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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090241
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20230622BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205111
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】若林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄介
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】理由説明を受けた者の納得度に応じて、理由説明の内容を調整する機能の提供を目的とする。
【解決手段】制御部と、制御部に接続される記憶部と、を有する情報処理システムであって、記憶部は、入力値に基づく予測結果を出力する予測モデルと、予測結果が予測された理由を説明するための複数の理由説明と、を保持し、複数の理由説明の各々は、1以上の説明要素を含み、制御部は、各理由説明を受けた被説明者の納得の度合いを示す各理由説明の納得度に基づいて、各理由説明に含まれる各説明要素の納得度への寄与の大きさを示す重みを算出し、重みに基づいて、1以上の説明要素を含む新たな理由説明である拡張説明を作成し、作成した拡張説明に被説明者が納得したか否かに基づいて、新たな拡張説明を作成するか、既に作成した1以上の拡張説明のいずれかを最終的な拡張説明として選択するかを判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、前記制御部に接続される記憶部と、を有する情報処理システムであって、
前記記憶部は、入力値に基づく予測結果を出力する予測モデルと、前記予測結果が予測された理由を説明するための複数の理由説明と、を保持し、
前記複数の理由説明の各々は、1以上の説明要素を含み、
前記制御部は、
前記各理由説明を受けた被説明者の納得の度合いを示す前記各理由説明の納得度に基づいて、前記各理由説明に含まれる前記各説明要素の納得度への寄与の大きさを示す重みを算出し、
前記重みに基づいて、1以上の前記説明要素を含む新たな理由説明である拡張説明を作成し、
前記作成した拡張説明に被説明者が納得したか否かに基づいて、新たな前記拡張説明を作成するか、既に作成した1以上の前記拡張説明のいずれかを最終的な拡張説明として選択するかを判定することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、前記被説明者によって入力された、二つの前記理由説明の複数の組の相対的な納得度に基づいて、前記各理由説明の納得度を算出することを特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、前記相対的な納得度、前記各理由説明の納得度、前記各説明要素の重み、前記1以上の拡張説明及び前記最終的な拡張説明の少なくともいずれかを説明履歴として前記記憶部に格納することを特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理システムであって、
前記説明履歴は、前記各理由説明の納得度に対応する前記被説明者の識別情報を含み、
前記制御部は、前記予測モデルによる予測結果とともに前記被説明者に対して出力する前記予測結果に対応する前記理由説明を、当該被説明者の識別情報に対応する前記説明履歴に基づいて作成することを特徴とする情報処理システム。
【請求項5】
請求項3に記載の情報処理システムであって、
前記説明履歴は、前記各理由説明の納得度に対応する前記被説明者の識別情報を含み、
前記制御部は、前記予測モデルによる予測結果とともに前記被説明者に対して出力する前記予測結果に対応する前記理由説明を、当該被説明者以外の被説明者の識別情報に対応する前記説明履歴に基づいて作成することを特徴とする情報処理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、
1以上の前記説明要素を含む前記拡張説明を作成し、
前記作成した拡張説明に前記被説明者が納得することを示す情報が入力された場合、前記説明要素を追加することによって前記新たな拡張説明を作成し、
前記作成した拡張説明に前記被説明者が納得しないことを示す情報が入力された場合、前記被説明者が納得しなかった拡張説明の直前に作成した拡張説明を前記最終的な拡張説明として選択することを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、
前記重みが最も大きい前記説明要素を含む前記拡張説明を作成し、
前記作成した拡張説明に前記被説明者が納得することを示す情報が入力された場合、前記重みの大きさの順に、前記説明要素を順次追加することによって、前記新たな拡張説明を作成することを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記予測モデルは決定木であり、
前記予測モデルによる予測結果が予測された理由を説明するための複数の理由説明に含まれる前記各説明要素は、前記決定木の根ノードから前記予測結果に対応する終端ノードに至る経路上の複数のノードの各々に対応する属性名及び属性値を含むことを特徴とする情報処理システム。
【請求項9】
制御部と、前記制御部に接続される記憶部と、を有する情報処理システムが実行する情報処理方法であって、
前記記憶部は、入力値に基づく予測結果を出力する予測モデルと、前記予測結果が予測された理由を説明するための複数の理由説明と、を保持し、
前記複数の理由説明の各々は、1以上の説明要素を含み、
前記情報処理方法は、
前記制御部が、前記各理由説明を受けた被説明者の納得の度合いを示す前記各理由説明の納得度に基づいて、前記各理由説明に含まれる前記各説明要素の納得度への寄与の大きさを示す重みを算出する手順と、
前記重みに基づいて、1以上の前記説明要素を含む新たな理由説明である拡張説明を作成する手順と、
前記作成した拡張説明に被説明者が納得したか否かに基づいて、新たな前記拡張説明を作成するか、既に作成した1以上の前記拡張説明のいずれかを最終的な拡張説明として選択するかを判定する手順と、を含むことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工知能の予測判定における理由説明に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-129295号公報(特許文献1)には、(1)コンピュータは、複数のデータに対する学習処理により生成された、異常データを判別する複数の判別条件を含む分析モデルに基づいて、分析対象データを分析する。(2)コンピュータは、分析対象データが複数の判別条件のうち所定の判別条件を満たす場合、複数の判別条件それぞれに関連付けられた異常理由を含む判別情報に基づいて、所定の判別条件に関連付けられた異常理由を特定する。(3)コンピュータは、所定の判別条件に関連付けられた異常理由を示す情報を出力する、という手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-129295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習による予測判定の理由説明を行なうとき、判定の根拠について一律の説明を行なってしまうと、その理由説明では説明を受けた側が理解できない場合がある。
【0005】
特許文献1には、異常理由を示す情報を出力する技術について記載されているが、この技術は、説明を受けた者の理解度や納得度に応じて理由説明の内容を調整するためのものではない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、機械学習による予測判定の理由説明を受けた者の理解度や納得度に応じて、理由説明の内容を調整する機能の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る情報処理システムは、制御部と、前記制御部に接続される記憶部と、を有する情報処理システムであって、前記記憶部は、入力値に基づく予測結果を出力する予測モデルと、前記予測結果が予測された理由を説明するための複数の理由説明と、を保持し、前記複数の理由説明の各々は、1以上の説明要素を含み、前記制御部は、前記各理由説明を受けた被説明者の納得の度合いを示す前記各理由説明の納得度に基づいて、前記各理由説明に含まれる前記各説明要素の納得度への寄与の大きさを示す重みを算出し、前記重みに基づいて、1以上の前記説明要素を含む新たな理由説明である拡張説明を作成し、前記作成した拡張説明に被説明者が納得したか否かに基づいて、新たな前記拡張説明を作成するか、既に作成した1以上の前記拡張説明のいずれかを最終的な拡張説明として選択するかを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ある予測判定について被説明者が納得できる理由説明を探索調整することができる。
【0009】
上記の以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における情報処理システムの利用の流れの概要の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態における情報処理システムの機能ブロックの一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態における全体処理フローの一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態における理由説明内容の調整フローの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態における情報処理システムによる初期理由説明内容の画面表示の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態における情報処理システムによる、複数の理由説明に関する相対的な納得度を入力する画面表示の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態における情報処理システムによる最終理由説明内容の画面表示の一例である。
図8】本発明の実施形態における情報処理システムが保持する対象案件の補正有無および更新適用有無に関するデータ構造のテーブルの一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態における情報処理システムが保持する対象案件に含まれる項目値の更新に関するデータ構造のテーブルの一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態における情報処理システムが保持する対象案件に含まれる項目の予測判定の理由説明、説明要素及び拡張説明に関するデータ構造のテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の例を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態における情報処理システム4の利用の流れの概要の一例を示す図である。
【0013】
情報処理システム4は、情報処理装置1及びクライアント端末2からなる。まず、情報処理装置1は、過去の審査書類を構成するデータを訓練データとした機械学習モデル5を作成する(ステップS1)。
【0014】
次に、情報処理装置1は、審査対象の書類を構成するデータを評価データとして入力されると(ステップS2)、機械学習モデル5に基づいて予測判定を行い、予測判定結果を出力する(ステップS3)。このとき、情報処理装置1は、この予測判定結果に至った判定理由も作成する(ステップS4)。情報処理装置1は、予測判定結果及び判定理由をクライアント端末2に送信する。
【0015】
クライアント端末2の書類審査画面表示部3は、予測判定結果及び判定理由を書類審査画面表示部3に複数表示したうえで(ステップS5)、被説明者による相対的な納得度の入力を取得する(ステップS6)。クライアント端末2は、相対的な納得度の入力値を情報処理装置1に送信する。
【0016】
その後、情報処理装置1は、相対的な納得度の入力値に基づいて、判定理由を構成する説明要素のうち、どの説明要素が重要と認識しているか算出する(ステップS7)。情報処理装置1は、最も重要な説明要素を特定した後、その要素を根幹として他の説明要素を追加した拡張説明を複数作成する(ステップS8)。情報処理装置1は、作成した複数の拡張説明をクライアント端末2に送信する。
【0017】
クライアント端末2は、拡張説明を書類審査画面表示部3に表示し、拡張説明に関する納得度の入力値を取得して、情報処理装置1に送信する。情報処理装置1は、拡張説明に関する納得度の入力値に基づいて、最終理由説明内容を確定するか、他の拡張説明を作成するかを決定する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態における情報処理システム4の機能ブロックの一例を示す図である。
【0019】
情報処理装置1は、制御部101、記憶部102、モデル作成部103、予測判定作成部104、判定条件抽出部105、判定理由作成部106、個別納得度算出部107、重要説明要素抽出部108、拡張説明作成部109、最終説明内容作成部110及び予測結果適用部111からなる情報処理装置であり、例えばサーバコンピュータ等である。
【0020】
クライアント端末2は、表示出力部201、相対的納得度入力部202及び拡張説明納得度入力部203からなる情報処理装置であり、例えば情報処理装置1と連携して動作するクライアントPC(Personal Computer)等である。
【0021】
制御部101は、情報処理装置1及びクライアント端末2における各種の処理の実行を制御するハードウェアであり、例えば中央処理装置(CPU)等である。
【0022】
記憶部102は、訓練データ及び評価データのほか、作成した機械学習モデル等を格納しておくデータ保管媒体であり、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)などのデータストレージを指す。
【0023】
モデル作成部103は,記憶部102に格納してある訓練データを入力として機械学習モデルを作成する。
【0024】
予測判定作成部104は、モデル作成部103が作成した前記機械学習モデルに対して評価データを入力して、評価データに関する予測判定結果を作成する。
【0025】
判定条件抽出部105は、上記の予測判定結果を導くための判定条件、およびその判定結果の組み合わせを説明要素として抽出する。
【0026】
判定理由作成部106は、判定条件抽出部105が抽出した説明要素を組み合わせて判定理由を複数作成する。
【0027】
個別納得度算出部107は、後述する相対的納得度入力部202を介して入力された複数の判定理由に関して、相対的な納得度から個別の判定理由説明に関する個別納得度を算出する。
【0028】
重要説明要素抽出部108は、個別納得度算出部107が算出した個別納得度を個別の判定理由説明を構成する各説明要素の係数として割り当て、最も係数の大きい説明要素を重要説明要素として特定する。
【0029】
拡張説明作成部109は、重要説明要素抽出部108が特定した重要説明要素に対して、他の説明要素を追加した拡張的な判定理由説明を複数作成する。
【0030】
最終説明内容作成部110は、後述する拡張説明納得度入力部203を介して入力された納得度が所定の閾値より小さいとき、その拡張説明では納得されなかったと判定して、最終理由説明の候補から除外し、納得度が所定の閾値より大きい拡張説明の中から判定精度が比較的良い拡張説明を抽出して最終理由説明の候補とし、表示出力部201を介して表示する。
【0031】
予測結果適用部111は、最終説明内容作成部110において表示出力部201を介してされた最終理由説明に関する予測判定結果を用いて、記憶部102に格納されている評価データを更新する。このとき、適用前と適用後の双方のデータのほか、提示された理由説明、説明要素を構成する説明要素、理由説明に対する納得度の入力値、説明対象者のID、及び説明日時等を記憶部102に保管しておき、事後に適用前後の履歴を追跡できるようにしておいてもよい。
【0032】
表示出力部201は、判定理由作成部106が作成した複数の判定理由を表示出力し、また、拡張説明作成部109が作成した拡張的な判定理由説明を表示出力するディスプレイ装置等である。
【0033】
相対的納得度入力部202は、表示出力部201を介して表示出力された複数の判定理由に関して、複数の説明間の相対的納得度を入力するためのデバイスであり、例えば、キーボード、マウス又はタッチ式ディスプレイ装置等である。
【0034】
拡張説明納得度入力部203は、表示出力部201を介して表示出力された複数の拡張説明に関して、各説明の納得度を入力するためのデバイスであり、上記のキーボード等と同一のものでよい。
【0035】
初期説明納得度入力部204は、表示出力部201を介して表示出力された初期の理由説明に関して、納得度を入力するためのデバイスであり、上記の他の入力部と同一のものでよい。
【0036】
なお、図2には一つの制御部101及び一つの記憶部102を示したが、実際には情報処理装置1及びクライアント端末2の各々が制御部101及び記憶部102を備えてもよい。モデル作成部103、予測判定作成部104、判定条件抽出部105、判定理由作成部106、個別納得度算出部107、重要説明要素抽出部108、拡張説明作成部109、最終説明内容作成部110及び予測結果適用部111は、情報処理装置1の制御部101が記憶部102に格納されたプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0037】
図3は、本発明の実施形態における全体処理フローの一例を示す図である。
【0038】
ステップS301では、モデル作成部103は、記憶部102に格納されている訓練データを入力として機械学習を行い、所定の学習アルゴリズムにて予測判定のための機械学習モデルを作成し、記憶部102に保管する。
【0039】
ステップS302では、予測判定作成部104は、ステップS301で作成された機械学習モデルに対して、記憶部102に格納されている審査対象書類を構成するデータを評価データとして入力し、各評価データに対する予測判定結果を作成して、記憶部に出力する。予測判定結果とは、例えば機械学習モデルを用いた分類予測又は数値予測の結果でもよいし、補正内容の予測結果でもよい。
【0040】
ステップS303では、判定条件抽出部105は、ステップS301で用いた学習アルゴリズムで作成した機械学習モデルにおいて、各評価データにおける各予測判定結果を導くための判定条件を抽出する。判定条件は一つである場合もあるし、複数の判定条件が用いられることもある。判定条件の一つの例として、身長が170cm以上、などがある。また、判定条件抽出部105は、その判定条件にて判定し、YesもしくはNoという二値に限らず、ある分類への適合度合又は類似度などの判定結果と判定条件とを組み合わせた説明要素を作成して、記憶部に格納する。
【0041】
ステップS304では、判定理由作成部106は、ステップS303にて説明要素をx個抽出できたとき、異なるx個の説明要素からr(1≦r≦x)個を選ぶ組み合わせ(ΣxCr)の数だけ、判定理由を作成する。なお、ここでは判定理由として作成する組み合わせの最大数を示したが、これ以降で使う判定理由の数は最大数である必要はない。なお、判定理由を構成する説明要素において、予測精度の向上に寄与する説明要素が予め分かっている場合は、作成する判定理由を、その説明要素を含むもののみに限定してもよい。
【0042】
ステップS305では、制御部101は、表示出力部201を介して、ステップS304で作成された判定理由を表示する。この判定理由は後述する調整された拡張説明ではないため、初期の判定理由と呼ぶことにする。
【0043】
ステップS306では、表示出力された判定理由について、初期説明納得度入力部204を介して納得した旨の入力があった場合、又は、納得度がある所定の閾値より大きい場合には、表示出力された判定理由について被説明者が納得したものと判定して、ステップS307に進む。また、このとき、さらに高精度の予測判定をめざした理由説明を探索するために、後述の理由説明内容の調整処理(ステップS308)に進んでもよい。このとき、表示出力部201には、他の理由説明内容を表示する等の確認画面を表示してもよい。
【0044】
ステップS307では、予測結果適用部111は、ステップS305における判定理由を構成する説明要素に基づいた予測判定結果を用いて、予測判定結果に関する履歴情報を更新する。このとき、表示出力部201を介して予測判定結果の適用に関する確認画面を表示してもよい。また、これまでの入力履歴、行われた理由説明、理由説明を構成する説明要素、後述する拡張説明、それらに関する納得度、及び予測結果の採否に関する記録を履歴として記憶部102に保管しておいてもよい。保管される履歴の例については図8図10を参照して後述する。
【0045】
ステップS308では、ステップS305の理由説明に対して納得度が所定の閾値より低い場合、又は、納得できない旨の入力があった場合に、理由説明内容の調整処理を行う。この処理の詳細については図4の説明にて後述する。
【0046】
ステップS309では、被説明者は、入力部を介して、上記の理由説明内容を調整した後の最終的な理由説明に対して納得したかどうかの入力を行うか、もしくは納得度を入力する。納得した旨の入力があった場合、又は、入力された納得度が所定の閾値より大きい場合には、ステップS306へ進む。一方、納得した旨の入力が得られない場合、又は、入力された納得度が所定の閾値より小さい場合は、ステップS310へ進む。
【0047】
ステップS310では、予測結果適用部111は機械学習による分類予測の結果又は補正予測の結果を用いた修正を適用しないで、適用前の状態を保持する。このとき、これまでの入力履歴、行われた理由説明、理由説明を構成する説明要素、後述する拡張説明、それらに関する納得度、及び予測結果の採否に関する記録を履歴として記憶部102に保管しておいてもよい。
【0048】
ステップS311では、同一の評価データに対して他の予測判定がある場合、又は、他の評価データに予測判定が含まれる場合には、ステップS302に戻って予測判定を行う。一方、そのような判定が他にない場合には、本案件に関する処理を終える。
【0049】
図4は、本発明の実施形態における理由説明内容の調整フローの一例を示す図である。
【0050】
ステップS401では、判定理由作成部106は、作成した複数の判定理由について表示出力部201を介して表示する。
【0051】
ステップS402では、被説明者は、複数の判定理由を表示された内容を確認した後、判定理由の組み合わせごとに相対的な納得度について相対的納得度入力部202を介して入力する。
【0052】
ステップS403では、個別納得度算出部107は、例えば階層分析法によって各判定理由について個別の納得度を計算する。
【0053】
まず、前記判定理由作成部106が判定理由の説明をN個作成したとき、各理由説明をnx(1≦x≦N)とする。最初に、被説明者は、理由説明n1及びn2について、どちらの説明に相対的に納得できるかを表現する数値について相対的納得度入力部202を介して入力する。ここでは、数値そのものを直接入力するのではなく、数値に応じた文章表現の選択を介した間接的な入力でもよい。
【0054】
個別納得度算出部107は、この比較をすべての判定理由の組み合わせについて回行い、一対比較行列Aの各要素を作成する。ただし、作成した判定理由の数nが多いとき、一対比較行列Aを構成する要素数が多くなるため、比較作業に時間がかかるようになる。そこで、類似する判定理由ごとにNを分割し、Nの各部分集合について一対比較行列A’を作成して、後述のように個別の理由説明について重みを計算しておき、最後に各判定理由の重みを計算する際に統合してもよい。また、すべての判定理由の組み合わせに対して相対的な納得度を入力しなくてもよい。このとき、既に入力済みの相対的な納得度から補完することによって推測される一対比較行列を作成してもよい。
【0055】
次に、個別納得度算出部107は、一対比較行列Aから各理由説明nに関する重みを計算する。一対比較行列Aは、その行列の最大固有値をλmax、その最大固有値に関する主固有ベクトルをwとすると、式(1)が満たされる。
【0056】
Aw=λmaxw ・・・(1)
【0057】
このとき、この式を満たす主固有ベクトルwの要素w1,w2,…,wNは、それぞれn1,n2,…,nNの理由説明の重みとなる。この他に、重みを計算する方法として幾何平均法、調和平均法、べき乗法などがあるが、重みの計算方法及び近似方法について特に限定はなく、任意の方法を適用することができる。
【0058】
ステップS404では、個別納得度算出部107は、判定理由を構成する各説明要素の重みを計算する。
【0059】
各理由説明に関する納得度は、各理由説明を構成する説明要素に関する納得度の合計値と等しいとすると、N個の理由説明が最大P個の説明要素によって構成されているとき、各理由説明に関する納得度を表す主固有ベクトルwは、各判定理由を構成する構成要素py(1≦y≦P)の有無を表す、N行P列の行列Bと、ベクトルgを用いて、式(2)のように表すことができる。
【0060】
w=Bg ・・・(2)
【0061】
ここで、このN個の連立方程式を解いてベクトルgを求めると、各説明要素pyに関する重み(納得度)gyが計算できる。
【0062】
ステップS405では、重要説明要素抽出部108は、上記のステップにて各要素の重みを計算した結果から、最も重みの大きな説明要素を重要説明要素として特定する。例えば、前述の構成要素のうち、最大の重みを持つ説明要素pg_maxを抽出する。
【0063】
ステップS406では、拡張説明作成部109は、上記のステップにて特定した重要説明要素を根幹とした拡張説明を作成し、表示出力部201を介して提示する。例えば、拡張説明作成部109は、重要説明要素pg_maxを説明要素とする拡張説明E1を作成する。次に、拡張説明作成部109は、説明要素pyを重みの大きな順に並べ替えて枝葉要素pg2,pg3,…とするとき、根幹要素pg_maxに対して枝葉要素pg2,pg3,…を追加した拡張説明E2,E3,…を順次作成する。このとき、追加する説明要素の数に限定はなく、説明要素が全部でP個存在する場合は、Σ(k=1~P)とおりの組み合わせが考えられる。ただし、すべての組み合わせについて拡張説明を作成する必要はなく、いくつかに絞ってもよい。例えば、予測精度を向上させる説明要素から順に追加してもよいし、先に計算した各説明要素に関する重みの大きい順から追加する方法などによって提示する拡張説明の数を限定してもよい。
【0064】
ステップS407では、被説明者が、表示出力部201を介して提示された前記複数の拡張説明Exについて、拡張説明納得度入力部203を介して納得度を入力する。この納得度とは、被説明者が納得した、又は納得できなかった、等の2値でもよいし、被説明者の納得度合を数値表現したものでもよい。この納得度の入力を各拡張説明について行うが、すべての拡張説明に対しての入力は必須ではない。
【0065】
ステップS408では、拡張説明作成部109は、ステップS407にて入力された各拡張説明に関する納得度に応じて、被説明者が納得したかどうかを検出する。ここで、入力値が納得度合である場合は、所定の閾値との比較によって納得したかどうかを検出してもよい。被説明者がある拡張説明に関して納得したと判定される場合は、S409へ進む。一方、納得できていないと判定される場合には、S406に戻って他の拡張説明を作成する。
【0066】
ステップS409では、最終説明内容作成部110は、被説明者が納得したと判定された拡張説明群の中で、最も高い予測精度を実現できる拡張説明を特定し、当該拡張説明を最終説明内容として採用する。
【0067】
ステップS410では、納得できた拡張説明が一つ以上ある状態ではあるが、さらに他の拡張説明を行なうことによる予測精度の向上を狙う場合は、S406に戻って更に試行する。一方、他の拡張説明による確認をこれ以上行なわない場合は、このフローを終了して図3のフロー図に戻る。
【0068】
上記の処理によれば、被説明者の納得度に応じた理由説明内容の調整ができるようになる。
【0069】
図5は、本発明の実施形態における情報処理システム4による初期理由説明内容の画面表示の一例を示す図である。
【0070】
ここでは、配偶者に関して申請者が入力した申請書の項目を例にとって説明する。図5(a)に示すように、配偶者に関する回答の分類の中には複数の入力項目があり、それぞれ項目IDとして01、02、…というIDが付与されているものとする。配偶者に関する属性としては、申請者に配偶者がいるかどうかという項目01、申請者と配偶者が同居しているかという項目02、配偶者が申請者の扶養となっているかという項目03があるとする。初期入力値として項目01には空白、項目02には「1」(同居している)、項目03には「1」(扶養している)の入力がなされているとき、情報処理システム4は項目01に対して、補正予測値「1」(配偶者がいる)を提示する。補正予測値の提示を受けた被説明者は、補正予測値を適用するためのボタンを押下するか、この補正予測値を提示するに至った予測の理由説明を表示するボタンを押下するか、補正予測値に対して何もしないかを選ぶことができる。ここでは、理由説明のボタンを押下したものとして説明を続ける。
【0071】
図5(b)に示すように、項目01の補正予測に関して、初期の判定理由と採否に関するボタンが表示される。被説明者は、この初期の判定理由に納得すれば、採否の項目にある適用ボタンを押下する。一方、納得しない場合には非適用ボタンを押下する。また、他の理由説明を確認したい場合には保留ボタンを押下してもよい。ここでは、他の理由説明を確認するために保留ボタンを押下したものとして説明を続ける。
【0072】
図6は、本発明の実施形態における情報処理システム4による、複数の理由説明に関する相対的な納得度を入力する画面表示の一例を示す図である。
【0073】
図6(a)は、情報処理システム4が初期の理由説明のほかに、複数の理由説明nを作成して被説明者に表示し、被説明者がその理由説明に関して相対的な納得度を入力する際の画面の一例である。
【0074】
例えば、理由説明n1と理由説明n2との間の相対的な納得度を入力するために、左方向を理由説明n1、右方向を理由説明n2に割り当てた線分を表示し、被説明者がその線分上のいずれかの位置を指示するポインタを操作してもよい。例えば、被説明者は、いずれの理由説明の納得度が同程度であると判断した場合には線分の中点を指示し、理由説明n2の納得度が相対的に高いと判断した場合には線分の中点より右の位置を指示し、理由説明n2の納得度の相対的な高さが高いほど線分の右端の近くを指示するように、ポインタを操作してもよい。
【0075】
図6(a)の例は、理由説明n1に比べて理由説明n2のほうが圧倒的に納得できる、理由説明n3に比べて理由説明n1のほうが比較的納得できる、理由説明n3に比べて理由説明n2のほうが少しだけ納得できる、という入力例を示している。被説明者が納得度の入力を完了した後、画面下部にあるボタンを押下することによって入力完了を情報処理システム4に通知すると、重要説明要素の抽出処理に移行する。
【0076】
図6(b)は、情報処理システム4が複数作成した拡張説明Eを被説明者に表示し、被説明者がその拡張説明に関して納得可否もしくは納得度合を入力する際の画面の一例を示している。例えば、左方向を「納得できない」、右方向を「納得できる」に割り当てた線分を表示し、被説明者が図6(a)と同様の要領でその線分上のいずれかの位置を指示するポインタを操作することで納得度合いを入力してもよい。
【0077】
その場合、拡張説明E1,E2,E3,…について被説明者が納得できた場合は右側に寄った入力となり、納得できない場合は左側に寄った入力となる。このとき、所定の閾値を決めておき、閾値以上の納得度合の入力があった場合に被説明者が納得した、と判定してもよい。納得度の入力を完了した後に、画面下部にあるボタンに入力完了を情報処理システム4に通知し、最終理由説明の作成処理に移行する。
【0078】
なお、図6は被説明者が相対的な納得度及び納得度合いを直感的に入力することを支援するための画面表示の一例であり、実際には被説明者が納得度等を示す数値を直接入力するなど、上記以外の方法で入力が行われてもよい。
【0079】
図7は、本発明の実施形態における情報処理システム4による最終理由説明内容の画面表示の一例である。
【0080】
前述の図6(b)に示した納得度合の入力に続いて最終理由説明の作成処理を行った結果、判定理由の項目が最も予測精度が高く、被説明者に納得してもらえた最終理由説明の内容によって、画面上の判定理由の項目の内容が更新される。ここでは、最終理由説明が拡張説明E2になった場合の例を示している。このため、図7では判定理由の項目に拡張説明E2を示す「E2」が表示されている。ただし、実際の判定理由の表示は「E2」ではなく、E2を構成する説明要素群が表示される。
【0081】
図7の判定理由に対応する採否の項目には、適用ボタン、非適用ボタン及び保留ボタンが表示されている。被説明者は前述の図6(b)にて納得した旨の入力を行っているため、適用ボタンを押すことによって、補正予測値を適用することに関して最終合意を得る。それでも納得できない場合は、被説明者は非適用ボタンを押すことで補正予測値を非適用にしたり、保留ボタンを押すことで判定を保留として他の拡張説明を確認したりすることができる。
【0082】
図8は、本発明の実施形態における情報処理システム4が保持する対象案件の補正有無および更新適用有無に関するデータ構造のテーブルの一例を示す図である。
【0083】
図8に示す対象案件の補正有無および更新適用有無に関するデータ構造のテーブル800は、案件ID801、振分分類802、分類判定処理実行日時803、更新適用有無804及び更新処理実行日時805を含む。
【0084】
案件ID801は、すべての案件をユニークな値で判別できるようにするための値である。ここで案件とは、情報処理システム4による処理の対象のデータのまとまりである。例えば情報処理システム4のユーザが官公庁であり、情報処理システム4の処理の対象が官公庁に提出された書類である場合、提出された一通の書類(例えばある申請者が何らかの申請を行うために提出した書類)が一つの案件として扱われてもよい。また、その場合、被説明者は官公庁において当該書類を処理する担当職員である。
【0085】
振分分類802は、案件ごとに補正不要、要補正などの予測分類結果を表す値である。この項目が「要補正」のときは、この案件に補正が必要な項目が一つ以上存在することがわかる。
【0086】
分類判定処理実行日時803は、前述の分類判定処理を行った日時を表す値である。
【0087】
更新適用有無804は、前述の分類判定処理を行って要補正となった案件について、初期入力値から補正予測値、もしくは人手による修正値等を用いて更新があったかどうかを表す値である。この項目が「あり」のときは、補正予測値に関して判定理由を確認することができる。
【0088】
更新処理実行日時805は、前述の初期入力値から補正予測値等を用いた更新が適用された日時を表す値である。
【0089】
図8の例では、案件ID801が「1」の案件については、補正不要と判定されたため、補正予測値等を用いた更新は行われなかった。案件ID801が「2」の案件については、要補正と判定され、補正予測値等を用いた更新が適用された。案件ID803が「3」の案件については、要補正と判定された(すなわち補正予測値が得られた)が、補正予測値等を用いた更新が適用されなかった。補正予測値が得られたにもかかわらずそれを用いた更新が適用されない場合として、例えば、被説明者が補正予測値と合わせて出力された理由説明に納得できなかった場合等で、図5又は図7に記載の採否の項目にて、非適用、保留が選択されている、もしくは未入力となっている場合、又は、被説明者が補正予測値より初期入力値が正しいと判断した場合などがありうる。
【0090】
図9は、本発明の実施形態における情報処理システム4が保持する対象案件に含まれる項目値の更新に関するデータ構造のテーブルの一例を示す図である。
【0091】
図9に示す対象案件に含まれる項目値の更新に関するデータ構造のテーブル900は、項目ID901、属性名902、更新適用有無903、初期入力値904、補正予測値905及び最終結果値906を含む。
【0092】
項目ID901は、案件を構成する記入項目を一意に特定するための値である。例えば、提出された一通の書類が一つの案件に該当する場合、当該書類において提出者が記入する項目(例えば氏名、住所、生年月日、配偶者有無、配偶者同居有無等の記入項目)が項目IDによって特定される。
【0093】
属性名902は、案件を構成する記入項目の名称を表す値である。
【0094】
更新適用有無903は、図8にて前述した更新適用有無804と同様である。
【0095】
初期入力値904は、申請者が記入した項目の初期値である。
【0096】
補正予測値905は、初期入力値に対して情報処理システム4が算出した推測値である。
【0097】
最終結果値906は、補正予測等の処理が行われた後に最終的に適用された値であり、初期入力値、補正予測値、又は人手で修正された値を適用することによって更新が行われる。
【0098】
図9には、テーブル900の例として、テーブル900A、900B及び900Cを示す。
【0099】
図9(a)に示すテーブル900Aは、補正不要と判定された案件に関する保管データの一例である。例えば、項目ID901が「01」の配偶者有無、及び、項目ID901が「02」の配偶者同居に関して、初期入力値904がともに「1」であり(すなわち申請者には配偶者があり、その配偶者と同居していることが初期入力値として記入されており)、この初期入力値が妥当であると判定した場合には、補正予測値を生成せずに空白とする。このとき、最終結果値906としては初期入力値と同じ値である「1」が事前に格納されていてもよいし、被説明者がその値を承認したときに格納されてもよい。なお、更新適用有無903の列は、すべての項目について補正予測値等による値の更新がないときは、すべて空白としてもよい。
【0100】
図9(b)に示すテーブル900Bは、要補正と判定された案件に関する保管データの一例である。例えば、項目「01」の配偶者有無は初期入力値が空白となっており、項目「02」の配偶者同居及びその他の配偶者に関する項目に初期入力値がある場合である。このとき、情報処理システム4は、項目「01」の記入漏れ等が原因であるかは特定しないが、項目「01」の補正予測値として「1」を作成して被説明者に提示する。このとき、被説明者は、図10に示すような、この項目の補正予測値に関する理由説明を参照できる。被説明者は、補正予測値の判定理由を確認し、最終結果値に補正予測値を適用した場合には、更新適用有無903の項目は「あり」に変更する。一方、項目02の初期入力値は補正不要であると判定されたときは、更新適用有無903は空白のままとする。
【0101】
図9(c)に示すテーブル900Cは、要補正と判定された案件に関する保管データの一例である。例えば、項目「01」の配偶者有無は初期入力値が「1」となっており、情報処理システム4は、この初期入力値が妥当であると判定した場合には、補正予測値を生成せずに空白とする。このとき、最終結果値としては初期入力値と同じ値である「1」が事前に格納されていてもよいし、被説明者がその値を承認したときに最終結果値として格納されてもよい。次に、項目「02」の配偶者同居について初期入力値が1(同居している)であるが、他の項目との関連から補正予測値が「0」(すなわち別居している)と予測されるときは、被説明者は、図9(b)と同様に、図10に示すような補正予測値に関する理由説明を参照できる。なお、この補正予測値が間違っていたとき、最終結果値は補正予測値「0」ではなく、初期入力値「1」が採用される。このとき、項目「01」、項目「02」とも更新適用有無903は空白のままである。
【0102】
図10は、本発明の実施形態における情報処理システム4が保持する対象案件に含まれる項目の予測判定の理由説明、説明要素及び拡張説明に関するデータ構造のテーブルの一例を示す図である。
【0103】
図10(a)には、情報処理システム4が作成する複数の理由説明を管理するためのテーブル1000を示す。
【0104】
図10(a)に示すテーブル1000は、理由説明ID1001、判定条件1002及び納得度1003を含む。
【0105】
理由説明ID1001は、ある予測判定に関して作成した理由説明を一意に特定するための値である。
【0106】
判定条件1002は、ある予測判定の各理由説明を構成する説明要素に関して論理を構成したものである。
【0107】
納得度1003は、ある予測判定の理由説明を受けた被説明者が入力する相対的な納得度に基づいて、個別の理由説明に関してステップS403で算出した納得度を格納する。
【0108】
図10には、例として、配偶者有無の項目の初期入力値に対する補正予測値に対応する理由説明に関して保持されるデータを示す。図10(a)のテーブル1000には、配偶者有無の項目の初期入力値が「無し」(すなわち「0」)であり、それに対する予測補正値が「有り」(すなわち「1」)である場合の理由説明の例を示す。これは、図9(b)の項目ID「01」の例に対応する。
【0109】
この例において、理由説明ID1001が「n1」である理由説明は、配偶者有無の項目の初期入力値が「無し」であり、かつ、配偶者同居の項目の初期入力値が「有り」であるという判定条件が満たされる場合に、配偶者有無の項目の補正予測値として「有り」を出力することに対応する理由説明である。この場合、当該判定条件が満たされるということが、理由説明として出力される。
【0110】
一方、理由説明ID1001が「n2」である理由説明は、配偶者有無の項目の初期入力値が「無し」であり、配偶者同居の項目の初期入力値が「有り」であり、かつ、配偶者不要の項目の初期入力値が「有り」であるという判定条件が満たされる場合に、配偶者有無の項目の補正予測値として「有り」を出力することに対応する理由説明である。この場合も、当該判定条件が満たされるということが、理由説明として出力される。
【0111】
また、図10(a)の例では、理由説明ID1001が「n1」である理由説明及び「n2」である理由説明の納得度1003がそれぞれ「0.35」及び「0.45」である。これは、過去に同様の状況の案件において同様の予測補正値が提示された場合に、後者の理由説明が行われた方が、被説明者が納得しやすかったことを示している。
【0112】
図10(b)には、情報処理システム4が作成する理由説明を構成する説明要素を管理するテーブル1010を示す。
【0113】
図10(b)に示すテーブル1010は、説明要素ID1011、説明要素1012及び重み1013を含む。
【0114】
説明要素ID1011は、理由説明を構成する説明要素を一意に特定するための値である。
【0115】
説明要素1012は、属性名とその属性値に関する判定条件にて構成される。
【0116】
重み1013は、各説明要素に関して計算される重要度の値である。
【0117】
図10(b)の例では、図10(a)に例示した理由説明を構成する説明要素1012として「配偶者同居=有り」、「配偶者有無=無し」及び「配偶者扶養=有り」等が記録され、さらに、それぞれの重み1013として「0.2」、「0.3」及び「0.1」等が記録されている。
【0118】
図10(c)には、情報処理システム4が作成する拡張説明について、被説明者の納得度や拡張説明を構成する説明要素の有無を管理するテーブル1020を示す。
【0119】
図10(c)に示すテーブル1020は、拡張説明ID1021、納得可否1022、納得度1023及び複数の説明要素(例えば説明要素p1_1024、説明要素p2_1025及び説明要素pN_1026等)を含む。
【0120】
拡張説明ID1021は、情報処理システム4が作成する拡張説明を一意に特定するための値である。
【0121】
納得可否1022は、被説明者が入力した、拡張説明について納得したか、納得していないかを表現する値である。
【0122】
納得度1023は、被説明者が入力した、拡張説明について納得した度合いを表現する値である。
【0123】
説明要素p1_1024~説明要素pN_1026等は、各説明要素が各拡張説明の構成要素であるかどうかを示す値であり、構成要素である場合は1を格納する。
【0124】
図10(c)の例では、拡張説明ID1021が「E0x」である拡張説明は、説明要素p2(図10(b)によれば「配偶者有無=無し」)及び説明要素p1(図10(b)によれば「配偶者同居=有り」)を構成要素として含むが、説明要素pNは構成要素として含まない。一方、拡張説明ID1021が「E0x+1」である拡張説明は、説明要素p2、説明要素p1及び説明要素pNのいずれも構成要素として含む。
【0125】
ここで、拡張説明ID1021が「E0x」である拡張説明に対して納得可否1022として「Yes」(すなわちその拡張説明で納得した)の入力があり、拡張説明ID1021が「E0x+1」である拡張説明に対して納得可否1022として「No」の入力があった場合を例として説明する。この場合、被説明者が納得でき、かつ、納得できる拡張説明の中で最も高い予測精度を達成する拡張説明「E0x」を確定することができる。また、納得度を用いる場合は、例えば所定の閾値を0.3としたとき、拡張説明「E0x」の納得度は閾値より大きく、拡張説明「E0x+1」の納得度は閾値より小さいため、納得可否と同様に判定して、最終的な拡張説明E0xを確定することができる。
【0126】
ここで、再び図4を参照して、図8から図10の具体例に基づく処理の流れの一例を説明する。例えば、ステップS404で説明要素p1~pNの重み1013が計算され、その中のいずれか(例えば重み1013が最も大きい説明要素p2)がステップS405で重要説明要素として決定する。
【0127】
ステップS405の後に最初に実行されるステップS406では、例えば重要説明要素である説明要素p2のみを含む理由説明が拡張説明として作成され、表示される。ステップS407で被説明者はその拡張説明に納得したかを入力する。被説明者が納得した場合(ステップS408:Yes)、処理はステップS406に戻る。ステップS406では、被説明者が納得した拡張説明に、まだ含まれていない説明要素(例えば重み1013が2番目に大きい説明要素p1)を追加した新しい拡張説明が作成され、表示される。
【0128】
ステップS406~S408のループが繰り返されるたびに、ステップS406で拡張説明に説明要素が追加されていくため、拡張説明に含まれる説明要素の数は次第に増えていく。説明要素を追加する順序は任意であるが、例えば重み1013の大きさの順でもよい。一般に、理由説明に含まれる説明要素の数が多いほど、予測の精度は高まる。しかしその一方で、説明要素の数が多いほど説明が複雑になるため、その説明が妥当であるかの判断が困難になるなど、被説明者の納得度は低下する傾向がある。
【0129】
ステップS406~S408のループを繰り返す中で、初めて被説明者が納得できないと判定した場合(ステップS408:No)、その時の拡張説明(例えば拡張説明「E0x+1」)の一つ前に作成された拡張説明(例えば拡張説明「E0x」)は、これまでに作成された拡張説明の中で、被説明者が納得することができ、かつ、最も予測精度が高いものであると言える。このため、その拡張説明が、予測精度と納得度の両方を満たす最終拡張説明として選定される(ステップS409)。
【0130】
なお、上記の処理は、初めから全ての説明要素を対象として実行されてもよいが、説明要素の一部の組み合わせを対象として実行されてもよい。その場合、一旦最終拡張説明が選定された後に他の拡張説明も試行すると判定されると(ステップS409:Yes)、説明要素の別の組み合わせを対象として上記の処理が再度実行される。
【0131】
算出された各理由説明の納得度、それに基づいて算出された各説明要素の重み、並びに、予測結果及びそれに対する拡張説明に基づいて被説明者が行った入力値の補正の結果等が、図8図10に示すように情報処理システム4の記憶部102に保持される。このとき、図8図10に示す情報は、被説明者の識別情報を対応付けて保持される。図8図10の例はある被説明者に対応する情報の一例であり、実際には被説明者ごとに同様の情報が保持される。
【0132】
そして、各被説明者が新たな案件を取り扱うときに、情報処理システム4は、過去の当該説明者に対応する情報を参照して、拡張説明等を作成してもよい。被説明者ごとに知識量、経験量等が異なり、したがってどのような説明をすれば納得するかが異なる場合があるが、上記のように被説明者に対応する情報に基づいて拡張説明を生成することによって当該被説明者が納得しやすい理由説明を提供することができる。
【0133】
その一方で、情報処理システム4は、あえて他の被説明者に対応する情報を参照して拡張説明等を作成してもよい。例えば被説明者が自分以外の人物(例えば自分より業務経験が豊富な人物)の納得度に基づいて作成された拡張説明を参照することによって、自分以外の人物がどのような説明で納得するかを知ることができ、それを自身の業務に活用することができる。
【0134】
なお、機械学習モデル5はどのようなものであってもよく、機械学習モデル5に基づく補正予測結果に対応する理由説明はどのように生成されてもよいが、一例を示せば次の通りとなる。すなわち、機械学習モデル5として決定木が用いられてもよく、その場合、予測結果の理由説明は、決定木の根ノードから予測結果に対応する終端ノードに至る経路上の複数のノードのうち少なくともいずれかに対応する属性名及び属性値を説明要素として含んでもよい。
【0135】
以上の本実施形態によれば、ある予測判定について被説明者が納得できる理由説明を探索調整することができ、被説明者が納得でき、かつ最も予測精度が高くなる理由説明内容を確定することができる。
【0136】
また、本発明の実施形態のシステムは次のように構成されてもよい。
【0137】
(1)制御部(例えば制御部101)と、制御部に接続される記憶部(例えば記憶部102)と、を有する情報処理システム(例えば情報処理システム4)であって、記憶部は、入力値に基づく予測結果を出力する予測モデル(例えば機械学習モデル5)と、予測結果が予測された理由を説明するための複数の理由説明(例えばテーブル1000の理由説明)と、を保持し、複数の理由説明の各々は、1以上の説明要素(例えばテーブル1010の説明要素)を含み、制御部は、各理由説明を受けた被説明者の納得の度合いを示す各理由説明の納得度に基づいて、各理由説明に含まれる各説明要素の納得度への寄与の大きさを示す重みを算出し(例えばステップS404)、重みに基づいて、1以上の説明要素を含む新たな理由説明である拡張説明を作成し(例えばステップS406)、作成した拡張説明に被説明者が納得したか否かに基づいて、新たな拡張説明を作成するか、既に作成した1以上の拡張説明のいずれかを最終的な拡張説明として選択するかを判定する(例えばステップS408)。
【0138】
これによって、ある予測結果について被説明者が納得できる理由説明を探索及び調整することができる。
【0139】
(2)上記(1)において、制御部は、被説明者によって入力された、二つの理由説明の複数の組の相対的な納得度に基づいて、各理由説明の納得度を算出する(例えばステップS402~S403)。
【0140】
これによって、被説明者による納得度の入力が容易になる。
【0141】
(3)上記(2)において、制御部は、相対的な納得度、各理由説明の納得度、各説明要素の重み、1以上の拡張説明及び最終的な拡張説明の少なくともいずれかを説明履歴として記憶部に格納する(例えばステップS307)。
【0142】
これによって、過去に入力された納得度を新たな予測結果の理由説明の作成に活用することができる。
【0143】
(4)上記(3)において、説明履歴は、各理由説明の納得度に対応する被説明者の識別情報を含み、制御部は、予測モデルによる予測結果とともに被説明者に対して出力する予測結果に対応する理由説明を、当該被説明者の識別情報に対応する説明履歴に基づいて作成する。
【0144】
これによって、被説明者本人の理解度等に応じて適切な理由説明を作成することができる。
【0145】
(5)上記(3)において、説明履歴は、各理由説明の納得度に対応する被説明者の識別情報を含み、制御部は、予測モデルによる予測結果とともに被説明者に対して出力する予測結果に対応する理由説明を、当該被説明者以外の被説明者の識別情報に対応する説明履歴に基づいて作成する。
【0146】
これによって、被説明者が他人の理解度等を参考として自分の業務に活用することができる。
【0147】
(6)上記(1)において、制御部は、1以上の説明要素を含む拡張説明を作成し、作成した拡張説明に被説明者が納得することを示す情報が入力された場合(例えばステップS408:Yes)、説明要素を追加することによって新たな拡張説明を作成し、作成した拡張説明に被説明者が納得しないことを示す情報が入力された場合(例えばステップS408:No)、被説明者が納得しなかった拡張説明の直前に作成した拡張説明(例えばステップS406~S408のループが複数回実行された場合、ステップS408でNoと判定されたループの前回のループのステップS406で作成された拡張説明)を最終的な拡張説明として選択する。
【0148】
これによって、被説明者が納得することができ、かつ、精度が高い理由説明を選択することができる。
【0149】
(7)上記(6)において、制御部は、重みが最も大きい説明要素を含む拡張説明を作成し(例えばステップS406)、作成した拡張説明に被説明者が納得することを示す情報が入力された場合(例えばステップS408:Yes)、重みの大きさの順に、説明要素を順次追加することによって、新たな拡張説明を作成する(例えば次回以降のループにおけるステップS406)。
【0150】
これによって、被説明者が納得しやすく、精度が高い理由説明を作成することができる。
【0151】
(8)上記(1)において、予測モデルは決定木であり、予測モデルによる予測結果が予測された理由を説明するための複数の理由説明に含まれる各説明要素は、決定木の根ノードから予測結果に対応する終端ノードに至る経路上の複数のノードの各々に対応する属性名及び属性値を含む。
【0152】
これによって、適切な理由説明を作成することができる。
【0153】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したものであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0154】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0155】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0156】
1:情報処理装置
2:クライアント端末
3:書類審査画面表示部
4:情報処理システム
5:機械学習モデル
101:制御部
102:記憶部
103:モデル作成部
104:予測判定作成部
105:判定条件抽出部
106:判定理由作成部
107:個別納得度算出部
108:重要説明要素抽出部
109:拡張説明生成部
201:表示出力部
202:相対納得度入力部
203:納得度入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10