社エフピコ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】西岡 愛充
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮太
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA04
3E013BB01
3E013BB08
3E013BC04
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF24
3E013BF39
(57)【要約】
【課題】切り込み弁の不用意な開きを抑制して、内容物の漏れ出しを抑制することができる、電子レンジ用容器の蓋、およびこれを用いた容器を提供する。
【解決手段】天面部20に蒸気を排出するための切り込み弁40が設けられた電子レンジ用容器の蓋2であって、天面部20に、下側に向けて凹んだ谷形凹部31が設けられ、該谷形凹部31に切り込み弁40が設けられ、谷形凹部31は、一対の端部を持つ谷底部と、該谷底部の一対の端部からそれぞれ徐々に上昇して天面部に繋がる一対の壁面部と、を有し、谷底部は、少なくとも一部に略平面状のフラット部を有し、切り込み弁40は、平面視において所定方向に向けて蒸気を排出するように湾曲し、且つ、谷底部のフラット部を横断している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面部に蒸気を排出するための切り込み弁が設けられた電子レンジ用容器の蓋であって、
天面部に、下側に向けて凹んだ谷形凹部が設けられ、該谷形凹部に切り込み弁が設けられ、
谷形凹部は、一対の端部を持つ谷底部と、該谷底部の一対の端部からそれぞれ徐々に上昇して天面部に繋がる一対の壁面部と、を有し、
谷底部は、少なくとも一部に略平面状のフラット部を有し、
切り込み弁は、平面視において所定方向に向けて蒸気を排出するように湾曲し、且つ、谷底部のフラット部を横断している、電子レンジ用容器の蓋。
【請求項2】
切り込み弁は、切り込み弁の両弁端部を結ぶ直線の中点と弁端部との間の距離よりも、切り込み弁のうち直線から最も離れた弁最遠部と中点との間の距離の方が短い、請求項1記載の電子レンジ用容器の蓋。
【請求項3】
谷底部は、フラット部の両側に、フラット部よりも幅が狭い幅狭部を有している、請求項1又は2記載の電子レンジ用容器の蓋。
【請求項4】
谷型凹部は、前記所定方向を長辺方向とする平面視長方形状である、請求項1乃至3の何れかに記載の電子レンジ用容器の蓋。
【請求項5】
容器本体と、請求項1乃至4の何れかに記載の蓋とを備えた、電子レンジ用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容された食品を閉蓋状態のままで電子レンジによって加熱することができる、電子レンジ対応の容器とその蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に収納した食品等の内容物を電子レンジで加熱した際に、内容物が加熱されると水蒸気が発生する。そのため、この水蒸気を容器外に排出させることが必要となる。水蒸気を容器外に排出させる方法として、容器に通気用の孔を穿孔したり、通気路を形成したりする方法があった。ここで、前記の発生した水蒸気を適度に排出できないと、容器内の圧力が高くなり容器本体から蓋が外れてしまうなどの問題を生じる虞がある。
【0003】
一方、電子レンジで加熱するまでは、また加熱終了時には、埃や虫等が侵入したり、また、店頭においていたずらによって異物を混入されたりすることを抑制するために隙間の無い容器が求められる。
【0004】
そこで、例えば下記特許文献1においては、蓋の天面部に平面視円形状の凹部を設け、この凹部の平坦な底面部に舌片状の切り込み弁を形成し、電子レンジで加熱した際に、切り込み弁から蒸気を排出させる機構が提案されている。
【0005】
しかしながら、下記特許文献1では凹部の平坦な底面部に切り込み弁が設けられているので、外力によって切り込み弁が開きやすい。そのため、誤って指などで切り込み弁を押し込んでしまったような場合には、切り込み弁が開いた状態となりやすい。また、打ち抜き加工により切り込み弁が形成されることがある。平坦な底面部に切り込み弁が設けられていると、打ち抜き刃の引き抜き側に切り込み弁が開きやすいという問題もある。
【0006】
このように、電子レンジ加熱前の状態において切り込み弁が開いていると、容器にスープ等の液体を収容した際に、液漏れが生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-50672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、切り込み弁の不用意な開きを抑制して、内容物の漏れ出しを抑制することができる、電子レンジ用容器の蓋、およびこれを用いた容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子レンジ用容器の蓋は、天面部に蒸気を排出するための切り込み弁が設けられた電子レンジ用容器の蓋であって、天面部に、下側に向けて凹んだ谷形凹部が設けられ、該谷形凹部に切り込み弁が設けられ、谷形凹部は、一対の端部を持つ谷底部と、該谷底部の一対の端部からそれぞれ徐々に上昇して天面部に繋がる一対の壁面部と、を有し、谷底部は、少なくとも一部に略平面状のフラット部を有し、切り込み弁は、平面視において所定方向に向けて蒸気を排出するように湾曲し、且つ、谷底部のフラット部を横断している。
【0010】
この構成によれば、蓋の天面部に谷底部と一対の壁面部を有する谷形凹部が設けられていて、その谷形凹部に切り込み弁が設けられている。切り込み弁は、所定方向に向けて蒸気を排出するように湾曲した形状であって、切り込み弁は谷底部を横断している。そのため、切り込み弁に外力が作用したとしても、切り込み弁が開きにくい。また、打ち抜き刃によって切り込み弁を形成する場合においても、打ち抜き刃の引き抜き側に切り込み弁が開きにくい。
【0011】
更に、谷形凹部の谷底部には略平面状のフラット部が設けられている。ここで、フラット部は、平坦面であってもよいし湾曲面であってもよい。湾曲面である場合、その断面視における接線の勾配が一対の壁面部の勾配よりも緩やかであってよい。そして、このフラット部を切り込み弁が横断している。そのため、切り込み弁の弁最遠部が尖鋭状となりにくい。従って、蓋の天面部を誤って押し込んだ場合において仮に切り込み弁が容器内部に向けて傾いた場合であっても、電子レンジ加熱の際、切り込み弁が引っ掛かりにくく、容器内部の圧力によってスムーズに切り込み弁が上側に向けて開く。そのため、蒸気がスムーズに排出される。そして、加熱後においては、蒸気排出時に上側に開いていた切り込み弁がスムーズ且つ確実に閉じる。従って、スープ等の液体の漏れ出しを効果的に防止することができる。
【0012】
特に、切り込み弁は、切り込み弁の両弁端部を結ぶ直線の中点と弁端部との間の距離よりも、切り込み弁のうち直線から最も離れた弁最遠部と中点との間の距離の方が短いことが好ましい。この構成によれば、切り込み弁の弁最遠部が尖鋭状となりにくい。そのため、蓋の天面部を誤って押し込んだ場合において仮に切り込み弁が容器内部に向けて傾いた場合であっても、電子レンジ加熱の際、切り込み弁が引っ掛かりにくく、容器内部の圧力によってスムーズに切り込み弁が上側に向けて開く。そのため、蒸気がスムーズに排出される。そして、電子レンジ加熱後には、切り込み弁は、スムーズ且つ確実に閉じる。このような切り込み弁の電子レンジ加熱時及び加熱後の際の引っ掛かりを良好に防ぐことができる点から、前記切り込み弁は、略U字形状であって、かつ、切り込み弁の両弁端部を結ぶ線分を直径とする仮想円とした際、両弁端部は当該仮想円の一部を形成しており、かつ、仮想円半径(r)と、仮想円中心から当該切り込み弁の弁最遠部までの距離(L)との比[(r):(L)]が1:0.4~1:0.9、とりわけ1:0.6~1:0.9の範囲にある、変形円弧形状であることが好ましく、更に、弁最遠部が直線状乃至微曲線状であることが好ましい。
【0013】
上記のような切り込み弁の加熱時及び加熱後の引っ掛かり防止効果が更に高まる点から、前記フラット部は平坦状であることが特に好ましい。また、谷底部は、フラット部の両側に、フラット部よりも幅が狭い幅狭部を有していることが好ましい。谷底部の全体がフラット部であってもよいが、フラット部の所定方向の両側にそれぞれ幅狭部が設けられていると、谷形凹部の強度を向上させることができ、フラット部の変形を抑制できる。そのため、電子レンジ加熱前において切り込み弁が不用意に開きにくくなり、また、電子レンジ加熱時においては切り込み弁がスムーズに上側に開いて蒸気を排出でき、更には、電子レンジ加熱後においては切り込み弁がスムーズに且つ確実に閉じることができる。
【0014】
また、谷型凹部は、前記所定方向を長辺方向とする平面視長方形状であることが好ましい。この構成によれば、谷底部にフラット部を容易に形成することができると共に、切り欠き弁も容易に形成できる。
【0015】
また、本発明にかかる電子レンジ用容器は、容器本体と、上述の蓋とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、谷形凹部の谷底部のフラット部を横断するように切り込み弁が設けられているので、電子レンジ加熱前において切り込み弁が開きにくい。そのため、電子レンジ加熱前において内容物の漏れ出しを防止することができる。また、電子レンジ加熱時には、切り込み弁がスムーズに上側に開いて蒸気を排出できる。更に、電子レンジ加熱後においては、切り込み弁がスムーズ且つ確実に閉じることができ、内容物の漏れ出しを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における電子レンジ用容器の開蓋状態を示す斜視図。
図2】同容器の開蓋状態を示す断面図。
図3】同容器の閉蓋状態を示す断面図。
図4】同容器の開蓋状態を示す要部拡大断面図。
図5】同容器の閉蓋状態を示す要部拡大断面図。
図6】同容器の蓋の平面図。
図7図6の要部拡大図。
図8】(a)は図6のA-A断面図、(b)は図6のB-B断面図。
図9図6のC-C断面図。
図10】同蓋の切り込み弁の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る電子レンジ用容器とその蓋について図1図10を参酌しつつ説明する。本実施形態における容器は、種々の食品を収容するためのものであって、開封することなく閉蓋状態のままで電子レンジで加熱することができる、電子レンジ対応の容器である。食品としては、例えば、調理済みのスープやレンジ麺などが挙げられる。
【0019】
図1図5のように、容器は、容器本体1と蓋2を備えている。容器本体1と蓋2は、何れも合成樹脂製のシートから真空成形や圧空成形等の各種の熱成形(シート成形)によって形成されたものである。容器の平面視における形状は任意であって、円形状や小判形状、矩形状、多角形状等であってよいが、円形状のものが、嵌合強度が全周に亘って均一になり、電子レンジ加熱の際に嵌合部の一部から蒸気が漏れ出すことなく、後述する本実施形態における切り込み弁40から選択的に蒸気排させることができる点から好ましい。容器本体1は上方に開口する開口部を有している。蓋2は、容器本体1に内嵌合して容器本体1の開口部を閉塞する。容器本体1には、電子レンジでそのまま加熱して食することができるよう、あらかじめスープなどの液状食品、ゼリー状スープや麺、かやくなどを収容物として収容することができる。本実施形態では、打ち抜き加工によって切り込み弁40を形成する際、切り込み弁40の開きを防ぐことができる点から液状食品であっても、漏れを良好に防止することができる。蓋2が容器本体1に内嵌合することで、閉蓋時には、収容されたスープなどが漏れないようシール性を向上させることができる。尚、内嵌合の構造と共に外嵌合の構造も併せ持ってもよい。また、必要に応じて、容器本体1と蓋2との間に図示しない中皿を収容してもよい。
【0020】
容器本体1や蓋2(必要に応じて中皿)には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンやポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンなどの合成樹脂であって、かつ電子レンジで使用可能な耐熱性を有する合成樹脂製のシートが使用できる。また、これらのシート素材として、前述の合成樹脂に無機物を分散させたシート、もしくは前述の合成樹脂を発泡させた発泡シート、さらには、前述のシートを延伸させた延伸シートなどを使用できる。これらの中でも、ポリスチレンとして耐熱性に優れた耐熱性のスチレン系樹脂を使用した耐熱性発泡スチレン系樹脂シート、耐熱性に優れたポリプロピレンに無機物を分散させて発泡させたシート、ポリエチレンテレフタレート・ポリスチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンなどのシートを延伸して耐熱性を向上させた耐熱シートを使用して熱成形したものを使用できる。特に、これらのシートの中でも、透明性に優れたシートを蓋2に使用した場合には、収容した食品を視認できるので好適であり、中でも、透明なポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンなどを一軸延伸、もしくは2軸延伸した延伸シートは電子レンジ加熱に必要な耐熱性も備えるので特に好ましく、とりわけポリプロピレンを用いた際、打ち抜き加工の際、前記した様な切り込み弁40が開口してしまう、という問題が避けられなかった為、本実施形態の蓋2とすることによる改善効果が顕著なものとなる。容器本体1は、耐熱性樹脂素材を使用したシートを熱成形して得ることが好ましい。容器本体1は、電子レンジで加熱して使用する為に、特に発泡させた耐熱性樹脂素材を使用することが好ましく、加熱後にレンジからの取り出しの際に手で持って熱くなく、火傷などを抑制することができ、レンジの電磁波を効率よく収容食材へ伝え、加熱を均一にかつ短時間で行うことができ、保温性にも優れる点から、耐熱性発泡スチレン系樹脂シートであることが好ましい。
【0021】
<容器本体1>
図1図3のように、容器本体1は、底面部10と、底面部10の周縁部から上方に向けて拡開しつつ延びる本体側面部11と、本体側面部11の上端部から外側に向けて延びる本体フランジ部12を備えている。底面部10には種々の形状の脚部17を設けてよい。本体側面部11には、上下方向に延びるリブが設けられてよい。本体側面部11の上部には、後述の蓋嵌合部23が内嵌合する本体嵌合部13が形成されていることが好ましい。本体嵌合部13は、全周に亘って設けられる。
【0022】
本体嵌合部13の形状は種々であってよい。本体嵌合部13は、例えば、上側に向けて徐々に縮径していく逆テーパ形状であってもよいし、垂直形状(ストレート形状)や順テーパ形状に、外側に凹んだ嵌合凹部を設けた構成であってもよい。本実施形態では、本体嵌合部13は、外側に凹んだ嵌合凹部を有する構成である。嵌合凹部の断面形状は種々であってよいが、好ましくは、外側に向けて湾曲した形状であって、断面視円弧状や断面視台形状である。
【0023】
一例としては、図4及び図5のように、本体嵌合部13は、本体側面部11の上端部に設けられる。本体嵌合部13は、上下方向に沿って略垂直(垂直あるいは若干の逆テーパ形状又は若干の順テーパ形状)に延びる本体嵌合主部13aと、外側に凹んだ本体嵌合凹部13bと、を有している。本体嵌合主部13aは、本体嵌合凹部13bよりも上側に位置している。即ち、本体嵌合凹部13bは、本体嵌合部13のなかで下部に位置し、本体嵌合主部13aは、本体嵌合部13のなかで上部に位置している。本体嵌合主部13aの上下方向の長さは、本体嵌合凹部13bの上下方向の長さよりも長いことが好ましい。本体嵌合凹部13bは、全周に亘って設けられることが好ましい。尚、本体嵌合部13の下側にはステップ部14が設けられることが好ましい。ステップ部14は、外側に向けて上方に傾斜しているか、あるいは、略水平に延びている。ステップ部14の外縁から上方に向けて本体嵌合部13が延びている。
【0024】
本体フランジ部12は、本体嵌合部13の上端部から外側に延びている。本体フランジ部12は、本体嵌合部13と接続する玉縁状部15を有している。本体フランジ部12には、開蓋操作を容易にするための図示しない摘み部を設けてよい。本体フランジ部12の外縁部には、外側に向けて例えば水平又は若干下方に延びる本体縁取り部16を形成することが好ましい。本体縁取り部16の内外方向の全幅のうち外側領域には極細の多数の凹凸を形成することが好ましく、補強効果が得られると共に指の切創が防止される。この凹凸は、正面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山頂と谷底の延びる方向が幅方向(内外方向)である。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成されてよく、特には、滑りにくいようにするために綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0025】
<蓋2>
蓋2は、透明であることが好ましく、容器に収容した食品を蓋2を介して外部から視認できる。図1図3のように、蓋2は、天面部20と、天面部20の周縁部から下側に向けて延びる蓋側面部21と、蓋側面部21の下端部から外側に向けて略水平に延設された蓋延在部22と、蓋延在部22の外縁部から上側に向けて延びる蓋嵌合部23と、蓋嵌合部23の上端部から外側に向けて延びる蓋フランジ部24を備えている。
【0026】
天面部20の周縁部には、環状の凸部25が全周に亘って形成されている。
【0027】
<谷形凹部31>
図6のように、天面部20において凸部25の内側には略水平の天面主部30が設けられる。天面主部30の中央部、即ち、天面部の中央部には谷形凹部31が設けられている。図7に谷形凹部31を拡大して示している。谷形凹部31は下側即ち容器本体1側に向けて凹んでいる。谷形凹部31の平面視の形状は種々であってよいが、本実施形態では矩形状であって、特には所定方向に長い長方形状である。この長方形状の長辺方向を第1方向Yとし、短辺方向を第2方向Xとする。即ち、第1方向Yと第2方向Xは平面視において互いに直交する。谷形凹部31は第1方向Yに沿って長い形状であってよい。谷形凹部31は、平面視において、第1方向Yに沿った蓋2の第1中心線2aを対称軸とした線対称形状であり、また、第2方向Xに沿った蓋2の第2中心線2bを対称軸とした線対称形状である(但し、前記切り込み弁40を除く)。但し、蓋2の平面視における中心と谷形凹部31の平面視における中心がずれていてもよい。
【0028】
<谷底部32>
谷形凹部31は、第1方向Yに沿って延びる谷底部32と、谷底部32の第2方向Xの両側に位置する一対の第1壁面部33と、谷底部32の第1方向Yの両側に位置する一対の第2壁面部34とを有している。谷底部32は、谷形凹部31の最深部である。谷底部32は、谷形凹部31の平面視中央部に位置している。谷底部32は、第1方向Yの両端部である一対の第1端部32aと、第2方向Xの両端部である一対の第2端部32bとを有する。
【0029】
谷底部32は、略平面状のフラット部35と、フラット部35の第1方向Yの両側に位置する一対の幅狭部36とを有している。フラット部35は、谷底部32の第1方向Yの全長のうち中央部に位置している。フラット部35は、谷底部32の大部分を占めている。フラット部35は、平坦面、あるいは、第2方向Xに沿って下側に向けて緩やかに湾曲した湾曲面であり、少なくとも、第1壁面部33よりも勾配が緩い。尚、フラット部35が湾曲面である場合、フラット部35を第2方向Xに沿って切断した断面視において、その接線の勾配が第1壁面部33の勾配よりも緩いことが好ましい。これらのなかでも前記した通り、フラット部35は平坦面であることが好ましい。谷底部32にフラット部35が設けられることにより、谷形凹部31をフラット部35において第2方向Xに沿って切断した断面形状は、図8(a)のように、逆台形状となっている。幅狭部36は、フラット部35よりも第2方向Xの幅が狭い。一対の幅狭部36は、谷底部32の第1方向Yの両端部に位置している。幅狭部36は、フラット部35と同様に、略平面状であって、具体的には、平坦面、あるいは、第2方向Xに沿って下側に向けて緩やかに湾曲した湾曲面であってよい。谷形凹部31を幅狭部36において第2方向Xに沿って切断した断面形状は、図8(b)のように、逆三角形状となっている。
【0030】
一対の第1壁面部33は互いに対称形状であることが好ましい。即ち、一対の第1壁面部33は、第1中心線2aを対称軸として線対称に設けられることが好ましい。一対の第1壁面部33は、谷底部32の両第2端部32bからそれぞれ第2方向Xに徐々に上昇して天面主部30まで延びた傾斜面である。第1壁面部33は、平面視において谷底部32の第2端部32bを上底とする台形状である。尚、第1壁面部33は傾斜平面ではなく湾曲した傾斜面であってもよいが、打ち抜き加工による切り込み弁40形成時の切り込み弁40の開口を防止する点から、傾斜平面であることが好ましい。
【0031】
一対の第2壁面部34は互いに対称形状であることが好ましい。即ち、一対の第2壁面部34は、第2中心線2bを対称軸として線対称に設けられることが好ましい。一対の第2壁面部34は、谷底部32の両第1端部32aからそれぞれ第1方向Yに徐々に上昇して天面主部30まで延びた傾斜面である。第2壁面部34は、平面視において谷底部32の第1端部32aを上底とする台形形状である。このように谷底部32の第1方向Yの両側に第2壁面部34が設けられることにより、谷形凹部31を第1中心線2aで切断した断面形状は、図9のように、逆台形状となっている。尚、第2壁面部34は傾斜平面ではなく湾曲した傾斜面であってもよい。また、一対の第2壁面部34の何れか一方あるいは両方が傾斜面ではなく垂直面であってもよい。
【0032】
谷形凹部31の好ましいサイズについて述べる。谷形凹部31の第2方向Xの長さL1は、1.4~72mmであって、より好ましくは20~35mmである。谷形凹部31の第1方向Yの長さL2は、第2方向Xの長さL1の1.5~4倍であって、より好ましくは1.8~3倍である。谷形凹部31の深さDは、1~5mmである。谷底部32のフラット部35の幅Wは、1~15mmであって、より好ましくは5~10mmである。第1壁面部33の水平面に対する傾斜角度α(勾配)は、10~80度であって、より好ましくは15~30度である。
【0033】
<切り込み弁40>
天面部20には、電子レンジによる加熱時に容器内部で発生した蒸気を容器外部に排出するための切り込み弁40が設けられている。切り込み弁40は、蓋2を構成するシートを打ち抜き刃により切り込んで形成したものである。切り込み弁40は、谷形凹部31に設けられている。切り込み弁40は、谷形凹部31から外側にはみ出さないように、谷形凹部31の外縁よりも内側に設けられている。
【0034】
切り込み弁40の両弁端部41はそれぞれ一対の第1壁面部33に位置している。切り込み弁40の両弁端部41は、互いに第1中心線2aを対称軸として線対称に配置されている。即ち、切り込み弁40の両弁端部41を結んだ直線42は第2方向Xに沿っている。切り込み弁40は、平面視において第1方向Yに向けて湾曲した湾曲形状である。この湾曲形状の弁最遠部43は、谷底部32に位置し、第1中心線2a上に位置している。弁最遠部43は、切り込み弁40の両弁端部41から第1方向Yに最も離れた部分であり、直線42から最も離れた部分である。切り込み弁40は、谷底部32を第2方向Xに横断しており、具体的には、谷底部32のうちフラット部35を横断している。
【0035】
切り込み弁40の形状は種々であってよく、C字状やU字状、舌片状等であってよい。本実施形態の切り込み弁40を図8に拡大して示している。本実施形態の切り込み弁40は、小曲率部44と、小曲率部44の両側に位置する一対の大曲率部45とからなる。小曲率部44は、弁最遠部43に位置し、切り込み弁40の中央部に位置している。小曲率部44の曲率は、大曲率部45の曲率よりも小さい。小曲率部44は、曲率が0、即ち直線であってもよく、第2方向Xに沿った直線であってもよい。小曲率部44は、直線42を直径とした切り込み弁40の両弁端部41を通る仮想円46の内側に位置する。仮想円46の中心は、直線42の中点42aである。小曲率部44の曲率半径は、仮想円46の半径よりも小さい。一対の大曲率部45は互いに対称であってよい。一対の大曲率部45の曲率は互いに同じであってよい。大曲率部45の曲率半径は仮想円46の半径と等しいことが好ましい。つまり、大曲率部45は仮想円46の一部であることが好ましい。小曲率部44は、フラット部35を横断している。小曲率部44の長さは、フラット部35の第2方向Xの幅よりも長い。大曲率部45は、第1壁面部33に位置している。
【0036】
蓋側面部21は、環状の凸部25と連続している。蓋側面部21の外面には、集荷時に蓋2同士を多数積み重ねした際に、蓋2同士が互いにきつく嵌り込んで取れなくなる、いわゆるブロッキング現象を防止するために、ブロッキング防止用凸部26を設けてよい。尚、ブロッキング防止用凸部26は、蓋2毎にその位置をずらして配置しておく。
【0037】
蓋嵌合部23の形状は種々であってよい。蓋嵌合部23は、例えば、上側ほど内側となる逆テーパ形状であってもよいし、垂直形状や順テーパ形状に、外側に突出した嵌合凸部を設けた形状であってもよい。本実施形態では、蓋嵌合部23は、嵌合凸部を有する構成である。嵌合凸部の断面形状は種々であってよく、例えば、外側に向けて断面視円弧状や台形状に膨出した形状である。嵌合凸部の位置は、蓋嵌合部23のなかで下部や上下方向の中間部、上部等、種々であってよい。
【0038】
一例としては、蓋嵌合部23は、図4及び図5のように、上下方向に沿って略垂直に延びる蓋嵌合主部23aと、外側に突出した蓋嵌合凸部23bとを有している。蓋嵌合主部23aは、蓋嵌合凸部23bよりも上側に位置している。即ち、蓋嵌合凸部23bは、蓋嵌合部23のなかで下部に位置し、蓋嵌合主部23aは、蓋嵌合部23のなかで上部に位置している。
【0039】
蓋嵌合凸部23bの断面形状は、本体嵌合凹部13bの断面形状に対応していることが好ましい。蓋嵌合凸部23bと本体嵌合凹部13bとは略同一の曲率の曲面を有することが好ましい。蓋嵌合凸部23bは、全周に亘って設けられることが好ましい。更に、蓋嵌合部23は、蓋嵌合主部23aの上側に、即ち、蓋嵌合部23の上端部に、湾曲部23cを有していることが好ましい。湾曲部23cは、蓋嵌合主部23aの上側に接続されている。湾曲部23cは、上下方向に沿って外側凸に湾曲している。
【0040】
蓋フランジ部24の形状は任意であるが、本実施形態では、湾曲部23cの上端から外側に向けて略水平に延びている。蓋フランジ部24の下面には、閉蓋2状態において本体フランジ部12の上面に当接する環状の凸条27が設けられていてよい。凸条27は、本体フランジ部12の特には玉縁状部15に当接する。凸条27は、蓋フランジ部24の全周に亘って設けられる。
【0041】
尚、蓋フランジ部24の外縁部には、開蓋操作を容易にするための蓋摘み部(図示省略)を設けてよい。蓋フランジ部24の外縁部には、極細の多数の凹凸を形成し、補強するとともに、指などがあたっても、指などを切ることがないようにされていてよい。この凹凸は、正面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山と谷の方向が容器の内外方向に沿っている。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、さらには、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0042】
<閉蓋状態>
図3及び図5に閉蓋状態を示している。蓋延在部22は、ステップ部14の上に当接する、あるいは、隙間をあけて対峙する。蓋嵌合凸部23bは、本体嵌合凹部13bに嵌合し、蓋嵌合主部23aは、本体嵌合主部13aに嵌合する。蓋2を容器本体1に装着する際、蓋嵌合凸部23bは、本体嵌合主部13aと摺動しながら下降し、やがて、本体嵌合凹部13bに嵌まり込む。そのため、蓋嵌合凸部23bが本体嵌合凹部13bに嵌まり込む際に、作業者の手にはクリック感が伝わり、そのクリック感によって作業者は蓋2を正規の位置まで装着できたことを知ることができる。また、蓋嵌合凸部23bと本体嵌合凹部13bが互いに略同一の曲率の曲面を有していると、これらの間で面接触となって嵌合強度がより一層高まる。
【0043】
尚、本体嵌合部13と蓋嵌合部23が何れも上側ほど内側に向かう逆テーパ形状であってもよい。更に、例えば、本体嵌合部13を逆テーパ形状とし、蓋嵌合部23を嵌合凸部を有する構成としてもよい。また、蓋嵌合部23が嵌合凸部を有する場合において、その嵌合凸部の上側や下側に、ストレート部ではなく、上下方向に沿って内側に向けて湾曲する湾曲部を有する構成としてもよい。
【0044】
閉蓋状態において、湾曲部23cは、本体フランジ部12の玉縁状部15に内側から接触する。好ましくは、湾曲部23cは、玉縁状部15に周方向に沿って環状に線接触する。即ち、湾曲部23cは、断面視において、玉縁状部15に点接触する。玉縁状部15は、内外方向に沿って上側凸に湾曲し、湾曲部23cは、上下方向に沿って外側凸に湾曲している。そのため、断面視において、湾曲部23cは、玉縁状部15に内側且つ斜め上方から確実に点接触することができる。このように湾曲部23cが玉縁状部15に接触することにより、湾曲部23cが玉縁状部15に強い圧力で押し付けられることになり、湾曲部23cと玉縁状部15の接触が確実なものとなって、容器本体1と蓋2との間の内嵌合力が増強され、スープ等の染み出し、漏れ出しを効果的に防ぐことができる。蓋フランジ部24は、本体フランジ部12に当接するか、本体フランジ部12の上側に間隔をあけて対峙してもよい。
【0045】
容器本体1には例えばスープ等の液体を含む食材が入れられ、その後、容器本体1に蓋2が装着される。切り込み弁40は、谷形凹部31に設けられ、その谷形凹部31の谷底部32を横断している。そのため、打ち抜き刃によって切り込み弁40を形成する場合においても、打ち抜き刃の引き抜き側に切り込み弁40が開きにくい。
【0046】
特に、切り込み弁40の弁最遠部43には小曲率部44が設けられ、その小曲率部44が谷底部32を横断している。また、切り込み弁40の両弁端部41を結ぶ直線42の中点42aと弁端部41との間の距離よりも、切り込み弁40の全長のうち、直線42から最も離れた部分である弁最遠部43と中点42aとの間の距離の方が短い。そのため、切り込み弁40の弁最遠部43が尖鋭状となりにくい。更には、谷底部32にはフラット部35が設けられていて、切り込み弁40の小曲率部44がフラット部35を横断している。そのため、切り込み弁40の弁最遠部43がより一層尖鋭状となりにくい。従って、蓋2の天面部20を誤って指等で押し込んだ場合等において、仮に切り込み弁40が容器内部に向けて傾いたとしても、電子レンジ加熱した際に切り込み弁40が引っ掛かって該切り込み弁40が開口しない、ということが起こりにくい。
【0047】
このように電子レンジ加熱前において切り込み弁40が開きにくいので、スープ等の液体の容器外部への漏れ出しを防止することができる。そして、使用者は、容器を閉蓋状態のまま電子レンジに入れて食材を加熱調理をすることができる。電子レンジで加熱することによって容器内の食材が温められて蒸気が発生し、容器内の圧力が上昇する。容器内の圧力が所定圧力まで高まると、切り込み弁40が上昇して開口し、蒸気が容器外部にスムーズに排出されて過度の圧力上昇が阻止される。電子レンジ加熱の際、切り込み弁40が引っ掛かりにくいため、容器内部の圧力によって切り込み弁40が上側に向けてスムーズに開くことになる。そのため、蒸気が容器外部にスムーズに排出されることになる。更に、電子レンジ加熱後においては、切り込み弁40がスムーズ且つ確実に閉じることができる。そのため、スープ等の液体の外部への漏れ出しを効果的に防止することができる。
【0048】
また、フラット部35の第1方向Yの両側にはそれぞれ幅狭部36が設けられているので、谷底部32の全体がフラット部35である場合に比して、谷形凹部31の強度を向上させることができ、フラット部35の変形を抑制できる。そのため、電子レンジ加熱前においては、切り込み弁40の不用意な変形が抑制されて液漏れが防止される。また、電子レンジ加熱時においては、容器内部の圧力による谷形凹部31の変形を抑制しつつ切り込み弁40のみがスムーズに開いて蒸気を排出させることができ、電子レンジ加熱後には切り込み弁40がスムーズ且つ確実に閉じることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 容器本体
2 蓋
2a 第1中心線
2b 第2中心線
10 底面部
11 本体側面部
12 本体フランジ部
13 本体嵌合部
13a 本体嵌合主部
13b 本体嵌合凹部
14 ステップ部
15 玉縁状部
16 本体縁取り部
17 脚部
20 天面部
21 蓋側面部
22 蓋延在部
23 蓋嵌合部
23a 蓋嵌合主部
23b 蓋嵌合凸部
23c 湾曲部
24 蓋フランジ部
25 凸部
26 ブロッキング防止用凸部
27 凸条
30 天面主部
31 谷形凹部
32 谷底部
32a 第1端部
32b 第2端部
33 第1壁面部
34 第2壁面部
35 フラット部
36 幅狭部
40 切り込み弁
41 弁端部
42 直線
43 弁最遠部
44 小曲率部
45 大曲率部
46 仮想円
X 第2方向
Y 第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10