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特開2023-90258ロータヨーク、回転電機、及びロータヨークの製造方法
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  • 特開-ロータヨーク、回転電機、及びロータヨークの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090258
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ロータヨーク、回転電機、及びロータヨークの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/22 20060101AFI20230622BHJP
   H02K 11/225 20160101ALI20230622BHJP
【FI】
H02K21/22 A
H02K21/22 M
H02K11/225
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205134
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】狩野 啓介
(72)【発明者】
【氏名】新島 明
【テーマコード(参考)】
5H611
5H621
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB02
5H611BB06
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR01
5H611UA01
5H621BB07
5H621GA01
5H621GA04
5H621HH09
5H621JK07
5H621JK14
(57)【要約】
【課題】回転位置の検出精度を高めつつ、製造コストを低減できるロータヨーク、回転電機、及びロータヨークの製造方法を提供する。
【解決手段】ロータヨーク9は、ステータ3の周囲を取り囲む周壁部14を有し、ステータ3に対して回転軸線O回りに回転自在に支持されている。周壁部14から径方向外側に向かって突出形成されるとともに、周壁部14の外周面14bに周方向に間隔をあけて配置された複数のリラクタ20を備える。リラクタ20は、少なくとも径方向外側の端部における角部に形成され、切削痕のない平面取り部22と、径方向外側の切削痕のある端面20dと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの周囲を取り囲む周壁部を有し、前記ステータに対して回転軸線回りに回転自在に支持されているロータヨーク本体と、
前記周壁部から径方向外側に向かって突出形成されるとともに、前記周壁部の外周面に周方向に間隔をあけて配置され、前記ロータヨーク本体の回転位置を検出するパルス信号を生成するための複数のリラクタと、
を備え、
前記リラクタは、
少なくとも前記径方向外側の端部における角部で、かつ前記角部のうちの少なくとも1つに対応する箇所に形成され、切削痕のない先細り部と、
前記径方向外側の端面となる切削痕のある平坦面と、
を有し、
前記先細り部は、前記径方向外側に向かうに従って前記リラクタが先細りとなるように傾斜形成、又は外側に向かって凸となるように湾曲形成されている
ことを特徴とするロータヨーク。
【請求項2】
前記先細り部は、前記リラクタの前記径方向外側の端部における角部で、かつ前記リラクタの前記回転軸線方向の両端に形成された面取り部である
ことを特徴とする請求項1に記載のロータヨーク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロータヨークと、
前記ロータヨークにおける前記周壁部の内周面に配置されたマグネットと、
前記ロータヨークの径方向内側に配置され、複数のコイルが巻回されたステータと、
を備える
ことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
ステータの周囲を取り囲む周壁部を有し、前記ステータに対して回転軸線回りに回転自在に支持されているロータヨーク本体に、複数のリラクタを形成するロータヨークの製造方法において、
前記周壁部にプレス加工を施し、前記周壁部から径方向外側に向かってリラクタを突出形成するとともに、少なくとも前記径方向外側の端部における角部で、かつ前記角部のうちの少なくとも1つに対応する箇所に先細り部を形成するプレス工程と、
前記プレス工程の後、前記先細り部が送り方向下流側となるように切削刃を送り、前記先細り部を残しながら前記リラクタの前記径方向外側の端部を切削する切削工程と、
を有し、
前記プレス工程において、前記先細り部は、前記径方向外側に向かうに従って前記リラクタが先細りとなるように傾斜形成、又は外側に向かって凸となるように湾曲形成されている
ことを特徴とするロータヨークの製造方法。
【請求項5】
前記プレス工程において、前記リラクタの前記径方向外側の端部における角部で、かつ前記リラクタの前記回転軸線方向の両端に、前記先細り部としての面取り部を形成する
ことを特徴とする請求項4に記載のロータヨークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータヨーク、回転電機、及びロータヨークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータヨーク(フライホイール)を備えた回転電機(磁石発電機)が知られている。ロータヨークは、ステータの周囲を取り囲む周壁部(円筒部)を有する。周壁部の外周面には、複数のリラクタが周方向に等間隔で形成されている。一方、周壁部の内周面には、マグネットが設けられている。
この種の回転電機におけるロータヨークの回転位置は、ロータヨークの径方向でリラクタと対向するパルス発生器(信号発電子)によって検出される。ロータヨークの回転により、リラクタがパルス発生器の前を横切ると、パルス発生器からパルス信号(信号電圧)が生成される。このパルス信号を利用してロータヨークの回転位置が検出される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
リラクタの製造方法として、例えばプレス加工を施す場合がある。すなわち、周壁部の内周面から径方向外側に向かって打ち出すことにより、周壁部の外周面にリラクタを突出形成する。この後、複数のリラクタの各々とパルス発生器との間の距離を一定に保つために、リラクタの径方向外側の端面に切削加工を施す。これにより、ロータヨークの回転位置の検出精度を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4246209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、単にリラクタの径方向外側の端面に切削加工を施しただけではリラクタの角部にバリが生じてしまう。バリは、リラクタの角部から切削刃が離間する際に切削片の一部が塑性変形して残ることで生じる。バリが生じると、ロータヨークの回転位置の検出精度を向上できなくなってしまう。検出精度を向上するために、リラクタの径方向外側における端面の切削加工を施した後、バリが生じた角部に面取り加工を施す必要がある。このように、リラクタの製造工程が煩雑でロータヨークの製造コストが嵩んでしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、回転位置の検出精度を高めつつ、製造コストを低減できるロータヨーク、回転電機、及びロータヨークの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るロータヨークは、ステータの周囲を取り囲む周壁部を有し、前記ステータに対して回転軸線回りに回転自在に支持されているロータヨーク本体と、前記周壁部から径方向外側に向かって突出形成されるとともに、前記周壁部の外周面に周方向に間隔をあけて配置され、前記ロータヨーク本体の回転位置を検出するパルス信号を生成するための複数のリラクタと、を備え、前記リラクタは、少なくとも前記径方向外側の端部における角部で、かつ前記角部のうちの少なくとも1つに対応する箇所に形成され、切削痕のない先細り部と、前記径方向外側の端面となる切削痕のある平坦面と、を有し、前記先細り部は、前記径方向外側に向かうに従って前記リラクタが先細りとなるように傾斜形成、又は外側に向かって凸となるように湾曲形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るロータヨークの製造方法は、ステータの周囲を取り囲む周壁部を有し、前記ステータに対して回転軸線回りに回転自在に支持されているロータヨーク本体に、複数のリラクタを形成するロータヨークの製造方法において、前記周壁部にプレス加工を施し、前記周壁部から径方向外側に向かってリラクタを突出形成するとともに、少なくとも前記径方向外側の端部における角部で、かつ前記角部のうちの少なくとも1つに対応する箇所に先細り部を形成するプレス工程と、前記プレス工程の後、前記先細り部が送り方向下流側となるように切削刃を送り、前記先細り部を残しながら前記リラクタの前記径方向外側の端部を切削する切削工程と、を有し、前記プレス工程において、前記先細り部は、前記径方向外側に向かうに従って前記リラクタが先細りとなるように傾斜形成、又は外側に向かって凸となるように湾曲形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面取り部を有するリラクタの径方向外側の端部に切削加工を施すので、リラクタの角部の機械的強度を十分確保することができ、切削加工時のバリの発生を防止できる。このため、パルス発生器によるロータヨークの回転位置検出精度を高めつつロータヨークの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における回転電機の断面図である。
図2】本発明の実施形態におけるロータをステータ側からみた平面図である。
図3図1のA部拡大図である。
図4図2のB部拡大図である。
図5】本発明の実施形態におけるリラクタの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
<回転電機>
図1は、回転電機1の断面図である。
回転電機1は、例えば自動二輪車に用いられ、発電機として機能させたり、スタータモータとして機能させたりすることが可能である。
【0013】
図1に示すように、回転電機1は、例えば図示しないクランクシャフトと一体化されたシャフト2と、シャフト2と同軸上に配置され図示しないエンジンブロックに固定されたステータ3と、ステータ3の周囲を覆うように形成されシャフト2に固定されたロータ4と、を備える。
以下の説明では、シャフト2(ロータ4)の回転方向を「周方向」と称し、シャフト2の回転軸線O及び周方向に直交するシャフト2の径方向を単に「径方向」と称して説明する。
【0014】
<ステータ>
ステータ3は、図示しないエンジンブロックに固定されるステータコア5を有している。ステータコア5は、例えば電磁鋼板等の板材を回転軸線O方向に積層して形成されている。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば軟磁性粉を加圧成形して形成してもよい。ステータコア5は、円環状のコア本体5aを有している。
【0015】
コア本体5aの径方向中央には、シャフト2やロータ4との干渉を回避するための貫通孔5bが形成されている。また、コア本体5aには、貫通孔5bの周囲に、複数のボルト挿通孔5cが周方向に並んで形成されている。これらボルト挿通孔5cにボルト18が挿通され、図示しないエンジンブロックにステータコア5が締結固定される。
【0016】
コア本体5aの外周部には、径方向外側に向かって突出する複数のティース6が周方向に並んで設けられている。各ティース6には、絶縁性のインシュレータ7がティース6の周囲を覆うように設けられている。このインシュレータ7の上から各ティース6にコイル50が巻回されている。
【0017】
<ロータ>
図2は、ロータ4をステータ3側からみた平面図である。
図1図2に示すように、ロータ4は、円板状に形成されたベース部8と、ベース部8のステータ3側(図2における左側)に固定されたロータヨーク9と、を備える。ベース部8の径方向略中央には、ステータ3側に向かって円筒状のボス部10が突出形成されている。ボス部10の径方向中央には、シャフト2が挿入される貫通孔10aが形成されている。
【0018】
貫通孔10aには、キー溝10bが形成されている。一方、シャフト2には、キー溝10bと係合する図示しないキーが設けられている。これにより、ベース部8とシャフト2とが相対回転不能に連結される。そして、シャフト2の先端に図示しないナット等を締結することにより、シャフト2にベース部8が固定される。
また、ベース部8には、ボス部10の周囲に、複数の挿通孔11が形成されている。複数の挿通孔11は、周方向に等間隔で配置されている。これら挿通孔11は、ベース部8を厚さ方向に貫通形成されている。挿通孔11にリベット12が挿入されることにより、ベース部8にロータヨーク9が固定される。
【0019】
ロータヨーク9は、磁性材からなる金属板に例えばプレス加工を施して形成されている。ロータヨーク9は、ステータ3をベース部8側から覆うように有底筒状に形成されている。ロータヨーク9は、底壁部13と、底壁部13の外周縁からベース部8とは反対側に回転軸線O方向に沿って屈曲延出された周壁部14と、を有している。
【0020】
底壁部13には、径方向中央に貫通孔13aが形成されている。貫通孔13aには、ベース部8のボス部10及びシャフト2が挿入される。また、底壁部13には、ベース部8の挿通孔11に対応する位置に、厚さ方向に貫通する挿通孔15が形成されている。
各挿通孔11,15にリベット12を挿入し、リベット12の先端を座屈変形させることにより、ベース部8にロータヨーク9が固定される。ベース部8に固定されたロータヨーク9は、ステータ3に対して回転軸線O回りに回転する。
【0021】
周壁部14は、ステータ3の周囲を取り囲んでいる。周壁部14の内周面14aには、複数極に磁化されたマグネット16が周方向に磁極が順番に変わるように設けられている。マグネット16としては、例えばフェライト磁石が使用されている。しかしながらこれに限られるものではなく、希土類磁石を用いることもできる。マグネット16は、マグネットカバー17に覆われている。マグネットカバー17は、ロータヨーク9の開口からマグネット16の内周面を覆うように形成されている。
【0022】
また、周壁部14には、外周面14b側に複数のリラクタ20が突出形成されている。各リラクタ20は、周壁部14の外周面14bに、周方向に等間隔で配置されている。
リラクタ20は、シャフト2と一体となって回転するロータヨーク9の回転位置を検出することにより、エンジンの点火時期などを検出するためのものである。リラクタ20は、後述のパルス発生器30と共に用いられる。以下、リラクタ20について詳述する。
【0023】
図3は、図1のA部拡大図である。図4は、図2のB部拡大図である。
図3図4に示すように、リラクタ20は、周壁部14にプレス加工を施し、周壁部14を内周面14aから径方向外側に向かって突出することにより形成されている。すなわち、周壁部14の内周面14aには、リラクタ20を径方向外側に向かって突出させる分、凹部21が形成される。リラクタ20(ロータヨーク9)の製造方法についての詳細は後述する。
【0024】
周壁部14の外周面14bから突出されたリラクタ20の形状は、ほぼ直方体状である。より詳しくは、リラクタ20における周方向の両側面20a(以下、周方向側面20aと称する)と、リラクタ20における回転軸線O方向の両側面20b(以下、軸方向側面20bと称する)は、プレス加工時に必要な抜き勾配が若干ある程度で、回転軸線Oにほぼ直交している。
【0025】
軸方向側面20bとリラクタ20の径方向外側の端面20dとは、平面取り部22により連結されている。換言すれば、平面取り部22は、リラクタ20の端面20dと軸方向側面20bとの角部に面取りを施したように平坦に形成されている。すなわち、平面取り部22は、回転軸線O方向で対向している。これに対し、リラクタ20の周方向両端には、面取りが施されていない。リラクタ20の周方向両端の角部20cは尖っている。また、リラクタ20の端面20dは、平坦に形成されている。
【0026】
<パルス発生器>
図1に戻り、パルス発生器30は、リラクタ20と径方向で対向するように配置されている。リラクタ20の角部がパルス発生器30を横切ることにより、パルス発生器30からパルス信号(正電圧パルスと負電圧パルスとの矩形波)が生成される。パルス発生器30は、生成されたパルス信号を図示しない制御部(CDIユニット等)に出力する。制御部は、パルス信号を受信することにより、エンジンの回転速度情報やシャフト2の回転角度情報、ロータヨーク9の回転位置等の各種情報を得ることができる。
【0027】
例えば、自動二輪車のエンジンの点火時期は、リラクタ20とパルス発生器30によって得られたエンジンの回転速度情報やシャフト2の回転角度情報に基づいて制御される。より具体的には、パルス発生器30から発せられたパルス波形(矩形波形)における立ち上がりのエッジと立ち下がりのエッジとの中間点をみることにより、上述した各種情報を取得している。
【0028】
図示しない制御部による検出精度を向上させるためには、リラクタ20の周方向の幅をより狭くする必要がある。また、リラクタ20の角部のうち、パルス発生器30を横切る角部、つまり、リラクタ20の周方向両端に形成された角部は、できる限り尖っていることが望ましい。このように構成することで、パルス発生器30によって生成されるパルス波形の乱れが抑えられるからである。パルス波形の乱れが抑えられることにより、パルス波形における立ち上がりのエッジと立ち下がりのエッジとを際立たせることができる。このため、図示しない制御部による検出精度を高めることができる。リラクタ20の周方向両端の角部20cは尖っているので、図示しない制御部による検出精度を高めることができる。
【0029】
<回転電機の動作>
次に、回転電機1の動作について説明する。
自動二輪車のエンジンが始動されると、クランクシャフトが回転される。このクランクシャフトと一体となって、シャフト2及びロータ4が回転される。すると、ステータ3に巻回されているコイル50に対し、マグネット16の磁束量が変化する。この磁束量の変化が起電力となってコイル50に電流が発生する。コイル50に発生する電流は、例えば図示しないバッテリ等に蓄電されたり、図示しない付属電機機器に供給されたりする。
【0030】
回転電機1をスタータモータとして機能させる場合、所定のコイル50に選択的に電流を供給する。この場合、ステータ3の各ティース6に磁束が形成され、この磁束とロータヨーク9のマグネット16との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータ4が継続的に回転され、さらに図示しないクランクシャフトが回転される。この際、上記のパルス発生器30によってエンジンの点火時期が検出され、適正なタイミングでエンジンを点火する。そして、エンジンが始動される。
【0031】
<ロータヨークの製造方法>
次に、図3図5に基づいて、ロータヨーク9の製造方法について説明する。
図5は、ロータヨーク9のうちリラクタ20の製造方法を示す説明図である。
図3図5に示すように、金属板にプレス加工を施して有底筒状とし、ロータヨーク9の外形状を形成する。このとき、プレス加工によってロータヨーク9における周壁部14の一部を内周面14aから径方向外側に向かって押し出す。そして、周壁部14の外周面14bから径方向外側に向かって突出するリラクタ20を形成する(プレス工程)。
【0032】
図5(a)に示すように、プレス加工によって周壁部14の外周面14bからリラクタ20を突出形成した時点において、リラクタ20における径方向外側の端部には、回転軸線O方向両側に、平面取り部22が形成されている。すなわち、平面取り部22は、プレス加工を施すことにより形成される。
続いて、例えば旋盤等により、ロータヨーク9を回転軸線O回りに回転させる。そして、切削刃40により、リラクタ20における径方向外側の端部を切削する(切削工程)。切削刃40の送り方向Dは、回転軸線O方向となる。
【0033】
図5(b)から図5(d)に示すように、切削工程では、リラクタ20の外周面14bからの突出高さを均一にする。このとき、リラクタ20における径方向外側の端部には、切削刃40における送り方向Dの下流側の角部に平面取り部22が位置されている。平面取り部22を形成することにより、リラクタ20の角部の機械的強度が十分確保される。このため、切削片Cpにせんだん力が伝達され、切削加工時のバリの発生を防止して確実に切削片Cpが切断される(図5(d)参照)。
【0034】
切削工程により、リラクタ20における径方向外側の端部に平坦な端面20dが形成される。切削工程により形成された端面20dには、切削痕がある。一方、プレス加工により形成された平面取り部22には、切削痕がない。
【0035】
ここで、プレス工程で形成される平面取り部22の大きさは、リラクタ20の切削代が最も大きい場合でも平面取り部22が残る大きさである。このため、切削工程時において、リラクタ20の角部の機械的強度を確実に確保できる。
リラクタ20の切削代が最も大きい場合とは、プレス工程で形成されるリラクタ20の外周面14bからの突出高さが最大公差である場合である。
【0036】
また、プレス工程で形成されるリラクタ20の外周面14bからの突出高さ、及び平面取り部22の大きさは、リラクタ20の切削代が最も小さい場合でも端面20dの周方向の有効幅が確保できる大きさである。このため、パルス発生器30によって、確実にパルス波形を生成できる。
リラクタ20の切削代が最も小さい場合とは、プレス工程で形成されるリラクタ20の外周面14bからの突出高さが最小公差である場合である。
【0037】
このように、上述の実施形態では、ロータヨーク9は、周壁部14と、周壁部14の外周面14bから径方向外側に向かって突出形成されるとともに、周方向に等間隔で配置された複数のリラクタ20と、を備える。リラクタ20には、端面20dと軸方向側面20bとの角部に平面取り部22が形成されている。平面取り部22は、プレス工程で形成されるので切削痕がない。これに対し、端面20dは、切削工程で形成されるので切削痕がある。
【0038】
このように、平面取り部22は、後に切削するリラクタ20の径方向外側の端部に対して傾斜しているので、平面取り部22が形成されているリラクタ20の角部における機械的強度を十分確保することができる。このため、切削工程時に切削刃40を送る際、切削刃40の送り方向Dにおける下流側に平面取り部22が位置されるようにすることで、切削片Cpにせんだん力が伝達されて確実に切削片Cpを切断できる。この結果、切削加工時のバリの発生を防止できる。よって、パルス発生器30によるロータヨーク9の回転位置検出精度を高めることができる。バリを除去する面取り加工を削減できるので、ロータヨーク9の製造コストを低減できる。
【0039】
平面取り部22は、回転軸線O方向で対向しており、この回転軸線O方向が切削刃40の送り方向Dとなる。このため、リラクタ20の周方向両端の角部20cを尖らせることができる。この結果、ロータヨーク9の回転により、リラクタ20がパルス発生器30の前を横切る際にパルス発生器から生成されるパルス波形の乱れを抑制できる。すなわち、パルス波形における立ち上がりのエッジと立ち下がりのエッジとを際立たせることができる。よって、パルス発生器30によるロータヨーク9の回転位置検出精度をさらに高めることができる。
【0040】
ロータヨーク9の製造方法として、ロータヨーク9の周壁部14から径方向外側に向かってリラクタ20を突出形成させるとともに、リラクタ20に平面取り部22を形成するプレス工程を有する。このプレス工程の後、リラクタ20の径方向外側の端部を切削し、リラクタ20の端面20dを形成する切削工程を有する。このため、リラクタ20の径方向外側の端部を切削する前に、切削刃40のお送り方向Dにおける下流側に位置するリラクタ20の角部の機械的強度を十分確保することができる。この結果、切削片Cpにせんだん力が伝達されて確実に切削片Cpを切断できる。したがって、切削加工時のバリの発生を防止できる。よって、パルス発生器30によるロータヨーク9の回転位置検出精度を高めることができる。バリを除去する面取り加工を削減できるので、ロータヨーク9の製造コストを低減できる。
【0041】
平面取り部22は、回転軸線O方向で対向しており、この回転軸線O方向が切削刃40の送り方向Dとなる。このため、リラクタ20の周方向両端の角部20cにバリが発生してしまうことがなく、この角部20cを尖らせることができる。よって、パルス発生器30によるロータヨーク9の回転位置検出精度をさらに高めることができる。
【0042】
回転電機1の回転位置の検出精度を高めつつ、ロータヨーク9の製造コストを低減できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、及び目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0043】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば上述の実施形態では、回転電機1は、例えば自動二輪車に用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、発電機としてさまざまな装置に用いることができる。発電機やスタータモータとして機能させるにあたって、自動四輪車にも回転電機1を用いることができる。
【0044】
上述の実施形態では、平面取り部22は、リラクタ20の端面20dと軸方向側面20bとの角部に面取りを施したように平坦に形成されている場合について説明した。平面取り部22は、回転軸線O方向で対向している場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、少なくともリラクタ20の径方向外側の端部における角部で、かつ角部のうちの少なくとも1つに対応する箇所に、先細り部が形成されていればよい。先細り部とは、径方向外側に向かうに従ってリラクタ20が先細りとなるように傾斜形成、又は外側に向かって凸となるように湾曲形成されているものをいう。これについて、具体的に以下に説明する。
【0045】
すなわち、リラクタ20は、平面取り部22により径方向外側に向かって先細りとなる。つまり、平面取り部22は、リラクタ20を径方向外側に向かうに従って先細りとなるように形成する先細り部の一例である。平面取り部22に代わってリラクタ20の軸方向側面20b全体を傾斜形成、又は外側に向かって凸となるように湾曲形成してもよい。このように構成した場合であっても、リラクタ20において、切削刃40の送り方向Dにおける下流側の角部の機械的強度を十分確保することができる。外側に向かって凸とは、軸方向側面20bに先細り部を形成する場合、回転軸線O方向の外側に向かって凸という意味である。
【0046】
リラクタ20の角部のみに先細り部を形成する場合、平面取り部22に代わって丸面取り部としてもよい。この丸面取り部も外側に向かって凸となるように形成すればよい。丸面取り部は必ずしも円弧形状である必要はなく、湾曲形成されていてもよい。このように構成した場合であってもリラクタ20の角部における機械的強度を十分確保することができる。
【0047】
また、平面取り部22は、リラクタ20の端面20dと軸方向側面20bとの両角部に形成されていなくてもよい。少なくともリラクタ20の端面20dと軸方向側面20bとの両角部のうちのいずれか一方に形成されていればよい。この場合、平面取り部22が形成されている箇所を、切削刃40の送り方向Dにおける下流側とすればよい。
【0048】
また、平面取り部22は、リラクタ20の端面20dと周方向側面20aとの角部に形成されてもよい。この場合、平面取り部22の形成箇所に対応して切削刃40の送り方向Dを周方向とすればよい。この場合、切削工程では例えば旋盤に代わって例えばフライス等を使用することが可能である。このように構成した場合であっても、バリを除去する工程を削減できる分、ロータヨーク9の製造コストを低減できる。このことは、リラクタ20における周方向側面20aの全体に先細り部を形成する場合にも同様のことがいえる。
【符号の説明】
【0049】
1…回転電機、2…シャフト、3…ステータ、4…ロータ、5…ステータコア、5a…コア本体、5b…貫通孔、5c…ボルト挿通孔、6…ティース、7…インシュレータ、8…ベース部、9…ロータヨーク、10…ボス部、10a…貫通孔、10b…キー溝、11…挿通孔、12…リベット、13…底壁部、13a…貫通孔、14…周壁部、14a…内周面、14b…外周面、15…挿通孔、16…マグネット、17…マグネットカバー、18…ボルト、20…リラクタ、20a…周方向側面、20b…軸方向側面、20c…角部、20d…端面、21…凹部、22…平面取り部、30…パルス発生器、40…切削刃、50…コイル
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