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特開2023-90279フロントパネルボックスおよびその施工方法
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  • 特開-フロントパネルボックスおよびその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090279
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】フロントパネルボックスおよびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 55/00 20060101AFI20230622BHJP
   A47K 1/00 20060101ALI20230622BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20230622BHJP
   A47B 67/02 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A47B55/00
A47K1/00 H
A47K1/00 Z
A47B97/00 L
A47B67/02 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205163
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 麻友
(72)【発明者】
【氏名】塩見 明
【テーマコード(参考)】
3B067
【Fターム(参考)】
3B067AA00
3B067BA00
3B067CA00
3B067DA00
(57)【要約】
【課題】壁の補強状況と無関係に施工することができるフロントパネルボックスを、その施工方法とともに提供すること。
【解決手段】本開示に係るフロントパネルボックス1は、左側板2と、右側板3と、左側板2および右側板3の後部同士を繋ぐ背板4と、左側板3および右側板2の前側上部同士を繋ぐ内幕板5とを有している床固定用のものである。さらに、左側板2および右側板3の下部には、固定金具7の取り付け用の下穴が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側板と、
右側板と、
前記左側板および前記右側板の後部同士を繋ぐ背板と、
前記左側板および前記右側板の前側上部同士を繋ぐ内幕板とを有し、
前記左側板および前記右側板の下部に固定金具取り付け用の下穴が形成されている床固定用のフロントパネルボックス。
【請求項2】
請求項1に記載のフロントパネルボックスであって、前記固定金具として、
縦片部と横片部とがアングル部で繋がっており、前記縦片部に前記アングル部と交差する縦方向の長穴が形成されており、前記横片部に穴が形成されているL型金具を有するフロントパネルボックス。
【請求項3】
左側板と、
右側板と、
前記左側板および前記右側板の後部同士を繋ぐ背板と、
前記左側板および前記右側板の前側上部同士を繋ぐ内幕板と、
縦片部と横片部とがアングル部で繋がっており、前記縦片部に前記アングル部と交差する縦方向の長穴が形成されており、前記横片部に穴が形成されているL型金具とを有し、 前記左側板および前記右側板の板面と前記縦片部とが接触しており、
前記横片部が床面に固定されており、
前記長穴を通して前記左側板および前記右側板にねじが差し込まれているフロントパネルボックス。
【請求項4】
請求項2と請求項3とのいずれか1つに記載のフロントパネルボックスであって、前記L型金具は、
前記横片部に前記アングル部と平行な縦方向の長穴が形成されているものであるフロントパネルボックス。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載のフロントパネルボックスであって、
前記背板が一枚板であるフロントパネルボックス。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載のフロントパネルボックスであって、
前記内幕板は、水平部と壁部とを有するL字断面のものであり、
前記壁部は、
前記左側板および前記右側板における前端側の位置、かつ、
上端が前記左側板および前記右側板の上端と一致する位置に配置されているフロントパネルボックス。
【請求項7】
フロントパネルボックスの施工方法であって、
前記フロントパネルボックスは、
左側板と、
右側板と、
前記左側板および前記右側板の後部同士を繋ぐ背板と、
前記左側板および前記右側板の前側上部同士を繋ぐ内幕板とを有し、
前記左側板および前記右側板の下部に固定金具取り付け用の下穴が形成されているものであり、
縦片部と横片部とがアングル部で繋がっており前記縦片部に前記アングル部と交差する縦方向の縦方向の長穴が形成されているL型金具を用い、
前記フロントパネルボックスを床面上の設置位置に置き、
前記L型金具を、前記左側板および前記右側板の下部に、前記縦片部が前記左側板または前記右側板に接触し、前記横片部が床面上に位置し、前記長穴が前記下穴の上に位置するように仮固定し、
前記フロントパネルボックスの不陸調整を実施し、
不陸調整後に前記L型金具の高さ方向位置を前記長穴を利用して調整し、
前記L型金具の高さ方向位置の調整の後に、前記L型金具を前記左側板および前記右側板に対して本固定するフロントパネルボックスの施工方法。
【請求項8】
請求項7に記載のフロントパネルボックスの施工方法であって、
前記仮固定の際に、前記長穴を通して前記下穴にねじを差し込んで第1の締結力で固定し、
前記本固定の際に、前記ねじを前記第1の締付けトルクより強い第2の締付けトルクで増し締めするフロントパネルボックスの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、フロントパネルボックスおよびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗面化粧台の床面への固定構造が開示されている。同文献の固定構造ではL字状の固定金具と高さ調節用のボルトとを用いている。高さ調節用のボルトは、洗面化粧台の側板の底面と床面との間に配置される。L字状の固定金具は、その一片が側板底面に向き合う床面に固定され、他方の一片が側板の内面側に固定される形で配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-209774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術では、床面への取り付け剛性が不十分であった。このため実質的には、文献中に記載されている床面への固定だけでは足りず、壁に対する固定も必要であった。既存の壁に対して固定しようとすると、壁の強度が不明であるために施工が困難な場合があった。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、壁の補強状況と無関係に施工することができるフロントパネルボックスをその施工方法とともに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様におけるフロントパネルボックスは、左側板と、右側板と、左側板および右側板の後部同士を繋ぐ背板と、左側板および右側板の前側上部同士を繋ぐ内幕板とを有し、左側板および右側板の下部に固定金具取り付け用の下穴が形成されている床固定用のものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係るフロントパネルボックスの斜視図である。
図2図1のフロントパネルボックスを切断した状態で示す斜視図である。
図3】実施の形態における固定金具を示す斜視図である。
図4】固定金具が取り付けられる前の時点でのフロントパネルボックスを切断した状態で示す斜視図である。
図5】フロントパネルボックスを設置位置に仮置きした状況を示す側視断面図である。
図6】固定金具を取り付け位置に仮置きした状態を、一部切断した状態で示す斜視図である。
図7】施工後における固定金具の周辺を、一部切断した状態で示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示す本形態のフロントパネルボックス1は、左側板2と、右側板3と、背板4と、内幕板5とを有している。背板4は、左側板2と右側板3との後部同士を繋いでいる。内幕板5は、左側板2と右側板3との前側上部同士を繋いでいる。フロントパネルボックス1はさらに、蹴込み板6を有している。蹴込み板6は、左側板2と右側板3との前側下部同士を繋いでいる。フロントパネルボックス1では、左側板2、右側板3、背板4、内幕板5の各部材は、ダボ組みにより結合されている。フロントパネルボックス1は全体として、前方と上方と下方とが開口した直方体状のものである。
【0009】
フロントパネルボックス1は、屋内に設置して使用されるものである。フロントパネルボックス1は実際には、前面に扉その他のフロントパネルが取り付けられ、上部に洗面ボウル等の上部構成物が取り付けられた状態でユーザーにより使用される。上部構成物が洗面ボウルである場合のフロントパネルボックス1は洗面台である。
【0010】
図2では、図中左側がフロントパネルボックス1の後面であり、図中右側が前面である。背板4は、フロントパネルボックス1の後面に配置されている。フロントパネルボックス1の前面では、上方の内幕板5と下方の蹴込み板6との間が開口している。実際にユーザーがフロントパネルボックス1を使用する段階では前述のように、この開口はフロントパネルにより塞がれる。図2中にはさらに、右側板3の内面が見えている。右側板3の内面の下端には、2つの固定金具7が取り付けられている。図1は示されるように左側板2の内面の下端にも、2つの固定金具7が取り付けられている。
【0011】
背板4は、フロントパネルボックス1の後面のほぼ全面を覆っている。フロントパネルボックス1の全高と全幅とによる後面の面積の80%以上が背板4で占められていることが望ましい。ただし、上部構成物が前述の洗面ボウル等の水回り品である場合には、施工に際して施工者が背板4に穴を開ける場合がある。給水管および配水管の設置のためである。背板4は好ましくは、一枚板である。例えば、ベタ芯と称される化粧面付きのパーティクルボードを背板4として使用することができる。背板4が大面積のものであることにより、フロントパネルボックス1の全体としての剛性が高い。背板4が一枚板であるとさらに剛性が高い。
【0012】
内幕板5は、図2に示されるように、水平部51と壁部52とを有するL字断面のものである。内幕板5は、2枚の平板状の板をL字状に組み付けたものでもよいし、一体ものでもよい。内幕板5のこの形状も、フロントパネルボックス1の全体としての剛性向上に貢献している。
【0013】
内幕板5では、壁部52が、水平部51における前端側に位置している。この壁部52の位置は、右側板3および左側板2に対しても前端側の位置である。つまり壁部52は、フロントパネルボックス1の全体に対して前端に位置している。フロントパネルボックス1における壁部52の高さ方向位置は、壁部52の上端が右側板3および左側板2の上端と一致する位置である。水平部51は、壁部52の高さ方向の幅に対して下端に位置している。水平部51のこの高さ方向位置は、フロントパネルボックス1の上端に対して、壁部52の高さ方向の幅の分下寄りの位置である。壁部52および水平部51のこの配置は、前述の上部構成物の設置に対する制約の少ない配置である。フロントパネルボックス1の全体としての剛性向上にも有利な配置である。
【0014】
固定金具7について説明する。固定金具7は図3に示すように、縦片部71と横片部72とを有している。縦片部71と横片部72とは、アングル部73で繋がっている。固定金具7は、縦片部71と横片部72とがL字形に繋がっているL型金具である。縦片部71は、フロントパネルボックス1において左側板2の内面または右側板3の内面に取り付けられる部位である。横片部72は、フロントパネルボックス1の施工において床面に固定される部位である。
【0015】
固定金具7には、固定のための穴がいくつか開けられている。縦片部71に開けられている穴として、穴74、穴75が挙げられる。横片部72に開けられている穴として、穴76、穴77が挙げられる。これらのうち穴75、穴77は、木ねじ等の締結部材を通すための通常の丸穴である。穴74、穴76は、穴75、穴77と異なり、長穴である。
【0016】
穴74は、縦片部71に形成されている縦方向の長穴である。以下、長穴74という。長穴74の長手方向は、アングル部73に対して垂直な方向である。長穴74の役割は、フロントパネルボックス1を水平に設置するため、左側板2に対する固定金具7の取り付け高さまたは右側板3に対する固定金具7の取り付け高さを調整することである。穴76は、横片部72に形成されている横方向の長穴である。以下、長穴76という。長穴76の長手方向は、アングル部73に対して平行な方向である。長穴76の役割は、フロントパネルボックス1の設置位置を調節するため、床面に対する固定金具7の取り付け位置を調整することである。
【0017】
フロントパネルボックス1の施工について説明する。まず、施工前の時点でのフロントパネルボックス1について述べる。施工前のフロントパネルボックス1には、固定金具7が取り付けられていない。施工前のフロントパネルボックス1における固定金具7が取り付けられる予定の2箇所の位置には、図4に示すように下穴21が形成されている。下穴21は、右側板3の内面における下端付近の位置に形成されている。下穴21は、右側板3の外面には達していない有底穴である。
【0018】
下穴21は、固定金具7の取り付け用の穴である。下穴21はより具体的には、縦片部71の長穴74をねじ止めするための穴である。下穴21の位置は、フロントパネルボックス1の設置位置の床面の個別の状況を考慮することなく、標準的な位置に定められている。下穴21は、フロントパネルボックス1が工場出荷される時点ですでに形成されている。図4には現れていないが左側板2の内面の下端付近にも、同様に2箇所の下穴21が形成されている。施工前のフロントパネルボックス1には、縦片部71の穴75をねじ止めするための下穴は形成されていない。
【0019】
施工前のフロントパネルボックス1は、上記のように固定金具7が取り付けられておらず下穴21が形成されている状態で、工場から施工場所へ向けて出荷される。固定金具7は、施工前のフロントパネルボックス1とセットにして施工場所へ届けられてもよいし、施工前のフロントパネルボックス1とは別に固定金具7の出荷元から施工場所へ届けられてもよい。
【0020】
フロントパネルボックス1の施工手順について説明する。フロントパネルボックス1の施工とは、フロントパネルボックス1を、屋内におけるその使用予定箇所に据え付けることである。その際に使用予定箇所の床面の起伏に対処するための不陸調整も行われる。上部構成物の取り付けおよびそのためのフロントパネルボックス1の加工も行われる。
【0021】
施工の概略の手順は、次の通りである。以下順に説明する。
1.仮置き
2.固定金具7の取り付け
3.付属物類の取り付け
【0022】
「1.仮置き」について述べる。施工者はフロントパネルボックス1をまず、図5に示されるように設置箇所に置く。これを仮置きという。仮置きされたフロントパネルボックス1は、床面8の上で、背板4を建物の壁面9に向けている。施工に際して背板4を加工する必要がある場合には、仮置きした状態で施工者が加工する。例えば、上部構成物が洗面ボウルである場合の給水および排水を壁面9に対して行う場合、施工者は、給水管および排水管を通すための穴を背板4に開ける必要がある。上部構成物が電気機器を含んでおりそのための電力供給を壁面9から受ける場合には、施工者は、給電コードを通すための穴を背板4に開ける必要がある。上部構成物がガス使用機器を含んでいる場合のガス管を通すための穴も同様である。
【0023】
フロントパネルボックス1を設置箇所に仮置きした状態では、施工者は、上記のための穴を開ける位置を把握することができる。施工者は穴開け作業を、ホルソー等の公知の工具により実施することができる。施工者は穴開け作業を、フロントパネルボックス1を仮置き位置から撤去して行ってもよい。その場合施工者は、穴開け位置を決定した後で、フロントパネルボックス1を仮置き位置から一旦撤去し、穴開け作業を行い、その後にフロントパネルボックス1を仮置き位置に戻す。穴開けの必要がない場合には、施工者は背板4の加工を行わない。
【0024】
次に「2.固定金具7の取り付け」について述べる。仮置きしたフロントパネルボックス1は、固定金具7により床面8に固定される。そのための固定金具7の取り付け作業の中で、不陸調整も行われる。不陸調整とは、床面8の起伏に関わらずフロントパネルボックス1を水平に設置することである。不陸調整を含めた固定金具7の取り付けは、次の手順で行われる。
2-1.固定金具7の仮置き
2-2.長穴76の下穴開け
2-3.長穴74、長穴76の仮固定
2-4.不陸調整
2-5.本固定
【0025】
「2-1.固定金具7の仮置き」では、施工者は、4つの固定金具7をそれぞれの取り付け位置に置く。施工者は、横片部72を床面8の上に置き、立っている縦片部71を左側板2の内面および右側板3の内面に接触させる。置かれた固定金具7では、横片部72が床面8上に位置している。施工者はさらに、長穴74を通して下穴21が見えるように、固定金具7の位置を調節する。この状態では、長穴74が下穴21の上に位置している。言い替えると、下穴21が長穴74を通して露出している。図6はこの状態を示している。
【0026】
「2-2.長穴76の下穴開け」では、施工者は、床面8における、長穴76の中に見えている領域内の箇所に下穴81を開ける。下穴81を開ける位置は、長穴76の長手方向の範囲内の中央辺りが好ましい。施工者は、下穴81を開ける作業を、4つの固定金具7のそれぞれの長穴76の位置に対していずれも実施する。
【0027】
床面8が乾式床である場合には、施工者は、長穴76を通して床面8の当該箇所にドリルを当てて下穴81を開ける。床面8が湿式床である場合には、施工者は、長穴76を通して床面8の当該箇所に目印を書き込む。そして施工者は、一旦固定金具7を撤去し、床面8における目印の箇所にドリルを当てて下穴81を開ける。施工者は、開けた下穴81に公知のPCプラグを挿入し、その後に固定金具7を元の位置に戻す。
【0028】
「2-3.長穴74、長穴76の仮固定」では、施工者は、長穴74および長穴76にそれぞれねじ10(図4参照)を差し込み、仮固定する。ねじ10は、長穴74を通して下穴21に、長穴76を通して下穴81に、それぞれ差し込まれる。この段階では本固定とはしない。このため施工者は、後述する第2の締付けトルクより弱い第1の締付けトルクでねじ10を締め込む。これにより縦片部71は、左側板2、右側板3に対して、ひとりでには動かないが力が掛かれば縦方向に摺動できる程度に緩く固定される。横片部72は、床面8に対して、ひとりでには動かないが力が掛かれば横方向に摺動できる程度に緩く固定される。
【0029】
「2-4.不陸調整」では、施工者は、アジャスターボルト等の公知の工具により不陸調整を実施する。不陸調整によりフロントパネルボックス1は水平な状態となる。不陸調整により、固定金具7が少し上下方向に摺動する場合がある。その後に施工者は、各固定金具7について、横片部72と床面8との接触状況を確認する。もし、床面8に対して横片部72が浮いている固定金具7があった場合には、施工者は、その固定金具7を下向きに押して横片部72と床面8とを接触させる。このときに、縦片部71が左側板2、右側板3に対して摺動することはもちろん、横片部72も床面8に対して少し摺動する場合がある。この不陸調整の作業により、フロントパネルボックス1に対する固定金具7の位置は、当該設置位置に対して個別に合わせた高さに調整される。1つのフロントパネルボックス1における4つの固定金具7の高さが、互いに少し違っていることもあり得る。
【0030】
「2-5.本固定」では、施工者は、穴75、穴77、長穴74、長穴76をすべて本固定する。その具体的な手順は、床面8が乾式床である場合と湿式床である場合とで少し異なる。
【0031】
乾式床である場合には、施工者は、穴75、穴77の位置に下穴を開ける。施工者は、穴75、穴77を通して左側板2の内面、右側板3の内面、床面8の当該箇所にドリルを当てて下穴を開ける。その後に穴75、穴77にそれぞれねじ10を差し込み、固定する。このときには緩く固定するのではなく、力が掛かっても容易にはフロントパネルボックス1が動かないように堅く固定する。施工者は、仮固定されている長穴74、長穴76のねじ10についても、前述の第1の締付けトルクより強い第2の締付けトルクで増し締めして本固定する。
【0032】
湿式床の場合の手順は上記よりもやや複雑である。施工者はまず、床面8における穴77の位置に目印を書き込む。施工者は、長穴76と床面8との仮固定を一旦解除して、フロントパネルボックス1を設置位置から撤去する。施工者は、床面8における目印の箇所にドリルを当てて下穴を開け、開けた下穴に公知のPCプラグを挿入する。施工者はその後に、フロントパネルボックス1を元の位置に戻す。このとき、長穴76、穴77のいずれもが床面8の下穴の上に来るようにする。そして施工者は、長穴76を再度仮止めする。
【0033】
ここで施工者は再度、不陸調整を行う。このときの不陸調整は微調整で済む。その後に施工者は、左側板2、右側板3における穴75の各位置にドリルを当てて下穴を開ける。施工者は、各穴75にそれぞれねじ10を差し込み、左側板2、右側板3に対して本固定する。施工者は、各穴77にもそれぞれねじ10を差し込み、床面8に対して本固定する。施工者は、各長穴76を通して各下穴81にも再びねじ10を差し込み、床面8に対して本固定する。施工者は、仮固定されている長穴74のねじ10についても、増し締めして本固定する。以上が湿式床の場合の本固定の手順である。
【0034】
「3.付属物類の取り付け」について述べる。施工者は、本固定が済んだフロントパネルボックス1に対して、付属物類を取り付ける。ここで取り付けられる付属物類には、前述の上部構成物の他に、前面に取り付けられる扉その他のフロントパネル、蹴込み板6の化粧板が挙げられる。施工者は、上部構成物のための給排水管、給電コード、およびそれらのための機器類の接続作業もこのときに実施する。
【0035】
以上がフロントパネルボックス1の施工手順である。この施工手順が実施された後のフロントパネルボックス1では、左側板2の下部および右側板3の下部が、不陸調整された状態でL型の固定金具7により床面8に固定されている。より詳細には、左側板2の内面および右側板3の内面と縦片部71とが接触しており、横片部72が床面8に固定されている。図7に示すように、縦片部71の長穴74、穴75を通してねじ10が左側板2の内面および右側板3に差し込まれている。横片部72の長穴76、穴77を通してねじ10が床面8に差し込まれている。
【0036】
施工後のフロントパネルボックス1は、基本的に床面8に対して固定されている。フロントパネルボックス1は、床面8に接して配置されている固定金具7の高さ範囲内のみで床面8に固定されている。建物の壁面9は、フロントパネルボックス1の背板4と対面しているものの、壁面9と背板4とを互いに固定するような処置は行われていない。このため施工者は、フロントパネルボックス1の施工に際して、壁面9の強度の状況を考慮する必要はない。
【0037】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、背板4と内幕板5とにより、フロントパネルボックス1それ自体で高剛性を有するようにしている。固定金具7としては、L型形状であり、かつ、少なくともその縦片部71に縦方向の長穴74が形成されているものを用いている。これにより、不陸調整された後のフロントパネルボックス1に対して、固定金具7の高さ方向位置を個別に適切に調整できるようにしている。これにより、フロントパネルボックス1を、壁面9の強度に頼ることなく、不陸調整された状態で適切に床面8に対して固定できるようにしている。このようにして、壁面9の補強状況と無関係に施工することができるフロントパネルボックス1がその施工方法とともに実現されている。
【0038】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、背板4が一枚板であることは必須ではない。前述のようにフロントパネルボックス1の剛性の観点からは一枚板の方が有利である。ただし、背板4が複数枚の板の組み合わせによるものであっても本開示技術は成立しうる。内幕板5がL字断面のものであることも必須ではない。剛性の観点からはL字断面の方が有利である。ただし、内幕板5が単純な板状のものであっても本開示技術は成立しうる。蹴込み板6を有しない構成も可能である。ただし、蹴込み板6があった方が剛性の観点からは有利である。
【0039】
固定金具7については、最低条件は、L型金具であること、縦片部71に長穴74が設けられていること、横片部72に長穴76と穴77との少なくとも一方が設けられていることの3つである。ただし、施工上は、横片部72に設けられている穴は長穴76であることがより好ましく、長穴76と穴77との両方が設けられているとさらに好ましい。縦片部71にも、長穴74だけでなく穴75も設けられていた方がより好ましい。施工途中で仮固定状態を経ない穴75、穴77については、ねじ10の代わりに別の締結部材、例えば釘を使用してもよい。
【0040】
フロントパネルボックス1の床面8への固定位置、すなわち固定金具7の取り付け位置については、左側板2および右側板3の内面には限られない。見栄えを気にしないのであれば外面で固定してもよい。左側板2および右側板3に限らず、背板4、蹴込み板6をも固定に利用してもよい。本形態のフロントパネルボックス1は、建物の壁面9から離れた位置にアイランド状に設置することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1……フロントパネルボックス、2……左側板、3……右側板、4……背板、5……内幕板、6……蹴込み板、7……固定金具、8……床面、10……ねじ、21……下穴、51……水平部、52……壁部、71……縦片部、72……横片部、73……アングル部、
74……長穴、75……穴、76……長穴、77……穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7