(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090269
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】極低温配管支持構造
(51)【国際特許分類】
F16L 3/00 20060101AFI20230622BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F16L3/00 E
F16L59/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205150
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】田子 和仁
【テーマコード(参考)】
3H023
3H036
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AB07
3H023AC51
3H023AE07
3H036AA02
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC06
3H036AE03
(57)【要約】
【課題】極低温流体を流通させる配管の支持構造体の低温脆化を抑制可能な極低温配管支持構造を提供する。
【解決手段】極低温配管支持構造TS1は、極低温流体を流通させる配管1と、基台10上で配管1を支持する支持部材2と、配管1に対して断熱され、当該配管1の外周面から滴下する液体を受けるトレイ6と、を備える。支持部材2は、配管1に溶接される上方支持具3と、基台10に対して相対移動が可能な下方支持具4と、上方支持具3と下方支持具4との間に配置され断熱材で形成された断熱部5を含む。トレイ6は、断熱部5で保持される保持部64を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温流体を流通させる配管と、
基台上で前記配管を支持する支持部材と、
前記配管に対して断熱され、当該配管の外周面から滴下する液体を受けるトレイと、
を備える極低温配管支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の極低温配管支持構造において、
前記支持部材は、断熱材で形成された断熱部を含み、
前記トレイは、前記断熱部で保持される保持部を有する、極低温配管支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の極低温配管支持構造において、
前記支持部材は、
前記配管に固着されたリブ状部材からなる上端支持部と、
前記基台に対してスライド可能な下端支持部と、
前記上端支持部と前記下端支持部との間の前記断熱部と、
を備える、極低温配管支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の極低温配管支持構造において、
前記上端支持部は、前記配管の下端に溶接される上端部と、前記断熱部に固定される下端部とを備え、前記配管の管軸方向に延びる1枚のリブ状部材からなる、極低温配管支持構造。
【請求項5】
請求項3に記載の極低温配管支持構造において、
前記上端支持部は、
それぞれ前記配管の下端に溶接される上端部と、前記断熱部に固定される下端部とを備え、前記配管の管軸と直交して配置される一対のリブ状部材と、
前記一対のリブ状部材を繋ぐ連結部材と、を備える、極低温配管支持構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の極低温配管支持構造において、
前記基台は、水平方向に延びる柱状構造物からなり、
前記トレイは、前記柱状構造物の幅員よりも幅広のサイズを有する、極低温配管支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極低温の流体を流通させる配管の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液化水素のような極低温の液化ガスを流通させる配管として、真空二重管構造を備えた断熱性配管が知られている(特許文献1)。極低温の液化ガスの貯留施設等では、前記断熱性配管のほか、例えばボイルオフガスの排出用の配管などとして、一時的に極低温ガスが流通される間欠低温配管が敷設されることがある。前記間欠低温配管としては、一般的に断熱層を具備しない配管が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
極低温流体を流通させる配管、とりわけ上掲の間欠低温配管のように断熱層を具備しない配管に極低温ガスを流通させると、当該配管の周囲の気体を液化させる場合がある。液化した気体が当該配管の支持構造体上に滴下すると、前記支持構造体を低温脆化させることがある。
【0005】
本開示の目的は、極低温流体を流通させる配管の支持構造体の低温脆化を抑制可能な極低温配管支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に係る極低温配管支持構造は、極低温流体を流通させる配管と、基台上で前記配管を支持する支持部材と、前記配管に対して断熱され、当該配管の外周面から滴下する液体を受けるトレイと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、極低温流体を流通させる配管の支持構造体の低温脆化を抑制可能な極低温配管支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る極低温配管支持構造を示す断面図であって、
図2のI-I線断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る極低温配管支持構造を示す断面図であって、
図4のIII-III線断面図である。
【
図5】
図5は、比較例に係る極低温配管支持構造を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る極低温配管支持構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本開示に係る極低温配管支持構造の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る極低温配管支持構造TS1を示す断面図、
図2は、
図1のII-II線断面視図である。
図1は、
図2のI-I線断面図でもある。極低温配管支持構造TS1は、基台10上における配管1の支持構造であって、極低温流体を流通させる配管1、支持部材2およびトレイ6を備える。
図1、
図2および他の図にはXYZの方向表示を付している。本明細書では、X方向を配管1が延伸する管軸方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。
【0010】
配管1は、金属製の単管であり、例えば液化水素のような極低温の液化ガス若しくは極低温ガスを流通させる配管である。配管1は、一時的に低温ガスが流通される間欠低温配管であってもよい。間欠低温配管は、例えば、極低温液化ガスの貯蔵設備に装備される安全弁から吹き出す極低温ガスや、前記貯蔵設備への液化ガスの導入時等に発生するボイルオフガスの排出用などに用いられる配管である。配管1は、極低温流体を流通可能な配管であれば特に限定はなく、例えば真空二重配管であっても良い。
【0011】
本実施形態の配管1は、断熱層を具備しない配管である。このため、配管1に例えば極低温の水素ガスが長時間流通すると、当該配管1の表面温度が-200℃以下に低下することがある。このような極低温は、空気の主成分の窒素、酸素の沸点以下であることから、配管1の周囲の空気を凝縮させて液化空気を生成してしまう。つまり、配管1の表面で液化空気が生成され、当該液化空気が配管1から滴下する状況を招来する。
【0012】
基台10は、配管1の支持土台であり、地面や地上構造物、若しくは船舶上の構造物や甲板、或いはこれらの上に組まれた柱状構造物などを例示することができる。
図1および
図2では、水平方向に延びる柱状構造物からなる基台10を例示している。前記柱状構造物としては、炭素鋼などの高強度金属で製作されたパイプラックやフレームラックなどを用いることができる。基台10の上面10Aは水平面であり、配管1を支持する支持部材2が載置されている。
【0013】
支持部材2は、基台10上で配管1を支持する部材であって、上方支持具3、下方支持具4および断熱部5を備える。上方支持具3は、配管1の直下にあって配管1を直接支持する部材である。下方支持具4は、基台10の上面10Aにスライド可能に配置される部材である。断熱部5は、上方支持具3と下方支持具4との間に介在され、これら支持具3、4を熱的に遮断する部材である。
【0014】
上方支持具3は、SUS等の耐低温性を具備する材料、すなわち配管1を流通させる流体の温度域に対応した極低温域においても脆化が発生しない材料で形成され、上端支持部31、上U字金具32および締結部材33を含む。上端支持部31は、配管1の管軸方向に延びる1枚のリブ状部材からなる。
図1および
図2では、上端支持部31として、Y方向視でX方向に細長い矩形の平板であって、Y方向に管径の1/10程度の厚みを持つリブ状部材を例示している。上端支持部31は、配管1に固着されている。詳しくは、前記リブ状部材からなる上端支持部31の上縁である上端部311が、配管1の最下端部分に溶接されている。配管1を直接支持する部分である上端支持部31を1枚のリブ状部材で構成することで、配管1から基台10へと向かう冷熱の伝達経路を、単一かつ狭い断面積の経路に制限することができる。
【0015】
上U字金具32は、上方支持具3において断熱部5に固定される下端部を構成する部材である。上U字金具32は、
図1に示すように、Y方向の断面で下向きに開口したU字型の金具である。上U字金具32のX方向のサイズは、上端支持部31と同一である。上U字金具32の上端面が上端支持部31の下縁に溶接されることで、上U字金具32は上端支持部31と一体化されている。締結部材33は、ボルトおよびナットからなる。前記ボルトは、断熱部5を挟み込んだ上U字金具32をY方向に貫通し、前記ナットは前記ボルトの貫通端から螺合されている。本実施形態では、3つの締結部材33が、管軸方向に等間隔に並んで上U字金具32に締結されている。
【0016】
下方支持具4は、SUSや炭素鋼等で形成され、下端支持部41、下U字金具42および締結部材43を含む。下端支持部41は、水平方向に配置される平板であり、支持部材2の最下部を構成している。下端支持部41は、基台10の上面10Aに対してスライド可能である。これにより、支持している配管1が熱伸縮しても、下端支持部41のスライドにより配管1と基台10との相対変位が許容され、配管1への熱応力の作用を緩和できる。
【0017】
下U字金具42は、Y方向の断面で上向きに開口したU字型の金具である。下U字金具42のX方向のサイズは、下端支持部41と同一である。下U字金具42の下端面が平板状の下端支持部41の上面に溶接されることで、下U字金具42は下端支持部41と一体化されている。締結部材43は、ボルトおよびナットからなる。前記ボルトは、断熱部5を挟み込んだ下U字金具42をY方向に貫通し、前記ナットは前記ボルトの貫通端から螺合されている。3つの締結部材33とX方向の同位置に、3つの締結部材43が管軸方向に等間隔に並んで下U字金具42に締結されている。
【0018】
断熱部5は、Y方向視でX方向に長い矩形の平板であって、Y方向に上端支持部31の2倍程度の厚みを持つ断熱材である。なお、断熱部5の厚みは、強度が高い上端支持部31と断面係数が合致するように選定することが望ましい。断熱部5のX方向のサイズは、上方支持具3および下方支持具4と同一である。もちろん、断熱部5のX方向サイズを、上方支持具3および下方支持具4よりも短く、或いは長く設定しても良い。断熱部5は、配管1と、基台10並びにトレイ6との断熱を図る部材であると共に、配管1を支持する支持部材2の一部を兼ねる部材であるため、剛性に優れた部材であることが望ましい。この観点から、断熱部5としては、GFRP(ガラス繊維強化樹脂)やCFRP(炭素繊維強化樹脂)、硬質ウレタン樹脂などで形成された部材を用いることが望ましい。
【0019】
断熱部5は、配管1に対向する上連結部51と、基台10に対向する下連結部52とを備えている。上連結部51および下連結部52には、それぞれ締結部材33、43のボルトを貫通させる貫通孔が穿孔されている。上連結部51は、上U字金具32に挟み込まれ、締結部材33で締結されることにより、上方支持具3に連結一体化されている。下連結部52は、下U字金具42に挟み込まれ、締結部材43で締結されることにより、下方支持具4に連結一体化されている。このように本実施形態の支持部材2は、配管1に固着される上端支持部31と、基台10に対してスライドする下端支持部41との間が、平板のリブ形状を有する断熱部5で連結された構造を有している。
【0020】
トレイ6は、金属板の折り曲げ体からなり、配管1に対して断熱され、当該配管1の外周面から滴下する液体を受ける部材である。第1実施形態では、断熱部5の左側面および右側面に、それぞれトレイ6が配置された例を示している。トレイ6は、液受け面61、側板62、傾斜板63および保持部64を備える。左右一対のトレイ6は、断熱部5を挟んで対称の形状を有する。
【0021】
液受け面61は、XYの水平方向に延びる平板にて構成され、配管1の外表面から滴下する液体を受ける。
図2に示すように、液受け面61のX方向サイズは、柱状構造物からなる基台10の幅員、つまり基台10のX方向幅よりも幅広である。また、液受け面61のY方向サイズは、下方支持具4の下端支持部41よりも幅広である。このため、液化空気などの極低温液体が、配管1から基台10および下方支持具4に降り注ぐといった事象を、トレイ6の配置により抑制できる。
【0022】
側板62は、液受け面61のY方向エッジから上方に折り曲げられた部分である。側板62により、液受け面61に受けられた液体のY方向エッジからの滴下が防止される。側板62と断熱部5とで、樋の形状が形成されている。傾斜板63は、液受け面61のX方向エッジから斜め下方に折り曲げられた部分である。液受け面61に受けられた液体は、傾斜板63を伝って滴下する。既述の通り、液受け面61は基台10の幅員より広幅であるので、傾斜板63の直下には基台10に対して相対移動する下端支持部41は存在していない。このため、傾斜板63から滴下する液体は、基本的には下端支持部41の存在位置には落下しない。
【0023】
保持部64は、断熱部5で保持される部分である。保持部64は、側板62とは反対側の液受け面61のY方向エッジから下方に折り曲げられた部分である。保持部64は、垂直面である断熱部5の側面に添設され、固定ネジ65によって断熱部5に固定されている。保持部64の態様は、トレイ6を断熱部5に保持させ得る限りにおいて制限はなく、例えば断熱部5に設けた係合部に嵌合する態様、ワイヤや帯状バインダーで締結する態様、接着剤で固着する態様であっても良い。断熱部5と保持部64との間には、受けた液体の漏液を抑止するシール材を介在させることが望ましい。この場合、シール材と接着剤とを兼用させても良い。例えばエポキシ系接着剤を、シール材と接着剤とを兼ねる部材として、断熱部5と保持部64との間に介在させても良い。
【0024】
以上説明した第1実施形態に係る極低温配管支持構造TS1によれば、極低温流体を流通させる配管1の外周面から滴下する液体を受けるトレイ6を備えるので、配管1から滴下する低温液体と支持構造体としての基台10との直接接触による、基台10の低温脆化を抑制できる。また、トレイ6は断熱部5で保持されることによって、配管1に対して断熱されている。このため、極低温ガスが流通するなどして配管1が低温化しても、当該配管1の冷熱のトレイ6への伝熱が規制される。加えて、断熱されたトレイ6に対する、大気の保有熱の入熱も期待できる。つまり、大気との熱交換によりトレイ6が熱を与えられることにより、トレイ6に滴下した液体の蒸発を促進できる利点もある。
【0025】
仮に、トレイ6が配管1を直接支持している上方支持具3と熱的に連結されていると、配管1の冷熱がトレイ6に伝熱し、トレイ6が極低温化する。この場合、トレイ6の周囲の空気を液化させてしまい、当該液化空気の滴下により基台10や支持部材2を低温脆化させる不具合が生じ得る。しかし、本実施形態によれば、トレイ6と配管1とが断熱されているので、上記の不具合を抑制できる。
【0026】
また、第1実施形態では、断熱部5と配管1との間に、リブ状部材からなる上端支持部31が介在する。一般に伝熱量は、断面積に比例して大きくなり、伝熱距離に反比例して小さくなる。リブ状の上端支持部31を採用することで、配管1から断熱部5への伝熱経路の断面積を小さくできる。従って、熱抵抗を高めて、トレイ6に対する断熱性能を向上できる。また、断熱部5もリブ状部材であるので、基台10への伝熱経路の断面積も小さくできる。さらに、リブ状の上端支持部31と断熱部5とが連結された構造を有する支持部材2であるので、配管1と基台10との間の伝熱距離も確保し易い。
【0027】
下端支持部41は断熱部5により上端支持部31と断熱されているので極低温化することはない。また、配管1から滴下する液体はトレイ6で受けられるので、下端支持部41に極低温液体が降り注ぐこともない。このため、下端支持部41の基台10の上面10Aに対するスライド部分への着霜や氷結が抑制される。従って、下端支持部41のスライドによる配管1の熱応力開放の役目を阻害しない。
【0028】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る極低温配管支持構造TS2を示す断面図、
図4は、
図3のIV-IV線断面視図である。
図3は、
図4のIII-III線断面図でもある。極低温配管支持構造TS2は、基台10上で比較的管径の大きい配管を支持する構造であって、極低温流体を流通させる配管1A、支持部材2Aおよびトレイ6Aを備える。
【0029】
配管1Aは、金属製の単管からなり、極低温の流体若しくは極低温ガスを流通させる配管であり、例えば間欠低温配管である。基台10は、配管1Aの支持土台であって、支持部材2Aが載置される上面10Aを有する。
【0030】
支持部材2Aは、基台10上で配管1を支持する部材であって、上方支持具3A、下方支持具4AおよびX方向に離間して配置される一対の断熱部5Aを備える。これらの材質等は、第1実施形態と同様である。上方支持具3Aは、配管1Aの直下にあって配管1Aを直接支持している。下方支持具4Aは、基台10の上面10Aにスライド可能に配置されている。断熱部5Aは、上方支持具3Aと下方支持具4Aとの間に介在され、これら支持具3A、4Aを熱的に遮断している。
【0031】
上方支持具3Aは、管軸方向であるX方向に所定間隔を置いて各々一対で配置された、上端支持部31A(リブ状部材)、上U字金具32Aおよび締結部材33Aを含む。上端支持部31Aは、管軸と直交するY方向に延びるリブ状部材からなり、一対の断熱部5Aに対応して一対で配置されている。上端支持部31Aは、配管1Aの下端領域の円弧形状に沿った凹型の円弧支持面からなる上端部311Aを有する。上端部311Aは、配管1Aの下端領域に溶接されている。
【0032】
上U字金具32Aは、上方支持具3Aにおいて断熱部5Aに固定される下端部を構成する部材である。上U字金具32Aは、X方向の断面で下向きに開口したU字型の金具であり、一対の上端支持部31Aの下端にそれぞれ溶接されている。締結部材33Aは、ボルトおよびナットからなる。前記ボルトは、断熱部5Aを挟み込んだ上U字金具32AをX方向に貫通し、前記ナットは前記ボルトの貫通端から螺合されている。
【0033】
一対の上端支持部31Aは、上連結板34によって繋がれている。上連結板34は、X方向に延びる平板状部材であり、その一端が一方の上端支持部31Aに、他端が他方の上端支持部31Aに、それぞれ溶接されている。上連結板34で一対の上端支持部31Aを一体化することで、上方支持具3Aの剛性を高めることができる。なお、上連結板34の上端縁は、配管1Aの下端に溶接しても良いし、前記溶接を省いても良い。
【0034】
下方支持具4Aは、下端支持部41A、下U字金具42Aおよび締結部材43Aを含む。下端支持部41Aは、水平方向に配置される1枚の平板であり、支持部材2Aの最下部を構成している。下端支持部41Aは、基台10の上面10Aに対してスライド可能であり、配管1Aへの熱応力の作用を緩和する。
【0035】
下U字金具42Aは、X方向の断面で上向きに開口したU字型の金具である。下U字金具42Aは、一対の断熱部5に対応してX方向に離間して一対で配置され、下端支持部41Aの上面に溶接されている。締結部材43Aは、ボルトおよびナットからなる。前記ボルトは、断熱部5Aを挟み込んだ下U字金具42AをX方向に貫通し、前記ナットは前記ボルトの貫通端から螺合されている。一対の下U字金具42A同士は、下連結板44によって相互連結されている。下連結板44は、X方向に延びるリブ状部材であり、その一端が一方の下U字金具42Aに、他端が他方の下U字金具42Aに、それぞれ溶接されている。
【0036】
一対の断熱部5Aは、Y方向に延びる矩形の平板からなる断熱材である。
図3では、上端支持部31、上U字金具32および下U字金具42Aと同じY方向のサイズを有する断熱部5Aを例示しているが、これらとY方向サイズを異ならせても良い。断熱部5AのX方向の厚みは、上端支持部31Aと断面係数と近似するサイズに選定される。
【0037】
断熱部5Aは、配管1Aに向かう上連結部51Aと、基台10に向かう下連結部52Aとを備える。上連結部51Aおよび下連結部52Aには、それぞれ締結部材33A、43Aのボルトを貫通させる貫通孔が穿孔されている。上連結部51Aは、上U字金具32Aに挟み込まれ、締結部材33Aで締結されることにより、上方支持具3Aに連結一体化されている。下連結部52Aは、下U字金具42Aに挟み込まれ、締結部材43Aで締結されることにより、下方支持具4Aに連結一体化されている。
【0038】
トレイ6Aは、金属板の折り曲げ体からなり、配管1Aに対して断熱され、当該配管1Aの外周面から滴下する液体を受ける部材である。第2実施形態では、一枚物のトレイ6Aが、一対の断熱部5Aに嵌め込まれる態様で設置されている例を示している。トレイ6Aは、液受け面61A、側板62A、傾斜板63A、保持部64Aおよび開口部66を備える。
【0039】
液受け面61Aは、水平方向に延びる平板にて構成され、配管1Aの外表面から滴下する液体を受ける。
図4に示すように、液受け面61AのX方向サイズは、基台10のX方向幅よりも幅広である。また、液受け面61AのY方向サイズは、下方支持具4Aの下端支持部41Aよりも幅広である。これにより、配管1Aから滴下する極低温液体の、基台10および下方支持具4Aへの降り注ぎが抑制される。
【0040】
側板62Aは、液受け面61AのY方向の両エッジから各々上方に折り曲げられた部分である。一対の側板62により、液受け面61Aを底板とする樋の形状が形成されている。傾斜板63Aは、液受け面61AのX方向エッジから斜め下方に折り曲げられた部分である。
【0041】
保持部64Aは、断熱部5Aで保持される部分である。保持部64Aは、一対の断熱部5Aに対応するよう、二カ所に設けられている。保持部64Aは、液受け面61Aの一部に切れ目を入れて下方に折り曲げて形成されている。開口部66は、保持部64Aの折り曲げによって形成された開口であり、断熱部5Aが挿通されている。保持部64Aは、開口部66を貫通する断熱部5Aの側面に添設され、固定ネジ65Aによって断熱部5Aに固定されている。
【0042】
第2実施形態に係る極低温配管支持構造TS2によれば、配管1Aに対して断熱されたトレイ6Aを備えるので、第1実施形態と同様に、基台10の低温脆化の抑制、トレイ6の極低温化の抑制を図れる。これに加え、一対のリブ状部材からなる上端支持部31Aを上連結板34で繋いだ構造を有する上方支持具3Aが適用されているので、伝熱断熱面積を抑制しつつ、比較的広い支持面積で配管1Aを支持できる。このため、管径が大きい配管1Aであっても、安定的な支持構造を実現できる。
【0043】
[比較例]
ここで、上掲の極低温配管支持構造TS1、TS2に対する比較例を示しておく。
図5は、比較例に係る極低温配管支持構造TS0を示す断面図である。極低温配管支持構造TS0における配管1の支持部材20は、上端支持部21、平板22、下端支持部23および断熱部24を含む。上端支持部21の上端縁が配管1に溶接され、平板22は上端支持部21の下端縁に溶接されている。下端支持部23は、基台10の上面10Aにスライド可能な平板である。断熱部24は、平板22と下端支持部23との間に介在されている。トレイ600は、液受け面601と側板602とを有し、配管1に直結している上端支持部21で保持されている。
【0044】
また、トレイ600は、配管1に直結されている上端支持部21で保持されているので、配管1の冷熱が伝熱してしまう。この場合、トレイ600が、その周囲の空気を液化させてしまい、当該液化空気の滴下により基台10や支持部材20を低温脆化させる不具合が生じ得る。さらに、下端支持部23への着霜により、基台10の上面10Aのスライド移動を阻害し得る。以上のような比較例の不具合を、上掲の極低温配管支持構造TS1、TS2によれば解消することができる。
【0045】
[変形実施形態]
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上掲の実施形態に限定されるものではない。例えば、トレイ6、6Aの配管1、1Aに対する断熱の態様は、種々の変形実施形態を取り得る。上掲の実施形態では、配管1、1Aと基台10とを断熱する断熱部5、5Aを利用してトレイ6、6Aを保持させる例を示した。これに代えて、トレイの断熱を、専用の断熱材を用いて達成しても良い。一例として、
図6に変形実施形態に係る極低温配管支持構造TS3を例示する。
【0046】
極低温配管支持構造TS3における配管1の支持部材2Bは、上方支持具3B、下方支持具4Bおよび断熱部5Cを備える。上方支持具3Bは、上端縁が配管1に溶接された上端支持部31Bと、上端支持部31Bの下端縁に溶接された平板からなる下端部32Bとを有する。下方支持具4Bは、基台10の上面10Aにスライド可能な平板である。断熱部5Cは、下端部32Bと下方支持具4Bとの間に介在されている。断熱部5Cは、配管1と基台10とを断熱している。
【0047】
トレイ6Bは、上端支持部31Bの両側面に一対で配置され、配管1から滴下する液体を受ける。トレイ6Bは、上端支持部31Bの両側面に各々取り付けられた断熱部5Bを介して保持されている。このような保持態様であっても、配管1の冷熱を断熱部5Bにて断熱することができ、トレイ6Bの極低温化を抑制することができる。
【0048】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0049】
本開示の一局面に係る極低温配管支持構造は、極低温流体を流通させる配管と、基台上で前記配管を支持する支持部材と、前記配管に対して断熱され、当該配管の外周面から滴下する液体を受けるトレイと、を備える。
【0050】
この極低温配管支持構造によれば、極低温流体を流通させる配管の外周面から滴下する液体を受けるトレイを備えるので、前記配管から滴下する低温液体と基台との直接接触による当該基台の低温脆化を抑制できる。また、前記トレイは前記配管に対して断熱されている。このため、前記配管の冷熱の前記トレイへの伝熱が規制される。加えて、前記断熱により、大気の保有熱の前記トレイへの入熱も期待できる。従って、前記トレイ自身が極低温化することを抑制できる。前記冷熱で前記トレイが極低温化すると、周囲の気体を液化させてしまい、当該液体の滴下により前記基台や前記支持部材を脆化させる不具合が生じ得る。しかし、前記トレイと前記配管との断熱により、上記の不具合を抑制できる。
【0051】
上記の極低温配管支持構造において、前記支持部材は、断熱材で形成された断熱部を含み、前記トレイは、前記断熱部で保持される保持部を有することが望ましい。
【0052】
この支持構造によれば、支持部の一部に断熱部が組み込まれ、当該断熱部でトレイが保持されるので、支持構造をシンプル化することができる。
【0053】
上記の極低温配管支持構造において、前記支持部材は、前記配管に固着されたリブ状部材からなる上端支持部と、前記基台に対してスライド可能な下端支持部と、前記上端支持部と前記下端支持部との間の前記断熱部と、を備える構造とすることができる。
【0054】
この支持構造によれば、断熱部と配管との間には、リブ状部材からなる上端支持部が介在することになる。このため、前記配管から前記断熱部への伝熱経路の断面積を小さくして熱抵抗を高めることが可能となるので、前記トレイに対する断熱性能を向上させることができる。また、下端支持部は前記断熱部により前記上端支持部と断熱されているので極低温化することはなく、前記配管から滴下する液体は前記トレイで受けられる。従って、前記下端支持部の基台に対するスライド部分の着霜や氷結が抑制され、前記下端支持部のスライドによる前記配管の熱応力開放の役目を阻害しない。
【0055】
上記の構成において、前記上端支持部は、前記配管の下端に溶接される上端部と、前記断熱部に固定される下端部とを備え、前記配管の管軸方向に延びる1枚のリブ状部材からなる構造とすれば、前記配管から前記断熱部への伝熱をより規制し易くなる。
【0056】
上記の極低温配管支持構造において、前記上端支持部は、それぞれ前記配管の下端に溶接される上端部と、前記断熱部に固定される下端部とを備え、前記配管の管軸と直交して配置される一対のリブ状部材と、前記一対のリブ状部材を繋ぐ連結部材と、を備える構造とすることができる。
【0057】
この支持構造によれば、上端支持部が一対のリブ状部材を備え、前記一対のリブ状部材が連結部材で繋がれる構造であるので、断熱面積を抑制しつつ、比較的広い支持面積で配管を支持できる。このため、前記配管が大型である場合等に、安定的な支持構造を実現できる。
【0058】
上記の極低温配管支持構造において、前記基台は、水平方向に延びる柱状構造物からなり、前記トレイは、前記柱状構造物の幅員よりも幅広のサイズを有することが望ましい。
【0059】
この支持構造によれば、トレイの幅方向のエッジに液体を排出する排液部を設けても、当該排液部から排出された液体が柱状構造物上に滴下し難い構造となり、前記柱状構造物の低温脆化を抑制できる。
【符号の説明】
【0060】
TS1、TS2、Ts3 極低温配管支持構造
1、1A 配管
10 基台
2、2A、2B 支持部材
3、3A、3B 上方支持具
31、31A 上端支持部(リブ状部材)
311、311A 上端部
32、32A 上U字金具(下端部)
34 上連結板
4、4A、4B 下方支持具
5、5A、5B 断熱部
6、6A、6B トレイ
64、64A 保持部