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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090296
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230622BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205201
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 高徳
(72)【発明者】
【氏名】浜野 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 雅俊
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA28
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA15
2C056KB16
2C057AF23
2C057AG68
2C057AG71
2C057AK07
2C057AN01
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】安定した吐出性能を得ることができる液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド5であって、X方向の+X方向から-X方向に順次配列された複数の吐出チャネルが設けられ、吐出チャネルの内部のインクを噴射するヘッドチップと、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内する案内流路104が設けられると共に、案内流路104が各々の吐出チャネルに接続された流路部材44と、X方向に沿って配列された複数の駆動IC84が実装されると共に、流路部材44と熱的に接続された基板ユニットと、を備え、流路部材44は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する冷却流路102が設けられている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の一方側から他方側に順次配列された複数の圧力室が設けられ、前記圧力室の内部の液体を噴射する噴射部と、
前記第1方向の前記一方側から前記他方側に液体を案内する案内流路が設けられると共に、前記案内流路が各々の前記圧力室に接続された流路部材と、
前記第1方向に沿って配列された複数の駆動制御部が実装されると共に、前記流路部材と熱的に接続された回路基板と、を備え、
前記流路部材は、前記第1方向の前記他方側から前記一方側に前記液体を案内して複数の前記駆動制御部を冷却する冷却流路が設けられている
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記流路部材は、外部から流入される前記液体を案内する流入流路と、外部へ排出する前記液体を案内する排出流路とが設けられ、
前記案内流路と前記冷却流路とが、前記流入流路及び前記排出流路の間において並列的に配置されている
請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記流路部材は、前記流入流路と前記冷却流路の上流端との間に配置された第1接続流路と、前記冷却流路の下流端と前記排出流路との間に配置された第2接続流路と、が設けられ、
前記第1接続流路と前記第2接続流路とは、前記第1方向の前記一方側から前記他方側に前記液体を案内する
請求項2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記流路部材は、外部から流入される前記液体を案内する流入流路と、外部へ排出する前記液体を案内する排出流路とが設けられ、
前記流入流路と、前記案内流路と、前記冷却流路と、前記排出流路とが直列的に配列されている
請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記流入流路、前記冷却流路、前記案内流路、前記排出流路の順に配列されている請求項4記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記流入流路、前記案内流路、前記冷却流路、前記排出流路の順に配列されている請求項4記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記流路部材は、前記案内流路と前記冷却流路とを接続した第3接続流路と、前記冷却流路の前記第3接続流路と接続された端部と反対側の端部と接続された第4接続流路と、が設けられ、
少なくとも前記第3接続流路と前記第4接続流路との一方は、少なくとも一部にて前記第1方向の前記一方側から前記他方側に前記液体を案内する
請求項5または6記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記流入流路の上流端に接続された流入ポートと、前記排出流路の下流端に接続された排出ポートとを備え、
前記流入ポートと前記排出ポートとは、前記第1方向にて、前記流路部材の中央よりも前記一方側あるいは前記他方側に隣接配置されている
請求項2~7いずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記流入流路は、下流に向かうに連れて前記排出流路から離間する離間部を有する請求項8記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記流路部材は、前記第1方向の一方側から他方側に前記液体を流す第2冷却流路が設けられ、
前記第2冷却流路は、複数の前記駆動制御部のうち、前記他方側に位置する一部の前記駆動制御部を冷却する
請求項2~9いずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
請求項1~10いずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを備える液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路部の駆動ICを効率よく冷却し、装置構成を簡素化可能な液体噴射ヘッドが開示されている。特許文献1に開示された液体噴射ヘッドは、ヘッド部と、回路部と、冷却部とを含む。ヘッド部は、外部から供給される液体を流通する供給流路と、供給流路に連通する圧力室と、圧力室を駆動する駆動素子と、圧力室に連通するノズルとを含み、ノズルから液滴を吐出する。回路部は、駆動素子に駆動波形を供給する。冷却部は、液体を流通する冷却流路を含み、回路部と連結固定される。また、特許文献1では、供給流路と冷却流路とで液体が並列して流通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-171806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された液体噴射ヘッドにおいては、供給流路と並列に設けられた冷却流路に液体が流れることで駆動ICが冷却される。このため、冷却流路を流れる液体は、下流側に向かうに連れて昇温される。また、供給流路を流れる液体は、供給流路に連通する圧力室を駆動する駆動素子の熱の影響により、下流側に向かうに連れて昇温される。特許文献1においては、冷却流路における液体の流れ方向と、供給流路における液体の流れ方向とが同一である。また、冷却流路の上流端と供給流路の上流端とが接続され、冷却流路の下流端と供給流路の下流端とが接続されている。つまり、冷却流路で昇温された液体と、供給流路で昇温された液体とが、冷却流路及び供給流路の延伸方向における片側で合流する。このため、特許文献1で開示された液体噴射ヘッドでは、冷却流路及び供給流路の延伸方向における片側に熱が集まり、液体噴射ヘッドの全体において上記延伸方向における一方側と他方側との温度差が大きくなる。
【0005】
このような特許文献1に開示された液体噴射ヘッドでは、液体噴射ヘッドの全体における熱分布の偏りが大きい。このため、複数の圧力室を冷却流路及び供給流路の延伸方向に沿って直線状に配列して設けると、圧力室の位置による温度差が大きくなる。この結果、圧力室の位置によって液体の粘度が異なることになり、圧力室の位置によって液体の吐出量に差が生じる等の吐出不良に繋がる可能性ある。
【0006】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、安定した吐出性能を得ることができる液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、第1方向の一方側から他方側に順次配列された複数の圧力室が設けられ、上記圧力室の内部の液体を噴射する噴射部と、上記第1方向の上記一方側から上記他方側に液体を案内する案内流路が設けられると共に、上記案内流路が各々の上記圧力室に接続された流路部材と、上記第1方向に沿って配列された複数の駆動制御部が実装されると共に、上記流路部材と熱的に接続された回路基板と、を備え、上記流路部材は、上記第1方向の上記他方側から上記一方側に上記液体を案内して複数の上記駆動制御部を冷却する冷却流路が設けられている。
【0008】
液体噴射ヘッドにおける熱源は、液体の噴射動作を行う圧力室が設けられた噴射部と、複数の駆動制御部との2つが主である。本態様によれば、流路部材には、これらの熱源の1つである噴射部の圧力室に接続された案内流路が設けられている。また、流路部材には、これらの熱源の1つである複数の駆動制御部を冷却する冷却流路が設けられている。
これらの案内流路と冷却流路とにおいて、案内流路における液体の流れ方向と、駆動制御部を冷却する冷却流路における液体の流れ方向とは反対方向である。このため、案内流路では、第1方向の他方側が一方側に対して相対的に高温となる。一方、冷却流路では、第1方向の一方側が他方側に対して相対的に高温となる。
この結果、液体噴射ヘッドの全体で見た場合の温度分布が、案内流路の液体の流れ方向と冷却流路の液体の流れ方向とが同一である場合と比較して均一化される。液体噴射ヘッドの全体的な熱分布が均一化されることによって、各々の圧力室に供給される液体の温度が均一化され、各々の圧力室における液体の粘度も均一化される。よって、安定した吐出性能を得ることができる。また、液体噴射ヘッドの全体的な熱分布が均一化されることによって、駆動制御部の最高到達温度を低下させることができ、駆動制御部を安定的に駆動させることができる。
【0009】
(2)上記(1)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流路部材は、外部から流入される上記液体を案内する流入流路と、外部へ排出する上記液体を案内する排出流路とが設けられ、上記案内流路と上記冷却流路とが、上記流入流路及び上記排出流路の間において並列的に配置されている。
【0010】
本態様によれば、流入流路から圧力室まで距離が、流入流路と案内流路との間に冷却流路が配置される場合よりも短い。このため、圧力室までの圧力損失を小さくすることができ、液体の圧力室への供給量が不足することを抑制し、安定的に液体を圧力室から噴射することが可能になる。
【0011】
(3)上記(2)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流路部材は、上記流入流路と上記冷却流路の上流端との間に配置された第1接続流路と、上記冷却流路の下流端と上記排出流路との間に配置された第2接続流路と、が設けられ、上記第1接続流路と上記第2接続流路とは、上記第1方向の上記一方側から上記他方側に上記液体を案内する。
【0012】
本態様によれば、第1接続流路と冷却流路と第2接続流路とからなる蛇行流路が形成される。このため、液体噴射ヘッドの全体的な熱分布をさらに均一化することが可能になる。
【0013】
(4)上記(1)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流路部材は、外部から流入される上記液体を案内する流入流路と、外部へ排出する上記液体を案内する排出流路とが設けられ、上記流入流路と、上記案内流路と、上記冷却流路と、上記排出流路とが直列的に配列されている。
【0014】
本態様によれば、圧力室に供給される液体が冷却流路を流れる。このため、案内流路と冷却流路とが流入流路及び排出流路の間において並列的に配置される場合よりも、液体が流れる流路全体で圧力が分散することを防止することができる。したがって、流入流路の入口と排出流路の出口との圧力を、案内流路と冷却流路とが流入流路及び排出流路の間において並列的に配置された場合と同一条件とすると、液体の流量が増える。よって、冷却流路における冷却効率を向上することが可能になる。
【0015】
(5)上記(4)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流入流路、上記冷却流路、上記案内流路、上記排出流路の順に配列されている。
【0016】
一般的に噴射部よりも駆動制御部が高温になる。本態様によれば、液体は、案内流路よりも先に冷却流路を流れる。このため、案内流路を流れて温度が上がった液体を冷却流路に流す場合よりも、温度が低い状態の液体を駆動制御部の冷却に用いることができる。したがって、駆動制御部の冷却効率を向上できる。
【0017】
(6)上記(4)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流入流路、上記案内流路、上記冷却流路、上記排出流路の順に配列されている。
【0018】
本態様によれば、流入流路から圧力室まで距離が、流入流路と案内流路との間に冷却流路が配置される場合よりも短い。このため、圧力室までの圧力損失を小さくすることができ、液体の圧力室への供給量が不足することを抑制し、安定的に液体を圧力室から噴射することが可能になる。
【0019】
(7)上記(5)または(6)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流路部材は、上記案内流路と上記冷却流路とを接続した第3接続流路と、上記冷却流路の上記第3接続流路と接続された端部と反対側の端部と接続された第4接続流路と、が設けられ、少なくとも上記第3接続流路と上記第4接続流路との一方は、少なくとも一部にて上記第1方向の上記一方側から上記他方側に上記液体を案内する。
【0020】
本態様によれば、第3接続流路と冷却流路と第4接続流路とからなる蛇行流路が形成される。このため、液体噴射ヘッドの全体的な熱分布をさらに均一化することが可能になる。
【0021】
(8)上記(2)~(7)のいずれかの態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流入流路の上流端に接続された流入ポートと、上記排出流路の下流端に接続された排出ポートとを備え、上記流入ポートと上記排出ポートとは、上記第1方向にて、上記流路部材の中央よりも上記一方側あるいは上記他方側に隣接配置されている。
【0022】
本態様によれば、流入ポートに接続される液体供給管と、排出ポートに接続される液体排出管とを近接して纏めて配置することが可能になる。このため、流入ポートと排出ポートとが離れて配置されている場合よりも、流入ポートと排出ポートとが他の構成要素の邪魔となりにくい。
また、冷却流路で他方から一方に液体が流れ、案内流路で一方から他方に液体が流れる。このため、案内流路と冷却流路とが直列的に配列されている場合には、液体が流れる流路の長さを最短にすることが可能となる。
【0023】
(9)上記(8)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、上記流入流路は、下流に向かうに連れて上記排出流路から離間する離間部を有する。
【0024】
本態様によれば、流入流路を流れる液体が排出流路を流れる高温の液体によって昇温することを抑制することができる。このため、離間部を設けない場合よりも、低温の液体を冷却流路に供給し、駆動制御部の冷却効率を向上できる。
【0025】
(10)上記(2)~(9)のいずれかの態様の噴射ヘッドにおいて、上記流路部材は、上記第1方向の一方側から他方側に上記液体を流す第2冷却流路が設けられ、上記第2冷却流路は、複数の上記駆動制御部のうち、上記他方側に位置する一部の上記駆動制御部を冷却する。
【0026】
本態様によれば、排出流路を流れる高温の液体によって昇温されやすい位置に配置された駆動制御部を局所的に冷却することができる。このため、駆動制御部の最高到達温度をさらに低減することが可能になる。
【0027】
(11)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、上記(1)~(10)のいずれかの態様の液体噴射ヘッドを備えている。
【0028】
本態様によれば、上記態様の液体噴射ヘッドを備えているため、安定した吐出性能を有する液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、安定した吐出性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
図4】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの一部を分解した斜視図である。
図5】第1実施形態に係るヘッドチップを含む拡大分解斜視図である。
図6】第1実施形態に係るヘッドチップにおける吐出チャネルの断面を含む図である。
図7】第1実施形態に係るヘッドチップにおける非吐出チャネルの断面を含む図である。
図8】第1実施形態に係る第1流路プレートと流路カバーとを含む分解斜視図である。
図9】第1実施形態に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
図10】第1実施形態の変形例に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
図11】第2実施形態に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
図12】第2実施形態の変形例に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
図13】第3実施形態に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
図14】第3実施形態の変形例に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
図15】第4実施形態に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
図16】第4実施形態の変形例に係るインク流路を含むインクジェットヘッドの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0032】
(第1実施形態)
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0033】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構7の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本明細書において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0034】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インクタンク4には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。
【0035】
図2は、インクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0036】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧となっている。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧となっている。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0037】
図1に示すように、走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延設された一対のガイドレール28,29と、一対のガイドレール28,29に移動可能に支持されたキャリッジ30と、キャリッジ30をY方向に移動させる駆動機構31と、を備える。なお、搬送機構2,3及び走査機構7は、インクジェットヘッド5と被記録媒体Pとを相対的に移動させる。
【0038】
駆動機構31は、X方向におけるガイドレール28,29の間に配設されている。駆動機構31は、Y方向に間隔をあけて配設された一対のプーリ32,33と、一対のプーリ32,33間に巻回された無端ベルト34と、一方のプーリ32を回転駆動させる駆動モータ35と、を備える。
【0039】
キャリッジ30は、無端ベルト34に連結されている。キャリッジ30には、複数のインクジェットヘッド5が搭載されている。本実施形態においては、イエローのインクを吐出するインクジェットヘッド5と、マゼンタのインクを吐出するインクジェットヘッド5と、シアンのインクを吐出するインクジェットヘッド5と、ブラックのインクを吐出するインクジェットヘッド5と、が設けられている。これらのインクジェットヘッド5は、Y方向に並んで配置されている。
【0040】
[インクジェットヘッド5]
図3は、インクジェットヘッド5の斜視図である。図4は、インクジェットヘッド5の一部を分解した斜視図である。
図3図4に示すように、インクジェットヘッド5は、ベース部材40と、ジェットモジュール41と、ノズルガード42等を備えている。ジェットモジュール41やノズルガード42がベース部材40に固定されている。ベース部材40は、キャリッジ30に固定される。
【0041】
[ベース部材40]
ベース部材40は、Z方向を厚さ方向とし、X方向を長手方向とする板状に形成されている。なお、本実施形態においてベース部材40は、金属材料により一体で形成されている。
【0042】
ベース部材40には、モジュール収容部40aが形成されている。モジュール収容部40aは、ベース部材40をZ方向に貫通している。モジュール収容部40aにジェットモジュール41が差込可能とされている。すなわち、ジェットモジュール41は、-Z方向端部がモジュール収容部40a内に差し込まれることで、ベース部材40から+Z方向に起立した状態でベース部材40に保持されている。ベース部材40には、ベース部材40をキャリッジ30(図1参照)に取り付けるための取付孔等が形成されている。
【0043】
[ジェットモジュール41]
図3図4に示すように、ジェットモジュール41は、Y方向を厚さ方向とする板状に形成されている。ジェットモジュール41は、インクタンク4(図1参照)から供給されるインクを被記録媒体Pに向けて吐出可能に構成されている。ジェットモジュール41は、ヘッドチップ43(噴射部)と、流路部材44と、帰還プレート45(図5参照)と、ノズルプレート46(図5参照)と、基板ユニット47(回路基板)と、を備えている。
【0044】
[ヘッドチップ43]
図5は、ヘッドチップ43を含む拡大分解斜視図である。ヘッドチップ43は、流路部材44の後述する第2流路プレート78をY方向にて間に挟み込むように2つ設けられている。つまり、本実施形態においては、2つで一対のヘッドチップ43が設けられている。なお、これらのヘッドチップ43は、第2流路プレート78を挟んで対称な構造を有している。このため、一方のヘッドチップ43の構造について説明し、他方のヘッドチップ43の構造については、詳細な説明は省略する。
【0045】
ヘッドチップ43は、アクチュエータプレート48と、カバープレート49と、を備える。アクチュエータプレート48には、複数のチャネル50,51が形成されている。一方のチャネル50は、インクが充填されるチャネルであり、以下において吐出チャネル50(圧力室)と称する。他方のチャネル51は、インクが充填されないチャネルであり、以下において非吐出チャネル51と称する。
【0046】
図6は、一方のヘッドチップ43における吐出チャネル50の断面を含む図である。図7は、一方のヘッドチップ43における非吐出チャネル51の断面を含む図である。
図6に示すように、吐出チャネル50の内面には、共通電極56が形成されている。共通電極56は、吐出チャネル50の内面全体に形成されている。
図7に示すように、非吐出チャネル51の内面には、個別電極58が形成されている。
個別電極58は、非吐出チャネル51の内面のうち、X方向で対向する内側面に各別に形成されている。
【0047】
カバープレート49には、カバープレート49をY方向に貫通するとともに、吐出チャネル50に連通する液体供給路62が形成されている。液体供給路62は、共通インク室63と、共通インク室63に連通するとともにX方向に間隔をあけて配置された複数のスリット64と、を含む。共通インク室63は、スリット64を通して各々の吐出チャネル50内に各別に連通している。一方、共通インク室63は、非吐出チャネル51には連通していない。共通インク室63には、流路部材44を通してインクが流入する。
スリット64は、Y方向において共通インク室63と対向する位置に配置されている。スリット64は、共通インク室63と吐出チャネル50とに連通している。
【0048】
複数の吐出チャネル50の内面に形成された共通電極56は、基板ユニット47の後述する駆動基板82と電気的に接続される。複数の非吐出チャネル51の内面に形成された個別電極58は、基板ユニット47の後述する配線基板83と電気的に接続される。
【0049】
図5に示すように、各々のヘッドチップ43は、Y方向に間隔をあけて配置されている。一方のヘッドチップ43の吐出チャネル50及び非吐出チャネル51は、他方のヘッドチップ43の吐出チャネル50及び非吐出チャネル51の配列ピッチに対してX方向に半ピッチずれて配列されている。
【0050】
上述のように、本実施形態においてヘッドチップ43は、X方向(第1方向)の+X方向(一方側)から-X方向(他方側)に順次配列された複数の吐出チャネル50(圧力室)が設けられ、吐出チャネル50の内部のインクを噴射する。
【0051】
[流路部材44]
流路部材44は、図4に示すように、第1流路プレート72と、流路カバー73と、流入ポート74と、排出ポート75と、入口マニホールド76と、出口マニホールド77と、第2流路プレート78と、伝熱板79とを備えている。
【0052】
図8は、第1流路プレート72と流路カバー73とを含む分解斜視図である。図8に示すように、第1流路プレート72は、Y方向に表裏面を向けた矩形板状に形成されている。第1流路プレート72は、同一部材により一体に形成されている。Y方向から見て、第1流路プレート72の外形は、矩形状に形成されている。
【0053】
図8に示すように、第1流路プレート72の-Z方向の端部には、2つの挿入部72aが設けられている。これらの挿入部72aは、X方向に離間しかつX方向に沿って配列されている。各々の挿入部72aは、-Z方向に向けて開放された内部空間を有する中空体に形成されている。一方の挿入部72aは、第1流路プレート72の+X方向の端部に配置されており、図3図4に示すように、入口マニホールド76が-Z方向から挿入されている。他方の挿入部72aは、第1流路プレート72の-X方向の端部に配置されており、図3図4に示すように、出口マニホールド77が-Z方向から挿入されている。
【0054】
第1流路プレート72の内部には、図8に示すように、第1内部流路72bと、第2内部流路72cと、第3内部流路72dと、第4内部流路72eと、が設けられている。第1内部流路72bは、Z方向に延伸して設けられており、流入ポート74に-Z方向から接続されている。第2内部流路72cは、Z方向に延伸して設けられており、入口マニホールド76が挿入される挿入部72aの内部空間に対して+Z方向から接続されている。
【0055】
第3内部流路72dは、Z方向に延伸して設けられており、出口マニホールド77が挿入される挿入部72aの内部空間に対して+Z方向から接続されている。第4内部流路72eは、Z方向に延伸して設けられており、排出ポート75の内部空間に対して-Z方向から接続されている。
【0056】
図8に示すように、第1流路プレート72には、第1溝部72fと、第2溝部72gと、が設けられている。第1溝部72f及び第2溝部72gは、いずれも第1流路プレート72の+Y方向の表面に露出して設けられている。つまり、第1溝部72f及び第2溝部72gは、-Y方向に向けて開放されている。
【0057】
第1溝部72fは、第1内部流路72bと、第2内部流路72cとを接続し、第1内部流路72bと第2内部流路72cとの間でインクを案内する。図8に示すように、第1溝部72fは、第1内部流路72bに-Z方向から接続された第1入口端部72hを有する。また、第1溝部72fは、第1入口端部72hから-Z方向に延伸する第1鉛直部72iを有する。また、第1溝部72fは、第1鉛直部72iの-Z方向の端部から-Z方向に向かうに連れて-X方向に変位する第1傾斜部72jを有する。また、第1溝部72fは、第1傾斜部72jの-Z方向の端部から+X方向に延伸する水平部72kを有する。また、第1溝部72fは、水平部72kの+X方向の端部から-Z方向に延伸する第2鉛直部72mを有する。また、第1溝部72fは、第2鉛直部72mの-Z方向の端部に-Z方向から接続されかつ第2内部流路72cに+Z方向から接続された第1出口端部72nを有する。
【0058】
第2溝部72gは、第3内部流路72dと、第4内部流路72eとを接続し、第3内部流路72dと第4内部流路72eとの間でインクを案内する。図8に示すように、第2溝部72gは、第3内部流路72dに+Z方向から接続された第2入口端部72pを有する。また、第2溝部72gは、第2入口端部72pから+Z方向に延伸する第3鉛直部72qを有する。また、第2溝部72gは、第3鉛直部72qの+Z方向の端部から+Z方向に向かうに連れて+X方向に変位する第2傾斜部72rを有する。また、第2溝部72gは、第2傾斜部72rの+Z方向の端部から+Z方向に延伸する第4鉛直部72sを有する。また、第2溝部72gは、第4鉛直部72sの+Z方向の端部に+Z方向から接続されかつ第4内部流路72eに-Z方向から接続された第2出口端部72tを有する。
【0059】
本実施形態では、図8に示すように、第1内部流路72bと第4内部流路72eとが、Z方向において同一の位置に配置されている。また、第1内部流路72bと第4内部流路72eとは、いずれも第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。
【0060】
また、第2内部流路72cと、第3内部流路72dとがZ方向において同一の位置に配置されている。第2内部流路72cは、第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも+X方向に配置されている。第3内部流路72dは、第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。
【0061】
また、第1入口端部72hと第2出口端部72tとがZ方向において同一の位置に配置されている。また、第1入口端部72hと第2出口端部72tとは、いずれも第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。
【0062】
また、第1鉛直部72iと第4鉛直部72sとがZ方向においてほぼ同一の位置に配置されている。また、第1鉛直部72iと第4鉛直部72sとは、いずれも第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。
【0063】
また、第1傾斜部72jと第2傾斜部72rとがZ方向においてほぼ同一の位置に配置されている。また、第1傾斜部72jと第2傾斜部72rとは、いずれも第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。
【0064】
また、水平部72kの-X方向の端部は、第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。水平部72kの+X方向の端部は、第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも+X方向に配置されている。
【0065】
また、第2鉛直部72m及び第1出口端部72nは、第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも+X方向に配置されている。また、第2入口端部72p及び第3鉛直部72qは、第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。
【0066】
流路カバー73は、第1流路プレート72の-Y方向の表面に接合された板部材である。Y方向から見て、流路カバー73のX方向の幅は、第1流路プレート72のX方向の幅と一致している。また、流路カバー73の+Z方向の端部は、第1流路プレート72の+Z方向の端部とZ方向にて同位置に配置されている。流路カバー73のZ方向における高さは、第1溝部72f及び第2溝部72gの全体を流路カバー73が覆うことが可能な寸法に設定されている。
【0067】
流入ポート74は、第1流路プレート72の+Z方向を向く表面(上面)から+Z方向に突出して設けられている。流入ポート74は、インク供給管21(図1参照)と接続されている。また、流入ポート74は、第1流路プレート72の第1内部流路72bに対して+Z方向から接続されている。流入ポート74は、インク供給管21から供給されるインクを第1内部流路72bに案内する。
【0068】
排出ポート75は、第1流路プレート72の+Z方向を向く表面(上面)から+Z方向に突出して設けられている。排出ポート75は、インク排出管22(図1参照)と接続されている。また、排出ポート75は、第1流路プレート72の第4内部流路72eに対して+Z方向から接続されている。排出ポート75は、第4内部流路72eから排出されたインクをインク排出管22に案内する。
【0069】
本実施形態においては、第1内部流路72bと第4内部流路72eとが、いずれも第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。このため、第1内部流路72bに接続された流入ポート74と、第4内部流路72eに接続された排出ポート75とは、いずれも第1流路プレート72のX方向における中央位置よりも-X方向に配置されている。
【0070】
このように、本実施形態においては、第1内部流路72bの上流端(+Z方向の端部)に接続された流入ポート74と、第4内部流路72eの下流端(+Z方向の端部)に接続された排出ポート75とを備えている。また、流入ポート74と排出ポート75とは、X方向(第1方向)にて、流路部材44の中央よりも-X方向(一方側)に隣接配置されている。
【0071】
なお、第1内部流路72b及び第4内部流路72eの位置や、第1溝部72f及び第2溝部72gの位置及び形状を変更することで、流入ポート74と排出ポート75とをX方向(第1方向)にて、流路部材44の中央よりも+X方向(他方側)に隣接配置することも可能である。
【0072】
入口マニホールド76(図5参照)は、2つのヘッドチップ43及び第2流路プレート78の+X方向の端部に纏めて接合されると共に第1流路プレート72の+X方向の挿入部72aに挿入されている。入口マニホールド76は、挿入部72aに-Z方向から挿入される入口突部76aを備えている。また、入口マニホールド76は、入口突部76aに対して-Z方向から接続すると共に、2つのヘッドチップ43及び第2流路プレート78の+X方向の端部に接合された入口基部76bを備えている。また、入口マニホールド76には、内部流路76cが設けられている。内部流路76cは、入口突部76aの+Z方向の端部と、入口基部76bの-X方向の表面に対して開口端を有している。
【0073】
入口マニホールド76(図5参照)は、2つのヘッドチップ43及び第2流路プレート78の+X方向の端部に纏めて接合されると共に第1流路プレート72の+X方向の挿入部72aに挿入されている。入口マニホールド76は、挿入部72aに-Z方向から挿入される入口突部76aを備えている。また、入口マニホールド76は、入口突部76aに対して-Z方向から接続すると共に、2つのヘッドチップ43及び第2流路プレート78の+X方向の端部に接合された入口基部76bを備えている。また、入口マニホールド76には、内部流路76cが設けられている。内部流路76cは、入口突部76aの+Z方向の端部と、入口基部76bの-X方向の表面に対して開口端を有している。
【0074】
出口マニホールド77は、図5に示すように、2つのヘッドチップ43及び第2流路プレート78の-X方向の端部に纏めて接合されると共に第1流路プレート72の-X方向の挿入部72aに挿入されている。出口マニホールド77は、挿入部72aに-Z方向から挿入される出口突部77aを備えている。また、出口マニホールド77は、出口突部77aに対して-Z方向から接続すると共に、2つのヘッドチップ43及び第2流路プレート78の-X方向の端部に接合された出口基部77bを備えている。また、出口マニホールド77には、内部流路77cが設けられている。内部流路77cは、出口突部77aの+Z方向の端部と、出口基部77bの+X方向の表面に対して開口端を有している。
【0075】
第2流路プレート78は、Y方向にて2つのヘッドチップ43の間に挟持されている。第2流路プレート78は、同一の部材により一体に形成されている。図5に示すように、第2流路プレート78の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。Y方向から見て、第2流路プレート78の外形は、カバープレート49の外形と実質的に同じである。
【0076】
第2流路プレート78の+Y方向を向く第1主面78aには、一方のヘッドチップ43が接合されている。第2流路プレート78の-Y方向を向く第2主面78bには、他方のヘッドチップ43が接合されている。
【0077】
第2流路プレート78は、絶縁性を有し、かつカバープレート49以上の熱伝導率を有する材料により形成されている。例えば、カバープレート49をシリコンにより形成した場合、第2流路プレート78は、シリコンまたはカーボンにより形成することが好ましい。これにより、各々のヘッドチップ43の間において、カバープレート49での温度ばらつきを緩和することができる。このため、各々のヘッドチップ43の間において、アクチュエータプレート48での温度ばらつきを緩和し、インク温度の均一化を図ることができる。これにより、インクの吐出速度の均一化を図り、印字安定性を向上させることができる。
【0078】
第2流路プレート78には、共通インク室63に各別に連通する入口流路78cと、帰還プレート45の後述する循環路80に各別に連通する出口流路78dと、が形成されている。各々の入口流路78cの+X方向の端部は、第2流路プレート78の+X方向の一端面で開口している。各々の入口流路78cは、第2流路プレート78の+X方向の一端面から-X方向に向かうほど下方に位置するように傾斜した後、第2流路プレート78の-X方向の他端側に向けて屈曲して直線状に延びている。入口流路78cは、第2流路プレート78の+X方向の他端面において入口マニホールド76に接続されている。各々の入口流路78cは、一方のヘッドチップ43と他方のヘッドチップ43との間において、Y方向に間隔をあけて配置されている。
【0079】
図5に示すように、各々の出口流路78dの一端部は、第2流路プレート78の-X方向の他端面で開口している。各々の出口流路78dは、第2流路プレート78の-X方向の他端面から下方にクランク状に屈曲した後、+X方向に向けて直線状に延びている。出口流路78dは、第2流路プレート78の-X方向の他端面において出口マニホールド77に接続されている。各々の出口流路78dは、一方のヘッドチップ43と他方のヘッドチップ43との間において、Y方向に間隔をあけて配置されている。
【0080】
伝熱板79は、図3及び図4に示すように、流路カバー73の-Y方向の表面に接合されている。伝熱板79は、基板ユニット47の後述する複数の駆動IC84に対して、+Y方向から当接する。伝熱板79は、駆動IC84を流路カバー73に対して熱的に接続する。図4に示すように、伝熱板79は、Y方向を厚み方向とし、X方向を長手方向とする矩形の板状に形成されている。Y方向から見て、伝熱板79は、第1溝部72fの水平部72kと重なるように配置されている。
【0081】
本実施形態においては、流路部材44にインクの流路(以下、インク流路100という。)(図9参照)が設けられている。インク流路100は、第1内部流路72b、第2内部流路72c、第3内部流路72d、第4内部流路72e、第1溝部72f、第2溝部72g、内部流路76c、内部流路77c、入口流路78c及び出口流路78dを含んで形成されている。本実施形態では、インク流路100でのインクの流れ方向において、上流側から、第1内部流路72b、第1溝部72f、第2内部流路72c、内部流路76c、入口流路78c、出口流路78d、内部流路77c、第3内部流路72d、第2溝部72g、第4内部流路72e、の順に配列されている。
【0082】
図9は、インク流路100を含むインクジェットヘッド5の模式図である。本実施形態においてインク流路100は、流入流路101と、冷却流路102と、接続流路103と、案内流路104と、排出流路105と、を有している。なお、図9以降の図面においては、インクの流れに対して参照符号Lを付している。
【0083】
流入流路101は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート74を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路101は、流入ポート74と冷却流路102とを接続する。流入流路101の上流端は流入ポート74に接続されている。流入流路101の下流端は冷却流路102に接続されている。流入流路101は、本実施形態では、第1内部流路72b(図8参照)と、第1溝部72fの第1入口端部72h(図8参照)と、第1溝部72fの第1鉛直部72i(図8参照)と、第1溝部72fの第1傾斜部72j(図8参照)とを含んで形成されている。
【0084】
冷却流路102は、X方向(第1方向)の-X方向(他方側)から+X方向(一方側)にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路102は、流入流路101と接続流路103とを接続する。冷却流路102の上流端は流入流路101に接続されている。冷却流路102の下流端は接続流路103に接続されている。冷却流路102は、第1溝部72fの水平部72k(図8参照)を含んで形成されている。本実施形態において、冷却流路102は、Y方向から見て、複数の駆動IC84及び伝熱板79と重なるように配置されている。
【0085】
接続流路103は、冷却流路102と案内流路104との間でインクを案内する。接続流路103は、冷却流路102と案内流路104とを接続する。接続流路103の上流端は冷却流路102に接続されている。接続流路103の下流端は案内流路104に接続されている。接続流路103は、第1溝部72fの第2鉛直部72m(図8参照)と、第1溝部72fの第1出口端部72n(図8参照)と、第2内部流路72cと、内部流路76cとを含んで形成されている。
【0086】
案内流路104は、X方向の+X方向(一方側)から-X方向(他方側)にインクを案内する。案内流路104は、ヘッドチップ43の複数の吐出チャネル50(圧力室)に接続されている。案内流路104は、接続流路103と排出流路105とを接続する。案内流路104の上流端は接続流路103に接続されている。案内流路104の下流端は排出流路105に接続されている。案内流路104は、入口流路78c(図5参照)と、出口流路78d(図5参照)とを含んで形成されている。
【0087】
なお、上述のように、入口流路78cにおいては、第2流路プレート78の+X方向の一端面から-X方向に向かうほど下方に位置するように傾斜した部位を一部に有している。この部位において、インクは、+X方向から-X方向に向かうほど下方に向かうように水平方向に対して傾斜して流れる。また、出口流路78dにおいては、第2流路プレート78の-X方向の他端面から下方にクランク状に屈曲した部位を一部に有している。この部位において、インクは、下方から上方に向かうようにして流れる。ただし、これらの部位は、入口流路78c及び出口流路78dのごく一部に設けられている。このため、入口流路78c及び出口流路78dにおけるインクは、主として+X方向から-X方向に流れる。
【0088】
また、案内流路104は、入口流路78cの+X方向の端部が接続流路103と接続され、出口流路78dの-X方向の端部が排出流路105に接続されている。さらに、入口流路78cと出口流路78dとの間にはヘッドチップ43が配置されている。つまり、案内流路104は、全体としてインクを+X方向から-X方向に主として案内する流路であるが、実際の構造では単純な直線状の流路ではない。ただし、図9においては、説明の便宜上、案内流路104を模式的に一本の流路として図示し、+X方向の端部を接続流路103に接続し、-X方向の端部を排出流路105に接続している。なお、図9より後の図面においても、同様に案内流路を模式的に一本の流路として図示する。
【0089】
つまり、これらの入口流路78c及び出口流路78dを含む案内流路104のインクの流れは、主として+X方向から-X方向である。さらに、案内流路104において、部分的に主としての流れ方向と異なる方向へのインクの流れが含まれていてもよい。また、冷却流路102においても、同様に、部分的に主としての流れ方向(-X方向から+X方向)と異なる方向へのインクの流れが含まれていてもよい。
【0090】
排出流路105は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート75を介して排出するインクを案内する。排出流路105は、案内流路104と排出ポート75とを接続する。排出流路105の上流端は案内流路104に接続されている。排出流路105の下流端は排出ポート75に接続されている。排出流路105は、本実施形態では、内部流路77c(図8参照)と、第3内部流路72d(図8参照)と、第2溝部72g(図8参照)と、第4内部流路72e(図8参照)とを含んで形成されている。
【0091】
このように、本実施形態では、インク流路100において、流入流路101と、案内流路104と、冷却流路102と、排出流路105とが直列的に配列されている。さらに、インクの流れ方向にて、流入流路101、冷却流路102、案内流路104、排出流路105の順に配列されている。
【0092】
インク流路100を流れるインクは、流入ポート74から流入流路101に案内されて冷却流路102に供給される。インクは、冷却流路102にて-X方向から+X方向に向けて水平に案内される。冷却流路102を流れるインクは、駆動IC84との熱交換によって下流(すなわち+X方向)に向かうに連れて昇温する。冷却流路102から排出されたインクは、接続流路103を介して案内流路104に供給される。インクは、案内流路104にて+X方向から-X方向に向けて水平に案内される。
【0093】
ヘッドチップ43は、アクチュエータプレート48の駆動による発熱によって昇温している。このため、案内流路104を流れるインクは、ヘッドチップ43との熱交換によって、下流(すなわち-X方向)に向かうに連れて昇温する。案内流路104から排出されたインクは、排出流路105を介して排出ポート75に案内される。
【0094】
このように、インクは、冷却流路102及び案内流路104において、昇温する。本実施形態では、これらの冷却流路102及び案内流路104におけるインクの流れが反対である。つまり、冷却流路102におけるインクの流れが-X方向から+方向であり、案内流路104におけるインクの流れが+X方向から-X方向である。
【0095】
[帰還プレート45]
帰還プレート45は、ヘッドチップ43における吐出チャネル50の開口端側に配設されている。帰還プレート45は、一方のヘッドチップ43と他方のヘッドチップ43とにおける吐出チャネル50の開口端と、ノズルプレート46の上端との間に介在するスペーサプレートである。帰還プレート45には、各々のヘッドチップ43の吐出チャネル50と出口流路78dとの間を接続する複数の循環路80が形成されている。
【0096】
[ノズルプレート46]
ノズルプレート46は、帰還プレート45の下端面に接合されている。ノズルプレート46には、ノズルプレート46をZ方向に貫通する複数のノズル孔81が配列されている。各々のノズル孔81は、循環路80を介してヘッドチップ43の対応する吐出チャネル50にそれぞれ連通している。
一方、各々の非吐出チャネル51は、ノズル孔81には連通しておらず、帰還プレート45により下方から覆われている。
【0097】
[基板ユニット47]
図3に示すように、基板ユニット47は、流路カバー73の-Y方向の表面に支持されている。基板ユニット47は、駆動基板82と、配線基板83と、駆動IC84(駆動制御部)とを備えている。駆動基板82及び配線基板83は、それぞれフレキシブルプリント基板であって、ベースフィルムに配線パターンが形成されて構成されている。
【0098】
駆動基板82は、実装部82a及びチップ接続部82bを有している。なお、駆動基板82は、実装部82aにリジッド基板等を用いても構わない。実装部82aは、流路カバー73に支持されている。実装部82aの+Y方向の表面には、複数の駆動IC84が実装されている。また、実装部82aは、不図示のインターフェイスに接続されている。インターフェイスは、例えばインクジェットヘッド5の外部から供給される電力を基板ユニット47に供給したり、制御信号の送受信を行ったりする。
【0099】
図4に示すように、チップ接続部82bは、実装部82aから-Z方向に延設されている。図6図7に示すように、チップ接続部82bの-Z方向端部は、一方のヘッドチップ43に接続されている。
【0100】
図6図7に示すように、配線基板83は、実装部82aと他方のヘッドチップ43との間を接続している。具体的に、配線基板83のうち、+Z方向端部が実装部82aに接続され、-Z方向端部が他方のヘッドチップ43に接続されている。
【0101】
駆動IC84は、本実施形態においては、5つ設けられている。なお、駆動IC84の数は2~4つであってもよい。また、駆動IC84は、6つ以上であってもよい。これらの駆動IC84は、図4に示すように、X方向に直線状に配列されている。
【0102】
これらの駆動IC84は、ヘッドチップ43を駆動する。なお、本実施形態では、1枚の駆動基板82に全ての駆動IC84がまとめて実装された構成について説明する。しかしながら、例えば、各々の駆動IC84に対応して駆動基板を設けても構わない。
【0103】
なお、以下の説明においては、X方向に直線状に配列された複数の駆動IC84を-X方向から+X方向に向かって第1駆動IC84a、第2駆動IC84b、第3駆動IC84c、第4駆動IC84d、第5駆動IC84eと称する。つまり、複数の駆動IC84のうち最も-X方向に位置する駆動IC84が第1駆動IC84aであり、最も+方向に位置する駆動IC84が第5駆動IC84eである。
【0104】
これらの第1駆動IC84a、第2駆動IC84b、第3駆動IC84c、第4駆動IC84d及び第5駆動IC84eは、伝熱板79に-Y方向から当接されており、流路部材44と熱的に接続されている。つまり、本実施形態において、基板ユニット47は、X方向に沿って配列された複数の駆動IC84が実装されると共に、流路部材44と熱的に接続されている。
【0105】
[ノズルガード42]
図4に示すように、ベース部材40に対して-Z方向から接続され、ベース部材40を-Z方向から覆っている。ノズルガード42には、ノズルプレート46を外部に露出させる露出孔42aが形成されている。上述したノズル孔81は、露出孔42aを通じてインクジェットヘッド5の外部に連通している。なお、ノズルガード42には、インクの充填時や印刷動作の停止時等に、ノズルガード42に-Z方向から密着して、上述したノズル孔81を封止するキャップが装着される構成であっても構わない。
【0106】
[プリンタの動作方法]
次に、プリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合のプリンタ1の動作方法について説明する。
なお、初期状態として、図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環機構6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0107】
図1に示すように、初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、搬送機構2,3のローラ11,12が回転することで、これらローラ11,12間に被記録媒体Pが搬送方向(X方向)に向けて搬送される。また、被記録媒体Pの搬送と同時に、駆動モータ35がプーリ32を回転させて無端ベルト34を動かす。これにより、キャリッジ30がガイドレール28,29にガイドされながらY方向に往復移動する。
そして、キャリッジ30の往復移動の間に、各々のインクジェットヘッド5より4色のインクを被記録媒体Pに適宜吐出させることで、被記録媒体Pに文字や画像等の記録を行うことができる。
【0108】
ここで、各々のインクジェットヘッド5の動きについて説明する。
本実施形態のようなエッジシュートタイプのうち、縦循環式のインクジェットヘッド5では、まず図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、流入ポート74を通じて第1流路プレート72に流入する、第1流路プレート72の内部を案内されたインクは、入口マニホールド76を通り、第2流路プレート78の各々の入口流路78c内に流入する。各々の入口流路78c内に流入したインクは、各々の共通インク室63を通過した後、スリット64を通って各々の吐出チャネル50内に供給される。各々の吐出チャネル50内に流入したインクは、帰還プレート45の循環路80を通して出口流路78d内で集合し、その後に出口マニホールド77を通して再び第1流路プレート72に供給される。再び第1流路プレート72に供給されたインクは、排出ポート75を通じてインク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる。
【0109】
そして、キャリッジ30(図1参照)によって往復移動が開始されると、基板ユニット47を介して共通電極56と個別電極58とに駆動電圧を印加する。この際、個別電極58を駆動電位Vddとし、共通電極56を基準電位GNDとして駆動電圧を印加する。すると、吐出チャネル50を画成する2つ駆動壁に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁が非吐出チャネル51側へ突出するように変形する。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート48は、厚さ方向(Y方向)に分極処理された2枚の圧電基板が積層されているため、駆動電圧を印加することで、駆動壁におけるY方向の中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル50があたかも膨らむように変形する。
【0110】
2つの駆動壁の変形によって、吐出チャネル50の容積が増大すると、共通インク室63内のインクがスリット64を通って吐出チャネル50内に誘導される。そして、吐出チャネル50の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル50の内部に伝搬し、この圧力波がノズル孔81に到達したタイミングで、共通電極56と個別電極58との間に印加した駆動電圧をゼロにする。
これにより、駆動壁が復元し、一旦増大した吐出チャネル50の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル50の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、インクをノズル孔81から吐出させることができる。この際、インクはノズル孔81を通過する際に、液滴状のインク滴となって吐出される。これにより、上述したように被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。
【0111】
なお、インクジェットヘッド5の動作方法は上述した内容に限られない。例えば、通常状態の駆動壁が吐出チャネル50の内側に変形し、吐出チャネル50があたかも内側に凹むように構成しても構わない。この場合は、共通電極56と個別電極58との間に印可する電圧を上述した電圧とは正負逆の電圧にするか、電圧の正負は変えずにアクチュエータプレート48の分極方向を逆にすることで実現可能である。また、吐出チャネル50が外側に膨らむように変形させた後で、吐出チャネル50が内側に凹むように変形させ、吐出時のインクの加圧力を高めても構わない。
【0112】
以上のような本実施形態のインクジェットヘッド5は、ヘッドチップ43と、流路部材44と、基板ユニット47とを備えている。ヘッドチップ43は、X方向の+X方向から-X方向に順次配列された複数の吐出チャネル50が設けられ、吐出チャネル50の内部のインクを噴射する。流路部材44は、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内する案内流路104が設けられると共に、案内流路104が各々の吐出チャネル50に接続されている。基板ユニット47は、X方向に沿って配列された複数の駆動IC84が実装されると共に、流路部材44と熱的に接続されている。また、流路部材44は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する冷却流路102が設けられている。
【0113】
インクジェットヘッド5における熱源は、インクの噴射動作を行う吐出チャネル50が設けられたヘッドチップ43と、複数の駆動IC84との2つが主である。本実施形態のインクジェットヘッド5によれば、流路部材44には、これらの熱源の1つであるヘッドチップ43の吐出チャネル50に接続された案内流路104が設けられている。また、流路部材44には、これらの熱源の1つである複数の駆動IC84を冷却する冷却流路102が設けられている。
【0114】
これらの案内流路104と冷却流路102とにおいて、案内流路104におけるインクの流れ方向と、駆動IC84を冷却する冷却流路102におけるインクの流れ方向とは反対方向である。このため、案内流路104では、X方向の-X方向側が+X方向側に対して相対的に高温となる。一方、冷却流路102では、X方向の+X方向側が-X方向側に対して相対的に高温となる。
【0115】
この結果、インクジェットヘッド5の全体で見た場合の温度分布が、案内流路104のインクの流れ方向と冷却流路102のインクの流れ方向とが同一である場合と比較して均一化される。インクジェットヘッド5の全体的な熱分布が均一化されることによって、各々の吐出チャネル50に供給されるインクの温度が均一化され、各々の吐出チャネル50におけるインクの粘度も均一化される。よって、安定した吐出性能を得ることができる。また、インクジェットヘッド5の全体的な熱分布が均一化されることによって、駆動IC84の最高到達温度を低下させることができ、駆動IC84を安定的に駆動させることができる。
【0116】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、流路部材44は、流入流路101と、排出流路105とが設けられている。流入流路101は、外部から流入されるインクを案内する。排出流路105は、外部へ排出するインクを案内する。また、流入流路101と、案内流路104と、冷却流路102と、排出流路105とが直列的に配列されている。
【0117】
本実施形態のインクジェットヘッド5によれば、吐出チャネル50に供給されるインクが冷却流路102を流れる。このため、案内流路104と冷却流路102とが流入流路101及び排出流路105の間において並列的に配置される場合よりも、インクが流れる流路全体で圧力が分散することを防止することができる。したがって、流入流路101の入口と排出流路105の出口との圧力を、案内流路104と冷却流路102とが流入流路101及び排出流路105の間において並列的に配置された場合と同一条件とすると、インクの流量が増える。よって、冷却流路102における冷却効率を向上することが可能になる。
【0118】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5においては、流入流路101、冷却流路102、案内流路104、排出流路105の順に配列されている。一般的にヘッドチップ43よりも駆動IC84が高温になる。本実施形態のインクジェットヘッド5によれば、インクは、案内流路104よりも先に冷却流路102を流れる。このため、案内流路104を流れて温度が上がったインクを冷却流路102に流す場合よりも、温度が低い状態のインクを駆動IC84の冷却に用いることができる。したがって、駆動IC84の冷却効率を向上できる。
【0119】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5は、流入ポート74と排出ポート75とを備えている。流入ポート74は、流入流路101の上流端に接続されている。排出ポート75は、排出流路105の下流端に接続されている。流入ポート74と排出ポート75とは、X方向にて、流路部材44の中央よりも-X方向側に互いに隣接して配置されている。
【0120】
本実施形態のインクジェットヘッド5によれば、流入ポート74に接続されるインク供給管21と、排出ポート75に接続されるインク排出管22とを近接して纏めて配置することが可能になる。このため、流入ポート74と排出ポート75とが離れて配置されている場合よりも、流入ポート74と排出ポート75とが他の構成要素の邪魔となりにくい。
また、冷却流路102で他方から一方にインクが流れ、案内流路104で一方から他方にインクが流れる。このため、案内流路104と冷却流路102とが直列的に配列されている場合には、インクが流れる流路の長さを最短にすることが可能となる。
【0121】
また、本実施形態のプリンタ1は、上述のインクジェットヘッド5を備えている。このため、安定した吐出性能を有するプリンタとなる。
【0122】
(第1実施形態の変形例)
図10は、本第1実施形態のインクジェットヘッド5の変形例を示すインク流路100を含む模式図である。本変形例では、インク流路100におけるインクの流れが、上述の例と反対となっている。つまり、本変形例においては、流入流路101を排出流路として用い、排出流路105を流入流路として用いる。また、流入ポート74を排出ポートとして用い、排出ポート75を流入ポートとして用いる。
【0123】
なお、以下の説明では、本変形例において流入流路として用いられる排出流路105を流入流路106と称し、本変形例において排出流路として用いられる流入流路101を排出流路107と称する。また、本変形例において流入ポートとして用いられる排出ポート75を流入ポート85と称し、本変形例において排出ポートとして用いられる流入ポート74を排出ポート86と称する。
【0124】
流入流路106は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート85を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路101は、流入ポート85と案内流路104とを接続する。流入流路106の上流端は流入ポート85に接続されている。流入流路106の下流端は案内流路104に接続されている。
【0125】
案内流路104は、X方向の-X方向(一方側)から+X方向(他方側)にインクを案内する。案内流路104は、流入流路106と接続流路103とを接続する。案内流路104の上流端は流入流路106に接続されている。案内流路104の下流端は接続流路103に接続されている。
【0126】
接続流路103は、案内流路104と冷却流路102との間でインクを案内する。接続流路103は、冷却流路102と案内流路104とを接続する。接続流路103の上流端は案内流路104に接続されている。接続流路103の下流端は冷却流路102に接続されている。
【0127】
冷却流路102は、X方向の+X方向(他方側)から-X方向(一方側)にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路102は、接続流路103と排出流路107とを接続する。冷却流路102の上流端は接続流路103に接続されている。冷却流路102の下流端は排出流路107に接続されている。
【0128】
排出流路107は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート86を介して排出するインクを案内する。排出流路107は、冷却流路102と排出ポート86とを接続する。排出流路107の上流端は冷却流路102に接続されている。排出流路107の下流端は排出ポート86に接続されている。
【0129】
このように、本実施形態では、インク流路100において、流入流路106と、案内流路104と、冷却流路102と、排出流路107とが直列的に配列されている。さらに、インクの流れ方向にて、流入流路106、案内流路104、冷却流路102、排出流路107の順に配列されている。
【0130】
本変形例によれば、流入流路106から吐出チャネル50まで距離が、流入流路106と案内流路104との間に冷却流路102が配置される場合よりも短い。このため、吐出チャネル50までの圧力損失を小さくすることができ、インクの吐出チャネル50への供給量が不足することを抑制し、安定的にインクを吐出チャネル50から噴射することが可能になる。
【0131】
なお、本変形例においても、案内流路104と冷却流路102とにおいて、案内流路104におけるインクの流れ方向と、駆動IC84を冷却する冷却流路102におけるインクの流れ方向とは反対方向である。案内流路104では、X方向の+X方向側が-X方向側に対して相対的に高温となる。一方、冷却流路102では、X方向の-X方向側が+X方向側に対して相対的に高温となる。
【0132】
この結果、インクジェットヘッド5の全体で見た場合の温度分布が、案内流路104のインクの流れ方向と冷却流路102のインクの流れ方向とが同一である場合と比較して均一化される。よって、安定した吐出性能を得ることができる。また、駆動IC84を安定的に駆動させることができる。
【0133】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0134】
図11は、本実施形態のインクジェットヘッド5Aのインク流路100Aを含む模式図である。本実施形態においてインク流路100Aは、流入流路111と、部分冷却流路112(第2冷却流路)と、冷却流路113と、接続流路114と、案内流路115と、排出流路116と、を有している。
【0135】
流入流路111は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート74を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路111は、流入ポート74と部分冷却流路112とを接続する。流入流路111の上流端は流入ポート74に接続されている。流入流路111の下流端は部分冷却流路112に接続されている。
【0136】
本実施形態において流入流路111は、図11に示すように、流入ポート74から-Z方向に延伸する垂下流路111aと、垂下流路111aの下流端から-Z方向に向かうに連れて+X方向に変位する離間流路111b(離間部)とを有している。離間流路111bは、図11に示すように、鉛直方向(Z方向)に対して傾斜されており、下方(下流)に向かうに連れて排出流路116から離間する。このような流入流路111は、例えば、上記第1実施形態の第1溝部72fの形状を変更し、第1溝部72fの一部を用いて設けることができる。
【0137】
部分冷却流路112は、X方向の+X方向から-X方向にインクを流す流路である。この部分冷却流路112は、複数の駆動IC84のうち、-X方向に位置する一部の駆動IC84を冷却する。本実施形態においては、図11に示すように、部分冷却流路112は、Y方向から見て、第1駆動IC84a、第2駆動IC84b及び第3駆動IC84cに重なるように設けられており、第1駆動IC84a、第2駆動IC84b及び第3駆動IC84cを冷却する。つまり、部分冷却流路112は、排出流路116に最も近い駆動IC84から順に複数の駆動IC84を冷却し、少なくとも排出流路116から最も遠い駆動IC84については冷却しない。
【0138】
部分冷却流路112は、流入流路111と冷却流路113とを接続する。部分冷却流路112の上流端は流入流路111に接続されている。部分冷却流路112の下流端は冷却流路113の上流端と接続されている。このような部分冷却流路112は、例えば、上記第1実施形態の第1溝部72fの形状を変更し、第1溝部72fの一部を用いて設けることができる。
【0139】
冷却流路113は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路113は、部分冷却流路112と接続流路114とを接続する。冷却流路113の上流端は部分冷却流路112に接続されている。冷却流路113の下流端は接続流路114に接続されている。
【0140】
接続流路114は、冷却流路113と案内流路115との間でインクを案内する。接続流路114は、冷却流路113と案内流路115とを接続する。接続流路114の上流端は冷却流路113に接続されている。接続流路114の下流端は案内流路115に接続されている。
【0141】
案内流路115は、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内する。案内流路115は、ヘッドチップ43の複数の吐出チャネル50に接続されている。案内流路115は、接続流路114と排出流路116とを接続する。案内流路115の上流端は接続流路114に接続されている。案内流路115の下流端は排出流路116に接続されている。
【0142】
排出流路116は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート75を介して排出するインクを案内する。排出流路116は、案内流路115と排出ポート75とを接続する。排出流路116の上流端は案内流路115に接続されている。排出流路116の下流端は排出ポート75に接続されている。
【0143】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド5Aでは、流入流路111は、下流に向かうに連れて排出流路116から離間する離間流路111bを有する。このような本実施形態のインクジェットヘッド5Aにおいては、流入流路111を流れるインクが排出流路116を流れる高温のインクによって昇温することを抑制することができる。このため、離間流路111bを設けない場合よりも、低温のインクを冷却流路113に供給し、駆動IC84の冷却効率を向上できる。
【0144】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5Aにおいては、流入流路111は、X方向の+X方向(一方側)から-X方向(他方側)にインクを流す部分冷却流路112が設けられている。部分冷却流路112は、複数の駆動IC84のうち、-X方向に位置する一部の駆動IC84を冷却する。このような本実施形態のインクジェットヘッド5Aによれば、排出流路116を流れる高温のインクによって昇温されやすい位置に配置された駆動IC84を局所的に冷却することができる。このため、駆動IC84の最高到達温度をさらに低減することが可能になる。
【0145】
(第2実施形態の変形例)
図12は、本第2実施形態のインクジェットヘッド5Aの変形例を示すインク流路100Aを含む模式図である。本変形例では、インク流路100Aにおけるインクの流れが、上述の例と反対となっている。つまり、本変形例においては、流入流路111を排出流路として用い、排出流路116を流入流路として用いる。また、流入ポート74を排出ポートとして用い、排出ポート75を流入ポートとして用いる。
【0146】
なお、以下の説明では、本変形例において流入流路として用いられる排出流路116を流入流路117と称し、本変形例において排出流路として用いられる流入流路111を排出流路118と称する。また、本変形例において流入ポートとして用いられる排出ポート75を流入ポート85と称し、本変形例において排出ポートとして用いられる流入ポート74を排出ポート86と称する。
【0147】
流入流路117は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート85を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路117は、流入ポート85と案内流路115とを接続する。流入流路117の上流端は流入ポート85に接続されている。流入流路117の下流端は案内流路115に接続されている。
【0148】
案内流路115は、X方向の-X方向(一方側)から+X方向(他方側)にインクを案内する。案内流路115は、流入流路117と接続流路114とを接続する。案内流路115の上流端は流入流路117に接続されている。案内流路115の下流端は接続流路114に接続されている。
【0149】
接続流路114は、案内流路115と冷却流路113との間でインクを案内する。接続流路114は、冷却流路113と案内流路115とを接続する。接続流路114の上流端は案内流路115に接続されている。接続流路114の下流端は冷却流路113に接続されている。
【0150】
冷却流路113は、X方向の+X方向(他方側)から-X方向(一方側)にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路113は、接続流路114と部分冷却流路112とを接続する。冷却流路113の上流端は接続流路114に接続されている。冷却流路113の下流端は部分冷却流路112に接続されている。
【0151】
部分冷却流路112は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内して一部の駆動IC84を冷却する。部分冷却流路112は、冷却流路113と排出流路118とを接続する。部分冷却流路112の上流端は冷却流路113に接続されている。部分冷却流路112の下流端は排出流路118に接続されている。
【0152】
排出流路118は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート86を介して排出するインクを案内する。排出流路118は、部分冷却流路112と排出ポート86とを接続する。排出流路118の上流端は部分冷却流路112に接続されている。排出流路118の下流端は排出ポート86に接続されている。
【0153】
このように、本実施形態では、インク流路100Aにおいて、流入流路117と、案内流路115と、冷却流路113と、排出流路118とが直列的に配列されている。さらに、インクの流れ方向にて、流入流路111、案内流路115、冷却流路113、排出流路118の順に配列されている。
【0154】
本変形例によれば、流入流路117から吐出チャネル50まで距離が、流入流路117と案内流路115との間に冷却流路113や部分冷却流路112が配置される場合よりも短い。このため、吐出チャネル50までの圧力損失を小さくすることができ、インクの吐出チャネル50への供給量が不足することを抑制し、安定的にインクを吐出チャネル50から噴射することが可能になる。
【0155】
なお、本変形例においても、案内流路115と冷却流路113とにおいて、案内流路115におけるインクの流れ方向と、駆動IC84を冷却する冷却流路113におけるインクの流れ方向とは反対方向である。案内流路115では、X方向の+X方向側が-X方向側に対して相対的に高温となる。一方、冷却流路113では、X方向の-X方向側が+X方向側に対して相対的に高温となる。
【0156】
この結果、インクジェットヘッド5Aの全体で見た場合の温度分布が、案内流路115のインクの流れ方向と冷却流路113のインクの流れ方向とが同一である場合と比較して均一化される。よって、安定した吐出性能を得ることができる。また、駆動IC84を安定的に駆動させることができる。
【0157】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0158】
図13は、本実施形態のインクジェットヘッド5Bのインク流路100Bを含む模式図である。本実施形態のインクジェットヘッド5Bにおいては、流入ポート74が流路部材44の+X方向の端部に配置されており、排出ポート75が流路部材44の-X方向の端部に配置されている。
【0159】
本実施形態においてインク流路100Bは、流入流路121と、第1接続流路122と、冷却流路123と、第2接続流路124と、案内流路125と、排出流路126と、を有している。
【0160】
流入流路121は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート74を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路121は、流入ポート74と、第1接続流路122及び案内流路125とを接続する。流入流路121の上流端は流入ポート74に接続されている。流入流路121の下流端は案内流路125に接続されている。また、流入流路121の途中部位は第1接続流路122に接続されている。
【0161】
なお、本実施形態においては、流入流路121は、流路部材44の+Y方向側に設けられている。このような流入流路121は、例えば第1流路プレート72の+Y方向の表面に溝部を形成し、この溝部をカバーで覆うことによって形成することができる。
【0162】
第1接続流路122は、流入流路121と冷却流路123とを接続する。第1接続流路122の上流端は流入流路121の途中部位に接続されている。第1接続流路122の下流端は屈曲して冷却流路123に接続されている。このような第1接続流路122は、主としてインクを+X方向から-X方向に案内する。
【0163】
冷却流路123は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路123は、第1接続流路122と第2接続流路124とを接続する。冷却流路123の上流端は第1接続流路122に接続されている。冷却流路123の下流端は第2接続流路124に接続されている。
【0164】
第2接続流路124は、冷却流路123と排出流路126とを接続する。第2接続流路124の上流端は屈曲して冷却流路123に接続されている。第2接続流路124の下流端は排出流路126の途中部位に接続されている。このような第2接続流路124は、主としてインクを+X方向から-X方向に案内する。
【0165】
これらの第1接続流路122、冷却流路123及び第2接続流路124は、例えば、第1流路プレート72の-Y方向の表面に溝部を形成し、この溝部をカバーで覆うことによって形成することができる。
【0166】
案内流路125は、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内する。案内流路125は、ヘッドチップ43の複数の吐出チャネル50に接続されている。案内流路125は、流入流路121と排出流路126とを接続する。案内流路125の上流端は流入流路121に接続されている。案内流路125の下流端は排出流路126に接続されている。
【0167】
排出流路126は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート75を介して排出するインクを案内する。排出流路126は、案内流路125及び第2接続流路124と、排出ポート75とを接続する。排出流路126の上流端は案内流路125に接続されている。排出流路126の下流端は排出ポート75に接続されている。また、排出流路126の途中部位は第2接続流路124に接続されている。
【0168】
なお、本実施形態においては、排出流路126は、流路部材44の+Y方向側に設けられている。このような排出流路126は、例えば第1流路プレート72の+Y方向の表面に溝部を形成し、この溝部をカバーで覆うことによって形成することができる。
【0169】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド5Bにおいて、流路部材44は、外部から流入されるインクを案内する流入流路121と、外部へ排出するインクを案内する排出流路126とが設けられている。また、案内流路125と冷却流路123とが、流入流路121及び排出流路126の間において並列的に配置されている。
【0170】
このような本実施形態のインクジェットヘッド5Bによれば、流入流路121から吐出チャネル50まで距離が、流入流路121と案内流路125との間に冷却流路123が配置される場合よりも短い。このため、吐出チャネル50までの圧力損失を小さくすることができ、インクの吐出チャネル50への供給量が不足することを抑制し、安定的にインクを吐出チャネル50から噴射することが可能になる。
【0171】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5Bにおいて、流路部材44は、流入流路121と冷却流路123の上流端との間に配置された第1接続流路122と、冷却流路123の下流端と排出流路126との間に配置された第2接続流路124と、が設けられている。また、第1接続流路122と第2接続流路124とは、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内する。
【0172】
このような本実施形態のインクジェットヘッド5Bによれば、第1接続流路122と冷却流路123と第2接続流路124とからなる蛇行流路が形成される。このため、インクが流路部材44の広い範囲を流れることになり、インクジェットヘッド5Bの全体的な熱分布をさらに均一化することが可能になる。
【0173】
(第3実施形態の変形例)
図13は、本第3実施形態のインクジェットヘッド5Bの変形例を示すインク流路100Bを含む模式図である。本変形例では、インク流路100Bにおけるインクの流れが、上述の例と反対となっている。つまり、本変形例においては、流入流路121を排出流路として用い、排出流路126を流入流路として用いる。また、流入ポート74を排出ポートとして用い、排出ポート75を流入ポートとして用いる。
【0174】
なお、以下の説明では、本変形例において流入流路として用いられる排出流路126を流入流路127と称し、本変形例において排出流路として用いられる流入流路121を排出流路128と称する。また、本変形例において流入ポートとして用いられる排出ポート75を流入ポート85と称し、本変形例において排出ポートとして用いられる流入ポート74を排出ポート86と称する。
【0175】
流入流路127は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート85を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路127は、案内流路125及び第2接続流路124と、流入ポート85とを接続する。流入流路127の上流端は流入ポート85に接続されている。流入流路127の下流端は、案内流路125に接続されている。また、流入流路127の途中部位は第2接続流路124に接続されている。
【0176】
案内流路125は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内する。案内流路125は、流入流路127と排出流路128とを接続する。案内流路125の上流端は流入流路127に接続されている。案内流路125の下流端は排出流路128に接続されている。
【0177】
第2接続流路124は、排出流路126と冷却流路123とを接続する。第2接続流路124の上流端は排出流路126の途中部位に接続されている。第2接続流路124の下流端は屈曲して冷却流路123に接続されている。このような第2接続流路124は、主としてインクを-X方向から+X方向に案内する。
【0178】
冷却流路123は、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路123は、第2接続流路124と第1接続流路122とを接続する。冷却流路123の上流端は第2接続流路124に接続されている。冷却流路123の下流端は第1接続流路122に接続されている。
【0179】
第1接続流路122は、冷却流路123と排出流路128とを接続する。第1接続流路122の上流端は屈曲して冷却流路123に接続されている。第1接続流路122の下流端は排出流路128の途中部位に接続されている。このような第1接続流路122は、主としてインクを-X方向から+X方向に案内する。
【0180】
排出流路128は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート86を介して排出するインクを案内する。排出流路128は、排出ポート86と、第1接続流路122及び案内流路125とを接続する。排出流路128の上流端は案内流路125に接続されている。排出流路128の下流端は排出ポート86に接続されている。また、排出流路128の途中部位は第1接続流路122に接続されている。
【0181】
本変形例においても、流入流路127から吐出チャネル50まで距離が、流入流路127と案内流路125との間に冷却流路123が配置される場合よりも短い。このため、吐出チャネル50までの圧力損失を小さくすることができ、インクの吐出チャネル50への供給量が不足することを抑制し、安定的にインクを吐出チャネル50から噴射することが可能になる。
【0182】
なお、本変形例においても、案内流路125と冷却流路123とにおいて、案内流路125におけるインクの流れ方向と、駆動IC84を冷却する冷却流路123におけるインクの流れ方向とは反対方向である。案内流路125では、X方向の+X方向側が-X方向側に対して相対的に高温となる。一方、冷却流路123では、X方向の-X方向側が+X方向側に対して相対的に高温となる。
【0183】
この結果、インクジェットヘッド5Bの全体で見た場合の温度分布が、案内流路125のインクの流れ方向と冷却流路123のインクの流れ方向とが同一である場合と比較して均一化される。よって、安定した吐出性能を得ることができる。また、駆動IC84を安定的に駆動させることができる。
【0184】
また、本変形例においても、第1接続流路122と冷却流路123と第2接続流路124とからなる蛇行流路が形成される。このため、インクが流路部材44の広い範囲を流れることになり、インクジェットヘッド5Bの全体的な熱分布をさらに均一化することが可能になる。
【0185】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0186】
図15は、本実施形態のインクジェットヘッド5Cのインク流路100Cを含む模式図である。本実施形態のインクジェットヘッド5Cにおいては、流入ポート74が流路部材44の+X方向の端部に配置されており、排出ポート75が流路部材44の-X方向の端部に配置されている。
【0187】
本実施形態においてインク流路100Cは、流入流路131と、上部接続流路132(第4接続流路)と、冷却流路133と、下部接続流路134(第3接続流路)と、案内流路135と、排出流路136と、を有している。
【0188】
流入流路131は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート74を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路131は、流入ポート74と、上部接続流路132とを接続する。流入流路131の上流端は流入ポート74に接続されている。流入流路131の下流端は上部接続流路132に接続されている。
【0189】
なお、本実施形態においては、流入流路131は、流路部材44の+Y方向側に設けられている。このような流入流路131は、例えば第1流路プレート72の+Y方向の表面に溝部を形成し、この溝部をカバーで覆うことによって形成することができる。
【0190】
上部接続流路132は、流入流路131と冷却流路133とを接続する。上部接続流路132の上流端は流入流路131に接続されている。上部接続流路132の下流端は屈曲して冷却流路133に接続されている。このような上部接続流路132は、主としてインクを+X方向から-X方向に案内する。
【0191】
冷却流路133は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路133は、上部接続流路132と下部接続流路134とを接続する。冷却流路133の上流端は上部接続流路132に接続されている。冷却流路123の下流端は下部接続流路134に接続されている。
【0192】
下部接続流路134は、冷却流路133と案内流路135とを接続する。下部接続流路134の上流端は冷却流路133に接続されている。下部接続流路134の下流端は案内流路135に接続されている。このような下部接続流路134は、インクを+Z方向から-Z方向に案内する。
【0193】
なお、下部接続流路134の一部あるいは全体においてインクを+X方向から-X方向に案内する構成とことも可能である。このような場合に、上部接続流路132にて、インクをZ方向に案内することも可能である。
【0194】
これらの上部接続流路132、冷却流路133及び下部接続流路134は、例えば、第1流路プレート72の-Y方向の表面に溝部を形成し、この溝部をカバーで覆うことによって形成することができる。
【0195】
案内流路135は、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内する。案内流路135は、ヘッドチップ43の複数の吐出チャネル50に接続されている。案内流路135は、下部接続流路134と排出流路136とを接続する。案内流路135の上流端は下部接続流路134に接続されている。案内流路135の下流端は排出流路136に接続されている。
【0196】
排出流路136は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート75を介して排出するインクを案内する。排出流路126は、案内流路135と排出ポート75とを接続する。排出流路136の上流端は案内流路135に接続されている。排出流路136の下流端は排出ポート75に接続されている。
【0197】
なお、本実施形態においては、排出流路136は、流路部材44の+Y方向側に設けられている。このような排出流路136は、例えば第1流路プレート72の+Y方向の表面に溝部を形成し、この溝部をカバーで覆うことによって形成することができる。
【0198】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド5Cにおいては、流入流路131、冷却流路133、案内流路135及び排出流路136が直列的に配列されている。このため、案内流路135と冷却流路133とが流入流路131及び排出流路136の間において並列的に配置される場合よりも、インクが流れる流路全体で圧力が分散することを防止することができる。したがって、流入流路131の入口と排出流路136の出口との圧力を、案内流路135と冷却流路133とが流入流路131及び排出流路136の間において並列的に配置された場合と同一条件とすると、インクの流量が増える。よって、冷却流路133における冷却効率を向上することが可能になる。
【0199】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5Cにおいて、流路部材44は、案内流路135と冷却流路133とを接続した下部接続流路134と、冷却流路133の下部接続流路134と接続された端部と反対側の端部と接続された上部接続流路132と、が設けられている。また、上部接続流路132は、主としてX方向の+X方向から-X方向にインクを案内する。このような本実施形態のインクジェットヘッド5Cによれば、上部接続流路132と冷却流路133と下部接続流路134とからなる蛇行流路が形成される。このため、インクが流路部材44の広い範囲を流れることになり、インクジェットヘッド5Cの全体的な熱分布をさらに均一化することが可能になる。
【0200】
(第4実施形態の変形例)
図16は、本第4実施形態のインクジェットヘッド5Cの変形例を示すインク流路100Cを含む模式図である。本変形例では、インク流路100Cにおけるインクの流れが、上述の例と反対となっている。つまり、本変形例においては、流入流路131を排出流路として用い、排出流路136を流入流路として用いる。また、流入ポート74を排出ポートとして用い、排出ポート75を流入ポートとして用いる。
【0201】
なお、以下の説明では、本変形例において流入流路として用いられる排出流路136を流入流路137と称し、本変形例において排出流路として用いられる流入流路131を排出流路138と称する。また、本変形例において流入ポートとして用いられる排出ポート75を流入ポート85と称し、本変形例において排出ポートとして用いられる流入ポート74を排出ポート86と称する。
【0202】
流入流路137は、流路部材44の外部(インク供給管21)から流入ポート85を介して流路部材44に流入されるインクを案内する。流入流路137は、流入ポート85と案内流路135とを接続する。流入流路137の上流端は流入ポート85に接続されている。流入流路137の下流端は案内流路135に接続されている。
【0203】
案内流路135は、X方向の-X方向から+X方向にインクを案内する。案内流路135は、ヘッドチップ43の複数の吐出チャネル50に接続されている。案内流路135は、流入流路137と下部接続流路134とを接続する。案内流路135の上流端は流入流路137に接続されている。案内流路135の下流端は下部接続流路134に接続されている。
【0204】
下部接続流路134は、案内流路135と冷却流路133とを接続する。下部接続流路134の上流端は案内流路135に接続されている。下部接続流路134の下流端は冷却流路133に接続されている。このような下部接続流路134は、インクを-Z方向から+Z方向に案内する。
【0205】
冷却流路133は、X方向の+X方向から-X方向にインクを案内して複数の駆動IC84を冷却する。冷却流路133は、下部接続流路134と上部接続流路132とを接続する。冷却流路123の上流端は下部接続流路134に接続されている。冷却流路133の下流端は上部接続流路132に接続されている。
【0206】
上部接続流路132は、冷却流路133と流入流路131とを接続する。上部接続流路132の上流端は屈曲して冷却流路133に接続されている。上部接続流路132の下流端は流入流路131に接続されている。このような上部接続流路132は、主としてインクを-X方向から+X方向に案内する。
【0207】
排出流路138は、流路部材44の外部(インク排出管22)へ排出ポート86を介して排出するインクを案内する。排出流路138は、排出ポート86と、上部接続流路132とを接続する。排出流路138の上流端は上部接続流路132に接続されている。排出流路138の下流端は排出ポート86に接続されている。
【0208】
本変形例によれば、流入流路137から吐出チャネル50まで距離が、流入流路137と案内流路135との間に上部接続流路132、冷却流路133及び下部接続流路134が配置される場合よりも短い。このため、吐出チャネル50までの圧力損失を小さくすることができ、インクの吐出チャネル50への供給量が不足することを抑制し、安定的にインクを吐出チャネル50から噴射することが可能になる。
【0209】
なお、本変形例においても、案内流路135と冷却流路133とにおいて、案内流路135におけるインクの流れ方向と、駆動IC84を冷却する冷却流路133におけるインクの流れ方向とは反対方向である。案内流路135では、X方向の+X方向側が-X方向側に対して相対的に高温となる。一方、冷却流路133では、X方向の-X方向側が+X方向側に対して相対的に高温となる。
【0210】
この結果、インクジェットヘッド5Cの全体で見た場合の温度分布が、案内流路135のインクの流れ方向と冷却流路133のインクの流れ方向とが同一である場合と比較して均一化される。よって、安定した吐出性能を得ることができる。また、駆動IC84を安定的に駆動させることができる。
【0211】
また、本変形例においても、上部接続流路132と冷却流路133と下部接続流路134とからなる蛇行流路が形成される。このため、インクが流路部材44の広い範囲を流れることになり、インクジェットヘッド5Cの全体的な熱分布をさらに均一化することが可能になる。
【0212】
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、プリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0213】
また、上述した実施形態では、エッジシュートのヘッドチップについて説明したが、これに限られない。例えば、吐出チャネルにおける延在方向の中央部からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのヘッドチップに本開示を適用しても構わない。
また、インクに加わる圧力の方向と、インクの吐出方向と、を同一方向とした、いわゆるルーフシュートタイプのヘッドチップに本開示を適用しても構わない。
【0214】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、1つのジェットモジュールに2つのヘッドチップが搭載された構成について説明したが、この構成のみに限られない。すなわち、1つのジェットモジュールに1つのヘッドチップが搭載された構成であっても構わない。
【0215】
上述した実施形態では、インクタンクから排出されたインクの一部がインクタンクに戻る構成、すなわちインクが循環される構成について説明した。しかしながら、インクタンクから排出されてヘッドチップに供給されたインクがインクタンクに戻らない構成であっても構わない。
【0216】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0217】
1 プリンタ(液体噴射記録装置)
5 インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
5A インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
5B インクジェットヘッド(液体噴射(液体噴射ヘッド)ヘッド)
5C インクジェットヘッド
43 ヘッドチップ(噴射部)
44 流路部材
47 基板ユニット(回路基板)
50 吐出チャネル(圧力室)
74 流入ポート
75 排出ポート
84 駆動IC(駆動制御部)
85 流入ポート
86 排出ポート
100 インク流路
100A インク流路
100B インク流路
100C インク流路
101 流入流路
102 冷却流路
103 接続流路
104 案内流路
105 排出流路
106 流入流路
107 排出流路
111 流入流路
111a 垂下流路
111b 離間流路(離間部)
112 部分冷却流路(第2冷却流路)
113 冷却流路
114 接続流路
115 案内流路
116 排出流路
117 流入流路
118 排出流路
121 流入流路
122 第1接続流路
123 冷却流路
124 第2接続流路
125 案内流路
126 排出流路
127 流入流路
128 排出流路
131 流入流路
132 上部接続流路(第4接続流路)
133 冷却流路
134 下部接続流路(第3接続流路)
135 案内流路
136 排出流路
137 流入流路
138 排出流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16