(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090228
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ラマン顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20230622BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20230622BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20230622BHJP
G01N 21/27 20060101ALN20230622BHJP
G01N 21/35 20140101ALN20230622BHJP
【FI】
G01N21/65
G02B21/36
G02B21/06
G01N21/27 E
G01N21/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205092
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由莉
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043DA06
2G043EA01
2G043EA03
2G043EA13
2G043EA14
2G043FA01
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2H052AD20
2H052AF03
2H052AF07
2H052AF14
2H052AF21
2H052AF25
(57)【要約】
【課題】深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルが取得されている場合に、複数点のうちいずれの点で取得したラマンスペクトルであるかを容易に確認することができるラマン顕微鏡を提供する。
【解決手段】深さ測定処理部111が、試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う。表示処理部103が、深さ測定により得られた複数点におけるラマンスペクトルを表示させる。表示処理部103は、ステージ上の試料の表面画像と、深さ方向の複数点を表す深さ画像とを表示可能であり、深さ画像における複数点の少なくとも1つの点が選択された場合に、当該少なくとも1つの点に対応するラマンスペクトルを表示させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡であって、
試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う深さ測定処理部と、
前記深さ測定により得られた前記複数点におけるラマンスペクトルを表示させる表示処理部とを備え、
前記表示処理部は、前記ステージ上の試料の表面画像と、前記深さ方向の複数点を表す深さ画像とを表示可能であり、前記深さ画像における複数点の少なくとも1つの点が選択された場合に、当該少なくとも1つの点に対応するラマンスペクトルを表示させる、ラマン顕微鏡。
【請求項2】
前記深さ測定処理部は、前記表面画像上の複数の測定位置において、それぞれ前記深さ方向に沿って前記レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得可能であり、
前記深さ画像には、前記複数の測定位置にそれぞれ対応付けて、前記深さ方向の複数点が表される、請求項1に記載のラマン顕微鏡。
【請求項3】
前記複数の測定位置は、前記表面画像上において一直線上に並ぶように選択され、
前記深さ画像には、前記複数の測定位置が並ぶ方向と前記深さ方向の2軸表示で、前記複数の測定位置にそれぞれ対応付けて、前記深さ方向の複数点が表される、請求項2に記載のラマン顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光装置の一例であるラマン顕微鏡においては、ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光が検出器で受光される(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなラマン顕微鏡では、試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させることにより、当該深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することが可能である。この場合、取得した複数のラマンスペクトルをユーザが確認する際、複数点のうちいずれの点で取得したラマンスペクトルであるかを容易に確認することができない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルが取得されている場合に、複数点のうちいずれの点で取得したラマンスペクトルであるかを容易に確認することができるラマン顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡であって、深さ測定処理部と、表示処理部とを備える。前記深さ測定処理部は、試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う。前記表示処理部は、前記深さ測定により得られた前記複数点におけるラマンスペクトルを表示させる。前記表示処理部は、前記ステージ上の試料の表面画像と、前記深さ方向の複数点を表す深さ画像とを表示可能であり、前記深さ画像における複数点の少なくとも1つの点が選択された場合に、当該少なくとも1つの点に対応するラマンスペクトルを表示させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルが取得されている場合に、複数点のうちいずれの点で取得したラマンスペクトルであるかを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ラマン顕微鏡の構成例を示した概略図である。
【
図2】ラマン顕微鏡の構成例を示した概略図である。
【
図3】ラマン顕微鏡の電気的構成の一例を示したブロック図である。
【
図4】表示部に表示される操作画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.ラマン顕微鏡の全体構成
図1及び
図2は、ラマン顕微鏡1の構成例を示した概略図である。本実施形態におけるラマン顕微鏡1は、ラマン分光分析だけでなく、赤外分光分析も行うことが可能である。
図1は、ラマン分光分析を行う際の状態を示しており、
図2は、赤外分光分析を行う際の状態を示している。
【0010】
ラマン顕微鏡1には、プレート2、ステージ3、駆動部4、対物光学素子5、対物光学素子6、ラマン光検出系7、赤外光検出系8及び切換機構9などが備えられている。試料は、プレート2に固定された状態でステージ3上に載置される。ステージ3は、駆動部4の駆動により、水平方向又は鉛直方向に変位可能である。駆動部4には、例えばモータ及びギアなどが含まれる。
【0011】
対物光学素子5は、ラマン分光分析に用いられ、例えば凸レンズと凹レンズとを組み合わせた構成である。ラマン分光分析を行う際には、
図1に示すように、対物光学素子5がプレート2上の試料に対向する。すなわち、プレート2上の試料の直上方に対物光学素子5が位置する。
【0012】
対物光学素子6は、赤外分光分析に用いられ、例えば凹面鏡と凸面鏡とを組み合わせたカセグレン鏡である。赤外分光分析を行う際には、
図2に示すように、対物光学素子6がプレート2上の試料に対向する。すなわち、プレート2上の試料の直上方に対物光学素子6が位置する。
【0013】
ラマン光検出系7は、ラマン分光分析を行う際に用いられるものであり、光源A、光学撮影素子10及びラマン分光計71を含む。光源Aから出射される光は、例えば可視域又は近赤外域の波長を有するレーザ光であり、その波長は数μmから数十μm程度である。
図1に示すように、ラマン分光分析を行う際には、光源Aから出射された光が、各種光学素子(図示せず)により対物光学素子5に導かれる。
【0014】
対物光学素子5に入射した光は、プレート2に固定された試料上に焦点を結ぶ。すなわち、光源Aからの光は、対物光学素子5を透過することにより集光され、試料上又は試料中の焦点位置に照射される。光源Aからの光が照射された試料からは、ラマン散乱光が発生し、この光が各種光学素子(図示せず)によりラマン光検出系7に導かれる。対物光学素子5からラマン光検出系7に導かれた光の一部は、光学撮影素子10に入射し、残りの光は、ラマン分光計71に入射する。
【0015】
光学撮影素子10は、ラマン散乱光が発生する試料表面の可視画像を撮影する。光学撮影素子10は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを含み、試料の静止画又は動画を撮影可能に構成されている。光学撮影素子10では、試料の明視野像、暗視野像、位相差像、蛍光像及び偏光顕微鏡像などの全部又は少なくとも1つを撮影することができる。
【0016】
ラマン分光計71は、試料からのラマン散乱光を分光することにより、波長ごとの強度を検出する。このラマン分光計71からの検出信号に基づいて、ラマンスペクトルを取得することができる。ラマンスペクトルは、縦軸が強度、横軸が波長で表される。このように、ラマン顕微鏡1では、試料からのラマン散乱光を検出器(ラマン分光計71)で受光することにより、ラマンスペクトルを取得することができる。
【0017】
赤外光検出系8は、赤外分光分析を行う際に用いられるものであり、光源B、光学撮影素子11及び赤外分光計81を含む。光源Bから出射される光は、例えばセラミックヒータから出射される赤外光であり、その波長は405nmから1064nm程度、多くの場合は532nmと785nmの波長を組み合わせた光が用いられる。
図2に示すように、赤外分光分析を行う際には、光源Bから出射された光が、各種光学素子(図示せず)により対物光学素子6に導かれる。
【0018】
対物光学素子6に入射した光は、プレート2に固定された試料上に焦点を結ぶ。すなわち、光源Bからの光は、対物光学素子6を透過することにより集光され、試料上又は試料中の焦点位置に照射される。光源Bからの光が照射された試料からの反射光は、各種光学素子(図示せず)により赤外光検出系8に導かれる。対物光学素子6から赤外光検出系8に導かれた光の一部は、光学撮影素子11に入射し、残りの光は、赤外分光計81に入射する。
【0019】
光学撮影素子11は、赤外光が反射する試料表面の可視画像を撮影する。光学撮影素子11は、光学撮影素子10と同様の構成であってもよい。光学撮影素子11では、光学撮影素子10と同様に、試料の静止画又は動画を撮影可能であり、試料の明視野像、暗視野像、位相差像、蛍光像及び偏光顕微鏡像などの全部又は少なくとも1つを撮影することができる。
【0020】
赤外分光計81は、例えばフーリエ変換赤外分光計である。赤外分光計81に備えられた分光器は、マイケルソン干渉分光器であってもよい。赤外分光計81は、試料からの赤外光の反射光を分光することにより、波長ごとの強度を検出する。この赤外分光計81からの検出信号に基づいて、赤外スペクトルを取得することができる。赤外スペクトルは、縦軸が強度、横軸が波長で表される。このように、ラマン顕微鏡1では、試料からの赤外光の反射光を検出器(赤外分光計81)で受光することにより、赤外スペクトルを取得することができる。
【0021】
切換機構9は、ラマン分光分析と赤外分光分析とを切り換える。具体的には、切換機構9は、駆動部4によりステージ3を駆動し、対物光学素子5とプレート2との位置関係、及び、対物光学素子6とプレート2との位置関係を調整する。ラマン分光分析に切り換えられた場合には、対物光学素子5とプレート2との位置関係が調整されることにより、対物光学素子5により集光される光の焦点位置が試料の所定の測定位置に合わせられる。一方、赤外分光分析に切り換えられた場合には、対物光学素子6とプレート2との位置関係が調整されることにより、対物光学素子6により集光される光の焦点位置が試料の所定の測定位置に合わせられる。
【0022】
2.ラマン顕微鏡の電気的構成
図3は、ラマン顕微鏡1の電気的構成の一例を示したブロック図である。ラマン顕微鏡1は、上述した各部の他に、制御部100、記憶部200、表示部300及び操作部400を備えている。
【0023】
制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部100は、CPUがプログラムを実行することにより、ラマン分析処理部101、赤外分析処理部102及び表示処理部103などとして機能する。
【0024】
ラマン分析処理部101は、切換機構9によりラマン分光分析に切り換えられた状態で、ステージ3上の試料に対してラマン分光分析を行うための処理を実行する。すなわち、光源Aから試料に対してレーザ光を集光させて照射し、ラマン分光計71からの検出信号に基づいてラマンスペクトルを取得する。また、ラマン分析処理部101は、光学撮影素子10により撮影される可視画像に基づいて、ラマン分光分析中における試料の表面画像を取得することができる。ラマン分光分析の際には、駆動部4を制御することにより、ステージ3を移動させながら分析が行われてもよい。
【0025】
赤外分析処理部102は、切換機構9により赤外分光分析に切り換えられた状態で、ステージ3上の試料に対して赤外分光分析を行うための処理を実行する。すなわち、光源Bから試料に対して赤外光を集光させて照射し、赤外分光計81からの検出信号に基づいて赤外スペクトルを取得する。また、赤外分析処理部102は、光学撮影素子11により撮影される可視画像に基づいて、赤外分光分析中における試料の表面画像を取得することができる。赤外分光分析の際には、駆動部4を制御することにより、ステージ3を移動させながら分析が行われてもよい。
【0026】
ラマン分析処理部101の処理により得られたラマン分光分析中のデータ、及び、赤外分析処理部102の処理により得られた赤外分光分析中のデータは、記憶部200に記憶される。記憶部200は、例えばハードディスクなどの不揮発性メモリを含む。記憶部200には、例えばラマン分光分析により取得されたラマンスペクトル、及び、赤外分光分析により取得された赤外スペクトルなどが記憶される。
【0027】
表示処理部103は、表示部300に対する表示を制御する。すなわち、表示処理部103の制御により、表示部300の表示画面に対して、操作画面などの各種画面が表示される。表示部300は、例えば液晶表示器を含む構成であるが、これに限られるものではない。表示部300の表示画面には、表示処理部103の制御により、記憶部200に記憶されているラマンスペクトル又は赤外スペクトルを表示させることができる。
【0028】
操作部400は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、例えばキーボード又はマウスなどを含む構成であるが、これに限られるものではない。表示部300に操作画面が表示されているときには、操作部400を操作することにより、当該操作画面に対する入力操作を行うことができる。操作部400を用いて入力操作を行った場合には、その入力された情報(数値など)が表示部300の操作画面に反映されて表示される。
【0029】
本実施形態では、ラマン分析処理部101に深さ測定処理部111が含まれる。深さ測定処理部111は、ラマン分光分析中に駆動部4を制御して、ステージ3を鉛直方向に移動させながら複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う。すなわち、深さ測定時には、ステージ3が鉛直方向に移動することにより、試料と対物光学素子5との距離が変化する。
【0030】
対物光学素子5から試料に向かうレーザ光の焦点位置は一定であるため、深さ測定時には、ステージ3の移動に伴い、試料に対するレーザ光の焦点位置が変化する。すなわち、深さ測定時に試料に照射されるレーザ光の焦点位置は、試料上だけでなく、試料中にも入り込む。
【0031】
具体的に、深さ測定では、試料に対するレーザ光の照射方向(光軸方向)である深さ方向に沿ってレーザ光の焦点位置を変化させつつ、所定の間隔でラマン分光計71からの検出信号に基づいてラマンスペクトルを取得する。これにより、深さ方向に上記所定の間隔で離れた複数点において、それぞれラマン分光計71からの検出信号に基づくラマンスペクトルが取得される。上記所定の間隔は、ユーザが予め設定することができる。
【0032】
表示処理部103は、深さ測定により得られた複数点におけるラマンスペクトルを表示部300に表示させることができる。また、表示処理部103は、深さ測定を行う際のパラメータを入力するための入力画面など、他の各種画面を表示部300に表示させることができてもよい。当該パラメータには、上記所定の間隔の他、深さ測定を行う深さ方向の範囲、又は、試料の表面画像上におけるレーザ光の径(スポット径)などが含まれる。深さ測定処理部111は、当該入力画面に入力されたパラメータに基づいて、深さ測定を行う。
【0033】
3.操作画面の具体例
図4は、表示部300に表示される操作画面500の一例を示した図である。この操作画面500には、表面画像表示領域501、深さ画像表示領域502及びスペクトル表示領域503が含まれる。ただし、表面画像表示領域501、深さ画像表示領域502及びスペクトル表示領域503は、いずれも操作画面500に含まれるような表示態様に限らず、少なくとも1つが操作画面500とは異なる画面で表示されてもよい。
【0034】
表面画像表示領域501には、ステージ3上の試料の表面画像が表示される。すなわち、光学撮影素子10により撮影される可視画像が、表面画像表示領域501に表示される。表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像は、光学撮影素子10により撮影されるリアルタイムの画像であってもよいし、所定のタイミングで撮影された静止画であってもよい。ステージ3を水平方向(深さ方向に対して交差方向)に移動させた場合には、表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像の領域が変化してもよい。
【0035】
ユーザは、試料の表面画像上で、測定位置を選択することができる。測定位置とは、水平面内で選択される任意の位置であり、選択された測定位置における深さ方向に沿って、深さ測定が行われる。
【0036】
測定位置は、1つだけ選択されてもよいし、複数選択されてもよい。
図4の例では、4つの測定位置511が選択されて深さ測定が行われた場合を示している。また、複数の測定位置511は、一直線上に並ぶように選択されている。測定位置511は、操作部400に対する操作により選択されるが、その選択方法は任意である。例えば、操作部400にマウスのようなポインティングデバイスが含まれる場合、ドラッグ操作などにより複数の測定位置511を容易に選択することができる。水平方向における複数の測定位置511間の距離は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0037】
なお、ラマン光検出系7における光源Aは、複数の波長でレーザ光を出射可能であってもよい。この場合、表面画像表示領域501に表示される試料の表面画像上で選択される測定位置は、波長ごとに選択可能であってもよい。
【0038】
深さ画像表示領域502には、各測定位置511に深さ方向の複数点が対応付けられた深さ画像が表示される。深さ画像は、各測定位置511が水平面内で一直線上に並ぶ方向(ライン軸)と、深さ測定が行われる際の深さ方向との2軸表示で、各測定位置511に対応付けて深さ方向の複数点521の相対位置を視覚的に分かりやすく表示するためのマッピング画像である。ユーザは、この深さ画像上で、任意の点521を選択することができる。この例では、ライン軸と深さ方向とが直交するように深さ画像が表示されているが、直交しないような表示態様であってもよい。また、深さ画像は、2軸表示に限られるものではなく、他の任意の態様で深さ方向の複数点521を分かりやすく表示することができる。
【0039】
この例では、試料の表面画像上で選択された4つの測定位置511にそれぞれ対応付けて、深さ方向の複数点521を表す深さ画像が深さ画像表示領域502に表示されている。深さ方向の点521の数は、深さ測定を行う際のパラメータとして設定された値に応じて異なる。すなわち、深さ測定を行う際の深さ方向の範囲と、深さ方向の複数点の間隔とに応じて、深さ画像表示領域502の各測定位置511に対応付けて表示される点521の数が異なる。
【0040】
深さ画像表示領域502におけるライン軸(横軸)に並べられる各点521間の距離は、試料の表面画像上で選択された複数の測定位置511間の実際の距離に応じて変化してもよいし、変化しなくてもよい。同様に、深さ画像表示領域502における深さ軸(縦軸)に並べられる各点521間の距離は、深さ測定時の実際の複数点の間隔に応じて変化してもよいし、変化しなくてもよい。なお、試料の表面画像上で選択された測定位置511が1つの場合、ライン軸(横軸)には1つの点521が表示され、深さ軸(縦軸)に1列で複数の点521が表示される。
【0041】
ユーザは、深さ画像表示領域502に表示されている複数点の少なくとも1つの点521を選択することにより、所望の点521に対応するラマンスペクトルをスペクトル表示領域503に表示させることができる。すなわち、表示処理部103は、深さ画像における複数点の少なくとも1つの点521が選択された場合に、その点に対応するラマンスペクトルをスペクトル表示領域503に表示させる。
【0042】
選択された点521が1つである場合には、その選択された点521において深さ測定時に取得されたラマンスペクトルがスペクトル表示領域503に表示される。一方、選択された点521が複数である場合には、それらの各点521において深さ測定時に取得されたラマンスペクトルが、並べて表示されてもよいし、一部又は全部が重ねて表示されてもよいし、ユーザが任意に選択して表示させることができてもよい。
【0043】
なお、以上の実施形態では、ラマン分光分析の場合についてのみ説明したが、赤外分光分析により取得された赤外スペクトルが、操作画面500において併せて表示されてもよい。この場合、例えば表面画像表示領域501において、赤外分光分析の測定位置が、ラマン分光分析の測定位置511とは区別できるように異なる表示態様で表示されてもよい。
【0044】
4.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0045】
(第1項)一態様に係るラマン顕微鏡は、
ステージ上の試料に対してレーザ光を集光させて照射し、試料からのラマン散乱光を検出器で受光することによりラマンスペクトルを取得するラマン顕微鏡であって、
試料に対するレーザ光の照射方向である深さ方向に沿って当該レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得することにより、深さ測定を行う深さ測定処理部と、
前記深さ測定により得られた前記複数点におけるラマンスペクトルを表示させる表示処理部とを備え、
前記表示処理部は、前記ステージ上の試料の表面画像と、前記深さ方向の複数点を表す深さ画像とを表示可能であり、前記深さ画像における複数点の少なくとも1つの点が選択された場合に、当該少なくとも1つの点に対応するラマンスペクトルを表示させてもよい。
【0046】
第1項に記載のラマン顕微鏡によれば、深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルが取得されている場合に、深さ画像により、深さ方向の複数点を分かりやすく表すことができる。したがって、深さ画像における複数点の少なくとも1つの点を選択することにより、当該少なくとも1つの点に対応するラマンスペクトルを表示させれば、複数点のうちいずれの点で取得したラマンスペクトルであるかを容易に確認することができる。
【0047】
(第2項)第1項に記載のラマン顕微鏡において、
前記深さ測定処理部は、前記表面画像上の複数の測定位置において、それぞれ前記深さ方向に沿って前記レーザ光の焦点位置を変化させつつ、前記深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルを取得可能であり、
前記深さ画像には、前記複数の測定位置にそれぞれ対応付けて、前記深さ方向の複数点が表されてもよい。
【0048】
第2項に記載のラマン顕微鏡によれば、表面画像上の複数の測定位置において、それぞれ深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルが取得されている場合であっても、深さ画像により、深さ方向の複数点を分かりやすく表すことができる。
【0049】
(第3項)第2項に記載のラマン顕微鏡において、
前記複数の測定位置は、前記表面画像上において一直線上に並ぶように選択され、
前記深さ画像には、前記複数の測定位置が並ぶ方向と前記深さ方向の2軸表示で、前記複数の測定位置にそれぞれ対応付けて、前記深さ方向の複数点が表されてもよい。
【0050】
第3項に記載のラマン顕微鏡によれば、表面画像上の複数の測定位置において、それぞれ深さ方向の複数点におけるラマンスペクトルが取得されている場合であっても、複数の測定位置が並ぶ方向と深さ方向の2軸表示で表される深さ画像により、深さ方向の複数点を分かりやすく表すことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ラマン顕微鏡
3 ステージ
71 ラマン分光計
100 制御部
101 ラマン分析処理部
102 赤外分析処理部
103 表示処理部
111 深さ測定処理部
500 操作画面
501 表面画像表示領域
502 深さ画像表示領域
503 スペクトル表示領域
511 測定位置
521 点