(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090309
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】組み合わせ部品の誤組防止構造およびその構造を有する熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20230622BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F28F9/00 321
F28F9/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205218
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(72)【発明者】
【氏名】五島 博康
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065AA02
3L065AA11
(57)【要約】
【課題】 熱交換器の複数の構成部品をはじめとする、組み合わせ部品の確実な誤組防止構造を提供すること。
【解決手段】 取付部品1に形状が類似する類似部品2と、類似部品2が組み合わせられる被取付部品3と、を具備し、被取付部品3には、取付部品1側に突出する凸部6が形成されており、類似部品2には、被取付部品3の取付部品1側に組み合わせたときに、凸部6と干渉する平坦部8が形成されており、類似部品2の平坦部8と被取付部品3の凸部6が干渉した状態で、類似部品2の1つの孔5を締結孔4に合わせたときに、もう1つの孔5の軸が被取付部品3の締結孔4の軸に対して傾斜する構成とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部品(1)と、
取付部品(1)に形状が類似する類似部品(2)と、
締結位置(12a、12b)を有する被取付部品(3)と、を具備し、
被取付部品(3)には、各締結位置(12a、12b)に互いに離間した一対ずつの締結孔(4)が形成されており、
取付部品(1)および類似部品(2)には、締結孔(4)に略整合する孔(5)が形成されており、
被取付部品(3)の一方の締結位置(12a)に取付部品(1)が締結され、被取付部品(3)の他方の締結位置(12b)に類似部品(2)が締結される組み合わせ部品の取付構造であって、
被取付部品(3)には、取付部品(1)に組み付く側に突出する凸部(6)が形成されており、
取付部品(1)には、被取付部品(3)の一方の締結位置(12a)に組み合わせたときに、凸部(6)との干渉を回避する干渉回避部(7)が形成されており、
類似部品(2)には、被取付部品(3)の一方の締結位置(12a)に組み合わせたときに、凸部(6)と干渉する干渉部(8)が形成された組み合わせ部品の誤組防止構造において、
一方の締結位置(12a)にて前記類似部品(2)を組み合わせたとき、類似部品(2)の干渉部(8)と被取付部品(3)の凸部(6)が干渉した状態で、類似部品(2)の1つの孔(5)を締結孔(4)に合わせたときに、もう1つの孔(5)の軸が被取付部品(3)の締結孔(4)の軸に対して傾斜することを特徴とする組み合わせ部品の誤組防止構造。
【請求項2】
請求項1の組み合わせ部品の誤組防止構造において、
一方の締結位置(12a)にて前記類似部品(2)を組み合わせたときに、被取付部品(3)の一方の締結位置(12a)側の凸部(6)の先端(6a)は、前記類似部品(2)の干渉部(8)と点接触または線接触する形状であることを特徴とする組み合わせ部品の誤組防止構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の組み合わせ部品の誤組防止構造を有し、
被取付部品(3)が、ヘッダタンク(3a)で構成されている熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換器の構成部品をはじめとする、組み合わせ部品の誤組防止構造およびその構造を有する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器をはじめとするその構成部品において、形状が類似する部品が複数存在する場合がある。この場合、その類似部品を間違えて組み付けてしまう誤組が生じる。類似部品どうしで締結部の間隔を変更して組み付かないようにすることが望ましいが、取付部品のレイアウト等により、締結部の間隔を変更できないことがある。
そのため、構造体には締結部の間隔変更とは異なる誤組防止の構造が設けられる。取付部品と被取付部品の一方の部品に凸部を設け、もう一方の部品にこの凸部に整合する干渉回避部が採用されている。取付部品の組み合わせで正しい向きで組付けようとした場合、凸部は干渉回避部により、干渉せず組み付けることができる。
【0003】
図5は、従来の誤組防止構造の要部断面図である。
干渉回避部を持たない類似部品や間違った向きの部品(以降、類似部品)を被取付部品23に組付けようとすると、
図5に示す如く、凸部26が類似部品22の干渉部28と干渉し、類似部品22と被取付部品23の間に隙間Wが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、この隙間Wが発生しても、類似部品22の孔25と被取付部品23の締結孔24の両者の軸の向きが合ってしまえば、ボルト等の締結具29を差し込むことができる。
この場合、隙間Wに気づかず、隙間Wを残したまま、組付ける問題が生じる。
締結具29がねじ、ボルト等の場合、通常よりも強いトルクを加えることで、類似部品22と凸部26を変形させながら、隙間Wを埋めて組付けが可能となってしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するため、締結部の間隔が同じであっても、確実に組み付けることのできない、組み合わせ部品のより確実な誤組防止構造およびその構造を有する熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、取付部品1と、
取付部品1に形状が類似する類似部品2と、
締結位置12a、12bを有する被取付部品3と、を具備し、
被取付部品3には、各締結位置12a、12bに互いに離間した一対ずつの締結孔4が形成されており、
取付部品1および類似部品2には、締結孔4に略整合する孔5が形成されており、
被取付部品3の一方の締結位置12aに取付部品1が締結され、被取付部品3の他方の締結位置12bに類似部品2が締結される組み合わせ部品の取付構造であって、
被取付部品3には、取付部品1に組み付く側に突出する凸部6が形成されており、
取付部品1には、被取付部品3の一方の締結位置12aに組み合わせたときに、凸部6との干渉を回避する干渉回避部7が形成されており、
類似部品2には、被取付部品3の一方の締結位置12aに組み合わせたときに、凸部6と干渉する干渉部8が形成された組み合わせ部品の誤組防止構造において、
一方の締結位置12aにて前記類似部品2を組み合わせたとき、類似部品2の干渉部8と被取付部品3の凸部6が干渉した状態で、類似部品2の1つの孔5を締結孔4に合わせたときに、もう1つの孔5の軸が被取付部品3の締結孔4の軸に対して傾斜することを特徴とする組み合わせ部品の誤組防止構造である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1の組み合わせ部品の誤組防止構造において、
一方の締結位置12aにて前記類似部品2を組み合わせたときに、被取付部品3の一方の締結位置12a側の凸部6の先端6aは、前記類似部品2の干渉部8と点接触または線接触する形状であることを特徴とする組み合わせ部品の誤組防止構造である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の組み合わせ部品の誤組防止構造を有し、被取付部品3がヘッダタンク3aで構成されている熱交換器である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、一方の締結位置12aにて前記類似部品2を組み合わせたとき、類似部品2の干渉部8と被取付部品3の凸部6が干渉した状態で、類似部品2の1つの孔5を締結孔4に合わせたときに、もう1つの孔5の軸が被取付部品3の締結孔4の軸に対して傾斜するものである。
このため、取付部品1を組み付ける一方の締結位置12aに、間違って、類似部品2を組み付けようとした場合であっても、被取付部品3の締結孔4に締結具9が差し込めないため、類似部品2が被取付部品3に組み付かない。
従来の誤組防止構造では、隙間Wの程度により気づかない場合があったが、締結具が差し込めず、締結具が余ることで、誤組をしていることにより確実に気づくことができる。
従来の誤組防止構造では、規定より強い力であれば組付けられる可能性があったが、締結具が差し込めないので、被取付部品3に対する類似部品2の無理な組付けを避けられる。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、一方の締結位置12aにて前記類似部品2を組み合わせたときに、被取付部品3の一方の締結位置12a側の凸部6の先端6aは、前記類似部品2の干渉部8と点接触する形状である場合には、凸部6の先端6aが類似部品2の干渉部8と点接触するため、類似部品2の孔5に対し、被取付部品3の締結孔4の両者の軸の向きが容易に傾斜する。
また、前記類似部品2の干渉部8と線接触する形状である場合には、凸部6の先端6aが類似部品2の干渉部8と線接触するため、類似部品2の孔5に対し、被取付部品3の締結孔4の両者の軸の向きが、接触した線回りの方向へ容易に傾斜する。
これにより、誤組防止機能を高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、請求項1または、請求項2の誤組対策構造をもち、被取付部品3がヘッダタンク3aで構成されている熱交換器であるため、熱交換器においても取付部品1が組み付く一方の締結位置12aに、取付部品1に類似する類似部品2の誤組を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の誤組防止構造を有する熱交換器の全体像を示し、同図(A)はその正面図、同図(B)は
図1(A)の左側面図、同図(C)は
図1(A)の右側面図。
【
図2】同熱交換器の要部を示し、同図(A)は
図1(B)のII部拡大図、同図(B)は
図2(A)のB-B矢視断面図、同図(C)は
図2(A)のC-C矢視断面図、同図(D)は、
図2(A)のD-D矢視図。
【
図3】取付部品1を被取付部品3の一方の締結位置12a(取付部品1に組み付く側)に取付ける状態を示す図であり、同図(A)はその要部分解斜視図、同図(B)は組付け後の斜視図。
【
図4】類似部品2を被取付部品3の一方の締結位置12a(誤組となる位置)に組付ける状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき、説明する。
図1(A)は本発明の誤組防止構造を有する熱交換器の正面図、
図1(B)は
図1(A)の左側面図、
図1(C)は
図1(A)の右側面図である。
図2(A)は
図1(B)のII部拡大図、
図2(B)は
図2(A)のB-B矢視断面図、
図2(C)は
図2(A)のC-C矢視断面図、
図2(D)は、
図2(A)のD-D矢視図である。
図3は取付部品1を被取付部品3の一方の締結位置12a(取付部品1に組み付く側)に取付ける状態を示す図であり、
図3(A)はその要部分解斜視図、
図3(B)は組付け後の斜視図である。
【0014】
本実施例では、熱交換器における取付部品1に類似する類似部品2の誤組防止構造について説明する。しかしながら、熱交換器以外の構造体に関する誤組防止構造にも適用することができる。
この熱交換器は、
図1(A)に示す如く、偏平チューブ13とフィン14とが交互に並列されたコア15と、コア15の内部流体の流通方向の両端に配置された被取付部品3であるヘッダタンク3a(ヘッダプレート16とタンク本体17を含む。)と、を有する。
ヘッダタンク3aの長手方向の両端には、
図1(A)に示す如く、正規の組み付けにおいて、一方の締結位置12aにサイドサポート1a(取付部品1)が組付けられ、他方の締結位置12bにサイドサポート1aに類似する類似サイドサポート2a(類似部品2)が組付けられる。
【0015】
図3(A)に示す如く、ヘッダタンク3aの一方の締結位置12aには、一方の締結位置12aの平面に互いに離間して配置された一対の締結孔4が形成されている。
ヘッダタンク3aには、類似サイドサポート2aを一方の締結位置12aに誤組することを防止するための誤組防止構造が採用されている。ヘッダタンク3aの締結位置12には、サイドサポート1a側に向けて突出する凸部6が一体に形成されている。
【0016】
この例の凸部6は、
図3(B)に示す如く、ヘッダタンク3aおよびサイドサポート1aの接触面上に突出し、凸部6は一対の締結孔4間にある。この凸部6は、締結孔4間を結んだ直線上にあるのが望ましい。
凸部6の形状は、類似部品2が取り付けられた場合に、類似部品2の接触部と点接触または線接触できる半円柱状または半球状に形成されている。
【0017】
サイドサポート1aには、
図3(A)に示す如く、ヘッダタンク3aの締結孔4に整合する孔5が形成されている。サイドサポート1aの先端には、ヘッダタンク3aの一方の締結位置12a(サイドサポート1aに組み付く側)に組付けたときに、ヘッダタンク3aの凸部6と整合する位置に凹に欠切し、凸部6との干渉を回避する干渉回避部7が形成されている。
【0018】
この例では、ヘッダタンク3aとサイドサポート1aは、締結具9であるボルトとナット10とで締結されている。ヘッダタンク3aの締結孔4は、ボルトの軸が締結孔4に挿入されたときに、ナット10と締結可能となるよう、ナット収納部11につながっている。ナット10は、
図3(A)に示す如く、ヘッダタンク3aに形成されたナット収納部11に予め載置されている。締結具9は、ねじ、タッピングビスであってもよい。この場合、ナット収納部11は不要となる。
【0019】
ヘッダタンク3aとサイドサポート1aとを一方の締結位置12aに組み合わせたときには、ヘッダタンク3aの凸部6及び締結孔4と、サイドサポート1aの干渉回避部7及び孔5がそれぞれ整合する位置に配置され、ヘッダタンク3aの締結部の平面とサイドサポート1aの取付側の平面とが接触する。その状態で、
図3(B)に示す如く、ボルトとナットにより両部品が締結される。
図1(A)、(B)、(C)の各図は、ヘッダタンク3a、サイドサポート1a、類似サイドサポート2aとが、正規の位置に組み合わされた場合の締結状態を示している。
【0020】
次に、
図4は類似部品2が被取付部品3のサイドサポート1aを組み付ける一方の締結位置12aに誤って組付けられた状態を示している。
ヘッダタンク3aの凸部6と締結孔4の形状、形成位置は、前述の取付部品1であるサイドサポート1aの時と同じである。
類似部品2は、取付部品1の干渉回避部7を持たない類似部品や、鏡面対称に形成された一対の部品で間違った向きで取付けられる部品であり、上述した取付部品1と類似する形状を有する。
類似部品2である類似サイドサポート2aの一対の孔5の間隔は、取付部品1のサイドサポート1aの一対の孔5の間隔と、ほぼ同一である。両部品1、2の孔5の間隔は、孔径が同じでも異なっていても、締結具9が孔5に挿入できる程度の違いである。
このように類似部品2は、一見して取付部品1と取り違いし易く、誤組しやすい部品となっている。
【0021】
図4の例の類似サイドサポート2aは、
図1(B)、(C)のような鏡面対称に形成された一対の部品を間違った向きに取付けた部品の例である。つまり、
図1(C)の位置に取付けるサイドサポートを
図1(B)の位置に組み合わせた場合を示す。
類似サイドサポート2aは、ヘッダタンク3aの一方の締結位置12aと組み合わせたときに、ヘッダタンク3aの凸部6と干渉する位置に干渉部8が形成されている。
図1において、ヘッダタンク3aの他方の締結位置12bに組み合わせるべき類似サイドサポート2aを、ヘッダタンク3aの一方の締結位置12aに組み合わせた場合、類似サイドサポート2aの干渉部8とヘッダタンク3aの凸部6の先端6aとが干渉する。
【0022】
その干渉した状態では、
図4に示す如く、半円柱状または半球状に形成された凸部6により、類似サイドサポート2aの干渉部8と点接触または線接触し、類似サイドサポート2aの1つの孔5を締結孔4に合わせたときに、もう1つの孔5の軸がヘッダタンク3aの締結孔4の軸に対して容易に傾斜する。
それにより
図4に示す如く、一方の締結孔4に締結具9を固定することはできたとしても、他方の締結孔4には締結具9を挿入することが困難となるため、誤組を生じていることが容易にわかる構造となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
広い分野で類似部品の誤組防止構造として利用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 取付部品
1a サイドサポート
2 類似部品
2a 類似サイドサポート
3 被取付部品
3a ヘッダタンク
4 締結孔
5 孔
6 凸部
6a 先端
7 干渉回避部
8 干渉部
【0025】
9 締結具
10 ナット
11 ナット収納部
12 締結位置
12a 一方の締結位置
12b 他方の締結位置
13 偏平チューブ
14 フィン
15 コア
16 ヘッダプレート
17 タンク本体
【0026】
22 類似部品
23 被取付部品
24 締結孔
25 孔
26 凸部
28 干渉部
29 締結具
W 隙間