(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090227
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】吸引車
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20230622BHJP
F04F 5/44 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B60P3/00 Q
F04F5/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205091
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】中津 俊介
【テーマコード(参考)】
3H079
【Fターム(参考)】
3H079AA18
3H079BB01
3H079CC02
3H079DD02
3H079DD22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】真空ポンプの封入水温度上昇に伴うキャビテーションの発生を抑制してレシーバタンクの負圧を良好に維持し、作業性を高めることのできる吸引車を提供する。
【解決手段】レシーバタンク5と水封式真空ポンプ25とを備える吸引車に関し、レシーバタンク5と連通する吸引管路と、大気を取り込み可能な駆動エア取込管路200と、吸引管路が吸込エア用接続ポート103に接続され、駆動エア取込管路200が駆動エア用接続ポート101に接続され、水封式真空ポンプ25の吸込口25aが吐出ポート102に連通されたエジェクタ100と、吸引管路のエジェクタ100より上流側と、上記吸込口25aとを連通するバイパス管路300と、レシーバタンク5側から上記吸込口25a側へのエアの流れを許容する一方、上記吸込口25a側からレシーバタンク5側へのエアの逆流を防止するようにバイパス管路300に設けられた逆止弁400と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収対象物を回収するレシーバタンクと、前記レシーバタンクを加減圧するための真空ポンプとを備える吸引車であって、
前記レシーバタンクと連通可能な吸引管路と、
大気圧または大気圧を超える圧力のエアを取り込み可能に設けられた駆動エア取込管路と、
前記吸引管路が吸込エア用接続ポートに接続され、前記駆動エア取込管路が駆動エア用接続ポートに接続され、前記真空ポンプの吸込口が吐出ポートに連通されたエジェクタと、
前記吸引管路の前記エジェクタより上流側と、前記真空ポンプの吸込口とを連通するバイパス管路と、
前記レシーバタンク側から前記真空ポンプの吸込口側へのエアの流れを許容する一方、前記真空ポンプの吸込口側から前記レシーバタンク側へのエアの逆流を防止するように、前記バイパス管路に設けられた逆止弁と、
を備えることを特徴とする吸引車。
【請求項2】
請求項1に記載の吸引車において、
前記逆止弁は、ヒンジと、該ヒンジを介して揺動自在に取り付けられた弁体とを有するスイング式逆止弁であることを特徴とする吸引車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸引車において、
前記真空ポンプの作動により前記レシーバタンクが減圧される時にエアを排気する吸排気口に排気音を消音するサイレンサが設置されており、
前記駆動エア取込管路は、第1駆動エア取込管路と、第2駆動エア取込管路と、前記第1駆動エア取込管路の下流側と前記第2駆動エア取込管路の下流側とが合流して前記エジェクタの駆動エア用接続ポートに接続された合流管路と、を有し、
前記第1駆動エア取込管路の上流側は、前記サイレンサにおいて生じる水分を大気とともに吸い込み可能なように配置されていることを特徴とする吸引車。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の吸引車において、
前記真空ポンプの吸込口と前記レシーバタンクとを連通するとともに、前記真空ポンプの吐出口と、該吐出口から吐出されるエアを排気する排気口とを連通する吸引切換状態と、前記真空ポンプの吐出口と前記レシーバタンクとを連通するとともに、前記真空ポンプの吸込口と、該吸込口に吸込まれるエアを導入する吸気口とを連通する加圧切換状態とに相互に切換可能な四方切換弁を備え、
前記エジェクタおよび前記バイパス管路は、前記四方切換弁と前記真空ポンプの吸込口との間に設けられていることを特徴とする吸引車。
【請求項5】
請求項1または2に記載の吸引車において、
前記駆動エア取込管路は、第1駆動エア取込管路と、第2駆動エア取込管路と、前記第1駆動エア取込管路の下流側と前記第2駆動エア取込管路の下流側とが合流して前記エジェクタの駆動エア用接続ポートに接続された合流管路と、を有し、
前記第2駆動エア取込管路の上流側には、開度調節可能な手動弁が設けられており、
前記手動弁は、前記レシーバタンクを加減圧する際に操作される操作パネルに隣接して設けられていることを特徴とする吸引車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収対象物を回収するレシーバタンクを真空ポンプによって加減圧する吸引車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設作業現場や下水処理場等で広く用いられ、真空ポンプを用いてレシーバタンクを減圧することにより、汚泥、土砂、廃液等の回収対象物をレシーバタンクへと案内して回収し、回収した回収対象物を処理場へと運搬する吸引車が知られている。このような吸引車では、ルーツ式と水封式の2種類の真空ポンプが状況に応じて使い分けられている。
【0003】
ルーツ式真空ポンプは、ケーシングの中に二葉または三葉のロータが2本入っており、2本のロータを互いに反対方向に同じ周期で回転させるものである。ロータとケーシングは、接触することなく、わずかな隙間を保ちながら回転する。これによりロータの2つの葉端とケーシング内壁で囲まれた容積を吸込口から吐出口に移送し、負圧を発生させるようになっている。ルーツ式真空ポンプには、安価、封入水は少量で運転可能、低動力で運転可能といった利点がある。ルーツ式真空ポンプを搭載した車載用の吸引装置や吸引車は、従来、様々な構造のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された吸引装置は、直列に連通連結された複数のルーツ式真空ポンプと、ルーツ式真空ポンプを通過した気体中の塵埃を捕集する湿式集塵槽とを備え、湿式集塵槽内の水を最上流側のルーツ式真空ポンプに導入する冷却水導入経路を設けている。
【0004】
一方、水封式真空ポンプは、
図8に示すような構造をしている。
図8の水封式真空ポンプ500では、円筒形のケーシング501に水を入れ、インペラ502を偏心させて回転させると、封入水506が遠心力によってケーシング501の内筒壁に押し付けられるように流れて水還流503を形成し、その内周部に断面三日月状の空間が生じるようになっている。この空間において、隣り合った2枚の羽根と水還流503の内面とによって形成される独立した気室は、インペラ502の回転と共に拡大と縮小をくり返すので、この気室の側面の適所に吸込口504と吐出口505を開けておけば、水還流503をピストン代わりとする往復式吸引機の回転連続化が可能となる。つまり、水封式真空ポンプ500は水を環状に回転させることで負圧を発生させる真空ポンプである。このように水がポンプの一部を形成するため、静粛性に優れ、金属接触がなく油不要など、多くの利点がある。また、ケーシング501とインペラ502との間に大きな隙間があるため異物にも強く、さらに、水が無くなるとポンプとして動作しなくなることから焼付きしにくいといった特徴もある。
【0005】
水封式真空ポンプを搭載した車載用の吸引装置や吸引車は、従来、様々な構造のものが開発されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示された吸引車は、回収対象物を吸引回収するために車体に搭載されたレシーバタンク(ホッパ)と、レシーバタンク内から流れる汚れた空気を清浄化する集塵器と、当該集塵器からの空気と共に吸引された微粉塵を封入水によって捕捉する湿式集塵槽を形成する水封式真空ポンプと、当該水封式真空ポンプを通って流れる空気の除塵および消音を行なうサイレンサと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-132942号公報
【特許文献2】特開2003-237906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の真空ポンプにあっては、ケーシングと封入水との間で生じる摩擦熱や特に高真空域におけるポンプ負荷の増大に伴う発熱などによって封入水温度が次第に上昇し、封入水中の蒸気成分が増えてキャビテーションが発生しやすくなる。また、真空ポンプの減圧開始時等と比較して減圧が進んだ高真空域になることによっても、封入水中の蒸気成分が増えてキャビテーションが発生しやすくなる。このキャビテーションが一要因となり、レシーバタンクの特に高真空域での負圧を定常に維持することは容易ではないのが現状である。その一方、高真空域での負圧を良好に維持し吸引車による作業性を高めたい、という強い市場要求もある。上記課題は、封入水を大量に必要とする水封式真空ポンプにおいては、特に顕著なものとなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、真空ポンプの封入水温度上昇に伴うキャビテーションの発生を抑制してレシーバタンクの負圧を良好に維持し、以って、作業性を高めることのできる吸引車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る吸引車は、回収対象物を回収するレシーバタンクと、前記レシーバタンクを加減圧するための真空ポンプとを備える吸引車であって、前記レシーバタンクと連通可能な吸引管路と、大気圧または大気圧を超える圧力のエアを取り込み可能に設けられた駆動エア取込管路と、前記吸引管路が吸込エア用接続ポートに接続され、前記駆動エア取込管路が駆動エア用接続ポートに接続され、前記真空ポンプの吸込口が吐出ポートに連通されたエジェクタと、前記吸引管路の前記エジェクタより上流側と、前記真空ポンプの吸込口とを連通するバイパス管路と、前記レシーバタンク側から前記真空ポンプの吸込口側へのエアの流れを許容する一方、前記真空ポンプの吸込口側から前記レシーバタンク側へのエアの逆流を防止するように、前記バイパス管路に設けられた逆止弁とを備える。
【0010】
本発明の第1態様に係る吸引車によれば、エジェクタの駆動エアが真空ポンプの吸込口付近に導入されて駆動エアが膨張して圧力が下がるときに当該エアの温度が下がるので、真空ポンプの封入水の温度を低下させることができる。また、減圧が進んで高真空域となっている真空ポンプの吸込口付近よりも圧力の高い駆動エアの働きで吸込口付近の負圧が高くなりすぎないようにすることができる。これにより、キャビテーションの発生を抑制することができる。
【0011】
また、レシーバタンクの減圧開始時等は、バイパス管路の逆止弁より上流側が、バイパス管路の逆止弁より下流側と比較して高圧になって逆止弁が開き、レシーバタンク内のエアが主にバイパス管路を通じて真空ポンプに吸引される。これにより、減圧開始時等にレシーバタンク内に大量に存在しているエアを速やかに真空ポンプに送ることができるので、速やかにレシーバタンク内の圧力を高真空域に到達させることができる。また、レシーバタンクの真空度がある程度高まると、エジェクタによって導入される駆動エアの圧力と当該駆動エアの圧力よりも負圧が高まるレシーバタンク内のエア圧力との差が大きくなる。そのため、バイパス管路の逆止弁より上流側が、バイパス管路の逆止弁より下流側と比較して低圧になって(負圧が高まって)逆止弁が閉じ、レシーバタンク内のエアは、エジェクタのみを通じて、駆動エア取り込み管路から取り込まれる駆動エアとともに、真空ポンプに吸引される。これにより、レシーバタンクの減圧開始時等は、レシーバタンク内に大量に存在しているエアを速やかに外部に排出する一方、レシーバタンクの真空度がある程度高まってからはエジェクタによって導入される駆動エアによるキャビテーションの抑制の効果を最大限に利用することができるので、効率の良い吸引作業が可能となる。
【0012】
また、本発明の第1態様に係る吸引車によれば、アクチュエータによる駆動機構のない逆止弁を用いて、レシーバタンクの減圧開始のときとレシーバタンクの真空度がある程度高まったときとで変化する逆止弁の上流側と下流側の圧力差の変化に基づいて、上記のバイパス管路の開閉動作を自動的に的確なタイミングで行うことができる。
【0013】
本発明の第2態様に係る吸引車は、第1態様に係る吸引車において、前記逆止弁は、ヒンジと、該ヒンジを介して揺動自在に取り付けられた弁体とを有するスイング式逆止弁である。
【0014】
本発明の第3態様に係る吸引車は、第1態様または第2態様に係る吸引車において、前記真空ポンプの作動により前記レシーバタンクが減圧される時にエアを排気する吸排気口に排気音を消音するサイレンサが設置されており、前記駆動エア取込管路は、第1駆動エア取込管路と、第2駆動エア取込管路と、前記第1駆動エア取込管路の下流側と前記第2駆動エア取込管路の下流側とが合流して前記エジェクタの駆動エア用接続ポートに接続された合流管路と、を有し、前記第1駆動エア取込管路の上流側は、前記サイレンサにおいて生じる水分を大気とともに吸い込み可能なように配置されている。
【0015】
本発明の第4態様に係る吸引車は、第1~第3の何れか1つの態様に係る吸引車において、前記真空ポンプの吸込口と前記レシーバタンクとを連通するとともに、前記真空ポンプの吐出口と吸排気口とを連通する吸引切換状態と、前記真空ポンプの吐出口と前記レシーバタンクとを連通するとともに、前記真空ポンプの吸込口と前記吸排気口とを連通する加圧切換状態とに相互に切換可能な四方切換弁を備え、前記エジェクタおよび前記バイパス管路は、前記四方切換弁と前記真空ポンプの吸込口との間に設けられている。
【0016】
本発明の第5態様に係る吸引車は、第1態様または第2態様に係る吸引車において、前記駆動エア取込管路は、第1駆動エア取込管路と、第2駆動エア取込管路と、前記第1駆動エア取込管路の下流側と前記第2駆動エア取込管路の下流側とが合流して前記エジェクタの駆動エア用接続ポートに接続された合流管路と、を有し、前記第2駆動エア取込管路の上流側には、開度調節可能な手動弁が設けられており、前記手動弁は、前記レシーバタンクを加減圧する際に操作される操作パネルに隣接して設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、真空ポンプの封入水の温度の上昇に伴うキャビテーションの発生を抑制しつつ、レシーバタンクの負圧を良好に維持できる。またレシーバタンクの減圧開始時等は、レシーバタンク内に存在しているエアを速やかに外部に排出する一方、レシーバタンクの真空度がある程度高まってからはエジェクタによって導入される駆動エアによるキャビテーションの抑制の効果を最大限に利用することができる。これにより、作業性を高めることのできる吸引車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る吸引車の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る吸引車の平面図である。
【
図3】
図1の吸引車におけるレシーバタンク減圧時のエアの流れを示す図である。
【
図4】
図1の吸引車におけるレシーバタンク加圧時のエアの流れを示す図である。
【
図5】
図3および
図4に示す駆動エア取込管路、バイパス管路、および逆止弁の説明図である。
【
図6】
図5の逆止弁を示す図であり、
図6(a)は逆止弁の正面図、
図6(b)は
図5(a)のA-A線断面図である。
【
図7】
図5の駆動エア取込管路の開度調節に用いる操作レバーおよび操作パネルを示す図である。
【
図8】水封式真空ポンプの動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
図1および
図2に示すように、吸引車1の車台3上のサブフレーム4上に吸引装置2が設けられている。具体的には、サブフレーム4の後部に、汚泥、土砂、廃液等の回収対象物を回収するレシーバタンク5が搭載されている。レシーバタンク5は、例えば、後端開口を有する断面円形容器状のタンク本体5aと、この後端開口を開閉するテールゲート5cとを有する。テールゲート5cは、例えば、タンク本体5aの上部後端部にヒンジピン5bを介して回動自在に軸支されている。タンク本体5aとテールゲート5cとの間には、開閉シリンダ5dが設けられており、この開閉シリンダ5dを伸縮操作することで、テールゲート5cがタンク本体5aの後端開口を開閉可能となっている。
テールゲート5cの下部には、回収対象物の吸引口となる開閉弁付の吸引口8と、回収対象物の排出口となる開閉弁付の排出口9とが設けられている。
【0020】
そして、レシーバタンク5は、サブフレーム4の後方に設けた傾倒軸10を介してサブフレーム4に対して傾倒可能に軸支されている。サブフレーム4とレシーバタンク5との間には、傾倒シリンダ11が設けられており、傾倒シリンダ11を伸縮操作することで、レシーバタンク5が傾倒軸10の周りに起立回動または倒伏回動するようになっている。
【0021】
吸引装置2がレシーバタンク5内に回収対象物を吸引し回収する場合、レシーバタンク5内を減圧し、吸引口8に接続した図示しない吸引ホースを通じて外部からレシーバタンク5内に回収対象物を吸引するようになっている。一方、吸引装置2でレシーバタンク5内の回収対象物を例えば汚泥処理場等に排出する場合、レシーバタンク5内を加圧し、排出口9に接続した図示しない排出ホースを通じてレシーバタンク5内の回収対象物を外部へ排出するようになっている。また、テールゲート5cを開いてレシーバタンク5を起立回動させることによって、レシーバタンク5内の回収対象物を排出することも可能となっている。
【0022】
また、運転室13とレシーバタンク5との間のサブフレーム4上には、レシーバタンク5内を加減圧し、エアの流れを発生させる水封式真空ポンプ25(
図2)が設けられている。詳しくは図示しないが、水封式真空ポンプ25は、吸引車1のPTO(パワーテイクオフ)のドライブシャフトを介して連結された図示しないエンジンの駆動力によって回転駆動されるようになっている。この水封式真空ポンプ25の周辺には、水封式真空ポンプ25に接続された配管類、各種バルブ、レシーバタンク5を加減圧する際に操作される操作パネル15等が配置されている。
【0023】
図3および
図4に示すように、吸引装置2は、1次キャッチャとしてのレシーバタンク5、サイクロンよりなる2次キャッチャ20および3次キャッチャ21、気水分離器兼水タンクよりなる4次キャッチャ22、エア切換式四方弁24(以下、「四方切換弁」という。)、エジェクタ100、水封式真空ポンプ25等を有しており、これらが金属製丸鋼管等からなる配管を介して接続されて、レシーバタンク5を加減圧できるようになっている。本実施形態では、3次キャッチャ21、4次キャッチャ22および吸排気口を内包したサイレンサ23が一体に設けられている。これらの機器は、レシーバタンク加減圧配管7により接続されている。尚、上記吸排気口は、レシーバタンク5が減圧されるとき排気口となり、レシーバタンク5が加圧されるとき吸気口となる。
【0024】
レシーバタンク5と2次キャッチャ20とが第1配管7aにより接続され、2次キャッチャ20と3次キャッチャ21とが第2配管7bにより接続され、3次キャッチャ21と四方切換弁24の第1ポートaとが第3配管7cにより接続され、四方切換弁24の第2ポートbとエジェクタ100の吸込エア用接続ポート103とが第4配管7dにより接続され、4次キャッチャ22と四方切換弁24の第3ポートcとが第5配管7eにより接続され、サイレンサ23と四方切換弁24の第4ポートdとが第6配管7fにより接続されている。また、第4配管7dから分岐して水封式真空ポンプ25の吸込口25aに接続されるバイパス管路300が設けられている。また、バイパス管路300とエジェクタ100の吐出ポート102とが第8配管7hにより接続されている。尚、エジェクタ100は、駆動エアを取り込む駆動エア用接続ポート101、駆動エア用接続ポート101から取り込んだ駆動エアを吐出する吐出ポート102、駆動エアの流れによって内部に引き起こされる圧力低下を利用して吸引対象エア(レシーバタンク5内のエア)を吸い込む吸込エア用接続ポート103を有する公知の技術を適用できる。
【0025】
レシーバタンク5を減圧する場合、四方切換弁24を吸引切換状態にして水封式真空ポンプ25を駆動する。四方切換弁24が吸引切換状態に切換えられているとき、第1ポートaと第2ポートbが連通するとともに、第3ポートcと第4ポートdが連通する。その結果、
図3に示すように、レシーバタンク5→第1配管7a→2次キャッチャ20→第2配管7b→3次キャッチャ21→第3配管7c→四方切換弁24→第4配管7d→エジェクタ100、第8配管7hおよびバイパス管路300→水封式真空ポンプ25の吸込口25aというエアの流れが形成されるとともに、水封式真空ポンプ25の吐出口25b→第7配管7g→4次キャッチャ22→四方切換弁24→サイレンサ23(サイレンサ23に内包された吸排気口)というエアの流れが形成され、レシーバタンク5のエアがサイレンサ23から排気される。これにより、レシーバタンク内が次第に減圧されていく。
【0026】
一方、レシーバタンク5を加圧する場合、四方切換弁24を加圧切換状態にして水封式真空ポンプ25を駆動する。四方切換弁24が加圧切換状態に切換えられているとき、第1ポートaと第3ポートcが連通するとともに、第2ポートbと第4ポートdが連通する。その結果、
図4に示すように、水封式真空ポンプ25の吐出口25b→第7配管7g→4次キャッチャ22→第5配管7e→四方切換弁24→第3配管7c→3次キャッチャ21→第2配管7b→2次キャッチャ20→第1配管7a→レシーバタンク5というエアの流れが形成されるとともに、サイレンサ23(サイレンサ23に内包された吸排気口)→第6配管7f→四方切換弁24→第4配管7d→エジェクタ100、第8配管7hおよびバイパス管路300→水封式真空ポンプ25の吸込口25aというエアの流れが形成される。これにより、サイレンサ23から取り込まれたエアがレシーバタンク5に送られてレシーバタンク5内が次第に加圧されていく。
【0027】
すなわち、四方切換弁24を吸引切換状態に切り換えることにより、水封式真空ポンプ25の吸込口25aとレシーバタンク5とを連通するとともに、水封式真空ポンプ25の吐出口25bとサイレンサ23とを連通する。他方、四方切換弁24を加圧切換状態に切換えることにより、水封式真空ポンプ25の吐出口25bとレシーバタンク5とを連通するとともに、水封式真空ポンプ25の吸込口25aとサイレンサ23とを連通する。
【0028】
エジェクタ100およびバイパス菅路300は、四方切換弁24と水封式真空ポンプ25の吸込口25aとの間に設けられているので、四方切換弁24が吸引切換状態と加圧切換状態の何れにあっても、エジェクタ100およびバイパス菅路300内を流れるエアの向きを同じ方向とすることができる。
【0029】
吸引装置2は、
図3ないし
図5に示すように、第1駆動エア取込管路201、第2駆動エア取込管路202および合流管路203を備えている。第1駆動エア取込管路201は、サイレンサ23の内部における水の集まりやすい位置に大気取込口を有し、サイレンサ23内部に集まった水を大気とともに吸込み可能となっている。
【0030】
第2駆動エア取込管路202は、
図1及び
図7に示すように、レシーバタンク5を加減圧する際に操作される操作パネル15に隣接する位置に大気取込口202aを有している。また、第2駆動エア取込管路202の大気取込口202a近傍には開度調節可能な手動弁204が設けられており、手動弁204を操作するための操作レバー204aが操作パネル15に隣接する配置となっている。
【0031】
合流管路203は、第1駆動エア取込管路201の下流側と第2駆動エア取込管路202の下流側とが合流してなる管路であり、この合流管路203の下流側はエジェクタ100の駆動エア用接続ポート101に接続されている。
【0032】
バイパス管路300は、
図5に示す例では、符号Aが示す範囲に相当する。バイパス管路300はエジェクタ100より上流側にある第4配管7dと水封式真空ポンプ25の吸込口25aとを連通している。バイパス管路300は、上流側から鉛直下方に延びて水平方向に向きを変える第1バイパス配管301と、下流側から鉛直上向に延びて水平方向に向きを変える第2バイパス配管302とを有し、第1バイパス配管301の下流端と第2バイパス配管302の上流端は、互いにフランジ接合されている。接合された第1バイパス配管301および第2バイパス配管302は、略S字状をなしている。
【0033】
バイパス管路300は、エジェクタ100内部のエア通路よりも格段に大きな配管径を有し、エジェクタ100内部に比べ、流路抵抗が格段に小さくなっている。尚、第2バイパス配管302の配管径は第1バイパス配管301の配管径よりも大きく、かつ、第1バイパス配管301の内側底面部と第2バイパス配管302の内側底面部とが一致するように位置合わせされている。このため、
図5に示すように、第1バイパス配管301の中心線C1と第2バイパス配管302の中心線C2とが互いに上下にずれている。
【0034】
それぞれ水平方向を向いた第1バイパス配管301の下流端部と、第2バイパス配管302の上流端部との間(以下「バイパス管路300の水平部」ともいう。)には、逆止弁400が設けられている。本実施形態では、逆止弁400として、ヒンジ402と、ヒンジ402を介して揺動自在に取り付けられた弁体403とを有するスイング式逆止弁が設けられている。スイング式逆止弁は、例えば
図6(a)および
図6(b)に示すように、円環状の弁座401と、弁座401の上部に設けられたヒンジ402と、ヒンジ402を介して揺動自在に軸支された円盤状の弁体403とを有する。円盤状の弁体403は自重でその先端とヒンジ402とを結ぶ直線が鉛直方向を向くように垂下されるようになっている。スイング式の逆止弁400は、弁体403が鉛直方向を向いたときに弁体403が閉じた状態になるように、弁座401の主面を鉛直方向に向けて配設される。
【0035】
逆止弁400は、弁座401における周縁部が第1バイパス配管301のフランジ部301aと第2バイパス配管302のフランジ部302aとに挟持されている。逆止弁400の弁体403は、レシーバタンク5側から水封式真空ポンプ25の吸込口25a側へ流れるエアによって開弁し、水封式真空ポンプ25の吸込口25a側からレシーバタンク5側へ流れるエアによっては管路を閉塞する。すなわち、逆止弁400は、レシーバタンク5側から水封式真空ポンプ25の吸込口25a側へのエアの流れを許容する一方、水封式真空ポンプ25の吸込口25a側からレシーバタンク5側へのエアの逆流を防止するように設けられている。尚、
図6(a)に示すように、弁座401の開口の中心線C3は、第2バイパス配管302の中心線C2よりも下方に位置している。
【0036】
尚、弁座401と第1バイパス配管301のフランジ部301aとの間ならびに弁座401と第2バイパス配管302のフランジ部302aとの間には、エア漏れを防止するために、リング状のシール材が介設されている。
【0037】
次いで、吸引装置2の動作について説明する。
【0038】
まず、吸引車1の走行を停止した状態で、運転室13等に設けられたPTO(パワーテイクオフ)スイッチをオンにする。すると、車両の走行用エンジンの駆動力が水封式真空ポンプ25に供給されるようになる。
【0039】
次いで、吸引開始のために、作業者が操作パネル15の吸引ボタン15aを押す。すると、
図3に示すように四方切換弁24が切り換わり、水封式真空ポンプ25の作動と共に、第1配管7a、2次キャッチャ20、第2配管7b、3次キャッチャ21、第3配管7c、四方切換弁24、第4配管7d、バイパス管路300(エジェクタ100および第8配管7h)を介して、レシーバタンク5内のエアが水封式真空ポンプ25に吸引される。その結果、図示しない吸引ホースおよび吸引口8を通じてレシーバタンク5に回収対象物が吸引回収される。
【0040】
水封式真空ポンプ25に吸い込まれたエアは、吐出口25bから吐出され、4次キャッチャ22、四方切換弁24、およびサイレンサ23(サイレンサ23が内包する吸排気口)を介して外部に排気される。
【0041】
尚、吸引切換状態から中正に切り換えるときには、作業者が操作パネル15の中正ボタン15bを押す。すると、四方切換弁24が中正切換状態に切り換わる。また、中正切換状態から加圧切換状態に切り換えるときには、作業者が操作パネル15の加圧ボタン15cを押す。すると、四方切換弁24が加圧切換状態に切り換わる。
【0042】
レシーバタンク5の減圧開始時等においては、レシーバタンク5から多量のエアが吸引され、第1配管7a、2次キャッチャ20、第2配管7b、3次キャッチャ21、第3配管7c、四方切換弁24および第4配管7dを介してエジェクタ100にエアが吸い込まれる。同時に、エジェクタ100よりバイパス管路300の方が格段に流路抵抗が小さいことから、逆止弁400の弁体403は、高圧側となるレシーバタンク5側から低圧側となる水封式真空ポンプ25の吸込口25a側へ流れるエアによって押し開けられる。その結果、水封式真空ポンプ25に吸込まれるエアの大部分がバイパス管路300を経由することとなる。このように、レシーバタンク5の減圧開始後、レシーバタンク5内の負圧が十分に高まるまでの間、レシーバタンク5からエジェクタ100を迂回するバイパス管路300を通じて大流量のエアが吸引され、速やかにレシーバタンク5内の圧力を高真空域に到達させることができる。
【0043】
その後、レシーバタンク5内の負圧がある程度高まると、水封式真空ポンプ25の吸い込むエア量が減って、逆止弁400の弁体403は、流れるエアによって押し開けられなくなる。すると水封式真空ポンプ25の吸い込むエアは全てエジェクタ100のみを通過するものとなる。エジェクタ100は駆動エアを取り込むことで第4配管7d側の負圧を高める働きをするので、第4配管7dおよび第1バイパス配管301の負圧が高まる。逆に駆動エアを取り込んだ第8配管7h側は負圧を低める働きをするので、第8配管7hおよび第2バイパス配管302の負圧は低くなる。そのため、第2バイパス配管302側の方が第1バイパス配管301側よりも高圧になることによって、逆止弁400の弁体403は、より閉側への力が働く。
【0044】
レシーバタンク5内の負圧が高まってくると、水封式真空ポンプ25の負荷が増大して発熱が大きくなり、水封式真空ポンプ25の封入水の水温が上昇しやすくなる。また、負圧が高まると封入水は蒸発しやすくなり、キャビテーションが発生しやすくなる。本実施形態では、後述する、エジェクタ100の作用によってこれらの問題を解決している。
【0045】
すなわち、エジェクタ100は、レシーバタンク5と連通する吸引管路のみならず、駆動エア取込管路200とも連通しているため、第1駆動エア取込管路201および第2駆動エア取込管路202から取り込まれた大気圧の外気もエジェクタ100を通って水封式真空ポンプ25の吸込口25aに吸い込まれる。
【0046】
外気は、水封式真空ポンプ25内部の封入水よりも温度が低いため、水封式真空ポンプ25内部に外気が取り込まれると封入水の温度が下がる。また、当該外気が水封式真空ポンプ25の吸込口25a付近に導入される際に膨張して圧力が下がることによって当該外気の温度が下がるので、水封式真空ポンプ25の封入水の温度が下がる。また、水封式真空ポンプ25内部に外気が取り込まれることにより、水封式真空ポンプ25内部の気圧が上昇する。そのため、封入水の温度上昇と水封式真空ポンプ25内部の気圧低下に伴うキャビテーションを効果的に抑制してレシーバタンク5の負圧を良好に維持することができるようになる。
【0047】
また、水封式真空ポンプ25内には、サイレンサ23に溜まった水も駆動エア取込管路200の第1駆動エア取込管路201を通って送られてくるため、水封式真空ポンプ25の稼働とともに失われる封入水を補充することができるとともに、封入水の温度を下げる効果も得られる。
【0048】
以上に説明した吸引車1によれば、上述した効果の他、以下に説明する効果も奏される。
【0049】
逆止弁400は、ヒンジ402に軸支された揺動自在な弁体403を持つスイング式逆止弁であることから、レシーバタンク5の減圧開始のときとレシーバタンク5の負圧がある程度高まったときとで変化する逆止弁400の上流側と下流側の圧力差の変化に基づいて、上述したバイパス管路300の開閉動作が自動的にかつ的確なタイミングで実行される。また、スイング式逆止弁は、構成が簡素であり、エアの流れを外部から制御する方式と比べて、低コスト化や不具合頻度低下も図られる。
【0050】
また、エジェクタ100およびバイパス管路300は、四方切換弁24と水封式真空ポンプ25の吸込口25aとの間に設けられているので、四方切換弁24が吸引切換状態と加圧切換状態の何れにあっても、エジェクタ100およびバイパス管路300内を流れるエアの向きを同じ方向とすることができる。これにより、バイパス管路300に設ける逆止弁400の向きを吸引切換状態と加圧切換状態とで異なるものに変更する必要がない。
【0051】
また、逆止弁400の下流側に設けられる第2バイパス配管302は、逆止弁400の上流側に設けられる第1バイパス配管301よりも配管径が大きく設定されているので、逆止弁400の弁体403の動作を妨げにくいものとなっている。このため、使用できる逆止弁の種類のバリエーションを増やすことができる。
【0052】
また、第2駆動エア取込管路202に手動弁204が設けられているので、手動弁204を閉側に調整することで、バイパス管路300を通じて水封式真空ポンプ25に吸込まれるエアの流量を増し、レシーバタンク5内から吸引されるエアの流量を増やすことができる。一方、手動弁204を開側に調整することで、第2駆動エア取込管路202を通じて水封式真空ポンプ25に吸込まれる大気の流量を増やして、キャビテーションを抑制し、レシーバタンク5の負圧を高めることができる。
【0053】
また、手動弁204を操作する操作レバー204aが操作パネル15の近傍に設けられているので、操作パネル15を見ながら上記の調節が可能になり作業性も良好となる。
【0054】
以上、本発明に係る吸引車の一実施形態を説明したが、具体的な構成については、本実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば、本実施形態では、逆止弁400としてスイング式逆止弁を用いる例を示したが、エアの流れに対して垂直方向にスライド移動する弁体を有するリフト式逆止弁を用いてもよい。また、本実施形態では、バイパス管路300の中心線が水平方向を向く部位に逆止弁400を設けることで、弁体403が鉛直下方に垂下したときに、管路を閉塞するようにしているが、弁体403を閉じる方向に付勢するスプリング等を用い、バイパス管路300のその他の部位に逆止弁400を設けるようにしてもよい。
【0056】
駆動エア取込管路200は、第1駆動エア取込管路201と第2駆動エア取込管路202の2つ設ける例を示したが、さらに多くの駆動エア取込管路を設けるようにしてもよい。尚、各種の配管の材質については、金属製または合成樹脂製など、適宜選択しうる。
【0057】
また、本実施形態では、水封式真空ポンプ25の吸込口25aとレシーバタンク5とを連通するとともに、水封式真空ポンプ25の吐出口25bと、吐出口25bから吐出されるエアを排気するサイレンサ23内包の吸排気口とを連通する吸引切換状態と、水封式真空ポンプ25の吐出口25bとレシーバタンク5とを連通するとともに、水封式真空ポンプ25の吸込口25aと、吸込口25aに吸込まれるエアを導入するサイレンサ23内包の吸排気口とを連通する加圧切換状態とに相互に切換可能な四方切換弁24を備えていた。本発明はこれに限らず、吸引切換状態と加圧切換状態とに切換可能な配管および切換弁の構成であれば、四方切換弁を備えていなくても良い。例えば、切換弁にはバタフライ弁も利用可能である。
【0058】
また、本実施形態では、吸引車1の真空ポンプとして水封式真空ポンプ25を採用したもので説明を行ったが、本発明はこれに限らず、真空ポンプとしてルーツ式真空ポンプを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、回収対象物を回収するレシーバタンクと、レシーバタンクを加減圧するための真空ポンプとを備える吸引車に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 吸引車
5 レシーバタンク
15 操作パネル
7a,7b,7c,7d,20,21,24 吸引管路
23 サイレンサ(サイレンサ)
24 エア切換式四方弁(四方切換弁)
25 水封式真空ポンプ(真空ポンプ)
25a 水封式真空ポンプの吸込口
25b 水封式真空ポンプの吐出口
100 エジェクタ
101 駆動エア用接続ポート
102 吐出ポート
103 吸込エア用接続ポート
200 駆動エア取込管路
201 第1駆動エア取込管路
202 第2駆動エア取込管路
203 合流管路
204 手動弁
300 バイパス管路
400 逆止弁
402 ヒンジ
403 弁体