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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090208
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ラマン顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20230622BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230622BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20230622BHJP
   G01N 21/27 20060101ALN20230622BHJP
   G01N 21/35 20140101ALN20230622BHJP
【FI】
G01N21/65
G02B21/06
G02B21/36
G01N21/27 E
G01N21/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205052
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直也
(72)【発明者】
【氏名】森谷 友香
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043DA06
2G043EA01
2G043EA03
2G043EA13
2G043EA14
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA06
2G043GA03
2G043GA04
2G043GA08
2G043GB01
2G043GB21
2G043JA04
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA09
2G043LA01
2G043LA03
2G059AA01
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE05
2G059EE07
2G059EE12
2G059FF01
2G059FF03
2G059GG01
2G059GG03
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH06
2G059KK01
2G059KK04
2G059LL01
2H052AA01
2H052AA03
2H052AA09
2H052AB01
2H052AB06
2H052AC06
2H052AC07
2H052AC13
2H052AC14
2H052AC34
2H052AD20
2H052AF03
2H052AF07
2H052AF14
2H052AF21
2H052AF25
(57)【要約】
【課題】深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを容易に取得することができるラマン顕微鏡を提供する。
【解決手段】深さ測定処理部111が、試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う。表示処理部103が、ステージ上の試料の表面画像に対応付けて、当該試料に対して深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面を表示させる。前記パラメータには、深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させる範囲と、当該範囲内における前記複数点の間隔とが含まれる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡であって、
試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う深さ測定処理部と、
前記ステージ上の試料の表面画像に対応付けて、当該試料に対して前記深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面を表示させる表示処理部とを備え、
前記パラメータには、前記深さ方向に沿って前記レーザ光の焦点位置を変化させる範囲と、当該範囲内における前記複数点の間隔とが含まれる、ラマン顕微鏡。
【請求項2】
前記入力画面には、前記深さ方向に沿って前記レーザ光の焦点位置を変化させるために操作される焦点操作領域と、当該焦点操作領域に対する操作により変化した前記焦点位置を前記範囲の上端に設定するための上端設定領域とが含まれる、請求項1に記載のラマン顕微鏡。
【請求項3】
前記入力画面には、前記上端設定領域で設定された前記範囲の上端に対する深さを入力するための深さ入力領域が含まれる、請求項2に記載のラマン顕微鏡。
【請求項4】
前記入力画面には、前記範囲の上端及び下端の相対的な位置関係を表すシンボルを表示するシンボル表示領域が含まれ、
前記表示処理部は、前記深さ入力領域に入力される深さに応じて、前記シンボルの表示を変化させる、請求項3に記載のラマン顕微鏡。
【請求項5】
前記入力画面には、前記焦点操作領域の操作により変化した前記焦点位置を前記範囲の下端に設定するための下端設定領域が含まれる、請求項2~4のいずれか一項に記載のラマン顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光装置の一例であるラマン顕微鏡においては、ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光が検出器で受光される(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-90064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなラマン顕微鏡では、試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させることにより、当該深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することが可能である。この場合、ユーザは、ステージの高さを変化させるなどの作業を行う必要があるため、作業が煩雑である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを容易に取得することができるラマン顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡であって、深さ測定処理部と、表示処理部とを備える。前記深さ測定処理部は、試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う。前記表示処理部は、前記ステージ上の試料の表面画像に対応付けて、当該試料に対して前記深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面を表示させる。前記パラメータには、前記深さ方向に沿って前記レーザ光の焦点位置を変化させる範囲と、当該範囲内における前記複数点の間隔とが含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ラマン顕微鏡の構成例を示した概略図である。
図2】ラマン顕微鏡の構成例を示した概略図である。
図3】ラマン顕微鏡の電気的構成の一例を示したブロック図である。
図4】表示部に表示される操作画面の一例を示した図である。
図5】表示部に表示される操作画面の一例を示した図である。
図6】表示部に表示される操作画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.ラマン顕微鏡の全体構成
図1及び図2は、ラマン顕微鏡1の構成例を示した概略図である。本実施形態におけるラマン顕微鏡1は、ラマン分光分析だけでなく、赤外分光分析も行うことが可能である。図1は、ラマン分光分析を行う際の状態を示しており、図2は、赤外分光分析を行う際の状態を示している。
【0010】
ラマン顕微鏡1には、プレート2、ステージ3、駆動部4、対物光学素子5、対物光学素子6、ラマン光検出系7、赤外光検出系8及び切換機構9などが備えられている。試料は、プレート2に固定された状態でステージ3上に載置される。ステージ3は、駆動部4の駆動により、水平方向又は鉛直方向に変位可能である。駆動部4には、例えばモータ及びギアなどが含まれる。
【0011】
対物光学素子5は、ラマン分光分析に用いられ、例えば凸レンズと凹レンズとを組み合わせた構成である。ラマン分光分析を行う際には、図1に示すように、対物光学素子5がプレート2上の試料に対向する。すなわち、プレート2上の試料の直上方に対物光学素子5が位置する。
【0012】
対物光学素子6は、赤外分光分析に用いられ、例えば凹面鏡と凸面鏡とを組み合わせたカセグレン鏡である。赤外分光分析を行う際には、図2に示すように、対物光学素子6がプレート2上の試料に対向する。すなわち、プレート2上の試料の直上方に対物光学素子6が位置する。
【0013】
ラマン光検出系7は、ラマン分光分析を行う際に用いられるものであり、光源A、光学撮影素子10及びラマン分光計71を含む。光源Aから出射される光は、例えば可視域又は近赤外域の波長を有するレーザ光であり、その波長は数μmから数十μm程度である。図1に示すように、ラマン分光分析を行う際には、光源Aから出射された光が、各種光学素子(図示せず)により対物光学素子5に導かれる。
【0014】
対物光学素子5に入射した光は、プレート2に固定された試料上に焦点を結ぶ。すなわち、光源Aからの光は、対物光学素子5を透過することにより集光され、試料上又は試料中の焦点位置に照射される。光源Aからの光が照射された試料からは、ラマン散乱光が発生し、この光が各種光学素子(図示せず)によりラマン光検出系7に導かれる。対物光学素子5からラマン光検出系7に導かれた光の一部は、光学撮影素子10に入射し、残りの光は、ラマン分光計71に入射する。
【0015】
光学撮影素子10は、ラマン散乱光が発生する試料表面の可視画像を撮影する。光学撮影素子10は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを含み、試料の静止画又は動画を撮影可能に構成されている。光学撮影素子10では、試料の明視野像、暗視野像、位相差像、蛍光像及び偏光顕微鏡像などの全部又は少なくとも1つを撮影することができる。
【0016】
ラマン分光計71は、試料からのラマン散乱光を分光することにより、波長ごとの強度を検出する。このラマン分光計71からの検出信号に基づいて、ラマンスペクトルを取得することができる。ラマンスペクトルは、縦軸が強度、横軸が波長で表される。このように、ラマン顕微鏡1では、試料からのラマン散乱光を検出器(ラマン分光計71)で受光することにより、ラマンスペクトルを取得することができる。
【0017】
赤外光検出系8は、赤外分光分析を行う際に用いられるものであり、光源B、光学撮影素子11及び赤外分光計81を含む。光源Bから出射される光は、例えばセラミックヒータから出射される赤外光であり、その波長は405nmから1064nm程度、多くの場合は532nmと785nmの波長を組み合わせた光が用いられる。図2に示すように、赤外分光分析を行う際には、光源Bから出射された光が、各種光学素子(図示せず)により対物光学素子6に導かれる。
【0018】
対物光学素子6に入射した光は、プレート2に固定された試料上に焦点を結ぶ。すなわち、光源Bからの光は、対物光学素子6を透過することにより集光され、試料上又は試料中の焦点位置に照射される。光源Bからの光が照射された試料からの反射光は、各種光学素子(図示せず)により赤外光検出系8に導かれる。対物光学素子6から赤外光検出系8に導かれた光の一部は、光学撮影素子11に入射し、残りの光は、赤外分光計81に入射する。
【0019】
光学撮影素子11は、赤外光が反射する試料表面の可視画像を撮影する。光学撮影素子11は、光学撮影素子10と同様の構成であってもよい。光学撮影素子11では、光学撮影素子10と同様に、試料の静止画又は動画を撮影可能であり、試料の明視野像、暗視野像、位相差像、蛍光像及び偏光顕微鏡像などの全部又は少なくとも1つを撮影することができる。
【0020】
赤外分光計81は、例えばフーリエ変換赤外分光計である。赤外分光計81に備えられた分光器は、マイケルソン干渉分光器であってもよい。赤外分光計81は、試料からの赤外光の反射光を分光することにより、波長ごとの強度を検出する。この赤外分光計81からの検出信号に基づいて、赤外スペクトルを取得することができる。赤外スペクトルは、縦軸が強度、横軸が波長で表される。このように、ラマン顕微鏡1では、試料からの赤外光の反射光を検出器(赤外分光計81)で受光することにより、赤外スペクトルを取得することができる。
【0021】
切換機構9は、ラマン分光分析と赤外分光分析とを切り換える。具体的には、切換機構9は、駆動部4によりステージ3を駆動し、対物光学素子5とプレート2との位置関係、及び、対物光学素子6とプレート2との位置関係を調整する。ラマン分光分析に切り換えられた場合には、対物光学素子5とプレート2との位置関係が調整されることにより、対物光学素子5により集光される光の焦点位置が試料の所定の測定位置に合わせられる。一方、赤外分光分析に切り換えられた場合には、対物光学素子6とプレート2との位置関係が調整されることにより、対物光学素子6により集光される光の焦点位置が試料の所定の測定位置に合わせられる。
【0022】
2.ラマン顕微鏡の電気的構成
図3は、ラマン顕微鏡1の電気的構成の一例を示したブロック図である。ラマン顕微鏡1は、上述した各部の他に、制御部100、記憶部200、表示部300及び操作部400を備えている。
【0023】
制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部100は、CPUがプログラムを実行することにより、ラマン分析処理部101、赤外分析処理部102及び表示処理部103などとして機能する。
【0024】
ラマン分析処理部101は、切換機構9によりラマン分光分析に切り換えられた状態で、ステージ3上の試料に対してラマン分光分析を行うための処理を実行する。すなわち、光源Aから試料に対してレーザ光を集光させて照射し、ラマン分光計71からの検出信号に基づいてラマンスペクトルを取得する。また、ラマン分析処理部101は、光学撮影素子10により撮影される可視画像に基づいて、ラマン分光分析中における試料の表面画像を取得することができる。ラマン分光分析の際には、駆動部4を制御することにより、ステージ3を移動させながら分析が行われてもよい。
【0025】
赤外分析処理部102は、切換機構9により赤外分光分析に切り換えられた状態で、ステージ3上の試料に対して赤外分光分析を行うための処理を実行する。すなわち、光源Bから試料に対して赤外光を集光させて照射し、赤外分光計81からの検出信号に基づいて赤外スペクトルを取得する。また、赤外分析処理部102は、光学撮影素子11により撮影される可視画像に基づいて、赤外分光分析中における試料の表面画像を取得することができる。赤外分光分析の際には、駆動部4を制御することにより、ステージ3を移動させながら分析が行われてもよい。
【0026】
ラマン分析処理部101の処理により得られたラマン分光分析中のデータ、及び、赤外分析処理部102の処理により得られた赤外分光分析中のデータは、記憶部200に記憶される。記憶部200は、例えばハードディスクなどの不揮発性メモリを含む。記憶部200には、例えばラマン分光分析により取得されたラマンスペクトル、及び、赤外分光分析により取得された赤外スペクトルなどが記憶される。
【0027】
表示処理部103は、表示部300に対する表示を制御する。すなわち、表示処理部103の制御により、表示部300の表示画面に対して、操作画面などの各種画面が表示される。表示部300は、例えば液晶表示器を含む構成であるが、これに限られるものではない。表示部300の表示画面には、表示処理部103の制御により、記憶部200に記憶されているラマンスペクトル又は赤外スペクトルを表示させることができる。
【0028】
操作部400は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、例えばキーボード又はマウスなどを含む構成であるが、これに限られるものではない。表示部300に操作画面が表示されているときには、操作部400を操作することにより、当該操作画面に対する入力操作を行うことができる。操作部400を用いて入力操作を行った場合には、その入力された情報(数値など)が表示部300の操作画面に反映されて表示される。
【0029】
本実施形態では、ラマン分析処理部101に深さ測定処理部111が含まれる。深さ測定処理部111は、ラマン分光分析中に駆動部4を制御して、ステージ3を鉛直方向に移動させながら複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う。すなわち、深さ測定時には、ステージ3が鉛直方向に移動することにより、試料と対物光学素子5との距離が変化する。
【0030】
対物光学素子5から試料に向かうレーザ光の焦点位置は一定であるため、深さ測定時には、ステージ3の移動に伴い、試料に対するレーザ光の焦点位置が変化する。すなわち、深さ測定時に試料に照射されるレーザ光の焦点位置は、試料上だけでなく、試料中にも入り込む。
【0031】
具体的に、深さ測定では、試料に対するレーザ光の照射方向(光軸方向)である深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させつつ、所定の間隔でラマン分光計71からの検出信号に基づいてラマンスペクトルを取得する。これにより、深さ方向に上記所定の間隔で離れた複数点において、それぞれラマン分光計71からの検出信号に基づくラマンスペクトルが取得される。上記所定の間隔は、ユーザが予め設定することができる。
【0032】
表示処理部103は、深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面を表示部300に表示させることができる。当該パラメータには、上記所定の間隔の他、深さ測定を行う深さ方向の範囲、又は、試料の表面画像上におけるレーザ光の径(スポット径)などが含まれる。深さ測定処理部111は、当該入力画面に入力されたパラメータに基づいて、深さ測定を行う。
【0033】
3.操作画面の具体例
図4図6は、表示部300に表示される操作画面500の一例を示した図である。この操作画面500には、表面画像表示領域501及びスペクトル表示領域502が含まれる。ただし、表面画像表示領域501及びスペクトル表示領域502は、いずれも操作画面500に含まれるような表示態様に限らず、少なくとも一方が操作画面500とは異なる画面で表示されてもよい。
【0034】
表面画像表示領域501には、ステージ3上の試料の表面画像が表示される。すなわち、光学撮影素子10により撮影される可視画像が、表面画像表示領域501に表示される。表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像は、光学撮影素子10により撮影されるリアルタイムの画像であってもよいし、所定のタイミングで撮影された静止画であってもよい。ステージ3を水平方向(深さ方向に対して交差方向)に移動させた場合には、表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像の領域が変化してもよい。
【0035】
ユーザは、表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像上で、測定位置を選択することができる。測定位置とは、水平面内で選択される任意の位置であり、選択された測定位置における深さ方向に沿って、深さ測定が行われる。
【0036】
測定位置は、1つだけ選択されてもよいし、複数選択されてもよい。図4の例では、3つの測定位置511が選択されている。また、複数の測定位置511は、一直線上に並ぶように選択されている。測定位置511は、操作部400に対する操作により選択されるが、その選択方法は任意である。例えば、操作部400にマウスのようなポインティングデバイスが含まれる場合、ドラッグ操作などにより複数の測定位置511を容易に選択することができる。水平方向における複数の測定位置511間の距離は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0037】
なお、ラマン光検出系7における光源Aは、複数の波長でレーザ光を出射可能であってもよい。この場合、表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像上で選択される測定位置は、波長ごとに選択可能であってもよい。
【0038】
ユーザは、上記のようにして測定位置511を選択した後、サンプル測定キー503を選択する。サンプル測定キー503は、深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面を表示させるための選択キーである。サンプル測定キー503が選択されると、図5に示すように、表示部300に入力画面504が表示される。
【0039】
この例では、操作画面500とは異なる画面として、入力画面504が表示部300にポップアップ表示されている。これにより、表面画像表示領域501と入力画面504とが表示部300に同時に表示されるため、試料の表面画像に対応付けて、入力画面504を表示させることができる。ただし、このような構成に限らず、操作画面500内に入力画面504が入力領域として表示されてもよい。
【0040】
入力画面504では、深さ測定を行う際のパラメータとして、深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させる範囲(深さ範囲)と、当該深さ範囲においてラマンスペクトルが取得される複数点の間隔(ステップ幅)とが含まれる。深さ範囲は、深さ方向の上端と下端により規定することができる。ステップ幅は、複数点間において一定間隔であってもよいし、一定間隔でなくてもよい。
【0041】
入力画面504には、ステージ3を深さ方向に移動させるために操作される焦点操作領域541が含まれる。この焦点操作領域541には、例えば、ステージ3を深さ方向に沿って上方に移動させるために操作される上移動キー541aと、下方に移動させるために操作される下移動キー541bとが含まれる。ユーザは、焦点操作領域541に対する操作でステージ3を深さ方向の上方又は下方に移動させることにより、深さ方向に沿って試料に対するレーザ光の焦点位置を変化させることができる。
【0042】
入力画面504には、深さ範囲の上端を設定するために操作される上端設定領域542が含まれる。ユーザは、上記のように焦点操作領域541に対する操作を行うことにより焦点位置の調整を行った後、上端設定領域542を選択することにより、そのときの焦点位置を深さ範囲の上端に設定することができる。すなわち、上端設定領域542を選択すれば、焦点操作領域541に対する操作により変化した焦点位置が深さ範囲の上端に設定される。
【0043】
深さ範囲の上端は、試料の表面(上面)であってもよいし、試料の表面に対して深さ方向にずれた位置であってもよい。試料の表面を深さ範囲の上端とする場合には、表面画像表示領域501にリアルタイムで表示される試料の表面画像上で、スポット径が最も小さくなるように焦点操作領域541を操作した後、上端設定領域542を選択すればよい。ただし、表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像ではなく、試料の表面をユーザが直接目視しながら、スポット径が最も小さくなるように焦点操作領域541を操作してもよい。一方、試料の表面よりも上方に深さ範囲の上端を設定すれば、試料の表面よりも上方から深さ測定を開始することができる。
【0044】
入力画面504には、上端設定領域542を選択することにより設定された深さ範囲の上端を基準にして、深さを入力するための深さ入力領域543が含まれる。深さ入力領域543には、深さを表す数値を入力することができる。深さ入力領域543に対する入力操作により、上端設定領域542で設定された深さ範囲の上端に対する深さが入力されるため、深さ範囲の下端が設定されることとなり、これにより深さ範囲の設定が完了する。
【0045】
本実施形態では、上記のような深さ範囲の設定方法の他に、入力画面504に含まれる下端設定領域544に対する操作によっても深さ範囲の設定を行うことができる。この場合、ユーザは、上端設定領域542を選択することにより深さ範囲の上端を設定した後、焦点操作領域541に対する操作を行うことにより、深さ範囲の下端として所望する位置に焦点位置を調整する。その後、下端設定領域544を選択すれば、焦点操作領域541の操作により変化した焦点位置が深さ範囲の下端に設定され、これにより深さ範囲の設定が完了する。
【0046】
入力画面504には、深さ範囲の上端及び下端の相対的な位置関係を表すシンボルを表示するシンボル表示領域545が含まれる。シンボル表示領域545には、試料を表すシンボル545aが仮想的に表示されるとともに、当該シンボル545aを基準として、深さ範囲の上端を表すシンボル545bと、下端を表すシンボル545cが表示される。
【0047】
深さ範囲の下端を表すシンボル545cの位置は、深さ入力領域543に入力される深さに応じて変化する。したがって、深さ範囲の下端の位置をユーザに分かりやすく表示することができる。なお、上端設定領域542が選択される前の焦点操作領域541に対する操作に応じて、深さ範囲の上端を表すシンボル545bの位置が変化してもよい。また、下端設定領域544が選択される前の焦点操作領域541に対する操作に応じて、深さ範囲の下端を表すシンボル545cの位置が変化してもよい。
【0048】
入力画面504には、ステップ幅を入力するためのステップ幅入力領域546が含まれる。ステップ幅入力領域546には、深さ測定を行う際のラマンスペクトルが取得される深さ方向の各点の間隔を表す数値を入力することができる。これにより、ステップ幅の設定が完了する。
【0049】
ユーザは、上記のようにして深さ範囲及びステップ幅の各パラメータを入力した後、入力画面504に含まれる測定開始キー547を選択する。これにより、設定された各パラメータを用いて深さ測定が開始される。なお、測定開始キー547が選択された後、深さ測定が終了するまでの間に、入力画面504は非表示となる。
【0050】
深さ測定は、表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像上で選択された測定位置511において、種々の態様で行うことができ、それらの態様のいずれかをユーザが任意に選択できてもよい。例えば、測定位置511が複数選択されている場合には、各測定位置511において上端から下端に向かって深さ測定が行われてもよいし、上端から下端に向かって深さ測定を行う測定位置511と、下端から上方に向かって深さ測定を行う測定位置511とが、交互に繰り返されてもよい。
【0051】
また、選択された複数の測定位置511が一直線上に並んでいる場合には、ステージ3を水平方向に一直線上に移動させることにより各測定位置511における同じ深さの測定を行った後、ステージ3を鉛直方向に移動させ、その深さにおける各測定位置511の測定を行うという動作が繰り返されてもよい。この場合、ステージ3を水平方向に一直線上に移動させる際の始点及び終点は、深さ方向に見たときに、各深さにおいて同じ位置であってもよいし、各深さにおいて交互に入れ替わってもよい。
【0052】
深さ測定が終了すると、図6に示すように、スペクトル表示領域502にラマンスペクトルが表示される。図6では、深さ測定で最後に取得されたラマンスペクトルがスペクトル表示領域502に表示されている。
【0053】
なお、ユーザは、操作部400を操作することにより、取得された複数のラマンスペクトルのうち所望のラマンスペクトルを記憶部200から読み出し、表示部300に表示させることが可能である。この場合、例えば深さ位置を選択するためのバーなどの操作キーが表示部300に表示され、当該操作キーを移動させることにより、複数のラマンスペクトルを連続的に切り替えて表示部300に表示させることができてもよい。
【0054】
4.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0055】
(第1項)一態様に係るラマン顕微鏡は、
ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡であって、
試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う深さ測定処理部と、
前記ステージ上の試料の表面画像に対応付けて、当該試料に対して前記深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面を表示させる表示処理部とを備え、
前記パラメータには、前記深さ方向に沿って前記レーザ光の焦点位置を変化させる範囲と、当該範囲内における前記複数点の間隔とが含まれていてもよい。
【0056】
第1項に記載のラマン顕微鏡によれば、深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面において、深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させる範囲と、当該範囲内における深さ方向の複数点の間隔とをパラメータとして入力することができる。このようにして入力されたパラメータに基づいて深さ測定を行うことにより、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを容易に取得することができる。
【0057】
(第2項)第1項に記載のラマン顕微鏡において、
前記入力画面には、前記深さ方向に沿って前記レーザ光の焦点位置を変化させるために操作される焦点操作領域と、当該焦点操作領域に対する操作により変化した前記焦点位置を前記範囲の上端に設定するための上端設定領域とが含まれていてもよい。
【0058】
第2項に記載のラマン顕微鏡によれば、焦点操作領域を操作することにより深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させた後、上端設定領域により、その焦点位置を深さ測定時に深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させる範囲の上端として容易に設定することができる。
【0059】
(第3項)第2項に記載のラマン顕微鏡において、
前記入力画面には、前記上端設定領域で設定された前記範囲の上端に対する深さを入力するための深さ入力領域が含まれていてもよい。
【0060】
第3項に記載のラマン顕微鏡によれば、深さ入力領域に深さを入力することにより、深さ測定時に深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させる範囲の上端に対する深さが入力され、当該範囲の下端が設定されることとなるため、当該範囲の設定を容易に行うことができる。
【0061】
(第4項)第3項に記載のラマン顕微鏡において、
前記入力画面には、前記範囲の上端及び下端の相対的な位置関係を表すシンボルを表示するシンボル表示領域が含まれ、
前記表示処理部は、前記深さ入力領域に入力される深さに応じて、前記シンボルの表示を変化させてもよい。
【0062】
第4項に記載のラマン顕微鏡によれば、深さ測定時に深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させる範囲の上端及び下端の位置をユーザに分かりやすく表示することができるため、当該範囲の設定をさらに容易に行うことができる。
【0063】
(第5項)第2項~第4項のいずれか一項に記載のラマン顕微鏡において、
前記入力画面には、前記焦点操作領域の操作により変化した前記焦点位置を前記範囲の下端に設定するための下端設定領域が含まれていてもよい。
【0064】
第5項に記載のラマン顕微鏡によれば、焦点操作領域を操作することにより深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させた後、下端設定領域により、その焦点位置を深さ測定時に深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させる範囲の下端として容易に設定することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ラマン顕微鏡
3 ステージ
71 ラマン分光計
100 制御部
101 ラマン分析処理部
102 赤外分析処理部
103 表示処理部
111 深さ測定処理部
504 入力画面
541 焦点操作領域
542 上端設定領域
543 入力領域
544 下端設定領域
545 シンボル表示領域
546 ステップ幅入力領域
547 測定開始キー
図1
図2
図3
図4
図5
図6