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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090337
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】光学レンズ系
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20230622BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205261
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 達也
(72)【発明者】
【氏名】長澤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕輝
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087PA06
2H087PA07
2H087PA16
2H087PA19
2H087PA20
2H087PB09
2H087PB10
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】非球面レンズを有効活用することにより、コンパクトで高性能なレンズを提供すること。
【解決手段】物体OBJ側から結像面IMG側へ順に、複数のレンズを有する第1レンズ群G1、開口絞りSTO、複数のレンズを有する第2レンズ群G2が配置され、第1レンズ群G1は少なくとも2枚の負レンズと少なくとも2枚の正レンズを有し、最も結像面IMG側に凹面を向けた負レンズを有し、第2レンズ群G2は2つの接合レンズを有し、最も結像面IMG側に非球面レンズを配置した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から結像面側へ順に、複数のレンズを有する第1レンズ群、開口絞り、複数のレンズを有する第2レンズ群が配置され、
前記第1レンズ群は少なくとも2枚の負レンズと少なくとも2枚の正レンズを有し、最も結像面側に凹面を向けた負レンズを有し、
前記第2レンズ群は2つの接合レンズを有し、最も結像面側に非球面レンズを配置したことを特徴とする光学レンズ系。
【請求項2】
前記第1レンズ群は、前記開口絞りから物体側に向けて負レンズ、正レンズ、正レンズ、負レンズの順に配置され、
前記第2レンズ群は、前記開口絞りから結像面側に向けて負レンズ、正レンズ、正レンズ、負レンズの順に配置されていることを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【請求項3】
前記第1レンズ群は、最物体側に負レンズが配置され、
前記第2レンズ群は、開口絞りから結像面側へ順に、両凹レンズと両凸レンズの順に接合した第1接合レンズと、両凸レンズと両凹レンズの順に接合した第2接合レンズと、最結像面側に配置された非球面レンズと、を含み、
前記開口絞りを挟んで、前記開口絞りから物体側に向かう前記第1レンズ群のうち4枚のレンズの屈折力と、前記開口絞りから結像面側に向かう前記第2レンズ群の前記第1接合レンズ及び前記第2接合レンズの4枚のレンズの屈折力とは同符号であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光学レンズ系。
【請求項4】
前記第1レンズ群の開口絞り側は、物体側から開口絞り側に向けて両凸レンズと両凹レンズの順に接合された第3接合レンズが配置されているか、又は物体側から開口絞り側に向けて正レンズと負レンズの順に配置されていることを特徴とする請求項3記載の光学レンズ系。
【請求項5】
前記第2レンズ群は、前記第2接合レンズと、前記非球面レンズとの間に、正の単レンズ又は負の単レンズが配置されていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の光学レンズ系。
【請求項6】
全系の焦点距離をfとし、前記第2レンズ群の焦点距離をfRとすると、
0.4≦f/fR≦1.2
なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1~請求項5のうちのいずれか1項記載の光学レンズ系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体側から結像面側へ順に、第1レンズ群、開口絞り、第2レンズ群を配設した光学レンズ系に関する。
【背景技術】
【0002】
写真及びビデオ撮影用の光学機器に用いられる交換レンズにおいて、いわゆるダブルガウス型の光学レンズ系の構成に関する提案が多数なされている。
例えば、特許文献1(特許第5217693号公報)においては、諸収差を良好に補正するために、第1レンズ群のうちの最も屈折率の高いレンズの条件を規定している。
また、特許文献2(特許第5966728号公報)においては、レンズ枚数を少なくし、且つ諸収差を良好に補正するために、第1レンズ群のうちの2つのレンズにおける曲率半径等を規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5217693号公報
【特許文献2】特許第5966728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に開示されている光学レンズ系は、少ないレンズ枚数で各種の収差を良好に補正できるとしているが、デジタルカメラの発展に伴い、大口径かつ高性能なレンズが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、非球面レンズを有効活用することにより、コンパクトで高性能なレンズを提供することを目的とする。
【0006】
本発明にかかる光学レンズ系によれば、物体側から結像面側へ順に、複数のレンズを有する第1レンズ群、開口絞り、複数のレンズを有する第2レンズ群が配置され、前記第1レンズ群は少なくとも2枚の負レンズと少なくとも2枚の正レンズを有し、最も結像面側に凹面を向けた負レンズを有し、前記第2レンズ群は2つの接合レンズを有し、最も結像面側に非球面レンズを配置したことを特徴とする。
この構成を採用することによって、開口絞りに対して第1レンズ群と第2レンズ群の正レンズ負レンズの組み合わせの配置が対称な構造となるため、第1レンズ群と第2レンズ群のレンズ中で同じような光線経路が形成されて収差を互いに打ち消すことができるため、良好に収差補正ができ、倍率色収差やディストーションを軽減することができる。
【0007】
また、前記第1レンズ群は、前記開口絞りから物体側に向けて負レンズ、正レンズ、正レンズ、負レンズの順に配置され、前記第2レンズ群は、前記開口絞りから結像面側に向けて負レンズ、正レンズ、正レンズ、負レンズの順に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記第1レンズ群は、最物体側に負レンズが配置され、前記第2レンズ群は、開口絞りから結像面側へ順に、両凹レンズと両凸レンズの順に接合した第1接合レンズと、両凸レンズと両凹レンズの順に接合した第2接合レンズと、最結像面側に配置された非球面レンズと、を含み、前記開口絞りを挟んで、前記開口絞りから物体側に向かう前記第1レンズ群のうち4枚のレンズの屈折力と、前記開口絞りから結像面側に向かう前記第2レンズ群の前記第1接合レンズ及び前記第2接合レンズの4枚のレンズの屈折力とは同符号であることを特徴とする。
【0009】
また、前記第1レンズ群の開口絞り側は、物体側から開口絞り側に向けて両凸レンズと両凹レンズの順に接合された第3接合レンズが配置されているか、又は物体側から開口絞り側に向けて正レンズと負レンズの順に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記第2レンズ群は、前記第2接合レンズと、前記非球面レンズとの間に、正の単レンズ又は負の単レンズが配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、全系の焦点距離をfとし、前記第2レンズ群の焦点距離をfRとすると、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たすことを特徴とする。
f/fRが0.4未満の場合は、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまい、またコマ収差が発生し、解像性能が劣化するという課題がある。f/fRが1.2より大の場合は、コマ収差が発生するとともに、軸上色収差が発生し解像が損なわれるという課題がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明における光学レンズ系の構成によれば、非球面レンズを有効活用することにより、コンパクトで高性能なレンズを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図2】第1実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
図3】第2実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図4】第2実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
図5】第3実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図6】第3実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
図7】第4実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図8】第4実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の各本実施形態における光学レンズ系は、写真及びビデオ撮影用の光学機器に用いられるものであって、Fナンバー1.4よりも大口径化を図ることを目的とし、物体側から結像面側に向けて、最物体側に配置された負レンズを含む第1レンズ群と、開口絞りと、開口絞りから結像面側へ順に、両凹レンズと両凸レンズの順に接合した第1接合レンズと両凸レンズと両凹レンズの順に接合した第2接合レンズと最結像面側に配置された非球面レンズと、を含む第2レンズ群とを有する光学レンズ系である。
以下、各実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示す第1実施形態における光学レンズ系100は、物体OBJの側から結像面IMGの側に向かって順に配設された第1レンズ群G1、開口絞りSTOおよび第2レンズ群G2を具備する。
本実施形態の光学レンズ系100は、APS-Cセンサー用のレンズとして用いられることを想定している。
【0016】
本実施形態における第1レンズ群G1は、物体OBJの側から結像面IMGへ向けて順に、両凹レンズL1と、負メニスカスレンズL2f及び両凸レンズL2rが接合された第4接合レンズL2と、両凸レンズL3f及び両凹レンズL3rが接合された第3接合レンズL3と、を有している。
【0017】
第1レンズ群G1の結像面IMG側には、第3接合レンズL3から所定間隔をあけた位置に開口絞りSTOが配置されている。
そして、開口絞りSTOの結像面IMG側には、開口絞りSTOから所定間隔をあけて第2レンズ群G2が配置されている。
【0018】
第2レンズ群G2は、物体OBJの側から結像面IMGへ向けて順に、両凹レンズL4f及び両凸レンズL4rが接合された第1接合レンズL4と、両凸レンズL5f及び両凹レンズL5rが接合された第2接合レンズL5と、非球面レンズL6とを有している。
【0019】
本実施形態の構成によれば、開口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L2f、L2r、L3f、L3r)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L4f、L4r、L5f、L5r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成となっている。
すなわち、第1レンズ群G1は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、第2レンズ群G2は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、開口絞りSTOに対して凹レンズと凸レンズの組み合わせ順が対称となっている。
また、言い換えると、開口絞りSTOを挟んで、開口絞りSTOから物体OBJ側に向かう第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L2f、L2r、L3f、L3r)の屈折力と、開口絞りSTOから結像面IMG側に向かう第2レンズ群G2の第1接合レンズL4及び第2接合レンズL5の4枚のレンズ(L4f、L4r、L5f、L5r)の屈折力とは同符号である。
【0020】
本実施形態のように、開口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L2f、L2r、L3f、L3r)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L4f、L4r、L5f、L5r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成を採用することにより、倍率色収差やディストーションの補正に有利となる。そして、本実施形態では非球面レンズは非球面レンズL6のみであって、少ない枚数で良好な収差補正ができる。
【0021】
また、本発明では光学レンズ系の全系の焦点距離をfとし、第2レンズ群G2の焦点距離をfRとした場合、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たすことが好ましい。
f/fRが0.4以上であれば、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差が発生し、解像性能が劣化するという問題も防止できる。
f/fRが1.2以下であれば、コマ収差及び軸上色収差が発生し解像が損なわれるという問題も防止できる。
【0022】
本実施形態の光学データを表1に示す。
【表1】
【0023】
表1によると本実施形態におけるFナンバーは1.22、全系の焦点距離f=23.6であり、第2レンズ群G2の焦点距離fR=40.6である。したがって、本実施形態におけるf/fR=0.58であり、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たす。このため、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差の発生、軸上色収差の発生を防止し、良好な解像性能とすることができる。
【0024】
表2に、本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データを示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2においてfは全系の焦点距離、FはFナンバーを示す。
また、物体OBJの側から数えたレンズ面の面番号をiとし、この面番号iは図1に記載した符号(数字)に一致している。面番号にアルファベットAがついている面は非球面であることを示している。
この面番号(i)に対応するレンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)の数値が表2に示されている。
nd(i)およびνd(i)はd線(587.56nm)に対する数値である。
軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚あるいは空気間隔を示す。なお、曲率半径R(i)と軸上面間隔D(i)の単位はmmである。面番号のOBJは物体を示し、面番号STOおよび面番号IMGはそれぞれ開口絞りおよび結像面を示す。
【0027】
本実施形態における非球面レンズの非球面係数を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
表3は、本実施形態の非球面の面形状(非球面係数)を示しており、ASPは非球面番号であり、各非球面係数は浮動小数点表示で表示している。
面の中心を原点とし、光軸方向をZ軸とした直交座標系(X、Y、Z)において、原点(光軸)からの距離Hにおけるサグ量をZとしたとき、Zは以下に示す数1によって表される。Kは円錐定数、Cは曲率(曲率半径Rの逆数)、A4、A8、A10、A12、A14、A16、A18はそれぞれ4次、6次、8次、10次、12次、14次、16次、18次の非球面係数である。
【0030】
【数1】
【0031】
本実施形態の光学レンズ系100における縦収差について図2を参照しながら説明する。図2における縦収差図は、左側から(a)球面収差図(波長656.27nm,587.56nm,435.83nm)、(b)非点収差図(波長587.56nm)、(c)歪曲収差図(波長587.56nm)である。なお、各図における横軸スケールは、±0.50mm,±0.50mm,±3.0%である。また、(b)非点収差図内におけるTは焦点のタンジェンシャル面(yz面方向)をあらわし、Sはサジタル面(xz面方向)をあらわしている。
【0032】
図2から、本実施形態における光学レンズ系100は、いずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては球面収差、非点収差の結果が特に良好であり、解像度およびコントラストが高い。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図3に示す第2実施形態における光学レンズ系100は、物体OBJの側から結像面IMGの側に向かって順に第1レンズ群G1、開口絞りSTO、第2レンズ群G2を具備する。
本実施形態の光学レンズ系100は、APS-Cセンサー用のレンズとして用いられることを想定している。
【0034】
本実施形態における第1レンズ群G1は、物体OBJの側から結像面IMGへ向けて順に、両凹レンズL7と、両凸レンズL8と、両凸レンズL9f及び両凹レンズL9rが接合された第3接合レンズL9と、を有している。
【0035】
第1レンズ群G1の結像面IMG側には、第3接合レンズL9から所定間隔をあけた位置に開口絞りSTOが配置されている。
そして、開口絞りSTOの結像面IMG側には、開口絞りSTOから所定間隔をあけて第2レンズ群G2が配置されている。
【0036】
第2レンズ群G2は、物体OBJ側から結像面IMG側へ向けて順に、両凹レンズL10f及び両凸レンズL10rが接合された第1接合レンズL10と、両凸レンズL11f及び両凹レンズL11rが接合された第2接合レンズL11と、結像面IMGへ向けて凸となる正メニスカスレンズL12と、物体OBJ側へ向けて凸となる非球面レンズL13とを有している。
【0037】
本実施形態の構成によれば、開口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L7、L8、L9f、L9r)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L10f、L10r、L11f、L11r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成となっている。
すなわち、第1レンズ群G1は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、第2レンズ群G2は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、開口絞りSTOに対して凹レンズと凸レンズの組み合わせ順が対称となっている。
また、言い換えると、開口絞りSTOを挟んで、開口絞りSTOから物体OBJ側に向かう第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L7、L8、L9f、L9r)の屈折力と、開口絞りSTOから結像面IMG側に向かう第2レンズ群G2の第1接合レンズL10及び第2接合レンズL11の4枚のレンズ(L10f、L10r、L11f、L11r)の屈折力とは同符号である。
【0038】
本実施形態のように、口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L7、L8、L9f、L9r)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L10f、L10r、L11f、L11r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成を採用することにより、倍率色収差やディストーションの補正に有利となる。そして、本実施形態では非球面レンズは非球面レンズL13のみであって、少ない枚数で良好な収差補正ができる。
【0039】
また、本発明では光学レンズ系の全系の焦点距離をfとし、第2レンズ群G2の焦点距離をfRとした場合、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たすことが好ましい。
f/fRが0.4以上であれば、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差が発生し、解像性能が劣化するという問題も防止できる。
f/fRが1.2以下であれば、コマ収差及び軸上色収差が発生し解像が損なわれるという問題も防止できる。
【0040】
本実施形態の光学データを表4に示す。
【表4】
【0041】
表4によると本実施形態におけるFナンバーは1.26、全系の焦点距離f=23.7であり、第2レンズ群G2の焦点距離fR=28.6である。したがって、本実施形態におけるf/fR=0.83であり、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たす。このため、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差の発生、軸上色収差の発生を防止し、良好な解像性能とすることができる。
【0042】
表5に、本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データを示す。
【0043】
【表5】
【0044】
表5においてfは全系の焦点距離、FはFナンバーを示す。
また、物体OBJの側から数えたレンズ面の面番号をiとし、この面番号iは図3に記載した符号(数字)に一致している。面番号にアルファベットAがついている面は非球面であることを示している。
この面番号(i)に対応するレンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)の数値が表5に示されている。
nd(i)およびνd(i)はd線(587.56nm)に対する数値である。
軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚あるいは空気間隔を示す。なお、曲率半径R(i)と軸上面間隔D(i)の単位はmmである。面番号のOBJは物体を示し、面番号STOおよび面番号IMGはそれぞれ開口絞りおよび結像面を示す。
【0045】
本実施形態における非球面レンズの非球面係数を表6に示す。
【0046】
【表6】
【0047】
表6は、本実施形態の非球面の面形状(非球面係数)を示しており、ASPは非球面番号であり、各非球面係数は浮動小数点表示で表示している。
面の中心を原点とし、光軸方向をZ軸とした直交座標系(X、Y、Z)において、原点(光軸)からの距離Hにおけるサグ量をZとしたとき、Zは上述した数1によって表される。Kは円錐定数、Cは曲率(曲率半径Rの逆数)、A4、A8、A10、A12、A14はそれぞれ4次、6次、8次、10次、12次、14次の非球面係数である。
【0048】
本実施形態の光学レンズ系100における縦収差について図4を参照しながら説明する。図4における縦収差図は、左側から(a)球面収差図(波長656.27nm,587.56nm,435.83nm)、(b)非点収差図(波長587.56nm)、(c)歪曲収差図(波長587.56nm)である。なお、各図における横軸スケールは、±0.50mm,±0.50mm,±3.0%である。また、(b)非点収差図内におけるTは焦点のタンジェンシャル面(yz面方向)をあらわし、Sはサジタル面(xz面方向)をあらわしている。
【0049】
図4から、本実施形態における光学レンズ系100は、いずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては球面収差、非点収差の結果が特に良好であり、解像度およびコントラストが高い。
【0050】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
図5に示す第3実施形態における光学レンズ系100は、物体OBJの側から結像面IMGの側に向かって順に第1レンズ群G1、開口絞りSTO、第2レンズ群G2を具備する。
本実施形態の光学レンズ系100は、フルサイズセンサー用のレンズとして用いられることを想定している。
【0051】
本実施形態における第1レンズ群G1は、物体OBJ側から結像面IMGへ向けて順に、両凹レンズL14と、物体OBJ側に凸となる非球面レンズL15と、両凸レンズL16と、物体OBJ側に凸となる負メニスカスレンズL17と、を有している。
【0052】
第1レンズ群G1の結像面IMG側には、負メニスカスレンズL17から所定間隔をあけた位置に開口絞りSTOが配置されている。
そして、開口絞りSTOの結像面IMG側には、開口絞りSTOから所定間隔をあけて第2レンズ群G2が配置されている。
【0053】
第2レンズ群G2は、物体OBJ側から結像面IMG側へ向けて順に、両凹レンズL18f及び両凸レンズL18rが接合された第1接合レンズL18と、両凸レンズL19f及び両凹レンズL19rが接合された第2接合レンズL19と、物体OBJ側へ向けて凸となる非球面レンズL20とを有している。
【0054】
本実施形態の構成によれば、開口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L14、L15、L16、L17)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L18f、L18r、L19f、L19r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成となっている。
すなわち、第1レンズ群G1は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、第2レンズ群G2は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、開口絞りSTOに対して凹レンズと凸レンズの組み合わせ順が対称となっている。
また、言い換えると、開口絞りSTOを挟んで、開口絞りSTOから物体OBJ側に向かう第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L14、L15、L16、L17)の屈折力と、開口絞りSTOから結像面IMG側に向かう第2レンズ群G2の第1接合レンズL18及び第2接合レンズL19の4枚のレンズ(L18f、L18r、L19f、L19r)の屈折力とは同符号である。
【0055】
本実施形態のように、口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L14、L15、L16、L17)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L18f、L18r、L19f、L19r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成を採用することにより、倍率色収差やディストーションの補正に有利となる。そして、本実施形態では非球面レンズは非球面レンズL15及びL20のみであって、少ない枚数で良好な収差補正ができる。
【0056】
また、本発明では光学レンズ系の全系の焦点距離をfとし、第2レンズ群G2の焦点距離をfRとした場合、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たすことが好ましい。
f/fRが0.4以上であれば、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差が発生し、解像性能が劣化するという問題も防止できる。
f/fRが1.2以下であれば、コマ収差及び軸上色収差が発生し解像が損なわれるという問題も防止できる。
【0057】
本実施形態の光学データを表7に示す。
【表7】
【0058】
表7によると本実施形態におけるFナンバーは1.21、全系の焦点距離f=34.3であり、第2レンズ群G2の焦点距離fR=37.9である。したがって、本実施形態におけるf/fR=0.91であり、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たす。このため、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差の発生、軸上色収差の発生を防止し、良好な解像性能とすることができる。
【0059】
表8に、本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データを示す。
【0060】
【表8】
【0061】
表8においてfは全系の焦点距離、FはFナンバーを示す。
また、物体OBJの側から数えたレンズ面の面番号をiとし、この面番号iは図5に記載した符号(数字)に一致している。面番号にアルファベットAがついている面は非球面であることを示している。
この面番号(i)に対応するレンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)の数値が表8に示されている。
nd(i)およびνd(i)はd線(587.56nm)に対する数値である。
軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚あるいは空気間隔を示す。なお、曲率半径R(i)と軸上面間隔D(i)の単位はmmである。面番号のOBJは物体を示し、面番号STOおよび面番号IMGはそれぞれ開口絞りおよび結像面を示す。
【0062】
本実施形態における非球面レンズの非球面係数を表9に示す。
【0063】
【表9】
【0064】
表9は、本実施形態の非球面の面形状(非球面係数)を示しており、ASPは非球面番号であり、各非球面係数は浮動小数点表示で表示している。
面の中心を原点とし、光軸方向をZ軸とした直交座標系(X、Y、Z)において、原点(光軸)からの距離Hにおけるサグ量をZとしたとき、Zは上述した数1によって表される。Kは円錐定数、Cは曲率(曲率半径Rの逆数)、A4、A8、A10、A12、A14はそれぞれ4次、6次、8次、10次、12次、14次の非球面係数である。
【0065】
本実施形態の光学レンズ系100における縦収差について図6を参照しながら説明する。図6における縦収差図は、左側から(a)球面収差図(波長656.27nm,587.56nm,435.83nm)、(b)非点収差図(波長587.56nm)、(c)歪曲収差図(波長587.56nm)である。なお、各図における横軸スケールは、±0.50mm,±0.50mm,±3.0%である。また、(b)非点収差図内におけるTは焦点のタンジェンシャル面(yz面方向)をあらわし、Sはサジタル面(xz面方向)をあらわしている。
【0066】
図6から、本実施形態における光学レンズ系100は、いずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては球面収差、非点収差の結果が特に良好であり、解像度およびコントラストが高い。
【0067】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。
図7に示す第4実施形態における光学レンズ系100は、物体OBJの側から結像面IMGの側に向かって順に第1レンズ群G1、開口絞りSTO、第2レンズ群G2を具備する。
【0068】
本実施形態における第1レンズ群G1は、物体OBJ側から結像面IMGへ向けて順に、両凹レンズL21と、物体OBJ側に凸となる非球面レンズL22と、両凸レンズL23f及び両凹レンズL23rが接合された第3接合レンズL23と、を有している。
【0069】
第1レンズ群G1の結像面IMG側には、第3接合レンズL23から所定間隔をあけた位置に開口絞りSTOが配置されている。
そして、開口絞りSTOの結像面IMG側には、開口絞りSTOから所定間隔をあけて第2レンズ群G2が配置されている。
【0070】
第2レンズ群G2は、物体OBJ側から結像面IMG側へ向けて順に、両凹レンズL24f及び両凸レンズL24rが接合された第1接合レンズL24と、両凸レンズL25f及び両凹レンズL25rが接合された第2接合レンズL25と、物体OBJ側へ向けて凸となる非球面レンズL26とを有している。
【0071】
本実施形態の構成によれば、開口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L21、L22、L23f、L23r)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L24f、L24r、L25f、L25r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成となっている。
すなわち、第1レンズ群G1は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、第2レンズ群G2は、開口絞りSTO側から順に凹レンズ、凸レンズ、凸レンズ、凹レンズという組み合わせで配置されており、開口絞りSTOに対して凹レンズと凸レンズの組み合わせ順が対称となっている。
また、言い換えると、開口絞りSTOを挟んで、開口絞りSTOから物体OBJ側に向かう第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L21、L22、L23f、L23r)の屈折力と、開口絞りSTOから結像面IMG側に向かう第2レンズ群G2の第1接合レンズL24及び第2接合レンズL25の4枚のレンズ(L24f、L24r、L25f、L25r)の屈折力とは同符号である。
【0072】
本実施形態のように、口絞りSTOを挟んで第1レンズ群G1の4枚のレンズ(L21、L22、L23f、L23r)と、第2レンズ群G2の4枚のレンズ(L24f、L24r、L25f、L25r)が開口絞りSTOに対して対称となる構成を採用することにより、倍率色収差やディストーションの補正に有利となる。そして、本実施形態では非球面レンズは非球面レンズL22及びL26のみの使用であって、少ない枚数で良好な収差補正ができる。
【0073】
また、本発明では光学レンズ系の全系の焦点距離をfとし、第2レンズ群G2の焦点距離をfRとした場合、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たすことが好ましい。
f/fRが0.4以上であれば、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差が発生し、解像性能が劣化するという問題も防止できる。
f/fRが1.2以下であれば、コマ収差及び軸上色収差が発生し解像が損なわれるという問題も防止できる。
【0074】
本実施形態の光学データを表10に示す。
【表10】
【0075】
表10によると本実施形態におけるFナンバーは1.46、全系の焦点距離f=34.7であり、第2レンズ群G2の焦点距離fR=39.2である。したがって、本実施形態におけるf/fR=0.89であり、0.4≦f/fR≦1.2なる条件式を満たす。このため、第1レンズ群の最大径が大きくなって製品が大型化してしまうということを防止し、またコマ収差の発生、軸上色収差の発生を防止し、良好な解像性能とすることができる。
【0076】
表11に、本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データを示す。
【0077】
【表11】
【0078】
表11においてfは全系の焦点距離、FはFナンバーを示す。
また、物体OBJの側から数えたレンズ面の面番号をiとし、この面番号iは図7に記載した符号(数字)に一致している。面番号にアルファベットAがついている面は非球面であることを示している。
この面番号(i)に対応するレンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)の数値が表11に示されている。
nd(i)およびνd(i)はd線(587.56nm)に対する数値である。
軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚あるいは空気間隔を示す。なお、曲率半径R(i)と軸上面間隔D(i)の単位はmmである。面番号のOBJは物体を示し、面番号STOおよび面番号IMGはそれぞれ開口絞りおよび結像面を示す。
【0079】
本実施形態における非球面レンズの非球面係数を表12に示す。
【0080】
【表12】
【0081】
表12は、本実施形態の非球面の面形状(非球面係数)を示しており、ASPは非球面番号であり、各非球面係数は浮動小数点表示で表示している。
面の中心を原点とし、光軸方向をZ軸とした直交座標系(X、Y、Z)において、原点(光軸)からの距離Hにおけるサグ量をZとしたとき、Zは上述した数1によって表される。Kは円錐定数、Cは曲率(曲率半径Rの逆数)、A4、A8、A10、A12、A14はそれぞれ4次、6次、8次、10次、12次、14次の非球面係数である。
【0082】
本実施形態の光学レンズ系100における縦収差について図8を参照しながら説明する。図8における縦収差図は、左側から(a)球面収差図(波長656.27nm,587.56nm,435.83nm)、(b)非点収差図(波長587.56nm)、(c)歪曲収差図(波長587.56nm)である。なお、各図における横軸スケールは、±0.50mm,±0.50mm,±3.0%である。また、(b)非点収差図内におけるTは焦点のタンジェンシャル面(yz面方向)をあらわし、Sはサジタル面(xz面方向)をあらわしている。
【0083】
図8から、本実施形態における光学レンズ系100は、いずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては球面収差、非点収差の結果が特に良好であり、解像度およびコントラストが高い。
【0084】
以上に説明したように、第1実施形態~第4実施形態にかかる光学レンズ系100の構成によれば、開口絞りSTOに対して対称に正レンズと負レンズの組み合わせが配置されているので、第1レンズ群と第2レンズ群のレンズ中で同じような光線経路が形成され、収差を互いに打ち消すことができるため、良好な収差補正ができ、倍率色収差やディストーションを軽減することができる。
【0085】
複数の実施形態に基づいて本発明にかかる光学レンズ系100の構成ついて詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
100 光学レンズ系
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
IMG 結像面
L1 両凹レンズ
L2 第4接合レンズ
L2f 負メニスカスレンズ
L2r 両凸レンズ
L3 第3接合レンズ
L3f 両凸レンズ
L3r 両凹レンズ
L4 第1接合レンズ
L4f 両凹レンズ
L4r 両凸レンズ
L5 第2接合レンズ
L5f 両凸レンズ
L5r 両凹レンズ
L6 非球面レンズ
L7 両凹レンズ
L8 両凸レンズ
L9 第3接合レンズ
L9f 両凸レンズ
L9r 両凹レンズ
L10 第1接合レンズ
L10f 両凹レンズ
L10r 両凸レンズ
L11 第2接合レンズ
L11f 両凸レンズ
L11r 両凹レンズ
L12 正メニスカスレンズ
L13 非球面レンズ
L14 両凹レンズ
L15 非球面レンズ
L16 両凸レンズ
L17 負メニスカスレンズ
L18 第1接合レンズ
L18f 両凹レンズ
L18r 両凸レンズ
L19 第2接合レンズ
L19f 両凸レンズ
L19r 両凹レンズ
L20 非球面レンズ
L21 両凹レンズ
L22 非球面レンズ
L23 第3接合レンズ
L23f 両凸レンズ
L23r 両凹レンズ
L24 第1接合レンズ
L24f 両凹レンズ
L24r 両凸レンズ
L25 第2接合レンズ
L25f 両凸レンズ
L25r 両凹レンズ
L26 非球面レンズ
OBJ 物体
STO 開口絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8