(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090226
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ドリフトピン及びドリフトピンを使った木材の再利用方法
(51)【国際特許分類】
F16B 15/02 20060101AFI20230622BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20230622BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230622BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20230622BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F16B15/02 Z
E04B1/26 G
E04B1/26 E
E04B1/58 503L
E04B1/58 508L
F16B37/00 Z
F16B7/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205089
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】391029347
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521553830
【氏名又は名称】株式会社ATA
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】青谷 敏男
(72)【発明者】
【氏名】河合 匠
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB12
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG23
2E125AG38
2E125BB02
2E125BB09
2E125BB22
2E125BB36
2E125BD01
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF01
2E125BF06
2E125CA05
2E125CA14
2E125CA79
2E125EA12
2E125EA15
2E125EB12
3J039AA08
3J039BB03
3J039GA06
(57)【要約】
【課題】木材などの建築部材を再利用しやすくして、経済性を向上させやすくする。
【解決手段】 第1部材と第2部材とを連結する連結金具3の一部が、一方の部材の端面部に形成された所定深さのスリット4内に差し込まれた状態で、前記一方の部材の側面及び前記スリット4内の前記連結金具3の一部に形成されたピン挿入孔5に打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具3とを連結可能なドリフトピンであって、打ち込み先端部とは反対側の打ち込み基端部に、ピン引き抜き用金具に対する係止用凹部を設けてある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを連結する連結金具の一部が、一方の部材の端面部に形成された所定深さのスリット内に差し込まれた状態で、前記一方の部材の側面及び前記スリット内の前記連結金具の一部に形成されたピン挿入孔に打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具とを連結可能に、打ち込み先端部を、先端側ほど小径になるように形成すると共に、
前記打ち込み先端部とは反対側のハンマーによる直接打撃を与えるための打ち込み基端部を、前記打ち込み先端部と前記打ち込み基端部との間の本体部と同径又はそれよりも大径に形成してあるドリフトピンであって、
前記打ち込み基端部にピン引き抜き用金具に対する係止用凹部を設けてあるドリフトピン。
【請求項2】
前記係止用凹部には、前記ピン引き抜き用金具の先端部に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成され、
前記打ち込み基端部には、前記雌ネジ部の谷部の径よりも大きな拡径孔部を、前記雌ネジ部の入り口よりも外端部に設けてある請求項1に記載のドリフトピン。
【請求項3】
前記本体部には、その外周面における長手方向の一部に拡径方向に突出する凸部を多数設けた凹凸面部を形成してある請求項1または2に記載のドリフトピン。
【請求項4】
前記打ち込み基端部には、本体部の外径よりも大径の鍔部を設けてある請求項1~3のいずれか1項に記載のドリフトピン。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のドリフトピンは、少なくとも2種の複数のドリフトピンから成り、
前記複数のドリフトピンの内の第1ドリフトピンの前記凹凸面部よりも、第2ドリフトピンの前記凹凸面部の位置を、打ち込み先端部に近い位置に形成してあるドリフトピン。
【請求項6】
請求項3に記載のドリフトピンは、少なくとも2種の複数のドリフトピンから成り、
前記複数のドリフトピンの内の第1ドリフトピンの前記凹凸面部よりも、第2ドリフトピンの軸心方向における前記凹凸面部の形成域を、大きくしてあるドリフトピン。
【請求項7】
請求項3に記載のドリフトピンは、少なくとも2種の複数のドリフトピンから成り、
前記複数のドリフトピンの内の第1ドリフトピンの前記凹凸面部よりも、第2ドリフトピンの前記凹凸面部における前記凸部の突出度を大にしてあるドリフトピン。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載のドリフトピンを使った木材の再利用方法であって、前記一方の部材が木材であり、前記第1ドリフトピンを前記ピン挿入孔に打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具とが連結された第1連結状態から、前記ピン引き抜き用金具の先端部と前記係止用凹部とを係止連結して前記一方の部材から前記第1ドリフトピンを引き抜いて、前記第1部材と前記第2部材とを分離する解体状態にし、
その後、前記第1連結状態で使用していた前記一方の部材の端面部に形成された所定深さのスリット内に、再び連結金具の一部を差し込んだ後に、前記一方の部材の側面及び前記スリット内の前記連結金具の一部に形成されたピン挿入孔に、前記第2ドリフトピンを打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具とが連結する第2連結状態にするドリフトピンを使った木材の再利用方法。
【請求項9】
前記第1連結状態と前記第2連結状態とで前記ピン挿入孔の異なる開口部から前記ドリフトピンを打ち込む請求項8項に記載のドリフトピンを使った木材の再利用方法。
【請求項10】
前記ピン挿入孔は、その向きが鉛直方向成分を有する貫通孔であって、前記ドリフトピンの前記打ち込み基端部に本体部の外径よりも大径の鍔部を設けてあり、前記ピン挿入孔の両開口部のうち高い位置にある側に前記鍔部を位置させるように前記ドリフトピンを打ち込む請求項4に記載のドリフトピンを使った木材の再利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材と第2部材とを連結する連結金具の一部が、一方の部材の端面部に形成された所定深さのスリット内に差し込まれた状態で、前記一方の部材の側面及び前記スリット内の前記連結金具の一部に形成されたピン挿入孔に打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具とを連結可能なドリフトピン及びドリフトピンを使った木材の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば木造建築において、柱と梁との接合部や梁同士の接合部などにおいてドリフトピンが使用され、そのドリフトピンは、一般的には、その打ち込み先端部とは反対側の打ち込み基端部をハンマーなどでピン挿入孔に打ち込んで一方の部材と連結金具とを連結していた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の前記第1部材や第2部材が特に木材の場合、建物の組み立て後にその建物を別の場所に移築したり、又は、本来の建物とは異なった用途の建物に転用するために、一度解体して再建築するのに木材等の建築部材を再使用することは考えられていなかった。
そのために、ドリフトピンにおいても特別な改良はなされていなかった。
しかしながら、建築物が短期に使用され再び同等の建築物を別の場所などに移築したり、別の建物に転用する場合には、旧建築物の解体によって部材同士の連結部が破壊されることが多く、部材の再利用が困難で不経済な場合が多かった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、木材などの建築部材を再利用しやすくして、移築や別の用途の建物に転用して経済性を向上させやすくするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドリフトピンの第1の特徴構成は、第1部材と第2部材とを連結する連結金具の一部が、一方の部材の端面部に形成された所定深さのスリット内に差し込まれた状態で、前記一方の部材の側面及び前記スリット内の前記連結金具の一部に形成されたピン挿入孔に打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具とを連結可能なドリフトピンであって、打ち込み先端部とは反対側の打ち込み基端部に、ピン引き抜き用金具に対する係止用凹部を設けたところに
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、ドリフトピンの打ち込み先端部とは反対側の打ち込み基端部に、ピン引き抜き用金具に対する係止用凹部を設けたことにより、一方の部材に打ち込まれたドリフトピンを、ピン引き抜き用金具と係止用凹部との係合連結によって、引き抜き操作が簡単に行えるようになって、一方の部材の連結部を極力破壊せずに解体でき、そのために、建築部材を再使用しやすくなった。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記係止用凹部には、前記ピン引き抜き用金具の先端部に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成され、前記打ち込み基端部には、前記雌ネジ部の谷部の径よりも大きな拡径孔部を、前記雌ネジ部の入り口よりも外端部に設けたところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、ドリフトピンの打ち込み基端部は、一般的に、一方の部材に形成されたピン挿入孔にハンマーなどで打ち込まれるのであるが、前記係止用凹部において、雌ネジ部の入り口よりも外端部に設けられた拡径孔部が、雌ネジ部の谷部の径よりも大きく形成されているために、例えハンマーの打ち込み衝撃が大きくて打ち込み基端部が塑性変形しても、雌ネジ部の変形は防止でき、従って、建築物の解体時にピン引き抜き用金具との螺合連結に障害を与えることなく、ドリフトピンの引き抜き操作が良好にできる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記打ち込み先端部と前記打ち込み基端部との間の本体部には、その外周面における長手方向の一部に凹凸面部を形成しているところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、本体部の外周面における一部に形成してある凹凸面部によって、一方の部材との摩擦係数が上がって、一方の部材と連結金具との連結状態を、より安定した状態で維持できる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記打ち込み基端部には、本体部の外径よりも大径の鍔部を設けてある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、ドリフトピンが、一方の部材に例えば上下鉛直方向又は、上下斜め方向に穿設されたピン挿入孔に打ち込まれる場合には、一方の部材が特に木材の場合などに、長期にわたる乾燥や、建物に加わる振動などの外力により、ピン挿入孔との摩擦保持力が緩んで抜け出る虞があり、その場合に、前記鍔部がピン挿入孔からの抜けだしを防止でき、長期にわたる建築物の構造の安定化を保証しやすくできる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、ドリフトピンは、少なくとも2種の複数のドリフトピンから成り、前記複数のドリフトピンの内の第1ドリフトピンの前記凹凸面部よりも、第2ドリフトピンの前記凹凸面部の位置を、打ち込み先端部に近い位置に形成してある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、少なくとも2種の複数のドリフトピンから成り、前記複数のドリフトピンの内の第1ドリフトピンの前記凹凸面部よりも、第2ドリフトピンの前記凹凸面部の位置を、打ち込み先端部に近い位置に形成してあることにより、例えば、前記一方の部材の材質の違いにより第1ドリフトピンと第2ドリフトピンを使い分けたりできる。また、前記一方の部材を数回にわたって再利用する場合に、第1ドリフトピンの抜き取り後に第2ドリフトピンを利用することで、打ち込み先端部に近い位置に形成してある前記凹凸面部を拡径されていないピン挿入孔に圧入させて、部材の再利用におけるドリフトピンの保持力を維持することができる。
【0016】
本発明の第6の特徴構成は、ドリフトピンは、少なくとも2種の複数のドリフトピンから成り、前記複数のドリフトピンの内の第1ドリフトピンの前記凹凸面部よりも、第2ドリフトピンの軸心方向における前記凹凸面部の形成域を、大きくしてある。
【0017】
本発明の第6の特徴構成によれば、例えば、前記一方の部材の材質の違いにより第1ドリフトピンと第2ドリフトピンを使い分けたりできる。
つまり、一方の部材の材質が硬い物の場合には、第1ドリフトピンを使用することにより、ハンマーによるピン挿入孔への打ち込みが楽になると共に、柔らかい物の場合には、第2ドリフトピンを使用することにより、摩擦抵抗が大きくなって、打ち込み後のドリフトピンの抜けだしを防止しやすくなる。
また、前記一方の部材を数回にわたって再利用する場合に、第一、第二ドリフトピンを順次交換利用することで、部材の再利用におけるドリフトピンの保持力を維持することができる。
【0018】
本発明の第7の特徴構成は、ドリフトピンは、少なくとも2種の複数のドリフトピンから成り、前記複数のドリフトピンの内の第1ドリフトピンの前記凹凸面部よりも、第2ドリフトピンの前記凹凸面部における前記凸部の突出度を大にしてある。
【0019】
本発明の第7の特徴構成によれば、例えば、前記一方の部材の材質の違いにより第1ドリフトピンと第2ドリフトピンを使い分けたりできる。
つまり、一方の部材の材質が硬い物の場合には、第1ドリフトピンを使用することにより、ハンマーによるピン挿入孔への打ち込みが楽になると共に、柔らかい物の場合には、第2ドリフトピンを使用することで、前記凸部の突出度を大としてある(すなわち、前記凸部の最大外径を第1ドリフトピンよりも第2ドリフトピンで大としてある)ことにより摩擦抵抗が大きくなって、打ち込み後のドリフトピンの抜けだしを防止しやすくなる。
また、前記一方の部材を数回にわたって再利用する場合に、第一、第二ドリフトピンを順次交換利用することで、部材の再利用におけるドリフトピンの保持力を維持することができる。
【0020】
本発明の第8の特徴構成は、ドリフトピンを使った木材の再利用方法であって、前記一方の部材が木材であり、前記第1ドリフトピンを前記ピン挿入孔に打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具とが連結された第1連結状態から、前記ピン引き抜き用金具の先端部と前記係止用凹部とを係止連結して前記一方の部材から前記第1ドリフトピンを引き抜いて、前記第1部材と前記第2部材とを分離する解体状態にし、その後、前記第1連結状態で使用していた前記一方の部材の端面部に形成された所定深さのスリット内に、再び連結金具の一部を差し込んだ後に、前記一方の部材の側面及び前記スリット内の前記連結金具の一部に形成されたピン挿入孔に、前記第2ドリフトピンを打ち込んで前記一方の部材と前記連結金具とが連結する第2連結状態にする。
【0021】
本発明の第8の特徴構成によれば、ピン引き抜き用金具によって、一方の部材から建築物の構造連結部における破壊を防止しながら、ドリフトピンを簡単に引き抜くことができるために、構造物の各部材を再使用して第2連結状態にしやすくでき、経済性を向上させることができる。
そして、第1連結状態で使用した木材を再度使用して、ドリフトピンの打ち込みにより第2連結状態にする時に、解体状態にした後のピン挿通孔の内面は、第1連結状態の時に打ち込んだドリフトピンの引き抜き操作により、そのドリフトピンの凹凸面部により少し荒らされていたとしても、第2連結状態におけるドリフトピンの凹凸面部とピン挿入孔との係合力は強く確保され、再び第1部材と第2部材との連結状態は安定確保できる。
つまり、第1連結状態の時に第1ドリフトピンを使用し、その後の分離解体後の第2連結状態の時には、一方の部材のピン挿入孔は第1ドリフトピンの打ち込みにより拡径されていても、第2ドリフトピンを使用することにより、第2ドリフトピンとピン挿入孔との摩擦係合力は高く確保され、その他ために、一方の部材の再利用をしやすくできる。
従って、建築部材の再利用による経済性を向上することができる。
【0022】
本発明の第9の特徴構成は、前記第1連結状態と前記第2連結状態とで前記ピン挿入孔の異なる開口部から前記ドリフトピンを打ち込む。
【0023】
本発明の第9の特徴構成によれば、ピン挿入孔の内、第1連結状態の時に、ピン挿通孔の開口部から奥のドリフトピン打ち込み部分は、ドリフトピンにより拡径されたり、その内面が変形したりして、再度、ドリフトピンを打ち込んだ時には、ドリフトピンに対するピン挿入孔の摩擦保持力は、第1連結状態の時よりも低下する虞があるのに対し、前記第1連結状態と前記第2連結状態とで前記ピン挿入孔の異なる開口部から前記ドリフトピンを打ち込むと、前記凹凸面部の通過位置が重ならず、新たなピン挿入孔部分にドリフトピンを打ち込むのと同様のことができ、ドリフトピンに対するピン挿入孔の摩擦保持力は、高く確保できる。
そのために、建築部材の再利用にあたって、例えば、ピン挿入孔が貫通孔の場合に、その一方側の開口部からのドリフトピンの打ち込みと、他方側の開口部からのドリフトピンの打ち込みとを、夫々第1連結状態と第2連結状態とで2回使用すれば、合計で最低4回の建築部材の再利用ができる。
【0024】
本発明の第10の特徴構成は、前記ピン挿入孔は、その向きが鉛直方向成分を有する貫通孔であって、前記ドリフトピンの前記打ち込み基端部に本体部の外径よりも大径の鍔部を設けてあり、前記ピン挿入孔の両開口部のうち高い位置にある側に前記鍔部を位置させるように前記ドリフトピンを打ち込む。
【0025】
本発明の第10の特徴構成によれば、前記ピン挿入孔の両開口部のうち高い位置にある側に前記鍔部を位置させるように前記ドリフトピンを打ち込むことで、建物に振動などが加わったとしても、ピン挿入孔内で下方にドリフトピンが抜け落ちるのを防止できる。
そのために、ドリフトピンによる連結構造が安定して維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ドリフトピンを組み付ける前の分解状態の全体斜視図である。
【
図2】ドリフトピンを組み付けた使用状態の斜視図である。
【
図3】(a)は、ドリフトピンの一部縦断正面図で、(b)は、ドリフトピンの打ち込み基端部((a)におけるA-A部分)の一部縦断正面図である。
【
図4】ドリフトピンの夫々の正面図で、(a)は第1連結状態のドリフトピン、(b)は第2連結状態のドリフトピン、(c)は、別実施形態の第1連結状態のドリフトピン、(d)は別実施形態の第2連結状態のドリフトピンを示す。
【
図5】ピン引き抜き用金具を使用してドリフトピンを引き抜く使用手順を示す作用図で、(a)はドリフトピンに連結する前の状態、(b)はドリフトピンに連結した状態、(c)はピン引き抜き用金具のウェイト部材をスライドさせて引き抜く途中の状態、(d)はドリフトピンを引き抜いた状態を示す。
【
図6】(a)は、比較例のピン連結状態を示す平面図、(b)は、前記(a)のB-B縦断正面図である。
【
図7】(a)は、別実施形態のドリフトピンの一部縦断正面図で、(b)は、別実施形態のドリフトピンの打ち込み基端部((a)におけるC-C部分)の一部縦断正面図である。
【
図8】(a)は、別実施形態のドリフトピンを使用した平面図、(b)は、前記(a)のD-D縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図2に示すように、木造建築において、例えば、木材から成る柱1に対して木材製の梁2を連結する場合に、柱1に取り付ける板金製の連結金具3の一部である左右一対の側板3Aが、連結金具3の基端部3Bから突設されると共に、梁2の端面部に一対形成された所定深さのスリット4内に差し込まれた状態で、梁2の側面及びスリット4内の連結金具3の一対の側板3A夫々に形成されたピン挿入孔5に打ち込んで、梁2と連結金具3とを連結可能にするドリフトピン6を設けてある。
【0028】
連結金具3における柱1との連結は、連結金具3の基端部3B及び柱1夫々にボルト挿通孔7を形成し、そのボルト挿通孔7にワッシャ(図外)を介して挿通させたボルト9によって、柱1に連結金具3の基端部3Bを固定してある。
前記連結金具3の基端部3Bは、ボルト挿通孔7よりも大径で前記柱1に形成した第1座ぐり部10内に収容させていると共に、柱1における第1座ぐり部10とは反対側面には、ボルト頭9A又はナット12を内嵌収容する第2座ぐり部11も柱1に形成してある。
また、連結金具3における左右一対の側板3Aには、ドリフトピン6を係止して梁2を柱1に仮止め可能にするピン溝13が形成されており、そのために、梁2に予めドリフトピン6を打ち込んだ状態で、そのドリフトピン6を前記ピン溝13に係止することで、柱1に梁2を仮止めした状態で、別のピン挿入孔5にドリフトピン6を打ち込むと、柱1に梁2が固定される。
【0029】
[第1実施形態]
ドリフトピン6は、
図3(a)、(b)に示すように、先端部が丸くなっている金属製の棒状体から形成されており、その打ち込み先端部14とは反対側の打ち込み基端部15には、ピン引き抜き用金具16に対する係止用凹部17を設けてある。
つまり、打ち込み先端部14を、先端側ほど小径になるように形成すると共に、打ち込み先端部14とは反対側のハンマーによる直接打撃を与えるための打ち込み基端部15を、打ち込み先端部14と前記打ち込み基端部15との間の本体部25と同径又はそれよりも大径に形成してある。
【0030】
そして、
図1、
図2、
図3(a)、(b)に示すように、木材を再利用するために、ドリフトピン6の打ち込み先端部14とは反対側の打ち込み基端部15に、ピン引き抜き用金具16に対する係止用凹部17を設けてあり、ドリフトピン6をピン挿入孔5に打ち込んで一方の部材である梁2と連結金具3とが連結された第1連結状態から、ピン引き抜き用金具16の先端部と係止用凹部17とを係止連結して梁2からドリフトピン6を引き抜いて(
図5(a)~(d))、柱1と梁2とを分離する解体状態にし、その後、第1連結状態で使用していた梁2の端面部に形成された所定深さのスリット4内に、連結金具3の一部を差し込んだ後に、梁2の側面及びスリット4内の連結金具3の一部に形成されたピン挿入孔5に、ドリフトピン6を打ち込んで梁2と連結金具3とが連結する第2連結状態にする。
【0031】
前記係止用凹部17には、
図3(a)、(b)に示すように、雌ネジ部18を設けると共に、その雌ネジ部18よりも凹部入り口側の外端部には、雌ネジ部18の谷部の径よりも大きな拡径孔部19を設けてあり、ドリフトピン6を木材のピン挿入孔5にハンマーで打ち込む際に、例えハンマーの打ち込み衝撃が大きくて打ち込み基端部15が塑性変形しても、雌ネジ部18の変形は防止でき、従って建築物の解体時に、ピン引き抜き用金具16の先端部に形成する雄ネジ部20と、ドリフトピン6の打ち込み基端部15に設けた雌ネジ部18との螺合連結作業に障害を与えることなく、ドリフトピン6の引き抜き操作が良好にできる。
尚、前記ピン引き抜き用金具16は、
図5に示すように、先端部に雄ネジ部20を設けた棒状の本体22に、スライド自在なウェイト部材21を設け、そのウェイト部材21が本体22の基端側一端部と雄ネジ部20よりも手前の他端部との2箇所夫々に設けた一対のストッパー部23との間でスライドさせて、雄ネジ部20とは反対側のストッパー部に衝撃力を与えることで、雄ネジ部20に対して引き抜き力を付与できる所謂スライドハンマーと一般的に称するものから構成してある。
【0032】
また、
図3(a)、(b)に示すように、ドリフトピン6の打ち込み基端部15の外周縁部には、面取り部を設け、ハンマーによる打ち込み衝撃によっても、塑性変形によって本体部25よりも外径が大きくなるのを防止できるようにしてある。
【0033】
前記ドリフトピン6の外周面には、木材におけるピン挿通孔との連結力を上げるために、その外周面における長手方向の一部に、例えばローレット加工などの凹凸面部26を形成してある(
図4(a)、(c))。
そして、第1連結状態で打ち込んだドリフトピン6を引き抜いて解体状態にした後に、再びドリフトピン6を打ち込んで第2連結状態にして建築材料の再利用をするために、第2連結状態で使用するドリフトピン6は、ローレット加工の部分を第1連結状態で使用するものとは異ならせてある(
図4(b)、(d))。
つまり、ドリフトピン6の内、第1連結状態で使用する第1ドリフトピン6Aの凹凸面部26の位置よりも(
図4(a))、第2連結状態で使用する第2ドリフトピン6Bの凹凸面部26の位置を、打ち込み先端部14に近い位置に設けてある(
図4(b))。
従って、第1連結状態で使用する第1ドリフトピン6Aの凹凸面部26の位置よりも、第2連結状態で使用する第2ドリフトピン6Bの凹凸面部26の位置を打ち込み先端部14に近い位置に設けておくことにより、第1連結状態で使用した第1ドリフトピン6Aを引き抜いた後に、第1ドリフトピン6Aの凹凸面部26によって形成されたピン挿入孔5の内面の粗面部とは異なって、凹凸面部26によって傷ついていないピン挿入孔部分に、第2連結状態を形成する第2ドリフトピン6Bの凹凸面部26が打ち込まれることになり、建築部材の再利用時における連結状態をより強固にできる。
【0034】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
なお、以下の他の実施形態において、上記実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
〈1〉 連結する対象物が、木材以外の材料の連結構造に使われるドリフトピン6であってもよい。
〈2〉 前記係止用凹部17は、ピン引き抜き用金具16と連結するために雌ネジ部18を設けたが、雌ネジ部18以外にピン引き抜き用金具16と連結可能な構造であれば、他の構造であって、単純な構造の係止機構があってもよい。
〈3〉 前記複数のドリフトピン6の内の第1ドリフトピン6Aの凹凸面部26よりも、第2ドリフトピン6Bの凹凸面部26における凸部の突出度を大にしてあってもよい。
〈4〉 前記凹凸面部26は、
図4の(c)、(d)に示すように、第1連結状態で打ち込む第1ドリフトピン6Aに設ける長さ(
図4(c))よりも第2連結状態で打ち込む第2ドリフトピン6Bに設ける長さの方(
図4(d))を長く形成するものであってもよい。
〈5〉 前記凹凸面部26は、ローレット加工以外に、螺旋溝状や、多数のイボ状の突起であったり、複数本のリング溝や、リング状の凸部であってもよい。
〈6〉 柱1に連結金具3を取り付けた状態で、連結金具3の側板3Aを梁2の端面部に形成のスリット4内に差し込まれた状態でドリフトピン6によって、柱1と梁2とを連結する構造を実施例として説明しましたが、互いに延設方向が異なる梁2と梁2とを連結する構造にドリフトピン6が使用される例であってもよい。
【0035】
[第2実施形態]
図6(a)、(b)に示すように、床面を支持する梁2同士の連結構造等にドリフトピン6が使用される場合には、ドリフトピン6が上下方向、又は、鉛直方向成分を有するピン挿入孔5に打ち込まれることがあり、この場合には、通常の棒状のドリフトピン6では、ピン挿入孔5が上下貫通孔であると、建物に作用する振動などの外的要因により、下方に抜け出ることがある。これに対し、
図7(a)、(b)、
図8(a)、(b)に示すように、ドリフトピン6の打ち込み基端部15に本体部25の外径よりも大径の鍔部27を設けたドリフトピン6を使い、ピン挿入孔5の両開口部の内の高い位置にある側に鍔部27が位置するようにドリフトピン6を打ち込んで使用する。
【0036】
また、このドリフトピン6の係止用凹部17において、前述と同様、
図7(a)、(b)に示すように、雌ネジ部18を設けると共に、その雌ネジ部18よりも凹部入り口側の外端部には、雌ネジ部18の谷部の径よりも大きな拡径孔部19を設けてあり、ドリフトピン6を木材のピン挿入孔5にハンマーで打ち込む際に、例えハンマーの打ち込み衝撃が大きくて打ち込み基端部15が塑性変形しても、雌ネジ部18の変形は防止でき、従って建築物の解体時に(
図5(a)~(d))、ピン引き抜き用金具16の先端部に形成する雄ネジ部20と、ドリフトピン6の打ち込み基端部15に設けた雌ネジ部18との螺合連結作業に障害を与えることなく、ドリフトピン6の引き抜き操作が良好にできる。
【0037】
[ドリフトピンの別の使用方法]
前記第1連結状態と第2連結状態とでピン挿入孔5の異なる開口部からドリフトピン6を打ち込む。
つまり、ピン挿入孔5の内、第1連結状態の時に、ピン挿通孔の開口部から奥のドリフトピン打ち込み部分は、ドリフトピン6により拡径されたり、その内面が変形したりして、再度、ドリフトピン6を打ち込んだ時には、ドリフトピン6に対するピン挿入孔5の摩擦保持力は、第1連結状態の時よりも低下する虞があるのに対し、第1連結状態と第2連結状態とでピン挿入孔5の異なる開口部からドリフトピン6を打ち込むと、新たなピン挿入孔部分にドリフトピン6を打ち込むのと同様のことができ、ドリフトピン6に対するピン挿入孔5の摩擦保持力は高く確保できる。
そのために、建築部材の再利用にあたって、例えば、ピン挿入孔5が貫通孔の場合に、その一方側の開口部からのドリフトピン6の打ち込みと、他方側の開口部からのドリフトピン6の打ち込みとを、夫々第1連結状態と第2連結状態とで2回使用すれば、合計で最低4回の建築部材の再利用ができる。
【0038】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
3 連結金具
4 スリット
5 ピン挿入孔
6 ドリフトピン
6A 第1ドリフトピン
6B 第2ドリフトピン
14 打ち込み先端部
15 打ち込み基端部
16 ピン引き抜き用金具
17 係止用凹部
25 本体部
26 凹凸面部
27 鍔部