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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090285
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】X線装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 350Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205175
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】松木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳也
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA18
4C093EE16
4C093FA15
4C093FA35
4C093FD03
4C093FG05
4C093FG16
(57)【要約】
【課題】より確実かつ迅速に適切な条件でX線透視またはX線撮影を実行できるX線装置を提供する。
【解決手段】被検体Mの部位情報61に対応した画像取得条件63を、部位情報61と紐付けて記憶する条件記憶部57と、機械学習により、画像に映し出される人体の部位を推論して出力させる学習モデル51を記憶する学習モデル記憶部55と、被検体の画像を入力用画像として学習モデル51に入力することにより、当該入力用画像における被検体Mの部位を推論させて出力させる画像解析部47と、出力された被検体の部位を部位情報61として選択することにより、当該部位情報61に紐付けられた画像取得条件63を読み出させる条件読み出し部49と、読み出された画像取得条件63に沿って、X線管5の制御および画像処理部33の制御のうち少なくともいずれか一方の制御を行う主制御部39と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線管と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器が出力する検出信号を用いて画像処理を行うことによりX線画像を生成する画像処理部と、
前記被検体における対象部位の各々に対応した、X線照射条件および画像処理条件の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件を、前記対象部位と紐付けて記憶する条件記憶部と、
人体の画像を教師画像として機械学習を実行することにより、前記画像に映し出されている前記人体の部位を推論して出力させる学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記被検体の前記X線画像および光学画像のうち少なくともいずれか一方の画像を入力用画像として前記学習モデルに入力することにより、前記入力用画像に映し出されている部位を推論させて出力させる対象部位推論部と、
前記対象部位推論部によって出力された前記部位を前記対象部位として選択することにより、前記対象部位に紐付けて前記条件記憶部に記憶された前記画像取得条件を読み出させる条件読み出し部と、
前記条件読み出し部によって読み出された前記画像取得条件に沿って、前記X線管の制御および前記画像処理部の制御のうち少なくともいずれか一方の制御を行う制御部と、
を備えるX線装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線装置において、
前記被検体に対するX線照射野の位置を随時検知する照射位置検知部と、
前記学習モデルが出力する前記部位の内容が変化した場合でかつ前記照射位置検知部が前記X線照射野の変位を検知した場合は前記変化の後に出力された前記部位を前記対象部位として選択することにより前記条件読み出し部から前記画像取得条件を読み出させ、前記学習モデルが出力する前記部位の内容が変化した場合でかつ前記照射位置検知部が前記X線照射野の変位を検知しない場合は前記変化の前に出力された前記部位を前記対象部位として選択することにより前記条件読み出し部から前記画像取得条件を読み出させる誤解析検知部と、
を備えるX線装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線装置において、
前記条件読み出し部によって読み出された前記画像取得条件を承認する操作者の指示を入力させる承認指示入力部を備え、
前記制御部は、
前記画像取得条件を承認する指示が前記承認指示入力部によって入力された場合に、前記条件読み出し部によって読み出された前記X線照射条件に沿ってX線が照射されるように前記X線管を制御すること、および前記画像処理条件に沿って前記X線画像が生成されるように前記画像処理部を制御すること、の少なくともいずれか一方の制御を行うように構成されている
X線装置。
【請求項4】
被検体にX線を照射するX線管と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器が出力する検出信号を用いて画像処理を行うことによりX線画像を生成する画像処理部と、
前記被検体における検査項目の各々に対応した、X線照射条件および画像処理条件の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件を、前記検査項目と紐付けて記憶する条件記憶部と、
人体を映す検査画像を教師画像として機械学習を実行することにより、前記検査画像における検査の種類を推論して出力させる学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記被検体の前記X線画像および光学画像の少なくともいずれか一方の画像を入力用画像として前記学習モデルに入力することにより、前記入力用画像における検査の種類を推論させて出力させる検査種類推論部と、
前記検査種類推論部によって出力された前記検査の種類を前記検査項目として選択することにより、前記検査項目に紐付けて前記条件記憶部に記憶された前記画像取得条件を読み出させる条件読み出し部と、
前記条件読み出し部によって読み出された前記画像取得条件に沿って、前記X線管の制御および前記画像処理部の制御の少なくともいずれか一方の制御を行う制御部と、
を備えるX線装置。
【請求項5】
請求項4に記載のX線装置において、
前記被検体に対するX線照射野の位置を随時検知する照射位置検知部と、
前記学習モデルが出力する前記検査の種類の内容が変化した場合でかつ前記照射位置検知部が前記X線照射野の変位を検知した場合は前記変化の後に出力された前記検査の種類を前記検査項目として選択することにより前記条件読み出し部から前記画像取得条件を読み出させ、前記学習モデルが出力する前記検査の種類の内容が変化した場合でかつ前記照射位置検知部が前記X線照射野の変位を検知しない場合は前記変化の前に出力された前記検査の種類を前記検査項目として選択することにより前記条件読み出し部から前記画像取得条件を読み出させる誤解析検知部と、
を備えるX線装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のX線装置において、
前記条件読み出し部によって読み出された前記画像取得条件を承認する操作者の指示を入力させる承認指示入力部を備え、
前記制御部は、
前記画像取得条件を承認する指示が前記承認指示入力部によって入力された場合に、前記条件読み出し部によって読み出された前記X線照射条件に沿ってX線が照射されるように前記X線管を制御すること、および前記画像処理条件に沿って前記X線画像が生成されるように前記画像処理部を制御すること、の少なくともいずれか一方の制御を行うように構成されている
X線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対してX線を照射してX線透視またはX線撮影などを行うX線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、被検体に対してX線透視またはX線撮影などを行ってX線画像を取得するためにX線装置を用いる場合、被検体の撮影部位または被検体に対して行う検査の種類に応じて、適切なX線照射条件または画像処理条件を設定することが重要である。適切なX線照射条件または画像処理条件を設定する構成として、近年ではアナトミカルプログラム(APR)を備えるX線装置が使用される。
【0003】
アナトミカルプログラムとは、管電圧および管電流を例とする一連のX線照射条件およびコントラスト処理条件を例とする一連の画像処理条件と、被検体の撮影部位または検査の種類などとを予め関連づけたデータ構造である。アナトミカルプログラムは、被検体の撮影部位または検査の種類に応じて複数のプログラムが予め設定されて記憶される。一例として被検体の撮影部位が胸部である一般X線撮影の場合、胸部の一般X線撮影に適したX線照射条件および画像処理条件の情報が、胸部を撮影部位とする一般X線撮影と紐付けられて記憶される。
【0004】
被検体に対してX線透視等を行う場合、液晶パネルを例とする表示部に複数のアナトミカルプログラムが表示され、操作者は複数のアナトミカルプログラムの中か適切なものを選択する(例えば特許文献1、2を参照)。
【0005】
一例として被検体の腹部に対して内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP:Endoscopic retograde cholangiopancreatography)を行う場合、操作者は表示部に一覧表示される「胸部/一般撮影」、「腹部/一般撮影」、「腹部/ERCP」など、検査部位および検査の種類に応じた複数のアナトミカルプログラムの中から「腹部/ERCP」のプログラムを選択する操作を行う。当該選択操作を行うことにより、「腹部/ERCP」と予め紐付けられていた、腹部に対してERCPを行う場合に適切なX線照射条件および画像処理条件のパラメータが読み出されて表示部に表示される。操作者は表示されたX線照射条件等を確認し、被検体に対する検査を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-143443号公報
【特許文献2】特開2018-191983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
【0008】
従来の構成においてアナトミカルプログラムを用いてX線撮影等行う場合、一覧表示されているプログラムの中から、操作者が適切なプログラムを選択する操作を必要とする。このようなマニュアル操作を行うことによって検査が長期化するため、特に緊急の手術を行う際に問題となる。またマニュアル操作を行う際において、操作者の操作ミスなどに起因して不適切なX線照射条件等のパラメータが設定される可能性が懸念される。さらに、術式または検査の最中にX線を照射する被検体の部位が変化する場合、変化後の部位に応じて改めて適切なAPRを選択する操作を必要とするので操作者の負担が増大するとともに術式に要する時間が長期化するという問題も懸念される。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より確実かつ迅速に適切な条件でX線透視またはX線撮影を実行できるX線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち第1の態様に係るX線装置は、 被検体にX線を照射するX線管と、前記X線管と対向して配置され、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器が出力する検出信号を用いて画像処理を行うことによりX線画像を生成する画像処理部と、前記被検体における対象部位の各々に対応した、X線照射条件および画像処理条件の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件を、前記対象部位と紐付けて記憶する条件記憶部と、人体の画像を教師画像として機械学習を実行することにより、前記画像に映し出されている前記人体の部位を推論して出力させる学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、直近に得られた前記被検体の前記X線画像および光学画像のうち少なくともいずれか一方の画像を入力用画像として前記学習モデルに入力することにより、前記入力用画像に映し出されている部位を推論させて出力させる対象部位推論部と、前記対象部位推論部によって出力された前記部位を前記対象部位として選択することにより、前記対象部位に紐付けて前記条件記憶部に記憶された前記画像取得条件を読み出させる条件読み出し部と、前記条件読み出し部によって読み出された前記画像取得条件に沿って、前記X線管の制御および前記画像処理部の制御のうち少なくともいずれか一方の制御を行う制御部と、を備える。
【0011】
また本発明の第2の態様に係るX線装置は、被検体にX線を照射するX線管と、前記X線管と対向して配置され、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器が出力する検出信号を用いて画像処理を行うことによりX線画像を生成する画像処理部と、前記被検体における検査項目の各々に対応した、X線照射条件および画像処理条件の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件を、前記検査項目と紐付けて記憶する条件記憶部と、人体を映す検査画像を教師画像として機械学習を実行することにより、前記検査画像における検査の種類を推論して出力させる学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、直近に得られた前記被検体の前記X線画像および光学画像の少なくともいずれか一方の画像を入力用画像として前記学習モデルに入力することにより、前記入力用画像における検査の種類を推論させて出力させる検査種類推論部と、前記検査種類推論部によって出力された前記検査の種類を前記検査項目として選択することにより、前記検査項目に紐付けて前記条件記憶部に記憶された前記画像取得条件を読み出させる条件読み出し部と、前記条件読み出し部によって読み出された前記画像取得条件に沿って、前記X線管の制御および前記画像処理部の制御の少なくともいずれか一方の制御を行う制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様に係るX線装置によれば、画像に映る対象部位を推論する学習モデルと、アナトミカルプログラムを例とする対象部位に応じて適切な画像取得条件が紐付けられている機構とを用いることにより、X線照射条件および画像処理条件の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件を自動的に設定する。学習モデルは、人体の画像を教師画像とする機械学習によって、画像に映る人体の部位を推論して出力されるように構成される。すなわち対象部位推論部では被検体の画像を入力用画像として学習モデルに入力することで、当該入力用画像に映る被検体の部位が推論されて出力される。条件読み出し部は、出力された被検体の部位情報を対象部位として選択することによって、当該対象部位と紐付けられて記憶されていた画像取得条件を自動的に読み出す。従って、被検体のX線画像を取得すると、対象部位推論部と条件読み出し部とによって、当該X線画像の照射野に対して適切な画像取得条件が自動的に読み出される。従って、被検体にX線を照射する対象部位が変更された場合であっても、変更後の対象部位に適切な画像取得条件が自動的に読み出される。すなわち、操作者がマニュアル操作で対象部位を選択して画像取得条件を設定するという工程が不要となるので、より確実かつ迅速に適切な条件でX線透視またはX線撮影を実行できる。
【0013】
本発明の第2の態様に係るX線装置によれば、人体の検査画像における検査の種類を検査項目として推論する学習モデルと、検査項目に応じて適切な画像取得条件が紐付けられている機構とを用いることにより、X線照射条件および画像処理条件の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件を自動的に設定する。学習モデルは、人体を映す検査画像を教師画像とする機械学習によって、画像の検査種類を推論して出力されるように構成される。すなわち検査種類推論部では被検体の画像を入力用画像として学習モデルに入力することで、当該入力用画像における検査の種類が推論されて出力される。条件読み出し部は、出力された検査の種類情報を検査項目として選択することによって、当該検査項目と紐付けられて記憶されていた画像取得条件を自動的に読み出す。従って、被検体のX線画像を取得すると、検査種類推論部と条件読み出し部とによって、当該X線画像の検査項目に対して適切な画像取得条件が自動的に読み出される。従って、被検体にX線を照射する検査項目が変更された場合であっても、変更後の検査項目に適切な画像取得条件が自動的に読み出される。すなわち、操作者がマニュアル操作で検査項目を選択して画像取得条件を設定するという工程が不要となるので、より確実かつ迅速に適切な条件でX線透視またはX線撮影を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1に係るX線装置の全体構成を説明する正面図である。
図2】実施例1に係るX線装置の全体構成を説明する右側面図である。
図3】実施例1に係るフットスイッチの全体構成を説明する斜視図である。
図4】実施例1に係る表示部が表示する情報の一例を示す図である。
図5】実施例1に係るX線装置の機能ブロック図である。
図6】実施例1におけるAPRを説明する図である。(a)は部位情報と、部位情報に紐付けられる画像取得条件との関係を示す図であり、(b)は各々の部位に係る部位情報と、当該部位情報に紐付けられる画像取得条件の具体的なパラメータの例とを示す図である。
図7】実施例1において学習モデルとAPRとを用いて画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図8】実施例1において、X線照射の開始前に画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図9】実施例1において、股関節が照射野である場合に画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図10】実施例1において、腹部が照射野である場合に画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図11】実施例1において、胸部が照射野である場合に画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図12】従来例に係るAPRの表示画面を示す図である。
図13】従来例に係るAPRを用いて、画像取得条件を読み出している状態を示す図である。
図14】実施例1におけるAPRを説明する図である。(a)は胸部の一般撮影を検査項目とするAPRを示す図であり、(b)は胸部のPCIを検査項目とするAPRを示す図であり、(c)は胸部の一般撮影を検査項目とするAPRを示す図であり、(d)は腹部のERCPを検査項目とするAPRを示す図であり、(e)は腹部のUGIを検査項目とするAPRを示す図である。
図15】実施例2におけるAPRを説明する図である。(a)は検査項目情報と、検査項目情報に紐付けられる画像取得条件との関係を示す図であり、(b)は各々の部位に係る検査項目情報と、当該検査項目情報に紐付けられる画像取得条件の具体的なパラメータの例とを示す図である
図16】実施例2において学習モデルとAPRとを用いて画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図17】実施例3に係るX線装置の要部を示す機能ブロック図である。
図18】実施例3について学習モデルにおいて発生する誤解析を説明する図である。(a)は学習モデルが適切に画像解析を行った場合を示す図であり、(b)は学習モデルが誤った画像解析を行った場合を示す図である。
図19】実施例3に係るX線装置の動作について、要部の工程を説明するフローチャートである。
図20】実施例3において学習モデルが適切に画像解析を行った場合について、学習モデルとAPRとを用いて画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図21】実施例3において学習モデルが誤った画像解析を行った場合について、学習モデルとAPRとを用いて画像取得条件を読み出す一連の工程を示す概略図である。
図22】実施例4に係るX線装置の要部を示す機能ブロック図である。
図23】実施例4において承認キーが表示される画面の一例を示す図である。
図24】実施例に係るX線装置の動作を説明するフローチャートである。(a)は実施例1に係るフローチャートであり、(b)は実施例4に係るフローチャートである。
図25】実施例4において、複数のタイミングと、各タイミングにおけるX線照射野の位置などとの関係を示す図である。
図26】実施例4について、タイミングM1またはタイミングM2におけるX線装置の要部の制御関係を示すブロック図である。
図27】実施例4について、タイミングM3におけるX線装置の要部の制御関係を示すブロック図である。
図28】実施例4について、タイミングM4におけるX線装置の要部の制御関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
【0016】
<全体構成の説明>
実施例1に係るX線装置1は、図1および図2に示すように、仰臥姿勢の被検体Mを載置させる天板3を挟んで、X線管5とX線検出器7が対向配置されている。天板3は、昇降移動可能に構成されている天板支持体4の上部に配設されている。X線管5は被検体Mに対してX線を照射する。X線検出器7はX線管5から被検体Mに照射されて透過したX線を検出して電気信号に変換させ、X線検出信号として出力させる。X線検出器7の一例として、FPD(Flat Panel Detector)が挙げられる。
【0017】
X線管5とX線検出器7は、Cアーム9の一端と他端にそれぞれ設けられている。Cアーム9はアーム保持部材11に保持されており、符号RAで示されるCアーム9の円弧経路に沿って回動するように構成される。すなわち、Cアーム9は円弧経路RAに沿ってy方向(天板3の長手方向)の軸周りに回動する。
【0018】
アーム保持部材11は支柱13の側面部に配設されており、x方向(天板3の短手方向)に平行な水平軸Pの軸周り(円弧経路RB)に回転可能となるように構成される。アーム保持部材11に保持されているCアーム9は、アーム保持部材11に従ってx方向の軸周りに回動する。Cアーム9が円弧経路RAおよび円弧経路RBの各々に沿って、直交する二軸の周りにそれぞれ回動自在に構成されることにより、被検体Mに対して任意の方向からX線を照射できる。
【0019】
支柱13は床面に配設された支持基台15に支持されており、支持基台15の上面に沿ってx方向およびy方向の各々に水平移動が可能となるように構成される。支柱13に支持されているアーム支持部材11およびCアーム9は、支柱13の水平移動に従ってx方向またはy方向へ水平移動する。コリメータ17はX線管5に設けられており、X線管5から照射されるX線を所定の形状に制限する。X線を制限する形状の一例として、角錐となっているコーン状が挙げられる。
【0020】
コリメータ17には光学カメラ19が配設されている。光学カメラ19は一例としてデジタルカメラであり、被検体Mを可視光で撮影することにより被検体Mの光学画像を取得する。なおX線装置1において、光学カメラ19の照射野とX線管5の照射野とは同じ範囲となるように、光学カメラ19とX線管5との位置および向きが調整されている。
【0021】
図2に示すように、天板3の下方の床面にはフットスイッチ21が載置されている。フットスイッチ21は、ケーブル23を介して電源および後述する主制御部39を構成するCPUと接続されている。実施例1では主制御部39は天板支持体4に内蔵されており、図1においてケーブル23は天板支持体4に接続されているものとする。
【0022】
フットスイッチ21は図3に示すように、胴体部25と、術者が足で操作するスイッチ27と、底板29とを備えている。スイッチ27は透視用スイッチ27aと、撮影用スイッチ27bと、天板移動スイッチ27cとの3つのペダル式スイッチによって構成される。実施例1においてスイッチ27の数は3つであるが、スイッチ27の数は適宜変更してよい。
【0023】
透視用スイッチ27aはX線透視のオン・オフを制御するものである。すなわち透視用スイッチ27aを足で踏み込むことによって、後述するX線透視条件に従ってX線管5から比較的低線量のX線を断続的に照射するX線透視が開始される。撮影用スイッチ27bはX線撮影のオン・オフを制御するものである。すなわち撮影用スイッチ27bを足で踏み込むことによって、後述するX線撮影条件に従ってX線管5から比較的高線量のX線を照射するX線撮影が開始される。
【0024】
天板移動スイッチ27cは天板3の鉛直方向の移動のオン・オフを制御するものである。すなわち天板移動スイッチ27を足で踏むことによって、天板支持体4がz方向に伸縮して天板3の高さを変更させる。天板移動スイッチ27cの操作により、天板3は被検体Mが天板3に乗降するための比較的低い位置(乗降位置)と、臥位体勢の被検体Mに対して術者が医療行為を行うための比較的高い位置(診療位置)との間を昇降移動する。
【0025】
X線装置1は図4に示すように、さらに画像処理部33、表示部35、アーム位置検出部37、主制御部39、操作卓41、および記憶部43を備えている。
【0026】
画像処理部33はX線検出器7の後段に設けられており、X線検出器7から出力されたX線検出信号に基づいてX線画像を生成する。表示部35は、画像処理部33によって生成されたX線画像およびX線装置1に関する各種情報を表示する。表示部35の一例として、液晶モニタまたは高精度ディスプレイなどが挙げられる。表示部35を配設する構成の例として、天井に懸垂配設されている構成、移動台車に搭載させる構成、または操作卓41に配設する構成などが挙げられる。
【0027】
アーム位置検出部37は、図示しないポテンショメータまたはエンコーダを例とする位置検出器に基づいて、円弧経路RAおよび円弧経路RBの各々におけるCアーム9の回転移動量を検出するとともに、およびx方向およびy方向におけるCアーム9の平行移動量を検出する。Cアーム9の回転移動量および平行移動量を検出することにより、アーム位置検出部37はCアーム9の位置を検出する。アーム位置検出部37がCアーム9の位置を検出することにより、被検体Mに対するX線管5の照射野の位置を特定することができる。
【0028】
主制御部39は、一例として中央処理演算装置(CPU:Central Processing Unit)などの情報処理手段を備えている。主制御部39は、X線管制御部31、画像処理部33、表示部35を例とするX線装置1の各種構成を統括制御する。主制御部39は、本発明における制御部に相当する。
【0029】
主制御部39は、機械学習部45と画像解析部47と条件読み出し部49とを備えている。機械学習部45は、予め取得されているX線画像または光学画像などを用いて機械学習を行うことにより、学習モデル51を作成する。画像解析部47は学習モデル51を用いることにより、X線装置1によって生成されたX線画像または光学画像に対して解析を行い、当該画像に映っている人体の部位を判定する。実施例1に係る画像解析部47は、本発明における対象部位推論部に相当する。
【0030】
条件読み出し部49はアナトミカルプログラム53(APR53)を参照することにより、画像解析部47によって判定された部位と紐付けられている画像取得条件を条件記憶部43から読み出す。そして条件読み出し部49は、読み出された画像取得条件をX線管制御部31または画像処理部33に送信し、送信した条件に沿ってX線管5からのX線照射および画像処理部33によるX線画像の生成を行わせる。
【0031】
操作卓41はX線装置1の操作に関する操作者の指示を入力するものであり、術者が操作卓41に入力する指示に従って主制御部39は統括制御を行う。操作卓41に配設される操作用デバイスの例として、キーボード入力式のパネル、タッチ入力式のパネル、マウス、ダイヤル、切り換え式スイッチ、押しボタン式スイッチなどが挙げられる。実施例1において、操作卓41は図1に示すような天板3の側部に添設される構成、支柱13の上部に配設される構成、または移動台車に搭載させる構成などが挙げられる。
【0032】
記憶部43は、画像処理部33が生成する各種X線画像、およびX線装置1の動作に関する各種情報などを記憶する。記憶部43の一例として、不揮発性メモリが挙げられる。記憶部43は、学習モデル記憶部55と条件記憶部57とを備えている。学習モデル記憶部55は、機械学習部45によって作成された学習モデル51を記憶する。条件記憶部57は、APR53を記憶する。
【0033】
ここで実施例1に係るAPR53について説明する。APR53は図6(a)に示すように、部位情報61の各々に対応して画像取得条件63が紐付けられたプログラムである。部位情報61は、X線を照射する対象となる人体の部位に関する情報であり、一例として頭頸部、胸部、腹部、股関節、肩部、膝部、足部などが挙げられる。画像取得条件63はX線画像の取得に関する一連の条件であり、X線照射条件65と画像処理条件67とを含む。
【0034】
X線照射条件65はX線照射に関する各種パラメータであり、X線透視条件68とX線撮影条件69とを含んでいる。X線照射に関するパラメータの例としては、X線管5に印加する管電圧および管電流、X線照射時間、X線照射周期などが挙げられる。画像処理条件67はX線検出器7が検出した電気信号に対して行う画像処理に関するパラメータであり、例としてはコントラスト処理値、先鋭化処理値、エッジ処理値などが挙げられる。なお画像取得条件63は、フレームレートおよびゲイン値を例とするX線検出器7の設定条件をさらに含んでもよい。
【0035】
X線透視条件68は、X線透視を行う際におけるX線照射に関する各種パラメータである。X線透視では、比較的弱いX線を断続的に照射してX線透視像(動画)を取得する。X線撮影条件68は、X線撮影を行う際におけるX線照射に関する各種パラメータである。X線撮影では、比較的強いX線を短時間照射してX線撮影像(静止画)を取得する。なお本発明において、X線画像はX線透視像とX線撮影像とを含む。
【0036】
図6(b)は本実施例に係るAPR53において、部位情報61と紐付けられている画像取得条件63の具体的な内容について示している。一例として部位情報61のうち、股関節の部位情報61aはX線照射条件65aおよび画像処理条件67aを含む画像取得条件63aと予め紐付けられている。画像処理条件67aは、コントラスト処理値10および先鋭化処理値7などのパラメータを含む。X線照射条件65aのうちX線透視条件68aは、管電圧30kVおよび管電流2.0mAなどのパラメータを含む。X線照射条件65aのうちX線撮影条件69aは、管電圧50kVおよび管電流3.0mAなどのパラメータを含む。
【0037】
同様に、部位情報61のうち腹部の部位情報61bは、X線照射条件65bおよび画像処理条件67bを含む画像取得条件63bと予め紐付けられている。X線照射条件65bは、X線透視条件68bおよびX線撮影条件69bを含む。部位情報61のうち胸部の部位情報61cは、X線照射条件65cおよび画像処理条件67cを含む画像取得条件63cと予め紐付けられている。X線照射条件65cは、X線透視条件68cおよびX線撮影条件69cを含む。部位情報61のうち頭頸部の部位情報61dは、X線照射条件65dおよび画像処理条件67dを含む画像取得条件63dと予め紐付けられている。X線照射条件65dは、X線透視条件68dおよびX線撮影条件69dを含む。このように、複数の部位情報61の各々に対して適切な画像取得条件63が紐付けられているAPR53が予め設定され、条件記憶部57に記憶される。
【0038】
ここで、実施例1において自動的に画像取得条件63を設定する構成について図7および図24(a)を用いて説明する。図24(a)は実施例1に係るX線装置1の動作に関するフローチャートである。第1に、機械学習部45において予め機械学習を行うことにより学習モデル51を作成する(ステップM1)。機械学習部45では、人体の様々な部位の画像を原画像R1として予め取得する。原画像R1は例として、X線画像、三次元CT像を様々な方向に投影したDRR画像、光学カメラで取得された光学画像などを含む多数の画像群である。
【0039】
そして機械学習部45は原画像R1に対してコントラストの増減、明度の増減、ノイズの増減などを例とする、X線条件などのバリエーションに対応するための画像処理を行い、さらに多数の1次水増し画像R2を取得する。そして機械学習部45は1次水増し画像R2に対して回転、拡大、縮小などを例とする、被検体Mの配置またはCアーム9の位置などのバリエーションに対応するための画像処理を行い、さらに多数の2次水増し画像R3を取得する。
【0040】
最後に機械学習部45は原画像R1、1次水増し画像R2、および2次水増し画像R3を教師用画像として機械学習を行うことにより、画像に映る人体の部位を推論する学習モデル51を作成する。すなわち学習モデル51は、X線画像Fまたは光学画像Dなどを入力情報として入力することにより、入力情報である画像に人体におけるどの部位が映っているかを推論し、推論によって得られた人体の部位の情報を出力する。学習済みの学習モデル51は、学習モデル記憶部55に記憶される。
【0041】
なお実施例1ではX線装置1において学習モデル51を作成する構成を例示しているが、他の装置で学習モデル51を予め作成し、作成された学習モデル51のプログラムを学習モデル記憶部55に記憶させてもよい。この場合、X線装置1において機械学習部45を省略できる。
【0042】
第2に、画像解析部47は学習モデル51を用いることにより画像を解析し、被検体Mについて得られた画像に映っている被検体Mの部位を特定する。すなわち画像解析部47は学習モデル記憶部55に記憶されている学習モデル51を読み出す。そしてX線照射によって被検体MのX線画像が画像処理部33によって生成された後(ステップM2)、画像処理部33から送信されたX線画像などを入力用画像として学習モデル51に入力する。学習モデル51は、入力されたX線画像に映る人体の構成要素などを手掛かりとして入力用画像を解析し、入力用画像に映っている被検体Mの部位を推論する。推論により得られた部位の情報は、部位情報61として学習モデル51から出力される(ステップM3)。
【0043】
第3に、条件読み出し部49は、画像解析部47によって得られた部位情報61とAPR53とを用いて、適切な画像取得条件63を設定する。条件読み出し部49は、画像解析部47によって得られた部位情報61をAPR53に入力し、APR53において当該部位情報61と紐付けて記憶されている画像取得条件63を読み出して出力させる(ステップM4)。条件読み出し部49は、出力された画像取得条件63を直後に行われるX線画像の取得に用いる条件として設定する(ステップM5)。
【0044】
X線画像の取得用条件として設定された画像取得条件63はX線管5および画像処理部33に送信され、設定された画像取得条件63の各種パラメータに従って被検体MのX線画像が新たに生成される(ステップM6)。このように、X線装置1では学習モデル51およびAPR53を用いることにより、適切な画像取得条件63を自動で設定する。なお所定の時間が経過すると(ステップM7)、再びステップS2に戻って入力用画像が生成されて学習モデル51を用いた部位情報61の推論が行われる。所定の時間の一例として、10フレーム分のX線画像が生成される時間が挙げられる。この場合、X線画像が10フレーム生成されるたびに学習モデル51による推論が実行される。
【0045】
<動作の説明>
ここで、学習モデル51およびAPR53が記憶部43に記憶されている状態で、X線装置1を用いて被検体Mの検査を行う動作について具体的に説明する。実施例1では検査の一例として、冠動脈インターベンション(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)を行う場合を例として説明する。実施例1に係る冠動脈インターベンションでは足の付け根からカテーテルChを挿入し、X線透視によりカテーテルChを逐次確認しつつ冠動脈へカテーテルChを到達させてステントを留置させる。すなわち図8ないし図11に示すように、被検体Mに対してX線を照射させる対象部位は、股関節La、腹部Lb、胸部Lcの順に変位する。
【0046】
冠動脈インターベンションによる被検体Mの検査を開始すると、まずは最初のX線画像を取得するための画像取得条件63を設定する。操作者は図8に示すように、天板3に被検体Mを載置させた状態で、照射野の位置が股関節LaとなるようにCアーム9を移動させる。そして光学カメラ19を用いて被検体Mの股関節Laを撮影する。当該撮影により、光学カメラ19は股関節Laの光学画像D1を生成する。生成された光学画像D1のデータは画像解析部47へと送信される(符号T1を参照)。
【0047】
画像解析部47は、光学画像D1を入力用画像として学習モデル51に入力する。学習モデル51は光学画像D1を解析し、入力情報である光学画像D1に映っている部位を推定して出力する。この場合、光学画像D1に映る被検体Mの輪郭および足の存在などを手掛かりとして、学習モデル51は光学画像D1に映っている部位は股関節である可能性が最も高いと推定する。その結果、学習モデル51は股関節との部位情報61aを出力する。学習モデル51から出力された部位情報61aは、条件読み出し部49へと送信される(符号T2を参照)。
【0048】
条件読み出し部49は、部位情報61aに係る股関節Laについて適切な画像取得条件63を探索する。すなわち部位情報61aをAPR53に入力することにより、APR53において部位情報61aと紐付けて記憶されている画像取得条件63、すなわち画像取得条件63aが読み出されて出力される。その結果、画像取得条件63aに含まれているX線照射条件63aがX線管5の制御用パラメータとして設定され、画像処理条件67aが画像処理部33の制御用パラメータとして設定される。
【0049】
このように、光学カメラ19で光学画像D1を取得する操作を行うことにより、学習用モデル51およびAPR53を用いて画像取得条件63aが自動的に設定される。光学画像D1の入力により設定される画像取得条件63aが、最初のX線画像を取得するための画像取得条件63に相当する。
【0050】
操作者は画像取得条件63aが設定されたことを確認した後、フットスイッチ21の透視用スイッチ27aを足で踏むことによりX線透視を開始する。操作者はX線透視により取得される股関節LaのX線透視像を確認しつつ、被検体Mの足の付け根からカテーテルChを挿入させる。
【0051】
このとき、画像取得条件63aに含まれるX線透視条件68aに従って、主制御部39はX線管5を制御する。すなわち管電圧30kVおよび管電流2.0mAなどの条件下で、図9に示すようにX線管5は股関節Laに対してX線を照射する。そして画像取得条件63aに含まれる画像取得条件67aに従って、主制御部39は画像処理部33を制御する。すなわちX線検出器7の検出信号に対してコントラスト値10および鮮鋭度7などの条件下で画像処理部33は各種画像処理を行い、股関節Laを対象部位とするX線透視像(X線画像F1)を生成する。操作者はX線画像F1に映るカテーテルChの位置を確認しつつカテーテルChの操作を開始する。
【0052】
なおX線装置1では所定のタイミングで画像取得条件63を自動的に設定する動作を繰り返す。図9は、股関節Laに対してX線を照射することによって画像取得条件63を自動的に設定する工程を示している。X線管5から股関節Laに対してX線を照射することにより、画像処理部33は股関節Laを対象部位とするX線画像F1を生成する。生成されたX線画像F1のデータは画像解析部47へと送信される。
【0053】
画像解析部47は、X線画像F1を入力用画像として学習モデル51に入力する。学習モデル51は、入力情報であるX線画像F1に映っている部位を推定して出力する。この場合、X線画像F1に映る被検体Mの骨盤Baおよび大腿骨Bcなどを手掛かりとして、学習モデル51はX線画像F1に映っている部位は股関節である可能性が最も高いと推定する。その結果、学習モデル51は部位が股関節であるとの情報である部位情報61aを出力する。学習モデル51から出力された部位情報61aは、条件読み出し部49へと送信される。
【0054】
条件読み出し部49は、部位情報61aに係る股関節Laについて適切な画像取得条件63を探索する。すなわち部位情報61aをAPR53に入力することにより、APR53において部位情報61aと紐付けて記憶されている画像取得条件63、すなわち股関節LaのX線画像を生成する場合に適切な条件(パラメータ)として予め設定された画像取得条件63aが読み出されて出力される。その結果、X線照射条件63aに基づいてX線管5はX線を照射し、画像処理条件67aに基づいて画像処理部33は画像処理を行う。このように、X線照射野が股関節Laに位置するようにCアーム9の位置が定められている場合、画像取得条件63aがX線画像取得用の条件として自動的に設定されてX線画像F1が生成し続けられる。操作者は、X線画像F1に映るカテーテルChの位置を確認しつつ、カテーテルChを操作して心臓へ向けて進行させる。
【0055】
なお、生成されたX線画像F1は画像解析部47へ送信されるとともに表示部35に表示される。図4は、表示部35に表示される情報を示している。表示部35は、画像表示領域K1と、解析結果表示領域K2と、選択部位表示領域K3と、適用条件表示領域K4を有している。画像表示領域K1は、直近に取得されたX線画像Fまたは光学画像Dを表示する。股関節LaにX線を照射している場合、直近に取得された画像はX線画像F1であるのでX線画像F1が画像表示領域K1に表示される。
【0056】
解析結果表示領域K2は、学習モデル51が出力した情報が解析結果として表示される。学習モデル51は入力情報である入力用画像(ここではX線画像F1)について、当該入力用画像に映る部位の情報を確度とともに出力する。一例として、X線画像F1に映る部位が股関節である確度は91.4%であり、頭頸部である確度は1.4%であり、胸部である確度は4.2%であり、腹部である確度は0.1%である、という情報を出力する。画像解析部47は最も確度が高い部位を部位情報61として選択し、部位情報61を条件読み出し部49に送信する。また、画像解析部47は、所定数の部位を確度が高い順に解析結果表示領域K2に表示させる。実施例1では確度が高い順に3つの部位を解析結果表示領域K2に表示させる。すなわち、「股関節」と「胸部」と「頭頸部」との情報が確度の数値とともに一覧表示される。解析結果表示領域K2に表示させる部位の数は3つに限ることはなく適宜変更してよい。
【0057】
選択部位表示領域K3は、部位情報61として選択された部位が表示される。ここでは股関節Laの部位情報61aが選択されているので、選択条件表示領域K3には「股関節」と表示される。適用条件表示領域K4は、現時点において適用されている画像取得条件63が表示される。ここでは股関節Laの部位情報61aと紐付けられている画像取得条件63aが適用されているので、画像取得条件63aが適用条件表示領域K4に表示される。なお説明の便宜上、図4において画像取得条件63aのうち管電圧および管電流の情報が適用条件表示領域K4に表示されている。適用条件表示領域K4には調節キーNBが表示される。操作者はマウスなどを操作して調整キーNBに適宜入力を行うことにより、一例として管電圧の数値を画像取得条件63aにおいて定められている初期値から増減させる調整を実行できる。
【0058】
操作者は表示部35に視線を向け、適用条件表示領域K4に表示されている画像取得条件63の内容と、選択条件表示領域K3に表示される部位の内容と、解析結果表示領域K2に表示される確度の情報などを確認することにより、学習モデル51およびAPR53によって自動的に設定される画像取得条件63が適切であるかどうかを把握できる。また操作者は表示部35に表示されるX線画像F1などを確認しつつ、カテーテルChを冠動脈へ向けて進行させる。
【0059】
操作者はカテーテルChを進行させるとともに、Cアーム9の位置をカテーテルChの位置に合わせてy方向に移動させてX線照射野の位置を変更させる。そのため、カテーテルChが股関節Laの領域から腹部Lbの領域へ進行することにより、X線を照射させる対象部位は股関節Laから腹部Lbへと変位する。X線装置1ではX線を照射させる対象部位が変位することにより、新たに画像取得条件63が設定される。図10は、腹部Lbに対してX線を照射することによって画像取得条件63を自動的に設定する工程を示している。
【0060】
X線管5から腹部Lbに対してX線を照射することにより、画像処理部33は腹部Lbを対象部位とするX線画像F2を生成する。生成されたX線画像F2のデータは画像解析部47へと送信される。
【0061】
画像解析部47は、X線画像F2を入力用画像として学習モデル51に入力してX線画像F2の解析を行う。すなわち画像解析部47において、学習モデル51は入力情報であるX線画像F2に映っている部位を推定して出力する。この場合、X線画像F2に映る被検体Mの胃Gaおよび腰椎Bhなどを手掛かりとして、学習モデル51はX線画像F2に映っている部位は腹部である可能性が最も高いと推定する。その結果、学習モデル51は腹部の部位情報61bを出力する。学習モデル51から出力された部位情報61bは、条件読み出し部49へと送信される。
【0062】
条件読み出し部49は、部位情報61bに係る腹部Lbについて適切な画像取得条件63を探索する。すなわち部位情報61bをAPR53に入力することにより、APR53において部位情報61bと紐付けて記憶されている画像取得条件63、すなわち画像取得条件63bが読み出されて出力される。その結果、X線照射条件63bに基づいてX線管5はX線を照射し、画像処理条件67bに基づいて画像処理部33は画像処理を行う。
【0063】
操作者は透視用スイッチ27aを足で操作しているので、X線透視条件68bに基づいてX線管5はX線を照射してX線透視が実行される。なおX線撮影像が必要となった場合、操作者は操作するスイッチを撮影用スイッチ27bに変更することによりX線撮影条件69bに従ってX線管5はX線を照射してX線撮影を行う。当該X線照射により、適切な条件によって生成された腹部LbのX線撮影像を取得できる。
【0064】
このように、X線照射野が腹部Lbに位置するようにCアーム9の位置が定められている場合、画像取得条件63bが自動的に設定されてX線画像F2が生成し続けられる。画像処理部33が生成するX線画像Fが、股関節Laを映すX線画像F1から腹部Lbを映すX線画像F2に変わると、画像解析部47および条件読み出し部49によって画像取得条件63が速やかに変更される。すなわち股関節Kaに適した画像取得条件63aから腹部Lbに適した画像取得条件63bへと自動的かつ速やかに変更される。よって、操作者はカテーテルChの操作を中断することなく、適切な条件で生成されたX線画像F2を表示部35で確認できる。
【0065】
操作者はカテーテルChの操作をさらに続行させ、心臓の近傍へとカテーテルChを進行させる。そしてカテーテルChの進行に応じてCアーム9の位置をy方向に移動させる。そのため、カテーテルChが腹部Lbの領域から心臓がある胸部Lcの領域へ進行することにより、X線を照射させる対象部位は腹部Lbから胸部Lcへと変位する。対象部位が胸部Lcへ変位することにより、新たに画像取得条件63が設定される。図11は、胸部Lcに対してX線を照射することによって画像取得条件63を自動的に設定する工程を示している。
【0066】
X線管5から胸部Lcに対してX線を照射することにより、画像処理部33は胸部Lcを対象部位とするX線画像F3を生成する。生成されたX線画像F3のデータは画像解析部47へと送信される。
【0067】
画像解析部47は、X線画像F2を入力用画像として学習モデル51に入力する。学習モデル51は、入力情報であるX線画像F2に映っている部位を推定して出力する。この場合、X線画像F2に映る被検体Mの心臓H、肺Lu、および図示しない胸椎などを手掛かりとして、学習モデル51はX線画像F2に映っている部位は胸部である可能性が最も高いと推定する。その結果、学習モデル51は胸部との部位情報61cを出力する。学習モデル51から出力された部位情報61cは、条件読み出し部49へと送信される。
【0068】
条件読み出し部49は、部位情報61cに係る胸部Lcについて適切な画像取得条件63を探索する。すなわち部位情報61cをAPR53に入力することにより、APR53において部位情報61cと紐付けて記憶されている画像取得条件63、すなわち画像取得条件63cが読み出されて出力される。そして読み出された画像取得条件63cがX線画像取得用の条件として設定され、画像取得条件63cのうちX線照射条件65cがX線管5へ送信されるとともに画像処理条件67cが画像処理部33へ送信される。
【0069】
その結果、X線照射条件65cに基づいてX線管5はX線を照射し、画像処理条件67cに基づいて画像処理部33はX線画像Fの画像処理を行う。よって、対象部位が胸部Lcに変位することによって速やかに画像取得条件63cが自動的に設定されるので、適切な画像取得条件63cを用いて速やかにX線画像F3の視認性が向上する。操作者はX線画像F3を確認しつつ冠動脈にステントを留置させ、PCIの術式を終了させる。
【0070】
このように、実施例1に係るX線装置1では学習モデル51とAPR53とを組み合わせることにより、X線装置1はX線照射の対象となる対象部位の変化に応じて自動的に画像取得条件63が変更される構成を有している。
【0071】
APRを用いる従来の装置では、X線照射の対象となる対象部位を操作者が手動で選択することによって、当該対象部位の情報に紐付けられている画像取得条件が読み出される。従来の装置は一例として図12に示すように、対象部位を指定する多数のアイコン群Acが表示される操作用のタッチパネルTPを備えている。操作者はアイコン群Acの中からX線照射の対象部位を指定するアイコン(一例として、胸部を指定するアイコンAb)を指定して押下する。
【0072】
胸部を指定するアイコンAbが押下されることにより、図13に示すように、「胸部」との対象部位情報と紐付けられている画像取得条件Naが読み出されて設定されるとともに、画像取得条件Naの情報がタッチパネルTPに表示される。図13に示される従来例では管電圧40kV、管電流2.5mAとの条件が画像取得条件Naとして表示されている。このように、従来の装置においてAPRを用いて画像取得条件を設定するには、操作者が手動で対象部位を特定する操作が必須である。
【0073】
そのため、一例としてPCIを従来の装置で行う場合、X線を照射する対象部位が股関節、腹部、胸部と変更されるたびに、操作者はタッチパネルTPを操作して手動で対象部位を指定する必要がある。このような手動の操作を行うたびにカテーテル手技を中断することになるので、PCIの術式が長期化するとともに操作者が術式に集中することが困難になるという問題が発生する。
【0074】
手動による操作の回数を低減させる方法として、当初から胸部のAPRを選択して胸部に適した画像取得条件を読み出す方法が挙げられるが、X線照射の対象部位が股関節または腹部である場合であっても胸部に適した画像取得条件でX線画像が取得されるので、PCIの初期または中期において視認性の高いX線画像を取得することが困難となる。
【0075】
このような従来の構成に対し、実施例1に係るX線装置1では直近に得られた画像を学習モデル51によって解析し、当該画像に映る被検体Mの部位を推定する画像解析部47と、画像解析部47によって推定された部位に適切な画像取得条件63をAPR53によって読み出す条件読み出し部49とを備えている。学習モデル51は、人体の画像を教師情報とすることにより、画像に映る人体の部位を推論するように予め学習されている。そのため学習モデル51は、被検体Mを映すX線画像Fまたは光学画像Dを入力用画像とすることにより、当該入力用画像に映る被検体Mの部位を推論して部位情報61として出力する。
【0076】
APR53では、対象部位を特定する部位情報61の各々に対して、当該対象部位のX線画像を適切に取得できる画像取得条件63が紐付けられている。そのためX線管5または光学カメラ19を用いて直近に取得された被検体Mの画像を入力情報として画像解析部47および条件読み出し部49へ送信することにより、当該被検体Mの画像の対象となっている部位に適切な画像取得条件63が自動的に設定される。
【0077】
このように、実施例1に係るX線装置1では画像に映る人体の部位を推定する学習モデル51と、部位情報61に対して画像取得条件63が紐付けられているAPR53とを用いることによって、X線照射の対象部位の変更に応じて画像取得条件63が自動的に変更される構成を有している。そのため、PCIを例とするX線照射対象部位が短時間で変化するような検査を行う場合であっても、当該対象部位の変化に応じて画像取得条件63が適切なパラメータへと自動的に変化するの。よって、操作者は検査に集中しつつ適切な条件で取得された視認性の高いX線画像を確認することができる。
【0078】
また、学習モデル51とAPR53とを組み合わせることにより、被検体Mの画像を入力情報として、適切な画像取得条件63を出力情報として取得する構成を実現できる。現時点の機械学習では、人体の画像を教師用情報として、当該教師用情報の画像を適切に生成できるような画像取得条件63を確度よく推論させることは困難である。すなわち学習モデルを用いて、被検体の画像から直接画像取得条件を推論することは困難である。
【0079】
そこで発明者は鋭意検討の結果、被検体Mの画像を入力情報として、当該画像に映る部位を確度よく推論する機械学習は可能であることを見出した。そして部位と画像取得条件63とが紐付けられたAPR53と学習モデル51とを組み合わせることで、被検体Mの画像を起点として適切な画像取得条件63を確度よく推論させる構成を実現させた。
【実施例0080】
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2に係るX線装置1Aの全体構成は、図1に示されるような実施例1に係るX線装置1の全体構成と基本的に共通する。そこで、実施例2において実施例1と共通する構成については同符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
実施例2に係るX線装置1Aは、画像における検査項目を学習モデル51Aで推論した後、当該検査項目に応じた画像取得条件63を読み出させるという点において、画像に映る被検体の対象部位を学習モデル51で推論する実施例1と相違する。以下、実施例2において画像取得条件63を自動的に読み出させる構成について説明する。
【0082】
一般的に、X線画像に映る対象部位が異なると、当該X線画像の取得に適した画像取得条件63の各種パラメータが異なる。しかしながら、X線画像の対象部位が同じであっても、当該対象部位に対して行う検査の種類(検査項目、プロシージャともいう)が異なると、当該X線画像の取得に適した画像取得条件63の各種パラメータも異なる。一例として腹部に対して何も導入することなく一般的なX線撮影を行う場合と、腹部に内視鏡を挿入した状態でERCPを行う場合とではX線画像の取得に適切な画像取得条件63が異なる。
【0083】
そこで、実施例2に係る学習モデル51Aは、画像を入力用情報として検査項目を出力するように構成される。機械学習部45において原画像R1、1次水増し画像R2、および2次水増し画像R3を教師用画像として機械学習を行うという点では、実施例2に係る学習モデル51Aは実施例1に係る学習モデル51と共通する。但し、実施例1に係る学習モデル51は画像に映る人体の骨、臓器、輪郭などを認識し、当該人体の構成を手掛かりとして画像に映る人体の部位を推論する。
【0084】
一方、実施例2に係る学習モデル51Aは画像に映る人体の骨、臓器などの人体の構成に加えて、カテーテルまたは内視鏡を例とする検査機器、および造影剤などを例とする検査用薬剤を検出するように構成されている。そして学習モデル51Aは人体の構成に関する情報に加えて検査機器の有無または検査用薬剤の有無などの情報を手掛かりとして、画像がどのような検査項目に係る画像であるかを推論する。すなわち学習モデル51Aは被検体Mの画像を入力情報として、当該画像に係る検査項目を特定する情報を検査項目情報71として出力するように構成される。
【0085】
図14の各図は入力用画像と、学習モデル51Aによる推論結果との関係を示す図である。図14(a)に示すようなX線画像W1を入力用画像として学習モデル51Aに入力した場合、学習モデル51AはX線画像W1を解析して心臓H、肺Lu、図示しない胸椎および人体の輪郭などを検出する。そして学習モデル51Aは心臓H、肺Luなどが存在するという情報、およびカテーテルを例とする検査機器などが存在しないという情報などを手掛かりとして、X線画像W1は胸部を対象部位とする一般X線撮影の画像であると推論する。その結果、X線画像W1を入力情報とした場合、入力用画像の検査項目は「胸部一般撮影」であるとの検査項目情報71(検査項目情報71a)を学習モデル51Aは出力する。
【0086】
図14(b)に示すようなX線画像W2を入力用画像として学習モデル51Aに入力した場合、学習モデル51AはX線画像W2を解析して心臓H、肺Lu、カテーテルChなどを検出し、これらを手掛かりとしてX線画像W2が胸部を対象とするカテーテル術式、すなわちPCIを検査項目とする画像であると推論する。その結果、学習モデル51AはX線画像W2を入力情報とした場合、入力用画像は「胸部PCI」が検査項目であるという内容の検査項目情報71(検査項目情報71b)を出力する。
【0087】
図14(c)に示すようなX線画像W3を入力用画像として学習モデル51Aに入力した場合、学習モデル51AはX線画像W2を解析して腰椎Bh、胃Gaなどを検出する。そして腰椎Bh、胃Gaなどが存在するという情報と、カテーテルなど検査機器などが存在しないという情報などを合わせて、X線画像W3は腹部の一般X線撮影を検査項目とする画像であると推論する。その結果、学習モデル51AはX線画像W3を入力情報とした場合、「腹部一般撮影」との検査項目情報71(検査項目情報71c)を出力する。
【0088】
図14(d)に示すようなX線画像W4を入力用画像として学習モデル51Aに入力した場合、学習モデル51Aは腰椎Bh、胃Ga、内視鏡Esなどを検出する。これらを手掛かりとしてX線画像W4が腹部を対象とする内視鏡検査、すなわちERCPを検査項目とする画像であると推論する。その結果、学習モデル51AはX線画像W4を入力情報とした場合、「腹部ERCP」との検査項目情報71(検査項目情報71d)を出力する。
【0089】
図14(e)に示すようなX線画像W5を入力用画像として学習モデル51Aに入力した場合、学習モデル51Aは腰椎Bh、胃Ga、胃の形状に合わせて滞留している造影剤Ctなどを検出する。これらを手掛かりとしてX線画像W5が胃を造影している検査、すなわち上部消化管X線造影検査(UGI:Upper Gastrointestinal Series)を検査項目とする画像であると推論する。その結果、学習モデル51AはX線画像W5を入力情報とした場合、「腹部UGI」との検査項目情報71(検査項目情報71e)を出力する。
【0090】
このように、X線画像Fまたは光学画像Dなどを入力情報として入力することにより、入力情報である画像はどのような検査項目に係る画像であるかを推論し、推論によって得られた検査項目の情報71を出力するように、学習モデル51Aの機械学習が行われる。学習済みの学習モデル51Aは、学習モデル記憶部55に記憶される。
【0091】
ここで実施例2に係るAPR53Aについて説明する。学習モデル51Aは画像を入力情報として検査項目情報71を出力するので、APR53Aは図15(a)に示すように、検査項目情報71の各々に対応して画像取得条件63が紐付けられるように構成されている。すなわち検査項目情報71をAPR53Aへ入力することにより、当該検査項目情報71に係る検査項目に応じた画像取得条件63がAPR53Aから出力される。
【0092】
図15(b)は実施例2に係るAPR53Aにおいて、検査項目情報71と紐付けられている画像取得条件63の具体的な内容について示している。一例として検査項目情報71のうち、胸部一般X線撮影を検査項目とする検査項目情報71aは、画像処理条件67e、X線透視条件68e、およびX線撮影条件69eを含む画像取得条件63eと予め紐付けられている。胸部のPCIを検査項目とする検査項目情報71bは、画像取得条件63fと予め紐付けられている。腹部の一般X線撮影を検査項目とする検査項目情報71cは、画像取得条件63gと予め紐付けられている。腹部のERCPを検査項目とする検査項目情報71dは、画像取得条件63hと予め紐付けられている。このように実施例2では、複数の検査項目情報71の各々に対して適切な画像取得条件63が紐付けられているAPR53Aが予め設定され、条件記憶部57に記憶される。
【0093】
実施例2において、画像解析部47は学習モデル51Aを用いることにより、被検体Mについて得られた画像に係る検査項目を特定する。すなわち画像処理部33から送信されたX線画像などを入力用画像として学習モデル51Aに入力することにより、学習モデル51Aは、入力されたX線画像に映る人体の構成要素などを手掛かりとして、X線画像において実行されている検査項目を推論する。推論により得られた情報は、検査項目情報71として学習モデル51Aから出力される。条件読み出し部49は、画像解析部47によって得られた検査項目情報71をAPR53Aに入力することにより、当該検査項目情報71に係る検査項目に適切な画像取得条件63を設定する。実施例2に係る画像解析部47は、本発明における検査種類推論部に相当する。
【0094】
ここで、実施例2において自動的に画像取得条件63を設定する一連の工程について図16を用いて説明する。検査項目の具体例として、胸部LcにカテーテルChを進行させてPCIを実行している状態において画像取得条件63を設定する場合について説明する。
【0095】
胸部LcにカテーテルChを進行させている状態でX線管5から胸部Lcに対してX線を照射することにより、画像処理部33は胸部Lcを対象部位とするX線画像W2を生成する。生成されたX線画像W2のデータは画像解析部47へと送信される。
【0096】
画像解析部47は、X線画像W2を入力用画像として学習モデル51Aに入力する。学習モデル51は、入力情報であるX線画像W2に映っている部位を推定して出力する。この場合、X線画像W2に映る被検体Mの心臓H、肺Lu、およびカテーテルChなどを手掛かりとして、X線画像W2は胸部PCIを検査項目とする画像である可能性が最も高いと学習モデル51Aは推定する。その結果、入力用画像の検査項目は胸部PCIであるとの情報、すなわち検査項目情報71bを学習モデル51Aは出力する。学習モデル51Aから出力された検査項目情報71bは、条件読み出し部49へと送信される。
【0097】
条件読み出し部49は、検査項目情報71bに係る胸部PCIによるX線画像の取得に適切な画像取得条件63を探索する。すなわち検査項目として選択された検査項目情報71bをAPR53Aに入力することにより、APR53Aにおいて検査項目情報71bと紐付けて記憶されている画像取得条件63、すなわち画像取得条件63fが読み出されて出力される。
【0098】
その結果、X線照射条件65fに基づいてX線管5はX線を照射し、画像処理条件67fに基づいて画像処理部33はX線画像Fの画像処理を行う。よって、手動で検査項目を選択する操作を行わなくとも速やかに画像取得条件63fが自動的に設定されるので、適切な画像取得条件63fを用いて速やかにX線画像W2の視認性が向上する。操作者はX線画像W2を確認しつつ冠動脈にステントを留置させ、PCIの術式を終了させる。
【0099】
実施例2では学習モデル51AとAPR53Aとを用いることにより、直近に得られた被検体Mの画像を入力情報として当該画像において実行されている検査項目を推論し、当該検査項目に適切な画像取得条件63を読み出して設定できる。すなわちX線照射の対象部位の変更のみならず、内視鏡Esの挿入または造影剤Ctの注入を例とする操作によっても画像取得条件63は自動的かつ適切に変更される。
【0100】
従って、検査機器や検査用薬剤を用いる検査を行う場合において、操作者および被検体Mの負担を低減できる。一例として造影剤Ctを用いた造影検査を行う場合、造影剤Ctの注入前は一般X線撮影に応じた画像取得条件63が自動的に選択され、造影剤Ctの注入後は造影撮影に応じた画像取得条件63へと自動的に変更される。すなわち、造影剤Ctの注入前後において検査項目を手動で選択する操作が不要であるので、操作者は造影検査の手技に集中できる。また、消化管または血管に注入された造影剤Ctを追跡するようにX線撮影対象部位を連続的に変更する場合、対象部位の変更によって検査項目も変更されるので、当該検査項目の変更に応じて画像取得条件63も自動的に変更される。よって、画像取得条件63の設定を手動で行うことに起因して造影剤を見失うといったリスクもより確実に回避できる。
【実施例0101】
次に、本発明の実施例3を説明する。図17に示されるように、実施例3に係るX線装置1Bは主制御部39が誤解析検知部73をさらに備えている点で実施例1の構成と相違する。
【0102】
誤解析検知部73は、画像解析部47の後段に配設されており、条件読み出し部49の前段に配設されている。誤解析検知部73は、アーム位置検出部37が随時検出するCアーム9の位置情報を受信するとともに、画像解析部47から出力される部位情報61を受信するように構成されている。そして誤解析検知部73はCアームの位置情報の変更の有無と部位情報61の変更の有無とに基づいて、学習モデル51による誤解析の有無を検知する。
【0103】
図18は、画像解析部47において学習モデル51による誤解析が発生する場合について説明する図である。図18(a)は、腹部を映すX線画像F2を学習モデル51が正常に解析している状態を示している。この場合、学習モデル51は所定のタイミングTaにおいて得られたX線画像F2を正常に解析し、X線画像F2が腹部を映す画像であると判断して腹部の部位情報61bを出力する。
【0104】
一方、入力情報であるX線画像Fにノイズまたは画素値のゆらぎなどが発生することに起因して、学習モデル51が入力用画像に映る部位を誤って認識する場合がある。一例として図18(b)に示すように、タイミングTaの後であるタイミングTbにおいて、リングリング状のアーティファクトAtが映っている腹部のX線画像F4が取得されるものとする。リング状のアーティファクトAtが映っている腹部のX線画像F4を入力情報として学習モデル51に入力した場合、学習モデル51は胃Gaの像とアーティファクトAtとを肺の像であると誤認識し、実際は腹部を映しているX線画像F4について、学習モデル51は胸部を映す画像であると誤った解析を行うことがある。このような誤解析が発生した場合、腹部のX線画像F4を入力したにも関わらず、学習モデル51からは胸部の部位情報61cが出力されることとなる。
【0105】
このような誤解析によって出力された部位情報61を条件読み出し部49に送信すると、条件読み出し部49は胸部のX線画像の取得に適した画像取得条件63cを出力して設定する。その結果、腹部のX線画像の取得には不適切な画像取得条件63cが適用されるので、以後に生成される腹部のX線画像F4は視認性が低下する。
【0106】
そこで実施例3に係るX線装置1Bは誤解析検知部73を備えることにより、学習モデル51の誤解析に起因して不適切な画像取得条件63が適用されてX線画像Fが生成されることを防止する。図19は、誤解析検知部73が学習モデル51による誤解析の有無を検知する工程のフローチャートである。
【0107】
誤解析検知部73は、X線照射野の位置情報と学習モデル51が出力する部位情報61とをX線画像Fのフレームごとに比較する。すなわち、所定のタイミングT1において取得されたX線画像について、当該X線画像を生成する際におけるX線照射野の位置情報と学習モデル51が出力した部位情報61とを誤解析検知部73に送信する(ステップS1)。
【0108】
実施例3において、X線照射野の位置はCアーム9の位置によって特定される。すなわちCアーム9の位置を検知するアーム位置検知部37によってX線照射野の位置が検知され、X線照射野の位置情報がアーム位置検知部37から誤解析検知部73へと送信される。また、学習モデル51が出力した部位情報61は画像解析部47から誤解析検知部73へと送信される。アーム位置検知部37は、本発明における照射位置検知部に相当する。
【0109】
そしてタイミングT1から1フレーム分の時間が経過したタイミングT2において取得されたX線画像について、X線照射野の位置情報と学習モデル51が出力した部位情報61とが誤解析検知部73に送信される(ステップS2)。
【0110】
誤解析検知部73は、まずタイミングT1に取得されたX線画像の部位情報61とタイミングT2に取得されたX線画像の部位情報61とを比較し、部位情報61がタイミングT1とタイミングT2との間で変化したかどうかを判定する(ステップS3)。部位情報61に変化がなかった場合、誤解析検知部73は学習モデル51の誤解析は発生していないと判定し、タイミングT2において得られた部位情報61を条件読み出し部49へ送信して画像取得条件63を読み出させる(ステップSR1)。よって、タイミングT2において取得された画像取得条件63を用いてX線管5および画像処理部33が制御され、タイミングT2以降におけるX線画像の取得が実行される。
【0111】
一方、部位情報61がタイミングT1とタイミングT2との間で変化していた場合、ステップS4へと進行する。ステップS4に進行すると、誤解析検知部73はタイミングT1に取得されたX線照射野の位置情報とタイミングT2に取得されたX線照射野の位置情報とを比較し、X線照射野の位置がタイミングT1とタイミングT2との間で変化したかどうかを判定する。
【0112】
タイミングT1とタイミングT2との間でX線照射野が変位していたと判定された場合、誤解析検知部73は学習モデル51の誤解析は発生していないと判定する。そして誤解析検知部73はタイミングT2において得られた部位情報61を条件読み出し部49へ送信して画像取得条件63を読み出させる(ステップSR1)。すなわち、X線照射野が変位してX線照射の対象部位が変更された結果として、学習モデル51が出力する部位情報61が変化したと考えられるので、誤解析検知部73は学習モデル51の誤解析は発生していないと判定する。よって、タイミングT2において取得された画像取得条件63を用いてX線管5および画像処理部33が制御され、タイミングT2以降におけるX線画像の取得が実行される。
【0113】
一方ステップS4において、タイミングT1とタイミングT2との間でX線照射野が変位していないと判定された場合、誤解析検知部73は学習モデル51の誤解析が発生したと判定する(ステップS5)。そして誤解析検知部73はタイミングT2において取得された部位情報61を用いず、タイミングT1において取得された部位情報61を条件読み出し部49へ送信して画像取得条件63を読み出させる(ステップSR2)。よって、タイミングT1において取得された画像取得条件63を用いてX線管5および画像処理部33が制御され、タイミングT2以降におけるX線画像の取得が実行される。
【0114】
X線照射野が変位していない場合、X線照射の対象部位が変化していないので学習モデル51が出力する部位情報61も変化しないはずである。そのため、タイミングT1とタイミングT2との間でX線照射野が変位していないにも関わらず学習モデル51が出力する部位情報61が変化しているということは、学習モデル51が誤解析をしていると考えられる。よってステップS4においてX線照射野の位置情報に変化がないと判定された場合、タイミングT2において取得された部位情報61は誤った情報であると判定できる。このように、X線照射野の変位の有無と部位情報61の変化の有無とをフレームごとに判定することにより、誤解析検知部73は学習モデル51における誤解析の発生の有無を検知できる。
【0115】
実施例3において誤解析検知部73による判定を行う工程について、図20および図21を用いて具体的に説明する。図20は誤解析が発生していない場合の工程を示している。タイミングT1においてCアーム9は腹部Lbに位置しており、腹部を映すX線画像F2を生成する。画像解析部47はX線画像F2を入力情報として学習モデル51に入力することにより、腹部の部位情報61bを出力させる。腹部の部位情報61bはタイミングT1に係る部位情報61として誤解析検知部73へ送信される。またこのときアーム位置検出部37はタイミングT1におけるX線照射野の位置が腹部Lbである旨の位置情報を誤解析検知部73へ送信する。
【0116】
そしてタイミングT1の次フレームに相当するタイミングT2において、Cアーム9は胸部Lcへ移動しており、胸部を映すX線画像F3を生成するものとする。画像解析部47はX線画像F3を入力情報として学習モデル51に入力することにより、胸部の部位情報61cを出力させる。胸部の部位情報61cはタイミングT2に係る部位情報61として誤解析検知部73へ送信される。そしてアーム位置検出部37はタイミングT2におけるX線照射野の位置が胸部Lcである旨の位置情報を誤解析検知部73へ送信する。
【0117】
誤解析検知部73は、タイミングT1およびT2の各々に係る部位情報61とX線照射野の位置情報とを比較する。まずタイミングT1に係る部位情報61bとタイミングT2に係る部位情報61cとを比較することにより、誤解析検知部73はタイミングT1およびT2の間において部位情報61に変更があると判定する(ステップS3)。次にタイミングT1に係るX線照射野の位置情報LbとタイミングT2に係るX線照射野の位置情報Lcとを比較することにより、誤解析検知部73はタイミングT1およびT2の間においてX線照射野の位置に変更があると判定する(ステップS4)。
【0118】
部位情報61およびX線照射野の位置情報の両方に変更があるので、誤解析検知部73は学習モデル51に誤解析はなかったと判定し、タイミングT2に係る学習モデル51の解析結果(部位情報61c)を容認する。そして誤解析検知部73は部位情報61cを条件読み出し部49へ送信する(ステップSR1)。言い換えると、ステップSR1に進むと誤解析検知部73は、部位情報61の内容が変化した後に学習モデル51が出力した画像取得条件63を条件読み出し部49へ送信する。その結果、条件読み出し部49において画像取得条件63cが読み出され、画像取得条件63cを用いてタイミングT2以降におけるX線画像が生成される。
【0119】
図21は誤解析が発生している場合の工程を示している。タイミングT1においてCアーム9は腹部Lbに位置しており、腹部を映すX線画像F2を生成する。学習モデル51はX線画像F2を入力情報として、腹部の部位情報61bを出力させる。腹部の部位情報61bは誤解析検知部73へ送信される。アーム位置検出部37はタイミングT1におけるCアーム9の位置が腹部Lbである旨の位置情報を誤解析検知部73へ送信する。
【0120】
そしてタイミングT2において、Cアーム9は腹部Lbから移動しておらず、腹部LbをX線照射野とするX線画像F4を生成する。ここで学習モデル51はX線画像F4を入力情報とした結果、アーティファクトAtなどに起因してX線画像F4に映る像を誤って解析し、胸部との部位情報61cを出力するものとする。誤解析に起因して出力された胸部の部位情報61cはタイミングT2に係る部位情報61として誤解析検知部73へ送信される。そしてアーム位置検出部37はタイミングT2におけるX線照射野の位置が腹部Lbである旨の位置情報を誤解析検知部73へ送信する。
【0121】
誤解析検知部73は、タイミングT1およびT2の各々に係る部位情報61とX線照射野の位置情報とを比較する。まずタイミングT1に係る部位情報61bとタイミングT2に係る部位情報61cとを比較することにより、誤解析検知部73はタイミングT1およびT2の間において部位情報61に変更があると判定する(ステップS3)。次にタイミングT1に係るX線照射野の位置情報LbとタイミングT2に係るX線照射野の位置情報Lbとを比較することにより、誤解析検知部73はタイミングT1およびT2の間においてX線照射野の位置に変更がないと判定する(ステップS4)。
【0122】
部位情報61に変更がある一方でX線照射野の位置情報には変更がないので、誤解析検知部73は学習モデル51において誤解析が発生したと判定し、タイミングT2に係る学習モデル51の解析結果(部位情報61c)を誤った情報として無視または廃棄する(ステップS5)。そして誤解析検知部73はタイミングT2の直近であるタイミングT1において得られた部位情報61bを条件読み出し部49へ送信する(ステップSR2)。言い換えると、ステップSR2に進むと誤解析検知部73は、部位情報61の内容が変化する前に学習モデル51が出力した画像取得条件63を条件読み出し部49へ送信する。その結果、条件読み出し部49において画像取得条件63bが読み出され、画像取得条件63bを用いてタイミングT2以降におけるX線画像が生成される。
【0123】
実施例3では誤解析検知部73をさらに備えることにより、学習モデル51における誤解析の発生を検知する構成を有している。誤解析検知部73は、学習モデル51が出力する結果の変化の有無と、X線照射野の位置の変更の有無とを判定する。そして学習モデル51が出力する結果が変化した一方でX線照射野の位置に変更がないことを検知した場合、学習モデル51において誤解析が発生したと判定し、最新に得られた学習モデル51の出力結果(ここでは、タイミングT2において得られた部位情報61)を廃棄する。そして直近に得られた学習モデル51の出力結果(ここでは、タイミングT1において得られた部位情報61)を条件読み出し部49へ送信し、画像取得条件63の読み出しを行う。
【0124】
誤解析検知部73がX線照射野の位置変更の有無と、学習モデル51の出力結果の変化の有無とを随時判定することにより、入力情報のノイズなどに起因して学習モデル51が誤解析を行って誤った部位情報61を出力した場合であっても、当該誤った部位情報61は無視される。従って、入力情報のノイズなどに起因して学習モデル51が誤解析を行った場合であっても、誤解析によって出力された誤った部位情報61に基づいて不適切な画像取得条件63が読み出されるという事態を回避できる。従って、ゆらぎ等に起因する学習モデル51の誤解析による影響を低減させて適切な画像取得条件63を自動的に読み出させることができる。
【実施例0125】
次に、本発明の実施例4を説明する。実施例1および実施例2などでは、条件読み出し部49が読み出した画像取得条件63が自動的に設定されてX線画像Fの生成が行われる。すなわち、条件読み出し部49が読み出した最新の画像取得条件63が自動的にX線管5または画像処理部33へ送信され、X線管5または画像処理部33は常に最新の画像取得条件63に従って制御される。
【0126】
一方、実施例4では所定の条件を満たす場合、条件読み出し部49が読み出した画像取得条件63を用いてX線管5または画像処理部33を制御するステップの前段階として、承認ステップが発生するように構成されている。承認ステップは、条件読み出し部49によって読み出された最新の画像取得条件63を設定するか否かを操作者が決定するステップである。
【0127】
図22に示されるように、実施例4に係るX線装置1Cは、主制御部39が承認条件判定部75と承認キー表示制御部77と条件設定制御部79とをさらに備えている点で実施例1などの構成と相違する。
【0128】
承認条件判定部75は、承認ステップが必要となる所定の条件(承認条件)が発生しているか否かを判定する。実施例4では、学習モデル51が出力する情報の内容が変化したことを所定の条件とする。所定の条件を満たしていると承認条件判定部75が判定した場合、承認ステップが必要である旨の情報を承認キー表示制御部77へ送信する。
【0129】
承認キー表示制御部77は承認条件判定部75の後段に設けられており、表示部35に承認キーGKを表示させる制御を行う。承認ステップが必要である旨の情報が承認条件判定部75から送信されることにより、承認キー表示制御部77は承認キーGKを表示させるように表示部35を制御する。図23は、表示部35における承認キーGKの表示形態の一例を示している。承認キーGKの詳細については後述する。
【0130】
条件設定制御部79は条件読み出し部49の前段に設けられており、承認条件判定部75の後段に設けられている。条件設定制御部79は、承認ステップが必要となる所定の条件が発生した場合において、条件読み出し部49によって読み出された最新の画像取得条件63の設定の可否を制御する。条件設定制御部79は承認キーGKが操作者によって操作されることをトリガとして、最新の画像取得条件63が設定されるように条件読み出し部49を制御するように構成される。
【0131】
本実施例において、条件設定制御部79は承認条件判定部75の制御によって、最新の画像取得条件63がX線画像取得用の条件として設定されることを阻害する信号(阻害信号ST)を条件読み出し部49へ送信するように構成される。また条件設定制御部79は承認キーGKが操作者によって操作されることをトリガとして、阻害信号STの送信が停止されるように制御される。
【0132】
図24(b)は、実施例4に係るX線装置1Cの一連の動作を示すフローチャートである。実施例1などでは図24(a)に示すように、ステップM4において条件読み出し部49が画像取得条件63を読み出すと、自動的かつ無条件にステップM5へと進行する。すなわち最も新しく読み出された画像取得条件63は自動的にX線画像取得用の条件として設定されてX線管5または画像処理部33へと送信される。そしてステップM6へと進み、当該最新の画像取得条件63に従って次フレーム以降のX線画像Fが生成される。
【0133】
一方、実施例4ではステップM4とステップM5との間において、承認条件判定ステップQ1が存在する。承認条件判定ステップQ1は、承認条件が発生しているか否かを判定するステップである。承認条件が発生していないと判定された場合、すなわち本実施例では学習モデル51が出力する情報の内容が変化していない場合、ステップM5へと進行する。すなわち、承認条件が発生していない場合は条件読み出し部49によって読み出された最新の画像取得条件63がX線画像取得用の条件として設定される。
【0134】
承認条件判定ステップQ1において、承認条件が発生していると承認条件判定部75が判定した場合、ステップQ1からステップM4aへと進んで承認キーGKを表示させる。一例として承認キーGKは図23に示すように、表示部35における承認条件発生領域K5に表示される。承認条件発生領域K5には、承認キーGKと拒否キーDKに加えて、承認条件が発生した旨の情報J1と最新の画像取得条件63を承認するか否かを選択する旨の情報J2とが表示される。情報J1および情報J2の有無および内容は適宜選択してよい。
【0135】
承認キーGKが表示された後、ステップQ2に進む。ステップQ2では、操作者は最新の画像取得条件63を承認するか否かの選択を行う。最新の画像取得条件63を承認する場合、操作者は操作卓41などを操作して承認キーGKを選択する。承認キーGKを選択する操作の一例として、操作卓41のマウスを操作して承認キーGKをクリックする操作、またはタッチパネルである表示部35に表示される承認キーGKに触れる操作などが挙げられる。操作卓41は本発明における承認指示入力部に相当する。
【0136】
承認キーGKを選択する操作が行われた場合、ステップQ2からステップM5へと進み、最新の画像取得条件63がX線画像取得用の条件として設定される。そしてステップM6へと進み、設定されていた画像取得条件63を用いてX線画像を生成する。すなわち最新の画像取得条件63を用いることにより次フレーム以降のX線画像Fが生成される。
【0137】
その一方で、最新の画像取得条件63を用いるとX線画像Fの視認性が却って低下する場合と操作者が判断する場合がある。また、現時点でX線画像取得用の条件として設定されている画像取得条件63(直近に設定された画像取得条件63)を用いて得られたX線画像Fで十分な視認性が得られているので、最新の画像取得条件63を承認する必要がないと操作者が判断する場合もある。
【0138】
このように操作者が最新の画像取得条件63を承認しないと判断した場合、操作者は承認キーGKを選択せずに放置する操作または拒否キーDKを選択する操作を行う。拒否キーDKを選択した場合、承認条件発生領域K5に表示されていた承認キーGKなどの情報は非表示の状態となる。
【0139】
承認キーGKが選択されない場合、ステップM5aへと進む。ステップM5aへと進んだ場合、最新の画像取得条件63はX線画像取得用の条件として設定されず、直近に設定されていた画像取得条件63を継続してX線画像取得用の条件として設定する。すなわち、直近にX線画像取得用の条件として既に設定されていた画像取得条件63をX線管5または画像処理部33へと継続して送信させる。そしてステップM6へと進み、設定されていた画像取得条件63を用いてX線画像を生成する。すなわち直近に設定されていた画像取得条件63を継続して用いることにより、次フレーム以降のX線画像Fが生成される。
【0140】
ここで具体例を挙げて、実施例4において画像取得条件63を設定する一連の工程について、図25ないし図28を用いて説明する。図25は、各タイミングにおけるX線照射野の位置などを示している。実施例4では具体例としてタイミングP1からP4にわたって、X線画像Fを取得するものとする。そしてタイミングP3の直前にCアーム9が変位して、X線照射野が腹部Lbから胸部Lcへと変位したものとする。すなわちタイミングP1およびP2においてX線照射野の位置は腹部Lbであり、タイミングP3およびP4においてX線照射野の位置は胸部Lcである。また、タイミングP4において承認キーGKが操作されるものとする。
【0141】
まず、タイミングP1およびP2において画像取得条件63を設定する工程を説明する。ステップM4までの工程は図10に示すような実施例1と同様である。すなわち、X線管5からX線が照射されて腹部LbのX線画像F2が取得され(ステップM2)、X線画像F2を入力用画像として、学習モデル51は部位情報61bを出力する(ステップM3)。そしてAPR53は部位情報61bと紐付けられている画像取得条件63bを最新の画像取得条件63として読み出す(ステップM4)。
【0142】
実施例4では図24(b)に示すようにステップS4からステップQ1へと進む。タイミングP1およびP2において、X線照射野の位置は変更していない。よって、タイミングP1およびP2では、承認条件は発生していないと承認条件判定部75によって判定される。承認条件が発生していない場合、図26に示すように、承認条件判定部75は承認キー表示制御部77および条件設定制御部79に対して特段の制御を行わない。そのため、承認キー表示制御部77は表示部35に対して特段の制御を行わないので、承認キーGKは表示されない。
【0143】
また承認条件が発生していない場合、条件設定制御部79は承認条件判定部75による制御を受けていないので、条件設定制御部79から条件読み出し部49に対して阻害信号STが送信されない。そのため、条件読み出し部49において読み出された最新の画像取得条件63(ここでは画像取得条件63b)がX線画像取得用の条件として設定される(ステップM5)。すなわちタイミングP1およびP2では最新の画像取得条件63bがX線管5または画像処理部33へと送信され、画像取得条件63bに従ってX線画像Fが取得される(ステップM6)。
【0144】
次に、タイミングP3において画像取得条件63を設定する工程を説明する。ステップM4までの工程は図11に示すような実施例1における工程と同様である。すなわち、X線管5からX線が照射されて胸部LcのX線画像F3が取得され(ステップM2)、X線画像F3を入力用画像として、学習モデル51は部位情報61cを出力する(ステップM3)。そしてAPR53は部位情報61cと紐付けられている画像取得条件63cを最新の画像取得条件63として読み出す(ステップM4)。
【0145】
しかしタイミングP3では、ステップM4以降の工程がタイミングP1およびP2とは異なる。タイミングP2におけるX線照射野の位置は腹部Lbである一方、タイミングP3におけるX線照射野の位置は胸部Lcである。すなわち図25において符号L1で示されているように、タイミングP2において学習モデル51が出力する情報は部位情報61bである一方、タイミングP3において学習モデル51が出力する情報は部位情報61cに変化している。よってタイミングP3ではステップQ1において、承認条件が発生していると承認条件判定部75によって判定される。
【0146】
承認条件が発生していると判定した場合、承認条件判定部75は承認キー表示制御部77および条件設定制御部79に対して制御信号を送信する。承認キー表示制御部77は、承認条件判定部75の制御信号に従って、表示部35に承認キーGKを表示させる(ステップM4a)。具体的には図23に示すように、表示部35の承認条件発生領域K5に承認キーGKおよび拒否キーDKなどが表示される。
【0147】
また承認条件が発生している一方で、タイミングP3では承認キーGKが操作されていない(ステップQ2)。そのため、条件設定制御部79は承認条件判定部75の制御信号に従って、阻害信号STを条件読み出し部49へ送信する。そのため、条件読み出し部49において読み出された最新の画像取得条件63cはX線画像取得用の条件として設定されず、直近のタイミングにおいて設定されていた画像取得条件63が継続してX線画像取得用の条件として設定される(ステップM5a)。つまり、タイミングP3において読み出された画像取得条件63cはX線管5または画像処理部33へ送信されない(図27の符号RPを参照)。
【0148】
そしてタイミングP3の直近のタイミングはタイミングP2である。よって、タイミングP2においてX線画像取得用の条件として設定されていた画像取得条件63bが、タイミングP3においても引き続きX線画像取得用の条件として設定される。すなわち図25の符号L2で示すように、タイミングP3では画像取得条件63cが条件読み出し部49によって読み出されるにも関わらず、画像取得条件63bがX線画像取得用の条件として設定され、画像取得条件63bを用いてX線画像Fが取得される(ステップM6)。
【0149】
最後に、タイミングP4において画像取得条件63を設定する工程を説明する。ステップM4までの工程はタイミングP3と同様である。すなわち、学習モデル51は部位情報61cを出力し(ステップM3)。そしてAPR53は部位情報61cと紐付けられている画像取得条件63cを最新の画像取得条件63として読み出す(ステップM4)。
【0150】
しかし、タイミングP3では承認キーGKが操作されていない一方、タイミングP4において操作者は表示部35に表示されている承認キーGKを確認し、操作卓41などを用いて承認キーGKを操作する(ステップM4a、ステップQ2)。承認キーGKが操作されることにより、最新に読み出された画像取得条件63を承認する内容の指示が入力される。
【0151】
ステップQ2において承認キーGKが操作されることにより、図28に示すように、阻害信号STの送信を停止する旨の信号ANが操作卓41を介して条件設定制御部79へと送信される。条件設定制御部79は信号ANを受信することによって阻害信号STの送信を停止する。そのため、タイミングP4では承認キーGKが操作されることにより、条件読み出し部49が最新に読み出した画像取得条件63cがX線画像取得用の条件として設定される(ステップM5)。よって、最新の画像取得条件63cが条件読み出し部49からX線管5または画像処理部33へと送信され、画像取得条件63cに従ってX線画像Fが取得される(ステップM6)。
【0152】
このように実施例4では、画像取得条件63をX線画像取得用の条件として設定する前段階として、ステップQ1とステップM4aとステップQ2とを備える承認ステップを実行する。APR53において部位情報61と紐付けられている画像取得条件63は、被検体の体格が一般的な範囲である場合において適切なパラメータとして特定される。そのため、被検体の体格などの諸条件によっては、APR53を用いて読み出される画像取得条件63が、実際に当該被検体のX線画像を生成するパラメータとしては最適ではない場合がある。この場合、条件読み出し部49から読み出された画像取得条件63をX線画像取得用の条件として自動的に設定すると、操作者にとってX線画像の視認性が却って低下することとなる。
【0153】
そこで、本実施例では承認ステップを設け、最新に読み出された画像取得条件63の設定を操作者が承認するという操作をトリガとして、最新の画像取得条件63に係るパラメータを用いてX線画像Fを生成するように構成される。承認ステップを設けることにより、実際には最適ではない画像取得条件63が操作者の意思に反してX線画像取得用の条件として自動的に設定されるという事態を回避できる。
【0154】
<実施形態の構成による効果>
(第1項)本実施形態に係るX線装置(1)は、被検体MにX線を照射するX線管(5)と、被検体Mを透過したX線を検出するX線検出器(7)と、X線検出器(7)が出力する検出信号を用いて画像処理を行うことによりX線画像を生成する画像処理部(33)と、被検体(M)における対象部位の各々に対応した、X線照射条件(65)および画像処理条件(67)の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件(63)を、対象部位と紐付けて記憶する条件記憶部(57)と、人体の画像を教師画像として機械学習を実行することにより、当該画像に映し出されている人体の部位を推論して出力させる学習モデル(51)を記憶する学習モデル記憶部(55)と、直近に得られた被検体MのX線画像(F)および光学画像(D)のうち少なくともいずれか一方の画像を入力用画像として学習モデル(51)に入力することにより、当該入力用画像に映し出されている部位を推論させて出力させる対象部位推論部(47)と、対象部位推論部(47)によって出力された部位を部位情報として選択することにより、当該部位情報に紐付けて条件記憶部(57)に記憶された画像取得条件(63)を読み出させる条件読み出し部(49)と、条件読み出し部(49)によって読み出された画像取得条件(63)に沿って、X線管(5)の制御および画像処理部(33)の制御のうち少なくともいずれか一方の制御を行う制御部(39)と、を備える。
【0155】
第1項に記載のX線装置1によれば、画像に映る対象部位を推論する学習モデル51と、対象部位に応じて適切な画像取得条件が紐付けられているAPR53を用いることにより、X線照射条件65および画像処理条件67の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件63を自動的に設定する。学習モデル51は、人体の画像を教師画像とする機械学習によって、画像に映る人体の部位を推論して出力されるように構成される。すなわち画像解析部47では被検体Mの画像を入力用画像として学習モデル51に入力することで、当該入力用画像に映る被検体の対象部位が推論されて出力される。条件読み出し部49は、出力された被検体Mの対象部位を部位情報61として選択することによって、当該部位情報61と紐付けられて記憶されていた画像取得条件63を自動的に読み出す。従って、被検体のX線画像Fを取得すると、画像解析部47と条件読み出し部49とによって、当該X線画像Fの照射野に対して適切な画像取得条件63が自動的に読み出される。従って、被検体MにX線を照射する対象部位が変更された場合であっても、変更後の対象部位に適切な画像取得条件63が自動的に読み出される。すなわち、操作者がマニュアル操作で対象部位を選択して画像取得条件63を設定するという工程が不要となるので、より確実かつ迅速に適切な条件でX線透視またはX線撮影を実行できる。
【0156】
(第2項)また第1項に記載のX線装置において、被検体(M)に対するX線照射野の位置を随時検知する照射位置検知部(37)と、学習モデル(51)が出力する部位の内容が変化した場合でかつ照射位置検知部(37)がX線照射野の変位を検知した場合は当該変化の後に学習モデル(51)から出力された部位を対象部位として選択することにより条件読み出し部(49)から画像取得条件63を読み出させ、学習モデル(51)が出力する部位(61)の内容が変化した場合でかつ照射位置検知部(37)がX線照射野の変位を検知しない場合は当該変化の前に学習モデル(51)から出力された部位を選択することにより条件読み出し部(49)から画像取得条件(63)を読み出させる誤解析検知部(73)と、を備える。
【0157】
第2項に記載のX線装置1Bによれば、誤解析検知部73は被検体Mに対するX線照射野の位置と学習モデル51が出力する部位情報61の内容と比較し、学習モデル51において誤解析が発生しているか否かを検知する。学習モデル51が出力する部位情報61の内容が変化した場合でかつX線照射野が変位していた場合、学習モデル51が出力した部位情報61の変化は学習モデル51の誤解析に起因するものではないと判定できる。そのため誤解析検知部73は、当該変化後の部位情報61を選択して条件読み出し部49から画像取得条件63を読み出させる。
【0158】
一方、学習モデル51が出力する部位情報61の内容が変化した場合でかつX線照射野が変位していない場合、学習モデル51が出力した部位情報61の変化は学習モデル51の誤解析に起因すると判定できる。そのため誤解析検知部73は、当該変化後の部位情報61を選択することなく、当該変化前に出力された部位情報61を選択して条件読み出し部49から画像取得条件63を読み出させる。このような誤解析検知部73を備えることにより、ノイズを例とするゆらぎに起因して学習モデル51の誤解析が発生し、学習モデル51が出力する部位情報61の内容が変化した場合であっても、当該誤解析に起因して出力された部位情報61の内容を確実に無視できる。従って、学習モデル51の誤解析に起因して不適切な画像取得条件63が読み出されるという事態を回避できる。
【0159】
(第3項)また第1項または第2項に記載のX線装置において、条件読み出し部(49)によって読み出された画像取得条件(63)を承認する操作者の指示を入力させる承認指示入力部(41)を備え、制御部(39)は、画像取得条件(63)を承認する指示が承認指示入力部(41)によって入力された場合に、条件読み出し部(49)によって読み出されたX線照射条件(65)に沿ってX線が照射されるようにX線管(5)を制御すること、および画像処理条件(67)に沿ってX線画像が生成されるように画像処理部(33)を制御すること、の少なくともいずれか一方の制御を行うように構成されている。
【0160】
第3項に記載のX線装置1Cによれば、条件読み出し部49によって読み出された画像取得条件63を操作者が承認することによって、当該画像取得条件63の内容に従ってX線管5の制御または画像処理部33の制御が行われる。被検体の体格が一般的な範囲でないなどの理由により、学習モデル51が出力する部位情報61に紐付けられた画像取得条件63が実際には当該被検体のX線画像を取得する条件として適切でない場合がある。この場合、操作者は条件読み出し部49によって読み出された画像取得条件63を承認しないことによって、実際には最適ではない画像取得条件63が操作者の意思に反してX線画像取得用の条件として自動的に設定されるという事態を回避できる。
【0161】
(第4項)本実施形態に係るX線装置(1A)は、被検体MにX線を照射するX線管(5)と、被検体Mを透過したX線を検出するX線検出器(7)と、X線検出器Mが出力する検出信号を用いて画像処理を行うことによりX線画像を生成する画像処理部(33)と、被検体(M)における検査項目(71)の各々に対応した、X線照射条件(65)および画像処理条件(67)の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件(63)を、検査項目(71)と紐付けて記憶する条件記憶部(57)と、人体を映す検査画像を教師画像として機械学習を実行することにより、当該検査画像における検査の種類を推論して出力させる学習モデル(51A)を記憶する学習モデル記憶部(55)と、被検体のX線画像(F)および光学画像(D)の少なくともいずれか一方の画像を入力用画像として学習モデル(51A)に入力することにより、当該入力用画像における検査の種類を推論させて出力させる検査種類推論部(47)と、検査種類推論部(47)によって出力された検査の種類を検査項目(71)として選択することにより、当該検査項目(71)に紐付けて条件記憶部(57)に記憶された画像取得条件(63)を読み出させる条件読み出し部(49)と、条件読み出し部(49)によって読み出された画像取得条件(63)に沿って、X線管(5)の制御および画像処理部(33)の制御の少なくともいずれか一方の制御を行う制御部(39)と、を備える。
【0162】
第4項に記載のX線装置1Aによれば、検査画像における検査の種類を推論する学習モデル51Aと、検査の種類に係る検査項目情報71に応じて適切な画像取得条件63が紐付けられているAPR53Aを用いることにより、X線照射条件65および画像処理条件67の少なくともいずれか一方の条件を含む画像取得条件63を自動的に設定する。学習モデル51は、人体を映す検査画像を教師画像とする機械学習によって、当該検査画像における検査の種類を推論して出力されるように構成される。すなわち画像解析部47では被検体Mの画像を入力用画像として学習モデル51に入力することで、当該入力用画像における検査の種類が推論されて出力される。条件読み出し部49は、出力された被検体Mの検査の種類を検査項目情報71として選択することによって、当該検査項目情報71と紐付けられて記憶されていた画像取得条件63を自動的に読み出す。従って、被検体のX線画像Fを取得すると、画像解析部47と条件読み出し部49とによって、当該X線画像Fの検査項目に対して適切な画像取得条件63が自動的に読み出される。従って、被検体Mにおける検査項目情報71が変更された場合であっても、変更後の検査項目情報71に適切な画像取得条件63が自動的に読み出される。すなわち、操作者がマニュアル操作で対象部位を選択して画像取得条件63を設定するという工程が不要となるので、より確実かつ迅速に適切な条件でX線透視またはX線撮影を実行できる。
【0163】
(第5項)また第4項に記載のX線装置において、被検体Mに対するX線照射野の位置を随時検知する照射位置検知部(37)と、
学習モデル(51)が出力する検査項目(71)の内容が変化した場合でかつ照射位置検知部(37)が前記X線照射野の変位を検知した場合は当該変化の後に出力された検査項目(71)を選択することにより条件読み出し部(49)から画像取得条件(63)を読み出させ、学習モデル(51)が出力する検査項目(71)の内容が変化した場合でかつ照射位置検知部(37)がX線照射野の変位を検知しない場合は当該変化の前に出力された検査項目(71)を選択することにより条件読み出し部(49)から画像取得条件(63)を読み出させる誤解析検知部(73)と、を備える。
【0164】
第5項に記載のX線装置1Bによれば、誤解析検知部73は被検体Mに対するX線照射野の位置と学習モデル51が出力する検査項目情報71の内容と比較し、学習モデル51において誤解析が発生しているか否かを検知する。学習モデル51が出力する検査項目情報71の内容が変化した場合でかつX線照射野が変位していた場合、学習モデル51が出力した検査項目情報71の変化は学習モデル51の誤解析に起因するものではないと判定できる。そのため誤解析検知部73は、当該変化後の検査項目情報71を選択して条件読み出し部49から画像取得条件63を読み出させる。
【0165】
一方、学習モデル51が出力する検査項目情報71の内容が変化した場合でかつX線照射野が変位していない場合、学習モデル51が出力した検査項目情報71の変化は学習モデル51の誤解析に起因すると判定できる。そのため誤解析検知部73は、当該変化後の検査項目情報71を選択することなく、当該変化前に出力された検査項目情報71を選択して条件読み出し部49から画像取得条件63を読み出させる。このような誤解析検知部73を備えることにより、ノイズを例とするゆらぎに起因して学習モデル51の誤解析が発生し、学習モデル51が出力する検査項目情報71の内容が変化した場合であっても、当該誤解析に起因して出力された検査項目情報71の内容を確実に無視できる。従って、学習モデル51の誤解析に起因して不適切な画像取得条件63が読み出されるという事態を回避できる。
【0166】
(第6項)また第4項または第5項のいずれかに記載のX線装置において、条件読み出し部(49)によって読み出された画像取得条件(63)を承認する操作者の指示を入力させる承認指示入力部(41)を備え、制御部(39)は、画像取得条件63を承認する指示が承認指示入力部(41)によって入力された場合に、条件読み出し部49によって読み出されたX線照射条件(65)に沿ってX線が照射されるようにX線管5を制御すること、および画像処理条件(67)に沿ってX線画像Fが生成されるように画像処理部(33)を制御すること、の少なくともいずれか一方の制御を行うように構成されている。
【0167】
第6項に記載のX線装置1Cによれば、条件読み出し部49によって読み出された画像取得条件63を操作者が承認することによって、当該画像取得条件63の内容に従ってX線管5の制御または画像処理部33の制御が行われる。被検体の体格が一般的な範囲でないなどの理由により、学習モデル51が出力する部位情報61に紐付けられた画像取得条件63が実際には当該被検体のX線画像を取得する条件として適切でない場合がある。この場合、操作者は条件読み出し部49によって読み出された画像取得条件63を承認しないことによって、実際には最適ではない画像取得条件63が操作者の意思に反してX線画像取得用の条件として自動的に設定されるという事態を回避できる。
【0168】
<他の実施形態>
なお、今回開示された実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲、並びに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0169】
(1)上述した各実施例において、画像取得条件63はX線照射条件65および画像処理条件67の両方を含む構成に限られることはなく、いずれか一方を含む構成であってもよい。またX線照射条件65はX線透視条件68およびX線撮影条件69の両方を含む構成に限られることはなく、いずれか一方を含む構成であってもよい。
【0170】
(2)上述した各実施例において、学習モデル51に入力する入力情報として用いるX線画像FはX線透視像であってもよいしX線撮影像であってもよい。また、X線透視像を入力情報として学習モデル51およびAPR53で読み出された画像取得条件63を用いて、X線撮影を行ってもよい。また、X線撮影像を入力情報として学習モデル51およびAPR53で読み出された画像取得条件63を用いて、X線透視を行ってもよい。
【0171】
(3)上述した各実施例において、X線装置1としてCアーム9を備えるX線透視撮影装置を例として用いたがこれに限ることはなく、一般X線撮影用のX線撮影装置、断層撮影装置を例とする任意の放射線撮影装置に本発明の構成を適用できる。
【0172】
(4)上述した実施例3において、アーム位置検知部37が検知するCアーム9の位置によってX線照射野の変位が検知される構成を例示したが、アーム位置検知部37によってX線照射野の変位が検知される構成に限られない。一例として天板3が水平移動することでX線照射野が変位する場合、天板3の位置を特定する構成がX線照射野の変位の検知に必要となる。
【0173】
(5)上述した実施例4において、承認条件は学習モデル51が出力する情報が変化することに限られない。承認条件の他の例として、被検体に対する照射野の位置が変化すること、または直近に得られたX線画像のS/N比が予め定められた閾値以下となることなどが挙げられる。照射野の位置が変化する要件として、Cアーム9または天板3の位置が変化することなどが挙げられる。
【0174】
(6)上述した実施例4において、承認キーGKを表示部35に表示する場合、X線画像とともに表示する構成を例示したがこれに限られない。表示部35が複数のモニタを備える場合、一のモニタにX線画像および解析結果などを表示して他のモニタに承認キーGKを表示してもよい。また承認キーGKを表示するモニタまたはタッチパネルを操作卓41に配置して承認キーGKを表示させてもよい。
【0175】
(7)上述した実施例4において、画像取得条件63を承認する指示を入力する構成は表示部35などに表示される承認キーGKを操作する構成に限ることはなく、スイッチまたはボタンなど他の構成を適宜用いてよい。また承認条件が発生した場合において条件設定制御部79が条件読み出し部49を制御する方法は、阻害信号STを用いて条件読み出し部49から画像取得条件63がX線管5などに送信されることを阻害する構成に限られない。承認条件が発生した場合、最新の画像取得条件63を承認する指示が入力されることをトリガとして当該最新の画像取得条件63がX線画像取得用条件として設定されるように制御する構成であれば、条件設定制御部79が制御する構成は適宜変更してよい。一例として、最新の画像取得条件63を承認する指示が操作者によって入力されることにより、最新の画像取得条件63をX線管5などに送信することを指示する信号を条件設定制御部79から条件読み出し部49へと送信させる構成が挙げられる。
【符号の説明】
【0176】
1 …X線装置
3 …天板
5 …X線管
7 …X線検出器
9 …Cアーム
17 …コリメータ
19 …光学カメラ
21 …フットスイッチ
33 …画像処理部
35 …表示部
37 …アーム位置検出部
39 …主制御部
41 …操作卓
43 …記憶部
45 …機械学習部
47 …画像解析部
49 …条件読み出し部
51 …学習モデル
53 …APR
55 …学習モデル記憶部
57 …条件記憶部
61 …部位情報
63 …画像取得条件
65 …X線照射条件
67 …画像処理条件
68 …X線透視条件
69 …X線撮影条件
71 …検査項目情報
73 …誤解析検知部
75 …承認条件判定部
77 …承認キー表示制御部
79 …条件設定制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
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図22
図23
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図25
図26
図27
図28