(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090357
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】光学システム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20230622BHJP
H04B 10/079 20130101ALI20230622BHJP
H04B 10/50 20130101ALI20230622BHJP
【FI】
G02F1/03 502
H04B10/079 190
H04B10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205284
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】514277260
【氏名又は名称】シンクランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】志賀 代康
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA00
2K102DC07
2K102DD05
2K102EA25
2K102EB01
2K102EB22
5K102AH02
5K102AH26
5K102AH27
5K102MA01
5K102MB04
5K102MC11
5K102MD01
5K102MH02
5K102MH13
5K102MH22
5K102PH01
5K102PH31
5K102PH41
5K102PH43
5K102PH49
(57)【要約】
【課題】フィードバック制御を伴う光変調器を多段に配置して光学システムを構築することを可能にする。
【解決手段】LN変調器11とLN学変調器22とを直列に配置した光学システム1Aは、入力光LinをLN変調器11及びLN変調器22を順に通過する光L1と光L2とに分岐させる光カプラ10と、LN変調器を通過した光L1を出力光Louとして導く一方、光L2を光L1とは逆側からLN変調器22へ入力するサーキュレータ23と、LN変調器11を通過した光L1をLN変調器22に入力される光と、受光素子13に入力される光とに分岐させる一方、第1の導波手段及びLN変調器22を通過した光L2を、受光素子23に導く光カプラ12及びサーキュレータ21と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気光学変調器と、当該第1の電気光学変調器の後段に設けられた第2の電気光学変調器とを有し、入力光に対して当該第1の電気光学変調器及び当該第2の電気光学変調器によって変調された光を出力光として出力する光学システムであって、
前記入力光を、前記第1の電気光学変調器及び前記第2の電気光学変調器を順に通過する第1の光と、第2の光とに少なくとも分岐させる第1の分岐手段と、
前記第2の電気光学変調器の後段に設けられ、前記第2の電気光学変調器からの前記第1の光を出力光として導く一方、前記第2の光の全部又は一部を、前記第1の光とは逆側から前記第2の電気光学変調器へ入力する第1の導波手段と、
を有する光学システム。
【請求項2】
前記第1の電気光学変調器を通過した光を、前記第2の電気光学変調器に入力される光と、前記第1の電気光学変調器に対して制御信号を供給する第1のバイアス制御回路に接続された第1の受光素子に入力される光とに分岐させる一方、前記第1の導波手段及び前記第2の電気光学変調器を通過した前記第2の光を、前記第2の電気光学変調器に対して制御信号を供給する第2のバイアス制御回路に接続された第2の受光素子に導く第2の導波手段を更に有する
請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第2の導波手段は、
前記第1の電気光学変調器を通過した光を、前記第2の電気光学変調器に入力される光と、前記第1の受光素子に入力される光とに分岐させる光カプラと、
第1のポートから入力され前記第1の電気光学変調器を通過した光を、第2のポートから出力して前記第2の電気光学変調器に導く一方、当該第2のポートから入力された、前記第1の導波手段及び前記第2の電気光学変調器を通過した前記第2の光を、第3のポートを介して前記第2の受光素子に導くサーキュレータと
を含む、
請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記第2の導波手段は、
前記第1の電気光学変調器を通過した光が入力されるアイソレータと、
第1のポートから入力された、当該アイソレータを通過した光を、第2のポートを介して前記第2の電気光学変調器へ出力するとともに第3のポートを介して前記第1の受光素子へ出力する一方、当該第2のポートを介して入力された、前記第1の導波手段及び前記第2の電気光学変調器を通過した前記第2の光を、当該第1のポートを介して前記アイソレータに出力するとともに第4のポートを介して前記第2の受光素子へ出力する光カプラと
を含む、
請求項2に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第1の導波手段は、
第1のポートから入力された、前記第1の電気光学変調器及び前記第2の電気光学変調器を通過した光を第2のポートに出力する一方、第3のポートから入力された前記第2の光を、当該第1のポートから出力するサーキュレータである
請求項1~4の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項6】
前記第1の導波手段は、
前記第2の光が入射されるアイソレータと、
第1のポートから入力され前記第2の電気光学変調器を通過した光を、第2のポートから前記出力光として出力するとともに第3のポートへ出力する一方、当該第3のポートから入力され当該アイソレータを通過した前記第2の光を当該第1のポートから出力する光カプラである
請求項1~4の何れか1項に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器を複数有する光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
LN変調器は、光通信になくてはならない基幹デバイスの一つである。LN変調器はDFB-レーザ等のCW光の変調に用いられる。LN変調器には、振幅変調(強度変調とも称される)を行うLN振幅変調器と位相変調を行うLN位相変調器とがある。LN変調器では、LiNbO3結晶のポッケルス効果による屈折率変化を利用して光の変調が行われ、40GHzの高速変調が可能である。ポッケルス効果とは、誘電体の等方性結晶に印加した電圧に応じて当該等方性結晶における屈折率が変化する現象のことをいう。LN変調器では、屈折率が変化する電圧(以下、動作点を示すバイアス電圧)が温度又は経年変化により変化する。このため、少なくともLN振幅変調器を用いる場合、変調後の光量に応じたバイアス電圧の制御(以下、フィードバック制御)を行うことが必要となる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LN変調器を多段に(換言すると、直列に)配置して光学システムを構築すれば、パルス幅の制御の自由度が高くなる等のメリットが得られる。しかし、LN変調器を多段に配置した光学システムは従来なかった。N(Nは2以上の整数)段に配置されたLN変調器のk段目とm段目(1≦k<m≦N)にLN振幅変調器が配置されていると、LN振幅変調器を通過した光の光量は大きく低下するため、m段目のLN振幅変調器のバイアス制御に支障が生じるからである。
【0005】
本発明は、フィードバック制御が必要な光変調器を多段に配置することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る光学システムは、第1の電気光学変調器と、当該第1の電気光学変調器の後段に設けられた第2の電気光学変調器と、第1の分岐手段と、第1の導波手段とを有する。第1の分岐手段は、入力光を、前記第1の電気光学変調器及び前記第2の電気光学変調器を順に通過する第1の光と、第2の光とに少なくとも分岐させる。第1の導波手段は、前記第2の電気光学変調器の後段に設けられる。第1の導波手段は、前記第2の電気光学変調器からの前記第1の光を出力光として導く一方、前記第2の光の全部又は一部を、前記第1の光とは逆側から前記第2の電気光学変調器へ入力する。この光学システムは、前記入力光に対して第1の電気光学変調器及び第2の電気光学変調器によって変調された光を出力光として出力する。この第1の態様の光学システムでは、第2の電気光学変調器を通過した第2の光に基づいて第2の電気光学変調器のフィードバック制御を行うことができるため、電気光変調器が多段に配置されても特段の問題は生じない。
【0007】
第2の態様の光学システムは、前記第1の態様の光学システムに以下の第2の導波手段を追加したものである。第2の導波手段は、前記第1の電気光学変調器を通過した光を、前記第2の電気光学変調器に入力される光と、前記第1の電気光学変調器に対して制御信号を供給する第1のバイアス制御回路に接続された第1の受光素子に入力される光とに分岐させる。また、第2の導波手段は、前記第1の導波手段及び前記第2の電気光学変調器を通過した前記第2の光を、前記第2の電気光学変調器に対して制御信号を供給する第2のバイアス制御回路に接続された第2の受光素子に導く。この第2の態様の光学システムでは、第1の導波手段及び第2の電気光学変調器を通過した第2の光を第2の導波手段により第2の受光素子へ導くことができる。
【0008】
第3の態様の光学システムは、第2の態様の光学システムにおける第2の導波手段が光カプラとサーキュレータとを含むものである。光カプラは、前記第1の電気光学変調器を通過した光を、前記第2の電気光学変調器に入力される光と、前記第1の受光素子に入力される光とに分岐させる。サーキュレータは、第1のポートから入力され前記第1の電気光学変調器を通過した光を、第2のポートから出力して前記第2の電気光学変調器に導く。また、このサーキュレータは、第2のポートから入力された、前記第1の導波手段及び前記第2の電気光学変調器を通過した前記第2の光を、第3のポートを介して前記第2の受光素子に導く。この第3の態様の光学システムでは、第2の導波手段を光カプラとサーキュレータとで構成することができる。
【0009】
更に好ましい第4の態様の光学システムは、第2の態様の光学システムにおける第2の導波手段がアイソレータと光カプラとを含むものである。アイソレータには、前記第1の電気光学変調器を通過した光が入力される。光カプラは、第1のポートから入力された、当該アイソレータを通過した光を、第2のポートを介して前記第2の電気光学変調器へ出力するとともに第3のポートを介して前記第1の受光素子へ出力する。また、この光カプラは、第2のポートを介して入力された、前記第1の導波手段及び前記第2の電気光学変調器を通過した前記第2の光を、第1のポートを介して前記アイソレータに出力するとともに第4のポートを介して前記第2の受光素子へ出力する。この第4の態様の光学システムでは、第2の導波手段をアイソレータと光カプラとで構成することができる。
【0010】
更に好ましい第5の態様の光学システムは、第1~第4の光学システムにおける第1の導波手段が、第1のポートから入力された、前記第1の電気光学変調器及び前記第2の電気光学変調器を通過した光を第2のポートに出力する一方、第3のポートから入力された前記第2の光を、当該第1のポートから出力するサーキュレータであることを特徴とする。この第4の態様の光学システムでは、第1の導波手段をサーキュレータで構成することができる。
【0011】
更に好ましい第6の態様の光学システムは、第1~第4の光学システムにおける第1の導波手段が以下のアイソレータと光カプラとを含む、ことを特徴とする。アイソレータには、前記第2の光が入射される。光カプラは、第1のポートから入力され前記第2の電気光学変調器を通過した光を、第2のポートから前記出力光として出力するとともに第3のポートへ出力する。また、この光カプラは、第3のポートから入力されアイソレータを通過した前記第2の光を第1のポートから出力する。この第5の態様の光学システムでは、第1の導波手段をアイソレータと光カプラとで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態による光学システム1Aの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態による光学システム1Bの構成例を示す図である。
【
図3】本発明の変形例(1)による光学システム1Cの構成例を示す図である。
【
図4】本発明の変形例(2)による光学システム1Dの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に述べる各実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
A.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による光学システム1Aの構成例を示す図である。
図1に示されるように、光学システム1Aは、LN変調器11と、LN変調器22と、を有する。なお、
図1では、「LN変調器」は単に「LN」と表記されている。LN変調器11及びLN変調器22の各々は、LiNbO
3結晶のポッケルス効果による屈折率変化を利用して光の変調を行う電気光変調器である。LN変調器11及びLN変調器22の各々は、入力された光に対して振幅変調を施して出力するLN振幅変調器である。このため、光学システム1Aからの出力光Loutは、光学システム1Aへの入力光Linに対してLN変調器11及びLN変調器22による振幅変調を施した光となる。LN変調器11は本発明における第1の電気光学変調器の一例であり、LN変調器22は本発明における第2の電気光学変調器の一例である。
【0014】
図1に示されるように、光学システム1Aは、LN変調器11及びLN変調器22の他に、光カプラ10及び光カプラ12と、サーキュレータ21及びサーキュレータ23とを有する。なお、
図1では、「サーキュレータ」は「CIR」と表記されている。
図1に示されるように光カプラ10はLN変調器11の前段に設けられ、サーキュレータ23はLN変調器22の後段に設けられる。
図1に示されるように、光カプラ12及びサーキュレータ21は、LN変調器11とLN変調器22との間に設けられる。
【0015】
光カプラ10は、1×2光カプラであり、光学システム1Aへの入力光Linを光L1と光L2とに分岐させる。
図1に示されるように光L1は、LN変調器11及びLN変調器22を順に通過して出力光Loutとなる。本実施形態では、出力光Loutの光量を十分に確保するため、光L2の光量は、入力光Linの光量の2%に設定される。光L1は本発明における第1の光の一例であり、光L2は本発明における第2の光の一例である。光カプラ10は、入力光Linを光L1と光L2とに分岐させる第1の分岐手段の一例である。
【0016】
サーキュレータ23は、ポート1、ポート2、及びポート3の3つのポートを有する3ポートサーキュレータである。サーキュレータ23のポート2には、LN変調器22を通過した光、即ちLN変調器11及びLN変調器22の各々により振幅変調された光L1が入力される。サーキュレータ23は、ポート2に入力された光をポート3から出力光Loutとして光学システム1Aの外部へ導く。サーキュレータ23のポート1には光L2が入力される。サーキュレータ23は、ポート1へ入力された光L2を、ポート2を介して光L1とは逆側からLN変調器22へ入力する。サーキュレータ23は、本発明における第1の導波手段を構成するサーキュレータの一例である。サーキュレータ23のポート1は、第1の導波手段を構成するサーキュレータにおける第3のポートの一例である。サーキュレータ23のポート2は、第1の導波手段を構成するサーキュレータにおける第1のポートの一例である。サーキュレータ23のポート3は、第1の導波手段を構成するサーキュレータにおける第2のポートの一例である。
【0017】
光カプラ12は、1×2光カプラであり、LN変調器11を通過した光、即ちLN変調器11による振幅変調を経た光L1を光L3と光L4とに分岐させる。光L3はLN変調器22へ入力する。光L4は、LN変調器11に対して制御信号(バイアス電圧)を供給するバイアス制御回路14に接続された受光素子13に入力する。本実施形態では、受光素子13に入力する光量に応じてバイアス制御回路14がバイアス電圧を制御することで、LN変調器11のフィードバック制御が実現される。バイアス制御回路14は本発明における第1のバイアス制御回路の一例であり、受光素子13は本発明における第1の受光素子の一例である。本実施形態では、光L4の光量は、例えば、LN変調器11を通過した光L1の光量の1%に設定される。
【0018】
一般に、一つのLN振幅変調器を透過した光の光量は、元の光量の約1%まで低下する。従って本実施形態では、受光素子13に入力する光の光量は、入力光Linの光量の0.01%となる(ただし、光カプラ10による2%の光量低下は無視した。)。光L3と光L4との光量の比率については、出力光Loutの光量の確保と、受光素子13に入力する光の光量(LN変調器11のフィードバック制御に要する光量)の確保との観点から定められればよい。
【0019】
サーキュレータ21は、サーキュレータ23と同様に3ポートサーキュレータである。サーキュレータ21のポート1は光カプラ12に接続され、このポート1には光L3が入力される。サーキュレータ21のポート2はLN変調器22に接続される。サーキュレータ21は、ポート1へ入力された光L3をポート2から出力してLN変調器22へ導く。サーキュレータ21のポート3は、LN変調器22に対して制御信号(バイアス電圧)を供給するバイアス制御回路25に接続された受光素子24に接続される。本実施形態では、受光素子24に入力する光量に応じてバイアス制御回路25がバイアス電圧を制御することで、LN変調器22のフィードバック制御が実現される。バイアス制御回路25は本発明における第2のバイアス制御回路の一例であり、受光素子24は本発明における第2の受光素子の一例である。サーキュレータ21は、ポート2へLN変調器22から入力される光、即ちサーキュレータ23及びLN変調器22を通過した光L2を受光素子24に導く。
【0020】
本実施形態では、光カプラ12及びサーキュレータ21は、LN変調器11を通過した光L1を光L3と光L4とに分岐させる一方、サーキュレータ23及びLN変調器22を通過した光L2を受光素子24に導く第2の導波手段を構成する。サーキュレータ21のポート1は、第2の導波手段を光カプラとサーキュレータとにより構成した場合における当該サーキュレータの第1のポートの一例である。サーキュレータ21のポート2は、第2の導波手段を光カプラとサーキュレータとにより構成した場合における当該サーキュレータの第2のポートの一例である。サーキュレータ21のポート3は、第2の導波手段を光カプラとサーキュレータとにより構成した場合における当該サーキュレータの第3のポートの一例である。
【0021】
ここで、LN変調器11及びLN変調器22を直列に接続し、LN変調器11及びLN変調器22を通過した光の1%を光カプラにより分岐させて受光素子24に入力する光を生成させた場合を想定する。この場合、受光素子24に入力する光の光量は、入力光Linの光量の0.0001%となり、LN変調器22のフィードバック制御に支障を来す。LN変調器11を通過した光の光量は入力光Linの光量の1%まで低下し、LN変調器22を通過した光の光量はLN変調器22を通過した光の光量の1%まで低下し、受光素子24へ入力する光の光量は光カプラによる分岐によりLN変調器22を通過した光の光量の1%まで低下するからである。
【0022】
これに対して、本実施形態の光学システム1Aでは、サーキュレータ23及びLN変調器22を通過した光L2に基づいてLN変調器22のフィードバック制御が行なわれる。一般にサーキュレータにおける光量の損失は30~40%である。このため、本実施形態では、受光素子24へ入力する光の光量は、入力光Linの光量の2%(光カプラ10による分岐分)×0.6(サーキュレータ23を通過することによる光量の低下)×0.01(LN変調器22を通過することによる光量の低下)×0.6(サーキュレータ21を通過することによる光量の低下)=0.007%となり、受光素子13へ入力する光の光量と同等となる。このように、本実施形態によれば、LN変調器22のフィードバック制御に必要な光量を確保することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、フィードバック制御が必要なLN変調器を多段に配置して光学システムを構成することが可能になる。
【0024】
B.第2実施形態
図2は本発明の第2実施形態による光学システム1Bの構成例を示す図である。
図2では
図1におけるものと同じ構成要素には同一の符号が付されている。
図2と
図1とを対比すれば明らかなように、光学システム1Bの構成は以下の2つの点において光学システム1Aの構成と異なる。第1に、サーキュレータ23に替えて光カプラ26が設けられ、光カプラ10と光カプラ26との間にアイソレータ15が設けられている点である。第2に、光カプラ12及びサーキュレータ21に代えて、アイソレータ16と光カプラ17とが設けられている点である。なお、
図2では「アイソレータ」および「光カプラ」は、それぞれ「ISO」、「OC」と表記されている。
【0025】
アイソレータ15には光カプラ10からの光L2が入力される。アイソレータ15は、光カプラ10からサーキュレータ23に向かう光L2を通過させ、逆方向の光を遮断するために設けられる。本実施形態では、アイソレータ15と光カプラ26とにより本発明における第1の導波手段が構成される。アイソレータ16にはLN変調器11を通過した光L1が入力される。アイソレータ16は、LN変調器11を通過した光L1を通過させ、逆方向の光を遮断するために設けられる。
【0026】
光カプラ17は、第1、第2、第3、及び第4のポートを2×2光カプラである。光カプラ17の第1のポートはアイソレータ16に、光カプラ17の第2のポートはLN変調器22に、光カプラ17の第3のポートは受光素子13に、光カプラ17の第4のポートは受光素子24に夫々接続される。
【0027】
光カプラ17の第1のポートにはアイソレータ16を通過した光L1が入力される。光カプラ17は、第1のポートに入力された光L1を第2のポートを介してLN変調器22へ出力するとともに第3のポートを介して受光素子13へ出力する。また、光カプラ17の第2のポートには、光カプラ26及びLN変調器22を通過した光L2が入力される。光カプラ17は、第2のポートへ入力した光L2を第1のポートを介してアイソレータ15に出力するとともに第4のポートを介して受光素子24へ出力する。本実施形態においてアイソレータ15及び光カプラ17は、LN変調器11を通過した光L1をLN変調器22へ出力する光と受光素子13へ出力する光とに分岐させる一方、サーキュレータ23及びLN変調器22を通過した光L2を受光素子24に導く第2の導波手段の役割を果たす。
【0028】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、光カプラ26及びLN変調器22を通過した光L2に基づいてLN変調器22のフィードバック制御が行われる。第1実施形態のように3ポートの光カプラ12とサーキュレータ21とにより第2の導波手段を構成する態様の方が、本実施形態のようにアイソレータ16と4ポートの光カプラ17とにより第2の導波手段を構成する態様よりも光の損失は少ない。しかし、本実施形態によっても、フィードバック制御が必要な電気光学変調器を多段に配置して光学システムを構成することが可能になる。
【0029】
C.変形
以上説明した各実施形態は、以下のように変形されてもよい。
上記各実施形態では、LN変調器が2段に配置された光学システムについて説明したが、
図3に示される光学システム1CのようにLN変調器が3段に配置されてもよく、また、LN変調器が4段以上配置された光学システムであってもよい。
図3では
図1におけるものと同じ構成要素には
図1におけるものと同じ符号が付されている。
図3と
図1とを対比すれば明らかなように光学システム1Cの構成は、光カプラ30、サーキュレータ40、LN変調器41、サーキュレータ42、受光素子43、及びバイアス制御回路44を有する点において、光学システム1Aの構成と異なる。
図3に示されるように、光学システム1Cでは、LN変調器11、LN変調器22、及びLN変調器41が直列に配置されている。LN変調器41は、LN変調器11及びLN変調器22と同様にLN振幅変調器である。光学システム1Cでは、LN変調器11、LN変調器22、及びLN変調器41の各々による振幅変調を経た入力光Linが出力光Loutとなる。
【0030】
光カプラ30には、光カプラ10からの光L2が入力される。光カプラ30は、光カプラ10からの光L2を光L5と光L6とに分枝させる。光L5はサーキュレータ23へ入力し、光学システム1Cでは、サーキュレータ23及びLN変調器22を通過した光L5(換言すれば、光L2の一部)に基づいてLN変調器22のフィードバック制御が行なわれる。光L6は、サーキュレータ42、LN変調器41及びサーキュレータ40を通過し、LN変調器41のフィードバック制御を行うバイアス制御回路44に接続された受光素子43に入力する。つまり、光学システム1Cでは、サーキュレータ42、LN変調器41及びサーキュレータ40を通過した光L6(換言すれば、光L2のうち光L5とは異なる他の一部)に基づいてLN変調器41のフィードバック制御が行われる。このため、LN変調器22のフィードバック制御に支障が生じないことは勿論、LN変調器41のフィードバック制御にも支障は生じない。
なお、サーキュレータ23およびサーキュレータ40に替えて、4ポートのサーキュレータを一つ設けてもよい。
【0031】
上記各実施形態におけるLN変調器11及びLN変調器22の各々は、LN振幅変調器であった。しかし、LN変調器11及びLN変調器22の何れか一方又は両方は、LN位相変調器であってもよい。一般に、LN位相変調器における光量の損失はLN振幅変調器における光量の損失よりも小さい。このため、LN振幅変調器を少なくとも一つ含む複数のLN変調器を多段接続した光学システムに本発明は好適であり、LN振幅変調器の数が多いほど、また、LN振幅変調器が初段又は初段の近くであるほど、本発明を適用することによる効果は高い。
【0032】
本発明にかかる光学システムは、例えば、各LN位相変調器を制御して所望のパルス波形特性(周波数特性)の光を出力させるために用いることができる。例えば、入力光をCW光として、出力光を所望のパルス光となるように各LN位相変調器を制御する。もっとも、本発明にかかる光学システムは、所望の波形特性や周波数特性を得るために限らず、伝達すべき信号を用いて入力光を変調して情報を伝達するための装置として用いてもよいし、信号の劣化等を回復させるための光中継装置として用いてもよいし、その用途や利用目的は問わない。
【0033】
また、上述の例においては、2段目以降のLN変調器に対して入射光とは逆側から光を入射させ当該LN変調器を受光素子に導いてフィードバック制御のための参照信号としたが、1段目のLN変調器11に対するフィードバック制御においても、2段目以降のLN変調器の制御と同様に、入射光とは逆側から光を入射させ当該LN変調器を受光素子に導いてもよい。例えば、
図4に示すように、光カプラ33を用いて光L2を光L7に分割し、光L7を、LN変調器11の前後にそれぞれ設けたサーキュレーター32および31を介して、受光素子13に導く。
【0034】
要するに、本発明にかかる光学システムは、一の態様において、第1の電気光学変調器と、当該第1の電気光学変調器の後段に設けられた第2の電気光学変調器とを有し、入力光に対して当該第1の電気光学変調器及び当該第2の電気光学変調器によって変調された光を出力光として出力する光学システムであって、前記入力光を、前記第1の電気光学変調器及び前記第2の電気光学変調器を順に通過する第1の光と、第2の光とに少なくとも分岐させる第1の分岐手段と、前記第2の電気光学変調器の後段に設けられ、前記第2の電気光学変調器からの前記第1の光を出力光として導く一方、前記第2の光の少なくとも一部を、前記第1の光とは逆側から、少なくとも前記第2の電気光学変調器へ入力する第1の導波手段とを有すればよい。
さらに、前記第2の光の一部を、前記第1の光とは逆側から、さらに、前記第1の電気光学変調器へ入力してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B,1C…光学システム、11,22、41…LN変調器、10,12,17,30…光カプラ、21,23,40,42…サーキュレータ、13,24,43…受光素子、14,25、44…バイアス制御回路、15,16…アイソレータ。